リチウム電池

リチウム電池とは

リチウム電池は、化学反応により電力を取り出す化学電池の一種です。リチウムイオン電池と名称が似ており混同しやすいですが、リチウムイオン電池は負極にリチウムイオンを貯蔵可能な炭素材料を使用したインターカレーション反応に基づいた二次電池です。

一方で、リチウム電池は負極に金属リチウムまたはリチウム合金を使用したものを指し、一般的には充電不可能な一次電池です。

リチウムイオン電池の詳しい説明やメーカー36社一覧はこちら

リチウム電池の正極には、二酸化マンガン、フッ化黒鉛、二硫化鉄などが使われますが、二酸化マンガンを用いたものが主流で、単にリチウム電池というと一般的に二酸化マンガンリチウム電池のことを指します。

リチウム電池の使用用途

リチウムは金属の中で最も陽イオン化傾向が大きく、最も軽い金属である。このためリチウム電池は電圧が高く軽量でエネルギー密度が高いことが特徴です。ブルーレイ・DVDレコーダー、デジタルカメラ、ゲーム機、炊飯器、通信機器などさまざまな家庭用電気機器の時計やメモリーバックアップ用の内蔵電源として広く使用されます。

また、安定した放電特性と長期信頼性があり、高温での保存性に優れた種類もあるため、水道、電気、ガスの各種メーター・スマートメーター、火災報知器、セキュリティ機器、医療機器などの重要機器の電源としても幅広く使われています。

リチウム電池の原理

リチウム電池は、正極に二酸化マンガン、フッ化黒鉛、二硫化鉄などを使用し、負極にリチウム金属、電解質としてリチウム塩を有機溶媒に溶かした有機電解液などが使われます

負極の金属リチウムは電解質に接している箇所からイオン化し、リチウムイオンとなって電解質に溶け出し、リチウム原子1個のリチウム化に伴い1個の電子が発生します。そして、電子は導線、リチウムイオンは電解質を介して負極から正極へ移動し、正極材と化学反応を起こします。

リチウム電池の特徴

アルカリ乾電池のようなほかの電池と比較して、リチウム電池は以下のような特徴があります。

1.軽量で高電圧

アルカリ乾電池が1.5Vの公称電圧であるのに対し、一般的に普及している二酸化マンガン型では3Vの高い公称電圧が得られます。軽量で高電圧であるためエネルギー密度が高く、二個以上必要であった電池数を一個に減らすことができ、より小型な機器に使用できることが特徴です。

2.自己放電が少なく、長い時間使用可能

リチウム電池の正極は化学的に安定した材料であるため劣化しにくく、10年間貯蔵しても90%以上の容量を維持することが可能です。

また、比較的大きな電流を必要とする機器(撮影装置など)での電池の寿命を比較すると、アルカリ乾電池に対してリチウム電池は2倍程度の寿命が期待できます。リチウム電池は乾電池と比較すると高価ですが、電池交換の頻度は低下しますので、大きな電流が必要な機器ではトータルコストの面で有利になる場合があります。

しかし消費電流が少ない機器、例えば電卓やテレビのリモコン送信機、に使った場合には乾電池との寿命の差が少なく、メリットはありません。

3.広い温度範囲

乾電池で広く使われているアルカリ乾電池などは電解質が水溶液であるため、低温環境では反応活性が低下し、電解液が凍結した場合は電池として機能しなくなる。このため、アルカリ電池の推奨使用温度範囲は5℃ ~ 45℃とされています。

一方で、リチウム電池では有機電解液を使用しているため凝固点が非常に低いです。また高温でも比較的安定なので、広い温度範囲でパワーを取り出すことが出来ます。一般品でも-30~70℃、耐熱タイプであれば-40~125℃の使用温度範囲が謳われています。

以上のような特性から、雪山登山における機材の電源、写真や動画撮影用のカメラ等の電源

リチウム電池の種類

一般的にリチウム電池といえば充放電不可能な一次電池ですが、充放電可能なリチウム二次電池も存在します。それぞれについて紹介していきます。

リチウム一次電池

市販されているリチウム一次電池を形状で分類すると、円筒形リチウム電池、コイン形リチウム電池、ピン形リチウム電池の3種類になります。

1.  円筒形リチウム電池

円筒形リチウム電池は、自己放電 が少なく大きな電力が出力できることが特徴です。正極材料としてフッ化黒鉛もしくは二酸化マンガンが主に使われ、いずれも出力電圧は公称3Vです。フッ化黒鉛は長期保存性に優れ、ガスや水道などのスマートメーターの電源として採用されています。二酸化マンガンは大きな電流の供給に適し、カメラ等の撮影機器に使われています。また硫化鉄を正極材料に用いたリチウム電池は、出力電圧が1.5V程度となるので、単3や単4乾電池の置き換え用として販売されています。

2. コイン形リチウム電池

コイン形リチウム電池の正極材料は、フッ化黒鉛もしくは二酸化マンガンです。薄く小型であることが特徴で、電気製品、情報機器等のメモリー機能や時計機能のバックアップ用電源として使われています。また、自動車のキーレスエントリーシステムや超小型ライトなどにも用いられています。

3. ピン形リチウム電池

ピン形リチウム電池は細長い小型のもので、正極材料はフッ化黒鉛です。主に釣り用の電気ウキや小型の電波発信機などが用途です。

リチウム二次電池

一般的なリチウム電池は充電ができない一次電池ですが、バナジウムやチタンなどの化合物を正極、リチウム金属またはアルミニウムやチタン等のリチウム化合物・合金を負極に使用することで充電も可能なリチウム二次電池もあり、形状はコイン形です。

リチウム一次電池と同様の優れた特性に限らず、充放電サイクル特性にも優れております。リチウム電池を途中で交換したくない、または交換ができない機器に適しています。使用例としては腕時計のソーラー時計やバックアップ電源などに使用されます。

バーコードリーダー

バーコードリーダーとは

バーコードリーダー

バーコードリーダーとは、バーコードにより表現した数字や文字を光学的に読み取りバーコードに記載されている情報を拾い上げるための装置のことです。

現在、市場にあるバーコードリーダーのほとんどの製品が、赤外線レーザーを用いた光源とその反射光を受光する部分、およびスキャンしたデーターをPCへ送付する箇所によって構成されています。

バーコードリーダーの使用用途

バーコードリーダーは、製品に付与されているバーコードを読み取って、物流の商品の流通管理をする際に使用されています。その他にも医療分野の薬品管理や、スーパーやコンビニエンスストアのレジ管理等、利便性向上のために今では欠かせない存在です。

読み取られるバーコードには複数の規格があり、日本の小売店舗向けには主にJANと呼ばれる規格のバーコードが用いられ、医療分野ではGS1データバーと呼ばれるより多くの情報を記録できるバーコードが主に用いられています。

また、スマホアプリでおなじみのQRコードも2次元バーコードの一種であり、スマホだけでなく市販のバーコードリーダーにおいても、読み取り可能な機種は存在します。

バーコードリーダーの原理

バーコードリーダーの原理は、モノクロラインの黒色の箇所に照射されたレーザー光は吸収され、白色のクワイエットゾーンに照射されたレーザー光のみ反射される物理現象を用いています。レーザー光をバーコードにあててスキャンした際に反射光の有無を受光素子で認識することにより、バーコードのライン情報をアナログ信号として読み取ります。

次に、受光素子で取得した微弱なアナログ波形を増幅してある閾値を超えた箇所は1、それ以外は0としてデジタル信号へ変換しデコード化することで、情報を復元し数値化する仕組みです。

この時、バーコードと直角になるようにレーザーを照射しないよう注意が必要です。直角にレーザーを照射してしまうと強い正反射光を受光してしまうため、その出力だけが他の乱反射光に対して大きくなり過ぎ、きれいなアナログ波形が得られなくなります。そのため、多くのバーコードリーダーは、バーコードに対して斜入射になるようにセットアップする必要があります。

バーコードリーダーの種類

バーコードリーダーは読み取りコードと読み取り方法の観点から、いくつか種類があります。

1. 読み取りコード

  • 1次元バーコードリーダー
    バーコードにレーザー光を照射して読み取りを行う「レーザーエンジン型」とバーコードにLED光を照射して読み取りを行う「CCDエンジン型」があります。
  • 2次元バーコードリーダー
    近距離から遠距離まで読み取りができる「ロングレンジ型」、高解像度でブレにも強い「高性能CMOS型」、安価ですが手ブレに弱い「ローコストCMOS型」があります。

2. 読み取り方法

  • ペン型スキャナ
    ペンでなぞるようにスキャンします。
  • 固定型スキャナ
    リーダーを特定の位置に固定します。
  • カードリーダ
    カードに記載されたバーコードを読み取ります。
  • 手持ち型スキャナ
    手にリーダーを持って読み取り部に接触させます。

バーコードリーダーのその他情報

1. バーコードリーダーの読み取り精度

バーコードリーダーの読み取り精度は、「読取り率」と「誤読率」によって決まります。読取り率はバーコードスキャンを行った回数に対して読取りに成功した回数で定義されます。例えば、バーコードスキャンを行った回数が1,000回で読取りに成功した回数が995回なら読取り率は99.5%です。誤読率も同様に読み取りした回数に対して誤読した回数で定義されています。

読取り率は、バーコードラベルの品質やコードリーダーの分解能、読み取り回数、デコードのアルゴリズムによって変動します。この中で特に大きな要素となるのはバーコードラベルの品質です。

バーコードに汚れや傷がなく、コードの幅が規格内に収まっていて、コントラストが高い状態なら100%に近い読取り率で読み取ることができます。しかし、実際に読み取るバーコードはきれいな状態であることは少なく、悪条件でも高い読取り率で読み取れることがメーカーには求められています。

2. バーコードリーダーのインターフェイス

バーコードリーダーのデーターをPCへ取り込むための通信のインターフェイスには、USB、RS232C、PS/2の有線タイプの他、Bluetoothなどの無線接続が可能な製品もあります。昨今はRS232C、PS/2ではなく、USBタイプの採用が薄型ノートPCの活用増加に伴い、増えている状況です。このUSBタイプは、PCのOSによっては対応するものと、そうでないものがあるため、注意が必要です。

3. 固定式バーコードリーダーについて

固定式バーコードスキャナは、製造業・物流業界で重要なデバイスです。製造装置に組み込んだり、固定位置に設置し、コンベアを流れる製品や荷物のバーコードを光学センサーやレーザー技術で自動的に読取ります。読取り距離・角度に応じて、近距離用スキャナやロングレンジスキャナなどがあり、効率的な生産管理や追跡が可能です。

参考文献
https://www.denso-wave.com/ja/adcd/fundamental/barcode/barcode/index.html
http://www.ainix.co.jp/howto_autoid/equipments/1.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/autoid/codereader/principles_tech.jsp
https://imagers.co.jp/contents/690/
https://www.ainix.co.jp/howto_autoid/equipments/3.html
https://www.ainix.co.jp/howto_autoid/equipments/5.html

ひずみゲージ

ひずみゲージとはひずみゲージ

ひずみゲージは、物体のひずみを測定する装置です。ひずみを測定し、圧力や荷重などを算出できるため、圧力計フォースゲージにも使用されています。

ひずみゲージの使用用途

ひずみゲージの使用用途としては、ひずみが直接強度に影響するような製品のひずみの測定や、生産工場における荷重測定、金型などの変形度合いの測定などがあげられます。ただし、ひずみケージを正しい方向で取り付けなければ、測定誤差が生じるので注意が必要です。

具体的な使用例としては以下のようなものがあります。

  • プリント基板の強度やひずみの測定
  • プレス機器の荷重のモニタリング測定

ひずみゲージの原理と種類

下記では、ひずみゲージの原理と種類を解説します。

1. ひずみゲージの原理

ひずみケージは、測定対象に取り付けられて使用され、測定対象と一緒にひずみ、内部の電気抵抗が変化します。そして、この電流が変化する変化量を測定することによって、ひずみを算出する仕組みです。

2. ひずみゲージの種類

ひずみケージの種類は非常に豊富です。最も広く流用されている箔ひずみゲージや線ひずみゲージ、半導体ひずみゲージなどがあります。

この他にも、低温・高温環境に適したものや、より微細なひずみを測定できるもの、各種被測定材料に応じた材質のものなど、用途によって使い分けができるのもひずみゲージの特徴です。

ひずみケージの構造

下記では、「箔ひずみゲージ」と「半導体ひずみゲージ」の構造をそれぞれ解説します。

1. 箔ひずみゲージ

ひずみゲージの中で最もポピュラーな箔ひずみゲージの構造は、絶縁体のベースの上に、ジグザグに金属の箔を貼り付け、その金属の箔から2本の配線が出ている構造です。この2本の配線は、ホーインストンブリッジ回路という回路につながっています。

ホーインストンブリッジ回路は、3つの既知の抵抗値を持つ抵抗と、ひずみゲージの4つをブリッジ状に配置し、その中央の電位差を測定することによって、ひずみゲージの抵抗値を測定できる回路です。

そして、ひずみゲージが取り付けられた測定対象がひずむと、取り付けられたひずみゲージの箔が伸縮し、電気抵抗の値が変化するので、その抵抗値の変化量をホーインストンブリッジ回路の電位差から求めます。ここで、ひずみゲージにはゲージ率という、ひずみに対する抵抗値の変化量の固有値があるため、ゲージ率と抵抗値の変化量から測定対象の物体のひずみを算出することが可能です。

2. 半導体ひずみゲージ

半導体ひずみゲージは、箔ひずみゲージの箔の部分に半導体を利用したひずみゲージで、応力が半導体に作用すると半導体の電気抵抗率が変化するという性質を利用します。

ひずみゲージのその他情報

1. ひずみゲージの貼り方

ひずみゲージによるひずみ測定の精度は、ゲージの設置方法(多くの場合は接着)に強く依存します。そのため、ひずみゲージを測定対象に貼り付ける際は、充分慎重に作業することが必要です。手順としては、最初にゲージを貼り付ける測定対象の表面をきれいに洗浄します。

洗浄には油性洗剤等を使用して油分を徹底して除去することが好適です。これをしないと、貼り付け時に表面研削または研磨した際に、油分がより深い材料内部にまで浸透してしまうことになります。洗浄が終わったら、ゲージをピンセットで持ち上げ、慎重に測定対象表面に接着していきます。

この時、表面とゲージの間の空泡はすべて確実に押し出すように貼り付けることが重要です。その状態で接着剤が固まるまで数分待ちます。数分経過したら、最後に全体に絶縁テープを巻きつけて破損しないように保護し、貼り付け完了です。

2. ひずみゲージの欠点と解消方法

ひずみゲージは測定対象に接着するだけで簡単にひずみ測定ができるのがメリットですが、実際には複雑な要素が絡み合い、測定をより難しくしています。たとえば、応力の問題もその一つです。

ひずみは外部から加えられた力と材料内部に生じる内部応力との相互作用によって変化します。そのため、2方向あるいは3方向のひずみを解析するには、複数のゲージを組み合わせた「ロゼットひずみゲージ」を使用することが必要です。

また、測定対象を構成する材料の熱膨張係数によって、実際にはひずみがなくてもひずみが生じていると判断される場合もあります。これを防ぐためには、ゲージの材質を測定対象の材料と合わせることが必要です。

ひずみゲージによるひずみ測定では、こういった物理的あるいは機械的特性をよく理解した上で、数ある種類の中から最適なものをピックアップしなければなりません。

3. ひずみゲージと温度補償

測定対象に接着したひずみゲージへの影響の大きな要因は、外力によるひずみと、温度変化の影響です。温度変化が生じると、測定対象とひずみゲージの線膨張係数の違いや、ひずみゲージの温度による抵抗値変化の影響を受けます。

温度変化によりあたかもひずみが生じているかのように計測されることをみかけひずみと言います。自己温度補償型ひずみゲージを使用することがみかけひずみへの最も有効な対策です。自己温度補償型ひずみゲージとは、測定対象に適合するようにひずみゲージの抵抗温度係数を調整し、温度によるみかけひずみ量を最小にしたひずみゲージです。

測定対象に適したひずみゲージを選択することは最良の選択ですが、誤差が残る場合があります。場合によっては非線形の特性を有するものもあります。ほとんどの場合、この誤差はひずみケージのデータシート上に記載されており、より精密な測定が必要な場合はデータシートから算出される誤差を見込んだ補償演算が可能です。

4. ひずみゲージとクリープ補正

一定の温度条件下において、一定の加重が作用するとき、時間とともにひずみが増大する現象をクリープ現象といいます。ひずみゲージにおいて、クリープ現象は天敵で、これが生じてしまうと測定誤差に直結しかねません。

ひずみゲージのクリープ現象は、ほとんどの場合はベース材料・グリッド形状・接着剤に起因しています。そこで、これらの要因が引き起こすクリープとは逆位相の起歪体を材料クリープとして用い、そこにひずみゲージを貼り付けることによってお互いのクリープ現象の影響をキャンセルする方法が一般的です。

重要なのは材料の組み合わせで、クリープ現象が逆位相にもかかわらず、その絶対値が大きく異なる場合は、キャンセルしきれずに片側方向に影響が出てしまいます。なお、材質にもよりますが、温度が高いほどクリープ現象が顕著に現れる場合がほとんどです。クリープ現象によるひずみ増大を考えるとひずみゲージに加わる応力が大きいほど、破断に至るまでの時間(寿命)が短くなる点には留意してください。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/45/4/45_4_323/_pdf
https://www.jp.omega.com/technical-learning/strain-gage-quality-control.html
https://ednjapan.com/edn/articles/0909/01/news147.html
https://tml.jp/knowledge/strain_gauge/transducer_gauge.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/creep.jsp
https://www.aandd.co.jp/products/loadcell/introduction/cell_intro02.html

プローバー

プローバーとは

プローバー

プローバーは、プローブ(針)を任意の位置に固定するための装置で、プローブステーションとも呼ばれます。主に半導体のウェーハ製造過程やICの設計開発において、前工程での半導体のウェーハの電気的な項目測定のために、測定装置の接触部のプローブを半導体の電極の正しい位置に接続する位置決めの装置です。

半導体の電極部分はその面積が非常に小さいため、正確な位置に検査装置の接触部分のプローブを当てる必要があります。位置決めをする上で、非常に正確な制御性がプローバーには求められます。

半導体チップ以外にも、PCB基板や、センサーやフィルターなどの各種薄膜基板、LTCCなどのセラミック基板パッケージの電気的特性の評価などにもよく用いられている装置です。

プローバーの使用用途

プローバーの使用用途は、一般に半導体や薄膜基板、パッケージ基板などの電気的特性の検査時に使用されます。研究開発用に使用する場合には、ノイズの除去や信号の漏れ(クロストーク)を防ぐ機能を有し、高精度で測定可能で、測定手法に関しても可能な限り汎用性が高く柔軟に行えるような機種が必要です。

一方で量産用に使用する場合には、高速で素早い処理を正確かつ大量に行うことができる機能が最も重要視されますので、多種多様なプローバーの機種から、用途に合わせて適切に選定する必要があります。

温度特性評価時に、高温や低温状態で正しく動作するかを確認するために、プローバー側にも温度に対する耐性が求められます。またパワーデバイス用の半導体の測定等に用いる場合には、高電圧で低インピーダンス対応可能なプローバーが必要です。

プローバーの原理

最も代表的なシリコンウェーハ用途のプローバーを以下説明します。プローバーは、シリコンウェーハを固定するためのウェーハチャック、ウェーハチャックをXY方向に移動させるためのステージ、検査用の複数のプローブが取り付けられており、ステージに対して、Z方向に移動するコンタクトプレート、位置決めのためのカメラなどで構成されています。

これらの機構に加えて、シリコンウェーハを移動させるための搬送システムもプローバーの製品に含まれていることも多くあります。動作原理としては、シリコンウェーハをセットすると、ウェーハチェックの位置までシリコンウェーハが搬送されて固定されます。

その後、ステージによってXY方向の位置決めがされ、測定用のプローブとシリコンウェーハ上の半導体の電極の位置が調節された状態で、コンタクトプレートがZ方向に動作して、プローブと電極が接触します。この過程を経て、半導体の電気特性を検査装置で検査することが可能です。

プローバーのその他情報

1. 半導体デバイスの小型化とプローバーへの要求

近年の半導体デバイスの小型化に伴い、微小電流測定は半導体デバイスの製造品質を評価する重要な指標です。半導体デバイスの設計・製造において、デバイスの材料・結晶成長パラメータやジオメトリの変更は、予期せぬデバイス内部の電流パスを生じさせる可能性があり、これを一般的にリーク電流と呼んでいます。

リーク電流の増加は、格子欠陥、ゲート酸化物の構造、基板の選定などによって生じ、過剰な電力消費の誘発や場合によっては絶縁破壊電圧を下げてしまうのです。近年、半導体デバイスのFETのゲート長やバイポーラトランジスタのエミッタサイズなどが非常に微細になっており、駆動に必要な電圧が低下しつつある反面、リーク電流は増加傾向です。

そこで品質評価の観点からプローバーを用いた高精度の電流測定が要求されています。その精度を高める一つの施策として、極低温プローブの開発等が進められています。

2. プローバーの位置決め精度とポジショナー

プローバーのコンタクトポジション精度は、測定精度にそのまま影響を与えます。正しくプロービングできていない状態で、各種評価を実施してしまうと何を評価しているのかがわからなくなります。

例えば、半導体デバイスの特性評価を行いたいにも関わらず、ウェーハの所定位置からずれ、絶縁体上にプロービングしてしまった場合、期待した結果とは乖離が大きく評価結果はNGとなることは想像に難くありません。

評価対象に求められる精度を理解したうえで、その精度を向上させることに注力する必要があります。プローバーの位置決め精度を決めるのはポジショナ(マニピュレータ)と呼ばれる部材です。要求仕様に適したポジショナーを正しく選定することによって、位置決め精度は大きく変わります。

ポジショナーの仕様は、①移動量②移動分解能③調整感度④外形寸法の4つでほぼ決まります。それぞれの仕様の中身については以下を参照してください。

  1. 移動量
     XYZ方向の移動可能量です。通常mmオーダーで記載されることが多いです。
  2. 移動分解能
     1回転あたりの移動量で定義されます。
  3. 調整感度
     最小調整可能距離での定義です。多くの場合μmで規定されます。
  4. 外形寸法
     ポジショナーの大きさです。一般的には大きさに比例して値段が上昇します。

3. 高周波対応プローバー

半導体トランジスタの高周波(RF)対応の評価やデバイスのモデリングにはRF評価に適したプローバーが必要になります。

一般に専用のキャリブレーション基板を用いるGSGプローブ(信号用のパッド両脇にグランド(GND)が具備されている針)を用いますが、測定する周波数によってはプローブのみならず、ネットワークアナライザや各種測定装置へのRFケーブルにも注意が必要です。このケーブルのたわみなどが、RFの測定結果に影響を与える場合があるためです。

マイクロ波よりも高い周波数のミリ波帯においては、専用のVNAエクステンダーを用いますが、プローバー構成そのものが測定に与える影響が非常に大きいために、装置の構成は専用のメーカーと詳細に議論する必要があります。

参考文献
https://patents.google.com/patent/US4864227A/en
https://www.toyo.co.jp/material/casestudy/detail/id=31224
https://www.hisol.jp/products/plo/plo-option/positioner.html

油圧シリンダ

油圧シリンダとは

油圧シリンダ

油圧シリンダはエネルギーを機械的な運動に変換するアクチュエータの一種で、直線運動を行う機械です。内部のオイルの量を制御することによって圧力を変えてピストンの運動を制御します。油圧シリンダには単動型と複動型があり、バルブの数や位置、内部形状によって種類が異なります。油圧シリンダは低騒音で出力を大きくすることができるため、車のブレーキやエレベーター、建設機械など様々な場面で用いられます。

油圧シリンダの使用用途

油圧シリンダは、小さい力でも大きな力に変形することができるので、多くの製品に使用されています。最も代表的に使用されている製品は車のブレーキシステムで、足で押すという小さい力で車を停止させるという大きな力を生み出すことができています。また、エレベーターや建設機器など大きな力を必要とする機会に多く搭載されており、使用の幅が広いことが分かります。選定の際には、使用する圧力や大きさ、ストロークの幅、周期などを考慮して行う必要があります。

油圧シリンダの原理

油圧シリンダの原理

油圧シリンダにはピストンが入っており、バルブからシリンダ内に油を注入したり、シリンダから油を吸引することでピストンを動かします。バルブの位置や数、種類によって油圧シリンダの動作原理は異なります。

単動型の油圧シリンダではバルブが1個、複動型の油圧シリンダではバルブが2個つけられており、動作油の量を変えることでシリンダ内の圧力を変更させてピストンの動きを制御します。ボトム側のバルブの油を減らして圧力を下げたり、逆側のバルブの油を増やして圧力を上げることでピストンを押し出します。また、ピストンを引くときは動作油の増減を逆にします。なお、単動型の油圧シリンダでは自重やスプリングによってピストンを戻します。

油圧シリンダの種類

上記の通り、油圧シリンダには単動型と複動型があります。単動型にはラム形、ピストン形、両ロッド形、単動テレスコピック形に分けられます。複動型にはピストン形、両ロッド形、ダブルシリンダ形、テレスコピック形に分けられます。

油圧シリンダを選ぶとき、まずは必要な推力、供給可能な圧力を明確にして、適切な受圧面積を決定します。シリンダの受圧面積を大きくするか、供給する圧力を大きくすると出力を上げられます。また、油圧シリンダの設定圧力の最大値である「呼び圧力」の値によって用いるものが変わります。代表的なものとして7MPa、14MPa用などが挙げられます。 シリンダの材質として一般的に使われるのは鉄ですが、ストローク検出用の磁気スイッチを取り付ける場合はステンレス製のシリンダを使用します。

油圧シリンダの使い方

油圧シリンダで用いる作動油には石油系、合成系、水成形が挙げられます。基本的にはいずれの作動油も使用可能ですが、選定時には各油圧シリンダの仕様を確認することが望ましいです。なお、作動油に異物が混入すると正常な動作を妨げる要因になるので油はフィルターを通すことを推奨します。

油圧シリンダの速度を調整したい場合、油圧回路に流量調整弁を取り付けてシリンダ内の油の流量を制御します。なお、一般的にはシリンダに入る油の量を調節します。

また、油圧シリンダを運転させるときはシリンジ内の空気を抜く必要があります。空気がシリンダの中に混入した状態で加圧すると断熱圧縮によって空気が高温になり、シールが焼損する恐れがあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1933/46/6/46_6_734/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1933/49/10/49_10_1372/_pdf
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/tec/pdf/27D1.pdf

ジャイロセンサー

ジャイロセンサーとは

ジャイロセンサー

ジャイロセンサーとは、角速度を検出するためのセンサーのことです。

ジャイロスコープとも呼ばれています。角速度とは、単位時間あたりに物体が回転する物理量を指し、高度で正確な制御が求められている現在の工業機械製品において不可欠なセンサーです。

特に、ロボットや航空機、自動車の車体制御などの分野では、微小な回転を考慮したフィードバック制御を行う必要があり、必ずジャイロセンサーが使用されています。

ジャイロセンサーの使用用途

ジャイロセンサーの使用用途は、スマートフォンやデジタルカメラ、ゲーム機器、宇宙産業、航空、自動車、産業用ロボットなどの制御に幅広い分野で使用されています。

ジャイロセンサーの具体的な使用用途は以下の通りです。

  • スマートフォンやデジタルカメラの手ブレ防止機能
  • 2足歩行ロボットの歩行制御
  • 航空機の機体位置の計測および制御
  • VRゲームの使用者の動作および位置測定

ジャイロセンサーは、熱や振動耐性、大きさなど製品によって特徴が異なります。そのため、ジャイロセンサーを使用する装置の制御の精度や使用環境を考慮して選定する必要があります。

ジャイロセンサーの原理

ジャイロセンサーの代表的な測定方法として、コリオリの力を使って測定する振動型と、光のサニャック効果を使って測定する光学型が挙げられます。

1. 振動型ジャイロセンサー

振動型ジャイロセンサーで用いるコリオリの力とは、回転している物体が移動する際に物体に作用する見かけ状の力のことです。振動型はさらに、圧電方式と静電容量方式に分類できます。

  • 圧電方式
    コリオリの力に相当する物理量として回転状態の振動子に生じる電圧値を計測する方法です。
  • 静電容量方式
    回転している際のコリオリ力で、振動子の左右の検出電極との容量に差分が発生するため、その容量差からコリオリ力を測定し、角速度を算出する方法です。

なお、コリオリの力と角速度の関係は次式で表現可能です。

ω=F/2mv (ω:角速度、F:コリオリの力、m:物体の質量、v:移動速度)

2. 光学型ジャイロセンサー

光学式ジャイロセンサーで用いるサニャック効果とは、光が通過する光路が運動していれば、光路の長さが長くなる原理のことです。この物理現象は、光速が常に一定であるために生じます。光学式ジャイロセンサーでは、周回している光自体が回転することによって、光路が長くなり、それによって生じる位相差を測定することで角速度を算出できます。

ジャイロセンサーのその他情報

1. ジャイロセンサーの補正手法

ドリフト補正
ジャイロセンサーの出力に対して誤差を発生させる要因は複数あります。その中でも気をつけなければならない特性が「ドリフト」です。ドリフトとは、本来初期値として与えられるゼロ点がドリフトし、初期値が少しずつずれて検出誤差が大きくなることを指します。

ドリフトが生じる内的要因としては、DC成分のゆらぎ (低周波の変動) と高周波のノイズによる影響です。DC成分のゆらぎはバイアス不安定性、高周波ノイズは角度ランダムウォークと呼ばれます。バイアス不安定性に関しては、供給電圧の安定性に依存しますので、電源の見直しで改善することが可能です。

角度ランダムウォーク補正
角度ランダムウォークの補正方法については各社のノウハウとなりますが、一般的に良く用いられている補正方法としてカルマンフィルタを用いた補正が挙げられます。

カルマンフィルタとは、直前までの情報と現在取得したデータをもとに、最も適切なシステムの状態を推定する手法のことです。時間とともに変化する変数を、過去の情報と現在取得した情報から本来のあるべき姿を推定する問題と言い換えることもできます。この測定値及び変数そのものにもノイズが乗っているものとして取り扱うことが重要です。

2. ジャイロセンサーと加速度センサーの違い

ジャイロセンサーとよく似た性質を持つセンサーの1つに、加速度センサーがあります。両者は混同されることもありますが、全く別のものです。

加速度センサーはその名の通り、加速度を検知するためのセンサーです。慣性力を利用して物体の移動速度の変化を測定し、電気信号として出力します。加速度からは物体の振動の様子や衝撃の大きさといった情報を得ることもできるため、加速度センサーは幅広い用途に使用されています。基本構造はジャイロセンサーに似ています。

一方、ジャイロセンサーは前述した通り、角速度を検知するために用いられるセンサーです。コリオリの力を利用して物体の動き (回転) や向き・姿勢の変化を測定し、それを電気信号として出力することができます。

3. 3軸・6軸・9軸対応センサー

昨今、慣性力の検出センサーでよく解説される言葉に、3軸・6軸対応センサーがあります。各々前後、左右、上下の加速度 (3軸) と角速度 (6軸) を対応させていて、車載センサーとして自動車の運転支援システムであるADASや自動運転技術に欠かせません。

一例として、自動車のカーナビにはジャイロセンサーと加速度センサーの両方が搭載されており、ジャイロセンサーで自動車の向きを、加速度センサーで移動距離を検知することで、トンネル内など電波が届きにくい場所でも現在地を高精度に表示することができます。

3軸はロール・ピッチ・ヨーで表現され、これらの軸によって姿勢を表現することが可能です。特に、ロール・ピッチに関しては、誤差要因のドリフトそのものをフィードバック回路として自身で補正させることもできます。さらに、ドリフト補正のために異なるRefとして、現在の基準に地磁気センサーを6軸対応センサーに追加して用いるものがあり、この場合は9軸対応センサーと呼ばれています。

4. ジャイロセンサーでのMEMS対応

ジャイロセンサーは、回転運動を伴う機械において、その運動の様子を画面表示したり、制御したりする場合に使用しますが、ジャイロセンサーの小型化に大きく貢献しているのが、MEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 技術です。MEMS技術は、半導体業界の薄膜微細加工の技術を展開して用いられています。

ジャイロセンサーにおいても、「光学式」や「機械式」とは異なり、小型・集積化が比較的容易です。MEMS式のセンサーは、比較的高度な制御を可能にするASICとの親和性も高いために、スマートフォン等のモバイル機器をはじめとして多くのデバイスに内蔵されています。

さらに、ジャイロセンサーはその用途によって必要とされる角速度の検出範囲が異なります。例えば、スマートフォンなどのモバイル機器の場合は300~2000dps (degree per second、1秒間あたりの回転角度) 、カーナビなどの自動車向け機器の場合は100~500dpsほどの範囲が必要です。

そのため、センサー選定時には、機器の使用状況を踏まえ、どのくらいの検出範囲があれば充分なのかを考慮しなければなりません。

参考文献
http://yokoya.naist.jp/paper/datas/79/PRMU.pdf
https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b14
https://ednjapan.com/edn/articles/1406/09/news014.html
https://www.analog.com/jp/analog-dialogue/raqs/raq-issue-139.html
https://qiita.com/MoriKen/items/0c80ef75749977767b43
https://mems.tamagawa-seiki.com/words/

熱交換器

熱交換器とは

熱交換器

熱交換器とは、空気や水などの流体間で熱を移動させる機器です。

熱交換器を使用する代表的な機器はエアコンで、冷媒と空気の間の熱交換によって室内の温度を調整する機械です。様々な構造が開発されており、熱交換に使用する流体に応じて適切に選定することが必要です。

熱交換器の使用用途

熱交換器は家電から産業用途まで、様々な用途で使用されています。以下は熱交換器の使用用途一例です。

  • 家庭用エアコンなどの空調機器や給湯器
  • 車のラジエータ
  • 冷凍食品工場における業務用冷蔵庫
  • プロセス系工場におけるガス温度管理
  • 蒸気タービンの復水器や節炭器
  • コンピュータのCPU冷却用

家庭用ではエアコンや冷蔵庫に熱交換器が使用されます。室内または庫内の熱を移動させることにより、要求される温度に保っています。また、給湯器や床暖房にも熱交換器が使用される場合があります。

産業においても例示すれば枚挙に暇がありません。工業炉を持つ工場などでは、工業用水や海水を使用して熱交換器でジャケットを冷却しながら使用します。発電プラントなどのインフラ設備でも多用され、蒸気発電における復水器も熱交換器の一種です。

コンピュータの冷却にはヒートシンクなどの熱交換器が使用されます。これは多数の放熱板を設置した製品で、発熱媒体に直接設置して外気雰囲気を冷却媒体とする機器になります。

熱交換器の原理

熱交換器は配管やフィンで構成されます。

配管は過熱するまたは冷却する媒体を流す構造物です。一般的には金属で製作され、ステンレス製や銅製など用途に応じてさまざまな製品が販売されています。熱源となる流体を流す場合は熱媒配管と呼び、冷却源となる流体を流す場合は冷媒配管と呼びます。

フィンは熱を効率よく発散させるための構造物です。伝熱性などに優れたアルミニウムが多く使用されます。配管などに対してひだ状に取り付けられます。

低温流体と高温流体を流す方向に応じて向流型と並流型の2種類に分けられます。互いに反対方向に流す場合は向流型で、同方向に流す場合は並流型です。一般的には向流型の方が効率良く熱交換可能であるとされます。

熱交換器の種類

構造の種類としては、多管式熱交換器プレート式熱交換器スパイラル熱交換器などが代表的です。その他には、エアフィン式やフィンチューブ式、コイル式などがあります。

1. 多管式熱交換器

多管式熱交換器は太い円管とその円環内部にある細い多数の円管で構成されます。熱交換したい流体を太い円環に流し、冷媒や冷却水などを細い円管に流して熱交換を行います。それぞれの配管は仕切られているため、各流体が混ざることなく、相互間で熱交換を行います。

2. プレート式熱交換器

特殊な加工を施した金属の伝熱板を何枚も重ね合わせて、高温流体と低温流体が交互にプレートを隔てて流れる熱交換器です。

この熱交換器は乱流効果を得られやすく、高い熱交換率が得られます。また、コンパクトな設計で設置位置で問題になりにくい利点もあります。伝熱プレートを重ねる構造のため、プロセス要求に応じた枚数へ変更ができます。ただし、流体の粘度が大きいものや粒子を含む流体では、プレート間の閉塞に繋がるため使用が困難です。

3. スパイラル式熱交換器

2種類の流体が混ざり合わない様な渦巻き状の流路で、2流体間で熱交換を行う熱交換器です。

流路内は単一流路となっており、熱交換器の壁に物質が付着しても壁面から剥がすことが可能です。流路幅が短くなり、流速が増加するためです。したがって、不純物が含まれている流体の熱交換に適しています。

4. エアフィン式熱交換器

チューブとファンによって構成される熱交換器です。冷却時に使用されます。チューブ内に冷却したい流体を流し、ファンの力を使いエアーを流すことで冷却します。

5. フィンチューブ式熱交換器

チューブ状の管にフィン (伝熱板) を設置し、伝熱面積を増やした熱交換器です。エアコンの熱交換器に使用されています。

6. コイル式熱交換器

伝熱チューブをコイル状にして外側を円筒などで囲った熱交換器です。冷却もしくは加熱媒体を入れてチューブ側と熱交換します。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/16/2/16_2_173/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/28/6/28_6_342/_pdf
https://www.hisaka.co.jp/phe/workbook/index.html
https://www.nihonshinkan.co.jp/blog/2016/10/31/66
https://www.alfalaval.jp/info/japan/heatexchanger/

圧力計

圧力計とは

圧力計

圧力計は、空気や水などの流体の圧力を測定する装置です。

主に圧力計内部の弾性体が圧力によって変形した量を測定することによって、圧力を測定します。変形した量を測定する方法としては、様々な原理が開発されており、ブルドン管式やダイヤフラム式、ベローズ式などがあります。

圧力は定圧力や変動圧力、脈動圧力などの種類があり、ゼロ点の取り方によって、絶対圧、ゲージ圧、差圧があるので、測定対象の圧力の種類や圧力計が出力する圧力計の表示方法に注意して、適切な圧力計を選定する必要があります。

ちなみに、正のゲージ圧を測定するものを圧力計と呼び、負のゲージ圧を測定するものを真空計と呼びます。 

圧力計の使用用途

圧力計は、工場やプラントのパイプ、住宅などにおける圧力がかかる装置で使用されます。圧力計を動作させる環境や隙間に応じて、適切に選定する必要があります。

圧力計の使用例を以下に示します。

  • 工場内の蒸気生成用のボイラーの蒸気量の確認
  • 飲食店の炭酸生成用の炭酸ガスタンクの残量の確認
  • コンプレッサの圧力測定

圧力計の原理

圧力計は基本的に受圧素子と呼ばれる弾性体の変形量を読み取ることで圧力を計測します。受圧素子の種類によりブルドン管式、ダイヤフラム式、ベローズ式があり、それぞれの原理について説明します。

1. ブルドン管式

ブルドン管式圧力計の原理

図1. ブルドン管式圧力計の原理

ブルドン管と呼ばれる金属パイプに圧力をかけると、ブルドン管が圧力に応じて変位します。その変位量を測定することによって圧力を測定する圧力計がブルドン管式圧力計です。電気などの外部のエネルギーが必要なく圧力を測定することができます。また、ブルドン管式はさらに細かく汎用型、一般型、小型、密閉型、グリセリン圧入型などに分類できます。 ブルドン管式は広く使用されていますが、管径が小さいため高粘性流体や固形物を含む場合はそのまま使用はできません。

2. ダイヤフラム式

ダイヤフラム式圧力計の原理

図2. ダイヤフラム式圧力計の原理

圧力によって抵抗値が変化する素子を用いて、ダイヤフラムを通じて圧力を電気信号に変換することによって、圧力を測定する圧力計がダイヤフラム式圧力計です。素子に半導体やひずみゲージ、薄膜を使用するかで、長寿命や耐熱性などの特徴が変わります。電気信号で測定するため、高精度の圧力測定が可能です。また、腐食性の流体や高粘性の流体にはダイヤフラム式が適しています。

3. ベローズ式

ベローズ式圧力計の原理

図3. ベローズ式圧力計の原理

ベローズ式圧力計は、ベローズ状の外側にひだのついた円筒が圧力を受けて変位した量を、圧力量に変換することで圧力を測定します。ベローズ管式は圧力に対する感度が高いため、比較的低い圧力の測定に適しています。

圧力計の選び方

使用用途によって様々な圧力計が市販されています。選定方法をいくつか示します。

  • ゲージ圧表記か、絶対圧表記か
  • 通常私たちは約0.1MPaの大気圧の下で生活しています。大気圧のかかった状態を0Paとして測定した圧力をゲージ圧力、真空状態を0Paとして測定した圧力を絶対圧力と呼びます。ゲージ圧はPaG、絶対圧はPaAと表記されることもあります。
  • 使用する圧力の範囲
  • 圧力計が耐えられる最大圧力と最小圧力、大気圧以下の圧力~真空状態を測定するか
  • 圧力計の測定方式
  • プルドン菅式、ダイヤフラム式など、方式によって使用できる流体の種類、圧力の範囲、精度などがある程度決まってきます。
  • 求める測定精度
  • 圧力計のサイズ
  • すでに圧力計取付用の枝管などがある場合、接続継ぎ手の種類や本体の取り付け方法

圧力計のその他情報

圧力計の使い方

圧力計は、圧力を測定したい流体が流れている配管に取り付けて使用します。 アナログ計の場合は、他の針式のアナログ計測器と同様、目盛りの正面からまっすぐに針の位置を読み取ります。 デジタル計や圧力センサの場合には直接指示値を読み取ります。

圧力計は一般的に配管などに直接接続して使用します。このことに起因する、取り扱い上の留意点があります。 圧力計に不具合がある場合など、不用意に取り外すと流体が漏れてしまったり、流体漏れによって負傷したりする可能性があります。取り外し等の際は、配管中の圧力を下げておく必要があります。 また、取り外した後にも配管や圧力計の内部に流体が残っていたり、その流体が取り外した際に少量漏れ出たりすることがあります。測定している流体によってはこれらの扱いに注意が必要です。

圧力計を取り付けるために配管を分岐させたり、測定用の枝管を取り付けたりするようなケースが多くあります。 こういった流体を扱う配管を含んだ設備や機械を新規に設計・製造する際には、あらかじめ圧力計用の分岐菅を取り付けておく(すぐに使用しないならばふさいでおけばよい)と、後々、設備や機械を止めて圧力計を接続する際に、作業が最小限に抑えられます。

参考文献
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=23992&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikai1938/26/168/26_168_1062/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/68/665/68_665_181/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjtp1987/9/2/9_2_118/_pdf/-char/ja

電圧計

電圧計とは

電圧計

電圧計は測定対象の2点間の電圧を測定する装置です。主にデジタル電圧計とアナログ電圧計に分類されます。デジタル電圧計はA/Dコンバータで入力電圧をデジタル値に変換して数値表示するもので、高精度で測定することができます。

一方アナログ電圧計は電流計と分圧器を組み合わせたもので、メーター指針の位置から電圧値を大まかに把握することができるという特徴があります。また、交流電圧計は通常交流を整流回路で直流に変換してその電圧を測定して表示しますが、歪波の測定は正弦波と比較すると精度が劣ります。

電圧計の使用用途

電圧計の使用用途は、製造ラインにおける調整や検査、各種設備の稼働状況のモニター、センサーと組み合わせて温度や湿度の測定等、多岐に渡ります。

電圧計は機種毎に測定電圧の範囲が定められていますので、使用目的に応じて適切な機種を選択する必要があります。また測定対象によっては、電圧計の入力インピーダンスが回路動作に影響を及ぼして測定誤差が生じる場合がありますので、十分な配慮が求められます。

特に正確な測定を求められる場合は一桁高い測定精度を有する電圧計を選択するなど、電圧計に対する要求性能を明確にして、それに合致したものを採用することが重要です。

電圧計の原理

デジタル電圧計とアナログ電圧計の動作原理について説明します。

1. デジタル電圧計

デジタル電圧計は、入力変換部、A/Dコンバータ、表示部で構成されています。入力変換部はアンプや分圧器から構成され、2点間の被測定電圧がA/Dコンバータの入力電圧範囲内の適切な電圧に収まるように調整します。

即ちA/Dコンバータが高精度でデジタル値に変換できるように、被測定電圧が小さい場合はアンプで増幅し、被測定電圧が高い場合は分圧器で分圧します。またA/Dコンバータで変換されたデジタル値は、アンプや分圧器による影響を換算した上で、表示部に電圧値として表示します。

なお、入力変換部の入力インピーダンスを比較的高く設定することができるため、電圧計が接続される回路への影響が小さく、高精度な電圧測定が可能になります。

2. アナログ電圧計

アナログ電圧計は電流計と分圧器から構成されています。被測定箇所の2点に電圧計のプローブを接続すると、その2点間の電圧を分圧器の抵抗値と電流計の内部抵抗値の和で除算した電流が電流計に流れます。その電流値に応じてメーター指針が振れますが、メーター指針が示すのは電流値に対して分圧器の抵抗値と電流計の内部抵抗値の和を乗算した電圧値となります。

なお、メーター指針を目視で判読できるのはフルスケールの1%程度であり、測定精度は0.1%以下の誤差で測定できるデジタル電圧計に比べて大幅に劣ります。またアナログ電圧計に用いられる電流計は主に永久磁石を用いた可動コイル型ですが、電磁石を用いた可動鉄片型も一部の用途で採用されています。可動鉄片型は交流の実効値を整流回路を介さずに測定できるメリットがあります。

電圧計の使い方

電圧計を被測定回路に対して並列に接続することで、電圧を測定することができます。直流電圧の測定の場合、電位の高い側にHi端子のプローブをあて、電位の低い側にLo端子のプローブをあてることで、Lo端子の電位を基準としたHi端子の電圧が表示されます。アナログ直流電圧計では、Hi端子に低電位側、Lo端子に高電位側を接続するとメーターが逆方向に駆動され、壊れてしまうことがありますので十分注意して下さい。

一方交流電圧の測定では、デジタル電圧計もアナログ電圧計も整流回路を介して直流電圧に変換しているので、Hi端子やLo 端子を意識する必要はありません。高電圧の測定においてもアナログ電圧計は注意が必要です。測定範囲を超える電圧が印可されると、メーター指針が振り切れるばかりか、大きな電流が流れることでメーターそのものが焼損する恐れがあります。

被測定回路の電圧値が不明な場合は、一旦最大の電圧レンジで測定して適切な測定レンジを見定め、その測定レンジに切り替えて改めて測定するように心掛けて下さい。デジタル電圧計は入力変換部が高電圧に耐える設計であり、更に自動的に適切なレンジに設定するオートレンジ機能を備えているので、被測定電圧が電圧計の最大定格を超えない限りアナログ電圧計のような確認手順は不要です。

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/27/5/27_5_377/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/6/4/6_4_280/_pdf
https://chief-engineer.info/circuit-tester/
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/testerkiso_0104/
https://jeea.or.jp/course/contents/12117/
https://eleking.net/k21/k21h/k21h-meter.html
https://www.marutsu.co.jp/pc/i/124863/
https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/00136/contents/0040.htm

風速計

風速計とは

風速計

風速計は風の速さを測定する装置です。風速計で測定された風の速さは、m/sやノットなどの単位で表示されます。風速計を使用することにより、大気の状態や自転などにより生じる風や、空調の排気口から出る風など、さまざまな風の速さを測定することができます。

風の速さはベクトル量です。このため風速計では、大きさである風速と同時に、向きである風向きも一緒に測定できる製品が多くあります。風速計は、さまざまな動作原理の製品が発売されています。例えば、風速計の種類として、風杯式風速計、風車式風速計、超音波式風速計、熱式風速計などがあります。

風速計の使用用途

風速計は身近なところで使用されています。例えば、エアコンの修理やメンテナンス、排気口からのガスの風速測定などです。また、気象観測など大気の状態を知るためにも風速計は使用されています。

風速計にはいくつか種類があり、風車型・超音波型・熱式型・風杯型などが挙げられます。一般的な風速計は風車型であり、気象庁などの団体で使用されているのが特徴です。風車型や風杯型の風速計は、屋外の風速を測定する目的で使用します。使用方法の特徴は、屋外に設置し、外の風速の程度を回転により測定することです。

風車型と風杯型の風速計は、近年、デジタル化が加速しています。風速計のデジタル化により、風速計を設置した位置から離れた場所でも風速の確認が可能です。屋内のPCやスマホで、リアルタイムの風速が確認できます。主に屋内で使用する風速計が、熱式型や超音波型です。熱式型や超音波型の風速計は、ポータブルが多いのが特徴です。

熱式型と超音波式風速計の使用方法は、風速を測定したい箇所・部分に測定器を直接設置もしくは人が手で持っていき、その場で連続的に測定します。熱式型と超音波式どちらの風速計も、手元ですぐに風速データを確認できます。また、設置位置を容易に変更できるため、フレキシブルな使い方なのが特徴です。しかし、人の動きで風速に影響が出ないように注意が必要です。

風速計の種類

一般的に風速を測定するには、目的およびどのような環境下での結果を求めているのかを決めなければなりません。室内の測定か室外の測定かで、使用する風速計の種類は異なります。

風速計の種類として、「風杯型風速計」「風車型風速計」「超音波式風速計」「熱式風速計」の4つがあります。

1. 風杯式風速計

風杯型風速計は、風杯とよばれる円錐状の羽を使う方法です。回転する羽根の回転数を、発電機ロータリーエンコーダなどで測定して風速を算出します。風向きに関係なく、風速のみを受けて回転するので、風の変化に対して敏感なことが特徴です。

2. 風車式風速計

風車式風速計は、風によって回転するプロペラ状の羽を使う方法です。回転する羽根の回転数を、発電機などで測定される回転数を用いて、風速を測定します。風車式風速計の端にプロペラ、もう一端に風見鶏を取り付けることによって、風向きも同時に測定できる風速計が一般的です。

3. 超音波式風速計

超音波式風速計は、風速によって変化する音速の変化量を測定することによって、風速を測定します。発信部から発信した超音波を受信部で受信し、発信から受信までにかかった時間から、風速がどの程度あるかを測定します。

4. 熱式風速計

熱式風速計は、風によって冷やされた測定部の温度変化を使う方法です。温度を検出する素子から発生した電気信号を測定することによって、風速を測定します。熱式風速計は、風速だけでなく、湿度や圧力も同時に測定できる製品があります。

風速計の選び方

風速計は様々な測定原理があるため、選定する時には注意が必要です。例えば、雨や雪などに強く、屋外での使用に適した風速計、クリーンルームなど精密性が要求される製造現場での使用に適した風速計などがあります。

このため、風速計の使用用途に応じて、適切に選定する必要があります。風速計は、作業現場や分煙の効果を測定するなどに使用されています。しかし、最近では身近な風速を測定する機会も増えているのが現状です。例えば、ゴルフやヨットなどのアウトドア、自宅のエアコン使用時の風速・風の流れを確認する場合があります。

風速計を選定する場合、最も一般的なのが、コンパクトタイプの風速計です。コンパクトタイプの風速計は、風車型や熱式型があり、一般の方でもリーズナブルな価格で購入することができます。コンパクトタイプの風速計のメリットは、ハンディタイプであることです。風速計が軽量化されているため、持ち運びが便利という特徴があります。

また、測定の結果表示画面が測定器と一体型になっているため、すぐに風速の測定結果を確認することができます。風車型のハンディタイプ風速計は、主に屋外レジャー・スポーツで使用することが多いです。熱式型風速計も、風車型風速計と同様にリーズナブルな価格で販売されています。熱式型風速計は主に屋外で、自宅にてエアコンやサーキュレーターを使用した条件下での風速測定に使用が可能です。

参考文献
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=20902&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikai1938/39/320/39_320_1235/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicetr1965/28/3/28_3_301/_article
https://www.rex-rental.jp/feature/37/anemometer
https://fieldpro.jp/mamelog/winddire/2296/
https://sokutei-cube.com/contents/pr/anemometer-choose/