真空エジェクタ

真空エジェクタとは

真空エジェクタ (英:vacuum ejector) とは、圧縮エアーを使用することで、ベンチュリ効果により真空を発生させる機器です。

真空ポンプなど複雑な機械的構造を備えた真空発生機器とは異なり、機器内部にベンチュリ効果による真空発生構造を備えたシンプルな構造が特徴です。このベンチュリ効果を発生させるために、生産現場などで使用される圧縮空気が用いられることで、部品の持ち上げ動作などに必要な真空がエジェクタによって得られます。

真空エジェクタの使用用途

真空エジェクタは、自動化された生産ラインに多く使われます。また、集塵用途や粉体輸送にも使用されます。

1. ワークの吸着用途

真空ラインに吸着パッドを取り付け、ワークに押し当てると、ワークを吸着できます。ワークの重量やサイズ、材質に応じて吸着パットの形状や材質の選定が必要です。

真空エジェクタと吸着パットによって、部品のピックアップやワークの搬送などに利用されます。また、真空エジェクタと吸着パットを複数使用することで、自動車生産工場におけるフロントガラスなどの重量物のピックアップや搬送などにも利用が可能です。

2. 集塵用途

真空エジェクタを室内で使用すると、真空エジェクタの真空ポートへの空気の流れが発生し、室内の埃や塵を吸引することができます。半導体や電子部品の製造ライン、食品製造ラインなどの埃や塵の付着が嫌われる環境で、真空エジェクタにより室内の清浄化に使われます。

3. 粉体輸送用途

バキュームコンベアを密閉状態にし、真空エジェクタを使って減圧します。ノズル口から空気を入れると、配管内の気流とともに、粉粒体が搬送できます。

真空エジェクタの原理

真空エジェクタの構造は、機器内部に圧縮エアー入口、ノズル部、ディフューザー部、及び圧縮エアー出口を直線上に設けたものです。このノズル部とディフューザー部の間に真空発生ラインが垂直に設けられ、この構造よってベンチュリ効果が得られるようになっています。

ベンチュリ効果による真空発生の原理は、圧縮エアー入口より小径となったノズル部によって絞られた流体が高速化することで、ノズル部とディフューザー部の空間で圧力が低下し、真空が発生します。発生した真空により、吸引された流体と圧縮エアーの混合流体は、高速のままディフューザー部と出口に向かい排出されます。これにより、高い真空度が得られます。

真空エジェクタの選び方

1. ワークの通気性

ワークの表面とパッドが吸着したときに、どれだけ空気の漏れ量があるかによって真空エジェクタを選定します。部分的な吸着や、通気性が低く平らな表面にパットをつける場合は、シンプルなタイプの真空エジェクタが適しています。

表面が凹凸して通気性がよいワークを運ぶ場合は、吸い込み量の大きい真空エジェクタを選びます。

2. 平均吸い込み量

各メーカのホームページにも記載されていますが、平均吸い込み量Qが、2~3の真空エジェクタを選定します。平均吸い込み量Q=V×60÷T1で算出できます。

※空気の漏れ量がある場合は、算出したものにプラスします。
※V: 配管容量 l T1: 吸着後安定した圧力の63%に達するまでの時間 s

真空エジェクタのその他情報

1. 真空エジェクタの省エネタイプと通常タイプの違い

真空エジェクタには、通常タイプと省エネタイプがあります。通常の真空エジェクタは、空気を流している間に真空を作りますが、真空を作っている間は常に空気が必要というデメリットがあります。

省エネタイプの真空エジェクタは、1度真空を作ったら自動で電気を切り、空気の供給を止めることが可能です。空気が漏れなければ真空は保たれるので、大きなワークを運ぶ時などは、大きな省エネに繋がります。

ただし、ワークの表面に凸凹があるなど、空気の漏れ量が多い場合には、真空圧の変動が大きく、こまめなスイッチの切り替えがあるので、製品寿命が短くなる傾向にあります。

2. 真空エジェクタと真空ポンプの比較

真空エジェクタと真空ポンプは、ともに真空空間を作ります。真空エジェクタは、真空ポンプと比較すると、構造が簡単でイニシアルコストが安く、省スペース、電源不要などのメリットがあります。

反面、ランニングコストが大きく、真空流量が少ないなどは、デメリットです。また、真空エジェクタは、真空発生時は常に圧縮エアを消費するため、タクトタイムが長いのも短所です。

したがって、真空流量が少ない用途には、真空エジェクタが適し、大流量の真空空気が必要な場合は、真空ポンプが使われます。また、ワークの搬送のタクトタイムが1秒以下の工程では、真空ポンプが有利です。

参考文献
http://www.hokuto-mfg.com/product/item04.html
https://www.pisco.co.jp/dl/pdf/VGVP4-01_01.pdf
https://www.smcworld.com/assets/products/pickup/ja-jp/vacuum_device/select/4-P0033.pdf
http://www.smcworld.com/upfiles/pgpdf/sp107x-001j.pdf
http://www.schmalz.co.jp/products/vacuum-components/vacuum-generators.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です