ターニングセンタ

ターニングセンタとは

ターニングセンタ

ターニングセンタとは、NC旋盤を複合化させたNC工作機械のことです。

回転工具やATC(自動工具交換装置)など、旋盤にはない機能を多数搭載されており、フライス加工や偏心穴あけ加工なども可能となります。

一般に、NC旋盤でできる加工は旋削と簡単な中心穴あけ加工のみです。そのため、フライス加工が必要な場合は、その都度工作物を外してフライス加工機に固定するという作業が必要になります。ターニングセンタではそのようなことがないため、作業効率や生産性の向上が期待できます。

ターニングセンタの使用用途

ターニングセンタは、旋削やフライス、穴あけなどといった何種類かの工程がある工作物の加工に使用されます。段取り替えなしで一気にこれらの加工を行えるため、加工精度が良く、加工時間も短縮することができます。

また、背面主軸付きのターニングセンタなら、掴みかえにより背面加工も行えます。主軸と背面主軸で位相合わせをすれば、把握する位置も指定することが可能です。

ATCを搭載しているものは複雑な5軸加工も行えます。今も進化し続けるターニングセンタは、近年急速に普及が進んでいます。

ターニングセンタの原理

ターニングセンタには、「NC旋盤ベース」と「マシニングセンタベース」の2種類のタイプが存在します。

NC旋盤ベースは、回転主軸に加えドリルやフライスなどの回転工具用の回転軸が追加されたものです。ベースは旋盤なので、円筒状の工作物の加工に適しています。刃物台は旋回式(タレット)のものが多く、工具交換が容易にできます。

マシニングセンタベースは、回転テーブルなどの回転軸が追加されたものです。5軸加工機としても使われ、複雑な形状の工作物の加工に適しています。

また、ターニングセンタは工作物を自動で供給・排出できるバーフィーダーやローダーを組み合わせることで、完全自動化にも対応できます。

様々な機能が追加されたターニングセンタは非常に魅力的に思えますが、注意しなくてはならないのは機械の干渉です。多くの工具やセンサー、ロボットアームなどが追加されたターニングセンタのツーリングゾーンには干渉の危険が溢れています。少しでもプログラムを間違えると機械が衝突して故障する可能性もあるため、安全点検やプログラムのチェックはとても重要です。

参考文献
https://www.sandvik.coromant.com/ja-jp/knowledge/machine-tooling-solutions/machines/pages/turning-centres.aspx

ハサミゲージ

ハサミゲージとは

ハサミゲージ (Snap Gauges) とは、限界ゲージの一種類で、棒のような物 (軸) を挟むように当てて外径が既定の寸法になっているかどうか測定する工具です。

鋼板で作られた板状のものでスナップゲージとも呼びます。通り側,止り側のふたつの測定端面をもち,対象物をこれにはさんで測定を行います。

重量が軽いので大径の物でも簡単に検査することができます。0〜1000mmの測定範囲と0.01mmの最小表示量を持つのが標準的なものです。形状は片口と両口があり、使いやすさから片口形状が広く使用されています。

ハサミゲージの使用用途

ハサミゲージは自動車業界をはじめ、電機、半導体、制御機器、建築関連など様々な業界で利用されています。特にミクロン単位の精度が求められる製品、ひとつの製品に対して測定項目が複数存在し、検査に時間がかかる製品、少数製品を検査する時使われています。

実例は以下の通りです。

  • エンジンのピストン形状外径計測などエンジン回りの部品点検
  • 自動車内燃機の整備
  • オートバイ改造のパーツ製作
  • 薄板の厚さ確認
  • モーターの軸の点検
  • 精密機械のメンテナンス、工程管理システム
  • 機械部品の採寸、検品
  • 農業機械の修理、
  • シャフト加工、旋盤加工で公差指定がある部分の測定
  • 金属板や刃物の厚み測定

ハサミゲージの特徴

ハサミゲージというのは単純な構造になっていて軸径の寸法許容範囲の最大値をゲージ通り部に、最小値をゲージ止まり部に設定して、軸径が通り部を通過して止まり部で止まったなら寸法許容差範囲内にあるもので、通り部に入らないようだと軸径は過大、止まり部を通過するようだと軸径は過小であるということが簡単に判別されます。

JISに規定されているハサミゲージの材質は、工具鋼の中では使用頻度の高いSK材で、焼き入れ硬度がHRc60~62のものが使われています。焼き入れ硬度がゲージ測定部の耐摩耗性を決めるので、焼入れ硬度と材質の選択は大きな関係があります。

SK材にクロム (Cr) もしくはタングステン (W) を添加したSKS材の場合は、SK工具鋼より サビへの耐性が優れてます。熱処理により、高強度、高硬度、耐摩耗性を持っているマルテンサイト系ステンレス鋼と高硬度に焼入れが可能なダイス鋼もよく使われます。製造工程や検査工程において信頼を得るためにはJIS校正証明書やトレーサビリティ体系図付のゲージを選びます。

参考文献
https://miwa-sokuhan.com/category/hasamiworld/
http://k-rt.sakura.ne.jp/products/handheldgauge/snapgauge/
http://www.eonet.ne.jp/~geiji/hasami_gaisetu.html

パワーリフター

パワーリフターとは

パワーリフター

 

パワーリフターは主に工場や倉庫など重い荷物を動かす必要がある場所で使用されています。

パワーリフターは重い物を持ち上げることに使用されますが、重い物を単純に運ぶことにも使用できますので汎用性が高いリフタです。パワーリフターを使えば大体人の頭くらいの高さまで物を持ち上げることができますので倉庫の整理などに便利です。

原料や荷物など常に重い物を運んでいる工場や倉庫などではフォークリフトが使用されますが、フォークリフトを使用するまでもなければ大抵パワーリフターが設置されています。

パワーリフターの使用用途

パワーリフターは最大積載能力が1,000kg程度のものまであり、人間が持ち上げられないような非常に重い物も持ち上げることが可能です。

倉庫では荷物の整理の際の荷物の棚への積み下ろしに使用されたり、トラックで納入された際の物品の搬入などに使用されたりします。大きな工場になれば大抵はフォークリフトがありますのでフォークリフトを使用しますが、フォークリフトを持つまでもない中小の工場や開発拠点などでは大抵パワーリフターが設置されています。

パワーリフターの原理

パワーリフターは油圧によりフォークの上昇を行いますが、このフォークの動作には手動と電動の二種類があります。

手動のパワーリフターは電源が不必要という利点がありますが、リフトを上昇させる際には手でレバーを動かす必要があります。比較的軽い物品なら難なく持ち上げられますが、重い物になれば持ち上げる際に手が疲れてしまいます。一度の作業ならいいのですが、一日に何度も使用するのであれば腕に負担がかかってしまいます。

一方のバッテリー式のパワーリフターはバッテリーを使用しますので充電が必要ですが、昇降はモーターにより行われますので手を使う必要がなく、腕に負担がかかりません。さらに、軽い物品なら手動よりも倍程度のスピードで持ち上げられますので作業効率が高くなります。

重い物を楽々と持ち上げられるパワーリフターですが、それほど大きくはないのでエレベーターにも載せられるものもあり、小回りも利きますのでたくさんの機械類や機器類が設置されているような場所でも目的地まで荷物を運ぶことができます。

参考文献
http://www.opk.co.jp/product/detail.php?seq=9

ブローチ盤

ブローチ盤とは

ブローチ盤 (英: broaching machine) とは、ブローチと呼ばれる工具を使用して切削加工を行う工作機械です。

ブローチは、寸法順に配列した多数の切れ刃を持つ長い総形工具です。油圧などの力を利用してブローチを加工ワークに向かって押したり引いたりすることで、ワークの内面や表面を荒加工から仕上げまで一連の工程を行えます。

生産性にすぐれた加工方法で、自動車部品の製造や各種機械部品の多量生産に広く使われています。一方、一般的な汎用機械加工設備に比べて設備費用は高額になるため、少量の生産には不向きです。

ブローチ盤の使用用途

ブローチ盤による加工は、エンジンの部品や歯車のキー溝を彫るのに必要な加工方法です。そのため、自動車や飛行機の部品製造などによく使われます。特にスプロケット、スプライン、歯車などを製造する際に使用される場合が多いです。

ブローチ加工は、大きく分けると、ワークの表面を決まった形状に切削する表面ブローチ加工と、内側の穴に貫通させる内面ブローチ加工の2種類があります。

ブローチ加工では、穴加工やキー溝加工、スプライン加工、六角加工・六角穴加工・四角加工・四角穴加工などのその他加工が行われます。ワークを取り除いた後、ブローチ盤が後ろ握り部を掴んで機械原点に戻ることで、次のワーク加工ができる待機状態になります。

ブローチ盤の原理

ブローチ加工は、ブローチ工具により荒削りから仕上げ削りまで、一度の引抜加工で完成させます。ブローチ加工の加工精度や生産性は、ブローチの設計や精度に依存します。また、ブローチの価格は高額であり、加工部の仕様に対して専用の工具となるため、汎用性はありません。

1刃当たりの切込み量や荒加工から仕上げ加工の条件などは、ブローチの設計に盛り込まれます。ブローチ加工において、適切な切削油の選定も重要です。合わない油を使用すると、加工精度やブローチの寿命を縮めることにつながります。

ブローチ盤の種類

1. 加工による分類

加工によって分類する場合、内面ブローチ盤や表面ブローチ盤、内面・表面とも加工できる両面ブローチ盤があります。内面ブローチ盤は、ワークの穴の内面を削って、仕上げを行います。

表面ブローチ盤は、ワークの表面に溝を形成する場合に使われます。キー溝、スプロケット、スプライン、歯車などを効率・精度良く加工可能です。

2. 構造による分類

ブローチ盤は、構造面から立型と横型の2種類に分類されます。縦型は専有面積が少なく、据え付け面積が少ないので一般的なタイプです。しかし、ブローチを引き抜くようにワークに貫通させるため、ブローチの長さの2倍以上は必要になり、縦長の機械になります。

一方、横型ブローチ盤は、高さに制約がなく、ブローチを引き抜くストロークが大きくとれるため、表面加工に多く使われる方式です。複雑な形状も加工ができます。

3. ブローチの移動法による分類

ブローチ盤は、ブローチの移動方法によって引き型と押し型に分類できます。前者はブローチを引っ張って加工し、後者はブローチを押して加工します。

4. 駆動方式による分類

ブローチ盤は、稼働方式によって油圧式や機械式などに分類できます。中でも特に多いのは、油圧シリンダーによってブローチを動かす油圧式です。

安定した力をブローチにかけられるため、刃に衝撃を与えにくく、工具寿命が長くなることがメリットとして挙げられます。

ブローチ盤の特徴

長所

1. 生産性が高い
複雑な加工を1工程で行えます。例えば、穴の内面加工では、通常、荒加工、中仕上げ、仕上げと3つの工程が必要ですが、ブローチ加工では1工程で仕上げ加工まで可能です。

2. 製品の再現性が高い
ブローチ加工は、複雑な加工を均一の品質で、大量生産できる再現性の高い加工法です。1刃あたりの切込み量や全体の切削量は、ブローチの設計時に事前に設計されており、均一な加工が可能です。

また、ブローチを引き抜く作業に熟練度が必要ないこともメリットとして挙げられます。

3. 他の方法では不可能な加工が可能
ブローチ加工の場合、他の方法では不可能な加工が可能です。例えば、らせん状の切れ込みを有するヘリカル形状は、ブローチ加工以外では製造できない加工です。

また、棒状の内側や外側に、歯車に用いる切込をいれるインボリュートスプラインも、ブローチ加工のみ製造できます。

短所

1. 少量生産では経済的に不利
ブローチ加工は、ブローチが高価であり、ブローチ盤も他の工作機械に比べて高価格です。したがって、少量生産では経済的に不利となります。

2. 底つまりの加工が不可
ブローチは、ワークを貫通させて使用するので、貫通しない底つまりの加工は不可能です。

参考文献
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/kos/broach/index.htm
https://www.sanjokikai.co.jp/product/tool/

磁気計測器

磁気計測器とは

磁気計測器とは、物体の磁力を測定することのできる装置のことです。代表的な磁気測定器としては、「ガウスメーター」、「フラックスメーター」、「マグネットアナライザ」などがあります。磁石の周りには磁界が発生しており、磁束が伸びています。この磁束が影響する範囲の中では、磁力によって物体が反発したり引きつけ合ったりするのです。また、磁力の原理はモーターやセンサなどの身近な場所で多く利用されています。磁力の大きさや方向を正しく調べることは、様々な製品の品質管理において重要な工程なのです。

磁気計測器の使用用途

磁気計測器は様々な場所で利用されますが、用途によって使用する機器が変わります。物体から出る全ての磁束の和である総磁束を計測するのか、単位面積あたりの磁束である磁束密度を測定するのかという違いです。

まず、総磁束を測定する機器は磁石の磁力検査に利用されます。磁力検査では少ない時間で大量の磁力を調べる必要があるため、総磁束の測定が適しているのです。

次に、磁束密度を測定する機器はよりピンポイントの品質検査に利用されます。細かな範囲の磁束を計測することで単純な品質管理だけでなく、製品の特性を確認することもできます。また、漏洩した磁束を計測し、製品の欠陥を調べることにも適しています。

磁気計測器の原理

磁気計測器には用途によって様々な種類がありますが、ここでは代表的なガウスメーターの原理や特徴についてご紹介します。

ガウスメーターとは、物体の磁束密度を計測することができる装置です。原理としては、ホール効果を利用して磁束密度を計測しています。一定方向に電流の流れる金属や半導体に垂直に磁界をかけると、この二つと垂直の方向にローレンツ力が発生します。金属や半導体内の電子はローレンツ力によって移動させられ片側に集まるため、電流や磁界と垂直方向にホール電圧呼ばれる電位差が生まれます。このホール電圧は対象にかかっている磁界の大きさと比例していることから、計算によって磁束密度を算出できます。

また、固定タイプとハンディタイプのガウスメーターがあります。ハンディタイプのガウスメーターは持ち運びが可能なため細かな部分における磁束密度の測定には長けていますが、測定可能範囲や精度においては固定タイプのガウスメーターが優れています。

参考文献
http://ims-jp.com/column_a/05/
https://www.irii.jp/examination/detail/pdf/kaihoh13_01.pdf
https://ekuippmagazine.com/measuring/gauss-teslameter/

中ぐり盤

中ぐり盤とは

中ぐり盤

中ぐり盤とは、中ぐりと呼ばれる加工を専門とした工作機械です。

中ぐりとは、ドリルなどで開けた下穴をより大きくする際に、開けた下穴を広げる様に加工することを指します。ドリルのサイズでは加工できない大きな穴を加工したいときや、正確な寸法及び仕上げ加工を要する場合に使用されます。

中ぐり加工はフライス盤マシニングセンタタレット旋盤などでも可能ですが、大きな工作物を加工する場合や深穴の中ぐり加工をする場合には、中ぐり盤を使用するケースも多いです。使用される工具を「ボーリングバー」と呼び、深穴に対応できるものや超硬でできたものなど、種類も豊富にあります。

中ぐり盤の使用用途

中ぐり盤は、旋盤やマシニングセンタなど、他の工作機械では加工不可能な工作物を中ぐり加工するために使用されます。

例えば旋盤の場合は主軸チャックで把握できるサイズのものしか加工することはできません。また、把握できたとしても、ボーリングバーを工作物に寄せた時に干渉する部分があれば加工は不可能になります。

マシニングセンタも同様にテーブルに置くことができる加工材料の大きさに制限があるため、より大きな加工材料の中ぐりを行うためには中ぐり盤を使用しなければなりません。また、マシニングセンタでは一定以上の加工精度が出せないため求める加工精度が高ければ高いほど中ぐり盤での中ぐり加工が必要とされます。中ぐり盤はツーリングゾーンを広くとっているものが多いため、様々な工作物の加工に対応できます。

中ぐり盤の原理

中ぐり盤の基本構造は、主軸頭、コラム、テーブル、サドル、回転ベース、ベッドから構成されています。中ぐり加工は中ぐり用のバイトという刃物を使用して、下穴の内径を切削していきます。バイトを主軸と一緒に回転させながら加工材料にバイトを接触させ下穴を広げていきます。

しかし、中ぐり加工は加工上穴の内部に切り粉がたまりやすいことや、深穴を加工する際バイトがびびりやすく破損や事故につながりますので注意が必要です。

中ぐり盤の種類

中ぐり盤の種類は、次の5つに分けられます。

1. 横中ぐり盤

主軸が横向き (水平方向) の構造になっています。立形に比べ、切り粉の排出性が良いため、より大きく深い穴に対応できます。中ぐり盤の中で最もメジャーなタイプになります。

2. 立中ぐり盤

主軸が縦向き (垂直方向) に取り付けられています。横形に比べ、主軸の自重によるたわみが少ないため、より安定した精度で加工が可能です。立中ぐりは比較的大型の工作機械が多いためサイズの大きい加工材料の加工に適しています。しかし、貫通穴出ない場合切り粉が排出しにくいのが欠点です。

3. ジグ中ぐり盤

ジグ中ぐり盤は精密な位置決めが可能な装置を搭載しており、横中ぐり盤や立中ぐり盤に比べてより高い精度で加工することが可能です。また構造は立中ぐり盤と似ています。元々はジグ (治具) の加工用として用いていたことから、「ジグボーラー」とも呼ばれています。

4. 精密中ぐり盤

ミクロン単位の仕上げ加工用に使用されます。インローの内径仕上げなどにも多用されています。

5. NC中ぐり盤

NC中ぐり盤は、中ぐり盤に数値制御機能 (NC) を搭載したモデルです。事前に加工データをプログラミングでき、自動で加工するため作業の効率化や省人化が可能です。

中ぐり盤のその他情報

中ぐり盤の特徴

中ぐり盤は、高精度の穴加工が可能です。中ぐり盤は昔からものづくりに使用されている工作機械で、旋盤や汎用性の高いマシニングセンタでも中ぐり加工が可能な中、穴の寸法精度が必要な部品では今でも中ぐり盤が使用されるほど、高い加工精度を持っています。

中ぐり盤の形状はいくつかの種類で分かれており、加工材料や加工精度を考慮し適切な中ぐり盤を使用することで、穴加工の精度をより一層高めることができます。

導電性高分子コンデンサ

導電性高分子コンデンサとは

導電性高分子コンデンサとは、電解質の材料として導電性高分子を使用し、低インピーダンスと優れた高周波特性、さらには温度や印加電圧に影響を受けにくいのが特徴のコンデンサです。

従来のコンデンサよりも静電容量の安定性に優れ、低いESR (等価直列抵抗) 、高い信頼性を実現しているため、より高性能な電子機器の実現に寄与しています。

導電性高分子コンデンサの使用用途

導電性高分子コンデンサは、安定した静電容量、低いインピーダンス、高速な充放電性能、高い信頼性などの特性を活かして、幅広い用途で使用されています。主な使用用途は、以下のとおりです。

1. 電子機器

導電性高分子コンデンサは、スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどの携帯電子機器に使用されています。特に、高速な充放電性能が求められるバッテリー関連の回路や、高周波回路での使用に適しています。

2. 車載電子機器

車載電子機器には、高温・高湿度などの厳しい環境下での動作が求められます。導電性高分子コンデンサは、高い信頼性と耐久性が求められる車載電子機器に適しています。

3. 有機ELディスプレイ

有機ELディスプレイのドライブ回路には、高速な充放電性能が必要です。導電性高分子コンデンサは、その高速な充放電性能を活かして、有機ELディスプレイのドライブ回路に使用されます。

4. 太陽光発電

太陽光発電のインバーター回路では、高速なスイッチングが必要です。導電性高分子コンデンサは、その高いスイッチング性能を活かして、太陽光発電のインバーター回路に使用されます。

導電性高分子コンデンサの原理

導電性高分子コンデンサは、従来のタンタル電解コンデンサやアルミ電解コンデンサをベースとしたものと考えられます。従来タイプの電解コンデンサは、陰極に二酸化マンガンや電解液を用いています。

一方、導電性高分子コンデンサは、電解質に導電性高分子を用いた電解コンデンサです。即ち、高分子タイプのアルミ電解コンデンサであれば、陽極にアルミニウム箔、電解質に導電性高分子、陰極材料はアルミを用いています。

高分子タイプのタンタル電解コンデンサであれば、陽極にタンタル金属、電解質に導電性高分子を用いています。なお、ここで言う導電性高分子とは、ポリピロールポリチオフェンなどの高分子です。

導電性高分子コンデンサの種類

現在製品化されている導電性高分子コンデンサには、次の種類があります。

1. 導電性高分子アルミ電解コンデンサ

陽極にアルミ箔、誘電体はアルミ酸化膜、電解質が導電性高分子で銀電極と接しています。積層タイプで小型化が特徴です。

2. 導電性高分子タンタル電解コンデンサ

タンタル電解コンデンサの電解質を二酸化マンガンから導電性高分子に置き換えたものです。安全性が高いことも特徴として挙げられます。

3. 導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ

従来のOSコンの陰極材料を高分子に置き換えたものです。高リップル、高耐圧特性が特徴です。

4. 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ

アルミ電解コンデンサの電解質として、電解液と導電性高分子を併用したものです。従来のアルミ電解コンデンサと同一形状となっています。

導電性高分子コンデンサのその他情報

導電性高分子の特徴

1. 低いESR (等価直列抵抗) 
導電性高分子は、抵抗値が低く表面積が大きいため、ESRが低くなります。これにより、高速な充放電が可能になります。

2. 高い耐熱性
導電性高分子は、一般的に高い耐熱性を持ちます。これにより、高温環境下での使用が可能になります。

3. 高い信頼性
導電性高分子は、柔軟性に優れているため、振動などの外力に対しても耐久性が高く、信頼性が高いとされています。また、ESRが小さいことは、充放電時の電流による発熱が少ないことを意味します。これはコンデンサの寿命に大きく影響し、導電性高分子コンデンサの寿命が長いことの理由の1つです。

参考文献
https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/p1
https://www.rs-online.com/designspark/understanding-polymer-and-hybrid-capacitors-jp
https://article.murata.com/ja-jp/article/polymer-capacitor-basics-part-1
https://industrial.panasonic.com/jp/products/capacitors/polymer-capacitors
https://www.rs-online.com/designspark/study-capacitor

内面研削盤

内面研削盤とは

内面研削盤

内面研削盤とは、円筒形状の工作物の内面を加工する機械のことです。

研削加工は、硬い砥粒を結合剤で固めた砥石を用いて、材料を削る加工方法を指します。砥石には酸化アルミや炭化ケイ素が使われ、硬さはダイヤモンドに次ぐものがあります。そのため、焼き入れ鋼のような硬い材質を削ることが可能です。

切削加工に比べて切り込みが小さいため、荒削りには向いていませんが、寸法精度や仕上げ面の荒さが良いことから、精密加工に適した手段です。通常、切削加工後に焼き入れを行った後の仕上げ加工に使用されます。

内面研削盤は硬い材質の円筒形状の内面加工に適した機械で、寸法精度や仕上げ面の良さが求められる精密加工に活用されています。内面研削盤を理解し、適切な加工方法を選択することで、高品質な製品を生産することが可能です。

内面研削盤の使用用途

内面研削盤は、砥石軸ヘッドと呼ばれるスピンドルに小径の内面研削盤用砥石を取り付け、工作物を外爪チャックや電磁チャックなどで固定して研削します。

内面研削盤の種類は、工作物回転形とプラネタリ形の2種類です。工作物回転形では、砥石軸と主軸が互いに回転し、砥石が工作物に前後にオシレートしながら切り込みをかけて研削します。

一方、プラネタリ形は、製品が大きい時や回転時にバランスが取りづらい形状の工作物に適しています。砥石軸が回転しながら遊星運動を行い、内面に沿って研削しますが、工作物自体は回転しません。

研削には砥石の切れ味と精度、形状が重要です。そのため、砥石交換時や一定の研削量ごとに、砥石の成形や目立てを行うドレッシングが必要です。ダイヤモンドドレッサーを回転した砥石に当てることで、砥石を整えます。

内面研削盤の原理

基本的な工作物回転形の内面研削盤では、主軸に対して砥石がついた砥石軸ヘッド側がスライド機構を持ち、穴の中に砥石が入り込むことで研削を行います。また、スライド位置を合わせることで、穴の軸中心に対する直角な端面の研削も可能です。

内径に適した砥石をセットアップすることで、さまざまな内径に対応できます。ただし、砥石軸のたわみのため、内径が中高になりやすいです。内径に対して大径砥石を選定し、短い軸首の砥石軸を使用し砥石軸ヘッドにセットする必要があります。

段付き形状の内径にも対応可能で、同軸度は高精度に仕上がります。主軸に角度をつけることで、テーパー研削を行うこともできます。砥石で工作物を研削する場合、砥石の周速が低いと砥粒が結合剤と一緒に脱落しますが、1,500から3,000m/minの高速回転で周速を得ることで、焼入れ鋼のような硬い工作物を削ることが可能です。

一般的な研削条件では、砥石は小径のため、前述の周速を得るために砥石軸ヘッドを2,000から3,000rpmで回転させます。工作物は、研削表面の周速が35から45m/min程度になるように主軸回転数を設定します。

内面研削盤のその他情報

内面研削盤と併用される機械

内面研削盤は、精密加工を行う際に重要な機械ですが、前後の工程において併用される機械もまた重要な役割を果たしています。併用される機械としてCNC旋盤、面取り機、三次元測定機の3種類があります。

1. CNC旋盤
CNC旋盤は、コンピュータ数値制御によって駆動される旋盤で、内面研削盤の前段階で使用されます。素材を所定の形状に切削加工し、内面研削盤でさらに精度を高めるための下地を整えることが可能です。CNC旋盤は、複雑な形状の加工が可能であり、自動化による生産性向上も期待できます。

2. 面取り機
面取り機は、研削盤で加工された部品の端面や切り口にできるバリを取り除く機械です。内面研削盤で加工された部品の仕上げに欠かせない機械であり、製品の安全性や品質向上に寄与しています。

面取り機は、手動操作型から自動化されたものまで幅広く取り揃えられており、生産性や加工精度に応じた選択が可能です。

3. 三次元測定機
三次元測定機は、内面研削盤で加工された部品の寸法精度や形状精度を検証するための機械です。加工精度が設定通りであるかどうかを確認し、製品品質を維持・向上させることができます。また、測定データは分析や品質管理にも活用され、生産プロセスの改善に役立ちます。

参考文献
https://sakaitec.co.jp/engineering/machinetool/334
https://www.okamoto.co.jp/inside
https://www.toyo-at.co.jp/products/kousakuki/index.html

平面研削盤

平面研削盤とは

平面研削盤とは、その名の通り工作物の平面を研削する研削盤です。

加工現場でもっとも使用されています。平面研削とは、加工物を移動させながら回転する砥石に表面を当てることで、平面度を高くする手法です。

対応できる製品の種類が多いため、数ある研削手法の中でも広く使用されています。

平面研削盤の使用用途

平面研削盤は、主に平面形状を持つ焼入れ鋼などの工作物の仕上げ加工に使用されることが一般的です。削れる量は平面切削を行うフライス加工などと比較すると、圧倒的に少なくなります。

横軸角テーブル形平面研削盤では、テーブルが左右に往復運動する際の反転時に切り込みをかけますが、荒研削時で0.01から0.2mmで、仕上げ研削時は最大でも0.01mmで通常は0.005mmほどです。しかし、砥石で研削することで、細かい精度で加工面を仕上げることができます。

平面研削盤の原理

平面研削盤では、回転する砥石が加工物表面に接触することで、表面の凹凸や異物を除去します。平面研削の仕上がりは、以下に示すような研削条件によって変化します。

1. 砥石の回転数

砥石の回転数は、周速度によって決定します。通常、平面研削盤の場合1,200~1,800m/minの周速度が得られる回転数に設定します。

研削砥石が安全に使用できる最高速度である最高使用周速度は、労働安全衛生法で定められています。砥石回転数はこの周速度を超えないよう設定しなければなりません。

砥石の回転数は、砥石と加工物のどちらにも影響を与えます。砥石の回転数を上げると、「砥石の消耗量が小さくなる」「加工物の研削量が大きくなる」「砥石の表面温度が小さくなる」という3つの特徴が見られます。

2. 工作物送り速度

工作物の送り速度は、テーブルの送り速度のことです。工作物の材質や硬さ、必要な面荒さなどによって異なりますが、仕上げ研削の場合30,000~50,000mm/minになるように設定するのが一般的です。

3. 砥石の切込み量

砥石が素材に切込む量で1回の加工で削り取る量を決定します。切込み量が少ない場合、研削抵抗が小さいことから砥石の摩耗は少ないです。そのため、加工物の仕上がりが美しくなります。

切込み量が多い場合、削り取る量は多くなりますが、仕上がりは粗くなります。大きな切込みは砥石の寿命低下にもつながるため、注意が必要です。

平面研削盤の種類

工作物をセットするテーブルの形状や砥石をセットする砥石軸の形状によって、いくつかに分類できます。

1. テーブル形状による分類

テーブルの形状によって、角テーブル形と回転テーブル形に分類できます。角テーブル形と回転テーブル形を比較した場合、角テーブル形は砥石と工作物の接触面積は小さいので、加工能率は劣りますが精密な研削を行うことが可能です。

回転テーブル形は、砥石と工作物の接触面積が大きいので加工能率が高くなります。砥石は結合度が低く、粒度の大きい砥石を選定するのが一般的です。しかし、研削する位置により回転速度が変化するので、研削仕上げ面は幾分悪くなる傾向にあります。

砥石幅に対する工作物の研削範囲や必要な仕上げ面によって適切な研削方法を選定します。

2. 砥石軸方向による分類

角テーブル形は砥石軸の形状によって、3種類に分類できます。具体的には、砥石軸が地面と水平になっている横軸形と砥石軸が地面と直角になっている立軸形、砥石軸ヘッドを水平に移動するための摺動部をもつ門形の3つです。

横軸角テーブル型では、砥石の外周面を利用して加工物の表面を研削します。精度の高い研削が可能です。砥石軸に対するテーブルの動かし方によってプランジカット研削、トラバースカット研削、バイアス研削があります。

立軸角テーブル型は、砥石と加工物の表面積が広い加工方法です。そのため、加工物の面積が大きい際に利用する研削方法です。同じ平面研削盤でも多くの種類があり、メリット・デメリットが異なります。研削する目的に応じて適切に使い分けることが重要です。

参考文献
http://www.okamoto.co.jp
http://www.kuroda-precision.co.jp
http://nagase-i.jp

静電気対策手袋

静電気対策手袋とは静電気対策手袋

静電気対策手袋(静電気防止手袋)とは、その名の通り静電気を逃しやすく、帯電対策がされている手袋です。

静電気はさまざまな製造工程で発生します。発生した静電気は爆発や火災などの重大事故につながる恐れがあり、安全上の対策が必須です。他にも電子部品の回路が破損するなどの影響があり、品質管理の点においても静電気の防止は重要な課題です。

静電気対策手袋には静電気対策として、静電性の材料が使われています。静電性の材料としては、によってコーティングされた化学繊維やカーボン繊維、導電性を付与した樹脂などが挙げられます。 

静電気対策手袋の使用用途

前述のように、静電気は事故や品質低下の一因となります。そのため静電気対策手袋は、電子部品や粉体製品など、静電気の発生を特に嫌う製造現場に適しています。

静電気による事故や災害のうち約20%は、作業者および作業者が身につけているものに由来する静電気が原因で発生するといわれています。この作業者由来の静電気対策としては、導電性の床・マット、帯電防止靴、帯電防止服を導入するのが一般的です。

製造現場での作業の際、手は製品に最も接触する部位といえるでしょう。上記の対策に加え、静電気対策手袋で手の帯電防止も併せて行うと、静電気発生のリスクを効果的に抑えることができます。 

静電気対策手袋の原理

静電気による事故や災害で代表的なのは、爆発および火災です。石油精製業、化学工業では特に数多くの事故事例が報告されています。

石油精製業や化学工業の製造現場は、可燃性の液体や溶剤などが多量に存在しているのが特徴です。これらは小さいエネルギーでも容易に着火し、静電気のわずかな放電でも着火源となってしまうため、静電気による爆発や火災が発生しやすくなります。

可燃性粉体、特に粒子径数十µm以下のものを扱う現場も、静電気による爆発や火災が発生しやすい場所の1つです。

一般に、粉体は粒子径が小さいほど着火に必要な最小エネルギーが小さくなります。静電気放電のエネルギーは最大でも数mJと小さいため、粒子径の大きい従来の粉末が、静電気程度の放電で着火することはほとんどありません。しかし粒子径数十µm以下の微粉体は、最小数mJのエネルギーで着火するものも多く、静電気放電でも爆発や火災の危険性が高くなります。

これらの爆発や火災を防止するには、事故原因の多くを占める、作業者由来の静電気対策が効果的です。静電気対策手袋などを利用し、人体の帯電電位を100V以下に抑えると、静電気の発生を防止できます。導電性があるタイプの手袋を用いれば、作業者だけでなく、作業者を介して金属製工具の接地を行うことも可能です。 

参考文献
http://www.powder-coating.or.jp/pc/2017sp/02.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sptj1978/39/1/39_1_28/_pdf/-char/ja
https://www.showaglove.co.jp/business/solution/statistic