リチウム電池とは
リチウム電池は、化学反応により電力を取り出す化学電池の一種です。リチウムイオン電池と名称が似ており混同しやすいですが、リチウムイオン電池は負極にリチウムイオンを貯蔵可能な炭素材料を使用したインターカレーション反応に基づいた二次電池です。
一方で、リチウム電池は負極に金属リチウムまたはリチウム合金を使用したものを指し、一般的には充電不可能な一次電池です。
リチウム電池の正極には、二酸化マンガン、フッ化黒鉛、二硫化鉄などが使われますが、二酸化マンガンを用いたものが主流で、単にリチウム電池というと一般的に二酸化マンガンリチウム電池のことを指します。
リチウム電池の使用用途
リチウムは金属の中で最も陽イオン化傾向が大きく、最も軽い金属である。このためリチウム電池は電圧が高く軽量でエネルギー密度が高いことが特徴です。ブルーレイ・DVDレコーダー、デジタルカメラ、ゲーム機、炊飯器、通信機器などさまざまな家庭用電気機器の時計やメモリーバックアップ用の内蔵電源として広く使用されます。
また、安定した放電特性と長期信頼性があり、高温での保存性に優れた種類もあるため、水道、電気、ガスの各種メーター・スマートメーター、火災報知器、セキュリティ機器、医療機器などの重要機器の電源としても幅広く使われています。
リチウム電池の原理
リチウム電池は、正極に二酸化マンガン、フッ化黒鉛、二硫化鉄などを使用し、負極にリチウム金属、電解質としてリチウム塩を有機溶媒に溶かした有機電解液などが使われます
負極の金属リチウムは電解質に接している箇所からイオン化し、リチウムイオンとなって電解質に溶け出し、リチウム原子1個のリチウム化に伴い1個の電子が発生します。そして、電子は導線、リチウムイオンは電解質を介して負極から正極へ移動し、正極材と化学反応を起こします。
リチウム電池の特徴
アルカリ乾電池のようなほかの電池と比較して、リチウム電池は以下のような特徴があります。
1.軽量で高電圧
アルカリ乾電池が1.5Vの公称電圧であるのに対し、一般的に普及している二酸化マンガン型では3Vの高い公称電圧が得られます。軽量で高電圧であるためエネルギー密度が高く、二個以上必要であった電池数を一個に減らすことができ、より小型な機器に使用できることが特徴です。
2.自己放電が少なく、長い時間使用可能
リチウム電池の正極は化学的に安定した材料であるため劣化しにくく、10年間貯蔵しても90%以上の容量を維持することが可能です。
また、比較的大きな電流を必要とする機器(撮影装置など)での電池の寿命を比較すると、アルカリ乾電池に対してリチウム電池は2倍程度の寿命が期待できます。リチウム電池は乾電池と比較すると高価ですが、電池交換の頻度は低下しますので、大きな電流が必要な機器ではトータルコストの面で有利になる場合があります。
しかし消費電流が少ない機器、例えば電卓やテレビのリモコン送信機、に使った場合には乾電池との寿命の差が少なく、メリットはありません。
3.広い温度範囲
乾電池で広く使われているアルカリ乾電池などは電解質が水溶液であるため、低温環境では反応活性が低下し、電解液が凍結した場合は電池として機能しなくなる。このため、アルカリ電池の推奨使用温度範囲は5℃ ~ 45℃とされています。
一方で、リチウム電池では有機電解液を使用しているため凝固点が非常に低いです。また高温でも比較的安定なので、広い温度範囲でパワーを取り出すことが出来ます。一般品でも-30~70℃、耐熱タイプであれば-40~125℃の使用温度範囲が謳われています。
以上のような特性から、雪山登山における機材の電源、写真や動画撮影用のカメラ等の電源
リチウム電池の種類
一般的にリチウム電池といえば充放電不可能な一次電池ですが、充放電可能なリチウム二次電池も存在します。それぞれについて紹介していきます。
リチウム一次電池
市販されているリチウム一次電池を形状で分類すると、円筒形リチウム電池、コイン形リチウム電池、ピン形リチウム電池の3種類になります。
1. 円筒形リチウム電池
円筒形リチウム電池は、自己放電 が少なく大きな電力が出力できることが特徴です。正極材料としてフッ化黒鉛もしくは二酸化マンガンが主に使われ、いずれも出力電圧は公称3Vです。フッ化黒鉛は長期保存性に優れ、ガスや水道などのスマートメーターの電源として採用されています。二酸化マンガンは大きな電流の供給に適し、カメラ等の撮影機器に使われています。また硫化鉄を正極材料に用いたリチウム電池は、出力電圧が1.5V程度となるので、単3や単4乾電池の置き換え用として販売されています。
2. コイン形リチウム電池
コイン形リチウム電池の正極材料は、フッ化黒鉛もしくは二酸化マンガンです。薄く小型であることが特徴で、電気製品、情報機器等のメモリー機能や時計機能のバックアップ用電源として使われています。また、自動車のキーレスエントリーシステムや超小型ライトなどにも用いられています。
3. ピン形リチウム電池
ピン形リチウム電池は細長い小型のもので、正極材料はフッ化黒鉛です。主に釣り用の電気ウキや小型の電波発信機などが用途です。
リチウム二次電池
一般的なリチウム電池は充電ができない一次電池ですが、バナジウムやチタンなどの化合物を正極、リチウム金属またはアルミニウムやチタン等のリチウム化合物・合金を負極に使用することで充電も可能なリチウム二次電池もあり、形状はコイン形です。
リチウム一次電池と同様の優れた特性に限らず、充放電サイクル特性にも優れております。リチウム電池を途中で交換したくない、または交換ができない機器に適しています。使用例としては腕時計のソーラー時計やバックアップ電源などに使用されます。