磁気式エンコーダとは
磁気式エンコーダとは、物理量の検出方式として磁界分布変化を磁気センサーで検出するエンコーダの1種です。
エンコーダは直線軸の移動量や回転角度などの物理量を検出し、位置情報を電気信号として出力する位置センサーです。
直線移動量を検出するリニアエンコーダと回転量を計測するロータリーエンコーダの2種類があります。モーターと組み合わせると広い応用範囲を持つロータリーエンコーダが圧倒的に多く使われています。
磁気式エンコーダの使用用途
エンコーダは、産業用機器分野などで広く応用されていますが、とくに磁気式エンコーダは油・水・ほこりなどの汚染環境に強く、耐熱性・耐振動性・耐衝撃性にも優れています。そのため、振動や衝撃が多くて高温などの過酷な環境下での使用に適しています。具体的には粉塵のある環境や水・切削油の飛び散る工場などの工作機械・産業機器などに使用可能です。
光学式エンコーダのようにスリットの入った円盤が必要なく、同程度の分解能を小型で実現できます。光学式と比べると部品の数が少なく低消費電力なため、小型軽量化・低消費電力化が重視される現場で磁気式エンコーダはよく使われます。
磁気式エンコーダの原理
エンコーダの出力方式には、開始位置からの相対的角度として出力するインクリメンタル方式や絶対的角度として出力するアブソリュート方式があります。磁気式エンコーダは電圧波形の正弦波が絶対角度と対応しているため、光学式に比べてアブソリュート方式の出力が容易です。
一般的な磁気式エンコーダは、磁気センサーと永久磁石で構成されています。
1. 磁気センサー
磁気センサーにはホール素子やMR素子などが使われます。ホール素子は半導体の薄膜に電流を流すと、磁束密度・方向に応じた電圧が生じるホール効果を利用して磁気を検出するセンサーです。
MR素子は磁気抵抗素子とも呼ばれ、磁界の強さで電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用して磁気を検出するセンサーです。
2. 永久磁石
永久磁石は回転または移動する物体に取り付けられています。シャフトが回転して永久磁石の位置が変化すると磁界分布が変わり、磁気センサーに印加される磁束密度が変化します。磁気センサーは磁束密度変化を電気信号に変換し、シャフトの位置情報を出力可能です。
磁気式エンコーダの特徴
磁気エンコーダーは、電動モーターの磁気干渉に影響されやすいです。そのため、実行できる動作温度範囲が限られています。
現在までに、磁気エンコーダーは数多くの改良が施されてきました。しかし、一般的な精度や分解能は光学エンコーダーや容量性エンコーダーよりも低いです。
ただし、光学エンコーダーは汚れ、ほこり、油などの影響を受けやすいです。その一方で、容量性エンコーダーは環境汚染物質に耐性があり、省スペースかつ長寿命で厳しい温度にも耐えられます。
磁気式エンコーダの構造
1. 磁気センサー
ホール効果を用いた磁気センサーであるホール素子は主に半導体材料で作られます。半導体材料にはインジウムヒ素 (InAs) 、ガリウムヒ素 (GaAs) 、インジウムアンチモン (InSb) などの化合物半導体のほか、ICのダイに搭載できるケイ素 (Si) もあります。
インジウムヒ素は温度特性と感度のバランスが良く、ガリウムヒ素は温度特性が安定しており、インジウムアンチモンは感度が高いです。ホール素子は縦方向と横方向の磁界の強さを検知する2種類に分けられます。
2. 永久磁石
磁気式エンコーダーに使う一般的な永久磁石の形は、径方向や面方向に磁化された円板型です。エンコーダーの寸法や磁石素材は動作する磁束密度の条件を満たせばいずれも選択できます。
主にフェライト系、ネオジム (Ne-Fe-B) 系、サマコバ (SmCo) 系などが用いられています。フェライト系は安価で、ネオジム系は小型で軽く、サマコバ系は温度特性が良いです。