絶縁抵抗計とは
絶縁抵抗計とは、絶縁状態を診断するための装置です。系統の電圧に合わせてDC1,000V程度の高電圧を印可できる絶縁抵抗計も販売されています。
電気を使う機器にとって、機器が絶縁されていることは大変重要です。絶縁状態が悪化すると、漏電火災や感電事故の発生原因となります。上記事故を未然に防ぐため、定期的に絶縁抵抗計で絶縁性能を評価する必要があります。
絶縁抵抗計の使用用途
絶縁抵抗計は絶縁能力を数値化するために使われます。一般家庭で見ることはまずありません。
生産現場では、電気製品の出荷工場における最終試験などに使用されます。また、電気設備の保守担当者は、多くの場合保守用の測定器として所持しています。
抵抗値の測定には電圧の印加を行いますが、系統電圧に応じて印加電圧が異なります。例えば、電話回線の絶縁測定は25~50Vの電圧を印加する絶縁抵抗計が用いられ、家電製品にはDC125Vが使用されます。高圧配電線路や発電所などではDC1,000Vの印可電圧が使用されます。
絶縁抵抗計の原理
絶縁抵抗計は、配線端子、スイッチ、直流電源、電流計、電流保護素子などで構成されます。
配線端子は、アース端子とライン端子と呼ばれる2つの端子が使用されます。アース端子は接地し、ライン端子は測定部分に接続して測定します。
スイッチを押すことで、直流電源で作られた直流電圧を印加します。大地へ流れる微少電流を漏れ電流と呼びますが、電流計で電圧印加時の漏れ電流を測定して絶縁抵抗を求めています。
高圧電圧を印加するため、回路に過電流が流れないように電流保護素子でインピーダンスを高めます。電流保護素子によって、絶縁抵抗計の内部インピーダンスは非常に高く設計されています。
絶縁抵抗値は、高いほど絶縁性能が高いことを示しています。絶縁破壊が起こると、絶縁抵抗値は極端に低くなります。
絶縁抵抗計のその他情報
1. 絶縁抵抗計を使用する目的
絶縁抵抗計は、工場や家庭などに施工されている電路や電気部品などの絶縁状態を測定するための機器です。
絶縁不良の原因は、電路の施工不良、充電部と非充電部の絶縁不良、経年劣化、内部配線の劣化、使用部品のショートによる破損、筐体の破損などが考えられます。これらをそのまま放置しておけば、漏電火災や感電死傷事故へとつながり、大変危険です。
こういったトラブルを防ぐため、「漏電ブレーカーが落ちる」「操作中に感電した」という現象が現れたら、すぐに電源系統を遮断し、絶縁抵抗測定を行います。
2. 測定方法
絶縁抵抗計の測定方法は、以下の手順で実施します。
- 絶縁抵抗計のアース端子を接地された金属箇所(可能であれば接地極と接続された端子)に接続する。
- 系統電圧に合わせて、つまみで印可電圧を選択する。
- ライン端子を、アース端子とは別の接地された箇所へ押し当て、測定ボタンを押す。
- 0.00MΩ表示となる事を確認する。(ゼロチェック)
- 測定ボタンから手を離し、ライン端子を測定箇所へ押し付ける。
- 測定ボタンを押し、絶縁抵抗を確認する。
電路長が長いと電荷が溜まるまで時間がかかるため、絶縁抵抗表示が安定しないことがあります。その場合は、表示が安定するまで電圧を印可し続けます。
また、DC1,000Vなどの高電圧を印可した際は、残留電荷が多く溜まります。電路を素手で触ると感電する危険性があるため、放電処置を確実に実施する必要があります。
電気設備技術基準では、電圧系統区分における絶縁抵抗値が定められています。測定結果を判断する基準とします。
- 対地電圧150V以下→絶縁抵抗値0.1MΩ以上
- 対地電圧150V以上300V以下→絶縁抵抗値0.2MΩ以上
- 対地電圧300V以上の低圧電路→絶縁抵抗値0.4MΩ以上
実際に絶縁不良が発生した場合、電路や電気機器をうまく切り分けて測定することが劣化箇所の早期発見に繋がります。絶縁不良箇所の早期発見は、電気設備保全担当者の腕の見せ所と言えるでしょう。
参考文献
https://www.kew-ltd.co.jp/support/knowledge/technical/insulation
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=43