ヒューズとは
ヒューズとは、過電流が発生した際に電気火災や上位回路への波及を防止するための電気・電子部品です。
電気回路で短絡や過負荷などの異常が発生した際、電流値が回路の設計値を超える過電流が発生します。過電流は電気回路上の機器自体の故障につながるだけでなく、異常な発熱や発火によって火災を引き起こす危険もあります。
また、電源側の上位回路に電圧降下などの異常が発生する危険性も高いです。ヒューズは、過電流からこうした危険を保護するために、組み込まれています。回路に直列に接続することで、通常時は電流を流す導体として振る舞います。過電流が発生した際は、ヒューズ内の導体部分が溶断することで負荷側回路への電源供給を遮断します。
ヒューズの使用用途
ヒューズは産業においては幅広い用途で使用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。
- 計装・制御回路の保護用
- 自動車用制御パーツの保護用
- プリンタ・複合機などのOA機器保護用
- テレビやエアコンなどの白物家電保護用
- 高電圧送配電網の変圧器短絡保護用
- 高圧モーターの短絡保護用
以前は多くの家庭の配電盤に使用されていましたが、近年は一度切れると交換が必要なヒューズよりも、ノーヒューズブレーカのほうが普及しています。
しかし、現在でも自動車には、電気系統の保護や車両火災防止のためにヒューズが使われています。用途によって様々な形状をしており、板ヒューズやブレード型ヒューズなどがあります。
ヒューズの原理
ヒューズは、過電流による発熱で自己溶断することが基本原理です。主に口金、ヒューズエレメント、ハウジングなどから構成されます。
1. 口金
口金は、電気回路と接続する金属部分です。ガラス管ヒューズなどではヒューズリンクと呼ばれます。Y端子やブレード形となっているヒューズも販売されています。
2. ヒューズエレメント
ヒューズエレメントは、過電流時に溶断する部分です。ヒューズエレメントに電流が流れると、電流値の二乗に比例したジュール熱が発生します。定格電流以下であれば、ジュール熱発生に伴う温度上昇よりも放熱が優位なので溶断は起こりません。定格電流を超えると温度上昇し、溶断して電流を遮断します。一般に溶断は不可逆であり、復帰するにはヒューズの交換が必要です。
3. ハウジング
ハウジングは、ヒューズのエレメントや口金を支持する部分です。材質はガラス・磁器や樹脂などの絶縁材料で構成されます。ハウジングがガラス管で構成されたヒューズをガラス管ヒューズと呼びます。
ヒューズの選び方
ヒューズをは、主に定格電流値で選定します。回路上部品の定格電流値以下の定格電流を選択しつつ、誤作動による回路遮断が無いように選ぶのがポイントです。
選定する際に考慮するべき電流として、定常電流や突入電流などが挙げられます。定常電流は実際に使用する回路が安定しているときに流れる電流値で、突入電流は回路へ電源投入した際に発生する始動時大電流です。突入電流では溶断せず、定常時に定常電流を超過すると溶断するように選定します。溶断-時間特性と定格電流を合わせて保護条件を検討します。
溶断-時間特性とは、電流の大きさと遮断される時間の特性です。突入電流の継続時間内は溶断しないように、かつ短絡事故時には即座に溶断するように選定します。その他、選定する際に重要な検討項目として、実際に回路を使用する環境温度があります。ヒューズは熱により溶断する仕組みなので、機器周辺の雰囲気温度によって影響を受けるためです。
ヒューズの種類
ヒューズは、実装する回路の種類や環境に合わせてさまざまな形状があります。代表的な種類は、以下の通りです。
- 電子基板実装用ヒューズ
- 温度ヒューズ
- ガラス管ヒューズ
- ブレードヒューズ
- 高圧回路用限流ヒューズ
使用したいタイプ、形状が既製品の中にない場合は、特注に応じてくれるメーカーも存在します。また、ほとんどのヒューズは過電流で遮断する電力ヒューズですが、温度で遮断する温度ヒューズも存在します。
周囲の温度上昇を検知して溶断するため、ドライヤーなど熱を発生させる電化製品などで多く使用されています。温度ヒューズのエレメントは抵抗値が低く、電流による発熱はほとんどありません。
参考文献
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/support/analogware/09/chap2.pdf
https://byjus.com/physics/working-principle-of-an-electrical-fuse/