高電圧プローブ

高電圧プローブとは

高電圧プローブとは、高い電圧を測定することができる受動プローブです。

数百Vを超えるような高電圧測定では、標準の電圧プローブを用いると壊れてしまい、測定ができません。汎用プローブは高周波・高電圧の対応が困難です。それに対して、高電圧プローブは、数千~数万Vの高い電圧まで測定することが可能であり、高電圧専用の受動プローブです。

高電圧プローブは、オシロスコープや専用の計測器に接続して、電圧波形を測定する場合などに使用されます。高い周波数の大きな電圧を測定すると、プローブはすぐに発熱するため、火傷や感電事故に十分注意する必要があります。

高電圧プローブの使用用途

高電圧プローブは、数百V以上の高い電圧の波形測定用です。IGBT (絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ) などのパワーデバイスを使用したモータードライバスイッチング電源、インバータ、コンバータなどの信号測定に多く使われます。

また、直流回路などの高い電圧負荷が考えられる場合に使用されることが多く、ブラウン管のアノード電圧測定用も用途の1つです。系統を遮断せずにメガソーラーなどの太陽光発電設備の安全点検やハイブリッド車や電気自動車に使用される高電圧電気システムの測定などの用途もあります。

プローブを選択する際は、周波数帯域、入力抵抗、入力容量、動作電圧範囲、及び対応するオシロスコープの機種などを考慮します。

高電圧プローブの原理

高電圧プローブは、オシロスコープなどの計測器の内部抵抗と、プローブの倍率抵抗との比で分割して、高電圧を測定する方式です。高電圧を測定する場合、100:1、もしくは、1,000:1などの減衰比を持つ高電圧プローブを使用します。

プローブを使用して、テストポイント、すなわち信号源とオシロスコープを物理的かつ電気的に接続します。また、電圧プローブの最大許容電圧は周波数が高くなるほど減少する性質があることから、定格の確認が必要です。

具体的には、入力端子とオシロスコープ入力部の間にプローブが設置されており、そこを通過する波形を測定します。高周波の信号を測定する時には入力容量が負荷となり、信号に影響を及ぼしますが、高減衰比を持つプローブを介して接続することにより、より正確な波形が測定可能です。

高電圧プローブの構造

高電圧プローブの中でも測定する電圧範囲により、構造は異なります。オシロスコープメーカから販売されているDC25KV程度の製品は、一般的なプローブと同様に手持ちで扱えます。

高電圧プローブの構成は、プローブ本体とマッチングボックス、及びそれらを繋ぐケーブルです。プローブの内部に絶縁オイルやガスを充填し、耐電圧性能を高める構造になっています。プローブ本体の入力抵抗は、アッテネータの減衰量によりますが、100~1,500MΩ程度の大きな値のものが使われます。

マッチングボックスは位相補償を行うもので、アッテネータの減衰量が大きいことや、長いケーブルを使うことから、調整手順は通常の受動プローブより複雑です。高電圧プローブのメーカーが調整して出荷し、ユーザーによる調整を禁じている場合もあります。

高電圧プローブのその他情報

1. 高電圧プローブの安全対策

高電圧プローブは高電圧を取り扱うので、種々の安全対策が行われます。

  • 被測定系が高電圧なので離れた位置から測定できる様に、ケーブルは長いもの (3mから10m程度) が用意されています。
  • 手持ちでの操作を前提としたプローブでは、人体への放電を防ぐために設けられるのが、大きなガードリングです。また、固定前提のプローブ本体には、プローブ自体を接地するためのターミナルを設けます。
  • 取り扱いの注意も重要です。例えば、高周波の電圧を測定する場合、高周波ほどプローブの許容電圧は低下するので、メーカーの特性図を十分把握する必要があります。また、プローブの接地端子が外れると、入力端子や筐体に高電圧がかかり、危険です。

2. 絶縁プローブ

絶縁プローブとは、プロー ブだけをフローティング状態にしたものです。オシロスコープ本体とは電気的に絶縁されています。

プローブを絶縁させるには、トランスを用いてプローブの先端部とオシロスコープとを分離する方法と、プローブ先端部で受けた電気信号を光電変換して光ファイバーで伝送し、受信機側で元の信号に戻す方法があります。何れもプローブとオシロスコープ間に電気的な導通はなく、互いに絶縁された状態ですが、プローブが検出した信号はオシロスコープ側に伝えられます。

このような構成なので、オシロスコープ本体は適切に接地された状態でも、絶縁プローブのチップと グランド・リード間に加わる被測定回路の信号には影響しません。従って、被測定回路に非常に高いコモンモード電圧が乗っている場合でも、絶縁プローブを利用すればチップとグランド・リード間の差動電圧だけを測定することができます。

参考文献
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-DigitalOscilloscope-03/
http://www.rf-world.jp/bn/RFW29/samples/p030-031.pdf
https://jp.tek.com/datasheet/isolated-measurement-systems-tivp1-tivp05-tivp02-datasheet

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