デジタル流量計

デジタル流量計とはデジタル流量計

デジタル流量計(英語:Digital flow meter)とは、流量計で計測した結果をデジタル信号で送信する流量計です。ちなみに、流量計とは、気体・液体・蒸気などの流体の、単位時間あたりに質量や体積を計測する計器のことです。

流量計で計測された流量値は、流体が流れているため常に変化しています。この連続した計測値のアナログ数値をデジタル数値に変換し伝送する計器になります。流量計本体に、指示計と発信器(デジタル信号伝送器)を付属しているものや、指示計と発信器が別になっているものがあります。

デジタル流量計の使用用途

デジタル流量計の使用用途は、単に流量計して計測された瞬時の流量値を目視確認するだけではなく、流量値をデータとして各種制御機器へ伝送することで、制御システムで流量制御バルブを使用し流量制御を行ったり、出力された積算流量データを蓄積して消費量を監視したりすることができます。

また、流量の上限・下限値を監視し警報を発報・表示し、制御システムにより流体の流れを閉止することができます。

したがって、各種プラントや流体を使用する製造現場において、流量データを使用して自動化し制御するような場合で多く使用されています。

デジタル流量計の原理

デジタル流量計の原理は、一例としてタービン式流量計では、管路内に設置した羽根車(ロータ)を流体により回転させ、羽根車に取り付けられた磁石が回転します。この磁石は流速に比例して回転するし、回転数はピックアップコイル(非接触で本体内にあるリードスイッチ素子)で検出され、変換器で遠隔伝送に適するパルス列信号に変え出力されます。

このパルス信号(デジタル信号)を都度出力し、一定時間間隔(例:1回から100回/秒)ごとにデジタルの数値としてサンプリング(計測時間と計測値をデータとして抽出すること)します。サンプリングされたデジタルデータを計測時間情報ともに伝送出力したり、デジタルデータを移動平均処理したり、積算処理をして出力したりしています。

最近では、マイクロプロセッサを搭載し、検出・記憶・演算の他、判断・通信機能を有し、フィールドバス(双方向で信号のやり取りができるデジタル通信方式)に対応したインテリジェントタイプの伝送器を付属しているものもあります。

このようなデジタル発信器を使用することにより、正確な数値や情報をもとに流体の制御を行うことができるようになり、プロセス制御の可能性が広くなります。

塩化第二鉄エッチング

塩化第二鉄エッチングとは塩化第二鉄エッチング

エッチングは、金属・ガラス・セラミックなどの材料表面をガス・ビーム・溶液などによって浸食除去して目的の形状にする加工技術です。大きく分けて、ガス・ビームなどを用いるドライエッチングと、溶液を用いるウェットエッチングの2種類の手法があります。

塩化第二鉄エッチングはウェットエッチングの一種で、加工用の溶液として塩化第二鉄(FeCl3)の水溶液を用いるエッチングです。

ウェットエッチングでは、加工する材料によって適用できるエッチング溶液が限定されますが、塩化第二鉄溶液はチタンなど一部の金属を除いてほぼ全ての金属に適用できます。

塩化第二鉄エッチングの使用用途

エッチング加工は、機械加工に比べ微細加工が可能です。さらに、塩化第二鉄溶液はほとんど全ての金属のエッチング加工に適用できるため、塩化第二鉄エッチングは金属加工を行う分野で幅広く応用されています。

特に、プリント基板の配線パターン形成、プレス加工より微細な加工を必要とするICリードフレームの製造など電子工業分野で多く使われます。また、金属・セラミックに対する、機械加工では対応できない微細加工を必要とする製造分野、銅板エッチング版画などの美術分野でも応用されています。

塩化第二鉄エッチングの原理

塩化第二鉄エッチングでは、まず、金属表面の除去しない部分のレジストと呼ばれる耐食性の物質を塗布します。プリント基板の場合、基板表面の配線パターン部分をはんだ・スズなどの金属レジストやインク・フィルムなどの有機レジストでマスキングします。

その後、プリント基板を塩化第二鉄溶液に浸すと、基板表面で酸化還元反応が起こって、が酸化されて塩化第二銅(CuCl)になり、塩化第二鉄が還元されて塩化鉄(FeCl2)になります。

この反応では、溶液中の第二鉄イオン(Fe3+)が基板表面へ拡散し、銅原子と第二鉄イオンとの間で電子の授受が起こって銅イオン(Cu2+)と鉄イオン(Fe2+)になり、生成された銅イオンと鉄イオンが溶液中に拡散し、基板表面から銅が取り除かれることになります。

不要な銅が除去された後、レジストを除去します。金属レジストの場合は酸性水溶液、有機レジストの場合はアルカリ水溶液を用います。

最後に基板の洗浄を行い、基板上に残っている薬剤やレジスト残滓を除去します。

光学式エンコーダ

光学式エンコーダとは

光学式エンコーダ (英: optical encoder) とは、物理量の検出方式として光センサーを用いるエンコーダの1種です。

エンコーダは直線軸の移動量や回転角度などの物理量を検出し、位置情報を電気信号として出力する位置センサーです。光学式ロータリーエンコーダの場合には、コードホイールと呼ばれるスリットの入った円盤を回転させ、スリットを通過または反射した光を光センサーで検出します。 

直線移動量を検出するリニアエンコーダと回転量を計測するロータリーエンコーダの2種類のタイプがあり、モーターと組み合わせて広い応用範囲を持つロータリーエンコーダが圧倒的に多く使われています。

光学式エンコーダの使用用途

エンコーダは、産業用機器分野などで広く応用されています。特に光学式エンコーダは高精度・高分解能で比較的高速対応可能です。そのため、産業用機器の中でも信号の精度が要求されるサーボ制御、エレベータ用モーターの制御、中空貫通軸モーターの制御、高速回転するモーターの制御などの用途に使われています。

また、周辺磁場の影響を受けずに強い磁界が発生する環境でも使用できるため、MRI (核磁気共鳴) 装置の駆動部や位置決め制御、リニアモーター型アクチュエータなどにも有用です。

光学式エンコーダの構造

光学式エンコーダは、LEDなどの発光素子、フォトダイオードフォトトランジスタなどの受光素子、レンズ、コードホイールと呼ばれるスリットの入った円盤で構成されています。

1. 発光素子 (LED)

一般的に光学式エンコーダで用いる発光素子は赤外光LEDです。光の拡散を抑えるため、短波長の有色LEDが使用される場合もあります。高性能や高分解能が必要な用途では、高価なレーザーダイオードが使われます。

2. レンズ

発光素子が発する光は指向性が少ない拡散光です。凸レンズを用いて平行光にしています。

3. コードホイール

コードホイールとは光を通過/遮断させる穴が開いた円盤のことです。材質には金属製、樹脂製、ガラス製などがあります。金属製は振動や温湿度の耐性が強いため、産業分野で利用可能です。

樹脂製は安価で大量生産に適しており、民生用途で使われます。ガラス製は、高精度や高分解能が必要な場合に使用されます。

4. 受光素子

一般的に受光素子には、シリコン、ゲルマニウム、インジウムガリウムリンのような半導体材料で作成したフォトダイオードやフォトトランジスタが使用されています。

光学式エンコーダの種類

光学式エンコーダには透過型と反射型の2つのタイプがあります。

1. 透過型

透過型では発光素子と受光素子がコードホイールを挟んで対面上に配置され、発光素子から出た光がコードホイールのスリットを透過/遮断されたことを検出します。

2. 反射型

反射型では発光素子と受光素子が同一面に配置され、コードホイールの反射板で光が反射/非反射したことを検出します。

光学式エンコーダの原理

光学式エンコーダではコードホイールを通過または反射した光を受光素子で受け取り、電気信号に変換します。コードホイールの1スリットごとに光のオン・オフが発生して、それを受けた受光素子がパルス信号を出力します。スリットは等間隔にあるため、パルス数をカウントして回転速度を検出可能です。

光学式エンコーダでは、一般的に位相が4分の1周期ずれた2つのパルス信号を用いて回転の方向を検出します。 

光学式エンコーダの選び方

反射部分やスリットの物理的な寸法が決まっているため、光学式エンコーダの信号精度は高いです。ただし、分解能を高めるためには物理的にスリットの形成に限界があり、複雑な光学系や機構の設計が必須になり、大型化して価格も高くなります。

光を遮るホコリや油分による汚染には弱いです。信号出力を安定させるには発光素子に電流を流す必要があるため、低消費電力化が困難です。

磁気式エンコーダ

磁気式エンコーダとは

磁気式エンコーダとは、物理量の検出方式として磁界分布変化を磁気センサーで検出するエンコーダの1種です。 

エンコーダは直線軸の移動量や回転角度などの物理量を検出し、位置情報を電気信号として出力する位置センサーです。

直線移動量を検出するリニアエンコーダと回転量を計測するロータリーエンコーダの2種類があります。モーターと組み合わせると広い応用範囲を持つロータリーエンコーダが圧倒的に多く使われています。

磁気式エンコーダの使用用途

エンコーダは、産業用機器分野などで広く応用されていますが、とくに磁気式エンコーダは油・水・ほこりなどの汚染環境に強く、耐熱性・耐振動性・耐衝撃性にも優れています。そのため、振動や衝撃が多くて高温などの過酷な環境下での使用に適しています。具体的には粉塵のある環境や水・切削油の飛び散る工場などの工作機械・産業機器などに使用可能です。

光学式エンコーダのようにスリットの入った円盤が必要なく、同程度の分解能を小型で実現できます。光学式と比べると部品の数が少なく低消費電力なため、小型軽量化・低消費電力化が重視される現場で磁気式エンコーダはよく使われます。

磁気式エンコーダの原理

エンコーダの出力方式には、開始位置からの相対的角度として出力するインクリメンタル方式や絶対的角度として出力するアブソリュート方式があります。磁気式エンコーダは電圧波形の正弦波が絶対角度と対応しているため、光学式に比べてアブソリュート方式の出力が容易です。

一般的な磁気式エンコーダは、磁気センサーと永久磁石で構成されています。

1. 磁気センサー

磁気センサーにはホール素子やMR素子などが使われます。ホール素子は半導体の薄膜に電流を流すと、磁束密度・方向に応じた電圧が生じるホール効果を利用して磁気を検出するセンサーです。

MR素子は磁気抵抗素子とも呼ばれ、磁界の強さで電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用して磁気を検出するセンサーです。

2. 永久磁石

永久磁石は回転または移動する物体に取り付けられています。シャフトが回転して永久磁石の位置が変化すると磁界分布が変わり、磁気センサーに印加される磁束密度が変化します。磁気センサーは磁束密度変化を電気信号に変換し、シャフトの位置情報を出力可能です。

磁気式エンコーダの特徴

磁気エンコーダーは、電動モーターの磁気干渉に影響されやすいです。そのため、実行できる動作温度範囲が限られています。

現在までに、磁気エンコーダーは数多くの改良が施されてきました。しかし、一般的な精度や分解能は光学エンコーダーや容量性エンコーダーよりも低いです。

ただし、光学エンコーダーは汚れ、ほこり、油などの影響を受けやすいです。その一方で、容量性エンコーダーは環境汚染物質に耐性があり、省スペースかつ長寿命で厳しい温度にも耐えられます。

磁気式エンコーダの構造

1. 磁気センサー

ホール効果を用いた磁気センサーであるホール素子は主に半導体材料で作られます。半導体材料にはインジウムヒ素 (InAs) 、ガリウムヒ素 (GaAs) 、インジウムアンチモン (InSb) などの化合物半導体のほか、ICのダイに搭載できるケイ素 (Si) もあります。

インジウムヒ素は温度特性と感度のバランスが良く、ガリウムヒ素は温度特性が安定しており、インジウムアンチモンは感度が高いです。ホール素子は縦方向と横方向の磁界の強さを検知する2種類に分けられます。

2. 永久磁石

磁気式エンコーダーに使う一般的な永久磁石の形は、径方向や面方向に磁化された円板型です。エンコーダーの寸法や磁石素材は動作する磁束密度の条件を満たせばいずれも選択できます。

主にフェライト系、ネオジム (Ne-Fe-B) 系、サマコバ (SmCo) 系などが用いられています。フェライト系は安価で、ネオジム系は小型で軽く、サマコバ系は温度特性が良いです。

リジッドフレキシブル基板

リジッドフレキシブル基板とは

リジッドフレキシブル基板とは、プリント基板の一種です。リジッド基板とフレキシブル基板の特徴を併せ持っており、リジッド基板やリジッドFPC基板、フレックスリジッド基板など様々な名称があります。
プリント基板とは、電子機器同士を電気的に接続させる為の部品です。信号と電力の送信の役割を担い、各部品の位置を固定しながら配線接続ができます。
様々な電子機器の内蔵部品として実装されており、必要不可欠な部品です。

リジッドフレキシブル基板の特徴

プリント基板は、リジッド基板やフレキシブル基板といった種類に分類されます。
リジット基板は素材は絶縁体が選ばれており、硬質のため自動搬送に耐え、部品の位置決定が容易です。強度はある一方で、柔軟性には欠けます。
フレキシブル基板は薄いフィルムが使用され、繰り返し折り曲げる作業が可能です。重量制限のある部品にも実装可能であり、可動部への使用に適しています。こちらも素材自体は絶縁体となります。
リジッドフレキシブル基板は、リジッド基板とフレキシブル基板を一体化させた複合基板で、上記の2種のメリットを合わせ持ったプリント基板です。
そもそもの用途は、宇宙航空機向けにコンパクト化を求めて開発されました。開発以前は、複数の基板を不安定な電線で接続しており、不良や故障が頻発していました。

リジッドフレキシブル基板の原理

部品を実装するリジッド部は、立体配線用のフレキシブル層と回路形成用のリジッド層の全層が重ね合わされた構造をしています。
本来は基板間をコネクタで接続する必要がありますが、外層と内層をスルーホールで接続する発想でコネクタ分の高さと重量が省略可能です。
フレキシブル部はフレキシブル層のみで構成されています。しかしながらその層数が多くなると屈曲性が損なわれるため、1層または2層単位で分離しています。
希望用途によってこの総層数は調整が可能であり、各メーカーによって設計提案を行うのが一般的です。
フレキシブル基板単体では、その薄さから実装作業において慎重な作業が必要でした。ベース強度をリジット基板が担う形で既存の実装設備での対応が可能となりました。
その構造からリード1本線にて接続ができており、ノイズの発生も抑えられる事が確認されています。部品省略により小型軽量化や薄型化が実現でき、適用できるデバイスの幅が大きく広がりました。

リジッドフレキシブル基板の使用用途

リジットフレキシブル基板には、折りたたみ型、フライイングテール型、ブックバインダー型などさまざまな形状のものがあり、設置場所の状況によって多様な対応ができます。
基板形状の調整の幅が広いため、家庭用ゲーム機、携帯電話、医療機器、スマートデバイス、ストレージデバイス、ウェアラブルデバイス、通信基地局など、小型軽量化が求められる機器、高信頼性が要求される機器に幅広く使用されています。

リジッドフレキシブル基板のその他情報

1,リジッドフレキシブル基板の課題

リジット基板やフレキシブル基板単体での製造と比較しプロセスが煩雑になります。ビアの位置などは調整が必要であり、設計から微細な確認作業が求められます。
製造メーカーも限られており、製造コストが高い点が課題として挙げられます。

2,将来性

昨今、通信技術の向上や電子機器販売の増加により、プリント基板市場は拡大の一途を辿っています。高速通信を可能にする規格はインフラ設備への影響が大きく、より高性能なプリント基板が求められています。更にAI技術の台頭により、様々な産業がIT化を進める意向です。各国の外交関係や情勢も関係しており、その需要は世界的なものになっています。リジットフレキシブル基板もその特徴から実装される機器が増えており、製造効率の見直しが求められています。

ASSP

ASSPとは

ASSP(Application Specific Standard Product)は半導体集積回路(IC:Integrated Circuit)の一種で、特定の用途向けに機能を特化して設計・開発された集積回路です。

特定用途向けのICとしては、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)という分類もありますが、ASICが顧客の要求仕様に従って設計・開発されたカスタム製品または半カスタム製品であるのに対し、ASSPはASSPメーカーが主体となって設計・開発された特定用途向けの汎用製品です。

標準の製品であるため、ASSPは大量生産が可能です。

ASSPの使用用途

ASSPは、半導体メーカーが特定用途向けに開発・設計し、複数の顧客に対して提供する汎用製品です。

多くの顧客に提供でき、また、出荷量が多いほど、大量生産によるASSPメーカーのメリットが大きいため、多数のメーカーが参入する製品・部品分野がターゲットにされます。

具体的には、携帯電話、デジタルカメラ、通信、AV機器、OA機器、車載分野における電源管理、画像処理、音声処理、データ送受信、セキュリティ、センサーなどの機能に多く使用されています。

ASSPの特徴

ASSPは、特定用途向け集積回路の汎用製品です。

ASSPのユーザーは、自社で最終製品または中間製品を開発・製造する際に、一部機能を実現するためにASSPを組み込んで使用します。

ASSPはASSPメーカーが開発する標準品なので、その機能・性能に過不足がある場合もあります。通常は、不足がないASSP製品を選択するため、不必要な機能を搭載したチップを使うことが多く、ASSPユーザーにとってはチップ単価が高くなるというデメリットがあります。また、ASSPを組み込む場合、性能や消費電力などを自社製品向けに最適化するのが難しいという短所もあります。

その一方、標準品であるASSPの開発コストはすべてASSPメーカーが負担しているため、ASSP開発のためのコストが不要だというメリットがあります。

近年は、1個のチップ上に必要な機能の全部または大半を搭載するSOC(System on a Chip)を使用する製品が増えてきました。SOCにはカスタムICと標準ICとがありますが、標準ICとしてのSOCもまた、ASSPの一種です。

ディスクリート

ディスクリートとは

ディスクリート

ディスクリート(Discrete)は半導体製品の一種です。個別半導体とも呼ばれ、1チップに単独の機能が実装された半導体です。

ディスクリートには、ダイオード、トランジスタ、サイリスタなど、さまざまな種類があります。また、複数のディスクリートチップを組み合わせて1個のパッケージに搭載したモジュールも、ディスクリートに分類されます。

一方、単一機能のディスクリートに対して、複数の半導体素子を1チップ上に搭載し、演算・記憶などの複数の機能を実装した半導体製品は、集積回路(IC:Integrated Circuit)と呼ばれます。

ディスクリートの使用用途

ディスクリートにはさまざまな種類があり、それぞれが幅広い分野で使用されています。

発光ダイオードなどの発光素子は照明、ディスプレイ、電子機器などのバックライト、リモコンなど、フォトダイオードフォトトランジスタなどの受光素子は光通信システム、分光器、自動ドア、センサーなどに使われます。

ダイオード、トランジスタ、サイリスタなどのパワー半導体は電流制御・電力制御を行い、通信機器やOA機器の電源、通信基地局・データセンターの電力制御、発電所のパワーコンディショナ、鉄道の駆動システム・車両制御システム、電気自動車(EV)の車載電源・充電器などに使われます。

ディスクリートの原理

主なディスクリート半導体の動作原理は次のとおりです。

  • ダイオード:ダイオードは電流を一方向にだけ流す素子です。

N型半導体とP型半導体を接合したPN型ダイオードがよく使われます。P側にプラス、N側にマイナスの順電圧を印加すると、N側から余っている自由電子がP側に移動し、P側からは正孔がN側に移動して、接合面で結合し消滅します。

このとき、電源からN側に電子が供給され、P側からは電子が流出し、P側からN側へ電流が流れます。P側にマイナス、N側にプラスの逆電圧を印加すると、自由電子も正孔も接合面とは反対側に移動するため、電流は流れません。

  • トランジスタ:トランジスタはスイッチング機能を持つ素子で、NPN(Nチャネル)型とPNP(Pチャネル)型の2種類あります。

Nチャネル型の場合、P層と絶縁層を介して接続されたゲートGとソースSとの間にしきい電圧以上の電圧を印加すると、P層がNに反転し、NPN構造からNNN構造になって電流が流れます。

  • サイリスタ:サイリスタは整流機能を持つ素子で、PNPN4層構造をしています。

ゲートにトリガ信号を入力し、アノードとカソードの間に順電圧を印加するとサイリスタはオン状態になり、一度オン状態になるとゲート信号がなくなっても電流は流れ続けます。アノード・カソード間に逆電圧を印加するとサイリスタはオフ状態になります。

この原理を利用して、アノード・カソード間に交流電流を流して、交流サイクルの半分だけ電力供給を行う動作を実現しています。

ICトレイ

ICトレイとは

ICトレイ

ICトレイは、半導体ICパッケージを安全に搬送、検査、保管、出荷するために使用する専用の容器です。

ICパッケージには、リードフレームがパッケージ側面から出ているSOP、QFP、はんだボールがパッケージ底面に格子状に配置されたBGA、ピンがパッケージ底面に格子状に配置されたPGAなど、多様な外形形状のパッケージがあります。

ICパッケージを安全に取り扱うためには、パッケージの種類・サイズ、使用場所などを考慮して、適したICトレイを使用することが重要です。

ICトレイの使用用途

ICトレイは、半導体製造工場のうち、シリコンウエハ上のチップを切り離してパッケージ化する後工程において使用されます。

チップをパッケージで封入する工程の後、ICパッケージはICトレイに詰められて検査工程に搬送されます。検査工程では、ICパッケージをICトレイに載せたまま行う外観検査や、トレイから外して行う特性試験などを実施します。検査実施後、ICパッケージはICトレイに載せた状態で保管・出荷します。

このように、半導体製造工場のパッケージング工程以降の工程で、ICトレイは必ず使用される容器です。 

ICトレイの特徴

半導体製品は一般的に静電気によるESD破壊に弱いという性質があります。そのため、ICトレイには、半導体ICをESD破壊から保護するため、静電対策を施すことが要求されます。

また、半導体ICを基板に実装するリフロー工程では、ICパッケージ内部に水分が含まれていた場合、リフロー時の熱で内部の水分が膨張してモールド樹脂が破壊される恐れがあります。これを回避するため、半導体ICの基板実装前にベーキングを実施して水分を飛ばしますが、ベーキングはICトレイに載せたまま実施するため、ICトレイには耐熱性が求められます。

このような要求を満たすICトレイとして、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)規格に準拠したJEDEC規格トレイがあります。

JEDEC規格トレイは、耐熱性や静電対策などの特性を保証しています。耐熱性については、ICトレイに耐熱温度がマーキングされているため、ベーキングの温度に応じた耐熱トレイを選定することができます。

JEDEC規格トレイは、ICパッケージの種類・サイズに応じてさまざまな外形サイズが用意されていますが、コーナーのひとつを45°にカットした形状で、ICの1ピン位置が分かるようになっています。そのため、JEDEC規格の装置にそのまま投入してICをピックアップすることができ、生産効率の向上にも効果があります。 

フレキシブルシャフト

フレキシブルシャフトとは

フレキシブルシャフト

フレキシブルシャフト (英: Flexible shaft) とは、離れた2点間で回転軸が同心 (軸の長手方向の中心が同一であること) ではない場合に回転運動を伝達する柔軟性のあるシャフトです。

フレキシブルシャフトは回転軸端間で適切な曲がりを保ちながら駆動軸側から従動軸側へ回転とトルクを伝達します。

そのため機器相互の回転軸が同心である必要はなく、ある程度自由な配置が可能です。機器回転軸間の正確な芯出し (軸同士の中心位置合わせ作業) が不要で作業性が向上します。

フレキシブルシャフトの使用用途

フレキシブルシャフトの使用用途は動力伝達用や遠隔操作用があります。

  • 動力伝達用
    電動機などの動力を伝達する際に従動側軸位置が同心ではない場合に使われています。
  • 遠隔操作用
    回転機器の手動操作やバルブの開閉を遠隔で操作する場合などに用いられます。

身近な使用例として電動ドリル・ドライバーの延長用のフレキシブルビットやフレキシブルドライバー、高所窓の遠隔開閉用ハンドル、自動車のスピードメーターなどに使用されています。

フレキシブルシャフトの構造

一般的なフレキシブルシャフトは次の3つの部品で構成されています。内側のコア (インナーシャフト) 、その外側のフレキシブルチューブ (アウターチューブまたはハウジング) 、軸端の接続金具です。

1. コア

中心に1本の芯線があり、複数本の鋼線で芯線の周囲を巻き付け、巻き付ける方向を交互にして数層を重ねて製作します。コアの材質にはSW-C JIS G3521硬鋼線やSUS304WP-B JIS G4314ばね用ステンレス鋼線などを使用可能です。

一層当たりのワイヤの数、ワイヤの直径、ワイヤ層の数、ワイヤ間の間隔、材質などで特性は違います。

2. フレキシブルチューブ

軟鋼線や硬鋼線を組み合せて巻き上げています。平鋼線を巻き上げた外面に、合成ゴム、ポリエチレン、塩化ビニールのような樹脂を皮覆する場合もあります。

コアとフレキシブルチューブの隙間にはグリースなどの潤滑油が封入され、フレキシブルチューブの内面がコアの軸受けとして滑らかな回転を維持可能です。

3. 軸端部

駆動側と従動側を接続する金具です。コアに圧着 (カシメ) や溶接・ロウ付けなどで取り付けられています。

フレキシブルシャフトの原理

1. コア

コアはフレキブルシャフトの曲がった状態を維持し、回転を伝達する基幹部分です。最外層のコアの巻きによってフレキシブルシャフト自体の回転方向が決まります。最外層が左巻き (左上がり) の場合は右回転用 (時計回り CW) 、最外層が右巻き (右上がり) の場合は左回転用 (反時計回り CCW) です。

2. フレキシブルチューブ

フレキシブルチューブは埃や湿気からコアを守ります。捩じられようと回転するコアを外部から支え、自在な状態を維持します。

3. 軸端部

フレキシブルシャフトを回転軸に接続するための部品です。接続する相手側の接続方法や形状に合わせて選定する必要があります。

フレキシブルシャフトの種類

フレキシブルチューブの種類には、標準型、高トルク型、左右両用型、焼入れ型、強力型、柔軟型などがあります。

1. 標準型

鋼線をチューブ状に巻き上げ、その外面をビニールやゴムで被覆します。耐久性が高く、トルク伝達に強いです。

2. 高トルク型

平鋼線をスプリング状に巻いてチューブ状にしたライナーとその外側を編み組みされた鋼線で補強し、最外層をビニールやゴムで被覆します。ハイトルクに耐えられます。

3. 左右両用型

ドライバーの延長に使用され、構造的に逆回転にも強いです。

4. 焼入れ型

連続焼入れ炉で加熱し、焼入れ油の中を通して製造します。真直性に優れ、リモコン用に向いています。

5. 強力型

衝撃に強く、重研磨で役立ちます。

6. 柔軟型

可撓性に富んでおり、彎曲が容易です。

フレキシブルチューブ

フレキシブルチューブとは

フレキシブルチューブ

フレキシブルチューブとは、その優れた柔軟性と伸縮性によって、多岐にわたる用途で重要な役割を果たす管状の製品です。

これらのチューブは、その特性を活かすために高度な素材工学と設計に基づいて製造されており、多様な条件下での優れた耐久性と機能性を提供します。

フレキシブルチューブの使用用途

1. 産業分野

化学工業、食品加工業、石油・ガス業など、液体や気体の輸送や供給に使用されます。特殊な素材から製造されているため、腐食や汚染の心配が少なく、製品の品質と安全性を保つための重要な役割を果たします。

2. 医療分野

点滴チューブ、カテーテル、吸引装置など、医療機器の一部として使用されます。柔軟性と生体適合性が要求されるため、患者の安全性を確保する重要な役割を果たしています。

3. 自動車産業

冷却水やブレーキ液の供給に使用される冷却水ホースやブレーキホースなどがあります。高温や高圧に耐える必要があり、安全性を保つために欠かせません。

4. 食品業界

飲料や食品の輸送や供給に使用されます。特殊な素材を使用しているため、食品の品質や衛生を守るための重要な役割を果たします。

5. 農業

農薬や肥料の散布、灌漑システムなどに使用されます。フレキシブルな特性により、異なる農作業に適応し、作業の効率を向上させます。

6. 家庭用品

庭の散水ホースやシャワーヘッド、洗濯機の排水ホースなど、日常生活での用途も多いです。柔軟性と耐久性により、快適な生活をサポートします。

7. 燃料供給

自動車や航空機の燃料供給に使用される燃料ホースがあります。高い信頼性と耐久性が求められます。

8. 工業用途

工場やプラント内での液体や気体の移送に使用され、効率的な生産プロセスをサポートします。

フレキシブルチューブの原理

1. 層構造の設計

フレキシブルチューブは、通常複数の層から構成されています。内層は流体の流れを確保し、外層は外部からの影響を防ぐ保護層として機能します。これにより、内部の流体が外部の環境から影響を受けず、逆も同様です。

2. 設計と加工技術

フレキシブルチューブは、熱成形や押出成形などの特殊な加工技術によって製造され、チューブの形状や寸法は、特定の用途に適合するように設計されます。この設計プロセスは、柔軟性、耐久性、流体の流れを最適化することを目指します。

3. 耐久性と機能性

フレキシブルチューブは、曲げ、伸縮、圧力変動などの外部ストレスに耐える必要があります。そのため、設計段階で材料の選定と層構造の最適化が重要です。また、内部の流体の特性に合わせて適切な内面加工やコーティングも施されることがあります。

4. 応用の幅広さ

フレキシブルチューブは、その柔軟性と耐久性により、様々な用途に応用されています。流体の移送、供給、排出、吸引など、液体や気体の操作に関連するさまざまな場面で使用されています。

フレキシブルチューブの種類

1. ゴムチューブ

ゴム素材から作られるフレキシブルチューブは、耐久性があり、さまざまな液体や気体の移送に使用されます。耐油性や耐薬品性を備えていることがあり、自動車産業や化学産業などで広く利用されています。

2. プラスチックチューブ

さまざまな種類のプラスチックから作られるフレキシブルチューブは、軽量で取り扱いが容易です。食品産業や医療産業などで使用される食品グレードのプラスチックチューブも存在します。

3. 合成繊維チューブ

合成繊維製のフレキシブルチューブは、高い強度と耐久性を持ち、圧力や引張りに耐える能力があります。高圧環境での使用や、ガス供給などの用途に適しています。

4. シリコーンチューブ

シリコーン素材は高い耐熱性と耐久性を持ち、医療機器や食品産業などで使用されることがあります。また、シリコーンチューブは化学的に安定しており、幅広い液体や気体に対応できます。

5. サニタリーチューブ

食品、医薬品、化粧品などの衛生要件を満たすために設計されたチューブです。クリーンルーム環境で使用され、製品の品質と安全性を保つ役割を果たします。

6. 伸縮チューブ

伸縮性に優れたチューブは、曲げや引っ張りに適応しやすく、狭いスペースや複雑な形状に適しています。医療機器や車両部品、工業用途などで使用されます。

7. 耐薬品チューブ

特定の薬品や溶剤に対して耐性を持つチューブは、化学工業や研究機関で使用されます。これにより、薬品の移送や試験が安全に行えます。

フレキシブルチューブのその他情報

素材の選定

フレキシブルチューブの主要な特徴は、材料の柔軟性と伸縮性です。高度な素材工学により、弾力性のあるポリマーやゴム、合成繊維などが使用されます。これらの素材は、強度を保ちながらも曲げや伸縮に対して適切な柔軟性を備えています。