エッチング装置とは
エッチング装置とは、半導体などの製造工程であるエッチング加工に利用される装置です。
エッチング加工は、加工対象の表面を切削または溶解させて加工する技術を指します。エッチング装置では、半導体ウェハ上に形成した薄膜などにエッチング加工を行い、CPUなどの電子デバイス製造に必要不可欠な装置です。
近年の電子デバイスの高機能化に伴い、エッチングはより微細な加工が求められています。工程も複雑化しており、1つの電子部品を製造するためにエッチング装置を複数台使用されることも多くあります。
エッチング装置の使用用途
エッチング装置は電子デバイスの製造に欠かせない装置です。具体的な使用用途は、以下の通りです。
- PC用CPUなどの集積回路
- プリント基板
- 液晶ディスプレイパネル
- プラズマディスプレイパネル
これらの製造には、フォトリソグラフィが利用されています。フォトリソグラフィとは、感光性物質を塗布した上から光を当てて物体表面を加工する技術で、エッチングはフォトリソグラフィの一工程です。
エッチング工程では、ウェハ上の酸化膜にレジストがコーティングされている部分は残り、レジストがない部分がはがれ落ちます。凹凸ができ、パターンが形成されています。
エッチング装置の原理
エッチング装置は、ウェットエッチングとドライエッチングの2種類に分類されます。
1. ウェットエッチング
酸もしくはアルカリ薬液を使用して酸化膜を溶かす加工です。一度に多くの枚数の処理が可能で、生産の品質が安定しています。
薬液が比較的安価なので、安価に製造可能です。ただし、エッチングの方向が一方向に進むため、垂直方向の加工ができない方法です。1μm程度の加工が限界となります。
2. ドライエッチング
ドライエッチングは薬液を使用しないエッチング加工です。ドライエッチングの中では、プラズマエッチングが最も広く利用されています。真空下でガスを高電圧でプラズマ化する方法です。
プラズマ化の方法から誘電結合型とマイクロ波型などがあり、いずれも高周波電源を使用します。生成したプラズマで対象物表面を削る方法で、ウェットエッチングよりも高価なのが特徴です。ただし、100nm~1000nmといった微細な溝の加工が可能です。
プラズマエッチングの他にはイオン衝突によるイオンエッチングやガスを利用するガスエッチングなどがあります。いずれも真空装置が必要です。
エッチング装置のその他情報
1. エッチング装置の市場とシェア
世界の電子機器市場は拡大し続けており、それを支える半導体産業の重要性はますます高まっています。半導体の世界市場は、リーマンショックなどの不況を経験しながらも拡大傾向です。
近年、記憶媒体を3D構造とすることでさらに微細化する技術の開発が盛んです。そのため、3D化へのコア技術としてエッチング装置はさらに重要性を増しています。
エッチング装置消費の市場規模は2018年で13,893億円です。消費地域別シェアは韓国(28%)、中国(19%)、日本(19%)、台湾(14%)、米国(10%)となっています。また、ベンダ国籍別シェアは2018年は米国(64%)、日本(32%)です。2018年時点では米国と日本の企業で寡占化しています。
2. ドライエッチング装置と3次元NAND市場
ドライエッチングは微細加工を行う技術の一つですが、加工する材料に応じて多くの装置が販売されています。ただし、シリコン用やメタル配線用など、主に半導体や金属を対象とする装置が主流です。通常の半導体工場では絶縁膜ドライエッチング装置が高比率です。
2015年以降これまで半導体製造装置の中で最大の市場であった露光装置の規模を超えて、ドライエッチング装置の市場規模が最大となりました。2017年には、ドライエッチング装置の市場規模は107億米ドルでした。
ドライエッチング装置の市場規模が急拡大している理由は、メモリの3次元構造化によるものです。微細化が進むにつれドライエッチング工程の増大し、フラッシュメモリは3次元構造が開発されるようになりました。
3次元NANDフラッシュメモリのセル形成にはさまざまな加工が必要です。特にチャネルホールの深孔加工が難しく、長時間のエッチング処理が必要となります。半導体メモリ工場では時間当たりの処理枚数が重要です。そのため、ドライエッチング装置の設置台数を増やすことで処理能力を確保します。
参考: EE Times Japan
参考文献
https://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/etch.html
https://www.samco.co.jp/company/primer/2011/03/post_5.php
https://eetimes.jp/ee/articles/1809/19/news007_2.html
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000182.pdf
https://eetimes.jp/ee/articles/1809/19/news007.html