マルチプレクサIC

マルチプレクサICとは

マルチプレクサICとは、複数の信号を1つの信号として出力するICです。

MUXや多重器、多重装置、多重化装置、合波器などとも呼ばれています。デジタル回路では、縦と横の比率が大きい矩形や台形のブロック表記で表され、長辺に入力、短辺に出力が記入されます。数個のマルチプレクサICを組み合わせて、入力の個数を増やすことも可能です。

通信分野では、複数の信号のデータをスイッチやフィルタなどを用いて1本の合成波にして、送信する場合に多く使用されます。受信側ではマルチプレクサに対応するデマルチプレクサが必要となり、合成波の信号を複数の信号に分解して、信号の読み込みができるようにします。

マルチプレクサとデマルチプレクサを1つにまとめたものを、マルチプレクサと呼ぶこともあり、ケースに応じて使い分けされている状況です。

マルチプレクサICの使用用途

マルチプレクサICは、移動体無線通信の分野やコンピュータ回路、アナログ回路の信号の合成などに良く使用されます。通信の分野では、人工衛星の信号の発信部やWi-Fiのルーター、遠隔操作ロボット、ドローンの操縦などが用途です。

選定の際は、サイズや対応している信号、電圧やパッケージのオプションなどのさまざまな仕様項目を考慮する必要があります。

マルチプレクサICの原理

マルチプレクサICの原理は、通常はデジタル回路の組み合わせ回路やアナログのスイッチ回路を用いて各々のICの仕様に応じた多数の入力信号から所望の論理に基づく出力信号が形成可能なように設計開発されている点にあります。デジタルの論理設計やアナログの回路設計により、IC内部に必要な回路を構成するCMOS等のトランジスタや抵抗、容量などの配線レイアウトがなされています。

通常のマルチプレクサICは、数本の入力端子、1本の出力端子で構成されており、N本の入力があれば、信号は2のN乗個の信号を1本の出力として処理することが可能です。その仕組みは、信号の入力の数だけスイッチがあり、0と1の信号の組み合わせによって、信号を合成しています。

8入力のマルチプレクサを例に出すと、8本のデータ入力と3本の信号の選択スイッチがあり、3桁の2進数で8本の入力されたデータを表すことが可能です。マルチプレクサICには、コンデンサやコイルの機能を持つICチップを搭載することで、電源オフや過電圧、ショートに対する保護機能を追加している製品もあります。最適な増幅器やフィルタを搭載しており、高周波に対応した、高精度な信号の伝達を行える製品も発売されています。

マルチプレクサICのその他情報

1. マルチプレクサの構成回路 (デジタル)

デジタル回路でマルチプレクサICを構成する場合の構成回路は、「組み合わせ回路」が用いられます。組み合わせ回路の構成要素は、AND回路、NOT回路、OR回路等です。

デジタル回路で多用されるフリップフロップ回路は、データ保持の機能を有し、通常はマルチプレクサ回路用途ではなく、「順序回路」の構成要素といえます。

2. マルチプレクサICの構成事例 (アナログ)

アナログ回路で特に通信用途に多く用いられるマルチプレクサICは、アンテナ周りの送受信の信号切り替え機能をつかさどるアンテナスイッチや周波数バンドの切り替えフィルタ回路などが挙げられます。

昨今の移動体通信用途ではSOI-CMOSスイッチをICの構成要素として活用し、送受信用のデジタル回路ベースのシリアルインターフェイス機能が具備されたものが用いられています。

参考文献
https://www.analog.com/
https://www.tij.co.jp/ja-jp/switches-multiplexers/analog/overview.html

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