監修: OKIサーキットテクノロジー株式会社
プリント基板とは
プリント基板は、電気工作には必要不可欠な部品です。
絶縁体(プラスチック)の表面上の主に銅の配線パターンにトランジスタや抵抗等の部品を配置して、はんだ付けを行い、電子回路を製作する事が可能になります。ほぼ全ての電子機器 (TV PC スマートホン 家電 )にプリント基板は使われており、機器に内蔵された電子回路はプリント基板によって作動しています。
日本では1936年頃に世界に先駆けて特許が取得され、技術開発が進みました。そのため、1990年頃は、日本が生産額では、世界一でした。近年では、中国 アジアに電子機器の生産がシフトしており、中国、アジアで大量に生産されています。
プリント基板の使用用途
プリント基板は、電子工作はもちろんのこと、パソコンやテレビ、電気機器の配線基板として利用されています。
こうした特に精密な電気機器のプリント基板には基板自体にすでに必要な回路パターンが形成されており、部品を載せるだけで、電子回路が完成します。さらにより高密度に対応するため、1枚の板の中に何層もの回路を重ねた、多層基板もあり、PC、マートホン等の電子機器に使われております。
また、用途に応じて多くの種類の材料があり、何百種類もの品種があります。一般には、堅い材料が主ですが、近年 スマートホン等のモバイル用途では、柔らかいフレキ基板が多数使われており、柔軟性のある材料(フィルム)の使用が増えております。
プリント基板の製造方法
プリント基板は、絶縁性の板に小さな穴を開けて、その穴に銅などでメッキを行います。(スルホール、ビアホールと呼びます。)小さな穴に電子部品と電線をはんだ付けし電気が流れるようにすることで、回路を組むことができます。多層基板の場合、スルホール、ビアホールを通じて、中の信号が他の層と接続しております。
プリント基板には片面、両面、多層基板があり、多層になるほど回路をたくさん組むことができるので省スペース化が可能になります。
使用される材料
プリント基板の基材は、家電(冷蔵庫 洗濯機)では、紙にフェノール樹脂を含浸させた紙フェノール基板が主力です。ただ 反りが出てしまったりするので、強度は高くありません。PC、スマートホン、自動車、測定装置等の信頼性が必要とされるものは、ガラスエポキシ基板(ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させ物)
また、放熱性が要求される所では、放熱性の良いアルミ基板を使用する事もあります。昨今は、自動車のEV化に伴い、大電流化が進んでおりますので、需要がでてきております。
また、薄いポリイミドやポリエステルのフィルムを基板とするフレキシブル基板も登場しました。フレキシブル基板は機械的強度が弱い反面、柔軟性があり折り曲げることができます。こうした基板の材料には、難燃性(火がついても燃えにくい)が求められています。そのため、ハロゲン系の物質が使われており、環境のためにハロゲンフリーを要求するお客様もおり、その対応が求められています。
近年では、回路のパターン形成方法も自動化されており、小型化 高密度化に対応した製品の開発が進んでいます。
プリント基板の構造
プリント基板は目的により数種類あり、それぞれ構造・材質などが違います。
片面基板
パターン面にだけ銅箔がある基板のこと。比較的簡単なパターンのみ実現ができます。プリント基板の製造コストが一番安く、自作のプリント基板にはもっとも使われているタイプです。
両面基板
プリント基板の表裏両面に銅箔がある基板のこと。表と裏でパターンを描き分けることができ、片面基板よりも複雑なパターンが実現できます。少し高度になりますが、自作も可能です。表裏のパターンのずれに注意してください。また、ベタアースパターン基板はスルホールも必要です。
多層基板
両面基板では実現できない複雑なパターン(コンピューターボードなど)や基板の大きさの制約でパターンを重ねる必要がある場合(携帯電話、携帯オーディオ機器など)などで使われます。~8層までの多層基板が使われています。大量生産が要求される基板の場合は、月産数十万枚など製造する場合は1台 何億円という装置を組み合わせて、製造する必要があり、設備産業となっています。
プリント基板の材料
プリント基板の材質は以下のように数種類あり、それぞれ性質が異なります。目的に合致するものを選択してください。
紙フェノール基板
基材に紙を使い、接着樹脂はフェノール樹脂です。ベーク基板、ベークライトとも呼ばれます。古くから使用されています。安価で加工性が高いですが、基板が反りやすく、耐熱性、吸湿性が悪いです。また、絶縁抵抗、高周波特性が悪く、スルホールを形成できません。
紙エポキシ基板
基材に紙を使い、エポキシ樹脂を接着樹脂とした基板です。紙フェノール基板とガラスエポキシ基板の中間的な特性です。片面基板として作られています。紙フェノール基板に比べて耐熱性、吸湿性、電気特性に優れているが、ガラスエポキシ基板には劣ります。
ガラスエポキシ基板
ガラス繊維にエポキシ樹脂を含ませて製造したプリント基板です。現在最も多用されており、多層基板はほとんどがガラスエポキシ基板です。0.2mmの薄物から電力機器用、マザーボードなどの2.4mmまでの板厚など、幅広く使用されています。寸法変化が小さく、耐久性に優れています。併せて電気特性、機械特性が良好です。但し加工性が悪く、専用の工具が必要です。コストは高くなりますが機能性は向上します。
このようにプリント基板には、色々な種類があり、色々な材料を使用します。プリント基板の種類により、設計ルールも、大幅に異なりますので、お困りの時は、専門のメーカーに問い合わせてみてください。
本記事はプリント基板を製造・販売するOKIサーキットテクノロジー株式会社様に監修を頂きました。
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