クリーンウェア

クリーンウェアとは

クリーンウェア

クリーンウェアとは、クリーンルームにおいて微粒子や微生物などが環境中に放出されることを防ぐための作業服です。

発じんを抑えるという機能から、防塵服または無塵服とも呼ばれます。発じん防止の観点から、ウェア自体の発じん性の低さに加え、気密性も重要です。

一方で、作業者の負担を軽減するために、長時間の作業にも適した通気性も求められます。これらの一見相反する特性を両立できるように、クリーンウェアは設計されています。

クリーンウェアの使用用途

クリーンウェアは半導体や医薬品、食品などを製造する工場で利用されます。これらはクリーンルームの使用が必須の分野です。使用する目的の1つに、浮遊菌のコンタミネーションを防ぐことが挙げられます。

浮遊菌とは、空気中を漂っている細菌やウイルスを含む微生物です。清浄度が高くない通常の空間には、浮遊菌が多数存在します。これらの浮遊菌は浮遊粒子表面に付着するため、浮遊粒子数が増加するほど浮遊菌混入の危険性が高まります。

クリーンウェアの着用により浮遊粒子の発生や人体由来の微生物放出を同時に抑制し、浮遊粒子と浮遊菌のコンタミネーションを予防することが可能です。

クリーンウェアの原理

クリーンウェアは、作業者からの発じんを防ぐ目的で設計されています。これに加えて、通気性が良く蒸れないこと、動きやすいことなど、衣服としての機能も要求されます。また、洗浄や蒸気滅菌処理にも耐えられるだけの耐久性も必要です。

クリーンウェア自体の発じん性やフィルター効果は、用いる素材の性質が影響します。一般的な材質はポリエステル長繊維やアラミド繊維などの合成繊維です。通常の衣服によく用いられる天然繊維 (綿や羊毛など) は発じんしやすく、クリーンルームでの使用には適していません。

静電気は微粒子の引き寄せや感電の原因となるため、クリーンルーム内では静電気対策が必要です。クリーンルームウェアには、静電気を放電するための特殊な素材やアクセサリーが組み込まれていることがあります。

クリーンウェアの構造

クリーンウェアには大きく分けて、上下分離のセパレート型と上下一体型の2つがあります。清浄度の高いエリアでは厳密な発じん制御が必要なため、上下一体型かつフード付きが選ばれる場合が多いです。

上下一体型のクリーンウェアは開口部が少なく、前面のチャックで脱着します。首元にはマジックテープが付いている場合は、首元の隙間をなくすことも可能です。手首・足首・フードには、衣類と体の隙間を無くすためにゴムが入っています。

クリーンウェアの種類

クリーンウェアは、使用する環境の清浄度に合わせて種類があります。清浄度とは、空気中の浮遊微小粒子や浮遊微生物などが、どの程度少ないかを客観的に数値で示した規格です。一般的に、単位体積に含まれる粒子の数で表現します。

清浄度の規格にはISO基準14644-1 (JIS準拠) があります。ただし、日本では業界によって使用する洗浄度の規格が異なることがあるため注意が必要です。米国連邦規格はISOの制定により既に廃止されていますが、日本国内では今でも慣習的に使用されている場合が多くみられます。

以下はクリーンウェアの種類一例です。前半のクラスが米国連邦規格を示しています。

1. クラス100,000以下/ISOクラス8以上

簡易的なクリーン対応として、上下セパレートタイプやガウンタイプのものが用いられます。フードの代わりに帽子で運用する事が多いです。自動車部品工場などの製造現場で求められる基準です。

2. クラス1,000~10,000/ISOクラス6~7

上下繋ぎタイプでフード一体型やフードセパレートタイプが用いられます。靴も専用のクリーンシューズを着用します。食品工場、医薬品製造現場などに求められる基準です。

3. クラス1~100/ISOクラス3~5

上下繋ぎタイプで、場合によってはインナーもクリーンタイプを着用します。フードはフェイスシールド付きを用います。半導体工場に求められる基準です。

なお、ISOクラス1~2のクリーンルームは、基本的に作業者の立ち入りはなく、自動化された機器やロボットが作業をします。

クリーンウェアのその他情報

クリーンウェアのクリーニング

クリーンウェアをクリーニングする場合には、使用するクリーンルームよりも清浄度の高いエリアで作業が行うことが必要です。洗濯には専用の洗剤と洗濯機が使用され、すすぎには純水や超純水が使用されます。また、乾燥はHEPAフィルタ付の乾燥機を使用するなど清浄な空気を通して行う場合も多いです。

ICタグシステムを導入することも有効で、クリーンウェアの在庫管理だけでなく、繊維の疲労度まで明らかにすることができます。したがって、クリーンウェアの交換時期の決定にも役立てることが可能です。

参考文献
https://www.tanimura.biz/catalog/clean_wear.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje1965/26/Supplement/26_Supplement_380/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/42/10/42_10_P424/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2018.7/0/2018.7_25/_pdf/-char/ja 
https://www.airtech.co.jp/products/cleanroom/120/
https://www.anken.co.jp/uniform_creanroom/choice.html
https://www.ncc-nice.com/co_mame/b83f6435afa26dff3455f0ba-165.html

クリーンルームシューズ

クリーンルームシューズとは

クリーンルームシューズ

クリーンルームシューズとは、クリーンルーム内での使用を想定し、静電気の帯電や発じんの防止対策が施された作業靴です。

より効果的に帯電および発じんを抑制する目的で、同様の対策がなされた作業服 (クリーンルーム用ウェア) と併用されます。クリーンルームシューズは、微粒子の侵入を最小限に抑えるための設計がされています。

これにより、クリーンルーム内の製品やプロセスへの微粒子の混入を防ぐことが可能です。また、衛生管理が施されており、清潔な状態が求められる環境や産業での使用に適しています。静電気の発生を抑えるために特殊な素材を使用したり、設計が施されていたりする場合も多いです。

ただし、 クリーンルーム内での衛生管理や防塵対策には厳格な規定があります。クリーンルームの清浄度に応じて使用可能なタイプが異なるため、適切なクリーンルームシューズを選択して使用することが大切です。

クリーンルームシューズの使用用途

クリーンルームシューズはさまざまな産業で使用されます。以下はクリーンルームシューズの使用用途一例です。

1. 半導体産業

半導体産業では、微細な回路やチップの製造が行われます。クリーンルーム内での作業は微粒子の侵入を最小限に抑えることが必要です。したがって、作業員はクリーンルームシューズを履いてクリーンルーム内を移動し、微細な部品や設備へ接触します。

2. 医療

手術室など細菌汚染の許されない現場でクリーンルームシューズが使用されます。細菌汚染は空気中の微粒子を介して起こる場合が多いです。クリーンルームシューズの導入によって微粒子の発生および付着を防止し、細菌汚染のリスクを回避できます。

また、製薬業界では医薬品の製造は非常に清潔な環境で行われます。クリーンルーム内では、微生物や微粒子の混入を防ぐために厳格な衛生管理が必要です。作業員はクリーンルームシューズを履いて、クリーンルーム内での作業を実施する必要があります。

3. 食品加工業

食品工場や食品加工施設では、食品の衛生管理が非常に重要です。微生物の侵入や異物の混入を最小限に抑えるために、作業員はクリーンルームシューズを履きます。これにより、清潔な状態を保ちながら、食品の生産や加工作業を行います。

クリーンルームシューズの原理

クリーンルームシューズは、微粒子や微生物の侵入を最小限に抑えるために特殊な素材と設計が施されています。まず、微粒子の侵入を防ぐために、防塵性が求められます。シューズの外側は密閉性の高い素材で作られており、微粒子の付着や浸入を最小限に抑えることが可能です。

また、シューズのデザインは、隙間や開口部を最小限に抑えるように工夫されています。静電気は微粒子の引き寄せや製品の損傷を引き起こす可能性があるため、クリーンルームシューズは静電気防止対策が施されています。

シューズの底部には、導電性素材や静電気を逃がすための導電経路が組み込まれているのが一般的です。また、衛生管理の観点からも特殊な設計がされています。シューズの内部は滑りにくく清潔に保ちやすい素材で作られる場合が多いです。シューズの着脱が容易であり、シューズ自体も定期的な清掃や消毒が行いやすいようになっています。

クリーンルームシューズの選び方

クリーンルームシューズを選ぶ際は、以下のような要素を考慮する必要があります。

1. 環境要件

クリーンルーム内の要件や規制を理解することが必要です。業界や環境によって、要件が異なる場合があります。微粒子の制御レベルや静電気制御の必要性など、環境要件を確認することが重要です。

2. サイズとフィット

シューズのサイズとフィットは快適さと安全性に関わります。正確なサイズを選び、足に適切にフィットすることが重要です。シューズが適切に固定され、作業中に滑らないようになっているか確認します。

3. 清潔性

クリーンルームシューズは衛生管理が重要です。シューズの内部が滑りにくく、清潔に保ちやすい素材で作られているか確認します。また、シューズの着脱が容易であり、定期的な清掃や消毒が行いやすいデザインであるかもポイントです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/42/10/42_10_P424/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsjd/37/2/37_105/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jriet1972/16/12/16_12_823/_pdf/-char/ja
https://jp.misumi-ec.com/vona2/fs_lab/T2709000000/T2709060000/

クリーンテープ

クリーンテープとは

クリーンテープとは、研究開発現場などにおいて用いられる、クリーンルームでの使用が可能なテープです。クリーンテープには通常のテープと同様に、両面テープや養生テープ、ラインテープなどさまざまな種類があります。

クリーンテープはテープの基材や粘着剤・芯などに特殊な製法や素材を採用しており、通常のテープと比べて発じん性が抑制されています。発じん対策以外の機能が付与されている製品も数多くあり、例えばテープ表面に帯電防止加工を施したものや、フィルムからの化学物質の溶出を防止したもの、滅菌処理されたものなどが販売されています。

クリーンテープの使用用途

クリーンテープは、半導体分野や生物分野などのクリーン環境において、テープの種類に応じた多様な用途で用いられています。クリーンベンチ内外に掲示物を貼るなど、通常の粘着テープの代替品として使われるケースが多いですが、工事や修理の際の養生テープとして、もしくは区分けのため床に貼るラインテープとしても活用できます。

掲示物を例にあげると、クリーンルーム外での掲示によく使われるものの1つがセロハンテープです。セロハンテープには発じん性があり、基本的にクリーンルーム内での使用はできません。発生した粉じんが製品に混入すると、品質低下のリスクがあるためです。クリーンテープは防じん仕様のため、クリーンルームでも問題なく使用できます。 

クリーンテープの原理

クリーンテープは前述の通り、清浄度が高い空間で使われます。そのため、テープの発じん性を可能な限り低下させること、製品に付着する粉じんを減らすことが重要です。

一般的な粘着テープであるセロハンテープには、ほとんどの場合、ボール紙の芯が用いられています。このボール紙はパルプを原材料として作られますが、パルプは繊維が短く、発じんしやすい素材であることが知られています。

クリーンテープでは、ボール紙の代わりに、ポリエチレンなどのプラスチックで作られた芯が使われています。プラスチック製の芯はボール紙と異なり紙粉が生じないので、浮遊粒子の発生を抑えることが可能です。

テープの基材にも、芯と同じく、発じんしにくいプラスチック製のフィルムが採用されています。基材に用いられる素材としては、前述のポリエチレンやポリ塩化ビニルポリプロピレンなどのポリオレフィンが代表的です。

清浄度を保持するためには、そもそも粉じんを持ち込まないことも重要です。クリーンテープはクリーン環境下で生産および包装が行われており、粉じんが包装内に持ち込まれにくくなっています。そのため、開封時に粉じんが飛散するといったことはありません。 

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/46/10/46_10-4/_pdf/-char/ja
https://jp.misumi-ec.com/vona2/fs_lab/T2709000000/T2709070000/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/85/2/85_52/_pdf/-char/en
https://www.tanimura.biz/catalog/clean_polyolefin-tape.html
https://www.monodukuri.com/jirei/article/467 

導電性コンテナ

導電性コンテナとは

通常のコンテナは帯電しやすい

導電性コンテナはコンテナに導電性の物質を混ぜ合わせたものです。通常のコンテナはポリプロピレンなどのプラスチックから作られているため導電性はありません。そのためコンテナは帯電しやすくなります。帯電したコンテナは静電気を発生させるため、通常のコンテナは静電気を嫌う電子部品、半導体部品に用いることができません。

導電性コンテナは帯電、ホコリの付着を防ぐ

一方で導電性コンテナは接地することで帯電を防ぐことができるため、静電気が発生することはありません。また静電気が発生しないため、大気中のホコリの付着等も起こりません。

導電性コンテナの使用用途

電子部品、半導体部品で導電性コンテナは使われる

上記の通り、導電性コンテナは静電気を嫌う電子部品や半導体部品などに用いられます。コンテナのサイズも半導体チップなどを運ぶ1L以下のものから約80L程度の大型のものがあり、大型のコンテナは電気、電子部品の保管に用いられたり工場内の通い箱としても用いられます。

ホコリ等の異物混入を嫌う製品でも用いられる

また、静電気が発生しないことでホコリやチリの付着も起こりにくいため、異物混入を嫌う製品でも導電性コンテナは用いられます。他にも電子基板を固定して持ち運ぶことができる専用の導電性コンテナも販売されています。

導電性コンテナの特徴

導電性コンテナはプラスチックに導電材を練り込んでいる

導電性コンテナの材質はポリプロピレンやポリカーボネートです。これらのプラスチックは丈夫で軽いためコンテナの材料として適しています。一方でこれらのプラスチックは導電性を持たないため、摩擦などで帯電してしまいます。そこで導電性コンテナではこれらのプラスチックの中にカーボンなどの導電材を練り込んで帯電を防いでいます。コンテナ全体に導電材が分散されているため、コンテナを接地させることで除電することが可能になります。

コンテナは絶縁性が高いものの上に置くと効果なし

導電材はコンテナに練り込まれているため表面を拭き取ったり、こすったりしても導電性を失うことはありません。一方で通常のコンテナと同様に太陽光などの紫外線によって徐々にコンテナ自体が劣化していくので長期間使用し続ける場合は太陽光が直接当たる場所以外に保管することが望ましいです。また、コンテナをゴムシートなどの絶縁性の高いものの上に置くと電気を逃がす場所がないため、導電性コンテナを用いても除電することができないという点には注意が必要です。

参考文献
https://www.sanko-kk.co.jp/products/sanelecner/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/fs_logistics/T2201000000/T2201060000/

転造ボールねじ

転造ボールねじとは

転造ボールねじ

転造ボールねじとは、ボールねじと呼ばれる回転運動と直線運動とを変換するための機械要素の中で用いられる部品の一つです。

ボールねじの主な構成部品はねじ軸、ナット、鋼球の3要素であり、転造ボールねじはねじ軸に該当します。ねじは螺旋状の溝が彫られたものですが、相手部品と嵌合させてどちらか一方を回転させると、軸方向に相対運動をします。回転運動と直線運動との変換が、ボールねじの役割です。また転造ボールねじは転造と呼ばれる塑性加工で製造されたボールねじを指します。

転造ボールねじの使用用途

転造ボールねじは、一般的にボールねじと呼ばれている機械要素の構成要素として用いられる部品です。ボールねじにおいて転造ボールねじは、ナット部品と嵌合するねじ軸となる部品になります。

ボールねじは先に述べたとおり回転と直進との変換を果たしますが、より具体的には位置を制御するための位置決め用途と、重量のあるものを移動させるための搬送用途の二つがあります。

ボールねじの用途の実例は産業ロボット、工作機械の位置決めや搬送、半導体の製造装置などです。多くはモーターと組み合わせて用いられます。

転造ボールねじの原理

転造ボールねじに限らずボールねじ機構においてねじ軸は、モーターなどの動力源からの回転力を受け、鋼球を転がしながらナットを移動させる役割を担う部品です。リード角と呼ばれる角度がついた螺旋状の溝が一定の角度を保ちながら連続しているため、鋼球が転がりながらナットを移動させることができます。

鋼球の転がりを利用する点で、ボールねじの原理はボールベアリングの原理と同じです。転動体の転がりを利用することによって、荷重が作用するような状況であっても、少ない摩擦抵抗で構成部品同士を作動させることができます。またボールベアリング同様に、構成部品同士の隙間や、与圧というあらかじめ荷重を与えておくことなどで長寿命を確保することが可能です。

転造ボールねじの構造

転造ボールねじに限らずボールねじは、ねじ軸とナットの空間内を鋼球が転がることによって、少ない摩擦抵抗で作動させることができます。また鋼球は無限循環できる機構になっていなければなりません。一般的なのはリターンプレート式です。端末まで来たボールはプレート内部を通って、再び先端に戻り転動を行います。

転造ボールねじのその他情報

ボールねじの精度

ボールねじはJISによって精度の等級が定められています。大文字のCと数字を組み合わせた表記をしますが、数字が小さいほど精度が高いことを示します。またボールねじには位置決め用と搬送用の二つの用途があることを述べましたが、位置決めとして用いるのがC0からC5の等級です。搬送用はC7とC10の等級になります。

JISでは等級ごとに工法は指定されていませんが、転造という工法は研削工法ほどの精度が得られません。一般的に転造ボールねじは、搬送用のボールねじに用いられます。

転造ねじの製造

転造によるねじ成形は、ねじ軸の土台となる棒状の鋼材に、転造ダイスと呼ばれる工具を強く押し付けながら回転させることによって、ねじ形状を成形していく工法です。転造ダイスの山の部分でねじの溝を掘り、掘った分の肉を転造ダイスの谷になっている空間へと移動させ山を形成することによって、材料を無駄にすることなくねじ形状を作るのができます。また塑性変形は切削加工よりも強度面で有利です。ファイバーフローと呼ばれる金属材料における組織がねじ形状に沿って連続するため、切削によるねじよりも高い強度が得られます。

また転造で狙い通りのねじ寸法を実現するためには転造ダイスのセッティングや転造ダイスの精度も重要ですが、転造の粗材の直径が重要です。製造現場では転造径と呼ばれ、転造前工程 (圧造) で管理されます。

研削ボールねじ

転造ボールねじとは別のものに、研削ボールねじがあります。研削ボールねじは円筒鋼材を研削加工することでねじ溝を成形します。転造ボールねじよりも高精度なものを製作することが可能ですが、デメリットはコストアップ、生産性の低下などです。

参考文献
https://www.kuroda-precision.co.jp/technical-information/bs/bs004.html
https://www.kss-superdrive.co.jp/jp/pdf/qa/Q-BS-01.pdf 

除電装置

除電装置とは

除電装置とは、物体に発生した静電気を除去する装置です。

イオナイザとも呼ばれます。静電気は装置の不具合や欠陥につながることもあるため、製品の製造過程で取り除く必要がある場合が多いです。除電装置では、イオンを発生させて静電気を取り除きます。

陽イオンと陰イオンを発生させられ、電荷の異なるイオンをぶつけることで中和します。導体にも絶縁体にも効果を発揮し、除電装置を設置しておくだけで継続的に静電気を除去することが可能です。

除電装置の使用用途

除電装置はさまざまな使用用途で利用されます。以下は除電装置の使用用途一例です。

1. 化学工業

主に製造工程での静電気トラブルを防ぐために利用されます。化成品の製造などで、使用されることが多いです。

完成した製品を機械から出すときや不要部分を排出する際に、静電気を帯びていると問題を発生する場合があります。静電気を帯びた製品同士が結合したり、排出部分に付着したりすることが多いです。十分に静電気を除去していないと、スムーズな工程を実現できません。

2. 電子製品

電子回路の静電気除去にも利用されます。回路が静電気を帯びると意図しない場面で放電してしまう場合も多いです。回路の損傷や不具合の原因となるため、除電装置を用いて静電気を除去します。

電子製品にはディスプレイやICチップ、半導体ウェハなどが含まれます。これらの製造には欠かせない装置です。

3. リラクゼーション

除電装置は、リラクゼーションなどを目的に使用される場合もあります。リラックス効果をもたらすとされるマイナスイオンを発生するため、リラクゼーションやストレス軽減に利用されることも多いです。

マイナスイオンは体内のセロトニンの分泌を促進し、リラックスや心地よい気分をもたらすと言われています。

除電装置の原理

除電装置は、イオンを利用して静電気を除去する仕組みです。イオンを発生させる方法の違いからさまざまな方式があります。ただし、総じてイオンをプラスイオンやマイナスイオンを発生させるというのは共通する部分です。

生成されたイオンは、周囲の空気中の微粒子や分子と相互作用し、吸着や中和の効果をもたらします。負イオンは空気中の浮遊粒子に吸着し、その重さを増して沈降させることが可能です。

除電装置の種類や設計によって、生成されるイオンの種類や量、および効果は異なります。また、除電装置は電源や制御回路を備えており、効果的なイオン生成や放出を制御するために使用されることが多いです。

なお、除電装置は空気中のイオンを生成する装置であり、空気の浄化や除菌効果を提供する製品です。具体的な効果や効能は、製品の性能や環境条件によって異なります。

除電装置の種類

除電装置はイオンの発生方法に応じて、いくつかの種類が存在します。特に代表的な方法は、コロナ放電式と放射線式です。

1. コロナ放電式

コロナ放電を用いてイオンを発生させ、静電気を除去する方法です。電極針に高電圧を加えると、コロナ放電と呼ばれる弱い放電が発生します。放電によって針の周りの空気にイオンが発生して、このイオンが正負を打ち消すことで中和することが可能です。

対象表面の静電気をほぼ0の状態まで除去することが可能な点が特徴です。ただし、電源には高電圧が必要になります。

2. 放射線式

放射線を利用してイオンを発生させ、静電気を除去する方法です。軟x線、α線、β線などが使われます。

放射線を照射することで原子は電離しイオンに変化します。放射線によって電子を放出すれば陽イオンに、電子を受け取れば陰イオンになるという仕組みです。個々で発生したイオンが正負を中和させることで、静電気を除去しています。

高エネルギーの放射線を使用するため、比較的効率的にイオンを生成することが可能です。これにより、短時間で多くのイオンを放出することができます。ただし、放射線は人体に悪影響を及ぼす可能性があるため、放射線の漏れや適切なシールド化が重要です。

参考文献
https://www3.panasonic.biz/ac/j/fasys/special/static_elimination/ionizer/index.jsp
https://www.ekasuga.co.jp/study/electricity/electricity03/
https://www.kbrasch.co.jp/blog/2016/09/21/141#s08

SRモーター

SRモーターとは

SRモーターとは、スイッチトリラクタンスモーターの略で、高速回転が可能なモーターの1つです。

仕組みが簡単で安価、信頼性も高いモーターと言われています。構造としては4つのローターと6つのスロットが設けられており、電磁力により引きつけられる力のみで動きます。

永久磁石を利用しないため、レアアース使用の削減に繋がり、資源節約の面においても優れたモーターです。しかし、駆動時の騒音や振動が一番の問題で、半導体素子を用いたスイッチング技術の向上による解決が求められています。

SRモーターの使用用途

SRモーターは高速回転を必要とする機器に広く用いられています。例えば、掃除機や洗濯機です。このような家電は、駆動時に回転運動を必要とします。具体的には、掃除機がゴミを吸引したり、洗濯機が衣類を脱水したりするときです。

したがって、高速回転可能なSRモーターが内部に組み込まれている場合があります。また、電気自動車への利用も期待されています。

SRモーターは高速回転が可能なだけでなく、低コストで信頼性が高いモーターです。さらに、大量生産にも向いている観点から、電気自動車での利用が注目されています。

SRモーターの原理

SRモーターは、永久磁石を利用しない画期的なモーターです。構造としては単純な4極6スロットの作りとなっています。ローターは永久磁石を使用せずに金属でできており、周りには巻線で作られたコイルがあります。

コイルのN極S極はどちらでもよく、コイルの間には6つのスロットが存在します。SRモーターはコイルに電流を流した際に、金属が引きつけられる力のみを利用することで回転可能です。

しかし、コイルの磁極が入れ替わるたびにローターとステーターが伸び縮みを繰り返すことになります。この微細な動きによって、振動や騒音の問題が発生します。これらの解決策が見つからなかったため、SRモーターの利用は避けられていました。

近年は、パワーエレクトロニクスとマイクロコンピュータを用いた近年の半導体素子による制御技術が進歩しています。また、電力制御用半導体素子のスイッチング周波数の高速化が進んでいることから正弦波とは異なる波形の出力が可能となり、普及が進んでいます。

SRモーターのその他情報

1. SRモーターのメリット

SRモーターのメリットとしては、高速回転やに適する点が挙げられます。高出力のモータが実現可能である点もメリットの1つです。

2. SRモーターのデメリット

SRモーターのデメリットとして、低速時に回転力が変動する点や、回転子の位置に同期しない場合には脱調するため制御が困難な点が挙げられます。

3. 脱調

脱調とは、ステッピングモーターが過負荷や急加速でパルスとモーター回転の同期を失ってる状態のことです。プルアウトトルクが負荷トルクに対して十分にマージンが取れている場合など、正常な条件下での駆動では発生しません。

一定周波数のパルスを入力して、モーターが同期起動可能な速度を自起動速度と呼びます。その速度以上では、電磁石の励磁変化にローターが追従不可能となり脱調が発生します。

自起動速度以上のプルアウトトルク内での動作は、プルイントルク内で起動してから、加速後にローターが追従できるように制御します。高速で回転可能なモーターを使う対策やモーター電流を調整するなどの対策が必要です。

4. 乱調

ローター振動時にパルスが入力されると、正方向の回転力と逆方向の回転力がぶつかるケースがあります。負荷条件などによっては、ローターの正常動作ができなくなり、位置ずれが発生する場合があります。この現象が乱調です。

乱調が発生するパルス周波数は幅を持っているため、乱調域と呼ばれています。乱調域を避けて使用したり、マイクロステップを使用したりする対策が必要です。その他、ダンパーを付与する対策も効果的と言えます。

参考文献
https://xtech.nikkei.com/atcl/learning/lecture/19/00067/00005/
https://www.hitachi-ies.co.jp/products/motor/kahen/hispeed.html
https://www.fit.ac.jp/kenkyu_shokai/archives/44

アッシング装置

アッシング装置とは

アッシング装置は半導体製造などで使用されているレジストなどを除去する装置です。アッシングは灰にするという意味があり、文字通りプラズマやオゾンなどを使用してレジストなどを灰にして取り払ってしまいます。

半導体製造におけるレジストとは保護膜のことであり、シリコンウェハ表面に塗布された後に特定の部分のみ感光されて微細構造が作られます。そして、役目が終わった後には取り去れらます。

半導体製造ではアッシング装置はシリコンウェハの処理に使用しますので、シリコンウェハが搬送可能な大掛かりな装置になっています。

アッシング装置の使用用途

アッシング装置は半導体製造工程におけるイオンインプラントの剥離やレジストなどのポリマーの除去、CCDを製造する際のカラーフィルターの除去などに使用されています。

アッシング方法には二種類あり、プラズマを用いてアッシングするプラズマアッシングとオゾンを用いて炭化水素と反応させてアッシングするオゾンアッシングがあります。メジャーな方法は酸素をプラズマ上にして反応性を高めることによりアッシング効果が高くなるプラズマアッシングです。

アッシング装置の原理

プラズマは電離したガスであり、高い反応性を有しています。酸素をプラズマ状にすると、炭素や水素と非常によく反応しますので、酸素プラズマ中に炭化水素のポリマー、例えばプラスチックなどを入れておくと見る見るうちに消えていきます。

純粋な炭化水素は炭素と水素のみで構成されてていますので、酸素と反応した後は水と二酸化炭素が放出され、反応後には何も残りません。半導体製造用のレジストは炭化水素のポリマーで出来ていますが、その中には添加剤や溶剤、感光剤などが含まれていますので、これをアッシングする場合はレジストに合わせた最適なプラズマの条件が必要になります。

オゾンアッシングは酸素分子をプラズマにして活性化させるのではなく、酸素分子から反応性の高いオゾンを作り出して反応室に導入されます。この際、紫外線を照射することでオゾンからさらに反応性の高い酸素ラジカルと呼ばれる原子状の酸素を作り出してレジストと反応させています。

酸素プラズマと酸素ラジカルの違いですが、酸素プラズマは酸素原子がある割合で陽イオンになっていますが、酸素ラジカルは電気的に中性ですので酸素プラズマの方が反応性は高くなります。

参考文献
https://www.ulvac.co.jp/products/ashing_system/luminous_na_series/index.html
https://www.screen.co.jp/spe/technical/guide/resist

アルニコ磁石

アルニコ磁石とは

アルニコ磁石 (英: alnico magnet) とは、アルミニウムニッケル  、コバルトなどを原料とする磁石です。

などを添加物として加えることがあり、強い永久磁石として利用されます。原料の供給不安などから、フェライト磁石のように一般的ではなく、減磁しやすいのが欠点です。

キュリー温度が高いため、高温に強いうえ割れにくく、機械的強度に優れています。なお、アルニコ磁石の製造法は、鋳造と焼結です。

アルニコ磁石の使用用途

アルニコ磁石は、キュリー温度がキュリー点850℃と高いため、温度による磁性変化が少なく、高温での使用が可能です。また、割れにくいといった優れた機械的特性から、各種メーター・計器類・積算電力計・防犯用機器などに利用されています。

その他、5cmくらいの棒状のアルニコ磁石を牛に飲み込ませて、第3胃内の針金など鉄片を束状に吸着させ、創傷性心膜炎の予防に使用する場合もあります。

アルニコ磁石の性質

アルニコ磁石には、3つの形状があります。

  • バー型
    丸棒型で、外径の小さなものは3mmφ、外径×長さで表示
  • リング型
    外径×内径×高さで表示
  • 角型
    幅×高さ×長さで表示

アルニコ磁石は、ネオジム磁石などの希土類磁石と同じくらいに強い磁力を持っていることが特徴です。また、キュリー温度が高いため、温度による磁性変化が少なく、高温で使用できます。使用用途に応じた寸法での製造も可能です。

しかし、主原料であるコバルトとニッケルの価格が不安定であるためコストが変動することや減磁しやすいことが短所として挙げられます。保磁力がそれほど大きくないので、外部磁場や機械的な衝撃などで減磁する場合があります。

また、反磁界の大きい薄板形状では自己減磁が起こることも多いです。保磁力を補うためには、磁化方向の長さを拡大する必要があります。

アルニコ磁石のその他情報

1. アルニコ磁石の発明

1931年に三島徳七は、鉄、ニッケル、アルミニウム合金を主成分とするMK鋼を発明しました。このMK鋼をきっかけとして、磁性体材料に合金を活用する流れがより大きくなったと言えます。

その後、三島徳七は、MK鋼にコバルトや銅を添加することで磁性の向上を目指し、これがアルニコ磁石の土台です。1934年に本多光太郎・増本量・白川勇記らはMK鋼にチタンを添加し、保持力の高いNKS鋼を開発しました。

1938年、アメリカのGE社は、NKS鋼に銅を加えたアルニコ磁石を発表し、広く普及するようになりました。このときのアルニコ磁石の組成は、アルミニウム8wt%、ニッケル14wt%、コバルト24wt%、銅3wt%、残りは鉄です。

2. アルニコ磁石の劣化

アルニコ磁石は、経年劣化、温度、外部磁場などの影響を受けて、磁力が低下します。アルニコ磁石は、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石などの他の永久磁石と比較して、保磁力が小さいため、製造から時間が経過することで、磁力が低下しやすいのが欠点です。

アルニコ磁石を長期間使用する場合は、磁力が低下していないかを定期的に確認する必要があります。また、アルニコ磁石のキュリー温度は高く、熱に強いが、高温では磁力が弱まります。また高温になりすぎると、冷却時に磁力が回復しないことがあるので、適正温度内での使用が必要です。

アルニコ磁石は保磁力が小さいので、外部磁場の影響を強く受けます。そのため、強い磁場があると磁力を保持できなくなり、磁力の低下に繋がります。また、錆や変形などの部分的なダメージにより、磁石全体の磁力を維持できなくなってしまうのもデメリットです。

参考文献
https://www.kinkimagnet.com/products/alnico/
https://www.nihonjisyaku.co.jp/arnico.php
http://www.mmtc.co.jp/ja/products/metalmagnets.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfes/68/3/68_265/_pdf/-char/ja
https://www.neomag.jp/mag_navi/history/history_21.html
https://www.neomag.jp/

ガス発生装置

ガス発生装置とは

ガス発生装置

ガス発生装置 (英: gas generator) とは、各種ガスを発生させる装置です。

ガスは、家庭用や製造業など使用用途によってさまざまな供給方法あります。オンサイトでの供給方法の1つが、ガス発生装置によるものです。ガスの使用量や必要圧力など使用条件はさまざまです。

従って、装置自体もコンパクトなものから設備的なものまで幅広くあります。例えば、酸素の場合、希望の使用量に応じて、シリンダ・低温液化ガス容器・コールドエバボレーターCEへの液化ガスローリー供給、深冷空気分離装置や酸素PSAなどのガス発生装置によるパイピング供給などの供給手段が選択できます。

ガス発生装置の使用用途

継続的に安定した流量で少ない量を使用する場合などは、電源を確保するだけで使用可能な小規模ガス発生装置が便利です。半導体を搭載しているパソコンなどの製品は、製造過程で窒素や多様な電子材料ガスが必要です。

  • 半導体製造
  • オゾン発生器用 (水処理、漂泊他)
  • 活魚飼育・輸送関連用
  • バイオ関連・培養・発酵用
  • 各種炉吹込み用 (製鋼、非鉄金属溶解他)
  • 金属加工・ロウ付け バーナー用
  • 製紙工業用 (漂泊)
  • 燃焼装置用
  • 空調、健康用の酸素ガス用
  • 水処理用 (酸素曝気)
  • 硫化水素発生抑制用
  • ガラス加工バーナー用
  • 酸化化学反応用   
  • 発電所タービンの冷却用(冷媒)

ガス発生装置の原理

各種ガスの発生装置は、製造法が大きく異なり、原理に差異があります。

1. 酸素ガス発生装置 (PSA式)

PSA式の酸素ガス発生装置は、高純度の酸素を効率的に得るために、合成ゼオライトなどの吸着剤の窒素と酸素の平衡吸着量が、加圧下で大きく異なることを利用して、空気中の窒素を吸着除去します。この方法は、圧力スイング吸着法PSA式と呼ばれます。

2. 窒素ガス発生装置 (PSA式・ガス分離膜式・深冷式)

窒素ガス発生装置は、空気中より酸素や水分を取り除いて、高純度の窒素を発生させます。主に3つの方式が使われています。

PSA式
分子の違いを利用して、ゼオライトや活性炭などの微多孔の吸着剤を用いて窒素分子と酸素分子を分離します。吸着塔は2つ用意し、交互に吸着と再生を繰り返すことで、連続して窒素を取り出すことが可能です。高純度窒素の利用に便利です。

ガス分離膜方式
一般的に中空糸が使用され、空気中の窒素より酸素を透過しやすい性質を利用します。分子の通過速度の違いを使って分離します。低純度窒素の利用に便利です。

深冷式
空気中の成分を沸点の違いにより分離する方法です。液体が気体になる温度の沸点は、酸素が-183.0℃、窒素が-195.8℃であり、この差を利用して分離します。

3. 水素ガス発生装置

水素ガスの製造は、種々の方法があります。化石燃料を改質する方法、化学プラントなどから副次的に発生する水素を回収・精製する方法、水の電気分解による方法などが実用されています。

石炭や石油などの化石燃料を高温で分解・改質して水素を製造する方法は、製造時にCO2を排出する短所があります。また、発生したCO2を回収して地中に貯留したり、利用したりする技術を使えば、CO2の排出量を削減可能です。

水の電気分解法は、再生エネルギーの利用により、CO2排出量は0になります。電極にプラチナ触媒などを用いることにより、高い純度の水素を製造できます。

4. その他

水素/一酸化炭素ガス発生装置があります。天然ガス、二酸化炭素、酸素を原料に使い、H2/CO = 1 : 1の混合ガスを発生させます。

さらに、H2/COガスを特殊吸着剤を使用して精製すれば高純度一酸化炭素ガスが製造可能です。H2/COガスの用途は、金属の還元剤、メタン、メタノールを原料とする化学合成、天然ガスを原料とするナフサ・灯油・軽油の製造などです。

参考文献
https://shinko-airtech.com/equip_o2.html
https://www.awi.co.jp/business/industrial/gas/supply.html?pi=supplyOnsite
https://www.anest-iwata.co.jp/compressor/nitrogen/index.html