DCリアクトル

DCリアクトルとは

インダクタンスデバイスでもあるリアクトルの中で、DCリアクトルとはインバータのコンバータの後の平滑回路にリアクタンス挿入する目的で用いられるコイルを言います。ちなみに同じインバータ用途での交流(AC)回路向けの場合はACリアクトルと呼びます。

具体的には力率改善や高調波抑制の目的で用いられる場合が多く、例えば、電源容量が数KVから数100KVと大きく、インバータ容量の10倍以上の場合などに、メーカー側から設置するよう推奨されています。

DCリアクトルの使用用途

DCリアクトルは、前述のごとく力率改善と高調波抑制の他に、電源ラインのインピーダンス確保用途にも用いられ、電源ライン用途は別名でチョークコイル等とも呼ばれています。
DCリアクトルはACリアクトルと併用されることも多く、この場合には更なる高調波の抑制効果を期待することができます。

実際の商品では、昨今空調設備やモーターなどで、広範囲にインバータ回路が使用されていますが、特に大電流用途には必須であると言えます。なお交流から直流へのコンバータ回路で生じるリップルの平滑用途の意味合いもあります。

DCリアクトルの原理

インバータ回路内では、通常負荷位相の調整のため、一般に進相コンデンサ(SC)という、位相調整素子を挿入します。このコンデンサは、力率改善に効果は高いのですが、高調波成分を増大させてしまう副作用があり、回路の高調波インピーダンスの調整のためにリアクタンス素子が必要であり、そのためDC/ACリアクトルは用いられています。

この高調波抑制は商用電源の品質を維持するために必要です。よって特定需要家で用いられるインバータはすべて「特定需要家の高調波抑制対策ガイドライン」の適用対象となっています。ちなみに特定需要家とはガイドラインの適用対象となる特別高圧(7KVを超える電圧)および高圧(交流では0.6 KVから7KV以下の電圧)で受電する需要家のことであり、ほとんどの事業所やビルが該当しています。

ちなみにリアクトルの構造は巻き線のコイルですが、油入自冷式や、鉄芯を用いたものなど、いろいろな種類が存在します。

水封式真空ポンプ

水封式真空ポンプとは水封式真空ポンプ

水封式真空ポンプとはポンプのケーシング内に封水と呼ばれる水を入れて内部でインペラ(羽根車)を回転させることによって吸排気を行い、真空状態を生み出す回転式ポンプです。

真空を形成するためにはインペラとケーシングとの空間容積が変化する必要があり、この容積変化をインペラの取り付け位置を中心からずらすことで発生させるエルモ型(偏心型)と、ケーシングの形状を楕円にすることによって発生させるナッシュ型(対称型)が知られています。

ナッシュ型はエルモ型と比較して同一容量であれば形態を小さくすることが可能ですが、生み出される圧力はエルモ型の方が優れているため、現在の真空ポンプにはエルモ型が多く用いられています。

水封式真空ポンプの使用用途

一般的に真空ポンプの使用用途は容器内の気体を排出することによって真空を生み出すことですが、水封式真空ポンプは特に水分の混入した気体の吸引に多く用いられています。これは真空状態の生成の為にすでにポンプ内に封水が用いられていることから、吸排気に水分があってもポンプに影響を与えないためです。また系中の封水がシール材の役目を果たすことから、引火性や腐食性の気体が含まれる条件でも使用することができます。一方で他の真空ポンプと比較して到達真空度が低いとされていましたが、二段式構造の製品ではある程度高真空での使用が可能となっています。

このような特徴から水封式真空ポンプの具体的な使用箇所としては、ターボ型ポンプの呼び水、復水器用真空ポンプ、押し出し機用真空ポンプや液体を使用する工業用途全般等が挙げられます。

水封式真空ポンプの原理

水封式真空ポンプはその名称の通り、封入された水をインペラで回転させることによってリング状とすることで、インペラとケーシング間の容積を変化させ、真空状態を生み出しています。水封式真空ポンプは容積ポンプの一種とされ、すなわち封水は気体を押し出すピストンの役割として働いていると見なすことができます。また封水がリング状に液膜を形成することにより、ポンプ内部がシールされることによって気体のリークをほぼ皆無に抑えることが可能です。

このように水封式真空ポンプはポンプ内の封水が重要な役割を果たしており、封水の状態、特に温度を適切に管理する必要があります。封水はガス圧縮を行うケーシング内に封入されていることから、運転の継続によって温度が上昇し、それによる到達真空度の低下、ガス排気量の低下などが発生してしまいます。この封水温度を保持するための方法としては一般的に、常に封水を交換し続けるように冷却水を流す方法や、循環して封水を再利用する方法、熱交換器を用いて封水を冷却する方法などが知られています。

ガスタイトシリンジ

ガスタイトシリンジとはガスタイトシリンジ

一般的なガスタイトシリンジ

図1. 一般的なガスタイトシリンジ

ガスタイトシリンジとは、液体のみならずガスの取り扱いも可能となっている、気密性を有したシリンジです。

一般的な微量計量用ガラスシリンジ (マイクロシリンジ) と基本的な構造は同様ですが、プランジャ先端のPTFEチップなどにより、気密性が向上しています。ガスタイトシリンジは、通常、シリンジ (外筒) 部分とプランジャー部分がセットで販売されています。

多くの製品はシリンジ部分がガラス製ですが、プランジャー (押子) 部分は容量や用途によってガラス、金属、樹脂ライニングなどの様々な材質があります。用いる試料の状態によって適切な素材を選定することが必要です。

ガスタイトシリンジの使用用途

ガスタイトシリンジは、実験室における一般的な試料の取り扱いの他、分析などにおける定量計量用途に広く用いられています。

自動希釈装置、自動分注装置や、HPLCなどのマニュアルサンプラー/オートサンプラにおける試料溶液の取り扱いが可能です。また、気体の取り扱いが可能という特徴を利用して、GCMSなど気体分析における試料の取り扱いや、土壌汚染対策法に基づく土壌ガス検査にも使用されます。

ガスタイトシリンジの原理

ガスタイトシリンジのプランジャー

図2. ガスタイトシリンジのプランジャー

ガスタイトシリンジは、外筒・プランジャー・針で構成されている点は通常のマイクロシリンジと同じですが、プランジャー先端にPTFEチップが装着されており、通常のマイクロシリンジより気密性が高くなっています。この特徴によって、気体を取り扱うことが可能です。

PTFE (テトラフルオロエチレン) は、フッ素樹脂の一つであり、耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性、摺動性に優れています。融点は327℃と非常に強く、ほとんどの薬品、溶剤にも安定です。

取り扱い上の注意点は、以下の点が挙げられます。

  • 乾燥状態でのプランジャポンピングは行わないこと。
  • 内部洗浄は水や溶剤の吸排出によって行うこ。と
  • 乾燥は風乾で行い60℃以上に熱しないこと。

これらは、ガスタイトシリンジが定量計量用のガラス器具に相当するためです。

ガスタイトシリンジの種類

ガスタイトシリンジの種類は、容量や形状等の観点から分類することができます。

1. ガスタイトシリンジの容量

ガスタイトシリンジは通常のマイクロシリンジと同じ程度の小容量 (数μL~数百μL) の製品が一般的ですが、大きいものの中には最大で100mL程度の容量の製品もあります。厳密な容量を計量し、注入することができます。

2. 針の取付部の形状

針取付部の形状

図3. 針取付部の形状

ガスタイトシリンジには、シリンジに針が固定されている固定針型と交換針型があります。固定針型は、安価で汎用的です。一方、交換針型は、汚れの多いサンプルや塩などが析出しやすい場合のサンプリングに適しています。また、用途によって形状 (針外径/長さ、針先形状) の異なる針に変更して使用することができます。

交換針型はさらに以下の2種類に分類されます。

  • ルアーロック式
    針を取り付ける部分がネジ状になっており、針が抜け落ちないようにロック機構で固定することができます。一定の耐圧性を呈します。
  • ルアーチップ式
    先端がテーパ状となっており、注射針を差し込んで使用します。針の着脱はより容易です。ただし、針の押し込みのみで接続されているため耐圧性は比較的低くなります。

3. その他

ガスタイトシリンジの中には、各部品を分解してオートクレーブ処理を行うことが可能な製品もあります。生化学分野などで生物試料を扱う際に最適です。尚、オートクレーブ処理を行う場合には、110℃設定で約20分間の処理が一般的です。

また、メーカーによっては、マニュアルシリンジとは別で、オートサンプラー/機器専用シリンジ製品を販売している場合もあります。用途に応じて選択することが望ましいでしょう。

ガスタイトシリンジは前述の通り、プランジャーにPTFEチップが装着されていますが、PTFEチップに加えてプランジャー全体がPTFEコーティングされた製品もあります。このような製品は、腐食性試料にも使用可能です。また、各種製品に対して交換用のプランジャーも販売されています。

イヤーシリンジ

イヤーシリンジとは

イヤーシリンジ

シリンジとは注射筒のことで、イヤーシリンジとは文字通り耳に使用する注射筒です。
一般的なイヤーシリンジは、中空の球体と噴出口が一体化した形状の器具で、スポイトのように手動で握り圧縮して球体中の液体を排出し、また、圧縮状態から解放することで液体を吸引する機能があります。イヤーシリンジはポリ塩化ビニルやシリコンなど、耳腔を傷つけない柔軟な材質で作られています。

イヤーシリンジは医療器具であり、使用後に廃棄する場合は医療機関や行政が定める規則に従う必要があります。

イヤーシリンジの使用用途

イヤーシリンジは、主に耳鼻咽喉科で使用される医療用の器具で、外耳から膿を吸引し、また、耳腔に洗浄液を噴出して耳の洗浄を行うなどの用途に使われます。

イヤーシリンジは、耳以外にも、鼻汁・唾液・外傷部全般の膿などの吸引や鼻腔の洗浄などに使用されます。

イヤーシリンジは、医療機関だけでなく一般的に購入が可能なので、家庭で耳腔洗浄に使用する事例もあります。湿型耳垢の多い欧米では家庭でイヤーシリンジを使用する事例は多く見受けられますが、乾型の多い日本では症例されていません。 

イヤーシリンジの特徴

イヤーシリンジは、ポリ塩化ビニル製またはシリコン製の、中空の球体と先端に噴出口がある円錐とが一体化したスポイト上の医療器具です。容量は60mlが一般的ですが、30ml、90mlのものもあります。

イヤーシリンジは耳腔・鼻腔に直接挿入して使用します。ポリ塩化ビニルに対しアレルギーを持つ人に対しては、シリコン製のイヤーシリンジを使用するとよいでしょう。

イヤーシリンジを使って膿・鼻汁・唾液などの吸引を行うときは、球体部分を手で押しつぶした状態で耳腔・鼻腔などの使用箇所へ円錐部分を挿入し、球体部にかかる力を少しずつ緩め、球体部の復元力によって液体を吸引します。

また、洗浄液を用いて耳腔・鼻腔を洗浄する場合は、液体の吸引と同じ要領で洗浄液を吸引した後、噴出口を洗浄部位に向け、もう一度球体部分を握って圧縮して目的部位の洗浄を行います。

イヤーシリンジは、酸化エチレンガス(EOG)滅菌と呼ばれる低温滅菌を施された状態で出荷されます。使用後に再滅菌すること、再使用することは禁止されています。

ディスポシリンジ

ディスポシリンジとは

ディスポシリンジ

ディスポシリンジとは、ディスポーザブルシリンジの略称であり、一般的にはポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂製の使い捨てシリンジのことです。

シリンジは本来、注射器を構成する部品のうち、筒の部分を指します。それに対して、ディスポシリンジは通常、針以外の注射器全体が一体の製品として使用・販売されています。

ディスポシリンジの使用用途

ディスポシリンジの主な用途は、医療における注射や薬物の計量、実験や分析において液体の計量、注入などです。また、液体だけではなく、気体の抜き取りや密閉容器の加圧などに用いられることもあります。

ディスポシリンジは使い捨てとして用いられるため、不純物や異物の混入 (コンタミネーション) の恐れが低いことが特徴です。そのため、特に医療用途や化学実験用途で重宝されています。

ディスポシリンジの原理

ディスポシリンジはシリンジ (筒の部分) と可動部であるプランジャ (押子) 、プランジャが動作するときに気密性を確保するガスケット部分で構成されています。プランジャが前後することで内容積を変化させ、気体や液体を吸引・吐出できるようになっています。

ガスケットは気密性を高めるため、ゴムなど軟質のものを用いる場合が多いです。

ディスポシリンジの選び方

1. 材質

ディスポシリンジのシリンジ部分とプランジャ部分は樹脂製である場合がほとんどですが、内容物に接液するガスケット部分には気密性確保のために、ゴム素材を用いることが一般的です。ゴムは成分の溶出が多い素材として知られているため、使用目的を考慮し、ゴム素材の使用が適切かを検討する必要があります。

最近では、ガスケットにゴム素材を使用しないオールプラスチックの製品も存在しています。プラスチック製品についても、一般的なポリプロピレンのほか、化学実験用にはフッ素樹脂を用いたものもあります。

このように、材質は多様な使用となっており、選定時には材質が使用目的にあったものであるか確認することが大切です。

2. 先端の形状 (フィッティング)

先端の形状は、ルアースリップ型とルアーロック型の2種類が代表的です。

ルアースリップ型
ルアースリップ型は先端がテーパ状となっており、注射針をまっすぐ差し込んで使用します。ル注射針を付け替えて使用する場合や、先端にチューブなどを接続して用いる場合に使用される場合が多いです。

ルアーロック型
ルアーロック型は先端にロック機構がついており、注射針をねじ込むことでしっかりと固定することが可能です。注射針が外れることで危険が及ぶような有害液体の計量時などに使用されます。

 

そのほかの形状として、浣腸や膀胱洗浄の用具との接続に用いられる浣腸式、カテーテルに接続する際に用いられるカテーテルチップ型などがあります。

3. 筒先位置

筒先位置は、主に中口と横口の2種類があります。

中口
中口は筒先がシリンジ中心から伸びている形状であり、主に小容量の製品に広く使用されます。

横口
横口は筒先がシリンジの円周部付近から伸びており、容量が大きな製品に主に使用されています。これは、大容量のシリンジでも針の取り回しが容易であり、注射時に角度をつける必要がないことと、太いシリンジの空気抜きは円周部の1箇所に空気を集めたほうが行いやすいことが理由です。

4. 滅菌の有無

医療用として販売されているディスポシリンジは、注射や採血に用いられることが前提であり、滅菌された状態で販売されています。

研究用・実験用のディスポシリンジは、仕様により滅菌されていないものもあるため、目的に応じて選択する必要があります。

ディスポシリンジのその他情報

有機溶剤の計量

有機溶剤などを計量する際は、樹脂が変質する可能性があるため、事前に耐溶媒性の確認が必要です。また、シリンジの樹脂成分や樹脂の可塑剤の成分が溶出する可能性があります。

そのため、樹脂を使うことで使用目的が妨げられないかの事前検討をすることが好ましいです。これらの理由で、有機溶剤の計量を行うときは、事前の検討が必要です。有機溶剤の種類によっては、ガラス製のシリンジ (ディスポーザブルでない) を用いらなければなりません。

零相リアクトル

零相リアクトルとは

零相リアクトルは、インバータの周辺機器として使われるリアクトルの一種です。

リアクトルは電線をコイル状に巻いた構造をしており、インバータの入力側または出力側に設置することで、高周波電流の阻止やノイズの低減などの効果を発揮します。

一般的なリアクトルがチョークコイルなどのように電線を単独で巻いているのに対し、零相リアクトルは三相の電線を極性と巻き数が等しくなるように巻いたリアクトルです。零相リアクトルは、インバータを稼働した際に発生するノイズを低減します。

零相リアクトルの使用用途

零相リアクトルは、インバータの入力側・出力側に設置して、インバータから発生するノイズが周辺機器に与える影響を低減するために使われます。

インバータは、家庭用のエアコン・冷蔵庫・炊飯器や、産業用のモーター・ポンプ、エレベータ、医療電子機器など、さまざまな分野で使われており、インバータの周辺機器である零相リアクトルも幅広く使用されています。

零相リアクトルは、数MHzまでの周波数帯のノイズ抑制に効果があるため、ラジオ・テレビへの電波障害の低減、計測器・センサーの誤作動防止などの目的で使用されます。

零相リアクトルの原理

零相リアクトルは、三相の電線を極性・巻き数を同等にしてまいた構造をしています。零相リアクトルはリング形状をしており、インバータの入力側または出力側の電線をリングに巻きつけるか、またはリングの中を貫通させて使用します。

インバータを動作させると電線に交流電流が流れ、零相リアクトルのリング内に円周方向の磁束が発生します。交流電流の変化に応じて磁束も変化し、電線に電流の変化を妨げる方向の逆起電力が発生します。この逆起電力の効果で、放射ノイズの原因である零相電流が低減します。

零相リアクトルは、インバータの入力側・出力側どちらにも設置できます。インバータの入力・出力タイプには単相と三相がありますが、三相インバータに零相リアクトルを設置するときは、各相を一括で貫通させるか、同一方向に巻きつける必要があります。巻きつける回数が多いとノイズ低減の効果も高くなります。

電線をリングに貫通させて使用する場合は、複数の零相リアクトルを並べて貫通させます。このとき、零相リアクトルの数と、巻きつけて使用する場合の巻きつける回数が同じであるなら、ノイズ対策効果は等しくなります。

パルスアイソレータ

パルスアイソレータとは

パルスアイソレータとは入力と出力を持つ装置であり、パルス信号の変換と分配を行う装置を示します。
パルスアイソレータは入力側に接続した機器から受けたパルス信号を内部で波形整形を行います。波形したパルス信号を出力側に接続した機器に出力する機器になります。

パルスアイソレータの内部では入力側と出力側が絶縁されているため、入力側の電位と出力側の電位が異なる場合でも問題なく使用することができます。また、入力側に発生したノイズ等の影響は出力側に伝わることはありません。

産業機器や計測機器などの計測結果を別のデータ処理用装置に入力する場合、信号レベルやデューティーなどが異なると直接入力することができません。

この場合、信号の仕様を整合させて機器間に信号を受け渡す装置がパルスアイソレータになります。
また、パルスアイソレータの機能として測定したデータを複数の機器に入力する場合などに、信号分配器としての機能を持ちます。

パルスアイソレータの使用用途

パルスアイソレータの使用用途としては、モーターの回転を検出するエンコーダ流量計電力量計カウンタ近接スイッチなどパルス出力する計測器のパルス信号を別の装置であるPLC(Programmable Logic Controller)や表示装置などに入力する場合、入力したパルスを出力先の装置に合わせたパルス信号に変換して出力します。

パルスアイソレータに入力された信号をPLCや表示装置の2系統に入力させるため分割して出力する役割もあります。そして、パルスアイソレータの内部は絶縁されているため、入力側と出力側の電位が異なる場合でも問題なく使用できます。また、入力側に発生したノイズなどを出力側に伝えないアイソレート(絶縁)する役割があります。

このように入力側の回路と出力側の回路を電気的に絶縁する場合などには非常に有効な機器になります。
例えば、回路的に絶縁されていることにより入力側が故障などで破損し異常電流などが発生した場合でも、出力側の回路や機器には影響がなく、保護されます。

パルスアイソレータの特徴

パルスアイソレータの特徴は電気仕様の異なる信号の接続と信号を分配することが目的の装置であり、多くの信号変換機能があります。このためパルスアイソレータは機器内部の設定により入力仕様、出力仕様を任意に変更できます。この結果、多様なパルス信号を変換して接続することが可能になります。

まず、パルスアイソレータの機能としてレベルの異なるロジック信号の変換、伝達を行うことができます。
信号伝達を行う場合、入出力の信号レベルを適合させなければなりません。この機能は入力信号レベルが不足している場合に有効です。例として入力信号が3Vのロジック信号を5Vのロジック信号に変換して出力することが可能です。

次にパルスアイソレータの入力側に接続する装置の出力仕様が電圧出力やオープンコレクタ、またはラインドライバの場合、パルスアイソレータの設定を変えることで入力可能になります。

同様に、パルスアイソレータの出力側に接続する装置の入力仕様が電圧出力やオープンコレクタ、またはラインドライバの場合、パルスアイソレータの設定を変えることで出力可能になります。

このようにパルスアイソレータは入出力仕様を組み合わせることで多くの信号変換を行うことが可能になります。
また、機種によりますが入力側の信号がゼロクロス信号(0Vで極性が反転する信号)を受けて一般的なロジック信号に変換する機能を持つパルスアイソレータもあります。

このようにパルスアイソレータを使用することにより信号レベルの異なる機器を接続することが可能になります。
パルスアイソレータを選択する場合には電源仕様や扱えるパルス信号の仕様などに制限がありますので注意が必要です。

誘電エラストマ

誘電エラストマとは

誘電エラストマとは、素材が高い電界を印加した際に大きな歪を発生して形状が変化するエラストマです。

エラストマは「弾性がある」 (英: elastic) と「重合体」 (英: polymer) の組み合わせの造語です。弾性がある重合体を意味し、代表例にはゴムが挙げられます。

誘電エラストマは、電気的エネルギーを機械的な運動エネルギーに変換するエラストマです。一般的に誘電率が高くて素材は比較的柔らかい必要があり、特徴的な機能を活用した実用化の研究開発が進められています。

誘電エラストマの使用用途

誘電エラストマは、研究開発段階です。将来の適用応用事例には、人工筋肉に代表される各種アクチュエーターが挙げられます。

現在実用化されているアクチュエーターの多くは変換効率に限界があるサーボモーター式や油圧式が中心です。環境問題を考慮した脱炭素化社会の実現を目指し、省エネルギーな新技術を適用したアクチュエーターが産業界で要望されています。

誘電エラストマはエネルギー変換効率が高いため、小型かつ省エネルギー動作可能なアクチュエーターへの応用が期待されています。圧電素子とは異なり、なだらかな形状変化でも電気的なエネルギーに変換可能な発電機能 (エナジーハーベスト) や素材の形状変化に伴う直線的な静電容量変化を応用したセンサー機能も、使用用途として着目されています。

誘電エラストマの原理

比較的誘電率の高いエラストマ素材の上下に伸び縮みが可能な電極を塗布し、高電圧を印加します。上下2つの電極で挟まれた誘電体構造はコンデンサであり、クーロン力により伸縮圧力がエラストマに加わります。電圧の2乗に比誘電率を掛けて、電極間距離の2乗で割った値がエラストマに加わる圧力です。

誘電エラストマの構造

誘電エラストマに加わる圧力は比較的大きいです。エラストマの材料が大きな歪に耐えるために柔らかく伸縮しやすい素材が必要であり、アクリル系素材やシリコン系素材が多く使われています。

コンデンサのクーロン力を運動エネルギー源に用いるため、電極はエラストマの形状伸縮の変化によらず、絶えずエラストマと接触する必要があります。よって電極材料の候補は金属や黒鉛の粉末、またはグラファイトとシリコーンオイルの混合物などです。

誘電性エラストマによる電場駆動ではわずかな電流しか流れず、ほとんど熱損失がありません。駆動電場は高く、エネルギー変換効率が高いです。絶縁破壊強度が高いエラストマ素材が必要であり、活発な研究開発がされています。

誘電エラストマの種類

誘電エラストマアクチュエーターは2枚の電極に挟まれたエラストマ膜で構成されています。高電圧を電極へ加えると電極間の静電引力でエラストマ膜は厚さ方向に縮んで平面方向に広がります。電気的に変形を制御でき、デバイスやロボットなどの動作に応用可能です。

1. 額内面型アクチュエーター

電極2つを誘電性エラストマでコーティングしたアクチュエーターです。

2. 円筒アクチュエーター

エラストマフィルムをコーティングして円筒に巻き付けたアクチュエーターで、弁やマイクロロボットに用いられます。電圧を加えると軸方向に力が生じて伸張します。圧縮バネに巻き付けて使用でき、コアなしでも利用可能です。

3. ダイヤフラムアクチュエーター

ダイヤフラムの膜がアクチュエーターとして機能します。平面的に作られ、z軸方向に力が加わります。

4. シェル型アクチュエーター

エラストマフィルムの特定の位置に電極を複数取り付けたアクチュエーターで、水や空気を介して車両を推進できます。電圧を印加するとエラストマフィルムが複雑な三次元構造を形成します。

5. 積層アクチュエーター

積層した面型アクチュエーターで、力や変形が大きいです。

6. 厚みアクチュエーター

z軸方向に変位や力が加わるアクチュエーターです。z軸方向の変位を増やすために平坦な膜が積層されています。

デバイスサーバ

デバイスサーバとは

デバイスサーバとは、ネットワークに接続できないデバイスをシリアルインターフェースやUSBポートを使用してネットワークに接続できるようにする機器です。

現在でも多く使用されているシリアル (RS-232C) やUSBポートに接続したデバイスは、通信方式が異なるため直接ネットワークに接続できません。このようなデバイスをネットワークに接続するには、デバイスサーバで通信方式の変換を行う必要があります。

デバイスをデバイスサーバを介してネットワークに接続できると、複数のパソコンから使用可能になります。

デバイスサーバの使用用途

デバイスサーバは、ネットワークに接続できないシリアルインターフェースやUSBポートを持つデバイスをネットワークに接続するために使用します。例えば、旧型のプリンターやスキャナー等はネットワーク接続できない機種がありますが、デバイスサーバを使用すればネットワーク化が可能です。

ネットワーク化することによって、複数のパソコンから使用できるようになります。また、作業場所にキーボードとマウスを設置して、離れた場所にあるパソコン本体を操作することも可能です。ネットワーク化していないUSB機器は、接続するパソコンの近くに設置する必要があります。

このようなUSB機器をデバイスサーバでネットワーク化して、設置場所やケーブル長の制限をなくします。さらに、ローカルネットワークだけではなくインターネット経由でネットワークを確立できるデバイスサーバもあります。インターネット経由でデバイスサーバを使用すれば、大規模なシステムの構築が可能です。

デバイスサーバの原理

デバイスサーバは、イーサネットポートがない旧型のシリアルデバイスを、イーサネットインターフェースに接続できるように通信方式を変換します。

この変換モードには、以下の3つがあります。

1. リアルCOMモード

ホストコンピュータに仮想ローカルCOMポートを作り、ホストとシリアルデバイスのコネクションを設定します。これをデバイスサーバに対するシリアルポートとして、データの転送、シリアルポートのライン信号が操作などを可能にする仕組みです。

2. ソケットモード

「ソケット」と呼ばれる標準APIを利用して、ドライバをインストールしなくてもTCP/IPネットワーク上にあるシリアルデバイスサーバにアクセスが可能になります。

3. ポート共有モード

デバイスサーバの設定で、2台以上のホストコンピュータが1台のデバイスサーバ上にあるポートへアクセスを共有できるようにする仕組みです。また、複数のホストが同じシリアルデバイスからのデータを受信できるようにします。

デバイスサーバの種類

デバイスサーバは、USBポートやシリアルインターフェースを持つデバイスをネットワークに接続させる目的により使用するデバイスサーバの種類が異なります。

1. 組込用デバイスサーバ

組込用デバイスサーバは、機器内に組込んで使用する非常に小型のデバイスサーバです。組込用デバイスサーバは最低限の機能しかありませんが、小型の機器などを簡単にネットワークに接続することが可能になります。

2. シリアルデバイスサーバ

工業用に利用されることが多いシリアル通信インターフェースを持つ装置を、簡単にネットワーク接続することが可能です。また、さまざまなアプリケーションでデバイス同士が通信を行い、データを収集したりデバイスを制御できるようになります。

3. USBデバイスサーバ

小規模なネットワークで使用する場合、スキャナー、WEBカメラ、USBメモリなど、USBインターフェースを持つデバイスを全てネットワークに接続させ、複数のパソコンで共有を可能にします。

また、高速インターネット通信「ギガビットイーサネット」に対応しているUSBデバイスサーバであれば、高速通信が可能です。USBオーディオやWEBカメラのような通信データ量が多く、データ転送に遅延が許されないようなシステムに適しています。

4. インターネット経由デバイスサーバ

インターネット経由で接続する機能を持つデバイスサーバを使用すれば、遠隔監視や管理するシステムの構築が可能になります。従来このようなシステムを導入するためには費用的な問題がありましたが、デバイスサーバを使用すれば専用回線など使用しないため、安価で導入することが可能です。

バキュームパッド

バキュームパッドとはバキュームパッド

バキュームパッドは、搬送システムに置いて直接ワーク(搬送品)に触れて吸着する部品です。

真空イジェクターを用いてパッド内を真空に近い圧力にし、その力を利用してワークを吸着させる構造になっています。真空パッド、吸着パッドとも呼ばれます。

バキュームパッドはさまざまな材質や形状のワークに直接触れる部品なので、ワークの種類、搬送環境、要求される保持力・耐久力などに応じて、多様なサイズ・形状・材質のバキュームパッドがあります。適切なバキュームパッドを選定することで生産効率が向上し、コストが削減されるケースもあり、バキュームパッドは非常に重要な部品といえます。

バキュームパッドの使用用途

バキュームパッドは、製造現場や物流現場などの搬送システムで使用されます。

バキュームパッドを使って搬送するワークには、自動車の車体プレス鋼板・ホットスタンピング鍛造鋼板・板ガラス・プラスチック・半導体・段ボール箱・ブリスターパック・薄フィルム・食品・木材などがあり、幅広い産業分野で使用されています。

バキュームパッドは、鋼材などの重いワークには高い保磁力、ホットスタンピング熱間鍛造やガラスの製造現場では耐熱性、半導体製造現場ではESD耐性など、使用環境によって多様な特性が要求されます。

バキュームパッドの特徴

真空イジェクターによってバキュームパッド内を真空に近い状態にすると、パッドとワークの間の圧力が周囲の大気圧よりも低くなり、その差圧と吸着面積に比例した吸着力が発生します。

バキュームパッドの形状には平形・長円形・ベローズ形の3種類あります。

平形は表面が平面状のワークに使われます。平形パッドは保持力が高いことが特徴ですが、さらに保持力を高めるため吸着面に溝のあるパッドもあります。長円形は基板など細長いワークやパイプなど吸着可能な面積が小さいワークなどに使え、短時間でワークを吸着できることが特徴です。ベローズ形は高さ方向にバラつきのあるワークに使われ、高さの補正ができるという特徴があります。

バキュームパッドの材質としては、ニトリルゴム・ポリウレタンゴム・シリコンゴム・フッ素ゴムなどがあります。

ニトリルゴムは耐油性が高いため、油膜を張った車体向け薄鋼板などの搬送に適しています。また、半導体製造工場など静電気を嫌う現場では導電性ニトリルゴムや導電性シリコンゴム、薬品搬送用には耐薬品性の高いフッ素ゴム、重量のあるワークには強度の高いポリウレタンゴムなどそれぞれの材質に適したワーク・搬送環境があります。