アルニコ磁石とは
アルニコ磁石 (英: alnico magnet) とは、アルミニウム、ニッケル 、コバルトなどを原料とする磁石です。
銅などを添加物として加えることがあり、強い永久磁石として利用されます。原料の供給不安などから、フェライト磁石のように一般的ではなく、減磁しやすいのが欠点です。
キュリー温度が高いため、高温に強いうえ割れにくく、機械的強度に優れています。なお、アルニコ磁石の製造法は、鋳造と焼結です。
アルニコ磁石の使用用途
アルニコ磁石は、キュリー温度がキュリー点850℃と高いため、温度による磁性変化が少なく、高温での使用が可能です。また、割れにくいといった優れた機械的特性から、各種メーター・計器類・積算電力計・防犯用機器などに利用されています。
- 計測機器用マグネット
電流計、電圧計、ワットメーター、スピードメーターなど - 音響機器用マグネット
レベルメーター、ピークメーター、イヤホーン、スピーカー、エレクトリック・ギターのマグネティック・ピックアップなど - 回転機器用マグネット
コアレスモーター、ステッピングモーター、サーボモーターなど - 通信・計測・制御
リードスイッチ、センサー、リレーなど - 応用機器
ソレノイドなど
その他、5cmくらいの棒状のアルニコ磁石を牛に飲み込ませて、第3胃内の針金など鉄片を束状に吸着させ、創傷性心膜炎の予防に使用する場合もあります。
アルニコ磁石の性質
アルニコ磁石には、3つの形状があります。
- バー型
丸棒型で、外径の小さなものは3mmφ、外径×長さで表示 - リング型
外径×内径×高さで表示 - 角型
幅×高さ×長さで表示
アルニコ磁石は、ネオジム磁石などの希土類磁石と同じくらいに強い磁力を持っていることが特徴です。また、キュリー温度が高いため、温度による磁性変化が少なく、高温で使用できます。使用用途に応じた寸法での製造も可能です。
しかし、主原料であるコバルトとニッケルの価格が不安定であるためコストが変動することや減磁しやすいことが短所として挙げられます。保磁力がそれほど大きくないので、外部磁場や機械的な衝撃などで減磁する場合があります。
また、反磁界の大きい薄板形状では自己減磁が起こることも多いです。保磁力を補うためには、磁化方向の長さを拡大する必要があります。
アルニコ磁石のその他情報
1. アルニコ磁石の発明
1931年に三島徳七は、鉄、ニッケル、アルミニウム合金を主成分とするMK鋼を発明しました。このMK鋼をきっかけとして、磁性体材料に合金を活用する流れがより大きくなったと言えます。
その後、三島徳七は、MK鋼にコバルトや銅を添加することで磁性の向上を目指し、これがアルニコ磁石の土台です。1934年に本多光太郎・増本量・白川勇記らはMK鋼にチタンを添加し、保持力の高いNKS鋼を開発しました。
1938年、アメリカのGE社は、NKS鋼に銅を加えたアルニコ磁石を発表し、広く普及するようになりました。このときのアルニコ磁石の組成は、アルミニウム8wt%、ニッケル14wt%、コバルト24wt%、銅3wt%、残りは鉄です。
2. アルニコ磁石の劣化
アルニコ磁石は、経年劣化、温度、外部磁場などの影響を受けて、磁力が低下します。アルニコ磁石は、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石などの他の永久磁石と比較して、保磁力が小さいため、製造から時間が経過することで、磁力が低下しやすいのが欠点です。
アルニコ磁石を長期間使用する場合は、磁力が低下していないかを定期的に確認する必要があります。また、アルニコ磁石のキュリー温度は高く、熱に強いが、高温では磁力が弱まります。また高温になりすぎると、冷却時に磁力が回復しないことがあるので、適正温度内での使用が必要です。
アルニコ磁石は保磁力が小さいので、外部磁場の影響を強く受けます。そのため、強い磁場があると磁力を保持できなくなり、磁力の低下に繋がります。また、錆や変形などの部分的なダメージにより、磁石全体の磁力を維持できなくなってしまうのもデメリットです。
参考文献
https://www.kinkimagnet.com/products/alnico/
https://www.nihonjisyaku.co.jp/arnico.php
http://www.mmtc.co.jp/ja/products/metalmagnets.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfes/68/3/68_265/_pdf/-char/ja
https://www.neomag.jp/mag_navi/history/history_21.html
https://www.neomag.jp/