ボールネジ

ボールネジとは

ボールネジ

ボールネジ(英語:ball screw)は、回転運動を直線運動に変換して部材の位置を移動させるための送りねじの一形式です。ねじ軸とナットがボールを介して作動します。ねじ軸とナットが相対回転すると、ボールが転動しながら無限循環します。ねじとナットとの間の摺動抵抗が、従来の台形ねじに比べて格段に小さいのが特徴です。

ねじやボールの精度等級により精密な運動ができるため、高い位置決め精度が得られます。自動車のステアリング装置や精密工作機械などに使われます。

ボールネジの使用用途

ボールネジはモータ等の回転運動を直線運動に変換する機械要素です。主な用途として製品・部品の搬送、半導体製造装置、産業用ロボット、工作機械などの搬送・位置決めがあります。ボールネジが1回転することによる移動量(リード)を精密に再現することができるため、ステッピングモーターと組合わせることで高い位置決め精度を実現することができます。

JISでは、ボールネジの精度等級を6種類に分けています。C0、C1、C3、C5の4等級を精密ボールねじ、C7、C10の2等級を一般ボールねじと規定しています。精度に応じて、物品の搬送と位置決めに使用するボールネジを選定します。

NC制御の工作機械では、送り機構を構成し精密位置決め精度を得るためにボールネジが使用されます。また、食品機械、医療機器、ロボット、及び射出成形機、印刷機器、アミューズメント機器などのほか、自動車、列車や航空機、半導体製造装置、検査装置にもボールネジが使われます。

ボールネジの原理

ボールネジの原理

図1. ボールネジの原理

ボールネジは、ねじ軸、ナット、ボールなどから構成される機械要素部品であり、回転運動を直線運動に、または直線運動を回転運動に変換します。ねじ軸とナットの間にボールを入れて軽く転動させることができるトライボロジー技術を用いた部品です。ねじ面の滑り接触運動を転がり接触運動に変えます。ボールは無限循環する必要があるため、循環部品が必要です。

循環方式には、リターンチューブ式、エンドデフレクタ式、エンドキャップ式、及びこま式、リターンプレート式などがあり、大きさ・精度により使用用途が分かれています。ボールネジの使用に当たっては、ナットをガイドするガイドレールが必要です。ガイドレールは、ナットにかかる軸方向荷重以外の垂直荷重やモーメント荷重を受け持ちます。

ねじ軸は、ナット1回転の移動量であるリードの長さとねじ条数とを組み合わせて、高い精度で移動ができるようにしています。ボールに与圧をかけて、ナットのバックラッシュを無くし、ねじ軸やナットの回転にむらがなく高い位置決め精度を得ることができます。

ボールネジのその他情報

1. ボールネジの特徴

ボールネジは、機械の回転運動を直進運動に変換できる特徴があります。また、逆に直進運動を回転運動に変換することも可能です。ねじ軸を回転駆動するトルクを通常のねじと比べると、1/3以下にすることができます。したがって、ボールネジを駆動するモータの小形・軽量化ができます。

起動摩擦トルクと運動摩擦トルクの差が小さく、またスティック・スリップ現象が回避できるので、高精度に機械を制御できます。ナットを2個使うか、または予め大きな直径のボールを使うかによってナットに予圧をかけることができます。バックラッシュをなくし、剛性が高められるので、制御性が良くなります。

ボールネジの摩耗寿命と転がり疲れ寿命は、計算によって予測できるので、運転の信頼性を高められます。ねじとナットの間の接触面における摩擦係数は、すべりねじで0.1~0.2程度であるのに対して、ボールネジでは0.002~0.004程度です。したがって、伝達効率が高く90%以上あります。

寸法や精度は国際的に標準化され、専用工場で量産されているため使い易く、コストも有利です。一方で、ボールネジは衝撃に弱い短所があります。摺動部が点接触であるために、衝撃が与えられると打痕などが残りやすいと言えます。また、摺動部に異物が入ると不具合や故障の原因になることがあります。工作機械のスライド軸として使用する場合は、切粉の混入が危惧されるため、カバー等をつける必要があります。

2. ボールネジの製造法

ボールネジは作り方の違いによって、「転造」と「研削」に分けられます。

転造ボールネジ
丸棒材を回転させながら転造ダイスと呼ばれる工具に押し当てて、塑性変形させることでねじ溝を成形する方法です。研削と比較すると精度等級は低い傾向にあります。

研削ボールネジ
ねじ研削盤と呼ばれる工作機械を用いて、ねじ溝を研削によって成形する方法です。熱処理後に円筒研削を行うため、転造のものよりも面がなめらかになっているのが特徴です。精密機器用の小型工作機械のスライド軸など、高精度な機械制御を要求される場合に使用されます。

参考文献
https://www.kss-superdrive.co.jp/jp/pdf/qa/Q-BS-01.pdf
https://www.kuroda-precision.co.jp/technical-information/bs/bs019.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td03/a0011.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/c1382.html

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