32ビットマイコンとは
32ビットマイコンとは、命令コードの最長ビット幅が32ビットで、扱われるデータのビット幅が4~32ビットのマイクロコントローラです。
マイコンは半導体チップとして製造されており、32ビットマイコン以外に4ビットマイコン、8ビットマイコン、16ビットマイコンがあり、32ビットマイコンはその最上位に位置し、非常に高い処理能力を備えています。
32ビットマイコンの使用用途
様々な家電製品に「マイコン搭載」と記されているように、産業用を含め現代の電気製品には極めて広範囲にマイコンが搭載されています。動作状態を表すLED表示部分は4ビットマイコン、白物家電の制御には8ビットマイコン、リモコン製品には16ビットマイコンなどのように必要性能に応じて用いられています。
最上位の処理性能を持つ32ビットマイコンはテレビやDVDなどの画像処理、通信機器でのデータ通信、自動車のエンジン制御や運転制御、ロボットの画像認識や動作制御など、大量のデータを高速で処理したり、複雑な処理を高速で行うなどの場面で用いられます。
32ビットマイコンの原理
多くの32ビットマイコンでは、複雑で高速な処理が求められるため標準的な周辺回路だけでなく用途に応じた専用の処理回路が搭載されています。
例えば、TVやDVDや画像認識などの画像処理に関する用途では大量の積和演算が必要になります。これをソフトウェアで実行するとステップ数が多くなり非常に時間がかかるため、ハードウェアで高速に処理する専用回路を集積することで高速化します。
また、通信に関わる用途では様々な通信プロトコルが混在するデータを処理するため、シリアル⇔パラレルの変換を行うUARTと呼ばれる専用回路を搭載します。
このように、32ビットマイコンは用途に応じた専用回路を搭載することで複雑な処理を1チップで高速に実行するため、システムLSIとも呼ばれます。
現在では半導体技術の進化により一つの半導体チップ上に10億個のトランジスタを集積することができるようになりました。このため、スマートフォンなどでは複数の専用回路やCPUコアを1チップに集積し、ユーザ開発のアプリケーションも実行できるようになっており、マイコンとプロセッサの境界は曖昧になってきています。
32ビットマイコンのその他情報
1. 32ビットマイコンの特徴
32ビットマイコンには、命令のビット幅は中央処理装置であるCPU (英:Central Processing Unit) のアーキテクチャにより、32ビット固定長のものと4~32ビット可変長のものがあります。可変長の方がプログラムのサイズが小さくなります。
マイコンはコントローラの名前の通り様々な機器の制御に用いられ、汎用的な用途に用いられるサーバーやパソコン等に搭載されるマイクロプロセッサに対して、限定的な用途向けのデバイスです。
さらに、マイクロプロセッサとの違いとしてリアルタイム性の重視が上げられます。機器の制御に用いるためにはその場で処理する必要があり、32ビットマイコンで用いられるOSは通常のWindows OSなどとは異なるリアルタイムOSになります。代表的なリアルタイムOSとして日本のTRONプロジェクトから産まれたuITRONがあります。
32ビットマイコンでは、32ビットCPUをコアとして、種々のタイマ/カウンタ回路、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、入出力ポート回路、LCDドライバ回路、メモリ回路等が同じ一つの半導体チップ上に集積されています。
2. ARMコアについて
32ビットマイコンの核であり、処理性能や使い易さを大きく左右するCPUコアですが、その中で最も代表的なものがARMコアです。
ARMコアはiOSとAndroid双方のほとんどのスマートフォンや情報家電に搭載されているマイコンのコアであり、1990年にイギリスで創業したARM社によって開発されました。固定長の簡潔な命令セットアーキテクチャでありながら可変長命令セットの特徴も持ちつつ、シンプルな回路構造によって半導体の微細化の進展に適用しやすいCPUコアで、低消費電力でありながら高い処理能力を備えていることが特徴です。
バッテリーを必要とするモバイル機器や、常時稼働状態にある産業用機器では低消費電力が必須であり、様々な物がネットワークに接続されるIoT時代の到来により低消費電力と高性能が両立したマイコン需要が一気に加速しました。
ARMコアはアーキテクチャレベルや回路レベルでライセンス供与されたこともあり、モバイルPCやスマートフォンを中心に多くの企業で導入されて急速にシェアを拡大しました。
参考文献
https://www.renesas.com/eu/ja/support/technical-resources/engineer-school/mcu-01-basic-structure-operation.html
http://rtmrw.parallel.jp/led-work/raspberrypi/raspberrypi-1/doc-1.pdf
https://www.cqpub.co.jp/interface/sample/200605/I0605046.pdf
https://time-space.kddi.com/ict-keywords/20190718/2699