タッチパネルディスプレイ

タッチパネルディスプレイとは

タッチパネルディスプレイ

タッチパネルディスプレイは、表示装置としてのディスプレイと入力装置としてのタッチパネルが一体となった、画面に触れることで操作ができる電子部品です。誰にでも簡単で直感的な操作を可能にするので、様々な機器に搭載されている身近な製品です。

以前は、手袋などをしていると操作ができないという問題がありましたが、近年では、さまざまな方式の開発と改善によって、こういった問題もほとんど解消されています。

タッチパネルディスプレイの使用用途

タッチパネルディプレイは、日常生活に浸透している非常に身近な部品です。例えば、スマートフォンやタブレットには必ずと行ってよいほど搭載されています。

タッチパネルディスプレイは、用途に応じて、指による入力と専用のペンによる入力ができるものもあります。

例えば、ATMの入力など、ボタン操作のような単純な動作や決まった操作を行う場合は指による入力が向いていますが、宅配伝票などにサインなど、繊細で複雑な動作にはペンの入力が適しています。

タッチパネルディスプレイの原理

タッチパネルディスプレイで入力ができる原理は、大きく分けて以下のものがあります。

1. 静電容量方式

人体の静電容量を検知して、その座標を返します。画面表面に微弱な電場を張り巡らせ、パネル表面に指が近づいたときに流れる電流を検出しています。

2. 抵抗膜方式

透明な電極膜を近接させて貼り合わせた構造をしており、パネル表面を押さえると電極同士が接触し電流が流れます。その際の電圧の変動を検出することで押された位置の絶対座標を決定します。感圧式などと呼ばれることもあります。

3. 赤外線方式

パネル表面に平行な赤外線ビームがはられており、指が近づいて遮光された位置を三角測量をもとに検出します。 超音波表面弾性波:パネル表面を超音波(表面弾性波)で振動させておき、指で触れた際の振動数や振幅の変化を検出します。 電磁誘導方式:磁場を発生させる専用のペンでの入力が前提ですが、ペンが近づいた際に電磁誘導で発生する電場の変化を検出する方式で非常に検出精度が高いのが特徴です。

操作性、視認性および薄型化

スマートフォンに代表されるタッチパネルディスプレイは、ATMや自動券売機、自動販売機、カーナビ、製造・検査装置など、数をあげたらキリがないほど、現代社会に欠かせないものになっています。

操作性と視認性の観点から、いくつかの事例を挙げてみます。 まずは、カーナビ用途に広く用いられた、液晶ディスプレイ上に抵抗膜方式のタッチパネルを貼り合わせた構成です。この構成におけるタッチパネルの操作性の特徴として、下記の特徴があります。

  1. タッチ座標の検出は1箇所(シングルタッチ)に限定
  2. 物理的に一定程度の圧力が必要
  3. タッチ手段の導電性が不要(あらゆる手袋の着用が可能)

同じ構成におけるディスプレイの視認性の特徴としては、下記のものが挙げられます。

  1. パネル透過率(ディスプレイの明るさ)がやや低い
  2.  エアギャップの存在によりニュートンリングが見えやすい

近年、この抵抗膜方式が、投影型静電容量方式(静電容量方式の一種)に置き換わった構成が主流となっており、その操作性の特徴としては、下記の特徴があります。

  1. 複数の座標の検出(マルチタッチ)が可能
  2. 指をパネル表面に近づけるだけで座標が検出されるため、感度向上によりタッチレス操作(ホバー入力)も可能
  3. 多彩な動きの入力(フリック、スワイプ、ピンチアウトなど)が可能
  4. タッチ手段の導電性が必要(手袋の着用は限定的、爪に反応しにくい)

同じ構成におけるディスプレイの視認性の特徴としては、下記のものが挙げられます。

  1. パネル透過率(ディスプレイの明るさ)が高い
  2. エアギャップがないためニュートンリングや不要な表面反射が抑制され、視認性が向上

このような投影型静電容量方式のタッチパネルディスプレイは、カーナビのみならず、現在さまざまな機器に搭載されており、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器は、その代表格と言っていいでしょう。これらのモバイル機器においては、薄型軽量化を追求した結果、タッチパネルの機能をディスプレイに内蔵したタッチパネルディスプレイも実用化されています。

タッチパネルをディスプレイ上に外付けする従来の方式を「アウトセル方式」と呼ぶのに対し、タッチ機能内蔵型は、「インセル方式」と呼ばれます。アウトセル方式からインセル方式への移行に併せて、駆動用のドライバICもディスプレイドライバとタッチドライバが一つに統合され、部品点数や製造工程の簡略化も進展しています。一方、ディスプレイ側でも、液晶ディスプレイから有機ELディスプレイへの置き換えなどにより、さらなる薄型化や視認性および表示性能の向上が図られています。

大型タッチパネルディスプレイ

ディスプレイの大型化に伴い、大きさも用途も豊富なバリエーションが揃っています。テレビや液晶モニタに取り付けることで、タッチパネル化する事ができる製品も登場してきております。

大型のテレビやモニタは、視認性が高く、離れていても多くの人が同時に見ることができる為、大人数での鑑賞用や宣伝、会議など幅広い用途で利用されてきました。

タッチパネル機能が付加されることによって、新たな使い方や従来の使い方を更に便利にすることができます。

利用機会としては、学校などで、電子黒板として利用したり、展示会でのデモンストレーションや会議でのプレゼンテーション、デジタルサイネージなどがあります。

デジタルサイネージは、駅の構内や、デパートなどに設置され、商品の宣伝や案内表示などに利用されていますが、タッチパネル化することにより、商品の説明や、道案内など双方向のコミュニケーションが可能であり、店員や案内係の代わりとして活用することもできます。操作したデータを蓄積できる為、販売促進への活用など新たな価値を生み出しています。

タッチパネルとペン入力

タッチパネルの入力方法としては、指での操作の他にペンでの操作があります。ペンは、入力方式の違いでいくつか種類があります。

  • 感圧式:タッチパネルを押した時の圧力を検知する仕組みです。古くから使われてきた方式で、指よりも細かく操作可能な為、操作ミス軽減、操作性向上の利点があります。
  • 静電容量式:一般的なスマートフォンは、静電気に反応する仕組みの為、シリコンゴムや導電性繊維のペン先が使われています。ただし、ペン先がある程度の太さがないと静電気が弱く反応しないこともあります。
  • 静電容量方式(自己静電発生):電池を内蔵し静電気を発生させる為、ペン先を細く出来、細かい描写が可能です。電池内蔵の為、交換や充電が必要となります。
  • 電磁誘導式:ペン先から発生する磁界を、タッチパネル側のセンサーが検知する仕組みで、タッチパネルと専用ペンの組み合わせとなります。ペン側に電池を内蔵することが不要です。

参考文献 https://www.eizo.co.jp/eizolibrary/other/itmedia02_08/ http://f-connect.co.jp/comparison/ https://www.iodata.jp/product/lcd/option/da-touch/sp.htm https://yamato-signage.com/about/what-is-touch-signage/ http://www.fmworld.net/biz/column/Touchpanel_tab/ https://news.mynavi.jp/article/20161122-pen/ https://daily-gadget.net/2020/01/26/post-10520/

光ケーブル

光ファイバーケーブルとは

光ファイバーケーブル

光ファイバーケーブル (光ケーブル) は、光信号により情報を伝える光ファイバー通信で使用するケーブルです。

光ファイバーとよばれる繊維を複数束ねて被覆を施しています。現代のインターネットは電話回線通信から光ファイバー通信へと移行しており、光ファイバーケーブルの重要性はますます高まっています。

光ファイバーは高純度のガラス繊維からできた透明度の高い繊維であり、遠距離でも光信号をほぼ減衰させずに伝搬できます。そのため、電話回線よりも長距離で高速な通信が可能です。

光ファイバーケーブルの使用用途

光ファイバーケーブルの主な使用用途として、各種計測器やイルミネーションなどの照明、医療用・工業用のファイバースコープなどが挙げられます。光ファイバーケーブルはインターネット用光回線以外にも様々な用途に使用されます。

ファイバースコープは、アクセス困難な装置・人体の内部を観察するために使用する機器です。医療用の内視鏡もファイバースコープの一種であり、光ファイバーを伝搬する光情報を基に患部をリアルタイムで確認することが可能です。

光ファイバーケーブルの原理

光ファイバーケーブルを構成する光ファイバーは、中心部の「コア」とその周囲の「クラッド」という2種類のガラスから作られます。コアは高屈折率、クラッドはやや低屈折率のガラスで作られるため、ケーブル内の光信号はコアとクラッドの境界で全反射します。これにより、光信号をほぼ減衰させずに遠くまで伝播します。

光ファイバーケーブルの種類

光ファイバーケーブルを構成する光ファイバーは、コアの直径によりシングルモードファイバーとマルチモードファイバーの2種類に分類されます。

1. シングルモードファイバー

コアの直径が小さい (10μm程度) 光ファイバーです。ある一定の角度で全反射する光のみを伝えます。光の到着速度が一定なので、長距離でも安定して大容量の通信を行うことができます。

2. マルチモードファイバー

コアの直径が大きい (50μm程度) 光ファイバーであり、全反射角度が異なる複数の光を同時に伝えます。各光の到着速度が異なるため長距離には適さず、近距離の中・小容量通信における使用がメインです。 

光ファイバケーブルの接続方法

光ファイバーの接続方法は大きく分けて「融着による方式」と「コネクタによる方式」の2種類があります。それぞれ特徴が異なるため、用途に応じた接続方法を選定します。

1. 融着方式

光ファイバーの先端部を加熱して融解し、光ファイバー同士の先端部を接着します。融着方式は接続部の信号減衰が小さいことから、接続のために必要なスペースも小さいです。接続部は衝撃に弱くなり折れやすいため、心線補強にファイバー保護スリーブを被せて加熱処理します。

顕微鏡でコアの中心軸が一致するよう位置決めして接続する「コア調心方式」と、多心ファイバーを固定V溝に並べて溶融時の表面張力で融着する「固定V溝調心方式」があります。

2. コネクタ方式

専用コネクタを使用して接続する方法です。融着方式では1度接続すると取り外しが不可能ですが、コネクタ方式は繰り返し着脱が可能です。光サービスの運用、保守など切り替えポイントが必要な場所で使用されます。コネクタの先端形状は自由に選択できるため、機器に直接接続できる点もメリットです。

光ファイバーケーブルのその他情報

光ファイバーケーブルの断線

光ファイバーケーブルは細いガラス素材でできているため、金属ケーブルに比べると曲げに弱く折れやすい性質があります。そのため、以下の原因で断線する危険があります。

1. 外部からの衝撃
光ファイバーケーブルに衝撃が加わって断線する最もシンプルなケースです。細いガラス素材の光ファイバーケーブルは、衝撃によって破損する場合があります。人通りが多い場所などには配線はしないよう注意が必要です。

2. 災害による電柱への衝撃
光回線を引き込んでいる電柱に衝撃が加わることで、断線する場合もあります。地震や事故などで電柱が衝撃を受け、接続している光ファイバーケーブルが損傷します。

3. 動物による損傷
動物がかじったりなどして断線するケースもあります。ペットを飼う場合はペットの導線上に配線しないようにするか、ペットが通れない措置を講じる必要があります。

光ケーブルの価格

光ケーブルは種類によって価格が異なりますが、マルチモード・ファイバのケーブルでおおむね100mで2~3万円程度から購入できます。シングルモード・ファイバはもう少し値段が上がり、100mで4~5万程度となります。

コネクタの形状により値段は変わります。SCコネクタが最も安く、次いでLCコネクタ、FCコネクタの順に価格が上昇していきます。コネクタが不要の場合は、コネクタがないケーブルを購入することもでき、その場合は費用が最も安くなります。

また、より通信速度が早い10Gbit対応の光ケーブルはもう少し値段が高くなります。その他、屋外用の高耐久性のケーブルであれば、さらに値段はあがります。

一般的にはボリュームディスカウントが効きますので、大量にケーブルを購入することで値段を下げることができる会社もあります。

参考文献
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/08.html
https://www.sanwa.co.jp/product/network/hikaricable/index.html
https://www.panduit.co.jp/column/naruhodo/4390/

ヒートシンク

ヒートシンクとは

ヒートシンク

ヒートシンク(heat sink)とは、冷却を目的に機器へ取り付けられる部品です。主に電子機器に対して使用され、過度な温度上昇を防ぎます。放熱板とも呼ばれます。

原理や構造が非常に単純で、物理的な動作を必要としません。そのため、故障しにくいというメリットがあります。

ヒートシンクの使用用途

ヒートシンクは、発熱を伴う電子部品などに組み合わせて使用されます。代表例はパソコンのCPU冷却です。

CPUなどの電子部品は、内部に半導体や導電体を使用しています。これらのパーツは動作時に常時発熱しており、発熱を放置すると電子製品内部の温度が上昇して、周囲のニスを溶かしたり、半導体部品を焼損させたりします。ヒートシンクでこれらの発熱部品を放熱すると、過熱による故障を防げるようになります。

通常のCPUではヒートシンクを取り付けた上で、ファンを用いて冷却しています。これらをセットでCPUクーラと呼びます。

ヒートシンクの原理

ヒートシンクは、金属を櫛状に並べた構造とします。櫛部分をフィンと呼び、櫛状にすることで表面積を増やして放熱性能を高めます。ヒートシンクの原理は熱力学第二法則です。これは、熱が必ず高温物質から低温物質へ流れるという、極めて単純な原理です。

したがって、ヒートシンクのみで運用した場合は、大気温度以下に下げられません。そのため、小型の電子部品や耐熱温度が高い機器対して使用します。ヒートシンクに合わせてファンやポンプを用いて強制循環を行うことで、冷却効率を向上できます。

発熱量が多い場合は、ペルチェ素子ヒートポンプなど、冷却効率がさらに高い機器を使用します。

ヒートシンクのその他情報

1. ヒートシンクの性能

ヒートシンクの性能は主に「熱抵抗」によって示されます。熱抵抗とは温度の伝わりにくさを示す値であり、「ある物体に1ワットの熱を加えたら何度温度が上昇するか」を意味します。熱抵抗の単位は「K/W」または「℃/W」です。

熱抵抗はヒートシンクの表面積や利用する素材によって異なり、値が小さいものほど性能が高くなります。表面積を大きくすることで最も効率良く熱抵抗を低減できるため、ヒートシンクは櫛状や蛇腹状に設計されます。

ヒートシンクの性能を示す値としては、圧力損失もあります。圧力損失はヒートシンクを通る空気や冷却水の抵抗を示したもので、値が低いほど高性能です。

2. ヒートシンクの素材

ヒートシンクの素材には熱伝導性が高い金属が使用されます。アルミニウム合金や真鍮・青銅といった銅素材、あるいは銀や鉄などの金属が用いられます。熱伝導性が良いのは銅素材ですが、重量があり高価です。そのため、ヒートシンクの素材として用いられることは稀と言えます。

それに対してアルミニウムは軽量低コストです。アルミニウムは自己放熱性も高く、風量が少ない環境ではアルミニウムがより適している場合もあります。

ヒートシンクの素材としては主にアルミニウムが用いられます。アルミニウムでは必要スペックを満たさない場合に他素材が検討されます。

参考文献
https://www.alu4all.com/what-is-a-heat-sink-and-its-working-principle/
https://www.furukawa.co.jp/jiho/fj115/fj115_16.pdf
https://www.koaglobal.com/-/media/Files/KOA_Global/technology/seminar_doc/CEATEC2019session1forWEB.pdf?la=ja-JP&hash=E38C0CD04A078CEC167CE17E0D449029
https://www.micforg.co.jp/jp/c_ref2.html
https://www.denshi.club/parts/2016/01/2.html
http://www.hardwarepartss.com/Company-news/775.html

ペルチェ素子

ペルチェ素子とは

ペルチェ素子

ペルチェ素子 (英: Peltier element ) とは、接合した2種の異なる金属に電流を流すと、接合部での熱の移動が起きるペルチェ効果を利用した素子です。

現在実用化されている効率の良いペルチェ素子は2つの金属ではなく、n型半導体、金属、p型半導体の3種類の素材で作られています。熱の移動を利用して、通常は冷却装置として利用されますが、電流の方向を変えれば熱の移動方向も変わるので加熱装置としても利用できます。

ペルチェ素子は、ヒートポンプなどと異なり、電流を流すだけで冷却効果が得られるので、騒音や振動などが発生しないメリットがあります。また、冷媒が不要で、腐食性液体などを使用しないので、環境負荷が低い冷却装置です。

ペルチェ素子の使用用途

ペルチェ素子は、クリーンな冷却素子として幅広い分野で使用されます。

1. 食品分野

ペルチェ素子は小型・清潔・安全です。食品ショーケース、小型ドリンクケース、ミルククーラー、ホテルパンなどに使われます。

2. 産業分野

産業分野の機器は、例外なく水に弱いものですが、温度をコントロールして結露発生の少ない冷風を供給したり、結露ドレーンを内蔵したりするなどの対策をしています。操作盤の冷却、監視カメラの冷却、制御盤内部部品の局所冷却、成形金型の冷却、恒温湿エア供給装置などの用途があります。

3. 光学分野

限られたスペースでのデバイスの冷却に、ペルチェ素子が多く使われます。具体的には、発熱源の直接冷却、小型中継ボックスの冷却、光検出素子の温度制御、レーザーダイオードの温度制御、CCDカメラ・プロジェクター・複写機・監視カメラの冷却、レーザー等の冷却水などです。

4. 民生分野

振動や騒音が全く無く、また冷却機構が小型であるという利点を生かして、病院やホテル客室向けの業務用冷蔵庫としてペルチェが使われます。小型冷蔵庫、クーラーボックス、ビールサーバー、ワインセラー、水槽の水の温度管理、コンピュータCPUの冷却、除湿器、空気清浄機、ドライヤー、美顔器のマイナスイオン発生装置などです。

5. その他の分野

計測・分析分野、半導体分野、医用・理化学分野などにおいても、ペルチェ素子が冷却・加熱に使用されます。

ペルチェ素子の原理

ペルチェ素子は、現在は金属ではなくp型半導体とn型半導体を使用します。エネルギーレベルの低いp型半導体から、エネルギーレベルの高いn型半導体に電子の移動が起きるには、外部からエネルギーを取り込む必要があり、この際に吸熱が起き、温度が下がります。

このとき、電流を流す方向を逆転させると、今度はエネルギーの高い方から低い方へ電子の移動が起きるので、余剰なエネルギーを放出する発熱が起きます。したがって、ペルチェ素子は、流す電流の向きによって、冷却装置としても、加温装置としても利用が可能です。

ただし、ペルチェ素子を用いた熱変換は、電力消費の割に効率が良くないので、あまり大掛かりな冷却や加熱には向いていません。効率よく冷却を行うためには、フィンやファンを用いた放熱・排熱機構と合わせて用いるのが、効果的です。

ペルチェ素子のその他情報

1. 電子冷却のメリット

一般に冷却装置は、冷媒と呼ばれる冷却ガスを用いることで熱交換を行います。この冷媒は、少なからず地球温暖化に影響する温室効果ガスの1つであるため、環境負荷は無視できません。

一方、ペルチェ素子を用いた電子冷却は、冷媒を必要としないため、環境負荷の低い冷却システムであると言えます。また、冷媒を用いる冷却装置ではコンプレッサが必要で、これにより騒音や振動の発生は避けられないが、電子冷却はこうした心配がありません。

2. ベルチェ素子の冷却機能

ペルチェ素子の特性を利用することにより、冷却の機能の実現が可能です。ペルチェ素子にDC電流を流すことで、低温側では吸熱が、高温側では発熱が起きます。この現象を利用したのが、ペルチェ素子の冷却機能です。

市販されているものは、マイナスの温度まで冷却することが可能です。保冷ボックスやパソコンのCPUの冷却などに利用されます。

3. ウェアブルデバイスへの応用

ペルチェ素子の性質を利用したウェアブルデバイスが開発されています。販売されているウェアブルデバイスの中には、首を温めたり冷やしたりすることができるデバイスがあります。

このデバイスは、首に触れる位置にあるパネルを温度制御することにより、温かさや冷たさを感じることが可能です。

参考文献
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B0080431526018222
https://www.z-max.jp/peltier/about/
http://ham-ham-ham.com/pc.technical.nagamoti.html
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1907/22/news071.html
https://www.apiste.co.jp/nrc/feature/
http://scnt.co.jp/

ヒューズ

ヒューズとは

ヒューズ

ヒューズとは、過電流が発生した際に電気火災や上位回路への波及を防止するための電気・電子部品です。

電気回路で短絡や過負荷などの異常が発生した際、電流値が回路の設計値を超える過電流が発生します。過電流は電気回路上の機器自体の故障につながるだけでなく、異常な発熱や発火によって火災を引き起こす危険もあります。

また、電源側の上位回路に電圧降下などの異常が発生する危険性も高いです。ヒューズは、過電流からこうした危険を保護するために、組み込まれています。回路に直列に接続することで、通常時は電流を流す導体として振る舞います。過電流が発生した際は、ヒューズ内の導体部分が溶断することで負荷側回路への電源供給を遮断します。

ヒューズの使用用途

ヒューズは産業においては幅広い用途で使用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 計装・制御回路の保護用
  • 自動車用制御パーツの保護用
  • プリンタ・複合機などのOA機器保護用
  • テレビやエアコンなどの白物家電保護用
  • 高電圧送配電網の変圧器短絡保護用
  • 高圧モーターの短絡保護用

以前は多くの家庭の配電盤に使用されていましたが、近年は一度切れると交換が必要なヒューズよりも、ノーヒューズブレーカのほうが普及しています。

しかし、現在でも自動車には、電気系統の保護や車両火災防止のためにヒューズが使われています。用途によって様々な形状をしており、板ヒューズやブレード型ヒューズなどがあります。

ヒューズの原理

ヒューズは、過電流による発熱で自己溶断することが基本原理です。主に口金、ヒューズエレメント、ハウジングなどから構成されます。

1. 口金

口金は、電気回路と接続する金属部分です。ガラス管ヒューズなどではヒューズリンクと呼ばれます。Y端子やブレード形となっているヒューズも販売されています。

2. ヒューズエレメント

ヒューズエレメントは、過電流時に溶断する部分です。ヒューズエレメントに電流が流れると、電流値の二乗に比例したジュール熱が発生します。定格電流以下であれば、ジュール熱発生に伴う温度上昇よりも放熱が優位なので溶断は起こりません。定格電流を超えると温度上昇し、溶断して電流を遮断します。一般に溶断は不可逆であり、復帰するにはヒューズの交換が必要です。

3. ハウジング

ハウジングは、ヒューズのエレメントや口金を支持する部分です。材質はガラス・磁器や樹脂などの絶縁材料で構成されます。ハウジングがガラス管で構成されたヒューズをガラス管ヒューズと呼びます。

ヒューズの選び方

ヒューズをは、主に定格電流値で選定します。回路上部品の定格電流値以下の定格電流を選択しつつ、誤作動による回路遮断が無いように選ぶのがポイントです。

選定する際に考慮するべき電流として、定常電流や突入電流などが挙げられます。定常電流は実際に使用する回路が安定しているときに流れる電流値で、突入電流は回路へ電源投入した際に発生する始動時大電流です。突入電流では溶断せず、定常時に定常電流を超過すると溶断するように選定します。溶断-時間特性と定格電流を合わせて保護条件を検討します。

溶断-時間特性とは、電流の大きさと遮断される時間の特性です。突入電流の継続時間内は溶断しないように、かつ短絡事故時には即座に溶断するように選定します。その他、選定する際に重要な検討項目として、実際に回路を使用する環境温度があります。ヒューズは熱により溶断する仕組みなので、機器周辺の雰囲気温度によって影響を受けるためです。

ヒューズの種類

ヒューズは、実装する回路の種類や環境に合わせてさまざまな形状があります。代表的な種類は、以下の通りです。

使用したいタイプ、形状が既製品の中にない場合は、特注に応じてくれるメーカーも存在します。また、ほとんどのヒューズは過電流で遮断する電力ヒューズですが、温度で遮断する温度ヒューズも存在します。

周囲の温度上昇を検知して溶断するため、ドライヤーなど熱を発生させる電化製品などで多く使用されています。温度ヒューズのエレメントは抵抗値が低く、電流による発熱はほとんどありません。

参考文献
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/support/analogware/09/chap2.pdf
https://byjus.com/physics/working-principle-of-an-electrical-fuse/

OCR

OCRとは

OCR

OCRとは、光学文字認識 (Optical Character Recognition / Reader) の略語で、カメラやスキャナで取り込んだ画像の文字部分を認識し、コンピューターが認識できるテキストデータに変換する技術です。

手書き文字でもOCRによってテキストデータ化されるため、一旦取り込んでしまえば、後から検索をかけることによって、目的の文書にすぐにアクセスすることができます。製品としては、物理的なOCRスキャナや自前で用意した画像に対して、クラウド上でOCRを行うサービスが販売されています。

OCRの使用用途

OCRは、特に手書き文書の電子化のために用いられる場合が多く、ペーパーレス化や文書へのアクセシビリティの向上を目的として導入されています。現在は、様々な手続きがオンラインで行われますが、手書きの書類による手続きが主流のものもあります。

例えば、学校の入学願書、イベントや街頭などで行われるアンケート調査などです。紙の文書はかさばるだけでなく、目的の文書を探すのに時間がかかってしまいます。これまでは、手書きの文字を人の手で再度データ化するということが行われてきました。

しかし、OCRの導入により、スキャンするだけで検索・編集可能なデータに変換できるため、伝票や領収書などを電子化することによって、業務の効率化に大きく貢献します。

OCRの原理

OCRは画像を取り込んだ後、文字認識を行うために大きく分けて3つの処理を行っています。

  1. 文字が書かれている部分を抽出するために、レイアウト解析と呼ばれる処理で、文字部分とそうでない部分を大まかに分けます。
  2. レイアウト解析で抽出した文字列のかたまりから、列や行を決定します。
  3. 列や行の中から一文字一文字を切り出して、文字認識を行います。

こうして抽出された文字を同定するために、さらに3つの処理を行います。

  1. 文字サイズの正規化を行い、均等なサイズの文字として扱います。
  2. 1つの文字を線分の集合と考えて、それぞれを方向成分に分解することで文字の特徴を数値化します。
  3. 予め登録してあるテンプレートと比較して、パターンマッチングを行い文字を特定します。

3の工程で判断する際の指標は、ユークリッド距離の計算によって算出します。ユークリッド距離とは、人が定規で測るような二点間の距離のことで、ピタゴラスの公式 (三平方の定理) で得られる距離です。

最近では、最後のマッチングに機械学習を取り入れることによって、識字率を向上させる取り組みが盛んに行われています。

OCRソフトの種類

近年では従来型のOCR以外にも、様々な形態でOCRが提供されています。例えば、クラウドサービスとして提供されているOCRでは、ソフトのインストールが不要で、画像ファイルをクラウドサービス側に送信することによって、テキストデータを得ることができるようになりました。

また、スマートフォンアプリとして提供されているOCRでは、スマートフォンのカメラで撮影した画像をリアルタイムでテキスト化することが可能です。また、翻訳ソフトや家計簿ソフトなどにOCRが組み込まれているケースも多く、OCRでテキストを読み取ったうえで翻訳を行ったり、レシートを読み取り、自動で家計簿を作成したりできるサービスも登場しました。

これらのOCRソフトは、一定規模以下の利用であれば無料で利用できるケースも多くあり、OCRを試験的に導入することもできます。

OCRのその他情報

AIを用いたOCR

近年では、AIを用いたOCRが普及しつつあります。AIを用いたOCRはAI-OCRと呼ばれ、増えすぎた書類のデジタル化などを目的として、企業で導入されるケースも増えてきています。

従来のOCRと比較して、機械学習の手法を用いることでより高精度に文字認識ができることが特徴です。印刷された文字のように読み取りが容易な場合であれば、ほぼ100%に近い精度で読み取りが可能となります。

また、従来型のOCRでは、読み取りの前に読み取り位置や項目の定義を行う必要がありました。しかし、AI-OCRであれば、読み取り位置や読み取り項目をAIが自動で判別するため、事前の設計作業は不要です。これによって、多種多様な書類を、簡便に読み取ることができるようになりました。

最近では、RPAと呼ばれる業務の自動化ツールが普及しつつあります。RPAとはロボティックプロセスオートメーション (Robotic Process AUtomation) の略語です。AI-OCRで書類を自動読み取りしたうえで、RPAを用いて処理を自動化するような使い方が注目されています。これにより、単純作業の自動化が実現されます。

参考文献
https://mediadrive.jp/technology/techocr05.html
https://www.ricoh.co.jp/service/cloud-ocr/column/aiocr/

画像処理システム

画像処理システムとは

画像処理システムとは、2次元・3次元の画像やデータを加工・合成したり特性を読み取ったりする一連のシステム構成のことです。

画像処理システムは人の目に代わり、様々な判定や測定を可能にするため、自動機や産業用ロボットには欠かせない技術となっています。

画像処理システムの使用用途

現代において下記のような画像処理は極めて広い領域で活用されています。

1. 医療分野

医療分野における代表的な画像処理がCT検査とMRI検査です。CTは従来のX線検査の画像を2次元から3次元に拡張することで体内を全体的に観察できるようになりました。MRIでは強磁場と電磁波により放射線を使うことなく診断が可能です。どちらの検査も画像処理技術を用いて体内を色々な角度から観察できます。

2. 産業分野

産業分野では製造ラインで多くの画像処理システムが用いられています。組立工程における部品の認識、ピックアップ、アライメントや、検査工程における個数検査、外観検査、寸法検査や、出荷工程における選別、梱包などだけでなく、危険監視に至るまで広い範囲で用いられており、工程の自動化に大きく貢献しています。

3. 交通分野

交通分野における代表的な利用用途は自動車の運転支援や運転自動化があります。前方だけでなく360°全体のカメラ画像を処理することにより、歩行者や障害物、他の車両の検知などを行い、運転者への注意喚起や回避行動を行います。

自動車以外にも鉄道システムにおいて設備監視や保安監視に適用され、屋外という明るさの変化する環境下と鉄道沿線という広い領域を人に代わって監視するのに役立っています。

4. セキュリティ分野

セキュリティ分野での代表的な利用例が顔認証システムです。スマートフォンで広く使われている他、建物内での入退室のセキュリティ強化にも役立っています。

画像処理システムの原理

画像処理システムは下記の流れで動作します。

1. 画像入力

主にCCDセンサを用いて光の分布を電気信号に変換します。

2. 平滑化

前処理のひとつである平滑化は、ピンボケのようになめらかな濃淡変化を与える処理です。平滑化はフィルタに覆われる領域内画素の平均値を計算し、その値を新しい画素数と定義するため平均化フィルタとも呼ばれます。画像を平滑化してノイズを除去する空間フィルタとして使用されます。

3. 特徴抽出

特徴画像のひとつに二値画像が挙げられます。二値化とは、濃さが数段階ある状態から、白と黒の2段階のみにすることで、濃さが白か黒のどちらかだけになった画像を2値画像と言われます。

階調値を用いて画像の性質を知る方法のひとつにヒストグラムがあります。横軸に画素数を、縦軸に画素数の頻度をとり、その情報をグラフにしたものです。その上で、ヒストグラムの横軸の階調数をどこかで2つに分け、階調数がそれより大きければ画素データは1、小さければ0のように分割する処理方法です。

4. 評価

特徴抽出で得られた特徴画像を目的に応じて評価します。

画像処理システムのその他情報

1. 画像処理システムのカメラ選定

画像処理する上でカメラ選びは非常に重要です。カメラは画像処理システムの中では、画像の入力プロセスでのワークの画像データを取得するために使用します。

生産現場などでは、製品のキズや状態を検査するために目の機能を果たすカメラを用いて基板などの検査対象物を撮影しますが、撮影する条件が異なると検査精度にバラつきが生じる原因となります。

撮影条件をなるべく同じにするために、レンズや照明などとともに適切にカメラを選ぶ必要があります。画像処理システムの方式は大きく分けて下記の2つです。

エリアセンサカメラ方式
この方式は最も一般的に用いられる撮像方式で、2次元の画像を得ることが可能です。取得できる画像のサイズはカメラによって決定します。

ラインセンサカメラ方式
この方式は1次元の画像を連続的に取得し、2次元の画像を得ることが可能です。画像を取得する際は、カメラもしくはワークが一定方向に動いている必要があります。比較的大きなワークの撮像に有効な方式です。要件を十分に把握した上で適切なカメラの選定を行うことが必要です。

2. 画像処理システムのリアルタイム処理

画像処理システムの中での計算処理やソフトウェアまたはハードウェアで行われます。ソフトウェアによる処理はプログラム変更で様々な変更に対応できるため柔軟性が高いのですが、危険回避などに関わるリアルタイム性が要求される場面ではハードウェアによる処理が必要となります。

例えば、自動車での駐車時の衝突回避に用いられるアラウンドビューモニターは本来カメラが存在していない自動車上空からの画像をリアルタイムで映し出していますが、ここではASICなどの専用ハードウェアにより、車載カメラからの画像データを合成処理して画像をリアルタイムに生成しています。

参考文献
https://it-mint.com/2018/10/08/binarization-and-feature-measurement-for-image-processings-1570.html
https://www.visco-tech.com/newspaper/column/detail11/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2004/09/news052.html

高電圧プローブ

高電圧プローブとは

高電圧プローブとは、高い電圧を測定することができる受動プローブです。

数百Vを超えるような高電圧測定では、標準の電圧プローブを用いると壊れてしまい、測定ができません。汎用プローブは高周波・高電圧の対応が困難です。それに対して、高電圧プローブは、数千~数万Vの高い電圧まで測定することが可能であり、高電圧専用の受動プローブです。

高電圧プローブは、オシロスコープや専用の計測器に接続して、電圧波形を測定する場合などに使用されます。高い周波数の大きな電圧を測定すると、プローブはすぐに発熱するため、火傷や感電事故に十分注意する必要があります。

高電圧プローブの使用用途

高電圧プローブは、数百V以上の高い電圧の波形測定用です。IGBT (絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ) などのパワーデバイスを使用したモータードライバスイッチング電源、インバータ、コンバータなどの信号測定に多く使われます。

また、直流回路などの高い電圧負荷が考えられる場合に使用されることが多く、ブラウン管のアノード電圧測定用も用途の1つです。系統を遮断せずにメガソーラーなどの太陽光発電設備の安全点検やハイブリッド車や電気自動車に使用される高電圧電気システムの測定などの用途もあります。

プローブを選択する際は、周波数帯域、入力抵抗、入力容量、動作電圧範囲、及び対応するオシロスコープの機種などを考慮します。

高電圧プローブの原理

高電圧プローブは、オシロスコープなどの計測器の内部抵抗と、プローブの倍率抵抗との比で分割して、高電圧を測定する方式です。高電圧を測定する場合、100:1、もしくは、1,000:1などの減衰比を持つ高電圧プローブを使用します。

プローブを使用して、テストポイント、すなわち信号源とオシロスコープを物理的かつ電気的に接続します。また、電圧プローブの最大許容電圧は周波数が高くなるほど減少する性質があることから、定格の確認が必要です。

具体的には、入力端子とオシロスコープ入力部の間にプローブが設置されており、そこを通過する波形を測定します。高周波の信号を測定する時には入力容量が負荷となり、信号に影響を及ぼしますが、高減衰比を持つプローブを介して接続することにより、より正確な波形が測定可能です。

高電圧プローブの構造

高電圧プローブの中でも測定する電圧範囲により、構造は異なります。オシロスコープメーカから販売されているDC25KV程度の製品は、一般的なプローブと同様に手持ちで扱えます。

高電圧プローブの構成は、プローブ本体とマッチングボックス、及びそれらを繋ぐケーブルです。プローブの内部に絶縁オイルやガスを充填し、耐電圧性能を高める構造になっています。プローブ本体の入力抵抗は、アッテネータの減衰量によりますが、100~1,500MΩ程度の大きな値のものが使われます。

マッチングボックスは位相補償を行うもので、アッテネータの減衰量が大きいことや、長いケーブルを使うことから、調整手順は通常の受動プローブより複雑です。高電圧プローブのメーカーが調整して出荷し、ユーザーによる調整を禁じている場合もあります。

高電圧プローブのその他情報

1. 高電圧プローブの安全対策

高電圧プローブは高電圧を取り扱うので、種々の安全対策が行われます。

  • 被測定系が高電圧なので離れた位置から測定できる様に、ケーブルは長いもの (3mから10m程度) が用意されています。
  • 手持ちでの操作を前提としたプローブでは、人体への放電を防ぐために設けられるのが、大きなガードリングです。また、固定前提のプローブ本体には、プローブ自体を接地するためのターミナルを設けます。
  • 取り扱いの注意も重要です。例えば、高周波の電圧を測定する場合、高周波ほどプローブの許容電圧は低下するので、メーカーの特性図を十分把握する必要があります。また、プローブの接地端子が外れると、入力端子や筐体に高電圧がかかり、危険です。

2. 絶縁プローブ

絶縁プローブとは、プロー ブだけをフローティング状態にしたものです。オシロスコープ本体とは電気的に絶縁されています。

プローブを絶縁させるには、トランスを用いてプローブの先端部とオシロスコープとを分離する方法と、プローブ先端部で受けた電気信号を光電変換して光ファイバーで伝送し、受信機側で元の信号に戻す方法があります。何れもプローブとオシロスコープ間に電気的な導通はなく、互いに絶縁された状態ですが、プローブが検出した信号はオシロスコープ側に伝えられます。

このような構成なので、オシロスコープ本体は適切に接地された状態でも、絶縁プローブのチップと グランド・リード間に加わる被測定回路の信号には影響しません。従って、被測定回路に非常に高いコモンモード電圧が乗っている場合でも、絶縁プローブを利用すればチップとグランド・リード間の差動電圧だけを測定することができます。

参考文献
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-DigitalOscilloscope-03/
http://www.rf-world.jp/bn/RFW29/samples/p030-031.pdf
https://jp.tek.com/datasheet/isolated-measurement-systems-tivp1-tivp05-tivp02-datasheet

X線検査装置

X線検査装置とは

X線検査装置

X線検査装置とは、対象物にX線を照射し、透過したX線を測定・解析することで、対象物を破壊することなく内部の異物や破損を検出可能な装置です。

元素の特定や有害物質の含有率を正確に計測することも可能です。

X線検査装置の使用用途

X線検査装置は、医療分野や食品・電子部品の製造加工のみならず、建設業界や航空業界などあらゆる場面で利用されています。下記のような使用用途が代表的です。

  • 医療分野: レントゲン撮影、CTスキャンなど
  • 製造業 : 異物の検出、製品の検品など
  • 建設業 : コンクリートなどの非破壊検査
  • 航空業 : 空港での荷物検査など

図3-X線撮影の造影イメージ

図1. X線撮影の造影イメージ

医療分野におけるX線検査装置による造影は、透過X線の強度が大きい部分ほど白く映り、逆に照射X線が減衰した部分は黒く映ります。透過X線の強さは、対象物質の原子番号と密度、厚さなどの要素により決まります。 原子番号が大きいほど、密度が大きいほど、厚いものほど照射X線が遮蔽され、透過X線の強度が小さくなります。

例えば、人体を対象にしたレントゲン撮影の場合は下記のように造影されます。

  • 透過度が高い (黒色) : 空気 (肺、消化管ガス) や脂肪
  • 透過度が中程度 (灰色) : 水 (胸水、腹水、尿) 、軟部組織 (脳、腹部臓器、筋肉など)
  • 透過度が低い (白色) : 骨、石灰化 (胆石、腎結石など) 、金属 (人工関節など)

このことを利用して、CT撮影した画像を3次元カラー画像にする技術も開発されています。

X線検査装置の原理

図1-X線の透過性

図2. X線の透過性

X線は、波長が10-3 nm – 10 nm程度の電磁波で、放射線の1種です。放射線には、α線、β線、γ線、X線、中性子線などの種類があります。X線は、α線などの粒子線とは異なり、波長が短い電磁波であるため、物質の透過性が高く、ほとんどの物質を透過することができます。

X線を物質に照射すると、X線の一部が物質中の電子と 衝突し相互作用することで、吸収や散乱現象が起こります。照射したX線のうち、このような現象が起きなかったX線が物質を透過した透過X線です。

X線検査装置の構造

図2-X線検査装置の構造

図3. X線検査装置の構造

X線検査装置は、X線照射装置とX線感光部で構成されており、照射対象を挟んで使用し、透過X線の強度分布をフィルムで造影します。従来のX線感光部は、感光フィルムを蛍光増感紙ではさみ、カセッテと呼ばれるケースに入れて使用します。現在では、ほとんどのX線検査装置がデジタル化されており、感光フィルムの代わりに、イメージングプレート (IP) やフラットパネルディテクター (FPD) が使用されています。

X線検査装置の種類

X線検査装置は主に下記のような種類に分けられ、進歩してきました。

1. X線TV装置

動画像としてリアルタイムに身体内部の状況を捉え、TV画像上で観察できる装置です。造影剤を臓器や血管内に注入し、これらが造影される様子を確認しながら撮影することができます。また、X線TV装置で透視観察をしながら内視鏡などを用いて観察、治療を行うことも可能です。

2. CT型荷物検査

空港での荷物検査は、上下方向にX線を照射し、内部を観察する方法が一般的ですが、医療分野で利用されるCTの原理を用いることで、荷物の3次元画像を造影可能な装置が開発されています。これにより、手荷物を開けずに検査することができるため、空港での手荷物検査場の混雑を緩和することが期待されています。国内外の一部の空港に導入されています。

3. X線検査装置の小型化

携帯型X線源の開発と感光部のデジタル化によって、現代では様々な可搬式のX線検査装置が開発販売されています。主に工場や建設現場などで非破壊検査装置として利用されています。検査対象を破壊せずに、内部の割れ・亀裂・腐食等の異常などが確認できます。工場や建設現場の完成や定期検査によく用いられている他、水中での検査や自走式ロボットに装着など、小型化によってX線検査装置の用途が広がっています。

X線検査装置のその他情報

X線検査装置の資格

X線検査装置を使用するには、「エックス線作業主任者免許」の取得者を責任者として選任することが必須です。この資格の保有者は、X線に関する保全業務の責任者として業務に携わることができ、放射線障害防止の為の立ち入り禁止区域の確認や装置検査、X線照射調整や管理などを職務とします。

資格取得には、次の4科目の試験を受け、合計で60% (各科目40%) 以上の得点で合格する必要があります。

  1. X線の管理知識
  2. X線の測定知識
  3. X線の生体に与える影響
  4. 関係法令

この免許は更新等はなく、一度合格すれば永久に保持出来る資格です。

参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/words-xray3.html
http://www.shikakude.com/sikakupaje/xsen.html
https://toreck.co.jp/industrial/question.html
https://www.matsusada.co.jp/support/faq/xm_xins/x-ray-license.html

照度センサー

照度センサーとは

照度センサー

照度センサーとは、周囲の明暗を感知するための人感センサーの1種です。

周囲が暗くなると自動的に点灯、明るくなると自動的に消灯する機能や、ディスプレイの輝度を人間がちょうどよいと感じる程度に調整する機能を有しています。照度センサーの種類は、大きくフォトトランジスタを用いる品種、フォトダイオードを用いる品種、フォトダイオードにアンプ回路を追加した品種の計3種類に分類することが可能です。

照度センサーは、電子機器の消費電力の削減や表示画面の画質改善に貢献できる技術といえます

照度センサーの使用用途

照度センサーは、ディスプレイや液晶画面の明るさの検出、照明のON/OFFを自動化するための周囲の照度測定などに広く用いられています。

例えば、携帯電話やスマートフォン機器において、周囲の明るさに応じた液晶バックライトの輝度コントロールが可能になることを利用して、液晶画面表示の視認性向上や低消費電力化に寄与しています。ディスプレイに搭載されると、自動的に視認性を調整することが可能です。

また、カメラや光通信など、幅広い分野で採用される、需要が伸びてきている技術の1つです。

照度センサーの原理

照度センサーは、受光部分に入射された光の照度を電流に変換するフォトダイオードやフォトトランジスタを用い、その出力電流をセンサー機能として使用可能な電流値まで増幅する回路により実際の光の明るさを電気的な値に変換することで、センシングしています。

すなわち、明るさによってフォトトランジスタに流れる電流が変化し、そのことにより回路内に設置されている抵抗の両端では明るさに応じた電圧が現れ、光を検出しますが、一般のフォトダイオードの出力電流は微弱であることから、通常はトランジスタで増幅してから出力します。

また、受光素子は人間の目が感じることができる波長と同範囲の分感度特性を有することが必要です。しかし、一般的に受光部に使用されているフォトダイオードは、人の目には見えない赤外線領域外にも感度があるため補正が必要です。

赤外線領域に分光感度のピークをもつサブのフォトダイオードを搭載することで、メインのフォトダイオードからサブのフォトダイオードを引き算します。それによって、人間の目が感じることのできる視感度に近い分光感特性を得られるような仕組みです。

照度センサーのその他情報

1. 照度センサーの出力構成

照度センサーにもさまざまな構成の商品があり、受光部のフォトダイオードやフォトトランジスタからの出力電流をアナログ回路で電圧値に変換し出力する非常にシンプルなものから、アナログ-デジタル変換部とその先のデジタル制御部、およびSPI等のシリアルインターフェイスを有する高機能なタイプまで、市場の用途に応じて多種多様な照度センサーが存在します。

SPIインターフェイスがあれば、マイコン等からの制御が比較的容易にソフトウエアで対応可能で、きめ細かいアプリケーションの制御に追従できます。通常、このような場合はセンサーASIC化された小型の専用ICを用いることで、小型高機能な照度センサー製品を実現しています。

2. 照度センサースイッチ

照度センサーを使用した応用製品として、照度センサースイッチがあります。このスイッチを使用すると、部屋の照明を外部の明るさに合わせて自動的にON/OFFすることが可能です。例えば、大規模なオフィスでは通常、各エリア毎に照明のスイッチがあり、そのスイッチより照明のON/OFFを行っているため、照明センサーを取り付けることでこれらの作業の自動化を実現できます。

照明センサースイッチを取り付けるメリットは、外部の明るさに合わせて照明を自動的にON/OFFできるようになるだけではありません。高機能の照度センサースイッチでは、照度によって照明を間引いて点灯させることも可能です。これらの機能の設定は、照度センサーとは別に設置するコントローラーから設定することができます。

コントローラーからはどの程度の照度でどの位置の照明をON/OFFするか、どの曜日及び時間帯で機能を有効にするかなどを設定可能です。また、季節によっても設定照度を変更可能な照度センサーも存在します。

このように照度センサーをオフィス等に取り付けることで、時間や季節、外の天気の状況によって屋内の各部の照明の照度を適切にコントロールすることが可能になります。このような取り組みは、結果として節電にもつながります。

参考文献
https://xtech.nikkei.com/dm/article/WORD/20060306/114191/
https://cgi.jp.sharp/corporate/rd/36/pdf/101_08.pdf
https://www.sensor-sk.com/hikari/hika01_hikari.html#n8