ラインヒータ

ラインヒータとは

ラインヒータ (英: line heater) とは、ハロゲンランプの光をライン状に集光するヒータです。

ラインヒータは、対象物を1,000℃以上の高温に加熱できます。投入電力の85%以上が赤外線に変換されて放射される高効率な放射加熱源です。熱容量の小さなフィラメント (タングステンなど) を発熱体とするため、非接触で素早くヒータの昇降温ができます。

非接触加熱であり、熱源からのガス放出の影響を受けずクリーンな環境を保ち、大気中や真空中などの加熱雰囲気は選びません。高出力であるにも関わらず小型で軽量なため、狭い場所でも設置することができます。

ヒータを使用して、水や空気などを配管の途中で加熱するヒータもラインヒータの1つですが、本記事では主にハロゲンランプを使用したヒータについて説明します。

ラインヒータの使用用途

ラインヒータは他の熱源と比べて、非接触で素早く昇降温の制御ができます。そのため、半導体デバイスの製造プロセスや樹脂素材、機械材料の部分加熱などに用いられます。

大気圧から高真空まで使用できるため、半導体では、酸化膜形成やイオン注入後の活性化を行うことが可能です。また、熱可塑性樹脂の加熱源としても使用できます。自動車製造では、シャーシなどの自動車のパーツを作る鋼板の熱成形などが用途です。

その他、太陽電池モジュールのタブストリング工程、真空中や高純度ガス雰囲気内での加熱、ソーラセルパネルのハンダ付けなどにも使用されています。また、各種フイルムの製造工程、樹脂シート裁断時の補助加熱、曲げ加工の予備加熱、コンベアラインの熱源などにも有用です。

ラインヒータの原理

ハロゲンランプは、電球内部に窒素やアルゴンに加え、微量のハロゲンガス (臭素やヨウ素など) を加えたランプのことです。ハロゲンランプの内部にはタングステンなどのフィラメントが挿入されており、電流を流すことでフィラメントが発光します。

フィラメントからはタングステン原子が蒸発しハロゲンガスを封入することで、タングステン原子とガスが結合し、ハロゲン化タングステンを形成します。形成されたハロゲン化タングステンはフィラメント付近で、再びハロゲンとタングステン原子へと解離するサイクルを生み出し、定常的に稼働可能です。

フィラメントから発せられた赤外光は、ミラーを用いて集光あるいは平行光へと変換され、対象物へ照射されます。対象物を1,000℃以上の高温に加熱することが可能なため、高強度の赤外光による非接触加熱が実現されます。

ラインヒータの種類

ラインヒータには、ハロゲンランプを使用するヒータと、ヒータを使用して配管中の空気・ガス・液体・スチームなどの加熱を行うヒータがあります。

1. ハロゲンラインヒータ

ハロゲンランプの光を集光したヒータです。ミラーで集光するタイプと平行光タイプがあります。ミラーで集光するタイプは、焦点距離が20~100mm程度の各種類があります。焦点距離が短いほど加熱温度は高くなります。

冷却方式には、自然冷却、空冷式、及び水冷式があります。長物の樹脂ロールなどを溶断するための加熱・予熱や、工場でのラインで一定時間加熱する用途及び半導体の製造ラインなどに適しています。ラインヒータを並べて使用すれば、面加熱も可能です。

2. 配管のラインヒータ

空気・ガス・液体・スチームの加熱に使用するヒータです。配管の途中にラインヒータを挿入することで、簡単に加熱ができます。コンプレッサー・ファン・ブロワ-・ボイラーに直結しても使用可能です。

屋内型・屋外型・端子冷却型の3つのタイプがあります。いずれも、本体のケースにヒータエレメントを挿入し、流体を入口から出口へ流して、ヒータと熱交換させます。温度コントロールと過熱防止用の熱電対などを取り付ける差込口が付いています。

使用例は、水熱源ヒートポンプ式チリングユニットや温水ボイラーの暖房能力の補助用途です。空調機への配管の途中にラインヒータを設置して温水の温度を上げます。

参考文献
https://sky.senden.co.jp/ebook/pdf/14.pdf
http://fintech-east.com/product30.html
https://www.ushio.co.jp/jp/products/1071.html

メッシュパレット

メッシュパレットとは

メッシュパレット

メッシュパレットの基本的な構造

倉庫内や建築作業現場などで、金属製の網で出来た箱に荷物を入れて運搬しているのを目にしたことがあるかと思います。

その金属製の網で出来た箱は、メッシュパレットと呼ばれる輸送容器で、金属製の網状の板を組み合わせて構成されており、箱の形状であることから、メッシュボックスやメッシュコンテナ、網カゴとも呼ばれます。また、パレティーナや網パレットなどとも呼ばれています。

メッシュパレットの基本的な構造は、図1に示すように、金属製の網状の板を組み合わせて搬送台となる部分に対向する上面が開口部となっている構造です。

メッシュパレットの基本的な構造

図1. メッシュパレットの基本的な構造

箱状であることから、内部に荷物を収納して、荷物の運搬や保管および整理などに使用されます。金属製の網で出来ているため、軽量かつ堅牢であり、荷物を運搬する際の荷役台(パレット)としても、荷物を運搬や保管する際のコンテナとしても、商品をそのまま保管および陳列できるラックとしても利用される非常に便利な輸送容器です。

メッシュパレットの仕様

メッシュパレットには様々な仕様があります。大きさは、高さ、幅、奥行きで決まりますが、どのメーカーも大体同じようなラインナップを取り揃えています。

メッシュを構成する金属網の網目のピッチの大きさは、基本的に、25×50、50×50、50×100(mm)の3種類です。ピッチが細かいほど丈夫であるというメリットがありますが、ピッチが細かいほど重さが重くなることとコストもかかるデメリットもあります。

基本的な構造は図1に示したように、上面が開口している箱状ですが、図2aに示すように側面が折り畳み構造となっていて、図2bに示すように折りたたんで平らに出来るタイプもあります。

折り畳めるタイプのメッシュパレットの構造

図2. 折り畳めるタイプのメッシュパレットの構造

このように折りたためるタイプは、使用しない時は折りたたんで重ねて保管できるため、非常に便利です。また、折りたたんだ状態であれば、複数のメッシュパレットの移動も比較的容易です。

折りたたむタイプの中には、搬送台底面脚部を重ねやすい構造にし、重ねたときに安定する様にしたものもあります。搬送台の下側にフォークリフトの爪を入れる挿入口を設けたものやホイストクレーンに対応するものもあります。さらには、クレーンでの吊り上げに対応するのは、上蓋がついているタイプや、図3に示すような吊り金具がついているタイプです。

吊り上げに対応するタイプのメッシュパレットの構造

図3. 吊り上げ対応するタイプのメッシュパレットの構造

さらに、搬送台部分にキャスターがついているものもあります。キャスターがついているタイプは、押すだけで容易に移動できるのがメリットで、キャスターの位置や個数によっても使い勝手が変わるのも特徴です。

一方、キャスターがあることで安定性が下がるので、段積みして保管する際には高さに制限があります。

まとめ

メッシュパレットは、パレットとしてもコンテナとしてもラックとしても使える非常に便利な荷物輸送容器です。メッシュパレット一つで三つの用途に対応できることから、コストの削減にもつながります。箱状なので、金属や食品、書籍など、積み荷の種類や形状も選ばず、特に重量物を積載する向いています。

メッシュパレットは、本体の大きさ、網目の大きさ、耐荷重などの基本特性のほか、折りたためるタイプかどうか、キャスターの有無や位置、吊り下げるタイプかどうかなど様々な特性を持ちます。これらの特性を運搬する製品や使用用途、業務効率および予算と照らし合わせてメッシュパレットを選択して使い分けることが必要です。

なお、メッシュパレットにはメッキが施されていますが、運搬時、フォークリフトの爪などが当たり傷がつき、そこから徐々に錆びていきます。そのため、積載物を汚さず安全に運ぶためにも新品を使うことが推奨されます。 

マットスイッチ

マットスイッチとは

マットスイッチ (英: Mat Switch) とは、人が踏んだことを検知するマット状のスイッチです。

物理的な接触を利用してスイッチング動作を行うデバイスの1種です。マットスイッチはボタンやスイッチを押す必要がなく、単にマット上に立つだけで操作ができます。特に、手や指の制約がある場合や手を使うことが難しい状況でも利用できます。

また、形状やサイズが柔軟にカスタマイズできるため、さまざまな応用に適応可能です。特定の環境や用途に最適なマットスイッチを製作できます。

マットスイッチの使用用途

マットスイッチはさまざまな産業・用途で利用されます。以下はマットスイッチの使用用途一例です。

1. 工場・製造業

作業員や機械の安全を確保するためにマットスイッチが使用されます。作業員が特定のエリアに立つとマットスイッチが作動し、周囲の機械やコンベアなどの動作が停止する仕組みです。これにより、作業中の事故や怪我を防止することができます。

また、機械やロボットの操作やトリガーにも使用されます。機械のスタートボタンとしてマットスイッチを使用することで、作業員がマット上に立つと機械の動作が開始されるようになります。手を使わずに機械を制御することが可能です。

ライトカーテンやレーザースキャナのように指定した空間をスキャニングするセンサとは異なり、床面に対する負荷荷重のみを検知します。したがって、ロボットアームなどの可動部を誤検知する心配が無く、例外処理が不要であり比較的簡単に導入することが可能です。

2. 防犯

マットスイッチを床に敷き詰めることで、特定のエリアを監視することが可能です。例として、建物の出入口や窓の周りにマットスイッチを配置し、不正な侵入を検知することができます。マットスイッチが踏まれると警報が発生し、セキュリティスタッフやオーナーに通知される仕組みです。

金庫や出入り口等への侵入を検知する防犯システムなどに用います。貴重品の展示場や博物館などでも重宝されます。また、金融機関のカウンターにマットスイッチを設置し、スタッフが踏むことで緊急通報が発信される仕組みを構築することも可能です。

3. 医療・リハビリ

医療やリハビリの観点からマットスイッチを使用することもあります。手術室などの医療環境では、清潔さと衛生面の重要性が求められます。マットスイッチによってエアーカーテンなどを制御して、衛生管理に寄与します。

また、リハビリに使用されることもあります。患者がマットスイッチを踏むことで信号が発生し、歩行のパターンやステップの長さなどを評価することができます。また、マットスイッチを使用して歩行補助装置やロボットを制御することもあります。

マットスイッチの原理

マットスイッチは、ゴムなどの柔軟性のある素材で作られたマットの内部に感圧センサーを敷き詰めた構造です。マットは柔軟で耐久性のある素材で作られるのが一般的で、ゴムやシリコンが使用されます。マット素材は踏まれたり圧力を受けたりすることで変形し、下部の感圧部分へ圧力を伝えます。

感圧センサーには、テープスイッチが使用されることも多いです。人がマット上に足を踏み入れると、テープスイッチのビード部が変形し、スイッチがON状態になります。

安全装置として使用されることもあるため、テープスイッチは2線式ではなく断線状態の検知が可能な4線式が採用されることが多いです。これにより、フェイルセーフ設計 (故障時に安全側に動作する設計) が可能です。

マットスイッチの選び方

マットスイッチを選定・導入する際には、応答時間と設置面積などに注意が必要です。

1. 応答時間

マットスイッチ自体の応答時間は、数十ミリ秒以下と微小なことが多いです。ただし、安全用途などでは高い感度と素早い反応が求められます。必要な感度と反応時間を考慮し、仕様に適したマットスイッチを選びます。

2. 設置面積

人検知用のマットスイッチを誤って飛び越えてしまい、誤不動作する可能性もあります。必要な面積や配置の制約を考慮し、適切なサイズと形状を検討します。

参考文献
https://www.ojiden.co.jp/matswitch/
https://www.skdenshi.co.jp/matswitch

マグネットスイッチ

マグネットスイッチとは

マグネットスイッチ

マグネットスイッチとは、電磁石によって接点の開閉を切り替える電磁接触器と、過負荷時に回路を遮断するサーマルリレーを組み合わせたスイッチのことを指します。「コンタ(マグネティック・コンタクタの略)」や「マグネット」と呼ばれることもあります。

負荷に対して電力を供給する回路において、過負荷(過電流)時に負荷の保護装置として機能します。

類似の保護装置としてブレーカがありますが、ブレーカーが電線を保護して短絡事故を防ぐのに対して、マグネットスイッチは負荷に対する過電流を防ぎます。

マグネットスイッチの使用用途

マグネットスイッチは過電流時に動力を遮断する装置であり、定格出力の10数倍程度の電流の遮断が可能です。

この機能は主にモータの保護に利用され、断線や接点の接触不良などによるモータの欠相状態(本来3相で運転されるモータが単相で運転されている状態)を素早く検知し運転を中止させることで、過負荷によるモータの故障を防ぐことができます。

マグネットスイッチには通常主接点が3つあり、3相モータの保護に用いる場合にはスター結線やデルタ結線のコイルに接続されます。

マグネットスイッチの原理

マグネットスイッチは電磁接触器とサーマルリレーから構成されています。サーマルリレーは電流を熱で感知し過電流時にはトリップ状態になります。サーマルリレーのb接点出力を電磁接触器の電源に入れておくことで、過電流時には接点が開き電源が遮断されます。また、a接点出力は異常表示などに接続して利用することができます。

サーマルリレーが空冷されてからリセットボタンを押すと電源は復旧しますが、過負荷状態が継続していれば即座に再度電源が遮断されます。

電磁接触器には、接点の溶着を確実に検知するためにミラーコンタクトが要求されます。ミラーコンタクトとは主接点(通常使用する接点)が一つでも閉じている場合にはN.C.(ノーマルクローズ)である補助接点は開いていることが保証された機能です。ミラーコンタクトであることにより、コイルがOFFの(接点を閉じようとしていない)場合に補助接点が開いていれば主接点が溶着していると検知することができます。

参考文献
https://t-denso.com/archives/214
https://www.fujielectric.co.jp/fcs/feature/magnet.html
https://www.osako-electric.co.jp/glossary/3978/

ポンプパッキン

ポンプパッキンとは

ポンプパッキンはポンプに使われているパッキンを指し、主にグランドパッキンに該当します。ポンプはケーシング、モーター、軸、軸受、羽(歯車やベーンなども含む)、軸封などで構成されています。その中でもポンプパッキンは軸封に当たります。

ポンプのケーシングの中に軸が通っており、その軸の先端に羽や歯車といった回転体がとりついています。それが回転することで液を圧送します。ケーシングと軸の隙間を埋めるために使用するのがポンプパッキンです。

ポンプパッキンの使用用途

ポンプパッキンはケーシングの中に軸が通っているポンプであれば、全てのポンプに使用されています。ただしケーシングの中に軸が通っていないポンプも存在します。それがマグネットポンプです。

マグネットポンプは軸の先端にマグネットが付いており、またケーシングの中の回転体にもマグネットが付いている構造をしています。軸をつなぐのではなく、磁力で結びつくことで回転を生み出すためポンプパッキンが必要ではなくなります。

ポンプパッキンの原理

回転機器を用いる際、ケーシングの中に軸を通すことで生まれる隙間が問題になります。これを塞ぐのがグランドパッキンです。各機器のスタッフィングボックスに詰め込んで使います。詰め込んだグランドパッキンを、パッキン押えを用いてボルトで締め込んでいきます。パッキンが軸表面を押し付ける力がシール力となることで液漏れを防ぎます。

完全に漏れを無くしてしまうと回転する軸表面との摩擦によりパッキンが焼き付いてしまいます。そこである程度の締め加減で締め込むことで一定量の液を漏れさせながら使用します。つまり使用する液が潤滑剤となっています。こうした原理上の関係から、一般には水系ポンプなどで用いられ、発火性や毒性を持つ有害な液では使用することができません。

グランドパッキン使用の問題を解決できない環境ために使われるのがメカニカルシールです。回転環と固定環を用いて互いに摺動しながらスプリングによって押さえつける機構です。許容漏れ量は5.6g/hと漏れが少なくなっています。

参考文献
http://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/a3c.html

ポリエチレン管

ポリエチレン管とは

ポリエチレン管

ポリエチレン管とはポリエチレン(図1)で作られた配管です。ガス配管や化学プラントにおける薬液配管、水道用の給配水管などに使用されます。

ポリエチレンは耐候性および耐薬品性に優れるため、鉄配管で認められるような錆の発生による赤水の心配がありません。また、ポリエチレンは樹脂材料であるため柔軟性があり、地震などの災害に強い埋設配管網を構築できるメリットもあります。ポリエチレン管の主要メーカーとしては、樹脂材料の製造・加工を得意としている積水化学工業が挙げられます。

ポリエチレンの構造

図1. ポリエチレンの構造

ポリエチレン管の使用用途

ポリエチレン管は主に水道やガスを配送するためのインフラとしての配管として近年注目を浴びています。錆びにくく水質衛生性に優れることから配水用管として、また赤錆による管内の閉塞が発生せず、化学的に安定していることから下水管として、さらには軽量で迅速な施工が可能なことから空調配管用としてなど、配管であれば高温流体を除くあらゆる用途で使用することができます。

加えて、95℃以下の給湯用程度の温度であれば架橋ポリエチレン管を使用することで、長期間劣化すること無く使用可能です。

ポリエチレン管の特徴

ポリエチレン管は従来から埋設管に使用されてきた鉄配管と比較して、錆の心配がない点、腐食性の土壌や塩害地域でも腐食しない点、電気絶縁性に優れるため電食の心配がない点、スケールの付着による管閉塞が起きにくい点などが優れています。

また樹脂材料であることから、軽量で運搬や施工を効率化できる点、簡単に曲げることができる点、柔軟性があるため地震に強い点などがメリットとなります。

ポリエチレン管の管接合としては、融着式継手接合、メカニカル継手接合、電気融着式接合が挙げられます。融着式継手接合においては、ポリエチレン管の管側の挿し口と継手側の受け口を加熱機で加熱して溶かし、これを接合します。

本法は加熱温度の制御が必要となるため専用の加熱機の使用が望ましく、施工性という意味ではやや問題もあります。この難点を克服した手法として、電気融着式接合の一種であるEF(エレクトロフュージョン)が挙げられます。

本法は、操作の簡便さという観点で非常に優れた手法であり、電熱線が内蔵された継手に通電する事で加熱処理がなされ、これにより管と継手を同時に溶かして融着させることで、完全に一体化した接合部が完成します。

以上のような数々の利点から、ポリエチレン管は従来の鉄配管の代替として導入されることが多く、近年社会的に重要視されている災害に強い街づくり、ひいては持続的可能な社会の実現に向けて期待されています。

ポリエチレンのその他情報

1. ポリエチレン二層管

ポリエチレン二層管は、耐候性の高い外層(ポリエチレンにカーボンブラックを含む層)と耐塩素水性の高い内層(ポリエチレンナチュラルの層)の二層構造で構成されたポリエチレン管であり、主に給水管、排水管、仮設配管などの水道用途で幅広く展開されています。

柔軟性に優れるため地盤沈下や地震等に対して柔軟に追従します。また、化学的安定性に優れるため埋設する土壌に対しても腐食の心配がありません。

さらには、有害な添加物が使用されていないので衛生面でも優れています。この点に関しては、サビの発生がなく、スケ-ルの付着が極めて少ないため、水質保持と衛生面でも飲料水用配管として最適です。

本配管は管内面が非常に滑らかであり、摩擦抵抗が小さいためスケールの付着が極めて少ないという特徴があります。そのため、経年による流量低下が非常に少ないという優れた特性を有しています。

2. ポリエチレン管と塩ビ管の違い

どちらもプラスチック素材の配管であるため、これらの両素材は混同して理解されがちですが、その特徴と用途は異なるので注意が必要です。

本記事の冒頭で説明したように、ポリエチレン管はポリエチレン製の配管であり、柔軟性に優れるため、地中に埋設した場合の耐震性に非常に優れています。

一方で塩ビ管とは、ポリ塩化ビニル製の配管であり、一定の柔軟性は有しているものの、その程度はポリエチレン管には及びません。

ポリエチレンとポリ塩化ビニルの構造の違い

図3. ポリエチレンとポリ塩化ビニルの構造の違い

3. ポリエチレン管の耐用年数

ポリエチレン管は耐用年数が長いことで知られています。

国内においては100年以上の耐用年数を有した水道管路が要望されており、水道配水用ポリエチレン管路に対しても高い耐久性が求められています。この点に関する調査例としては、配水用ポリエチレンパイプシステム協会(POLITEC)の2013年の報告が挙げられます。

この調査では、内圧・外圧に対する検証、地震(耐震性)に対する検証、残留塩素(耐塩素水性)に対する検証について検討されました。

その結果、いずれの検証においても、定められた想定条件下において100年を上回る結果が得られており、水道配水用ポリエチレン管路が100年以上の寿命を充分に有していることが示されました。

4. 高密度ポリエチレン管

高密度ポリエチレン(密度が0.942~0.970のポリエチレン)を原料とするポリエチレン管は、耐衝撃性と可とう性(折れ曲がり、たわむ特性)に優れており、地震による地層のずれや地盤沈下に追従して屈曲する特徴を有します。

そのため、災害時でも破損しにくい管材です。このような物性上の優れた特徴から、道路縦横断排水管、水路改修工事、小規模水路管渠化工事、雨水排水各種工事、産廃処分場排水管など、土木、農業、鉱業などの分野で活用されています。

参考文献
https://www.eslontimes.com/system/category/94/
http://www.jppe.org/about/index.html
https://www.inoac-juukan.co.jp/product/product?pageid=1020101
http://www.jppe.org/pdf/20131121_seko_handbook.pdf
http://politec.gr.jp/ad/wordpress/wp-content/uploads/2016/12/web100tei.pdf
https://www.kuripoly.jp/product/kurimoto_kp_press/

ポストパレット

ポストパレットとは

ポストパレットは折りたたみパレットと同義で、段重ねできる簡易ラックのことです。

四隅に柱が固定されており、折りたたんでコンパクトになるタイプと、柱が着脱可能で柱を取り外して積み重ねることでコンパクトになるタイプのものがあります。保管から輸送まで荷物を積載したまま対応可能です。不要な時はネスティングしておけるので場所を取りません。

製品を直接積載することができるので荷姿自由であり、建築金物(ドア、サッシ)・ロール物(繊維製品、フィルム)といった長尺部材に最適です。 

ポストパレットの使用用途

ポストパレットは、パレットとラックの機能を併せ持ったパレットです。荷物を積載したまま移動できるので、保管から輸送までこれ一つで行えます。多段積みすることで空間を効率的に利用して製品の積載・保管ができ、使わない時は支柱を折りたたむ(または取り外す)ことで約四分の一のサイズになります。さらにポストパレット同士を積み重ね、コンパクトに収納しておくことが出来ます。

積載する荷物の形状は自由であり、特に長尺部材が適しています。 

ポストパレットの特徴

ポストパレットは、パレットの四隅に支柱(ポスト)がついた構造をしています。金属製であり、耐荷重1000kgが基本です。耐久・堅牢性に優れ、耐候性にも配慮されている製品が多いです。

支柱は取り外し可能なタイプと固定タイプがあり、使わない時はネスティング(何らかの構造内に別の構造を入り込ませるという意味の保管方法を指す)して保管します。支柱を取り外して保管するタイプの方が綺麗に真上に積み上げられますが、固定タイプは支柱の脱着という工程を省けます。これにより保管スペースの節約と共に配達の戻り費用も減らすことができます。

ポストパレットと似た機能を持つものにネスティングラックがあります。製品を通常のパレットに積載して保管している場合にはネスティングラックが有用です。ただし、ネスティングラックはトラックに積み込む時に効率が悪く、保管から輸送まで荷物の移動なしに対応できるのはポストパレットの利点といえます。 

参考文献
https://www.tanasize.com/products/postpallet/

ホットメルト接着剤

ホットメルト接着剤とは

ホットメルト接着剤

ホットメルト接着剤はホットメルトという接着方法に使用される接着剤で、加熱すると溶解し、冷えて固化する時に接着作用を引き起こします。接着剤中に溶剤を含まないため、安全性が高く、一般家庭でのDIYの材料として使用されています。

ホットメルト接着剤の形状としては、ホットメルト接着剤の周りに非接着フィルムを巻いた枕のようなタイプや、スティックタイプやブロックタイプや離型紙と呼ばれる非接着性の紙に入れた容器タイプなど様々です。この接着剤を利用するときはアプリケーターという加熱機器を使用して、加熱溶融させます。

ホットメルト接着剤の使用用途

ホットメルト接着剤は安全性が高いことから、最近は格安ショップでもグルーガンという名前で販売されるようになり、家庭のDIYでより身近な製品となりました。このグルーガンは、スティックタイプのホットメルト接着剤を銃のような射出機に入れ、必要量だけホットメルト接着剤を射出して使用する仕組みです。

また安全性が高いことから、食品関連にも使用されており、紙パックの飲み物についているストロー袋を接着する時などにも使われています。その他、剥がすのが容易な特性のホットメルト接着剤は、物流分野での商品ラベルの貼り付けなどに好適です。

ホットメルト接着剤の原理

ホットメルト接着剤を使うには、まず融点である120℃程度の温度まで加熱し、溶解させて液体にします。この時、被接着物の接着面を濡らし、行き渡らせることが可能な程度の粘度の液体にすることが重要です。

液体となったホットメルト接着剤は、被接着物の接着面の間に広がり、凹凸面に入り込み樹脂膜を形成します。塗布されたホットメルト接着剤は空気により冷却されて、一定温度まで下がるとホットメルト接着剤の固化が開始されます。その際に分子レベルの物理吸着が起こって接着されるのが、ホットメルト接着剤の接着原理です。

このように、ホットメルト接着剤では化学反応は伴わないため、ホットメルト接着剤を構成する樹脂の物性が変化してしまうことはありません。また、ホットメルト接着剤内部だけで接着が終了するため、被接着物に影響を及ぼすことはなく、ポリプロピレンポリスチレン、木材、ガラス、鉄、ステンレス、アルミニウムなど様々な材料を接着できます。

ホットメルト接着剤の特徴

ホットメルト接着剤の一番の特徴は、溶剤を使用しないため「環境に良い」ことです。通常の接着剤は溶剤に溶かした状態で使用し、溶剤が揮発することで接着性能を持たせるため、環境に悪いとされています。一方、ホットメルト接着剤は前述したように、熱をトリガーとして物理吸着するため、溶剤が不要で環境に良いとされています。

また、ホットメルト接着剤においては、接着速度が秒単位と非常に迅速です。一般の接着剤は、溶剤や水に溶かした状態で使用し、これらが揮発あるいは化学反応を起こして固化することで接着します。一方、ホットメルト接着剤は「加熱溶融−冷却固化」のサイクルによって接着します。この時、ホットメルト接着剤の冷却固化の速度は一般の接着剤の化学反応よりも速く、ホットメルト接着剤は一般の接着剤と比べて迅速な接着が可能です。

ホットメルト接着剤の種類

ホットメルト接着剤としては、オレフィン系のホットメルト接着剤やゴム系ホットメルト接着剤が一般的です。

1. オレフィン系のホットメルト接着剤

オレフィン系のホットメルト接着剤は、一般的な工業用接着剤での接着が難しい材料と近い物性を持ちます。このため、当該材料よりなる被接着物の接着に有効です。

2. オレフィン系のホットメルト接着剤

ゴム系ホットメルト接着剤は液体の接着剤を使用すると、被接着物に浸透してしまう場合に使用されます。ホットメルト接着剤を使い分けることで、幅広い材料の接着に対応可能です。

ホットメルト接着剤に類似した熱溶融型の接着剤としては、にかわが挙げられます。にかわの主成分は、ゼラチンです。区分できるよう、ゼラチンは主に食品や医薬品に用いられる純度の高いもの、にかわは工芸品や日本画の画材などに用いられる純度の低いものとされています。熱することでゾル化し、冷やすことでゲルとなって固定化する性質をもっています。

ホットメルト接着剤のその他情報

ホットメルト接着剤のメリットとデメリット

ホットメルト接着剤の特徴の基本的なメリットとデメリットをまとめます。メリットとデメリットは以下の通りです。

メリット

  • 短時間で接着可能
  • 接着する材料として各種に適用可能
  • 無溶剤なので安全性が高い
  • 再加熱により溶融再利用可能
  • 容易に保存や保管ができる
  • 接着工程を容易に自動化可能

デメリット

  • 接着の耐熱性に限界がある
  • 一般的な硬化型接着剤と比べ接着強度が低くなる
  • 過熱溶融を行うため耐熱性の低い材料には不向き
  • 気温によって接着性が変動する
  • 使用に専用のアプリケーターが必要

参考文献
https://www.rextac-asia.com/column/products/hot-melt-type/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/42/11/42_11-5/_pdf/-char/ja

ベントフィルタ

ベントフィルタとは

ベントフィルターとは、タンク内に流入する空気を濾過し、無菌・無じん化するフィルター装置です。クリーンエアが必要とされる半導体工業や医薬品、ファインケミカル、飲料、化粧品工業に使われています。一般的には0.2μm程度の微粒子を高い性能で捕捉します。フィルターの素材は、ポリプロピレンフッ素樹脂系がよく用いられ、オートクレーブで殺菌することで繰り返し使用することができます。また、フィルターを取り付けた状態でタンク内にスチームを通すこともできます。

ベントフィルタの使用用途

ベントフィルターは、半導体工業や医薬品、ファインケミカル、飲料、化粧品工業などで無菌・無じん化用途に利用されています。食品や医薬品分野では真空凍結乾燥や医療器具等の殺菌などが行われますが、その際に多量の空気が流入します。この流入した空気のクリーン化は必須であり、ベントフィルターが活躍しているシーンの1つです。ベントフィルターにも様々な種類があるため、タンクの種類や使用目的、除去物質に応じて適切に選択する必要があります。

ベントフィルタの特徴

ここではベントフィルターの使用例や使用上の注意点を説明します。ベントフィルターは内部環境の無菌性維持に利用されますが、使用目的は各方面に及びます。

  • 細胞増殖及び代謝間に生成されるガスの平衡化
  • 真空ポンプやライン、電子機器へのエアロゾルや液体の侵入阻止及び保護
  • 精密機器等の装置への空気やガスの濾過
  • バイオリアクタ内部の最適な環境下を維持するため、悪影響を及ぼす微生物や微粒子の空気もしくはガスの濾過

以上のような目的で使用されています。ただし、使用目的に応じてベントフィルターを決定しなければ、所望の効果を期待できません。フィルターの素材や孔径によって濾過速度や除去可能な物質が異なります。濾過速度はフィルター面積に依存するため、フィルター装置の構造設計も重要になります。また、粒子や飛沫を効率よく捕捉できる能力も必要で、バクテリアの除去も必須性能になります。これに加えてオートクレーブ等での殺菌に耐え得る性能も必要になります。

参考文献
https://eikoh-filter.com/wp/wp-content/uploads/2019/09/vent.pdf
https://eikoh-filter.com/vent-filter/#vent1

プレートリーダ

プレートリーダとは

プレートリーダ

プレートリーダー (マイクロプレートリーダー) とは、マイクロプレートに注入した複数サンプルの吸光度または発光強度を同時に測定できる装置です。

サンプル数はマイクロプレートのウェル数にもよりますが、一般的には数十以上のサンプルを同時に測定できるため、作業効率を大幅に向上させることが可能になります。化学や生物学の研究に使用されますが、中でもタンパク質の定量によく利用されます。

作業効率の向上が期待できる反面、微小量の測定になるため誤差が発生しやすく、特徴を把握して用いることが重要です。

プレートリーダの使用用途

プレートリーダーは、化学や生物学の分野でタンパク質の定量や細胞増殖の指標とする紫外・可視光領域の吸光度の測定や、発光反応、あるいは蛍光を利用した濃度測定で使用される装置です。

以前は多くの実験において放射性物質を用いて濃度測定を行うことが広範に行われていましたが、近年発光反応の基質や蛍光プローブの研究が進展したことで、実験方法の置き替わりが生じています。このような実験方法の変化により、現在では放射性物質を使用することなく、安全に濃度測定をすることが可能です。

プレートリーダーは、主として一度に多くのサンプルを扱う際に利用され、作業効率の向上と研究者の負担軽減に寄与します。また、吸光度測定には前処理を必要とする場合や、吸光度の時間変化を追跡することが必要となる場合があります。しかし、多くのプレートリーダーでマイクロプレート中で反応を行い、一定時間後に測定することや時間経過とともに測定することが可能です。

プレートリーダの原理

プレートリーダーは吸光度測定や蛍光測定などが可能であり、それぞれ測定の原理や特徴、注意点が異なるため2つに分けて説明します。いずれにおいても、単色 (単一の波長) の光を照射する必要があり、波長の選択には光学フィルターまたはモノクロメーターを用います。

1. 吸光度測定

マイクロプレート中のサンプルに任意の波長の光を照射し、その反対側でサンプルを透過した光の強度を測定することで吸光度を求めます。吸光度を求めることができれば、ランベルト・ベールの法則により吸光度は濃度に比例するため、濃度既知の検量線サンプルと比較することで濃度未知サンプルの濃度を決定することが可能です。

ただし、マイクロプレートに傷や汚れが付着している、サンプルに気泡が入るなどすると正しい吸光度が測定できなくなり、本来の値よりも大きくなることがあります。

2. 蛍光測定

マイクロプレート中のサンプルに特定の波長 (励起波長) の光を照射することで、サンプルから発せられる特定波長の蛍光の強度を測定します。これは特定の波長帯を吸収することで励起状態へと変化し、基底状態へ戻る際に、エネルギーを放出する蛍光物質の性質を利用しています。

このエネルギーは、熱と光として放出され、いずれも濃度に比例するため、光を検出することで定量が可能です。サンプル中の特定の化学物質自体が発する蛍光を検出しているため、高感度・高精度で測定できる特徴を持ちます。

プレートリーダの選び方

プレートリーダーは、マイクロプレートに収めたサンプルから光学的情報を読み取る装置の総称であるため、実施しようとする測定法 (可視・紫外吸光、発光、蛍光のいずれであるのか) に対応したものを選択することが大切です。まず測定原理に吸光・発光・蛍光の別があり、複数の測定原理を切り替え可能なマルチモードタイプと呼ばれるものもあります。

光源の波長範囲や設定できる測定波長についても、実現したい測定に適合しているかの観点で確認します。次に、装置と付属ソフトウエアで実現できる測定・解析方法にも注意が必要です。

酵素反応を追跡する場合、カイネティックモードが必要な場合があります。また、定量を高頻度に行う場合、解析ソフトウエアで実現したい定量が可能かという観点や、定量機能の操作性も重要となります。

参考文献
https://co-labo-maker.com/equipment/859
https://www.jove.com/v/5024?language=Japanese