マイクロスイッチ

マイクロスイッチとは

マイクロスイッチ

マイクロスイッチは、物体の位置を検知して接点出力する部品です。主に検出用スイッチとして使用されますが、操作用として使用される場合もあります。

マイクロスイッチの接点出力を制御回路に組み込み、機械を運転停止させて使用します。マイクロスイッチの接点自体は数A程度の許容電流が一般的です。物体と接する部分にはアクチュエータが付いており、形状はボタン、ローラー、レバー型のものがあります。

マイクロスイッチの使用用途

マイクロスイッチはスナップアクション機構を持っているので位置を検出する精度が高いのが特徴です。

ドアのインターロックや、自動販売機、電子レンジ、エレベータの安全スイッチや産業機器に使用されています。プリンター等の開閉を検知するセンサーにも利用されます。

サイズは一般形~極超小型まで4種類に分類されており、振動や衝撃が激しい場所には逆動作型、直流回路の安定した動作が必要な場合は磁気消弧型、シール性の高い防浸型などが販売されています。産業機器から家電まで用途も幅広いです。

マイクロスイッチの原理

マイクロスイッチは5つの部分に分かれていて、アクチュエータの動きが接点までつながります。

1. アクチュエータ部

外部の力や動きを内部の機構に伝達します。アクチュエータがスナップ動作機構につながっており、形状はボタンやローラー、レバー型などがあります。

2. スナップ動作機構

ばね、可動片、共通端子、受金といった部品で構成されています。アクチュエータからかかる力が増えてくると、可動片とばねにより接点を動かします。

3. 接点

種類としては常開接点、常閉接点があります。一般的に1つのマイクロスイッチに1つずつ付いていますが、片方だけのものもあります。接点にはクロスバー型やリベット型があり、回路の電圧や電流に応じて使い分けます。材質には金や銀、めっきなどが用いられます。

4. 端子

スイッチと回路を接続します。端子の形状ははんだ付け型、コネクタ型、ねじ締め型、プリント基板型等があり、用途に応じて接続方法を選定します。

5. ケース部

ケースは回路と機構を保護する役割をしていて、必要な機械的強度や耐熱性に応じて樹脂を選択します。

マイクロスイッチの使用用途

1. ドアやプリンター開閉のカバー

ドアやカバーの位置をマイクロスイッチで検出します。形状に幅のあるアクチュエータを持つマイクロスイッチを使用されます。マイクロスイッチであれば、限られたスペースにも設置可能です。

2. 食器洗浄機のカバーや洗濯機のふたの開閉検出

カバーやふたの位置をマイクロスイッチで検出します。これらの機器ではマイクロスイッチに水が掛かる恐れがあり、防水対策が施されています。

3. マウスの操作入力

位置検出スイッチとしての役割ではなく、操作スイッチとしてマウスに使用されています。マウスのクリックをマイクロスイッチが検出し、コンピュータに出力します。

マイクロスイッチのその他情報

1. マイクロスイッチとリミットスイッチの違い

マイクロスイッチとリミットスイッチは混同されることの多い部品です。リミットスイッチはマイクロスイッチと同じく検出スイッチとして使われますが、構造と使用箇所に違いがあります。リミットスイッチは内蔵されたマイクロスイッチを樹脂や金属のケースに組み込んだ構造となっています。

雨水の影響を受ける場合などに対候性を高めるためにリミットスイッチが使用されます。産業設備によっては粉塵や油分の対策としてリミットスイッチを使用する場合もあります。

2. マイクロスイッチのスナップアクション機構

スナップアクション機構とは、スイッチを操作する速度とは無関係に可動接点を素早く切り替える機構です。対して、操作速度が可動接点の移動速度となる機構はスローアクション機構と呼ばれています。

スナップアクション機構を持つマイクロスイッチは、接点の切り替わる速度が速いため接点間のアークを最低限にできるという特徴があります。小型のマイクロスイッチでも接点寿命が長くでき、耐久性に優れています。

参考文献
https://jp.rs-online.com/web/c/switches/microswitches-accessories/microswitches/
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/29/325/index.html
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/289/
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120329/210447/
https://www.fa.omron.co.jp/products/category/switches/basic-switches/

DCソレノイド

DCソレノイドとは

DCソレノイドとは、コイルに印加した電磁力の電気的エネルギーを、可動鉄心による直線駆動の機械的エネルギーに変換する電気部品です。

そのアクチュエータとしての機能をコイルと可動鉄心を組み合わせた部品で実現しています。一般的なソレノイドは、可動鉄心を引き込むためプル型動作が基本です。

さまざまな可動鉄心の先端形状や駆動部の組み合わせることで、「引く・押す・止める・打つ・曲げる」などの動作を安価に実現できます。そのため、家電製品やATM、自動の販売機や改札機、自動ドアなど、工業機械用途に限らず、日常生活でのさまざまな用途で使用されています。

DCソレノイドの使用用途

DC ソレノイドは、制御性や応答性の良さに加え、可動鉄心や先端形状によって、引く、押す、止める、打つ、曲げるなどさまざまな動作を安価に実現可能なため、日常生活の周辺の機械や装置向けに実にさまざまな用途で利用されています。

主な使用用途は、自動販売機の硬貨選別機、電車のプラットホームの自動ドアや改札機、駐車場や自動ドアのロック機構、ATM内の制御機器、マンションやコンビニに設置されている宅配BOXなどです。

DCソレノイドの原理

DCソレノイドの原理は、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいています。コイルを流れる電磁力の電気的エネルギーを、可動鉄心による直線駆動の機械的エネルギーに変換しますが、一般的なソレノイドは可動鉄心を引き込むためプル型動作が基本です。

また、DCソレノイドは、ACソレノイドと比較して、通電時の突入電流が発生せず、動作音も小さいことが特徴として挙げられます。通常は、本体フレーム、コイル、バネ、固定鉄心、可動鉄心の構成部品にて成り立っています。

コイルに電流が流れると同時に磁界が発生し、電磁誘導により固定鉄心に可動鉄心が吸い寄せられることで、プル型の動作を実現可能です。通電している間は固定鉄心に可動鉄心が吸い寄せられ、通電を遮断すると同時にバネの力で可動鉄心が戻ります。

一方、このプル型の基本動作に対して、固定鉄心にプッシュバーを備えることで、可動鉄心が吸い寄せられると同時にプッシュバーを押し出すプッシュ型もあります。これらの先端形状を変更することで、さまざまな動作を安価に実現できます。

DCソレノイドのその他情報

1. ACソレノイドとDCソレノイドの違い

ACソレノイドは、DCソレノイドよりも起動電流や吸引力が大きい特徴を有します。しかし、ACソレノイドでは可動中に過負荷が発生し、ロックされてしまうと大電流が流れ続けて、コイルが焼損してしまいます。よって、ACソレノイドを採用する際には、温度ヒューズや過電流保護等の安全を配慮した設計が重要です。

これに対して、DCソレノイドでは、電流そのものが微小で吸引力も小さいので、可動部が過負荷状態やロックにしてしまっても、コイルが焼損するようなことはありません。DCソレノイドの方が安全性に関しては優れていますが、一般に性能そのものはACソレノイドには劣るため、使用条件による使い分けが必要です。

2. 自己保持ソレノイド

自己保持ソレノイドとは、高性能な永久磁石を組み込んだソレノイドコイルに、一瞬だけ通電することです。通称プランジャと呼ばれる可動部が吸引し、その後は永久磁石によって、可動部が保持されるソレノイドを言います。

通電時間が短いため、超省エネを目指した電気機器に最適なリニア可動タイプのソレノイドであり、例えば蓄電池の動作寿命を延ばし、温度上昇を低下させたい場合に効果がある部品です。コイルに通電されると、可動部が1方向に吸引して保持する1方向の保持型と1方向の保持型をシリーズ接続させ、それぞれのコイル巻線部に電気を通すことによって、2方向に可動して保持しようとする2方向保持タイプの2種類があります。

自己保持型ソレノイドの磁極形状は、1方向保持型では円錐タイプと水平タイプの2種類です。2方向保持タイプのソレノイドでは、ストロークが決まっているため、円錐タイプだけが標準となっています。ストロークの大きさと保持力の大小で磁極形状は使い分けるため、事前に各ソレノイドの特性カーブの仕様をよく確認することが大切です。

参考文献
https://www.takaha.co.jp/technological/action.html
http://www.kdengyo.co.jp/catalogdl/pdf/automation19.pdf
https://smt.shindengen.co.jp/product/download/pdf/smtcom15.pdf
https://smt.shindengen.co.jp/product/lineup/seihin/c/act/selfhold/

真空エジェクタ

真空エジェクタとは

真空エジェクタ (英:vacuum ejector) とは、圧縮エアーを使用することで、ベンチュリ効果により真空を発生させる機器です。

真空ポンプなど複雑な機械的構造を備えた真空発生機器とは異なり、機器内部にベンチュリ効果による真空発生構造を備えたシンプルな構造が特徴です。このベンチュリ効果を発生させるために、生産現場などで使用される圧縮空気が用いられることで、部品の持ち上げ動作などに必要な真空がエジェクタによって得られます。

真空エジェクタの使用用途

真空エジェクタは、自動化された生産ラインに多く使われます。また、集塵用途や粉体輸送にも使用されます。

1. ワークの吸着用途

真空ラインに吸着パッドを取り付け、ワークに押し当てると、ワークを吸着できます。ワークの重量やサイズ、材質に応じて吸着パットの形状や材質の選定が必要です。

真空エジェクタと吸着パットによって、部品のピックアップやワークの搬送などに利用されます。また、真空エジェクタと吸着パットを複数使用することで、自動車生産工場におけるフロントガラスなどの重量物のピックアップや搬送などにも利用が可能です。

2. 集塵用途

真空エジェクタを室内で使用すると、真空エジェクタの真空ポートへの空気の流れが発生し、室内の埃や塵を吸引することができます。半導体や電子部品の製造ライン、食品製造ラインなどの埃や塵の付着が嫌われる環境で、真空エジェクタにより室内の清浄化に使われます。

3. 粉体輸送用途

バキュームコンベアを密閉状態にし、真空エジェクタを使って減圧します。ノズル口から空気を入れると、配管内の気流とともに、粉粒体が搬送できます。

真空エジェクタの原理

真空エジェクタの構造は、機器内部に圧縮エアー入口、ノズル部、ディフューザー部、及び圧縮エアー出口を直線上に設けたものです。このノズル部とディフューザー部の間に真空発生ラインが垂直に設けられ、この構造よってベンチュリ効果が得られるようになっています。

ベンチュリ効果による真空発生の原理は、圧縮エアー入口より小径となったノズル部によって絞られた流体が高速化することで、ノズル部とディフューザー部の空間で圧力が低下し、真空が発生します。発生した真空により、吸引された流体と圧縮エアーの混合流体は、高速のままディフューザー部と出口に向かい排出されます。これにより、高い真空度が得られます。

真空エジェクタの選び方

1. ワークの通気性

ワークの表面とパッドが吸着したときに、どれだけ空気の漏れ量があるかによって真空エジェクタを選定します。部分的な吸着や、通気性が低く平らな表面にパットをつける場合は、シンプルなタイプの真空エジェクタが適しています。

表面が凹凸して通気性がよいワークを運ぶ場合は、吸い込み量の大きい真空エジェクタを選びます。

2. 平均吸い込み量

各メーカのホームページにも記載されていますが、平均吸い込み量Qが、2~3の真空エジェクタを選定します。平均吸い込み量Q=V×60÷T1で算出できます。

※空気の漏れ量がある場合は、算出したものにプラスします。
※V: 配管容量 l T1: 吸着後安定した圧力の63%に達するまでの時間 s

真空エジェクタのその他情報

1. 真空エジェクタの省エネタイプと通常タイプの違い

真空エジェクタには、通常タイプと省エネタイプがあります。通常の真空エジェクタは、空気を流している間に真空を作りますが、真空を作っている間は常に空気が必要というデメリットがあります。

省エネタイプの真空エジェクタは、1度真空を作ったら自動で電気を切り、空気の供給を止めることが可能です。空気が漏れなければ真空は保たれるので、大きなワークを運ぶ時などは、大きな省エネに繋がります。

ただし、ワークの表面に凸凹があるなど、空気の漏れ量が多い場合には、真空圧の変動が大きく、こまめなスイッチの切り替えがあるので、製品寿命が短くなる傾向にあります。

2. 真空エジェクタと真空ポンプの比較

真空エジェクタと真空ポンプは、ともに真空空間を作ります。真空エジェクタは、真空ポンプと比較すると、構造が簡単でイニシアルコストが安く、省スペース、電源不要などのメリットがあります。

反面、ランニングコストが大きく、真空流量が少ないなどは、デメリットです。また、真空エジェクタは、真空発生時は常に圧縮エアを消費するため、タクトタイムが長いのも短所です。

したがって、真空流量が少ない用途には、真空エジェクタが適し、大流量の真空空気が必要な場合は、真空ポンプが使われます。また、ワークの搬送のタクトタイムが1秒以下の工程では、真空ポンプが有利です。

参考文献
http://www.hokuto-mfg.com/product/item04.html
https://www.pisco.co.jp/dl/pdf/VGVP4-01_01.pdf
https://www.smcworld.com/assets/products/pickup/ja-jp/vacuum_device/select/4-P0033.pdf
http://www.smcworld.com/upfiles/pgpdf/sp107x-001j.pdf
http://www.schmalz.co.jp/products/vacuum-components/vacuum-generators.html

渦巻ポンプ

渦巻ポンプとは

渦巻ポンプ

渦巻ポンプは、ポンプのケーシング内部に羽根車状のインペラを備えた遠心式ポンプの一種です。ケーシングは渦巻きの形状をしており、ボリュートポンプともいわれます。

液体は中心部の吸込み口から羽根車に入り、回転による遠心作用によって高速で外側へ飛び出します。そして渦巻き室を通過するうちに徐々に減速して圧力に変換されます。

渦巻ポンプには、羽根車が1つの単段のものと2つ以上の多段式があります。多段式は1段毎に圧力を高めていく方式で、高い圧力が必要な場合に使われます。

渦巻ポンプの使用用途

渦巻ポンプは、流量が多く圧力をそれほど必要としない場合に使われることが多いです。排水用、ボイラの給水、上下水道、及び鉱山、化学工業用など産業用として広く使用されています。また、灌漑用など農業分野や空調機の給排水にも使用されます。

渦巻ポンプは、液体中の固形物容積濃度が20%以下で、比較的粘度の低い溶液に使用されることが多いです。また、羽根の形状や材料を改良して、摩耗や腐食に耐えるようにしたものは、泥水、汚水、スラリー、及びパルプ混液、砂礫、石炭などの輸送に使われます。さらに、羽根数を減らして流路面積を広げることにより、魚やみかんなどを水と共に輸送する用途もあります。

渦巻ポンプの原理

渦巻ポンプは、羽根車状のインペラーをケーシングの中で回転させることにより、遠心力で流体に圧力と速度のエネルギーを与えます。そして渦巻き形状のケーシングの中で減速されて、速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されます。これはベルヌーイの定理と呼ばれている現象です。

インペラーには、半径方向に流体が流れる2次元曲面の半径流形と、軸方向から半径方向に序々に変化する3次元曲面の混流形があります。速度エネルギーを効率よく圧力に変えるための重要な要素です。

ケーシングは、インペラーの外側に渦巻き形の部屋を形成するように設置されます。回転方向に徐々に断面積が増加することで、インペラーから遠心力で噴出した高速の流体は次第に減速され、圧力(静圧)が上昇します。

1つのインペラーによる発生圧力には限界があり、より高い圧力が必要な場合は、多段式のポンプにします。多段式は、最初のインペラーを出た流体を2段目のインペラーに吸い込ませて、さらに圧力を上げる方式です。これを何段か繰り返せば、高圧を得ることができます。

ポンプの構造

ポンプの構造は流量と揚程とに密接に関係しており、ポンプを選択する際の選定基準として重要になってきます。渦巻ポンプは、インペラーと渦巻き形ケーシングのほか、シャフト、軸受、駆動用カップリング、及び吸込み口と吐出し口のカップリング、軸封装置、必要に応じて圧力計圧力センサー圧力スイッチなどから構成されます。

インペラーの外周に、回転しない固定案内羽根を配置したポンプがあります。渦巻ポンプの仲間ですが、ディフューザーポンプ或はタービンポンプと呼ばれ、遠心式ポンプの1つです。仕組みは渦巻ポンプと類似ですが、インペラーを出た流体は、案内羽根を通る間に効率よく減速されて静圧が上昇するので、全体の効率が良いという特徴があります。

渦巻きポンプのその他情報

渦巻ポンプとキャビテーション

ポンプの構造は液体を圧力変換することを目的として設計されているので、ポンプの内部にガスが混入したり、ガスが発生したりすると問題が発生します。この問題の一つにキャビテーションがあります。

ポンプにおけるキャビテーションとは、ポンプ内部で液体の圧力が急激に低下し、飽和蒸気圧に達すると液体が急激に気化する現象のことです。渦巻ポンプでのキャビテーションは、インペラーに流入した液体の流速が上昇することで流体の静圧が低下し、流入部付近の静圧が流体の飽和蒸気圧を下回ると発生します。

キャビテーションが繰り返し発生すると、インペラーが損傷し、キャビテーション壊食が生じます。振動や騒音も発生し、性能も低下します。これは渦巻ポンプ内だけではなく、管やバルブの損傷も生じ、設備の早期な劣化や破壊に繋がります。

キャビテーションの防止法は、運転条件を変えるほか、吸込み側の抵抗を減らしたり、流体の圧力を飽和蒸気圧以下とならないように、インペラーの形状や面積などを改善する方法があります。

参考文献
https://speckjapan.com/aboutcent
https://engineer-education.com/pump-1/
https://engineer-education.com/pump-2_cavitation/
http://www.ebara.com/about/technologies/abstract/detail/1196383_4292.html
https://hightemperaturepump.eichitwo.com/?page_id=547

スカラロボット

スカラロボットとは

スカラロボット

スカラロボットとは、水平方向に動作する回転軸を3軸備え、上下方向に動作する1軸を備えた水平多関節型の産業用ロボットです。

「Selective Compliance Assembly Robot Arm」の頭文字を取って、「SCARA型ロボット」を通称「スカラロボット」と呼びます。

スカラロボットは、次のような特徴を持っています。

  • 水平方向の動作を素早く行える
  • 比較的安価
  • 上下方向の機械的な剛性が高い (回転軸3軸が全て垂直に配置されるため)

このような特徴を活かして、スカラロボットは部品の挿入や配置、ねじ締めなどの組み立て作業の用途で利用され、生産現場の自動化に貢献しています。

スカラロボットの使用用途

スカラロボットは、食品や電子基盤などの製造ラインにおいて使用される場合が多いです。これらの用途以外にも部品などのピック&プレース作業、圧入作業、ディスペンサーを用いた塗布作業、組み立て作業など、様々な用途があります。

1. 食品製造ラインでの使用用途

  • ベルトコンベヤで流れてきた食品 (個別包装されたお菓子など) をプラスチック製のトレーに詰める作業
  • レトルトパックされた食品を発送用のケースに詰める作業

2. 電子基板製造ラインでの使用用途

  • バラ積みされた部品をパーツフィーダで整列させた後に、トレー上に部品をピック&プレースする作業
  • トレー上の電子部品 (コネクタなど) を、電子基板上に配置する作業
  • 組立済の電子基板を検査機にセットし、検査後の基板を次の工程にセットする作業

3. その他の使用用途

  • ネジ締め:ロボット先端の電動ドライバーで複数個所のネジ締めをする作業
  • 段ボール開梱:テープを切って段ボールを空ける作業
  • ラベル貼り付け:ロボット先端に専用のラベル貼り付け用のハンドを取り付ける作業

スカラロボットの原理

スカラロボットは、基本的に3軸の回転動作と1軸の上下動作の合計4軸の動作軸によって構成されています。3軸の回転軸は全てアーム先端部を水平移動させるために用いられています。このような構成から、スカラロボットは水平方向の動作に特化したロボットと言えるでしょう。

3軸の回転軸によってロボット先端を水平方向に移動し、ワークの真上に高速移動させ、続いて上下軸を用いてロボット先端部をワークに真上からアプローチします。それから、ワークをつかむなどの作業を行います。

スカラロボットのアーム先端は、作業に応じて次のようなツールを装着することができます。

  • エアー吸着パッド
  • 空気圧グリッパ
  • 電動グリッパ
  • ネジ締め機器
  • ディスペンサー

スカラロボットを動かすためには動作を教示 (ティーチング) する必要があります。これまではティーチングペンダントと呼ばれる専用ツールを用いるのが一般的でした。近年では、パソコン上でティーチングができる機種や、ダイレクトティーチングと呼ばれる初心者でも簡単にティーチングができる機種もあり、使いやすさを重視したスカラロボットも増えています。

スカラロボットのその他情報

1. 高速スカラロボット

スカラロボットには高速動作を目的とした製品も存在します。ロボットが高速で動作することで、ライン全体の生産性向上に貢献します。

スカラロボットが早く作業を終えられれば、後工程により早くワークを受け渡すことが可能です。その結果、1つの製品を生産する時間が短くなります。これが、スカラロボットの高速化によってライン全体の生産性が向上する理由です。

高速動作可能なスカラロボットを実現するためには、次のような手段が有効です。

  • モーターの出力を大きくする
  • アームを軽量化する
  • 関節の剛性を上げる
  • ロボットの振動を抑える制御をする

2. カメラを利用したスカラロボット

カメラから得られる情報をスカラロボットに送信することで、ロボット自体の性能を上げることができます。スカラロボットでワークに対してネジ締めを行う場合を考えます。ワークは個々に交差を持っており、厳密に言えばそれぞれ微妙に大きさが異なります。

従って、ネジを保持したスカラロボットが教示位置に移動しても、ワーク上のねじ穴とスカラロボット先端のネジ先のポジションが合わない状況が発生しうるのです。このような状況では、多くの場合ネジ締めに失敗します。

ここで、カメラを用いてねじ穴を撮影し、基準位置に対するズレ量を計算します。そしてそのズレ量をスカラロボットに送信し、元々の教示点にオフセットさせることで位置を補正します。

これによって、カメラの撮像範囲内であればどの位置にネジ穴があってもスカラロボットがネジ締め作業をすることが可能になります。このような仕組みは、「画像位置補正」と呼ばれ、工場の自動化に広く利用されています。

参考文献
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000171768.pdf
http://www.mech.tohoku-gakuin.ac.jp/rde/contents/sendai/mechatro/archive/RMSeminar_No18.pdf
https://www.denso-wave.com/ja/robot/info/detail__917.html

スーパーエンプラ

スーパーエンプラとは

スーパーエンプラとは、スーパーエンジニアリングプラスチックの略称で、エンジニアリングプラスチック (エンプラ) の中でも特に優れた耐熱性を持つプラスチックです。

一般的なプラスチックは熱に弱いため、高温環境下での使用や、摩擦熱が発生するような部分の部品には向いていません。また、紫外線で劣化しやすく、屋外での使用にも制限があります。

エンプラ・スーパーエンプラは、こうしたプラスチックの欠点を克服した新しい素材です。

スーパーエンプラの使用用途

スーパーエンプラは、耐熱性、機械物性、耐久性が高く、大量生産が可能であるため、金属部品の代替として期待されています。ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドやポリアミドイミドなどの機械的強度と耐熱性の高いスーパーエンプラは、自動車のエンジンまわりの部品や電装部分、バルブやポンプなど、これまでは金属でしか実現できなかったような部品の置き換えが可能となっています。

他にも産業機器のギアや軸受部分、高い信頼性が要求される航空機の部品や医療用機器の部品、高い電気絶縁性や耐熱性が要求される電気電子分野においても、スーパーエンプラが採用されることが増えてきています。

スーパーエンプラの特徴

スーパーエンプラの明確な定義は定められていませんが、一般的に150℃以上の高温でも長時間使用可能、機械的強度が極めて強いことが特徴として挙げられます。また、フッ素樹脂などのような機械物性はそこまで高くなくても、耐熱性、耐寒性、耐薬品性が非常に高いものもスーパーエンプラに分類されています。

耐熱性、機械強度が高いという点においては、成形時の加熱により三次元架橋することで硬化する熱硬化性樹脂も該当しますが、熱可塑性樹脂であることがエンプラ、スーパーエンプラであることの条件です。熱可塑性プラスチックは、可逆的に融解・凝固することができるため、成形加工やリサイクルに対する柔軟性が高いことも特徴です。

プラスチックは、高分子鎖の集合によって形成されていますが、エンプラ及びスーパーエンプラは、一本の分子鎖が長く、構成する分子が強い分子間力を持っています。そのため、結晶性が高く、高い強度、耐熱性を持っています。また、エンプラやスーパーエンプラは、ガラス繊維や炭素繊維を添加することで、さらに機械的強度や化学的安定性を高めることが可能です。

スーパーエンプラの種類

スーパーエンプラ にはいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。

1. ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)

連続使用温度250℃で、高温でも高い機械強度を維持します。耐薬品性、耐熱水性、耐摩耗性も優れます。

2. ポリフェニレンスルフィド (PPS)

連続使用温度200~240℃で、高温でも高い機械強度を維持します。耐薬品性、寸法安定性に優れ、分子内に芳香環を持つため、難燃性 (自己消火性) があります。ガラス繊維や炭素繊維を充填した強化グレードもあります。

3. ポリテトラフルオロエチレン (PTFE)

デュポン社のテフロンという登録商標が良く知られるフッ素系樹脂です。最高クラスの耐薬品性、潤滑性、電気絶縁性を持ちますが、機械的強度は他のスーパーエンプラと比べて劣ります。

4. ポリイミド (PI)

イミド結合をもつ樹脂の略称ですが、スーパーエンプラの場合は、分子内に芳香族をもつ芳香族ポリイミドのことを指します。連続使用温度260~300℃という最高クラスの耐熱性を持ちます。絶縁性も高いため電子部品関係で広く用いられています。

5. ポリアミドイミド (PAI)

連続使用温度260℃でポリイミドに次ぐ耐熱性があり、機械強度、耐薬品性、電気絶縁性に優れます。

6. ポリエーテルサルフォン (PES)

連続使用温度170℃で琥珀色の透明な樹脂で耐衝撃性に優れます。耐薬品、耐加水分解性も高く、分子の大部分が芳香環なので難燃性 (自己消火性) にも優れます。

参考文献
http://enpla.jp/enpla/index.html
https://www.teika-precision.co.jp/knowledge/detail.html?id=91

モーションコントローラ

モーションコントローラとは

モーションコントローラとは、サーボモーターなどで駆動する機器の動きをコントロールする装置です。

ユーザーは実現したいモーションをあらかじめプログラミングしておき、これをモーションコントローラに実行させることで機器の動きを制御します。

モーションコントローラの使用用途

モーションコントローラーは、サーボモーターやリニアモーターで駆動する装置の制御用として使用されます。したがって、産業用ロボットや工作用産業機械などへ適用されます。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 協働ロボット制御用
  • 一般消耗品の包装機制御用
  • 業務用印刷機制御用
  • 高速プレス機制御用
  • 自動組み立てロボットの制御用

モーションコントローラの原理

モーションコントローラは出力方式によって原理が異なります。代表的な出力方式は、以下の通りです。

1. 共通パルス方式

共通パルス方式とは、回転方向信号とパルス運転指令の2つでモータを制御する方式です。回転方向信号によって回転方向の正逆を制御し、パルス運転信号でモータを運転します。

2. 2方向パルス方式

2方向パルス方式とは、正転パルス運転指令と逆転パルス運転指令に2つでモータを制御する方式です。正転パルス運転指令によって正転し、逆転パルス運転指令によって逆転します。

3. 位相差入力方式

位相差入力方式とは、パルス信号2つの位相差から回転方向を決定する方式です。基準となるパルス信号が90°進んだときに正転、90°遅れたときに逆転させます。

モーションコントローラの選び方

モーションコントローラを選定する際は、補間制御が重要です。補間制御とは、複数軸間の同期制御方法のことです。モーションコントローラには、直接補間と円弧補間の2つがあります。

1. 直線補間

直線補間とは、2台のモーターを同時に制御して目的の位置へ直線的に移動させる制御です。横方向に移動させた後に縦方向へ移動させるよりも、斜め方向へ直線移動するようにCPUが演算して制御を行います。直線補間を利用することで斜め方向への直線移動が可能となるため、位置決めするために必要な時間を短縮可能です。

2. 円弧補間

円弧補間とは、2台のモーターを同時制御する際、CPUが円弧を描くように演算して移動する制御です。移動経路が直線的ではないため、直線補間よりも目標位置までの時間かかります。ただし、円弧補間を利用することでルート上の障害物を避けて移動することが可能です。

モーションコントローラのその他情報

1. モーションコントローラとPLCの特徴

モーションコントローラは、ユーザーがカスタムしたプログラムで機器の自動制御を行うという点ではPLCと似ています。モーションコントローラの特徴は、サーボシステムの制御に適している点です。

モーション制御には、PLCではなくモーションコントローラが利用されていることが多いです。モーションコントローラのメリットとして、多軸の制御や同期など、トータルの軸数が多い場合の制御に向いていることが挙げられます。

PLCでは一台で制御できる軸数には限りがありますが、モーションコントローラはそれを遥かに上回る軸数の制御が可能です。このため、モーションコントローラは、精密で多軸制御が必要な産業用工作機械やロボットに利用されています。

2. モーションコントローラとPLCのプログラム処理

PLCとモーションコントローラの原理は、CPUにおける処理の方式に違いがあります。PLCは、実行の度にプログラムを全行読み込み、全行を一度に実行するマルチタスク制御です。そのため、プログラムを全行読み込む時間が律速となり、複雑な制御を行うための演算時間が十分に確保できないのが特徴です。

一方で、モーションコントローラはPLCと異なり、プログラムの読み取りと実行が一行ずつ行われるのが特徴です。そのため、PLCと比較して1タスクにかかる演算処理が短く、高速処理が可能です。

また、モーションコントローラはプログラムの容量が増えても一行の処理時間には影響ません。したがって、サーボモーターなどの複雑なシステムではモーションコントローラの方が高速に処理することが可能です。

参考文献
https://www.optoscience.com/maker/zi/principle-lock_in_amplifier/
http://www.g-munu.t.u-tokyo.ac.jp/mio/note/sig_mes/sig_mes.pdf
https://www.topic.ad.jp/sice/htdocs/papers/260/260-10.pdf
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/qa/detail/0225/
https://www.contec.com/jp/support/basic-knowledge/daq-control/motion-control/
http://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/11959
https://www.tohan-denshi.co.jp/column/1619/

GPSチップ

GPSチップとは

GPSチップとは、GPS衛星からの信号を受信するGPSアンテナを接続又は内蔵して現在位置を算出するための回路が組み込まれたチップです。

GPSは全地球測位システム (英: Global Positioning System) の略で、アメリカ国防省が運用する測位衛星と通信して地球上の位置を特定しています。GPSを用いた位置情報の測定は日常生活でも欠かせない技術になっており、GPSチップは高精度化や小型化などの高性能化に向けた開発が積極的に行われています。

現在はGPS衛星だけでなく、ロシアのGLONASS、EUのGalileo、中国の「北斗」の4つの衛星システムを指すGNSS (英: Global Navigation Satelite SYstem) に加えて、インドのGAGANや日本の「みちびき」等の信号にも対応したものが一般的となっています。

GPSチップの使用用途

GPSは誘導ミサイルなどの軍事用として開発されましたが、民生向けの開放により船舶や航空機の航法支援に用いられるようになりました。

GPSチップが開発され小型化されたことで、現在はカーナビ、スマートフォンやタブレット等の携帯端末に使用されています。これによって地図アプリで現在位置や目的地へのナビゲーションを実現しています。

また、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスにもGPSロガーとして搭載されており、移動距離や歩数、移動履歴などを確認することができます。これらの他、宇宙ビジネスへの応用に向けた開発等も進められています。

GPSチップの原理

GPS衛星には原子や分子のスペクトル線が持つ周波数に基づいた非常に精密な時計 (原子時計) が内蔵されています。GPS衛星から発せられる信号は、この正確な時刻と衛星の位置情報が主に発信されています。

GPSからのGPSチップまでの信号の到達時間に光速を掛けるとGPS衛星からの距離が算出できます。すなわち、その時の距離を半径とした球面上のどこにGPSチップが有るのかがわかります。

これを複数の衛星で行い、全ての衛星からの球面が交差する点が現在地として特定されます。最低3つの衛星から情報を受信できれば位置を同定することができますが、受信した衛星の数が多いほどその精度は向上します。

衛星側は原子時計を搭載しているので非常に正確な時刻を発信することができますが、受信側のGPSチップには原子時計は搭載されていません。受信側では一般的なクオーツ時計が搭載されていますが原子時計ほどの精度が出せないため、最低でも4つ以上の衛星から受信して、x、y、z、tの4つを変数とすることで時刻の補正を行う必要があります。

GPSチップのその他情報

1. GPSチップの高精度化

光は1秒間に約30万km (3億m) を進むため、1,000万分の1秒の誤差でも30mの誤差となります。このような時間情報による誤差以外に、衛星の位置情報による誤差、電離層や大気中の水分の影響による誤差、建物や山の反射による誤差、受信できる衛星の数が少ないことによる誤差等がありますが、様々な方式で修正することで数m以内の誤差となっています。

近年はGNSSを用いることで誤差数10cmを実現し、日本版GPSの「みちびき」では天頂近くにあって受信可能な衛星数が増えるため、これをサポートするチップであれば数cmの誤差が可能となり、トラクタや田植え機などの自動運転に用いることが可能です。

2. GPSチップの小型化で搭載が実現したもの

GPSチップ小型化により、以下のものに搭載されるようになりました。

  1. GPSトラッカー
    コイン程の大きさで様々なものに取り付けて位置情報を発信できる汎用タイプのGPSチップ搭載デバイスで、子供やお年寄り、障害者の方の衣服に取り付けて見守りに用いたり、犬の首輪や荷物等に取り付け対象の位置を確認するために使用します。2.7cmx2.7cmで16gという小型・軽量で3,000円程度で購入することが可能です。
  2. ドローン
    GPSモジュールが小型で安価になったことから、GPS搭載のドローンも普及してきました。特に市販価格が大幅に下がってユーザーが購入しやすくなっています。4K高角HDカメラを装備するようなモデルでも大手通販サイトで1万円台前半で購入できるようになりました。

参考文献
http://www.ne.jp/asahi/nature/kuro/HGPS/principle_gps.htm
https://wirelesswire.jp/2011/02/35184/
https://www.amazon.co.jp/
https://c-smart.jp/item/detail/1_1_APWs6-C-ST-SB_1/SV001

トルクモーター

トルクモーターとは

トルクモーター

トルクモーター (英: torque motor) とは、大きな起動トルクを有し、回転速度の増加に伴ってトルクが減少するモーターです。

広い速度域で安定した運転ができる特性を有しています。トルクモーターは、特に低速で高いトルクを実現できるため、ローラーなどの巻取り装置への使用に適したモーターです。

巻取りを行う際、はじめは低トルク・高速回転が必要ですが、巻取りが進むにつれて径が大きくなるので、最終的に高トルク・低速回転が必要になります。負荷側の回転数-トルクの特性曲線と、トルクモーターの特性曲線が似ているため、トルクモーターは巻取りに適したモーターであると言えます。

トルクモーターの使用用途

トルクモーターのは、一定の速度で何かを巻き取るための装置に組み込まれる場合が多いです。例として、布や紙・ゴムなどのシート状のものや、金属線やケーブル・糸などの線状のものを巻き取るときなどが挙げられます。

また、ロール用としての用途は、送りロール、各種ロールのロス補償用 、小形クレーン、ベルトコンベアー駆動用などです。さらに、バルブやねじの締め・緩めやドアの開閉などにも起動トルクが必要なため、トルクモーターの使用が適しています。

トルクモーターの原理

他のモーターの回転数-トルク特性曲線は、特定の回転数でピークを迎えるような山なりになっているのに対し、トルクモーターは、右肩下がりのなだらかな曲線になっています。この特性が垂下特性です。

トルクモーターは、モーターと負荷のバランスを保つように、回転数が増加するとともに、トルクは減少するという性質を持っています。トルクモーターへの印加電圧を増加させると、電圧の二乗に比例して垂下特性の曲線は、より右肩下がりの傾きを持った曲線にシフトします。したがって、電圧調整器と組み合わせて使えば、アプリケーションに応じて垂下特性のチューニングが可能です。

また、負荷トルクが一定の場合は、印加電圧を調整すれば回転速度を変化させることもできます。角速度が一定の回転運動にかかるトルクを静トルクと言い、トルクモーターは、静トルクが必要な巻取り動作などに適しています。また、始動トルクが大きいため始動電流も小さくて済むため、頻繁に始動・停止を行う動作にも適したモーターです。

トルクモーターのその他情報

トルクモーターのブレーキとしての使い方

巻き取り機構のテンションを一定に保つために、巻き取り側だけでなく、巻き出し側にもトルクモーターを使用することにより、細かい調整が可能です。この場合、トルクモーターの特徴であるブレーキ特性が利用できます。ブレーキ特性は、以下の2つがあります。

1. 逆相ブレーキ
交流電圧印加による回転磁界の方向とは、反対方向に回転させた時のトルク特性をブレーキに利用します。逆相ブレーキ特性を利用した使い方は、トルクモーター起動時のトルクよりも大きいトルクで、反対方向に回転させたときのトルクを利用する方法です。

トルクモーターは、一定のブレーキ力を発生しながら回転磁力とは反対方向に回転します。回転数が0からブレーキ力が発生するため、張力を停止時も必要な場合などに適したモーターです。

2. うず電流ブレーキ
直流電圧印加による磁界によって、停止状態のモーターを回転させた時のトルク特性をブレーキに利用します。うず電流ブレーキの使い方は、正方向・逆方向どちらの方向に回転しても、同様のブレーキ力が得られる現象を利用する方法です。

回転数が0の時は、ブレーキ力は0ですが、回転数の増加ともにブレーキ力は増加し、高速領域で安定します。この特性を利用するのは、高速回転時に安定した張力を必要とする場合や正転逆転で張力が必要な場合などです。

参考文献
https://www.khanacademy.org/
https://www.etel.ch/torque-motors/principle/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/sizing_motor09/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/qa/detail/0071/

ロックインアンプ

ロックインアンプとは

ロックインアンプとは、入力された信号から特定の周波数を持った成分の信号を取り出すことが可能な回路を有する装置です。

ロックインアンプは、基準となる参照信号と入力信号を装置内でミキサーにより掛け合わせることでノイズを除去し、ローパスフィルターにより、所望の特定周波数の信号を取り出します。時定数と呼ばれる装置固有の値が設定されており、時定数が大きいほど出力信号の揺らぎを小さくすることが可能です。

ロックインアンプの使用用途

ロックインアンプは、特に分光測定などの光学分野でよく使用されています。顕微鏡と組み合わせて使用することもあります。ロックンアンプの具体的な使用用途は、天体観測のような宇宙物理学の測定、ナノメーターオーダーの薄膜の分光測定など、微弱な信号を検出する実験です。

厚みが数百ナノメーター以下の薄膜など、試料由来の信号が弱い測定ではロックインアンプのような信号の増幅、ノイズ除去を行う装置が必須となります。その他、蛍光顕微鏡やラマン分光顕微鏡や、原子間力顕微鏡などのプローブ顕微鏡で用いられることも多いです。

ロックインアンプの原理

ロックインアンプの動作原理は、入力信号をプリアンプで増幅した後に、基準となる参照信号とミキサーで掛け合わせ、ローパスフィルターで余分なノイズ成分を取り除くことで、入力信号から所望の特定周波数の信号を検出する回路的な信号処理です。

ロックインアンプ内では、入力信号と参照信号を掛け合わされ、入力信号と参照信号の周波数の和、差で表された出力が生成されます。入力信号をVi=Acos(ωit+Φ)、参照信号をVr=Bcosωrtとすると、出力の周波数は{cos[(ωi-ωr)t+Φ]+cos[(ωi+ωr)t+Φ]}に比例します。

ただし、ロックインアンプではローパスフィルターを作用させるため、残る成分はωi-ωrが0に近い信号のみです。つまり、ロックインアンプを通すことによって、参照信号と周波数が近い入力信号のみを抽出し、ノイズのようなランダムな成分を除去することができます。

ロックインアンプの基準となる参照信号は、正弦波を用いることが多いです。回路の単純化、低コスト化のために参照信号として矩形波を用いることもありますが、その場合は、ノイズの除去性能は正弦波よりも劣ります。

ロックインアンプのその他情報

1. ロックインアンプの時定数とノイズ

ロックインアンプには、固有の時定数と呼ばれるものがあります。ここでの時定数とは、回路に取り付けられた抵抗の抵抗値とコンデンサの容量の積で表される値のことです。ロックインアンプの出力に含まれるノイズの大きさは時定数の逆数に比例するため、時定数が大きいほど出力信号のノイズは小さくなります。一般的な時定数の大きさは10ミリ秒から10秒程度ですが、デジタル処理を行う装置の時定数は1000秒程度です。

ロックインアンプは、入力信号のノイズレベルの指標であるSN比 (信号と雑音の比率:単位dB) の影響を受けます。前段にノイズレベルが悪いアンプを用いるとロックインアンプの測定精度が劣化するため、入力信号のノイズレベルに注意が必要です。

2. チョッパーとは

チョッパーとは、ブレードを一定周期で回転させる装置のことです。ロックインアンプとチョッパーを組み合わせた高感度測定は、分光測定において一般的な手法の一つと言えます。

連続光の光路上に置くことで、ブレードが光路上にあるときは光が遮られ、ブレードが光路上にないときに光が抜けるようになり、測定光を一定の周期を持つ信号に変換することが可能です。吸収係数が大きい結晶や、伝搬損失の大きい光導波路の測定では、測定光が試料に強く吸収されるため、検出できる光の強度が小さくなり相対的にノイズの影響が大きくなります。

このような測定では、ロックインアンプとチョッパーを併用する方が有効です。チョッパーや変調器でノイズが少なく周波数が高い信号に変調し、ロックインアンプを使用して効率よく復調することで、ノイズの少ない信号を元の周波数で得られます。

3. デジタルロックインアンプ

昨今のロックインアンプは、その周波数拡張に伴い急速にデジタル化が進んでいます。ロックインアンプの性能向上には、SN比に優れる参照信号と急峻なローパスフィルターが不可欠ですが、この要件を満足する構成がデジタルロックインアンプです。

PLL (Phase Locked Loop) を活用し、外部からの参照信号と周波数および位相が一致するデジタル正弦波を内部で新たに生成することで、歪や外来ノイズの抑制を行い、SN比に優れる参照信号が利用できます。また、多段構成のデジタルローパスフィルターを用いることで、急峻なフィルタ特性も実現可能です。このデジタルロックインアンプの登場により、現在600MHzまでの高周波数測定が実現できています。

参考文献
https://www.optoscience.com/maker/zi/principle-lock_in_amplifier/
http://www.g-munu.t.u-tokyo.ac.jp/mio/note/sig_mes/sig_mes.pdf
https://www.topic.ad.jp/sice/htdocs/papers/260/260-10.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/9/7/9_7_511/_pdf
http://www.nfcorp.co.jp/techinfo/keisoku/noise/pdf/se_c2_LIT.pdf