ヒーター

ヒーターとは

ヒーター

ヒーターとは、熱を発生させる装置全般を指す言葉です。

英語では「Heater」または「Heating Unit」表記されます。日本語では、加熱器や暖房器具です。

燃料を燃焼させて輻射熱を得る種類は安価なため、家電としても広く用いられます。産業においても加工や組立においても必須の装置です。

ヒーターの使用用途

ヒーターは家電製品から産業まで幅広く使用される装置です。以下はヒーターの使用用途一例です。

1. 盤用ヒーター

氷点下の寒冷地では、制御盤内部部品が結露または凍結する場合も少なくありません。盤用ヒーターによって、内部温度を一定に保たなければならないことがあります。スペースヒーターも同義で、発電機などの内部に設置されるケースも多いです。

2. 配管ヒーター

水道配管などの凍結を防止するために使用されるヒーターです。凍結防止ヒーターや凍結防止帯、トレースヒーターなどとも呼ばれます。主にテープヒーターベルトヒーターが使用されます。

3. 工業用ヒーター

工業用として原料や製品を加熱するヒーターです。使用される原理は異なり、誘導加熱や誘電加熱のような非接触ヒーターも使用されます。

用途もさまざまで、回転機器の軸受脱着用のベアリングヒータなどがあります。押出し機や成形加工機には、鋳込みヒーターなどが使われます。

4. 家庭用ヒーター

家庭で暖房などに使用されるヒーターです。エアコンやファンヒータなどが代表例です。セラミックヒータが使用される場合もあります。また調理用である電子レンジやトースターもヒーターの一種です。

ヒーターの原理

ヒーターはさまざまな原理で対象物を加熱します。以下はヒーターの加熱原理一例です。

1. 抵抗加熱

抵抗加熱は、抵抗に電流を流し、ジュール熱を発生させる方式です。発熱体としてニクロム線などを使用します。発熱体をパイプなどの金属のシースに入れ、その間を絶縁物で満たした構造の製品が多いです。

2. 誘導加熱

コイルによって磁束を発生・変化させることで、渦電流を発生させて対象物を加熱する方式です。調理用のIHヒーターなどが代表的な応用例です。非接触で加熱可能ですが、加熱対象物は主に導電性材料です。

3. 誘電加熱

周波数が高い電圧を印可することで、分子を揺さぶり摩擦熱を発生させて加熱する方式です。電子レンジなどが誘電加熱の応用例です。非接触で加熱可能で、非導電性材料を加熱するために使用されます。

4. ヒートポンプ

熱源と熱交換することで加熱する方式です。エアコンや給湯器などが代表例です。エアコンなどは冷媒を圧縮した凝縮熱によって室内熱交換器を加熱することで、室内に熱を加えています。

ヒーターの種類

ヒーターの種類は熱の発生原因や用途で分類され、さまざまな種類があります。また、熱の伝導方法によっても分類されます。抵抗加熱による加熱方式としては対流式、伝導式、輻射式などがあります。

1. 対流式ヒーター

空気を直接暖めて対流させる方式です。温風によって乾燥したり、埃が舞ったりするなどのデメリットもあります。ただし、すぐに暖かくなるのが特徴です。石油ファンヒーターやセラミックファンヒーターなどがあります。

2. 伝導式ヒーター

熱を直接触れることで伝える方式です。接触部分のみ暖めることができます。対流式に比べると消費電力が少ないのが特徴です。ホットカーペットや電気毛布などがあります。

3. 輻射式ヒーター

電磁波である赤外線や熱を放出することにより温める方式です。無風かつ静音で、じんわりくる暖かさが特徴です。カーボンヒーターやオイルヒーターなどがあります。

ヒーターのその他情報

ヒーターの省エネルギー技術

ヒーターの消費エネルギーを抑制して効果的に使うことで、省エネルギーにつながります。一般的には遮熱シート断熱材を活用して熱を外部へ逃さないことで、省エネルギーする手法が取られます。電圧制御などによる温度制御を実施することで、省エネルギーに寄与する場合もあります。

また、高度な温度制御は作業環境の改善や製品加工精度向上にも寄与します。加熱対象が水や油などの液体の場合は、液体の特性や目的温度に応じた温度制御が必要です。固体を加熱する場合は、温度制御が品質の重要な要素になります。

参考文献
https://www.hakko.co.jp/qa/qa_0_01.htm
https://getnavi.jp/homeappliances/320883/
https://www.nichinetu.co.jp/elementary/

カウンタ

カウンタとは

カウンタ

カウンタとは、数を数える装置や道具または部品を指します。英語のCountが語源です。

数を数える場合、少ない数であれば簡単に数えられて記憶させることもできますが、数が多くなると記憶力だけでは困難になります。そのため、人間の代わりに数を正しく数えてくれる機器がカウンタです。

カウンタの使用用途

人が数を覚えておくために使用するカウンタは数取器などと呼ばれます。交通量調査で車の通過台数を数える場合などに使用します。現在は、スマートフォンアプリなどで数取器を代替することも可能です。

電気部品として産業用機器に組み込まれるカウンタも存在します。デジタルカウンタと呼ばれ、主に生産現場の制御盤内部に使用されます。1バッチに複数回同じ動作を行う場合には、デジタルカウンタを使用して自動化を測ることが可能です。

カウンタの種類

デジタルカウンタには、プリセットカウンタトータルカウンタがあります。

1. プリセットカウンタ

あらかじめセットされた数値にカウント数が達したときに制御信号出力します。

入力信号はパルス信号や接点開閉信号が一般的です。出力信号は接点出力やトランジスタ出力などのデジタル信号が使用されます。

カウンタの出力を停止したい場合には、リセット処理を実施します。リセット処理は、押ボタンやリセット端子短絡などでできます。

プリセットカウンタは、カウンタ自体に電気を供給する補助電源を必要とする製品も多いです。補助電源は交流電源直流電源などを選んで購入します。

2. トータルカウンタ

カウント値を表示する機能のみを持ったカウンタです。接点やパルスの入力をカウントし、出力画面に表示します。

トータルカウンタもリセット処理を実施することで表示を0に戻せます。リセット処理はプリセットカウンタ同様に押ボタンやリセット端子で行います。

トータルカウンタは、電池を内蔵して補助電源を不要とする製品も多く販売されています。上記以外にも、接点出力の継続時間を測定するタイムカウンタなども存在します。

また、信号の入力ごとにカウント値が増えていく加算カウンタと、逆に減っていく減算カウンタなどもあります。カウンタは種類も多く仕様も様々なので、用途に応じたものを的確に選定する必要があります。

カウンタの原理

数取り器の場合は、押ボタンの人力で文字車を回して出力します。内部回路は歯車で文字車を駆動させるのみで、リセットボタンも人力で文字車を0に戻します。

デジタルカウンタは主に、「カウント値を表示するための表示部」、「入力信号を受信して動作を行う内部回路」、「数値のリセットやプリセットを行うための操作部」の3つに分けられます。

押ボタンによる入力や、センサなどを用いたデジタル入力など、様々な方法で入力信号をカウンタへと送信します。デジタルカウンタは接点による入力が一般的です。接点付き押ボタンを使用すれば、押ボタンによる入力に変換することもできます。

内部回路は常に現在の値を保持します。初期値の一般的に0ですが、任意に設定することも可能です。入力信号を受信したカウンタの内部回路は、現在値に+1した値を表示部に表示します。

プリセットカウンタを使用した場合、プリセットを行うことで出力信号を発信することが可能です。設定値と現在値の比較を行い、設定値と等しい場合は出力信号を出力します。

動作が終了すると、カウンタは入力信号の入力待ち状態となり、次の動作に備えます。これら一連の動作を繰り返し行うことで数をカウントし、その数を表示部に表示し続けます。

表示部分には文字車による表示や、デジタル表示などの種類があります。文字車で表示するものは多くが電磁カウンタと呼ばれ、電磁石で文字車を回します。電磁カウンタの場合は、電源がなくとも表示を保持するメリットがあります。

近年はデジタル表示のカウンタも多く使用されます。デジタル表示の場合は電源を必要としますが、発光するものは暗い中でも見やすいという利点があります。

参考文献

https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/counter_tg_j_1_2.pdf

X線分析装置

X線分析装置とは

x線分析装置

X線分析装置とは、対象物にX線を照射した際の蛍光X線スペクトルによって元素の含有量を解析する装置のことです。

粉末状の試料だけでなく、固体や液体でも測定が可能で、試料を破壊することなく短時間で調べることができるため、物質の組成分析方法として幅広く活用されています。 X線分析装置は、粉末試料の成分分析や結晶構造解析など、様々な分野で利用されています。

X線分析装置は、物質の定性分析(どのような元素が含まれているか)や定量分析(各元素がどのくらいの割合で含まれているか)に利用されており、信頼性が高い検査装置です。

X線分析装置の使用用途

X線分析装置は、固体、液体を問わず試料の定性分析、定量分析を非破壊で行うことができます。特に合金材料や土壌に含まれる有害金属の有無とその含有量を調べるために利用されています。

例えば、岩石、隕石など成分が未知の物質の組成を調べる際にはX線分析が有効です。最近では、環境や安全保全の観点からプリント配線のハロゲンフリー化が進められており、その保証のためにX線分析装置で分析がされています。他にも、有害性化学物質の定性と定量に利用され、RoHS指令で定める物質の検査に利用されます。また、簡単に持ち運べる携帯型装置も販売され、用途が広がっています。

X線分析装置の原理

図1. X線分析装置の構造

図1. (a) 蛍光X線の発生 (b) X線分析装置の構造

X線分析装置では、対象にX線を照射して放出される蛍光X線の波長 (またはエネルギー) と強度を計測しています。

物質にX線を照射するとその原子はエネルギーを吸収して励起し、蛍光X線を発します。蛍光X線の波長 (またはエネルギー) は元素ごとに固有であるため、検出した蛍光X線スペクトルの波長から物質の種類を特定し、その強度から定量をすることも可能です。

X線分析装置は、X線を発生させるX線源、試料を保持する試料室、生じた蛍光X線を分光・検出する検出部で構成されています。

X線源では、高電圧をかけて発生させた電子線を、タングステン等のターゲットに照射しX線を発生させます。生じたX線を試料の上面または下面に照射します。このとき、試料室内は大気や窒素、真空など雰囲気が選択できることがあります。

また、試料観察モードが付属しているX線分析装置では試料を観察しながら照射位置を選択できることがあります。試料から放出される元素由来の蛍光X線を検出器で検出し、定性分析を行います。定量分析においては蛍光X線の強度を測定し検量線やファンダメンタルパラメーター法 (FP法) を用いて含有率を求めます。

X線分析装置の分光・検出方法には波長分散型とエネルギー分散型があります。

1. エネルギー分散型蛍光X線分析装置

図2. エネルギー分散型X線分析装置の測定イメージ

図2. エネルギー分散型X線分析装置の測定イメージ

エネルギー分散型蛍光X線分析装置 (略称: ED-XRF、またはEDX、EDS) は、蛍光X線のエネルギーに対してその強度を測定する方法です。

具体的には、検出器に入射した蛍光X線を検出器内の半導体でパルス電流に変換し、増幅したのちにパルス1個の電流値から波高を測定します。電流値から入射したX線のエネルギーは電流値に比例するため、蛍光X線のエネルギーに対するその強度のグラフが得られます。

2. 波長分散型蛍光X線分析装置

図3. 波長分散型X線分析装置の測定イメージ

図3. 波長分散型X線分析装置の測定イメージ

波長分散型蛍光X線分析装置 (略称: WD-XRF、またはWDX、WDS) では、蛍光X線の波長に対してその強度を測定する方法です。

波長分散型では、試料から発生した蛍光X線を分光結晶により分光し、検出器で測定します。分光結晶に入射した蛍光X線はブラッグの回折条件に従ってある特定の方向に強く散乱されます。

ブラッグの回折条件とは、波長λの光が格子面間隔dの物質に入射したとき、2dsinθ=nλ (θ: ブラッグ角 n: 整数) を満たす回折角2θの方向に強く散乱されるという法則です。つまり、分光結晶の面間隔dは固定されているため、様々な波長のX線が入射しても、回折角2θの方向に検出器がある時は1種類の波長のX線のみが検出されます。検出部を回転させ広い角度で蛍光X線を測定すると、蛍光X線の波長に対するその強度のグラフを得ることができます。

X線分析装置のその他情報

エネルギー分散型と波長分散型の特徴

エネルギー分散型と波長分散型の検出方法にはそれぞれ特徴があり、用途に応じて適切に選択する必要があります。

1. エネルギー分散型
エネルギー分散型は分光の必要がなく、半導体の検出器が直接蛍光X線の波長を分析することができるため、小型化することが可能です。また、分光の必要がなく一度に複数種類の元素分析が行えるため、短時間で測定が可能です。試料の形状や凹凸に関係せずに測定できるため、電子顕微鏡などと併用して使われることがあります。

一方、得られるスペクトルのピークが重なることがあり分解能が低い傾向にあり、測定対象に微量しか含まれない元素の検出が難しいといったデメリットもあります。

2. 波長分散型
波長分散型では蛍光X線を分光結晶で分光し、検出器で測定します。波長で分光するため、隣接ピークの分離が容易で高感度かつ分解能も高い傾向にあります。

一方で、複雑な分光系を有するため装置自体は大型で高価になる傾向があります。また、回折角を変化させながら測定するためエネルギー分散型に比べて測定に時間がかかり、試料表面は平滑である必要があります。

参考文献
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/xray/eds/
http://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/040303.html
https://www.researchgate.net/profile/Keita_Yamasaki2/publication/
http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000171791.pdf
https://www.researchgate.net/profile/Keita_Yamasaki2/publication/
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/xray/wds/

パーティクルセンサー

パーティクルセンサーとは

パーティクルセンサーとは、一定時間吸い込んだ空気中の微粒子の数をカウントする装置のことです。

主にクリーンルームで用いられています。ここでの「パーティクル」とは微粒子の異物のことであり、特に半導体製造においてこの異物は、不良発生や歩留まり低下の原因になるため管理が必要です。

似た装置にパーティクルカウンターがありますが、用途はほぼ同じです。ただし、パーティクルセンサーは連続して計測可能であるのに対して、パーティクルカウンターは連続測定が可能でないものもあります。

パーティクルカウンターのほうがパーティクルセンサーよりも計測が精度よく、装置のサイズが大きい傾向があり、空気中だけでなく液中で使用できるモデルが多いです。高性能な機種では、0.1㎛以上の微粒子の計測が可能です。

パーティクルセンサーの使用用途

パーティクルセンサーは、主にクリーンルーム内に設置して、ルーム内の清浄度のモニタリングに使用されます。具体的には、自動車塗装工程における清浄度の監視や、半導体製造工場でのクリーンルームの管理等です。

使用用途の幅は広がっており、例えば人体への影響が懸念されているPM2.5を測定するための車載用のパーティクルセンサーもあります。超小型のタイプでかなり小さい機種が人気の傾向があり、場所を取らずに済むようDINレールに設置可能なタイプや、壁掛けできる機種もあります。

パーティクルセンサーの原理

パーティクルセンサーの原理には、大きく分けて光散乱方式か、光遮蔽方式のふたつの動作原理があります。両方とも空気を吸い込むためのポンプを内蔵しており、一定速度で連続した測定を行いますが、各々のパーティクルの検出の手法が、光の散乱を用いるか、通過での減衰を用いるかで異なります。

1. 光散乱方式

光散乱方式のパーティクルセンサーでは、通常はレーザーが空気中の微粒子に当たって光が散乱する様子をフォトダイオードで検出することにより、散乱光を電気信号に変換する検出手法です。この方式では、光の散乱による電気信号の回数と強さの違いで微粒子の大きさと個数をカウントすることが可能です。

2. 光遮蔽方式

光遮蔽方式のパーティクルセンサーでは、常に光をフォトダイオードに照射し、光源とフォトダイオード間の空気中の微粒子が光を通過する際に弱まった分を電気信号で検出することで、微子の大きさと個数をカウントしています。

 

パーティクルセンサーは、測定精度の設定に注意を払う必要があります。光散乱、光遮蔽方式に共通して、もしクリーンルームの清浄度に対してパーティクルセンサーの測定精度が高すぎる場合は、測定誤差が大きくなる傾向です。

クリーンルームの清浄度管理のために所望の測定誤差内でパーティクルセンサーを用いるには、適切な測定範囲の機種を選択する必要があります。

パーティクルセンサーのその他情報

1. 粉塵計との違い

粉塵計とパーティクルセンサーやパーティクルカウンターとの最も大きな違いは、測定対象とする微粒子の濃度です。粉塵計は、通常は0.01mg/m3以上の高濃度の微粒子濃度測定を対象としており、微粒子の数量ではなく、重さで濃度評価を行っています。一方で、パーティクルセンサーやパーティクルカウンターは微粒子数で計測を定量化している違いがあります。

特にパーティクルカウンターは低濃度でクリーン度の高い環境測定に耐えられるように、単発測定が主で仕様もClass1からClass9まで細かく分かれているのに対して、粉塵計の場合は連続測定で測定可能な濃度範囲も比較的広いです。

2. ポータブル型パーティクルセンサー

昨今クリーン度を要求される環境や業界は様々であり、その計測箇所もクリーンルームのみならず多岐にわたることから、持ち運びに便利なパーティクルセンサーの需要が大きいです。

リチウムイオン電池駆動でUSBなどによりパソコンと接続しデータ解析できたり、多点モニタリングシステムへ接続可能としている機種、カメラーを搭載している機種など、ユーザーの利便性向上に向けて、各メーカーがさまざまなパーティクルセンサーの開発に取り組んでいます。

参考文献

https://www.fa.omron.co.jp/products/family/2067/
https://www.rion.co.jp/product/particle/about/about_1.html

押出成形機

押出成形機とは押出成形機

押出成形機とは、投入された原料を加熱により軟化し、シリンダのスクリューで押し出すことで、チューブやシートといった成型品を生産する装置です。

ペレット状やミンチ状の原料から、ダイの形状に応じて丸形や角型のパイプやチューブ、ダクト、シート状といった種々の形状へと加工します。原料はホッパーから逐次投入されているため、連続的な生産が可能です。大量生産する際に重宝されています。

押出成型はダイで形状を与え、水冷や空冷といった冷却工程で硬化させることで形状を保持します。十分硬化した状態で引き取られ、切断されることで製品となります。押出成形の歴史は長く、用途も食品加工から金属・プラスチック成型まで幅広いです。

押出成形機の使用用途

押出成形機はアルミニウムのような金属や熱可塑性のプラスチック原料を、一度加熱溶融した後にダイによって形状を与え、成型品へと加工する際に使用されます。プラスチックを原料とする合成繊維の製造を例にすると、押出機出口から得られた溶融プラスチックを冷却しながら、引き延ばすように引き取ることで、ストランド状のプラスチックが得られます。

また、押出成型機は発泡体の連続生産も可能です。溶融した樹脂に発泡剤を圧入することによって溶融させます。ダイ出口から常圧に押し出される際に、圧力差によって発泡剤が抜けていくので発泡体が得られます。

工業分野以外に、ソーセージ、パスタやビーフン、ペットフードといった食品の加工も押出成形機の用途の一つです。押出成形機では、蒸気を加えて熱することが可能で、食品中の微生物を軽減し、でんぷんの糊化も同時に行うことができます。

押出成形機の原理

押出成形機の役割は、溶解させた原料に形状を与えるというシンプルなものに見えます。しかし、安定した製品を作るためには、原料や目標とする形状に応じて、各所の条件を最適化することが重要です。

まず、ホッパーに投入された原料を目詰まりを起こさないよう重量フィーダーなどを用いて一定の速度に調節して、シリンダに原料を充填していきます。 シリンダのヒーターで原料を加熱して柔らかくし、スクリューのスピードを調節しながら、適切な圧力をかけながら押し出すことで、チューブ状や棒状といった目的の形状を得ることが可能です。

押出物は冷却装置で形状が保持できるほど十分に冷やされた後、引き取られて切断されます。重要となるのは、各工程における温度管理です。押し出した材料の温度が高すぎると、粘度が高く冷却に時間を要するため、ダイ出口で与えた形状が保持できない恐れがあります。

また、冷却工程においても、冷却速度が早すぎると、成型品にひずみが生じるため、破断の原因になりかねません。押出機の加熱はヒーターからの加熱に加えて、スクリュと材料や材料同士間で生じる摩擦熱も発生します。

そのため、設定温度と実際の温度をモニタして、装置が自動で調整した場合でも、温度の振動 (ハンチング) が生じてしまいます。

押出成形機の種類

押出成形機は、押出機の構造やダイの形状、また後処理方法によって分類されます。さらに、押出機はスクリュの本数によって、一軸方式と多軸方式にわけることができます。

原料が複数の場合、溶融だけではなく、均一な混錬が求められるため、混錬性能の高い多軸の押出機が用いられることが多いです。原料に応じて、スクリュの構成や回転方向を決める必要があります。

原料の成型品の形状は、押出機のダイと呼ばれる口金の形によって大きく決まります。そのため、押出成型の種類は、このダイの形状や後工程によって呼びわけされることが多いです。代表的な成型として、チューブ状や棒状、シート状が挙げられます。

スタンダードな形状の他にも、複雑な形状に成型したり、多層化した成型品も得たりすることができます。また、発泡剤を投入することで押出発泡品も製造可能です。

参考文献

https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/plastic-molding/glossary/#die

蒸着装置

蒸着装置とは

蒸着装置

蒸着装置は、減圧下で物質を気化させて対象物上に製膜する真空蒸着 (VD) を行う装置です。

蒸着装置を用いることで、対象物上に平滑な塗膜を形成することができ、その膜厚や組成の制御をすることも可能です。

蒸着装置の使用用途

蒸着装置ではアルミニウムなどの金属材料や有機無機材料など様々な材料での成膜が可能です。

蒸着装置は下記のような用途で利用されます。

  • 光学薄膜 (レンズの反射防止膜、特殊ミラーなど)
  • 磁気テープ (オーディオテープやビデオテープなど)
  • 半導体 (有機EL、LED、太陽光電池など)
  • 電子部品 (抵抗やコンデンサ、半導体集積回路など)
  • 食品包装材 (スナック菓子などの袋に用いられているアルミ蒸着フィルムなど)
  • 分析用途 (試料調製)

蒸着装置の原理

図1-蒸着装置の原理イメージと液相成長法

図1. 蒸着装置の原理イメージと液相成長法

ロータリーポンプやターボ分子ポンプなどでチャンバー内を減圧状態にし、蒸着したい材料を気化させて、離れた位置にある対象物上に堆積させます。減圧状態にすることで、チャンバー内の不純物を取り除き、気化した物質の拡散性が向上し、密着性がよく平滑な膜を作製することができます。

物質の表面に製膜する方法としてメッキが有名ですが、メッキなどは液相から原料が供給されるのに対し、蒸着は気相から原料が供給されるという違いがあります。

蒸着装置の種類

蒸着装置に用いられる蒸着方法には、物質を気化させる方法によって、物理気相成長法 (または物理蒸着、英: Physical Vapor Deposition, PVD) と化学気相成長法 (または化学蒸着、英: Chemical Vapor Deposition, CVD) の2種類に分けられます。

1. 物理気相成長法 (PVD)

図2-物理気相成長法と主な種類

図2. 物理気相成長法と主な種類

物理気相成長法は、加熱などの物理的な方法で蒸着材料の気化や昇華などを起こし、製膜する方法です。加熱方法は電子ビーム、抵抗加熱、高周波誘導、レーザーなどがあります。

  • 電子ビーム加熱
    耐火物などのルツボに収納した蒸着材料に、電子ビームを照射することによって気化させます。電子ビームはエネルギーが高く高融点の材料にも適用できます。
  • 抵抗加熱
    タングステンなどの抵抗に電流を流して発熱させ、その上に蒸着材料を置くことで蒸着材料が加熱されて気化します。比較的温度が上がりづらいので、融点の低い材料に向いています。
  • 高周波誘導加熱
    コイルを巻いたるつぼに蒸着材料を入れ、コイルに高周波電流を流して強力な磁界を発生させ、その磁界による電流と電熱抵抗による発熱で急速に温度を上げて膜材料を気化させます。
  • レーザー加熱
    蒸着材料にレーザーを照射することにより、高いエネルギーを供給し蒸着材料を気化させます。

また、プラズマや分子線などを利用した方法も物理気相成長法の1つです。

  • 分子線エピタキシー (MBE)
    超高真空下で真空蒸着を行うことで、気化した分子が進行方向をそろえて直進するため、膜厚や組成などのより精密な制御が可能な方法です。成長速度が遅く、高真空が必要なため装置の大型化に向かず、大量生産を苦手とします。
  • スパッタリング
    真空中にアルゴンなどの不活性ガスを注入し、 電極に電圧を加えグロー放電を起こすと、プラズマ化したアルゴンが陰極に向けて衝突し、陰極上の原子や分子などをはじき出されます。このとき、蒸着対象物を陽極上に設置しておくと、はじき出された原子が表面に堆積します。イオン化の方法として、直流電圧 (DC) 、高周波交流電圧 (RF-AC) 、マグネトロン、イオンビームなどがあります。

2. 化学気相成長法 (CVD)

図3-化学気相成長法とその種類

図3. 化学気相成長法と主な種類

化学気相成長法は、化学反応などの化学的な方法で、蒸着材料を蒸着対象物上に堆積させ製膜する方法です。代表的なものとして、熱CVD、光CVD、プラズマCVD、有機金属CVD、原子層成長 (ALD) などがあります。

  • 熱CVD
    抵抗加熱炉を使って高温を作り出し、そこに原料ガスを流して化学反応を起こし、薄膜形成を行う方法です。比較的均一な膜厚を作ることができます。
  • 光CVD
    紫外線ランプやレーザー光を用いて、低温プロセスで化学反応を起こし、薄膜形成を行う方法です。イオン発生が無いため基板へのダメージが少ないです。
  • プラズマCVD
    原料をプラズマ化することで反応性を高め、蒸着対象上で反応を起こし製膜する方法です。低温で薄膜形成するため、高品質の成膜が可能です。但し、装置が高価で、メンテナンス等に難があります。
  • 有機金属CVD
    蒸着したい金属の前駆体となる有機金属を原料に用いることで、蒸着対象上で反応により金属に変化し、金属薄膜が形成できる方法です。膜厚を精密制御しながら高速で製膜することができるため、LEDなどの大量生産に使われています。
  • 原子層成長 (ALD)
    複数種類の原料を1種類ずつ蒸着、入れ替えを行うことで、原料が決まった位置で自己制御的に反応し、制御された構造、膜厚の薄膜を形成できる方法です。

上記の他にもさまざまな方式の蒸着装置が開発、販売されています。用途に応じて適切な装置を選択をする必要があります。

参考文献
https://www.satovac.co.jp/application/deposition.html
https://www.samco.co.jp/company/primer/2011/03/post.php
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/82/11/82_956/_pdf
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2000_08/2000_08-759.pdf
https://ulvac-kiko.com/support/img/deposition_catalog_Jp_2018_10.pdf
https://www.semilinks.com/sub208.htm
https://showcase.ulvac.co.jp/ja/how-to/product-knowledge02/oil-diffusion-pump.html
https://www.samco.co.jp/ir/library/
https://www.oike-kogyo.co.jp/research/column/cvd/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj2/59/7/59_16-LC-011/_pdf

走査型プローブ顕微鏡 (SPM)

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) とは

走査型プローブ顕微鏡

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) とは、針のように鋭いプローブで試料の表面の凹凸をナノメートルスケールで観察することができる顕微鏡です。

試料表面を清浄化するため高真空下で用いられることが多くありますが、大気中でも使用できます。最近では、液中で使用できるものも開発されています。

走査型プローブ顕微鏡の種類は様々で、走査型トンネル顕微鏡 (STM) 、原子間力顕微鏡 (AFM) などがあります。STMは原子1個1個を捉えることが可能で、ナノ構造の科学技術の進展に大いに貢献したとし、発明者は1986年度のノーベル物理学賞を受賞しました。

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) の使用用途

走査型プローブ顕微鏡は、非常に微細なナノメートル程度の表面を観察できるため、半導体やガラス、液晶などの表面状態の観察や粗さの測定に使用されます。

具体的な観察の対象は、シリコン単結晶の原子配列や有機化合物のフェニル基などです。また、微生物や細菌、生体膜といった生体試料のDNAの観察や操作もできます。

走査型プローブ顕微鏡は1980年代に開発された新しい顕微鏡ですが、原子レベルの観察技術の発展はめざましく、摩擦や粘弾性、表面電位を測定できる機種も開発されており、どんどん用途が広がっています。液中測定は、電気化学や生化学などの分野でも使用され、より実環境に近い状態測定が可能になります。

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) の原理

走査型プローブ顕微鏡の中でよく利用されるAFMとSTMの原理について説明します。細い針のようなプローブの先端が試料表面をスキャンすることにより、画像や位置情報を取得しています。プローブが細く、原子レベルのスキャンを行うため凹凸が大きすぎる試料の測定には向いていません。

1.  走査型トンネル顕微鏡 (STM)

STMは、金属プローブの先端から試料に向けて出るトンネル電流の強さが、間にある真空という絶縁体の厚みに敏感に依存することを利用します。物質表面の原子を個別に分解して見る高い分解能 (隣りあって存在する2点を見分ける時、この2点間の最短距離) で試料面の局所的な高さを正確に測定することが可能です。また、試料面をプローブが走査することで、原子スケールでの凹凸パターンを観測できます。

プローブには、先端のとがったタングステンや白金などを用います。双方の電子雲が重なる程度の至近距離までプローブと試料を近づけ、微小なバイアス電圧 (増幅器の小信号増幅を行うために直流で動作点を定めるための電圧) を加えると、トンネル効果によりトンネル電流が流れます。

STMでは、金属のプローブを試料の表面上で水平 (X,Y) に移動させ、プローブと試料間の距離 (Z) をフィードバック制御することで、トンネル電流を常に一定にしています。通常、原子1個の大きさよりも小さい精度で距離を制御できる圧電素子で垂直方向の移動を行い、単原子同士の相互作用を検出します。このため、STMは3次元的に原子分解能を持ちます。圧電素子は、圧力を加えると電圧が発生する圧電効果という現象を利用した受動素子です。

2. 原子間力顕微鏡 (AFM)

AFMでは、プローブと試料表面の微細な原子間力 (化学結合していない原子同士に働く弱い凝集力) の違いを測定し、走査することで表面観察しています。有機物や無機物に関係なく、絶縁体や生体試料でも観察できることから、用途は幅広いです。AFMの技術を応用して摩擦力や粘弾性、誘電率、表面電位を測定する多彩な機種が開発されています。

カンチレバー (cantilever) の先端に取り付けたプローブと試料表面を、微小な力で接触させます。プローブと試料間の距離 (Z) をフィードバック制御してカンチレバーに働く力 (たわみ量) が一定になるようにしながら、水平 (X,Y) に走査して、表面形状を画像にします。

走査型プローブ顕微鏡 (SPM) のその他情報

プローブの種類

走査型プローブ顕微鏡の代表例であるAFMとSPMは、どちらもプローブを用いますが、種類が異なります。さらに、AFMだけでも、材質、長さなど多くの種類があり、測定対象に合わせて選定することが大切です。

また、AFMは原理で説明したコンタクトモード以外にタッピングモードがあり、これは壊れやすい有機試料に対して測定する際に利用され、専用のプローブを使用します。なお、プローブは消耗品なので、自身で交換する必要があります。

参考文献
https://www.hitachi-hightech.com/jp/science/technical/tech/microscopes/spm/principle/b_2_afm.html
https://imidas.jp/genre/detail/K-128-0064.html
https://www.hitachi-hightech.com/jp/science/technical/tech/microscopes/spm/principle/b_1_stm.html

振とう機

振とう機とは

振とう機

図1. 一般的な振とう機

振とう機とは、試験管やフラスコ、分液ロート等の容器に入れた試料を振とうさせて撹拌する機械のことです。

シェーカーとも呼ばれています。振とう機は、時間がかかる試料の分離や溶出、溶解、好気性微生物の培養等によく利用されます。

振とう形式は往復、旋回、8の字等があり、振とう方向にも水平方向か垂直方向かなど、機種によって様々なものがあります。また、機種によっては加熱や冷却機能がついており、振とう培養も可能です。

液体だけでなく、粉体のふるいとしてのふるい振とう機もあります。

振とう機の使用用途

振とう機は、一般的に生命科学や化学分野における実験において、長時間一定の振とうが必要な場合に使用されます。試験分野における主な用途は、各種溶出試験や試料の溶解、好気性微生物の培養等です。 

特に、環境省が定める土壌環境基準の溶出試験では、特定の条件下での振とう機による土壌中の重金属の溶出が要求されています。好気性微生物の培養では、微生物によって条件が異なります。振とう機の振とう幅や振とう速度を計算し、適切な酸素移動速度を整えることが必要です。

また、他には、野菜中のダイオキシンや残留農薬をヘキサンで溶出させる等、食品の残留農薬検査や産業廃棄物の溶出成分分析などの用途もあります。

振とう機の原理

温度調節可能な振とう機

図2. 温度調節可能な振とう機

振とう機は、振とう台の下部の台座内に動力部分が内蔵されています。動力部分は、モーターからベルトを介してプーリーに力を伝えることで、モーターの回転が振とう台の往復運動に変換されるという仕組みです。

温度調節機能がある機種の場合、台座下にヒーターや冷却装置がついています。また、恒温槽と振とう機が一体化している場合もあります。

機種によっては、振とう機の用途に応じて台座の大きさを替えることが可能です。また、それぞれの容器に合わせて使いやすくすることができるよう、台座の上に容器専用のプレートを置いてオプションで形状を変更することができるものもあります。

粉体のふるい振とう機は、電磁マグネットを利用して振動子に垂直方向の振動を発生させる仕組みです。スプリングで振れ幅を調節し、垂直方向に振とうしています。

振とう機の種類

様々な振とう機

図3. 様々な振とう機

振とう機のサイズには小型・中型・大型とバリエーションがあります。用途や容器の大きさ・形状に合わせて選択することが必要です。例えば、土壌分析の溶出試験に用いられるような振とう機には大型のものを用います。

試料が少量のインビトロ試験に用いられるような振とう機には、小型のものを選定することが適切です。特に、微生物や細胞の培養用途でインキュベーターに入れる場合には、小型の振とう機である必要があります。このタイプでは、約0~50℃の環境温度や約95%RHまでの環境湿度に対応できるよう設計されています。

卓上で使用できる小型の振とう機の大きさは、幅約200~300mm×奥行き約180~250mm×高さ約100~170mmの範囲に収まるものがほとんどです。許容負荷重量の上限は、殆どの機種で2kg程度です。振とう形式には、往復や旋回、シーソー、水平偏芯、8の字などがあり、方向も水平と垂直があります。機種によっては、手動で切り替えが可能な、複数の振とう方式が組み込まれています。

振とう速度は、凡そ20~200rpmの範囲で変更可能です。段階式か無段階式かは製品によって異なりますが、タイマー内蔵型の機種も多数あります。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/31
https://taitec.net/type/%E6%8C%AF%E3%81%A8%E3%81%86%E6%A9%9F/
https://san-web.co-sansyo.co.jp/SanOutWeb/detail/n_detail_45-1038.html
https://www.wakenyaku.co.jp/ctg/ls.php?i=318

スパッタリング装置

スパッタリング装置とは

スパッタリング装置

スパッタリング装置はごく薄い膜を対象物の表面に均一に作製するスパッタリングを行う装置です。

スパッタリングとは、真空蒸着やイオンプレーティングと同じく物理気相成長法 (PVD法) の一つです。主に半導体や液晶の成膜をはじめとしたさまざまな分野で活用いられています。また、対象物の表面を清浄化する際に用いられることもあります。

スパッタリング装置の使用用途

スパッタリング装置は、半導体、液晶、プラズマディスプレイなどの薄膜作製に利用されています。また、他のPVD法の蒸着装置と比較して、スパッタリング装置は高融点の金属や合金の成膜が可能であるため、用途が広い特徴があります。

最近では、プラスチックやガラス、フィルムの表面に金属を成膜して導電性を持たせ、透明電極やタッチパネルの配線としても利用されており、スパッタリング装置の用途の幅はさらに広がっています。

他に、光触媒作用のある酸化チタンを表面にコーティングし、抗菌作用を持たせた医療器具や雑貨等も販売されています。また、走査型電子顕微鏡 (SEM) の試料調製など分析用途でも利用されています。

スパッタリング装置の構造

図1-スパッタリング装置の構造

図1. スパッタリング装置の構造

スパッタリング装置は、主に下記のもので構成されています。

真空チャンバー内に基板を保持する試料台とスパッタ材料を供給するスパッタターゲットがあり、真空ポンプとガスの供給系がチャンバーにつながっています。

スパッタリング装置の原理

図2-スパッタリングの原理

図2. スパッタリングの原理

スパッタリング装置の原理は、真空下で高電圧をかけ、膜材料の原子をはじきとばして対象物表面に成膜するものです。まず、ポンプによってチャンバー内を十分な減圧状態にした後、アルゴンなどの不活性ガスを一定圧力で装置内に充填します。

薄膜の材料となるターゲットに高い陰電圧をかけグロー放電を起こすと、あらかじめ装置内に充填されていたアルゴンがプラズマ化され、陰極上のターゲットに衝突し、ターゲット上の原子や分子がはじき出されます。はじき出されたターゲット原子が、陽電圧をかけた対象物の表面に堆積し、薄膜を作製することができます。

スパッタリング装置の種類

スパッタリングの方式には、様々な種類があります。

図3-スパッタリング装置の種類

図3. 主なスパッタリング装置の種類

1. DC方式

直流電圧を電極間にかける方法です。構造が単純などの様々な利点がありますが、試料が高温のプラズマによる損傷を受ける可能性があり、スパッタリングターゲットが絶縁体の場合、製膜が正常に行えないなどの欠点があります。

2. RF方式

高周波の交流電圧電極間にかける方法です。DC方式では製膜できないようなセラミックスやシリカなどの酸化物や金属酸化物、窒化物などの物質でも製膜することができます。

3. マグネトロン方式

ターゲット側に磁石で磁界をつくり、プラズマをターゲット付近にとどめる方法です。試料のプラズマによる損傷が減少するだけでなく、プラズマの生成速度が向上するため、製膜速度が速くなります。直流、交流、高周波交流など様々な電源方式で利用できます。一方で、ターゲットの減り方にムラができ、利用効率が低い傾向にあります。

4. イオンビーム方式

イオンをターゲットや試料と別の場所でつくり、ターゲットに加速してあてる方法です。チャンバー内で放電を行わない方法なので、試料への影響が最小限で済むだけでなく、不純物の付着やターゲットの導電性などを考慮する必要がありません。

上記以外にも電子サイクロトロン (ECR) など様々な種類のスパッタリング装置があり、用途や予算に応じて適切に選択する必要があります。

スパッタリング装置のその他情報

スパッタリング装置の特徴

スパッタリング装置による成膜は、膜厚を均一にすることができ、かつ電気的性質を利用しているので、膜の強度を高くすることができます。他のPVD法では難しい、高融点金属や合金材料の膜が作製できます。また、アルゴンなどの不活性ガスの代わりに酸素を充填し、酸化物の成膜を行う方法もあります。

一方で、成膜にかかる時間が他のPVD法と比較して長いことや、発生したプラズマによるスパッタ対象を損傷するリスクなどのデメリットもあります。

参考文献

https://www.oike-kogyo.co.jp/research/column/sputtering/
http://www.sanyu-electron.co.jp/c/index.php?cID=172
https://plastics-japan.com/archives/2015

三次元測定機

三次元測定機とは

三次元測定機

三次元測定機とは、部品のさまざまな形状情報を三次元の位置情報として捉え、立体的に把握することができる測定機です。

部品の形状を互いに直行するX軸、Y 軸、Z軸について、ある基準点の位置からの距離で表すことで、立体的に測定します。例えば、金型の隅R形状といったノギス等では測れない形状でも測定可能です。

寸法以外にも三次元の位置情報をソフトウェアで解析することによって、異なる部位の位置関係や、輪郭形状、幾何公差を求められます。測定によって形状を三次元情報としてデジタル化すれば、後処理で様々な解析をすることができます。

三次元測定機による測定は一般的に、精密測定の範疇に属します。精密測定では温度の膨張による誤差を避けるため、一定の温度に管理された部屋で行われます。一般的には20℃に管理されている場合が多いです。

測定する製品も、十分に長い時間をかけて測定温度にする必要があります。三次元おいて正しい結果を得るためには、専門的な技術が要求されることもあります。

三次元測定機の使用用途

三次元測定機は主に、自動車部品等の形状測定に使用されています。さらに製品だけでなく、製品を作るための金型の寸法測定にも使用されています。

三次元測定機は、3DCAD等で設計された形状と、実際製作された部品を三次元測定機で計測した形状とを比較することによって、設計図面通りにできているか確認することも可能です。この調査方法は、リバースエンジニアリングと呼ばれています。他にも、図面がない他社製品等の部品形状を、三次元モデルとしてデジタルデータ化することもできます。

単純な長さだけでなく、角度や幾何公差を求めることも可能です。さらに丸く加工されている隅R形状など、ノギスやマイクロメータなどでは測れない形状の測定にも、三次元測定機が活躍します。

従来は接触型の三次元測定機が主流でしたが、近年は非接触型が多く開発されています。接触式は測定精度と信頼性が高い反面、高度な技術が必要であったり幾つかの制約がありました。この点については下記で解説します。

三次元測定機の原理

三次元測定機には、「接触型」と「非接触型」がありますが、それぞれ原理が大きく異なります。

1. 接触型三次元測定機

接触型三次元測定機では、スタイラスと呼ばれる測定子を直接測定対象に接触させて、点の座標位置情報を記録します。長く用いられてきた方法であり、正しい作業をすれば信頼性の高い測定が可能です。スタイラスには温度による熱膨張がほとんどない、セラミックやルビーなどが使用されています。

スタイラスを接触させるため、測定対象物がゴムなどの柔らかい製品の場合には、接触力で変形を生じることがあります。接触を伴うので、接触面に傷をつける可能性もあります。また、スタイラスの先端径より小さなR形状については、正しく測定することはできません。

2. 非接触型三次元測定機

非接触型三次元測定機は大まかに言うと、測定対象物にレーザーなどを当てることによって、測定物の三次元座形状を記録します。非接触型なので測定部が傷つくことはありません。また、短時間で測定できるため、近年需要が伸びてきています。

接触式では測定ポイントを一つずつ、スタイラスを接触させて三次元の位置情報を記録していくため、測定時間が長いことが欠点の一つでした。一般的には、接触型の測定の方が非接触式の測定よりも精度や信頼性が高いと言われています。

しかし、技術の進歩により、非接触型でも接触型と変わらないくらいの精度や信頼性が確保できるようになりつつあります。比較的高度な技術を必要とした接触式に比べ、非接触式は熟練を要することなく測定することが可能です。測定の目的に応じて使い分ける必要があります。

 

接触型、非接触型ともに高度な画像処理技術が用いられることによって、様々な解析ができるようになりました。解析結果の表示も、立体的なモデルなどで視覚的に理解しやすい出力が可能になっています。

三次元測定機のその他情報

1. 三次元測定機のメリット

三次元測定機のメリットは、ノギスやマイクロメータといった計測器では測れない複雑な形状や輪郭、幾何公差を測定できることです。大型の部品でも測定できます。特に接触式の場合は取り扱いに習熟が必要ですが、プログラム測定により夜間に自動測定させておくことも可能です。

2. 三次元測定機のデメリット

三次元測定機のデメリットは、装置が大型で広い設置スペースが必要なこと、他の測定器と比較すると扱いに技術が必要になることです。非接触式は比較的扱いやすい反面、測定物が鏡面であったり、メッキなどの光沢があったりすると、測定できないこともあります。また、装置の価格がかなり高額になることも、導入の際には考慮しなければなりません。

参考文献

https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/3d/info/