誘電エラストマ

誘電エラストマとは

誘電エラストマとは、素材が高い電界を印加した際に大きな歪を発生して形状が変化するエラストマです。

エラストマは「弾性がある」 (英: elastic) と「重合体」 (英: polymer) の組み合わせの造語です。弾性がある重合体を意味し、代表例にはゴムが挙げられます。

誘電エラストマは、電気的エネルギーを機械的な運動エネルギーに変換するエラストマです。一般的に誘電率が高くて素材は比較的柔らかい必要があり、特徴的な機能を活用した実用化の研究開発が進められています。

誘電エラストマの使用用途

誘電エラストマは、研究開発段階です。将来の適用応用事例には、人工筋肉に代表される各種アクチュエーターが挙げられます。

現在実用化されているアクチュエーターの多くは変換効率に限界があるサーボモーター式や油圧式が中心です。環境問題を考慮した脱炭素化社会の実現を目指し、省エネルギーな新技術を適用したアクチュエーターが産業界で要望されています。

誘電エラストマはエネルギー変換効率が高いため、小型かつ省エネルギー動作可能なアクチュエーターへの応用が期待されています。圧電素子とは異なり、なだらかな形状変化でも電気的なエネルギーに変換可能な発電機能 (エナジーハーベスト) や素材の形状変化に伴う直線的な静電容量変化を応用したセンサー機能も、使用用途として着目されています。

誘電エラストマの原理

比較的誘電率の高いエラストマ素材の上下に伸び縮みが可能な電極を塗布し、高電圧を印加します。上下2つの電極で挟まれた誘電体構造はコンデンサであり、クーロン力により伸縮圧力がエラストマに加わります。電圧の2乗に比誘電率を掛けて、電極間距離の2乗で割った値がエラストマに加わる圧力です。

誘電エラストマの構造

誘電エラストマに加わる圧力は比較的大きいです。エラストマの材料が大きな歪に耐えるために柔らかく伸縮しやすい素材が必要であり、アクリル系素材やシリコン系素材が多く使われています。

コンデンサのクーロン力を運動エネルギー源に用いるため、電極はエラストマの形状伸縮の変化によらず、絶えずエラストマと接触する必要があります。よって電極材料の候補は金属や黒鉛の粉末、またはグラファイトとシリコーンオイルの混合物などです。

誘電性エラストマによる電場駆動ではわずかな電流しか流れず、ほとんど熱損失がありません。駆動電場は高く、エネルギー変換効率が高いです。絶縁破壊強度が高いエラストマ素材が必要であり、活発な研究開発がされています。

誘電エラストマの種類

誘電エラストマアクチュエーターは2枚の電極に挟まれたエラストマ膜で構成されています。高電圧を電極へ加えると電極間の静電引力でエラストマ膜は厚さ方向に縮んで平面方向に広がります。電気的に変形を制御でき、デバイスやロボットなどの動作に応用可能です。

1. 額内面型アクチュエーター

電極2つを誘電性エラストマでコーティングしたアクチュエーターです。

2. 円筒アクチュエーター

エラストマフィルムをコーティングして円筒に巻き付けたアクチュエーターで、弁やマイクロロボットに用いられます。電圧を加えると軸方向に力が生じて伸張します。圧縮バネに巻き付けて使用でき、コアなしでも利用可能です。

3. ダイヤフラムアクチュエーター

ダイヤフラムの膜がアクチュエーターとして機能します。平面的に作られ、z軸方向に力が加わります。

4. シェル型アクチュエーター

エラストマフィルムの特定の位置に電極を複数取り付けたアクチュエーターで、水や空気を介して車両を推進できます。電圧を印加するとエラストマフィルムが複雑な三次元構造を形成します。

5. 積層アクチュエーター

積層した面型アクチュエーターで、力や変形が大きいです。

6. 厚みアクチュエーター

z軸方向に変位や力が加わるアクチュエーターです。z軸方向の変位を増やすために平坦な膜が積層されています。

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