絶縁抵抗計

絶縁抵抗計とは

絶縁抵抗計

絶縁抵抗計とは、絶縁状態を診断するための装置です。系統の電圧に合わせてDC1,000V程度の高電圧を印可できる絶縁抵抗計も販売されています。

電気を使う機器にとって、機器が絶縁されていることは大変重要です。絶縁状態が悪化すると、漏電火災や感電事故の発生原因となります。上記事故を未然に防ぐため、定期的に絶縁抵抗計で絶縁性能を評価する必要があります。

絶縁抵抗計の使用用途

絶縁抵抗計は絶縁能力を数値化するために使われます。一般家庭で見ることはまずありません。

生産現場では、電気製品の出荷工場における最終試験などに使用されます。また、電気設備の保守担当者は、多くの場合保守用の測定器として所持しています。

抵抗値の測定には電圧の印加を行いますが、系統電圧に応じて印加電圧が異なります。例えば、電話回線の絶縁測定は25~50Vの電圧を印加する絶縁抵抗計が用いられ、家電製品にはDC125Vが使用されます。高圧配電線路や発電所などではDC1,000Vの印可電圧が使用されます。

絶縁抵抗計の原理

絶縁抵抗計は、配線端子、スイッチ、直流電源電流計、電流保護素子などで構成されます。

配線端子は、アース端子とライン端子と呼ばれる2つの端子が使用されます。アース端子は接地し、ライン端子は測定部分に接続して測定します。

スイッチを押すことで、直流電源で作られた直流電圧を印加します。大地へ流れる微少電流を漏れ電流と呼びますが、電流計で電圧印加時の漏れ電流を測定して絶縁抵抗を求めています。

高圧電圧を印加するため、回路に過電流が流れないように電流保護素子でインピーダンスを高めます。電流保護素子によって、絶縁抵抗計の内部インピーダンスは非常に高く設計されています。

絶縁抵抗値は、高いほど絶縁性能が高いことを示しています。絶縁破壊が起こると、絶縁抵抗値は極端に低くなります。

絶縁抵抗計のその他情報

1. 絶縁抵抗計を使用する目的

絶縁抵抗計は、工場や家庭などに施工されている電路や電気部品などの絶縁状態を測定するための機器です。

絶縁不良の原因は、電路の施工不良、充電部と非充電部の絶縁不良、経年劣化、内部配線の劣化、使用部品のショートによる破損、筐体の破損などが考えられます。これらをそのまま放置しておけば、漏電火災や感電死傷事故へとつながり、大変危険です。

こういったトラブルを防ぐため、「漏電ブレーカーが落ちる」「操作中に感電した」という現象が現れたら、すぐに電源系統を遮断し、絶縁抵抗測定を行います。

2. 測定方法

絶縁抵抗計の測定方法は、以下の手順で実施します。

  1. 絶縁抵抗計のアース端子を接地された金属箇所(可能であれば接地極と接続された端子)に接続する。
  2. 系統電圧に合わせて、つまみで印可電圧を選択する。
  3. ライン端子を、アース端子とは別の接地された箇所へ押し当て、測定ボタンを押す。
  4. 0.00MΩ表示となる事を確認する。(ゼロチェック)
  5. 測定ボタンから手を離し、ライン端子を測定箇所へ押し付ける。
  6. 測定ボタンを押し、絶縁抵抗を確認する。

電路長が長いと電荷が溜まるまで時間がかかるため、絶縁抵抗表示が安定しないことがあります。その場合は、表示が安定するまで電圧を印可し続けます。

また、DC1,000Vなどの高電圧を印可した際は、残留電荷が多く溜まります。電路を素手で触ると感電する危険性があるため、放電処置を確実に実施する必要があります。

電気設備技術基準では、電圧系統区分における絶縁抵抗値が定められています。測定結果を判断する基準とします。

  • 対地電圧150V以下→絶縁抵抗値0.1MΩ以上
  • 対地電圧150V以上300V以下→絶縁抵抗値0.2MΩ以上
  • 対地電圧300V以上の低圧電路→絶縁抵抗値0.4MΩ以上

実際に絶縁不良が発生した場合、電路や電気機器をうまく切り分けて測定することが劣化箇所の早期発見に繋がります。絶縁不良箇所の早期発見は、電気設備保全担当者の腕の見せ所と言えるでしょう。

参考文献
https://www.kew-ltd.co.jp/support/knowledge/technical/insulation
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=43 

LiDARセンサー

LiDARセンサーとは

LiDARセンサー

LiDARセンサーとは、レーザー光を照射し反射光や散乱光を検出することで、対象物までの距離や形状を測定する装置の総称です。

LiDARセンサーのうちのLiDARは「Light Detection and Ranging」の頭文字から名づけられた名称で、「ライダー」と読みます。特に、光の検出において飛行時間を計測する場合が多く、TOF (Time-of-flight ) センサーとも呼ばれます。

また、高度な計測にはドップラー効果を活用した周波数連続変調方式も用いられ、こちらの名称はFMCW (Frequency Modulated Continuous Wave)方式です。この様に離れた場所から距離などの測定を行う技術をリモートセンシング技術といいます。

LiDARセンサーの使用用途

LiDARセンサーの現在の代表的な使用用途は、自動車の自動運転技術向けや、スマートフォン向けの画像検出技術向け等ですが、もともとは航空機のレーダーや気象観測に長年用いられて来た歴史ある技術です。

最近ではADASと並んで、自動車において障害物や周辺車両の検出など、自動運転技術を実現するための不可欠な要素となっており、小型化や低コスト化など、積極的に開発が進められています。

さらに工場において、画像処理装置と組み合わせてまた、スマートフォンのカメラなどと組み合わせて写真撮影で効果的にピントをぼかすアシストや、VR (仮想現実) ・AR (拡張現実) のための技術として利用されはじめている状況です。また、Apple製のiPhone12ProとiPhone12ProMaxにも採用されたことは、LiDARセンサーの認知度を飛躍的に高める出来事でした。

LiDARセンサーの原理

LiDARセンサーの原理は、光源であるレーザーと受光素子によって構成され、照射したレーザー光を何らかの物理的な手法で受光することで、対象物までの距離を測定することにあります。例えば、現在最も広く用いられているTOF方式では、対象物にレーザー光を照射し反射や散乱によって戻ってくるまでの時間 (飛行時間:time-of-flight,TOF) を測定し、対象物までの距離を割り出します。

レーザー光の照射の仕方として、広視野で照射する方式と特定の方向に照射しそれをスキャンするスキャン方式があります。

1. 広視野で照射する方式

広視野で照射する方式は一般的なカメラと同様に扱えるためTOFカメラとも呼ばれます。TOFカメラは一度の光照射で視野全体の情報を一度に取得可能で、光学系も極めてシンプルなため、装置としては比較的低コストです。

ただし、センサー全体をカバーするようにレーザー光を広げる必要があるため、一画素あたりの光子密度が低下してしまうのが課題で、環境光などの影響を受けやすく、測定距離も短いという短所があります。

2. スキャン方式

一方、スキャン方式はミラーを用いてレーザー光を走査します。一画素ごとに走査を行うポイントスキャン方式と、一列ごとに行うラインスキャン方式があります。前者は高精度ですが、測定時間を要すため、空間解像度が高い必要のない場合には、反対の特徴を有するラインスキャン方式が用いられます。

LiDARセンサーのその他情報

1. TOF方式とFMCW方式の違い

LiDARセンサーの検出方式には、TOF (飛行時間) 方式とFMCW (周波数連続変調) 方式の2つがありますが、大きな違いはその距離の検出方式に用いる物理量の違いです。TOF方式は対象物にパルス照射したレーザー光が反射して戻ってくる時間量を計測して距離計測を実施しますが、FMCW方式においては、周波数を変化させながら連続波を照射した際の、対象物体からの反射波のドップラー効果を利用して測長が可能です。

TOF方式の方が原理的に簡単であり、LiDARセンサーのコスト抑制ができます。ただし、物体に照射したレーザー光が、自分が出したものか、他から出されたものかの識別が困難なため、現在の自動運転技術用の本命技術とはなりにくく、より高度な計測が可能なFMCW方式が有望視されています。

FMCW方式も計測距離を制限するコヒーレンス問題やコスト低減など、自動運転に向けてのクリアすべき課題がありますが、世界の研究機関を中心にこれらの課題をクリアするための、より高度な研究開発が現在活発に行われている状況です。

2. LiDARセンサーのカメラ

LiDARセンサーとカメラは通常別々になっています。しかし、LIDERセンサーとカメラが別々のユニットだと、LiDARセンサーとカメラのデータを合成した際にわずかな視差が発生してしまい、高い精度を出すことができません。そこで、カメラとLiDARセンサーを一つにしてまとめたタイプのセンサーが登場しています。

このタイプのセンサーでは、カメラとLiDARセンサーのデータを組み合わせることで高解像度の3D画像の作成を生成することが可能です。また、視差とひずみ差のない高精度な計測が可能になるので、車載用センサーとしての利用が期待されています。

3. LiDARセンサーの需要予測

昨今、トヨタ株式会社を中心に、自動運転技術の研究開発が盛んになっており、それに伴いLiDARセンサーやレーザー業界も熱気を帯びています。

マーケット調査会社である矢野経済研究所は、2030年までにLiDARセンサーやレーザーのマーケット規模が4,959億円まで増加するという予測をしています。また、別のマーケット調査会社のヨール・デベロップメントでは、LiDARセンサーのマーケット規模は2024年までに60億$まで拡大するという予測を(2019年の調査で)発表しています。

先進国を中心にLiDARセンサーの需要は、今後ますます増加していくものと見られています。

参照元:LiDARセンサーの需要予測

参考文献
Royo et al. Appl. Sci. 2019, 9(19), 4093; https://doi.org/10.3390/app9194093
https://www.kyocera.co.jp/tech/other/lidar.html
https://jidounten-lab.com/y_lidar-toha-matome-eye
https://robotstart.info/2020/06/20/livox-tele-15.html
https://eetimes.jp/ee/articles/2004/13/news028.html
https://wired.jp/2019/07/24/lidar-cheap-make-self-driving-reality/

バッテリーマネージメント

バッテリーマネージメントとは

バッテリーマネージメントとは、電池を安全に使用するために状態を監視するシステムのことです。

電池は誤った使い方をすると、発火や感電、爆発などの大きな事故災害につながるため、バッテリーマネージメントによって、電流量・電圧量・温度・電池残量など各種パラメーターをモニターし、異常がないかを監視しています。

バッテリーマネージメントシステム (英: buttery management system, BMS) 、バッテリーマネージメントユニット (英: battery management unit, BMU) とも呼ばれ、昨今のスマートフォンでの利用や自動車のEV化の流れに伴い着目されている分野です。

バッテリーマネージメントは特に複数の電池を直列に接続した組電池モジュールの管理を行う目的で使用されますが、単一の電池を個別に管理する際はセルマネージメントと呼ばれ、区別されることがあります。

バッテリーマネージメントの使用用途

バッテリーマネージメントの使用用途は、車載用バッテリーの監視用途やスマーフォン内部のリチウムイオンバッテリーの電池監視モジュール向けなどが代表的な事例です。

数ある電池の中でもリチウムイオンバッテリーは、高効率な反面使い方を誤ると重大な事故に繋がる恐れがあります。

バッテリーマネージメントは、特にリチウムイオンバッテリーの安全性を確保し、その性能を最大限に引き出すために使用されます。最近ではスマートフォンのみならず電気自動車の需要も増えてきていることから自動車用のバッテリーを管理する用途に多く使用されています。

バッテリーマネージメントの原理

バッテリーマネージメントの原理は、内蔵する電池保護ICにて電池の特性を随時検出し、異常発生時に回路的に電池を遮断し、電池のセル間のアンバランスの抑制でのバッテリー特性改善や長寿命化に貢献する仕組みを有する点にあります。

電池保護ICは一般に4つの回路ブロックからなり、過充電・過放電・放電過電流・充電過電流などの項目を検出し、問題があれば遮断する機能を有します。

これらの項目の検出と遮断には、主にコンパレータという素子が使われます。各項目に対応した入力値は、まず電圧に変換されそれぞれのコンパレータ内部に設定された基準値と比較されます。そして、結果の大小によって各回路を遮断するかどうかの判断が行われることで電池内の電圧、放電・充電電流が上昇及び低下しすぎないように適切に制御されています。

また、複数の電池の個体差による電圧のばらつきによる実効的な電池容量の減少を回避するために、各電池電圧をモニターして均等化を行うセルバランス機能があり、この場合でもコンパレータを使用することで実現されています。

バッテリーマネージメントのその他情報

1. 電池保護形式の種類

これまでの電池保護ICはあらかじめ設定された基準値に対して、大きい・小さいなどの特性比較に伴う、いわゆるスタンドアローン形式での保護回路動作が主でした。

しかし昨今のリチウムイオン電池は、多セル状態にて様々な電子・産業機器への搭載がなされるようになってきています。アプリケーションの例として、コードレスのロボット掃除機やドローン、電動バイクやアシスト機能搭載自転車、電動パワーツールなどがあります。

このような使用用途では、従来よりもきめ細かい電池保護の制御が求められる背景もあり、スタンドアローン形式ではなく、内蔵したマイコン制御により、多セルの電池状態を管理しながら最適な保護形式をアナログ制御できめ細かく設定動作が可能な電池保護ICが登場しています。

2. EVを見据えたバッテリーマネージメントシステム

近年の自動車のEV化に伴うバッテリーマネージメントはより複雑な制御が求められています。従来の12Vの鉛蓄電池ベースの車内電装システムとは別に車のエンジンに相当する電池には数100V相当のリチウムイオンバッテリーが用いられています。

EVの場合、電池の容量が車の走行距離に、電池の効率化つまり燃費に相当する箇所が電池電圧に直結します。よって各メーカー毎に、電池セルの接続手法には工夫が施されており、そのバッテリーマネージメントシステムにも高度な技術が要求されています。

セル毎に状況が異なるEVの世界では、そのデータの精度や解析手法が自動車の走行距離や高価なバッテリーの寿命に直結するために、(スタートアップ含め)関連するメーカーは、この制御のワイヤレス化やデータ解析への機械学習(AI)の導入含め最先端の技術革新にしのぎをけすっている状況です。

参考文献
https://www.zuken.co.jp/club_Z/zz/tech-column/20190627_r012.html

電子負荷

電子負荷とは

電子負荷とは、被試験装置に接続され、負荷抵抗として機能する装置です。

従来は抵抗器を接続して被試験装置の負荷としていましたが、抵抗値を変更する都度抵抗器を差し替える作業が必要でした。電子負荷のメリットは、負荷の大きさを任意に設定できることです。

外部コントローラを利用すると、高速で負荷の設定を切り替えることも可能です。また、定電流モードとして一定の電流を被試験装置から流す機能や定電圧モードとして被試験装置の出力電圧を一定に維持する機能などがあり、様々な測定や試験に対応できます。

電子負荷の使用用途

電子負荷は、電子回路や電源装置、電池などの性能評価試験及び製品の検査に用いられます。具体的には、以下のような用途があります。

  • 電子回路における負荷のドライブ能力
  • 電源の負荷特性試験
  • 電池の充電/放電試験

また、外部コントローラによる制御が可能なため、負荷条件を目的に合わせて変更すること等、試験の自動化にも対応します。

電子負荷の機能

電子負荷は、バイポーラトランジスタFETなどで構成した増幅器を内蔵していて、そこに引き込む電流 (負荷電流) を制御するものです。特徴的な機能は以下に記します。

1. 電力の消費・変換方式

電力の消費・変換方式は、電子負荷のタイプによって異なります。

熱変換タイプの電子負荷
電子負荷内で消費される電力は、増幅器を構成する半導体素子により熱に変換されています。これは見掛け上抵抗器に電流を流した場合と同じ効果ですが、半導体素子が発熱するため、その放熱機構が必要です。

電力回生タイプの電子負荷
電子負荷内に入力された電力を、インバーターにより交流電流へと変換するものです。変換された電流は配電線網に再び戻されるので、消費電力は小さく、放熱も比較的簡単な構造で済みます。しかし、回生した電力エネルギーを電力系統に戻していることから、系統連係動作が可能な環境に限られます。

2. 電子負荷の動作モード

一般的に電子負荷は以下に示す4つのモードを備えていて、試験の目的により最適なモードを選択します。

定電流 (Constant Current) モード
このモードでは、電子負荷の入力電圧に関係なく、設定した定電流が流れるように動作します。被試験装置の出力電圧が変動した場合でも負荷電流が一定になるように電子負荷が対応しています。

定抵抗 (Constant Resister) モード
このモードでは固定抵抗のように設定された抵抗値を一定に保ちます。電源投入時直後の過渡期を除き、設定した抵抗値を維持することが特徴です。入力電圧に対して負荷電流が直線的に変化するため、電池やバッテリーの容量試験、電子機器の起動テストなどに使用されています。

定電圧 (Constant Voltage) モード
このモードでは被試験装置の出力電圧を一定値に維持します。被試験装置の出力電圧が変動すると、電子負荷は負荷電流を変化させて、出力電圧を一定に保ちます。その結果、負荷電流は変動するものの、被試験装置の出力電圧は一定になります。

燃料電池、バッテリー充電器などのテスト用として使用される場合が多いです。バッテリー充電器のテストでは、複雑なバッテリーの電圧挙動を電子負荷で再現して、試験することもできます。

定電力 (Constant Power) モード
このモードでは、電子負荷は設定された電力を消費するように働きます。まず、被試験装置の電圧を計測し、その電圧と設定された電力値から電流値を算出し、その電流を引き込みます。

電子負荷の選び方

電源装置やバッテリーなどの電力源の開発や生産において、各装置の性能試験を行う際に電子負荷は欠かせません。電子負荷装置を選定するときの注意事項を以下に記します。

1. 電力容量と耐電圧

被試験装置が電源であれば、その最大出力電力までカバーする電力容量を備えていることが原則です。また、耐電圧の規格は実際に印加される可能性のある電圧以上であることも必須条件となります。

2. 電子負荷装置が対応できる最小電圧

電子負荷は一般的に低い電圧領域での使用は困難で、電子負荷が対応できる最小電圧を、最低動作電圧と呼びます。前述の通り、電子負荷はバイポーラトランジスタやFETなどで構成した増幅器に流す電流を制御するものです。従って、その増幅器が動作する電圧を下回る場合は電子負荷が正しく動作しません。

その結果、ある電圧を境にして、それより低い電圧では電流が引き込めなくなります。即ち、電子負荷両端の電圧が最低動作電圧より低いと、動作しなくなります。

3. 周囲の温度や時間

電子負荷には、最大負荷を保証する周囲温度のスペックに注意が必要です。特に、熱変換式電子負荷では、自身の発熱により周囲温度が上昇するため、高温下での使用に制限が生じることを考慮しなければなりません。

また、最大負荷を維持できる時間が制限されている場合もあるため、事前にカタログやスペックシートの記載内容を確認しておく必要があります。

参考文献
https://www.keisoku.co.jp/pw/support/oyakudachi/dc-load/dcl-08/
https://www.toyo.co.jp/material/casestudy/detail/id=30425

デジタルマルチメーター

デジタルマルチメーターとは

デジタルマルチメーター

デジタルマルチメーターは、一般に直流電圧・交流電圧・直流電流・抵抗値など基本的な電気特性を測定する装置です。旧来の電圧計電流計及び抵抗計はメーター指針が測定値を指示するアナログ表示であったのに対し、複数の測定機能を備えかつ3桁から8桁の数値表示であることからデジタルマルチメーターと呼ばれます。また、静電用容量や交流周波数、温度など測定機能を拡張した機種も販売されています。

尚、小型軽量で、工事現場等での使用に適したコンパクトな機種は、デジタルテスターとも言われます。表示桁数は4桁程度、測定精度は直流電圧の場合0.05~0.1%、交流電圧では0.5~1%程度が一般的な性能です。実験室での精密な測定には精度が不十分ですが、屋外へ持ち出す用途では使いやすいものです。そのような使い方を想定して、落下にも耐えるよう頑丈な構造を持った機種も販売されています。

デジタルマルチメーターの使用用途

デジタルマルチメーターは、実験室における測定、工場の生産ラインにおける製品の電気調整、電気設備の工事や保守点検など、様々な場面で利用されています。

受電設備や動力制御盤に組み込まれていることが多いです。このような場合、電流・電圧・抵抗値といった基本的なパラメーターに加え、静電容量・周波数・温度などを測定する機能が組み込まれているものあります。

また、上記のように専門的な用途だけでなく、一般家庭での電子工作などに使える安価なものも販売されています。

デジタルマルチメーターの原理

デジタルマルチメーターの中枢は高精度/高分解能のA/Dコンバータと、そのデジタル出力を基に測定値を算出するプロセッサから構成されます。

1. 直流電圧測定

2つのプローブ間の電圧を増幅(微小電圧の場合)もしくは減衰(高電圧の場合)するアンプやアッテネータを通してダイナミックレンジ内の電圧に変換し、A/Dコンバータの入力電圧とします。A/Dコンバータはその入力電圧に対応するデジタル値を出力し、プロセッサはこのデジタル値とアンプのゲインやアッテネータの減衰率を基にプローブ間の電圧を算出して、表示器に直流電圧値を表示します。

2. 交流電圧測定

整流回路を通して交流電圧を直流電圧に変換してから、A/Dコンバータに入力し、以降直流電圧と同様の処理を経て、表示器に交流電圧値を表示します。

3. 抵抗測定

デジタルマルチメーターに内蔵した定電流電源から2本のプローブを介して、被測定抵抗に一定の電流を流します。この時プローブの両端に現れる直流電圧をA/Dコンバータに入力することで被測定抵抗の両端電圧が測定できます。この電圧値と定電流電源の電流値から、プロセッサが被測定抵抗の抵抗値を算出します。

4. 電流測定

直流電流の測定には、デジタルマルチメーター内の微小抵抗器に流れる被測定電流によって発生する微小抵抗器両端の電圧をA/Dコンバータに入力します。このA/Dコンバータの出力値からプロセッサで電流値を算出し、表示器にその電流値を表示します。交流電流の場合は、微小抵抗器両端の交流電圧を整流回路で直流電圧に変換し、A/Dコンバータに入力します。

5. A/Dコンバータ

デジタルマルチメーターのA/Dコンバータは非常に高精度(高分解能)、例えば7桁の表示には24bit以上、が求められるので、一般に二重積分型が採用されます。その為変換に要する時間は比較的長く、1秒間に数回測定する事が精一杯です。但し表示桁数を減らしてA/Dコンバータの変換時間を短縮することで、測定時間を短縮させることも可能です。

デジタルマルチメーターの使い方

デジタルマルチメーターの使い方は以下の通りです。

1. 電圧・電流測定

デジタルマルチメータでは、Hi端子とLo端子の2つの入力端子間に被測定系を接続します。直流電圧測定の際、Hi端子は高電圧側、Lo端子は定電圧側に接続すると、Lo端子側の電位を基準にHi端子側の電圧を表示します。直流電流測定の際、Hi端子から被測定電流が流れ込みLo端子から流れ出す場合に電流値はプラスと表示され、逆方向の場合はマイナスと表示されます。交流電圧、電流や抵抗の測定では極性を考慮する必要はありません。

2. 測定レンジの設定

最大入力定格以内の電圧、電流であれば、Autoレンジ機能により自動的に最適なレンジに切り替わるので、一般的な使い方では最適なレンジを探す作業は不要ですが、生産ラインでの調整時など測定時間の短縮が求められる場合は、予想される測定値を基に手動でレンジ設定することになります。

3. 被測定回路への影響

デジタルマルチメーターを接続することにより、被測定系に影響を与えて測定値が変動することがあります。例えば、暗い環境下で光センサーの出力電圧を測定する場合など、非常にインピーダンスが高い回路にデジタルマルチメーターを接続すると、その内部インピーダンスが測定系の負荷となり、本来の出力電圧より低い値を示すことがあります。

同様に、インピーダンスが小さい回路の電流を測定する場合は、デジタルマルチメーター内の電圧検出用微小抵抗が、被測定回路に無視できない誤差を発生させることがあります。従って、デジタルマルチメーターが被測定回路に与える影響を考慮した上で、使用の可否を判断して下さい。

4. 低抵抗測定

抵抗の測定において4端子測定が可能なデジタルマルチメーターがあります。特に低抵抗値の計測において、プローブと被測定抵抗器との接触抵抗が誤差の原因となる場合に、4端子測定は極めて有効な手法です。4端子と云われる通り、一対の端子の定電流電源と、一対の端子の電圧計から構成されるもので、被測定抵抗器の両端に定電流電源を接続して定電流を流します。

電圧計は定電流端子の内側、抵抗器側のポイント、にプローブをあてて抵抗器の両端電圧を測定します。この測定電圧と定電流値から抵抗値を算出します。定電流端子の接触抵抗は電圧の測定値に影響しないこと、電圧計のプローブの接触抵抗は電圧計の内部抵抗10MΩに対して無視できるレベルであることから、低抵抗を正確に測定できます。

 参考文献

https://jeea.or.jp/course/contents/12145/

https://www.elprocus.com/multimeter-types-and-applications/

光マルチメータ

光マルチメーターとは

光マルチメーター (英: Optical multimeter) とは、光を利用した測定器です。

さまざまな光の特性を測定するための機能が組み込まれています。光損失テスタ・光ロステスタ・光ロステストセットなどと呼ばれることもあります。

光の強度を測定する光パワーメーター、光ファイバーの信号がどれくらい損失されるかを測定のための、ロステスタ・リターンロステスタの機能を持っていることが理由で呼ばれるようになりました。また、光源としてレーザーを搭載しているものもあり、安定光源としても利用することができます。

光マルチメーターの使用用途

光マルチメータは、電気回路において光を利用した測定器であり、主に電流や電圧を測定するために使用されます。高周波電流や高電圧測定にも適しており、多くの工業分野で広く使用されているだけでなく、高速で信頼度の高い測定ができることから、医療現場などでも使用されています。

1. 電子回路のテスト

光マルチメータを使用することで、回路内部の電圧や電流、抵抗、容量などを測定し、回路の動作状態を確認することができます。また、光マルチメータは、高速な測定が可能なため、高速な回路の動作確認にも適しています。

2. 温度測定

光マルチメータは、表面から放射される赤外線を検出して、温度分布を画像化する熱イメージングや非接触温度測定にも使用されます。例えば、建築物の断熱性能の評価や、電気機器の過熱の検出などです。

測定対象の表面温度によって、赤外線や近赤外線が放射されます。この放射された光を光マルチメータで検出することで、測定対象の温度を非接触で測定可能です。

3. 医療

皮膚や目の病気の診断や治療に利用されます。特に、眼科医が緑内障などの病気の診断や治療に光マルチメータを使用することがあります。

また、近赤外線光を使用して、脳の活動を非侵襲的に画像化する脳の機能イメージングを行う技術も開発されている状況です。これにより、脳神経科学や臨床医学の分野での応用が期待されています。

光マルチメーターの原理

光マルチメータは、電気回路において光を利用した測定器であり、信号と光源の原理は以下の通りです。

1. 信号の原理

光マルチメータのは、光ファイバーを使用して光を送受信します。光ファイバーは非常に細いガラス繊維でできており、送信側で発生させた光が、光ファイバーを介して受信側に送信されます。

受信側の光センサーは光を受け取って、信号に変換しますが、この信号は回路の電気パラメータとして読み取られます。非常に高い精度で測定できることができる他、電気回路において電気ノイズの影響を受けにくく信頼性が高い測定が可能です。

2. 光源の原理

光マルチメータの光源は、主に発光ダイオードまたはレーザーダイオードが使用されます。これらの光源は、低消費電力であり、非常に高い明るさを発することから、光マルチメータに適しています。

送信された光は、測定対象の回路に入射し、回路内部で反射、屈折、散乱などが起こります。これらの光は、再度光ファイバーを介して受信部に戻り、フォトダイオードなどの光センサーによって光信号に変換され、測定値として表示されます。

このように、光ファイバーを使用することによって、非接触で精度の高い測定が可能です。また、光ファイバーは、電気信号よりも信号の遅延が少ないため、高速な測定にも適しています。

光マルチメータの特徴

非接触で測定ができるため、安全性や信頼性が高く、計測対象に損傷を与えることがないという特徴があります。一方で、測定対象の表面温度を測定するため、内部温度や部品の劣化状態などは測定できません。

使用する環境によっては、測定精度に影響を与える可能性があるため、測定前には測定対象や測定条件を正確に把握し、注意深く測定することが重要です。

基板外観検査装置

基板外観検査装置とは基板外観検査装置

基板外観検査装置とは、プリント基板などの基板への実装部品の良否、不具合を調べる装置です。

この装置では、実装部品の位置ずれ・断線・ショート・クラック・部品浮き・はんだ付けなどに問題がないかを調べています。電子基板の検査には正しく動作するかという機能試験の他に、各電子部品が正しい位置に欠陥なく装着されているかを検査する、基板外観検査 (基板検査・実装検査) があります。

電子基板検査はAOI (Automated Optical Inspection) と呼ばれており、基板外観検査によって問題がなければ、実際に設計通りに動作するのかという機能検査です。この機能検査ではファンクションテスタが使用されます。

基板外観検査装置の使用用途

基板外観検査装置は、様々な装置に搭載される基板のチェックに使用されています。基板に実装された部品の位置のずれや断線、部品浮きおよびはんだ付け不良などのチェックを実施し、下記のような欠陥を発見することが可能です。

1. 部品の欠陥

  • 部品未実装
    部品の実装位置が正しくない状態
  • 部品の位置ずれ
    パッドから部品が外れてしまい、間違えた位置に実装されている状態
  • 部品の浮き
    部品片側のみがはんだ付けがされた状態で、他方が立ち上がってしまっている状態

2. はんだの欠陥

  • 断線
    はんだがついていない状態
  • ショート
    はんだの量が多すぎて、隣接したパッドにも付着している状態
  • ボイド
    はんだ付けの際に、気泡によりできる不具合
  • 濡れ不良
    はんだがきれいに付いているが電気的接触が不完全な状態
  • はんだボール
    はんだのボール状の塊ができる状態
  • ブリッジ
    隣接したICピン間にはんだがつながっている状態
  • クラック
    はんだ表面に割れがある状態
  • イモハンダ
    はんだがうまく接合できず、はんだがイモのようにデコボコになっている状態

なお、基板外観検査によって問題がなければ、実際に設計通りに動作するのかという機能検査が行われ、機能検査にはファンクションテスタが使用されます。

このような基板外観検査装置は、電子基板の回路の集積化が進み、小さく集積された基板では人間の目視によるチェックが困難となってきたことから導入が増えています。また、省力化・省人化などによるコストダウンや生産性アップ、人的ミスを減らしての品質価値を高めることもメリットです。

基板外観検査装置の原理

1. 基板外観検査装置の構成

基板外観検査装置においては、人間と同様に外観を見る「目」の機能を果たす装置と、良し悪しを判断する「頭脳」の機能を果たす装置が最低限必要な構成です。これにより、人間の目視によっておこなっていたチェックを代わりに実施します。

したがって、基板外観検査装置は目となるカメラと頭脳となる画像処理ソフトウェアを搭載したコンピューターによって構成されています。

2. 基板外観検査装置の判定方法

基板外観検査装置で最も検出されるはんだ付け不良の判定方法を説明します。基板外観検査装置において、はんだ付けの良し悪しは、基板接着面境界と電子部品接着面との境界を結ぶ直線距離を閾値として、はんだ部分の長さがこれを超えるか否かによって判断されます。

つまり、ソフトウェアの判断は、はんだ部分が閾値以上の長さであれば、はんだが基板と電子部品間を電通可能な状態でつないでいる良であり、閾値未満であれば不良です。部品の形状など、電子基板によって閾値が変わるため、画像処理ソフトウェアにはあらゆる閾値データを入力しておく必要があります。

近年では、複数のカメラを用い三次元撮影する、X線カメラで透過画像を撮影する、レーザーの反射光データを得るなどして、二次元の通常のカメラだけでは検出できない欠陥の検出を可能としています。例えば、三次元撮影をおこなうと、はんだ部分の高さや面積および体積などを計測できるため、はんだ量や大きさおよびフィレット形状などの測定ができます。

このような自動化された光学的手段による基板外観検査は、AOIと呼ばれています。AOIとは「Automated Optical Inspection」の略で、和訳すると自動光学検査です。

基板外観検査装置のその他の情報

人間による基板外観試験の問題点

これまで、基板の外観試験は人間の目視によりおこなわれていました。しかし、人間によるチェックでは、検査員の経験や主観によって合格・不合格の基準が異なる場合がありました。また、検査項目が増えるとそれに伴なって人員も増やす必要があるため人件費の増加にもつながっていました。

さらには、工場でライン生産される電子基板の生産数は膨大で、目視による検査では処理能力に限界があり生産数に追い付きません。このため、生産効率の向上が難しいという課題もあります。そこで、基板外観検査装置を導入して人の力で実施していた検査を自動化し、生産効率の向上とコスト削減を達成しています。

注目の基板外観検査装置

PR 3Dハイブリッド光学外観検査装置 YRi-V

基板外観検査装置

ヤマハ発動機株式会社

超高速、高精度な3D検査を実現した光学外観検査装置

詳細をみる

YRi-Vは、2次元検査、3次元検査、4方向アングル画像検査を1台に搭載した3Dハイブリッド光学外観検査装置です。

高速・高解像度のカメラを搭載した新開発の検査ヘッドや8方向プロジェクター、高性能GPUなどの採用により、56.8cm2/sec(当社最適条件時)の圧倒的な検査スピードを実現するとともに、超高分解能 5μmレンズや同軸照明の採用により狭隣接の極小部品や、これまで難しかった鏡面部品の傷・割れ・欠けなどの検査能力を高めるなど、従来からの利便性や機能性をさらに拡大しつつ、検査性能を大幅に向上させています。

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自動化・省人化ソフトウェアソリューション

■新設計GUIの採用
先進的なデザインと見やすさを両立した、新操作画面デザインを採用。GERBER変換、CAM変換(ODB++)、CAD変換(ASCII変換)に対応し、マウンタ部品データからの簡単変換が可能。お客様の活用データから事前の検査データ作成が容易に。

■モバイル判定 & QAオプション
不良画像を無線LAN経由で、オペレータのモバイル端末に送信し、良否の判定が可能。ラインオペレータが兼務することで、省人化をサポート。

■自動検査データ作成
CAD、CAM、各種マウンターデータ等、あらゆるデータから検査データへのダイレクト変換に対応。ガーバデータからも基板画像を自動生成。DIP基板もスルーホールを自動検出し、検査データの自動作成が可能。

■部品ライブラリ自動マッチング 【AI機能】
カメラで撮像した画像から、AIが部品種を自動的に特定し、最適な部品ライブラリを自動的に適用。検査データ作成の簡易化に貢献。

ヤマハ検査装置ラインナップはこちら

参考文献
https://www.keyence.co.jp/

ファンクションテスタ

ファンクションテスタとは

ファンクションテスタとは、電子基板が実際に正しく動作するかの機能 (ファンクション) 検査を行うテスト装置です。

あらゆる装置の電子制御は、電子基板を組み込むことで達成されています。安全かつ正しく装置が動作するかは、まず電子基板に欠陥がないかを検査することによって確認されます。

電子基板の検査には基板外観検査 (AOI) とインサーキット検査 (ICT) 、および機能検査 (FCT) があり、基板外観検査は板検査・実装検査とも呼ばれます。

基板外観検査には、基板の配線に欠陥がないかどうかや基板上の部品が適切に組み込まれているかをカメラなどの外観で検査する基板外観検査装置が使われます。機能検査は、一般に基板外観検査後に行われ、実際に電子基板が正しく動作するかを検査します。ファンクションテスタはこれらの機能検査を行う際に使用されます。

ファンクションテスタの使用用途

ファンクションテスタの使用用途ですが、電子基板が所望の機能通りに動作するかどうかの機能チェックする用途のために用いられます。

内容は機能検査したい電子基板に入力 (英: input) 信号を送ったときに期待される出力 (英: output) 信号や電子部品の動作が実施されるかを確認するために使われます。

電子基板ごとに期待されるファンクションは当然異なるので、意図する検査が可能なファンクションテスタを選定することが非常に重要です。

例えば、電源基板であればスイッチを入れたときに、期待されている電圧や電流が流れるかということや、LED点灯検査であれば入力電流に応じて対応したLEDがどの程度の出力で点灯するかといったことがテストされます。近年では、様々な種類の基板に対応した非常に汎用性の高いファンクションテスタも出てきています。

ファンクションテスタの原理

ファンクションテスタの原理は、所望の機能 (ファンクション) 通りに電子基板が動作するかどうかを検査するために、電子基板に電源を供給し必要な電気的な入力信号を印加することで、出力端子信号や、搭載されている電子部品の挙動が意図したものかどうか確認することにあります。

機能検査では、検査したい基板をファンクションテスタに取り付けて実際に動作するかを確認します。入力信号はFPGAなどで生成されたテストパターンを用い、マイコンなどのIC動作を行うことも多いです。

電子基板を動作させるために、実際の動作電流を流して、出力波形を確認します。もし基板にはんだ付け不良などがあると基板内がショートして基板そのものが破損する恐れがあります。そのため、ファンクションテスタによる機能検査の前に基板外観検査を入念に行い、基板配線不具合や部品実装不良がないかを確認することが重要です。

ファンクションテスタは、あくまで基板が実際に動作を出力できるかどうかをテストするものであり、各部品の電気的な特性 (抵抗値やダイオード特性など) を細かく検査することとは区別されます。この場合はインサーキット検査 (ICT) と言い動作電流よりも遥かに微弱な電流を通電させることによって行われます。

ファンクションテスタのその他情報

1.インサーキット検査との違い

インサーキット検査は意図する部品が正しく実装されているかどうかをチェックするのが主な目的です。

例えばチップ部品の実装時に半田断線が発生していないかどうかや、ダイオードの極性 (向き) やICの1ピンに相当する箇所が正しく搭載されているかどうか、チップ抵抗の抵抗値は正しいかなどです。

ベースは部品の端子にプローブピンを接触させて電気的に評価する検査につき、例えばBGAのような内部に端子が存在するICパッケージや基板の内層のブラインドVIAの接続といった箇所は評価できません。

これに対して、ファンクションテストは、機能不全品は基本的に除去可能ですので、こちらがより重視され、汎用性の高いファンクションテスタにはインサーキット検査を行う機能が組み込まれているものが多くあります。

2. 実際のファンクションテスト項目事例

実際のファンクションテスト項目事例には、出力回路の電流値や電圧波形、LED点灯やスイッチ動作、マイコン動作をFPGAからのパターンにて確認、コネクタの断線などのチェックといったような項目があげられます。

昨今の電子基板の機能は、スマートフォンなどの電子通信機器や自動車での高度な電子制御用途に代表されるように非常に複雑な構成になっており、市販のままのテスタがそのまま使える事例はむしろ少なく、カスタム要求対応のものが増加しています。基板に合わせた周辺回路やフィクスチャー、場合によっては電磁シールドBOX (電波暗箱) などもセットで取り扱うメーカーもあります。

 参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/3-07-01.html
http://protec5461.co.jp/protec/?p=3143

信号発生器

信号発生器とは

信号発生器

信号発生器 (英: Signal generator) とは、様々な電気的な信号波形を生成する装置のことです。

発生させた信号は、あらゆる装置においてテスト用の信号として利用されます。生成できる信号は、無線通信のデジタル変調含めた高周波 (RF) の標準信号やオーディオ信号をはじめ、パルス波を生成するものまで多岐にわたります。

信号発生器の使用用途

信号発生器は、試験対象装置や通信用高周波部品などのDUTの実施試験の前に疑似的な信号を用いてシミュレーションや実測評価を進め、デバッグ調整を行う目的で使用されます。

信号発生器はあくまで基準となるテスト用の信号波形を生成する機能を有しているため、測定用途に用いる装置ではありません。この点はオシロスコープデジタルマルチメータースペクトラムアナライザなどの、対象となる物理量を評価するための測定装置とは異なります。

信号発生器の原理

信号発生器のおける波形信号の生成は、現在ではデジタル信号を入力することでアナログ信号に変換しています。実際にはデジタル直接合成発振器(DDS)というデジタル回路がこの操作を行っています。

DDSは位相アキュムレータと波形ROM、D/Aコンバータで構成されており、さらに位相アキュムレータはラッチと加算器により成り立っています。クロックに同期して周波数設定値Nを積算していくと、Nに比例した速度でデジタル化された三角波が生成されます。このデータから波形ROMのアドレスを指定して出力された波形をD/Aコンバータでアナログ変換し、低周波数フィルタに通すとスムースなアナログ波形を得ることが可能です。

一般に、波形ROMに格納されている波形は正弦波なため、出力される波形は正弦波になります。ここで逆フーリエ変換の基本的な考え方に立ち返って、任意の波形は正弦波の合成で生成することができるということを念頭に置くと、こうして生成した擬似的な正弦波を組み合わせることで、信号発生器は基本的にはあらゆる波形を生成することができます。

信号発生器の種類

信号発生器の種類は様々ですが、代表的なものとして下記の2つが挙げられます。

1. ファンクションジェネレータ

高い汎用性を持った信号発生器の一つが、ファンクションジェネレータです。信号発生器の中でも、デジタル技術の発展により一つの信号発生器で任意の波形を生成できるものが開発されています。

ファンクションジェネレータを用いると、あらゆる信号を擬似的に生成できるので、試験対象装置の実地試験の前に疑似信号を用いてシミュレーションを行いデバッグや調整を行うことが可能です。また、高周波 (RF) のデジタル変調波形生成用の信号発生器は、スペクトラムアナライザやパワーメーター等とともに、RFの電子部品の特性評価用に広く使用されています。

2. RFデジタル変調波形生成用信号発生器

信号発生器には5GやWifi信号等の複雑な変調波形を生成する高周波 (RF) のデジタル変調波形生成用の信号発生器もあります。ベクトル標準信号発生器 (デジタル標準信号発生器) と呼ばれるこの計測器は、I/Q変調器を内蔵しています。

そのため、1024QAMやQPSK等のI/Q変調方式へのアップコンバートが可能です。この信号発生器はIQベースバンドジェネレーターと組み合わせることで、通信システムがサポートする情報帯域幅内の大半の信号をエミュレートして出力できます。

信号発生器のその他情報

1. 信号発生器の使い方

信号発生器は、電圧電流計やシグナルアナライザ、パワーメーター等と共に電子回路の測定器の中心的存在です。昨今は複雑な変調なデジタルシステムに対してもPC内の専用のソフトウエア上のアプリケーションと併用することで、簡易に任意の信号を発生可能な測定環境を計測器メーカーが用意サポートしてくれています。

また複雑な最新のデジタルシステム対応のみならず、電子、電気回路の入門者向けに手軽に信号生成可能な測定器のキットが市販されています。こちらは、最新の複雑な信号を扱うわけでもないので、ネット通販などで非常にお手頃な価格で購入可能です。

この信号生成用キットは、電子、電気回路の入門者においても基本的な正弦波、三角波、パルス波形等の信号をその動作周波数と共に任意に調整出力可能であり、ちょっとした電子回路の実験検証には、非常に役立つ機器になっています。

2. 信号波形の回路シミュレータへの取り込み

昨今、一部の測定器ベンダーにおいては、この実際の信号波形を回路シミュレーションにそのまま取り込めるEDA環境も構築されており、RFやアナログ・デジタル回路設計者にとっては、非常に頼もしい存在になっています。

例えば一例として、RFの非線形動作がデジタル変調信号波形の歪に与える影響については、かつては実測で変調波形を入力しての出力波形評価、ないしはIMD(相互変調歪)などの挙動で代替検証し、回路設計へフィードバックするのが通例でした。

しかし現在では、実際の変調信号波形そのものをRFアナログ回路やフロントエンドモジュールに回路シミュレーター上で取り入れることができ、EVM(変調精度)といった通信システム上の特性を、回路設計的に、シミュレーター上にて検討可能になっています。

参考文献
https://www.electronics-notes.com/articles/test-methods/signal-generators/what-is-a-signal-generator.php
https://ekuippmagazine.com/measuring/function-generator/
https://www.electronicdesign.com/technologies/test-measurement/article/21801200/the-fundamentals-of-signal-generation
https://download.tek.com/document/76Z-16672-4.pdf

光スペクトラムアナライザ

光スペクトラムアナライザとは

光スペクトラムアナライザ

光スペクトラムアナライザ (英語: Optical spectrum analyzer) とは、この光スペクトルを測定するための分光装置です。

光スペクトルとは、横軸に波長・縦軸に光強度をプロットした、波長ごとの強度分布を指します。同様の装置に光波長計がありますが、光スペクラムアナライザには、測定値を補正する機能や、波長をスキャンするためのミラーが搭載されています。

光波長計よりも光学系は複雑になりがちですが、多機能で汎用性が高いのが特徴です。そのため、装置の価格は比較的高額になります。

光スペクトラムアナライザは、光ネット通信やフォトカプラなどの光半導体の開発で利用されています。その他、光を使った分析や水分量測定、膜厚測定、医薬や生物等のバイオや化学を始めとした全ての光関連部品分野に応用されています。

光スペクトラムアナライザの使用用途

光スペクトラムアナライザは、主に光学系の性能評価に利用されています。特にレーザー光源やLED光源は産業・医療応用・情報通信・学術研究に至るまで、非常に幅広く応用されており、その波長特性を調べることは非常に重要です。

光スペクトラムアナライザの使用用途の一例は下記の通りです。

  • レーザーやLEDをはじめとする単色光源や水銀・キセノンランプなどの白色光源の波長特性の評価
  • 光学部品の波長依存的な反射率・透過率の評価
  • 光波長多重通信のなど、光ファイバー通信におけるクオリティチェック

光スペクトラムアナライザの原理

光スペクトラムアナライザの原理は、分光方式によって以下の分散型と干渉型の二種に大別されます。

1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ

分散分光方式は、分光素子を用いて波長成分を空間的に分解し,波長ごとの強度を測定する方法です。

分光素子には、プリズムや回折格子が用いられます。分光器は、その他にコリメートと呼ばれる鏡とレンズ、集光用のカメラやレンズで構成されています。

プリズムの場合は、波長による屈折率の違いを利用して分光します。プリズムに入射した光は波長に依存して異なる屈折角で射出されます。これによって測定したい光の波長成分を空間的に分解することが可能です。

回折格子の場合は、波長による回折角の違いを利用して分光します。回折格子に光が入射すると、回折条件を満たした角度で波長ごとに異なる角度で出射します。

2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ

干渉分光法は、測定したい光を干渉させ、その干渉パターンからスペクトルを測定する方法です。

測定したい光を干渉させるために、ビームスプリッタを用いた二光束干渉方式と、対向させた高反射ミラーを用いる多光束干渉方式があります。二光束干渉方式では、二光束の光路長を変化させ、干渉光強度の変化 (インターフェログラム) を測定し、これを逆フーリエ変換することでスペクトルを算出できます。

多光束干渉方式では、測定したい光を多重反射させると共振した波長成分だけを取り出すことが可能です。ミラーの間隔を変えれば共振する光の波長も変わるため、これを繰り返すことでスペクトルの測定が可能となります。

波長毎に分離した光の強度を検出する分散分光方式に比べると、ダイナミックレンジの性能が劣りますが、高波長確度が得られます。

光スペクトラムアナライザのその他情報

光スペクトラムアナライザの性能

光スペクトラムアナライザの性能を表す最も重要なものとして、波長分解能が挙げられます。波長分解能は、光スペクトルの分解できる波長幅の限界を指す言葉です。

1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ
分散分光方式の場合、波長分解能は使用している回折格子の種類や光路の距離、スリット幅などに依存します。そのため、波長分解能が高い装置の場合、大型の装置になります。

また、検出する際に光が通るスリットの幅を狭くすると分解能が高くなりますが、検出する強度も下がるため、必要な分解能幅を考慮して光学系を調整することが大切です。カメラに冷却装置がついているものを使用している場合は、暗電流等のバックグラウンドを下げて測定することが可能になります。

2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ
干渉分光方式の場合、光路長を変化させる際のステップ幅によって波長分解能が決まります。そのため、高い波長分解能を求める場合、より多くのステップで測定する必要があるため、測定時間がより長くなります。

参考文献
https://www.rp-photonics.com/optical_spectrum_analyzers.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf
https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/products/ms9740b
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf