シールドケーブル

シールドケーブルとは

シールドケーブル

シールドケーブルとは、信号や電力を伝達する金属導線部分を接地された金属層で覆ったケーブルです。

接地用金属層は薄膜などを編み込む構造が用いられます。導線部分を金属層で覆うことで外部からの電磁波を遮断すると同時に、外部への電磁波漏洩を防止します。

通信・計装分野では高速通信に寄与し、強電分野で安全性確保に重要な構造です。また、多芯線では線間ノイズも打ち消す役割もあります。

シールドケーブルの使用用途

シールドケーブルは、OA機器用LANケーブルやオーディオ機器用スピーカなど、広く用いられます。

これらの使用目的は、外部から発せられる電磁波から機器を保護するためです。対照的に、高圧配電用途にもシールドケーブルは使用されます。これらは、電磁波の発生を防ぐのが目的です。

シールドケーブルの原理

シールドケーブルの主な構成要素は導体、遮蔽層 (シールド) 、絶縁層、シースです。

通常のメタルケーブルは、導体の外側が絶縁層で覆われています。それに対してシールドケーブルは、この導線部分を覆う絶縁層の上からさらに金属薄膜などの遮蔽層で覆われます。

遮蔽層の外側にシースと呼ばれる絶縁被膜で覆い、電線を外環境から保護します。遮蔽層を接地することで、信号ケーブルをノイズから保護することが可能です。また、動力ケーブルにシールドケーブルを使用すれば、発生する電磁波を打ち消すこともできます。

動力ケーブルからの電磁波を打ち消すことは、誘導による感電事故の防止に繋がるため、安全面の観点から使用される場合も多いです。

シールドケーブルの種類

シールドケーブルには、外部からのノイズを防ぐ「静電シールドケーブル」と、電流による磁束が外部機器へ影響を与えるのを防ぐ「電磁シールドケーブル」があります。種類によって遮蔽層の接地方法が異なるので、種類に合った方法でアース接地することが大切です。

1. 静電シールドケーブル

静電シールドケーブルは、やアルミなどの金属テープや、メッシュ状の編み線で芯線を覆ったケーブルです。

これにより、外部からのノイズを吸収してアースに流し、芯線にノイズが入るのを防止します。主に信号用・通信用ケーブルに使用されます。静電シードケーブルの接地方法としては、片端接地が基本です。これは、シールドにリターン電流が流れるのを防ぐためです。

両側をアースに接続した場合は、シールドに電流が流れる可能性が高くなり、電流が流れることでシールドからノイズが発生する危険性があります。また、シールドをアースに接続しない場合は、シールドの効果が得られないだけでなく、シールドに溜まった電荷が何かの拍子で放出されると信号にノイズが生じため注意が必要です。シールドケーブルを使用する場合は、必ず接地するようにします。

2. 電磁シールドケーブル

電磁シールドケーブルは、電流による磁束が外に出ないように鉄と銅で芯線を覆ったケーブルです。

鉄の被覆があるため、曲げや折り曲げに弱いのが欠点です。主に電源ケーブルやモーターなどの大電流が流れるケーブルに使用されます。電磁シールドケーブルを接地する際は、距離により両端接地か片端接地かを選択します。長距離送電の場合は両端接地とし、短距離であれば片端接地とします。両者とも接地配線はできるだけ電気抵抗を小さくすることで、シールド効果を大きくすることが可能です。

一般的には、銅板や銅の杭を地下数mの地点に埋め込み、接地抵抗を低減します。この地下埋設された導体が接地極です。接地極から地表に立ち上げた配線は、アースバーやブスバーと呼ばれる銅のバーに接続します。

参考文献
http://t-sato.in.coocan.jp/terms/shield.html
http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H14/html/H1408B01_.html
http://energy-kanrishi.com/shield/

開閉器/接触器

開閉器/接触器とは開閉器

開閉器・接触器とは、接点を開閉することで電源の供給・遮断を制御する電気機器です。

英語ではスイッチと呼ばれます。低圧回路での代表的な開閉器/接触器は、電磁コイルで駆動する電磁開閉器/電磁接触器です。サーマルリレーが付属する場合は電磁開閉器と呼ばれ、付属しない場合は電磁接触器と呼ばれます。

開閉器/接触器の使用用途

開閉器/接触器は、産業用途として幅広く使用されます。以下は開閉器/接触器の使用用途一例です。

  • ポンプやファンのモーター駆動用
  • 電気ヒーターの通電・停止制御用
  • 産業装置全体のメイン電源制御用
  • 商業施設への高圧電源供給用

低圧モーターを駆動させる際、コイル短絡時に上位回路を保護するための短絡保護と、過負荷時にモーターを保護するための過電流保護を考える必要があります。電磁開閉器のサーマルリレーは過電流保護に適した特性を持つため、モーター駆動制御に多く使用されます。なお、低圧モーターではブレーカなどで短絡保護要件を満たすことが多いです。

低圧電気ヒーターの通電制御には、電磁接触器を使用することが多いです。電気ヒーターが負荷装置を持たず、負荷に応じた電流変化がなくサーマルリレーが不要なことが理由として挙げられます。メイン電源の制御にも、電磁接触器が適しています。

開閉器/接触器の原理

開閉器/接触器の代表例である電磁接触器は、端子、接点、鉄心・電磁コイル、ケーシングなどで構成されます。電磁開閉器の場合は、さらにサーマルリレーが付属します。

1. 端子

端子は配線と接続する部品です。製品によりますが、国内では丸端子で端末処理した配線をビスで堅牢に固定することがほとんどです。海外ではスプリングクランプ端子も多く使用されます。

2. 接点

接点は電気の通り道となる駆動部品です。大電流用途となるほど接点が大きく、または数が多くなります。

電気抵抗を低減目的で、接点には銀合金や金が使用されます。銀合金は電気抵抗も低いため、広く使用されます。金は銀合金よりも酸化しにくい特徴を有しますが、融点が低く高価なので微少負荷向けです。

電磁接触器内の接点には可動接点と固定接点があります。固定接点はケーシングなどに堅牢に固定されます。可動接点は可動鉄心と共に駆動し、固定接点と接触することで電気を通電させます。

低圧の電磁接触器の場合は補助接点を有する場合も多いです。補助接点は主接点と比較して許容電流が低いため、制御回路の状態表示やインターロックに使用します。

3. 鉄心・電磁コイル

鉄心・電磁コイルは制御電源を通電して可動接点を駆動させる部品です。鉄心には可動鉄心と固定鉄心があり、可動鉄心は可動接点と一体化しています。電磁コイルに制御電源を通電すると磁力を帯び、可動鉄心を固定鉄心へ引き寄せて駆動させます。

固定鉄心と可動鉄心は一般的にスプリングを間に引き離されており、普段は引き離された状態です。電磁コイルが制御電源で励磁した場合のみ引き合います。ただし、機械ラッチ式電磁接触器は励磁が終了しても導通状態を維持します。

4. ケーシング

ケーシングは内部の充電部を堅牢に保護しつつ絶縁する部品です。小・中容量の電磁接触器では裏面にDINレールマウント用コネクタが付属します。材料は堅牢で絶縁性の高い合成樹脂などが一般的に使用されます。

開閉器/接触器の種類

開閉器/接触器にはさまざまな種類の製品が販売されています。以下はその一例です。

1. 電磁接触器/電磁開閉器

電磁力で接点を駆動させる接触器/開閉器です。開閉器/接触器の中でも広く普及しており、主に低圧回路で使用されます。

2. 押釦開閉器

押釦開閉器は電磁力ではなく人力で接点を駆動させる接触器/開閉器です。駆動させた接点はOFFボタンを押すまでラッチ機構で保持されます。サーマルリレーは付属しませんが、押ボタン駆動の場合は開閉器と呼びます。

3. 気中区分開閉器

気中区分開閉器は高圧回路を負荷開閉するためのスイッチです。気中負荷開閉器またはPAS(Pole Air Switch)とも呼ばれます。送配電事業者と需要家の責任分界点に設置されることが多いです。

PAS本体は過負荷や地絡の保護機能を持たないため、SOG(Storage Over Current Ground)と共に設置する場合も多いです。

参考文献
https://elec-tech.info/whats-thermal-relay/
https://shimatake-web.com/contactor-difference/

フォトトランジスタ

フォトトランジスタとは

フォトトランジスタ

フォトトランジスタとは、光を検出するための半導体素子です。

フォトダイオードとトランジスタを組み合わせた構造をしています。また、パッケージによって様々な形状のものがあるため、用途に合わせて適切な選択が求められます。

フォトトランジスタの使用用途

フォトトランジスタの使用用途

図1. フォトトランジスタの使用用途

フォトトランジスタは、受光センサーとして幅広く使用されています。特に800nm付近に感度のピークを持つため、赤外線の受光を目的として使用されるのが一般的です。

具体的なフォトトランジスタの用途例としては、「光の強度測定」「赤外線リモコンの受信部」「光電センサー受信部」「光通信」などが挙げられます。特に、テレビやエアコンのリモコンなどで赤外線LEDと組み合わせて使用されることが多いです。

光通信の用途では、インターネットプロバイダから提供されるギガネット光通信サービスがあります。その通信の受光部は通信に最適な高速フォトトランジスタが使用されています。

また、フォトトランジスタは、自動ドアのセンサーとして使用されることもあります。さらに、光を検知して電流が発生することから、光で駆動するスイッチとして用いられるなど、使用用途は幅広いです。

フォトトランジスタの構造

フォトトランジスタの構造

図2. フォトトランジスタの構造

フォトトランジスタは、NPN構造をもつ半導体素子です。このNPN構造によって、フォトトランジスタはフォトダイオードに比べて出力信号が大きく取れるという特徴があります。 (図2 左図参照)

フォトトランジスタのNPN構造は、フォトダイオードの出力をトランジスタで増幅します。半導体のエネルギーギャップに相当する光が入射すると、価電帯の電子が伝導帯に励起します。

これによってN層への移動が起こり、ホールはP層へ移動します。このN層からP層への移動により、接合部で順バイアスがかかり電流が流れる仕組みです。 (図2 右図参照)

フォトトランジスタに利用されるトランジスタは、ベース電極を持っていないのが特徴です。しかし、受光によって発生する光電流がベース電流となり、このベース電流をコレクタで増幅します。

フォトトランジスタの特徴

ベース電流の増幅は、他のトランジスタと同様にhFE (トランジスタの増幅率) 倍です。しかし、フォトトランジスタの特性として、同様のhFE倍であっても、比較的大きなhFEのものが使われるという傾向があります。

これにより、微小なフォトダイオード部の信号を大きなコレクタ電流として取出せますが、コレクタ・ベース接合部では電流が常にリークしており、このリーク電流も増幅されているという点に注意しなければなりません。

つまり、フォトトランジスタは、完全な暗環境であっても微弱な電流が流れている状態です。この暗環境下でも流れている微弱な電流のことを、暗電流といいます。フォトトランジスタで発生する暗電流は、光センサーとしての内部ノイズになります。しかし、この内部ノイズを抑えることは可能です。

暗電流は温度が高い場合には増加し、逆に温度が低い場合には減少していくという特性があります。そのため、この特性を利用して、素子を冷却することにより内部ノイズを抑えることができます。

フォトトランジスタのその他情報

1. フォトダイオードとトランジスタ

フォトダイオードとトランジスタ

図3. フォトダイオードとトランジスタ

フォトダイオードは図3 左図で示すように、光があたると光の強さに応じてIV特性が下側にシフトします (青線が緑線になる) 。このIV特性変化が光の強度を測る目安です。しかしながら、その出力電流はuAオーダなので、そのままの出力では後段の回路が複雑になります。

フォトトランジスタは、フォトダイオードとトランジスタと組み合わせることにより、フォトダイオードで受光したときに発生した光電流をトランジスタの直流電流増幅率hFE倍で増幅することが可能です。そのため、フォトトランジスタの方がフォトダイオードよりも感度がよく、フォトトランジスタの出力電流はmAオーダとなるため、後段の回路の簡素化が実現できます。 (図3 右図参照)

フォトトランジスタの感度は、フォトダイオードの数百倍となり、更に高感度が必要な場合にはダーリントン接続されたフォトトランジスタの使用で、数百倍x数百倍の感度を得ることができます。これにより、数Luxの明るさを検出することが可能です。

2. CDSとフォトトランジスタの違い

CDSとは、フォトレジスタのことです。CDSセルや光導電セルとも呼ばれています。CDSは、受ける照度に反比例して抵抗値が減少します。すなわち、照度が暗いときには抵抗値が高くなり、照度が明るいときには抵抗値が低くなるという特性です。

一般的なCDSの場合、照度が暗いときは約1MΩであり、明るいときには約10kΩと抵抗値が変化します。CDSのメリットは、「分好感度特性が人間の視覚に近い」「構造が簡単」「高感度」「低価格」であることです。CDSは、様々な機器の検出器として用いられています。

例えば、「照度計」「カメラ用露出計」「自動点滅用の明るさ検知用」などです。しかし、CDSの素子として使われている主な材料である硫化カドミウムは、環境に悪影響を与える物質です。そのため、CDSは近年、使用される機会が減りつつあります。

一方でフォトトランジスタは、照度に比例した出力電流が得られます。フォトダイオードとトランジスタが合わさった構造をしているため、高感度というのもメリットの一つです。

参考文献
https://techweb.rohm.co.jp/iot/tech-info/keypoint/3870
https://www.sensor-sk.com/hikari/hika01_hikari.html

フェライト磁石

フェライト磁石とは

フェライト磁石

フェライト磁石は酸化鉄を主成分にしてコバルトやニッケルマンガンと混ぜて作られる磁石です。分子式は、MFe2O4(M = Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Mg, Zn, Cdなど)と表されます。

複合金属Mは、2価の陽イオンが主流であり、M = FeであるFe3O4は黒色で磁鉄鉱と呼ばれる有名な原料です。他にも、複合金属Mが1, 3, 4価の陽イオンであっても、フェライトと呼ばれる化合物が存在します。

製造方法は、粉末のフェライトを押し固めて高温で焼き上げるという方法です。セラミックの一種でもあります。酸化鉄Fe2O4から合成できるため、安価に入手することができます。

特徴は、どんな形にも容易に整形でき加工がしやすいことと、化学的に安定であるためサビや薬品などによる腐食にも強いことです。

フェライト磁石の使用用途

フェライト磁石は、ハードフェライトとソフトフェライトの2種類によって用途が分けられます。

1. ハードフェライト

ハードフェライトとは、一度強い磁石とくっつける(強い磁界を加える)と永久磁石になるフェライト磁石です。日常生活でよく目にする磁石の大半を占めます。U字磁石が代表的です。

他にも小型モーター、スピーカー、ヘッドフォン、カセットテープに使用されます。

2. ソフトフェライト

ソフトフェライトとは、磁界に触れると磁石になり、磁界から離すと磁気がなくなり磁石ではなくなるフェライト磁石です。磁芯として利用されることが多く、トランスやコイルへの応用に適しています。

わかりやすい具体例としては無線機、テレビ、ゲーム機、自動車、パソコン、電子レンジ、掃除機、冷蔵庫に使用されます。

フェライト磁石の原理

フェライト磁石の磁気特性は、ハードフェライトとソフトフェライトで異なります。まずは磁気特性について説明します。図1はそれぞれの磁性のスピン状態を示しています。

1. 磁気特性

  • 強磁性体: 磁界を加えなくても、磁気モーメント(磁石の強さと向きを表すベクトル量)の向きが揃っている物質を強磁性体といいます。
  • フェリ磁性体: 隣り合う原子の磁気モーメントが逆向きだが大きさが違うため、物質全体として磁化を持つ物質をフェリ磁性体といいます。フェライト磁石はすべてフェリ磁性体です。
  • 常磁性体: 磁界がないとき磁気モーメントが様々な方向に向いていますが、磁界を加えると磁気モーメントの向きが揃う物質を常磁性体といいます。

図1. 磁性ごとのスピン状態

各フェライト磁石の種類と特性を図2に示しています。飽和磁化は、磁界を強めても物質の磁化が増大しない最大磁化のことです。またキュリー温度は、強磁性から常磁性に変化する温度のことです。

図2. フェライトの特性

2. ハードフェライト

ハードフェライトは、強磁性体であり永久磁石です。ハードフェライトは、分子が持つ磁極の配向によって等方性磁石と異方性磁石の二種にさらに分類できます。

  • 等方性磁石: 磁気モーメントが、様々な方向に向いています。磁性の配向がバラバラであることから、どの方向からでも着磁できますが磁力は弱くなります。
  • 異方性磁石: 分子の磁気モーメントの向きがそろっているため、指向性が有るものの強い磁力を提供することができます。焼き固める際に磁場をかけることで各フェライト分子の磁極を整列させることで製造されます。

3. ソフトフェライト

ソフトフェライトは、外部から磁場を与えている間だけ磁力を持ちます。ハードフェライトに比べると磁場は小さいですが、広範囲の周波領域で優れた磁気特性を持っています。

例えば、結晶構造がスピネル型のものは、広い周波数の範囲で透磁率(物質が磁化される度合)が高いという性質をもちます。ガーネット型は、マイクロ波の周波数帯で単結晶が壊れにくい性質があります。

アルニコ磁石との比較

アルニコ磁石とは、鉄にアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などの添加元素を加え、鋳造法や粉末の焼結によって製造される磁石です。

アルニコ磁石の特徴は、キュリー温度(永久磁石でなくなる温度)が860℃と非常に高く、高温環境でも使用できることです。室温から400℃くらいまでの温度であれば、常温に戻った際にほぼ元の磁力に回復できます。また鋳造によって製造されたものは機械強度にも優れます。

アルニコ磁石の用途は、電動機、センサ、スピーカーユニットやエレクトリックギターのマグネティック・ピックアップが挙げられます。

フェライト磁石との違い

フェライト磁石は酸化鉄が主成分ですが、アルニコ磁石は鉄を主成分にアルミニウム、ニッケル、コバルトを添加します。アルニコ磁石の磁力の保持力は、小さくて減磁しやすいです。

磁極間を長く取る必要があるため、長尺形状でなくてはならない制限があります。また原料のコバルトの供給が不安定で高価であるため、フェライト磁石の方が安価です。

サマリウムコバルト磁石との比較

サマリウムコバルト磁石とは、サマリウム(Sm)とコバルト(Co)から構成される希土類磁石です。組成比によってSmCo5(1-5系)とSm2Co17(2-17系)の2つに分かれ、現在ではサマリウム量の少ない1-5系が広く利用されています。

サマリウムコバルト磁石の特徴は、キュリー温度が最高で800℃程度と高いことです。耐食性に優れるため、表面処理をせずにそのまま使用できることや、形状の選択性が高いことも特徴です。磁気特性はフェライト磁石より高く、ネオジム磁石に次ぐ高さです。

フェライト磁石との違い

350℃程度の環境まで使用できるため、省スペースな高温環境でフェライト磁石より高い磁力が要求される場合に使用されます。一方で強度が低いため、割れや欠けが発生しやすいデメリットがあります。原料であるサマリウムとコバルトは共に希少であるため、フェライト磁石と比較して非常に高価です。

ネオジム磁石との比較

ネオジム磁石とは、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)、ボロン(B)を主成分とする磁石です。ネオジム磁石の特徴は、酸化しやすいことと熱依存性が高いことです。

酸化しやすいため、表面をニッケルめっき処理してから使用されます。通常80℃未満で使用されます。強度が比較的高いため、割れや欠けにも強いのも特徴です。

フェライト磁石との違い

フェライト磁石と比較して磁気特性が非常に高く、磁力の保持力は約4倍で最大エネルギー積は10倍です。フェライト磁石よりも高価ですが、サマリウムコバルト磁石に比べると安価です。

参考文献
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/051.pdf
https://www.neomag.jp/mag_navi/column/column006.html
http://www.tp-mag.com/jishaku.html
https://www.sii.co.jp/jp/me/dianet/support/features/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kogyobutsurikagaku/30/7/30_519/_pdf/-char/ja
http://www.ferrite.jp/whats_ferrite.html

エアハンドリングユニット

エアハンドリングユニットとは

エアハンドリングユニット

エアハンドリングユニットは、大型の商業施設やオフィス、学校などの特定の大型施設に設置される空調設備です。設備の機能は、一般の家庭でも使われているエアコンと同様です。しかし、中央管理方式によって一元的に制御されているのが、一般的なエアコンとの違いになります。

また、エアハンドリングユニットは、エアコンと違って各部屋に室内機を取り付ける必要が無いため、エアハンドリングユニットだけのメンテナンスで済むといったメリットがあります。逆に、故障すると施設全体で空調が効かなくなるというリスクが発生してしまうため、分散させたりバックアップを用意する対策が必要です。

エアハンドリングユニットの使用用途

エアハンドリングユニットは、特定の用途に利用される面積がある以下のような施設に設置されます。ただし、学校施設に関しては「学校教育法第1条」が関係してくるため、教育法の定めるところによります。特定用途に該当しない場合は、この限りではありません。

・3000平方メートル以上 「オフィス」「百貨店」「興行場」「研究所」

・8000平方メートル以上 「学校施設」「研修所」「旅館」

特定用途に利用される面積とは特定建築物や建築物基準法で定義されており、建築物衛生法によって定められています。これは延べ面積を指しており、建物の床面積の合計値です。床面積の合計値は、敷地面積とは異なるため、建物に各階数がある場合には、その全ての床面積の合計値ということになります。

このような特定建築物では「温度」「相対湿度」「一酸化炭素の含有量」「二酸化炭素の含有量」「浮遊粉じんの量」「ホルムアルデヒドの量」「気流」の室内環境を一定の基準で管理することが建築物衛生法で義務付けられています。

また、引火性の高い物質や揮発性のガスを扱っている産業施設では防爆仕様のエアハンドリングユニットが使用されています。

エアハンドリングユニットの選び方

エアハンドリングユニットの設置を検討する際には、建築物衛生法や衛生管理基準と求める環境を照らし合わせる必要があります。

空気調和設備を設置している場合の空気環境の基準と機械換気設備を設置している場合の空気環境の基準では、必要な設備や維持する環境が異なります。

建築物衛生法で規定されている建築物環境衛生管理基準では、以下のように定められています。

空気調和設備とは「エアフィルタ」「電気集じん等」を用いて外から取り入れた空気などを浄化することで「温度」「湿度」「流量」を調節して供給することができる「機器」及び「附属設備の総体」を指します。すなわち「浄化」「温度」「湿度」「流量の調節」の4つの機能を備えた設備のことです。

機械換気設備とは「外から取り入れた空気などを浄化して、その流量を調節することで供給を行う設備」を指します。すなわち、空気調和設備のもつ機能のうち「温度調節」及び「湿度調節」の機能を欠く設備のことです。

以上のことから、エアハンドリングユニットの設置を検討する際には、上記のどちらに属する設備であるかを考慮しなければなりません。また、空気調和設備に該当している場合には、病原体による空気の汚染を防止するために衛生上で必要な措置を取らなければなりません。該当する項目の例としては「冷却塔や冷却水の設備清掃」や「加湿装置の点検、清掃」などが挙げられます。

エアハンドリングユニットの原理

エアハンドリングユニットは「フィルター」「送風機」「熱交換器」「加熱装置」または「冷水コイル」によって構成されています。

これらのパーツは金属ケースに収められ、専用の機械室に設置されます。

一般的なエアコンとは異なり、冷媒にはガスではなく水を使用します。エアハンドリングユニットでは、各室内からの環気と共に外気を取り込むことで室内の空気を新鮮に保ちます。そして、外気も一緒に取り込むことで室内外の温度差を減らして必要のないエネルギーを使わないようにしています。その後に、取り込んだ空気をフィルターなどを通して浄化します。浄化された空気は、冷房なら冷水コイル、暖房なら温水コイルによって温度の調整がされて各部屋に給気することで、この循環を繰り返します。

このようにエアハンドリングユニット自体が熱交換を行っているため、地下などに設置してしまえば室外機を各部屋に取り付ける必要がありません。そのため、建物の限られたスペースを有効的に活用することが可能になります。 

エアハンドリングユニットは、設置する施設ごとに必要な機能や衛生管理基準の範囲が異なるため、空気清浄機能や加湿機能などのオプションを製造メーカーに受注生産という形で注文しています。

参考文献
https://gyoumuaircon.com/2019/11/27/%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%AF/
https://www.m-system.co.jp/products/ba/ba05_index03.html

インダクションモーター

インダクションモーターとは

インダクションモーター

インダクションモーターとは、交流電流で作動するモーターで電磁誘導によって生じる力を動力に回転するモーターです。

そのため、交流を意味するACを冠してACモーターとも呼ばれます。インダクションモーターは、最も歴史のあるモーターの一つで、単純な構造で特別な電力の変換を行わず、交流電源につなぐだけで動作します。

そのため、高い信頼性と長寿命を併せ持っており、現在でも広く使用されているモーターです。また、レアメタルを含む磁石を使用しないので、低コストで高効率な回転が得られることもメリットの一つです。

インダクションモーターの使用用途

インダクションモーターは、大容量化するほど高効率になるという特性があることから、洗濯機や扇風機など家電製品から工場設備の大型生産設備に至るまで、幅広く使用されています。

また、モーターの特性を変えることで、自動ドアのように大きな起動トルクを必要とするものの動力源として利用されたり、シュレッダーのように高い停動トルクを必要とするものに利用されたりしています。

インダクションモーターの原理

インダクションモーターの原理

図1. インダクションモーターの原理

インダクションモーターは交流電流の違いによって三相モーターと単相モーターの2つに大別されます。

1. 三相モーター

インダクションモーターは、ステータと呼ばれる「固定子」と回転子である「ロータ」によって構成されています。固定子には三相交流を流すコイル巻線があり、ロータには回転磁界からの電磁誘導による電流を流すカゴ型の配線が組込まれていて、固定子に三相交流電流を流すと回転磁場が生じます。

この磁場が導体であるロータ内に組込まれたカゴ型配線を通過するとき、電磁誘導に従った電圧が生じます。これによってカゴ型配線に電流が流れ、固定子からの回転磁場が相互作用することでトルクが得られるという仕組みです。ロータの回転は、固定子が発生する回転磁界速度に漸近しますが決して等しくはなりません。

このときのロータと固定子の回転磁界速度の比を「すべり」と呼び、インダクションモーターのトルク特性を決定する大きな一つの要素です。

2. 単相モーター

単相交流でモータを回転させるためには、回転磁界を発生させる必要があります。そこでコンデンサをモータの補助巻線に組み込んで、主巻線は電源に直接つなぎ、補助巻線はコンデンサ経由で電源をつなぐことで回転磁界を発生させます。

単相交流を主巻線、コンデンサを介して補助巻線につなぐと、補助巻線の電流は主巻線の電流に対して、90°進んだ電流が流れます。これら90°ずれた2つの電流が回転磁界を生み、モータは回転力を得ることができます。

インダクションモーターのその他情報

1. インダクションモーターの回転数

インダクションモーターの定格回転速度は、以下の式で導かれます。

N(rpm) = 120/p(極数) × f(Hz)

この時、pがモーターの極数、fは電源周波数です。極数が少ないほどモーターの回転速度は速くなり、電源周波数が高いほど回転速度も速くなります。日本の商用電源は西日本が60Hz、東日本が50Hzと決まっているため、商用電源でモーターを動かそうとすると、極数に応じた定格回転速度となります。

また、インダクションモーターには滑りが存在し、負荷トルクに応じて回転速度が少しずつ小さくなっていき、実回転数は、滑りをsとすると以下となります。

N(1-s) (rpm)

2. インダクションモーターの速度制御

インダクションモーターの速度制御

図2. インダクションモーターの速度制御

インダクションモーターの定格回転数は先述したように、電源周波数と極数に応じて決まります。ただし、モーターの種類や電源によっては、回転速度を変更することができます。インダクションモーターの速度制御は、以下のような方法で実施されます。

ポールチェンジモーターの使用
ポールチェンジとは、極数を結線方法によって決めることができるモーターです。モーター自体が大型化し、汎用性も低くなるというデメリットがあります。また、極数に応じて段階的にしか回転速度を変化させることができません。

巻線型モーターの抵抗制御
巻線型のインダクションモーターを使用することで、速度制御が可能となります。原理としては、ロータの配線をカゴ型配線ではなく、コイル巻線にしたモータで、その巻線 (二次巻線) に抵抗を介した電流を流すことで滑りが大きくなり、速度を定格からさらに遅くすることが可能です。ただし、抵抗器が必要となるというデメリットもあります。

また、回転しているロータ巻線に電流をながすためのスリップリングを別途必要とするため、部品点数も増え、保守費用も増加してしまいます。抵抗から熱を発するため、エネルギーロスも多大です。

流体継手による回転速度制御
流体継手という、油圧を介して駆動軸と従動軸を繋ぐ継手を使用することで、起動時などスムーズな加速を得ることができます。

流体を介して駆動軸と従動軸を繋いでいるため、負荷変動が大きい場合には流体継手がその変動を吸収します。ただし、リジッドに駆動軸と従動軸を繋いでいないため、油が攪拌され、油が昇温しロスが発生することがデメリットです。

インバータによる回転速度制御
インダクションモーターのインバータ速度制御

図3. インバータによる回転速度制御

現在、インダクションモーターの速度制御はインバータを使用するものが一般的です。固定電圧・固定周波数である三相交流電源をIGBTなどのパワーデバイスを用いた三相ブリッジをスイッチングして制御し、モーターの回転速度を変化させます。周波数と共に電圧を変化させることで、トルクを一定にして駆動させることが可能です。

エネルギー損失も、半導体技術・制御技術の向上により、駆動エネルギーの数%と極めて優秀であり、SDGsが盛んに叫ばれている現在、インダクションモーターの回転速度制御として最も広く用いられています。

参考文献
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00026/
https://web-material3.yokogawa.com/19/15398/tabs/rd-tr-r04502-005.jp.pdf