マイラーフィルム

マイラーフィルムとは

マイラーフィルムは、高分子材料であるポリエチレンテレフタレート (Polyethylene terephthalate: PET) を素材としたプラスティックのフィルムです。

マイラーフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を二軸延伸加工して製造されています。ポリエチレンテレフタレートよりなるため、耐薬品性や耐水性に優れ、機械的変形に対する強度も高く、絶縁性を備えています。

また透明性も高く、常温では伸縮が殆どないこともあり、主に設計・製図用フィルムとして使用されています。

マイラーフィルムの使用用途

マイラーフィルムは、設計・製図用フィルムとして主に使用されています。これは、マイラーフィルムが、耐薬品性および耐水性に優れており、引っ張り強度や曲げに対する強度が高いためです。

すなわち、マイラーフィルムは、水濡れや薬品等による損傷および破れや裂けなどが少ないフィルムとなります。さらに、温度変化による伸縮も少なく、常温では伸縮が殆どありません。これらの特性から、描かれた図面にずれや変形が生じないため、信頼度の高い設計・製図用フィルムとして利用されています。

特に、インクジェットプロッター向けのマイラーフィルムが多く流通しています。その種類は「片面マット」と「両面マット」の2タイプです。「片面マット」は、片面にインクジェットプロッター向けの表面加工がなされ、裏面はそのままです。「両面マット」は、両面ともインクジェットプロッター向けの加工がなされています。

マイラーフィルムの原理

マイラーフィルムの原理を「マイラーフィルムのベースの製造方法と特性」と「マイラーフィルムのインクジェット用表面加工」に分けて解説します。

1. マイラーフィルムのベースの製造方法と特性

マイラーフィルムの素材であるポリエチレンテレフタレート (PET) は、エチレングリコール  (Ethylene glycol) とテレフタル酸 (terephthalate) を重合して作られる高分子材料です。これを二軸延伸加工して製造されるPETフィルムをベースとして、マイラーフィルムが製造されています。

二軸延伸とはフィルムを製造する際に、縦方向 (長さ方向) と横方向 (幅方向) の二方向に引っ張りながら製造する方法です。製造されるフィルムは伸び切った状態となるため、機械的強度が強くなります。

マイラーフィルムは温度特性も良好で、機械的強さなどの特性が-60℃から150℃の広い温度領域で損なわれることなく安定です。このことからも高い信頼性を保っています。

2. マイラーフィルムのインクジェット用表面加工

マイラーフィルムの多くは、設計・製図用フィルムであり、インクジェットプロッターに対応できる表面処理がなされています。インクジェットプロッターに対応する表面処理としては、二軸延伸加工したPETフィルムの表面にインク吸着層を設ける方法が一般的です。

インク吸収層によりインクを安定して吸着して、高い再現性を示します。その一方でベースとなるPETフィルムが温度や水分による変形などを起こしにくいことから、図面を正確に再現できます。

片面だけインクジェットプロッターに応じた表面加工がされている「片面マット」は、透明度が高く重ね合わせる用途に好適です。両面インクジェットプロッターに対応した表面加工がなされている「両面マット」は、両面に印刷でき、作業効率が非常によくなります。また、片面には印刷し、もう一方の面にペンやボールペンでの加筆も可能です。

マイラーフィルムのその他の情報

1. マイラーフィルムの起源

「マイラー(Mylar)フィルム」という名称は、もともとアメリカのデュポン社が1954年に製品化したプラスティックフィルムの商品名です。現在では多くの他社製品が流通しており、マイラーフィルムという商品名のものだけでなく、「PETフィルム」と呼ばれるものや、日本の東レが製品化した「ルミラー」なども同等の素材として利用できます。

2. マイラーフィルムの設計・製図以外の利用方法

マイラーフィルムは、機械的強度が高い特性を活かし、科学実験用真空装置の窓材としても使われています。また、耐薬品性や耐水性、機械的強度、絶縁性に優れているという特性から、電気絶縁フィルムやコンデンサーの材料、化学絶縁フィルムとしても活用されています。

参考文献

https://matsubara-shouji.net/transparency_myler.html

ボール弁

ボール弁とは

ボール弁

ボール弁とは、弁体の形がボール状のバルブを指します。基本的には全開か全閉で運用します。開度による流量調整に不向きです。

ただし、内部流路が配管径と同じなので圧力損失がほぼありません。そのため、全開と全閉だけの制御で問題無い箇所で多く利用されています。また、材質を変えることで耐食性も確保できます。

ボール弁の使用用途

ボール弁は民生品から産業用途まで幅広く使用されます。民生品では、ガスコンロ用の元栓などに使用されます。上水道の元栓に使用される場合もあります。

産業用としては、圧力損失が非常に小さく、遮断性も高いために多くの場面で使用されます。特に用水ラインやガスラインで多用されます。

また、全開時には流路に障害物がないため、食品固形物を搬送するラインや汚泥を含む排水ラインでも使用されます。内部にPFAコーティングを施したり、材質をPVCやPTFEで製作することによって、塩酸などの薬品ラインで使用することも可能です。

ボール弁の原理

ボール弁の構造は非常に単純です。内部に円筒状の穴が開いたボール状弁体が入っており、この弁体を90°回転させることで弁を開閉します。また、ハンドルの向きは流路と直角であれば全閉、流路と平行であれば全開となるのが一般的です。簡単に見分けられるため、誤操作の心配もありません。

ただし、構造から流量コントロールには不向きです。また、弁体の気密にはPTFEが多く使用されます。自己潤滑性が高く、多くの流体に使用できますが、蒸気ラインのような高温下では使用できません。高温高圧下では耐熱材質やメタルガスケットを使用します。

ボール弁はガスケットとボールの接触面積が大きいので、口径が大きくなるほど開閉トルクが大きくなります。100A以上になるとかなり大きなトルクとになるので、手で開けるのは困難です。

ボール弁のその他情報

1. ボール弁の流れ方向

バルブ(弁)には、ゲートバルブやチェッキバルブ、グローブバルブボールバルブなどの種類があります。種類によって特徴が異なります。

ゲートバルブやボールバルブは流量のコントロールはできません。グローブバルブは流量のコントロールができますが、圧力損失が大きくなります。また、バルブの流れ方向に関しても各バルブで制約があります。

チェッキバルブは逆流防止で設置するため、流れ方向は一方向で逆方向には流れません。グローブバルブも基本的には一方向のみです。構造によっては逆方向でも使用できる場合があります。ゲートバルブとボールバルブは、基本的に流れ方向に決まりはありません。

ボール弁はハンドルを90°回転することで流体を停止させる操作を行います。操作が簡単なため、ゲートバルブと比較して急な開閉が可能です。ただし、ウォーターハンマーには注意が必要です。一般にハンドルの向きは、配管と平行であれば開とします。

2. ボール弁のフルボア

ボール弁にはレデュースドボアとフルボアの2種類があります。レデュースドボアは、配管の内径よりも弁体開口が小口径です。フルボアは、配管の内径と弁体開口が同口径となっています。

圧力損失はレデュースドボアと比較してフルボアが小さいです。したがって、配管設計の際には圧損計算を実施し、レデュースドボアかフルボアかを検討します。圧力損失が大きいために着圧に問題があれば、フルボアを採用することになります。

参考文献
https://www.hisaka.co.jp/valve/techDoc/techDoc09.html
https://www.kitz-valvesearch.com/kiso/type_ballvalve.html
https://j-valve.or.jp/valve/letslearn/
https://www.best-parts-media.jp/element/6797

フローメーター

フローメーターとは

フローメーター

フローメーターはその名の通り液体やガスの流量を表示する機器になります。

構造的には筒状の内部に浮き子(フロート)が入っており、入口から液体やガスが入ると浮き子(フロート)が上下に移動して流量を表示します。

構造は単純ですが材質や用途により多種多様のフローメーターがありますので、ガスボンベなどに取り付けて簡易に流量を見る物もあればニードルバルブを取り付けて流量を精密に制御できるものもあります。

内部の浮き子(フロート)を変更すれば小流量から大流量まで対応できるので、多くの業界で使用されています。

フローメーターの使用用途

フローメーターは産業界で多く使用されています。例えば水冷式ブロワーの冷却水量や、熱交換器の冷却水量の管理などです。これらは精密な制御は必要ないので、構造的にも簡単なものが使用されています。

また、TIG溶接の際には必ずアルゴンガスやヘリウムガスを使用しますが、その際のガス量の制御にも使われます。この場合はガスボンベ出口に直接取り付けてガスの流量を制御します。

それ以外にも半導体などで配管を洗浄(パージ)する際の窒素ガスの流量コントロールにも使用されます。この場合は精密な流量コントロールが必要なので、ニードルバルブと警報器がセットされたものが使用されます。

このようなタイプを購入すると後付でバルブを取り付ける必要が無くなるのでとても便利です。

フローメーターの原理

フローメーターには筒状の構造物の中に浮き子(フロート)が入っており、下から上に向かって流体が流れることでフロートが持ち上がります。その際にフロート前後で圧力差が生じ、この圧力差とフロートの重量が釣り合う位置で静止し、その位置を読み取ることで流量を求めます。

フローメータの原理

図1. フローメータの原理

フローメーターは構造が単純であるため、安価で電源がいらず、フローメーターを垂直に配置すれば取り付け位置をあまり考えずに使用することができます。一方で、フロートの位置を目視で読み取るため、精密な流量測定には向きません。

浮き子(フロート)の大きさにより表示できる流量が変わるので、必然的に流量が多くなるにつれてフローメーター自体も大型化します。

非常に単純な構造なので取付位置などあまり考えずに使用する事も出来ますが、意外と使用するのには注意が必要です。特にガスで使用する場合は流すガスの圧力と温度を一定にする必要があります。

なぜならガスはその圧力と体積で量が変化するからです。

その為、フローメーターの設計と異なる圧力、温度のガスを流した場合は必ず換算する必要があります。

フローメータのその他情報

フローメーターの使い方

フローメーターの使い方は非常に単純で、流量を測定したい配管にフローメーターを接続し、フロートの位置を確認しながらバルブで調整することで流量制御ができます。

ただし、使用にあたりフロートの読み取り方に注意を払う必要があります。 フローメーターには様々な形状のフロートがありますが、その形状により読み取り方が異なります。

基本的にフロートの読み取り位置についてはJIS B7551で規定されています。ただし例外もあるため、フロートの読み取り方はメーカーに正しく確認する必要があります。

フローメータの読み取り位置

図2. フローメータの読み取り位置

また、フローメーターで流量制御する時は入口側の圧力を一定にするのか、出口側の圧力を一定にするのかよく考える必要があります。

例えば出口側の圧力が常に一定であれば、入口側にバルブを取り付けて流量制御しましょう。逆に入口側の圧力が常に一定であれば、出口側にバルブを付けて流量をコントロールする必要があります。

参考文献
https://www.ofr.co.jp/
https://www.kofloc.co.jp/product/list.php?type=1&category_id=63

防錆スプレー

防錆スプレーとは

防錆スプレー

防錆スプレーとは、その名の通り錆を防ぐスプレーのことです。

自動車やバイク、自転車などに使われる金属部品に多く使用されます。ノズルが設けられているため、部品の所望の箇所のみにピンポイントで吹き付けができるため、誰でも簡単に扱えるのが特徴です。

高温環境や腐食性環境など、大掛かりな塗装工事が困難な場所でも防錆スプレーであれば防錆処理を施すことができます。価格は比較的安価で、一般の方でもホームセンターや通販などで簡単に手に入れることが可能です。

防錆スプレーの使用用途

防錆スプレーは、機械部品が工業生産されるときに使われるというよりは、メンテナンスなどでの錆の除去や防止を目的として使用されます。工業生産時には防錆塗工を施すことがありますが、防錆スプレーで形成される塗膜は比較的薄く、処理面積も所定の箇所のみに限られているところが異なります。

1. 工業用部品

防錆スプレーが1番良く使われている分野として、工作用機械が挙げられます。工作機械の内部には金型や治具など、頻繁に稼働するパーツが含まれています。

これらの表面に錆が発生すると動きが悪くなり、動作に不具合が生じる恐れがあるため、メンテナンス時に防錆処理が必要です。具体例を挙げると、精密機械の場合には処理面積が非常に小さいこともあり、ピンポイントで処理可能な防錆スプレーが用いられています。

2. 自動車部品

私たちが日常的に乗っている自動車部品の防錆処理にも防錆スプレーが活躍しています。自動車は屋外環境下で雨や湿気にさらされることが多いため、錆が発生するリスクを抱えています。

定期メンテナンスの際には、防錆の処理がなされています。自動車の中で具体的に処理が必要な箇所として、ボンネットやバンパー内部、ドア、トランクルームなどが挙げられます。

防錆スプレーの原理

防錆スプレーの原理を理解するためには、まず金属がどのように錆びてしまうのか理解する必要があります。金を除く金属はそれ単体として自然界に存在することはほとんどなく、例えば鉄は磁鉄鋼や褐鉄鋼の状態で採掘されます。

その後、人間が産み出した技術により精錬され金属単体となり、加工することで自動車などの金属部品に生まれ変わります。ただし、加工した切断や切削した金属の表面は酸素や水と反応しやすくなっており、錆びやすい状態です。錆が発生すると外観が悪くなるだけでなく、強度や性能が低下してしまいます。

その錆びを防ぐ防錆スプレーには2つの成分があります。1つは防錆剤で、金属の表面に薄い膜を形成し、酸素や水分から遮断する効果があります。この薄い膜は不動態皮膜とも呼ばれ、酸化物ではありますが厚さが数ナノメートルと薄いため、透明で金属表面の光沢を維持することが可能です。

もう1つは鉱物油で、金属の細かい隙間まで防錆成分を浸透させる効果があります。また、既に表面にある細かい錆を浮かせることも可能で、ウエスなどで拭き取れば錆を落とすことができます。これらの作用により防錆スプレーは細かいところまで、かつ少しくらいの錆であれば浸透して錆を落とすと共に、防錆剤の作用により表面を強固にガードして錆を防止します。

防錆スプレーの種類

海に近く塩害の恐れがある地域や腐食ガスが存在する環境では、汎用の防錆スプレーを使用しても錆びるおそれがあります。そのような所では、海水用や腐食ガス環境用に成分が調合された防錆スプレーが適しています。

状況に応じ、適切な防錆スプレーを適切に使用することで、長期間防錆能力を維持できるようになります。

参考文献
https://www.kure.com/product/k1426/
https://www.respo.net/spray/930.html

バタフライ弁

バタフライ弁とは

バタフライ弁

バタフライ弁は、円盤状の弁体が回転して開閉制御するバルブのことです。弁体の形が蝶に似ているため、バタフライ弁と呼ばれます。小口径から大口径まで対応可能で、バルブ内部をPFAなどでライニングすれば腐食性流体にも適用できます。

また、ボール弁と比較し流量調整ができるため、グローブ弁と比較して圧損も低いのが特徴です。ただし、高圧流体に対しての使用は困難です。また、操作が容易で安価なため、さまざまな場所で使用されます。

バタフライ弁の使用用途

バタフライ弁は手動・自動を問わず、工場やプラントの配管で多用されます。日常生活で目にすることはあまりありませんが、水道配管の上流ではバタフライ弁が使用されることもあります。

操作性が良く開閉が簡単で、面間も短いので大口径でも省スペース化可能です。そのため、移送配管上流の大口径箇所で使用されることも多くあります。

一般的な調量バルブは全開時でも圧力損失が大きいのに対して、バタフライ弁は圧力損失が少ない割にある程度流量調整可能です。そのため、調量バルブとして使用されることもあります。

バタフライ弁の原理

バタフライ弁はステム、弁座、弁体などで構成されます。ステムはハンドルなどと接続する箇所で、連結された弁体を動かします。バタフライ弁の弁体は円盤型で、90°回転させることで弁座を閉止させて開閉します。ボール弁と比較して大口径でも開閉トルクが小さく、流量調整可能な点が特徴です。

バタフライ弁は、以前は気密性が低く漏れが起きやすいバルブとして認識されてきました。近年は、弁体のシート材料にEPDMやPTFEを採用して気密性も確保されています。

バタフライ弁の開閉方式(ギヤ式、レバー式)

バタフライ弁を開閉させる際、ステムの先にはアクチュエータを取り付ける必要があります。アクチュエータにはレバーやギヤを取り付けます。

1. レバー式

バタフライ弁の開閉動作をレバーで実施します。主に手動の場合に採用されます。レバーを回す動作がバタフライ弁の軸の動きと同期しており、90度レバーを回すことでバルブを開閉します。

操作が単純な上に開度を簡単に目視できます。ただし、大口径のバルブでは開閉操作が重くなります。レバーに意図せず接触して開度を変えてしまう危険があるため、開閉動作時以外はレバーを取り外しておくこともあります。

2. ギヤ式

バタフライ弁の開閉動作をギヤで実施します。主に大口径バルブに採用されます。モーターによって電動化する場合もあります。ギヤ式では、アクチュエータ内部のギヤがトルクを大きくしてステムを動かします。開閉に必要な大トルクを、小さい力で可能とします。

レバー式が90度回すだけでよいのに対してギヤ式では開閉に複数回転必要です。また、長期間放置するとギヤが固着して開閉できない場合もあります。

アクチュエータには上記の他に圧縮エアー式もあり、用途に合わせて選定します。

バタフライ弁のその他情報

ウェハー形のバタフライ弁

バタフライ弁を含むバルブの配管との接続方法には、フランジ形、ウェハー形、ねじ込み形、溶接形などがあります。ウェハー形とはフランジレス形とも呼ばれ、バルブを挟む両側の配管フランジで挟み込む接続方法のことを指します。

ウェハー形はフランジが不要なため、小型軽量で経済的に有利です。また、面間が短いため狭い場所での施工が可能となります。両側のフランジで挟み込む必要があり、スタッドボルトを使用します。

スタッドボルトは両側にねじが切られたボルトのことで、ボルトの両側からナットで締め込み締結します。ただし、緊急時にはスタッドボルトを寸切りボルトで代用する場合もあります。

参考文献
https://www.tomoevalve.com/guide/kind/?vm=r
https://www.fujikin.co.jp/support/basic/standard.html
https://www.hik.shiga-irc.go.jp/info/instructions/valve_iroha/valve-1/
https://www.valveconsul.com/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%96%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E3%83%90%E3%82%BF%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E5%BC%81/

ニードルバルブ

ニードルバルブとは

ニードルバルブ

ニードルバルブ (英: Needle Valve) とは、ステム (バルブ軸) の先端が細くとがった針状のバルブです。

針の意味である 「ニードル (Needle)」がバルブの名前になっています。JIS B0100バルブ用語 (Glossary of terms for valves) では、ニードルバルブはニードル弁として、「流量を調節しやすいように弁体が針状をしているバルブ」と規定されています。

ニードルバルブは、流路の全開・全閉の止弁の役割はもちろん、流量を正確に調整できるのが特長です。しかし、一般的には比較的少ない流量の場合が対象になります。

ニードルバルブの使用用途

ニードルバルブ_図1

図1. ニードルバルブの使用例

ニードルバルブは、流量の調整に優れているため、正確な流量調整が必要な流量制御弁の用途で多く使用されています。そのため、全開状態で使用されることは少なく、そのほとんどがバルブの開度を調整して、必要な流量になった状態で固定して使用されます。

特に微小領域での流量制御や、流量制御の範囲が狭い時に使用される場合が多いです。通常のグローブバルブ (一部のボールバルブ) でも流量制御は可能ですが、あまり正確で微細な調整は困難で、一般的には精度を必要としない流量制御に使用します。

しかし、ニードルバルブは、内部構造を流量制御に特化した構造により、正確で微細な流量制御を可能です。例えば、半導体業界での窒素パージの量の調整、エアシリンダ弁やダイヤフラム弁の開閉用制御空気の流量調整、圧力計用の流体の止弁などに使用されています。

ニードルバルブの原理

ニードルバルブ_図2

図2. ニードルバルブの構造

ニードルバルブの構造は、ボディ (弁箱) 、ステム (弁軸) 、ハンドルなどで構成されています。上図は手動操作式のニードルバルブですが、電動アクチュエータ式や電磁式駆動の自動バルブもあります。

ニードルバルブの大きな特長は、その名の通り弁体が針状 (ニードル) であることです。似たような構造のグローブバルブは、弁体が非常に大きく、閉止には優れますが流量制御には向いていません。

ニードルバルブは、開弁操作でハンドルを回転させると、ステムの先端部の弁体 (ニードル) が上昇し弁座側との流路開口部が少しずつ変化します。そのため、流量が少しずつ変化するので、簡単にかつ正確に流量を調整することができます。

ニードルバルブ_図3

図3. ニードルバルブの開閉と流体の流れ

ニードルバルブは、遮断目的の止弁として使用可能です。ただし、完全に開閉するにはバルブステムを何回も回す必要があるので、ニードルバルブは単純な遮断用途には使用されません。

流体を完全に容易に遮断するために、グローブバルブやボールバルブなどの止弁を流路上流に設置し流体を遮断します。

ニードルバルブの種類

ニードルバルブは下記のような種類があります。

  • 開閉方式
    手動式、自動式 (電動アクチュエータ式や電磁式駆動)
  • 配管接続方式
    ねじ込み式 (管用テーパねじ Rc、NPTなど) 、フランジ式、リングジョイント式など

自動式ニードルバルブは、遠隔操作で開閉および流量調整が必要な場合に使用されます。電動のアクチュエータなどを使用し、弁体とステムを回転させバルブの開閉を行います。

駆動用モーターにステッピングモーターを使用し、正確で微細なコントロールが可能なタイプもあります。ステッピングモーターとは、パルス信号によって回転角度を制御できるモーターを指し、高い位置決め精度を保証できるモーターの1種です。

ニードルバルブのその他情報

ニードルバルブの材質

ニードルバルブに使用されている代表的な材質 (ボディ部) は、下記のようなものがあります。

  • 黄銅製 (JIS H3250 C3771Bなど)
  • ステンレス鋼製 (JIS B3214 SUSF316, JIS G4305, G4303 SUS304, SUS316Lなど)

黄銅製は、汎用的な用途用の材質で、空気・冷温水・油などの低圧で高圧でなく低流量の場合に多く使用されています。ステンレス鋼製は、例として半導体業界でよく使用される、シランや三フッ化窒素などのガス配管に使用されています。

参考文献
https://www.swagelok.co.jp/ja-JP/product/Valves/Needle-Shutoff-and-Regulating
https://www.weblio.jp/
https://www.mekasys.jp/series/detail/id/FKN_0003

デジタル圧力計

デジタル圧力計とは

デジタル圧力計

デジタル圧力計とは、圧力を計測するための機械です。

各種産業機械や設備、分析機器における油圧・水圧・気圧のモニタリングや制御のために使用されています。使用用途に応じて、防水加工がされているものなどがあります。圧力を測定したい流体 (ドライエア・ミストエア・蒸気・油等) とかかる圧力の上限値に応じて選択する必要があります。

近年、多くの圧力センサーで用いられている方法は、圧力をダイヤフラムと呼ばれるパーツによって計測し、電気信号へ変換してモニターに出力するというものです。

デジタル圧力計の使用用途

圧力計は、半導体ガス供給系をはじめ、石油・製紙・薬品など各種産業における機械や設備、化学分析機器において使用されています。そのため、測定対象とする流体の性質は様々です。測定する対象 (気体・液体・可燃性の有無、腐食性の有無) に合わせて適切なセンサーを選択する必要があります。

また、基準とする圧力 (絶対圧・大気圧) も機器によって異なります。さらに、大気圧を基準とする機器は、負圧を測定するものと正圧を測定するものの2種類が存在します。

デジタル圧力計の原理

近年使用されている圧力計は、ダイアフラムと呼ばれる受圧素子を用いて圧力を測定します。流体から受ける圧力によって、ダイアフラムがわずかに変形します。このダイアフラムの変形・変化を示すダイアフラムによる圧力の測定方法には、半導体歪ゲ-ジ式と静電容量式があります。

1. 半導体歪ゲ-ジ式

電気変換素子により、ダイアフラムの歪みを検知し、圧力を測定する方法です。半導体歪ゲ-ジ式は内部の構造の違いによって、バルク型半導体歪ゲ-ジ・蒸着 (薄膜) 型半導体歪ゲ-ジ・拡散型半導体歪ゲ-ジがあります。

バルク型半導体歪ゲージ
半導体歪ゲ-ジを、金属ダイアフラムへ接着させ使用します。

蒸着 (薄膜) 型半導体歪ゲ-ジ
金属ダイアフラム上に半導体歪ゲ-ジを直に薄膜形成したものです。接着による影響がないため、幅広く用いられています。

拡散型半導体歪ゲ-ジ
単結晶シリコンウェハにより、ダイアフラムを作成する方法です。高い圧力には対応できないものの、大量生産が可能で価格も低いです。

2. 静電容量式

ダイアフラムの向かいに電極を設置し、ダイアフラムとの変位を静電容量としてキャッチする方法です。この方法では、ダイアフラムの素材には金属、セラミック、シリコンなどが使われます。

デジタル圧力計の選び方

デジタル圧力計を選ぶ際には、下記に注意する必要があります。

1. 測定範囲

デジタル圧力計を選ぶ上で最も重要なことは、測定をしたい圧力範囲に対応しているかどうかです。流体の種類に応じて圧力範囲は異なるため、事前に使用する目的に合った範囲で測定できるかを確認しておく必要があります。

2. 測定精度

圧力計の測定は、目的や用途によっては必ずしも測定精度が重要とは限りません。一方で、高度な産業用途や要求の厳しい環境では、高精度が求められることがあるため測定した値を何に使うのか明確にしておく必要があります。

3. ディスプレイ

測定値が見やすく設計されているか確認します。デジタル表示が明瞭で、単位や数値が読み取りやすいものを選ぶことがポイントです。バックライト付きのディスプレイも、暗い環境で使用する場合に便利です。

4. 操作性と使いやすさ

ボタンの配置やメニュー構造が分かりやすく、直感的な操作が可能なデジタル圧力計を選ぶことが重要です。使いやすいインターフェースがあり、設定やデータの読み取りが簡単なものが好まれます。

5. 電源とバッテリー寿命

デジタル圧力計は電源を必要としますが、使用する環境に合わせて電池駆動やACアダプター対応などの電源オプションの状況を確認しておきます。また、バッテリー寿命が長く、充電時間が短い製品を選ぶことも重要なので、どういったシチュエーションで使うか想定することが重要です。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/35/28/index.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/43/5/43_5_442/_pdf

チューブ継手

チューブ継手とは

チューブ継手

チューブ継手 (英: Tube Fitting) とは、チューブ同士やチューブと機器・部品・装置などの接続に使用するパーツです。

ジョイント・コネクターと呼ばれる場合もあります。「パイプ」は「チューブ」の類義語として使われ、どちらも円筒形 (一部矩形も含む) で中空の管を示しています。パイプは一般的に、金属製の円筒形の管を示しますが、それに対してチューブは、金属・樹脂・ゴム・ガラス製などの円筒または矩形の管を示す場合が多いです。

なお、継手は配管同士を接続する際に使うパーツを示します。チューブ継手には、用途や形状 (エルボ、T字型、Y字型) 、素材 (樹脂、金属など) 、サイズが異なるさまざまな商品が展開されています。

チューブ継手の使用用途

チューブ継手は、一般産業、研究開発、公共施設、一般家庭などあらゆる場所で使用されています。空気・ガス・水・蒸気・薬品・油などの流体を移送するのが目的です。

チューブ継手は、チューブを接続する以外に、チューブの分岐 (合流) 、サイズ (外径) が異なるチューブ同士もしくはチューブと機器などの接続に使用します。耐高・低温性、耐腐食性に優れたもの、耐真空や耐高圧用のチューブ継手もあります。

チューブ継手は、チューブ内の流体の種類や圧力を考慮し、用途に適合した仕様を選定することが大切です。仕様が適合していないと、流体の漏洩やチューブが外れることがあるためです。

チューブ継手の原理

チューブと継手の接続方法は何通りかあり、「チューブの保持力」と「シール性」が重要になります。チューブを保持し固定する代表的な方法として、下記の2通りが挙げられます。

1. 機械式固定

チューブ継手_図1

図1. くい込み継手 (1)

機械式固定の方法として、くい込み継手 (締め込み継手) があります。フェルールやスリーブと呼ばれるリング状のパーツをチューブ外側にはめ込む方法です。継手のナットを締め込み、スリーブを変形させ、もしくはフェルルールを押し込み、チューブに食い込ませます。その結果、チューブとスリーブもしくはフェルルールが密着しシール性を確保します。

チューブ継手_図2

図2. くい込み継手 (2)

くい込み継手は、主に銅管鋼管などの金属管に用いられることが多いです。しかし、樹脂チューブに使用する場合はチューブが潰れるのを防ぐために、インサートリングを挿入して使用する必要があります。

2. ワンタッチ式固定

チューブ継手_図3

図3. ワンタッチ継手 (1)

ワンタッチ式固定は、樹脂製チューブを接続する継手の代表例で、ワンタッチ継手と呼ばれています。ワンタッチ継手とは、チューブを継手に差し込むだけで容易に接続・取り外しができる継手です。継手内側にはOリングと抜け止め用の金具が内蔵されており、チューブと継手の間はパッキンやOリングでシールされます。

チューブ継手_図4

図4. ワンタッチ継手 (2)

チューブは抜け止め用の金具によって固定され、外すときは差し込み口にある開放用ブッシュを押し込んでロックを解除します。手軽に使用できる継手ですが、高圧の流体やチューブに負荷がかかる使用方法では漏洩や破損する可能性があります。

チューブ継手の種類

チューブ継手_図5

図5. チューブ継手の種類 (1)

1. メールコネクター (ニップル)

片側はねじ、他方はチューブを接続する金具がついている継手です。ワンタッチで簡単にチューブが着脱できます。開放用ブッシュ  (リリースブッシュ) と呼ばれる部分を押し込むとチューブが外れます。

2. エルボ

チューブの配管を直角に曲げて接続する継手です。スイベル機構と呼ばれる、チューブの向きを自在に変更できるタイプのものもあります。

3. ユニオン

チューブ同士を接続するための継手です。チューブを延長させるときや、サイズが異なるチューブ同士を接続するときに使います。

チューブ継手_図6

図6. チューブ継手の種類 (2)

4. ブランチ

チューブ接続口の1方から2方向へ分岐するための継手です。

5. レデューサ

継手とチューブの間に差し込むことで、サイズが小さいチューブでも接続できるようにする部品です。

6. スピードコントローラー

チューブ継手_図7

図7. スピードコントローラーの流れ

流量調節を行える継手です。吐出側の流量をコントロールできるタイプ  (メーターアウトタイプ) と吸込側の流量をコントロールできるタイプ  (メーターインタイプ)  があります。

7. プラグ

チューブ継手の使用していない接続口を塞ぐために、継手に差し込み使用します。

チューブ継手のその他情報

1.チューブ継手の使い方

ワンタッチ継手は、空気用配管で樹脂チューブに用いるのが便利です。エアーシリンダーやアクチュエータなどの空圧機器を多数使用する場合、電磁弁ボックスを設けてマニホールド型のチューブ継手付き電磁弁で各機器への空気の開閉を行います。

継手にリークが発生すると空圧機器が正常に作動しなかったり、コンプレッサのエネルギーを損失したりする恐れがあるため、リークチェックを行うことが必要です。リークチェックは薄い石けん液を継目に塗布して検査し、泡の発生でリークを確認します。

チューブとの境目にリークがある場合は、ゴムパッキンやロック機構の劣化が考えられます。また、ねじ込み部分にリークがある場合はテフロンシールの巻き付け不良等が考えられるため、再度シールを巻きねじ込みが必要です。

2. チューブ継手の規格

チューブ継手の一部は、下記のJIS規格で仕様が規定されているものがあります。

JIS B8381 空気圧用継手-第1部:熱可塑性樹脂チューブ用プッシュイン継手

JIS適合品であればメーカーが異なる場合でも同じように使用することができます。一般に使用されているチューブ継手は、JIS規格などに規定されていない仕様のものが多いです。

しかし、適用されるチューブや取り付け用のねじなどは、各種規格が適用されているため、互換性があります。適用されるチューブ外径は、インチサイズとミリサイズの2種類です。

また、ねじ込み式チューブ継手のねじ部は、下記のような規格が適用されているため、チューブ外径と同様に互換性があります。

  • JIS B0202  管用平行ねじ (G)
  • JIS B0203  管用テーパねじ (R)
  • ANSI/ASME B1.20.1  Pipe Threads, General Purpose, Inch (NPS, NPT)

参考文献
https://www.haikanbuhin.com/blog/post-1560/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/166/
https://www.haikanbuhin.com/blog/post-1560/#PP
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0101.html
https://www.pisco.co.jp/faq/cat/26/
https://kikakurui.com/b8/B8381-1-2008-01.html

チェックバルブ

チェックバルブとは

チェックバルブ(英語:Check Valve)は、配管内流体の流れを一方向のみに制御し、反対方向の流れを防止するバルブです。チェックバルブの同義語として、「チェック弁」「チャッキバルブ」「チャッキ弁」「逆止弁」が用いられています。

また英語のCheck Valveの同義語として、Non-return Valve, One-way Valve, Reflux Valve, Pressure Retention Valve, Back-Flow Prevention Valveなどがあります。逆流を防止する機能から「逆止弁」と表現され、Check ValveはCheck(阻止する)+Valve(弁)に由来しているそうです。

チェックバルブの使用用途

チェックバルブは、逆止弁と書かれるように、流体を逆流させたくない場合に使用します。基本的なチェックバルブの使用用途は下記になります。

  • 2つの流体の混合防止
  • 逆流の防止
  • 流れ方向の制御
  • ウォーターハンマーの防止

2つの流体が合流する箇所に設置する場合、相互の流体が混在するのを防止し、必ずどちらかの流体だけが流れるように制御します。

また、ポンプ吐出側の立ち上がり配管部分に設置する場合、ポンプ稼働中は流体が流れ、ポンプ停止後はチェックバルブが閉弁し、ポンプ下流の高いレベルにある配管内の流体が、ポンプへ逆流してくるのを防止します。

蒸気配管では、ウォーターハンマーの防止などにも使われます。ウォーターハンマーとは、流体流速の急激な変化により、一時的に配管内の圧力が上昇・下降する現象です。ウォーターハンマー現象の圧力変動により、ポンプや配管などが破損することがあり、防止対策としてチェックバルブが使用されます。

チェックバルブの原理

チェックバルブは、流体の入口側(一次側 P1)と出口側(二次側 P2)の圧力差により、ディスク(弁体)が作動し開閉します。圧力差とバルブの動作は下記のようになります。

  • 開弁: 入口側(一次側 P1)の圧力が出口側(二次側 P2)より高い P1 > P2
  • 閉弁: 入口側(一次側 P1)の圧力が出口側(二次側 P2)より低い P1 < P2

出口側(二次側 P2)の圧力が高い場合に、ディスクは背圧によってシート面に押し付けられ密着し、流体の逆流を防止することができます。この圧力差によってディスクは自動的に開閉し、流体は「流れる」、「流れない」の状態になります。

チェックバルブの種類

チェックバルブの種類は5つあります。それぞれの特長は下記の通りです。

1. スイングチェックバルブ

スイングチェックバルブ

図1. スイングチェックバルブ

スイングチェックバルブは、流体の流れが直線状で、アームやディスクに直接取り付けられヒンジ機構にディスクが取り付けられています。ディスクは、流体の圧力差によりヒンジを支点にして回転(スイング)し、開弁・閉弁を行います。

特長

  • 一般的に、フルポートでディスク全開時はディスクが流路を塞ぐことがなく、圧力損失は小さくなります。
  • フルポートとは、バルブボディの流路が配管の内径と同径、もしくはそれより大きいことを示します。
  • ディスク重量が重い場合は、開弁のための最低圧力差と、クラッキング圧力は大きくなります。重量の軽いディスクの場合は、開弁のための最低圧力差と、クラッキング圧力を小さくなります。
  • クラッキング圧力とは、ある一定流量が流れるための圧力差です。
  • ディスクは、ヒンジの軸で回転するため、長期間の使用や頻繁な動作により、軸と軸受け側は摩耗します。そのため、ディスクの開閉動作が悪くなったり、ディスクとシートのシール性が低下したりすることがあります。
  • ディスクは、全閉から全開までの回転角度は比較的大きいため、急激な圧力変化に対する応答性が低くなります。また重いディスクの場合は、急激な閉弁時には、シートへの衝撃が大きくなるという問題があります。

設置 配管が水平な場合、配管が垂直の場合は流体が下方から上方へ流れる場合に使用されます。上方から下方へ流れる場合は使用できません。

2. リフトチャッキバルブ

リフトチェックバルブ

図2. リフトチェックバルブ

リフトチェックバルブは、流体の流れがS字状で、軸が取り付けられたディスクが上昇・下降する機構です。ディスクは、圧力差で上昇・下降の動作を行い、開弁・閉弁を行います。

特長

  • 流路はS字状で、圧力損失は大きいです。
  • ディスク重量が重いため、開弁のための最低圧力差と、クラッキング圧力は大きくなります。

設置
配管が水平な場合のみの接地に限定されます。配管が垂直で流体が上下方向に流れる場合は使用できません。

3. ウエハーチェックバルブ

ウエハーチェックバルブ

図3. ウエハーチェックバルブ

ウエハーチェックバルブは、バルブ自体がウエハー形で、バルブボディをフランジで挟み込み、ボルト・ナット締め付け設置します。流体の流れはほぼ直線状で、ヒンジ機構を備えた2枚の半円形のディスクが内蔵されています。

2枚のディスクは、ヒンジを支点にして流体の圧力差により回転し開弁し、ディスクに付けられたコイルスプリングにより、反対方向に回転し閉弁を行います。

特長

  • 流路はほぼ直線上で、圧力損失は小さいです。
  • ウエハー形のためボディは薄型で、全体的に軽量です。
  • ポンプなどに直付けすることができます。
  • スプリングでディスクを強制的に回転させ、すぐに閉弁することができるため、ウォーターハンマー現象を軽減することができます。
  • 密閉性が高く高い封止性を有しています。
  • キャビテーションや流体の偏流に対しては対応性が多少低く、耐久性も低いことがあります。
  • バイパス流路が内蔵されているものもあり、残留流体の排出や呼び水用のバイパス配管敷設の必要がありません。

設置
配管の方向は、水平・垂直・傾斜などさまざま方向で使用が可能です。また配管が垂直の場合、流体が上下どちらの流れ方向も使用可能です。

4. ボールチェックバルブ

ボールチェックバルブ

図4. ボールチェックバルブ

ボールチェックバルブは、流体の流れがS字状で、弁体のボールが上昇・下降する機構です。ボールは、圧力差で上昇・下降の動作を行い、開弁・閉弁を行います。

特長

  • 流路はS字状もしくは直線状で、圧力損失はそれほど大きくありません。
  • ディスク動作は拘束されていないため、流体内の多少の異物混入は許容されます。
  • ウォーターハンマー防止には効果的ではありません。

設置
配管が水平用と垂直用があり、垂直用はボール自重での開閉になるため、流体が下方から上方へ流れる場合は使用できません。

5. スプリングディスクチェックバルブ

スプリングディスクチェックバルブ

図5. スプリングディスクチェックバルブ

スプリングディスクチェックバルブは、流体の流れはディスクを回り込みS字状で、軸が取り付けられたディスクが上昇・下降する機構です。ディスクは、圧力差で上昇し、スプリングの力で下降の動作を行い、開弁・閉弁を行います。

特長

  • 流路はS字状で、ディスクを回り込むように流れるため、圧力損失は大きいです。
  • ディスクは軽量で、開弁のための最低圧力差と、クラッキング圧力は小さくなります。
  • 全開と全閉の動作距離は小さく、応答性に優れています。

設置
配管の方向は、水平と垂直どちらの方向でも使用が可能です。また配管が垂直の場合、流体が上下どちらの流れ方向も使用可能です。

参考文献
https://www.tlv.com/ja/steam-info/steam-theory/other/1306check-valve-2/
https://www.tlv.com/ja/steam-info/steam-theory/other/1307check-valve-3/

ダイヤフラムバルブ

ダイヤフラムバルブとは

ダイヤフラムバルブ

ダイヤフラムバルブとは、ゴム等で作成された可とう性のダイヤフラムで流路を制御するバルブです。

他のバルブに比べて構造がシンプルである為、バルブ本体を金属で製作して内部をゴムやFRP等でライニングすることで耐食性、耐薬性に優れたバルブを作ることができます。

ダイヤフラムバルブの使用用途

ダイヤフラムバルブは主に耐食性や耐薬性などが要求される配管で使用可能です。そのため、化学工場や半導体工場の他、食品工場などで使用されています。

例えば化学プラントなどで耐食性が要求される場合は、ダイヤフラムをEPDMとして内部を硬質ゴムライニングとする事で塩酸などの腐食性流体のラインで使用しています。

他にも半導体工場ではシランや三フッ化窒素などの危険な流体を取り扱うため、気密性に優れ、内部形状がシンプルなダイヤフラム弁が最適です。

また、構造がシンプルであるため製造ラインの洗浄やバルブの分解清掃も可能です。ダイヤフラムバルブに滅菌処理などができる材料を用いて医薬品製造工場、バイオ産業でも使用されています。

ダイヤフラムバルブの原理

ダイヤフラムバルブの原理は非常に単純です。ダイヤフラムバルブは弁体部品の代わりに耐食性のライニング弁体と耐食性のダイヤフラムを使用し、ダイヤフラムを動かして媒体を制御します。

ダイヤフラムを上に上げると通路が開き、ダイヤフラムを下げるとバルブボディに押し付けられ、バルブが閉じます。ダイヤフラムの上下動のみで流体を制御します。

流路に堰 (セキ) を持つ内部構造があり、ダイヤフラムを密着させて流路を制御します。バルブハンドル自体は回転させる形でも、ダイヤフラム自体は往復動しか動かないので他のバルブのようにシール部分が非常に少ない構造です。そのため、密封性に優れています。

ダイヤフラムバルブの種類

ダイヤフラムバルブには手動式と自動式があります。自動ダイヤフラムバルブには空気圧式、油圧式、電気式のアクチュエータと電磁弁、リミットスイッチポジショナのような付属品が使われることがあります。

ダイヤフラムバルブの特徴として、弾性体であるため、シール性に優れています。その為、遮断能力が非常に高く少しの漏れも許されない腐食性流体や、薬品などの配管で多く使用されています。

弁本体とエラストマー製のダイヤフラム、およびダイヤフラムが弁を閉じるための弁座から構成されていて、弁本体はプラスチック、金属、木材など使用目的に応じて材質の種類が異なります。

ダイヤフラムバルブのその他情報

ダイヤフラムバルブの特徴

ダイヤフラムバルブは外部リークが少なく、危険な流体も流すことができます。シンプルな構造から液溜の原因となる箇所がないので、特に半導体業界などで危険なガスを完全に排出したい場合に役立ちます。

ハンドルなどの駆動部以外はバルブ本体とダイヤフラムしかないため、メンテナンスも非常に簡単です。消耗品はダイヤフラム以外に存在しません。

一方で、注意しなければいけないデメリットもあります。ダイヤフラムバルブが使用できる範囲は狭く、圧力域はダイヤフラム材料によりますが、中程度 (20気圧程度) まで、温度域は-50℃~230℃までとなり、あまりに高温・高圧な流体を扱うラインでは使用できません。ダイヤフラムの摩耗が進み、従来のバルブと比較してメンテナンスの頻度も多い傾向です。

また、ダイヤフラムバルブはCV値と呼ばれる流れの係数が低いので圧力損失が大きくなります。そのため、圧力損失が問題となる場合、特に液体の場合は配管口径と同じダイヤフラムバルブを取り付けると問題が発生する場合があります。

参考文献
https://www.fujikin.co.jp/support/pdf/504_diaph.pdf