渦巻ポンプとは
渦巻ポンプは、ポンプのケーシング内部に羽根車状のインペラを備えた遠心式ポンプの一種です。ケーシングは渦巻きの形状をしており、ボリュートポンプともいわれます。
液体は中心部の吸込み口から羽根車に入り、回転による遠心作用によって高速で外側へ飛び出します。そして渦巻き室を通過するうちに徐々に減速して圧力に変換されます。
渦巻ポンプには、羽根車が1つの単段のものと2つ以上の多段式があります。多段式は1段毎に圧力を高めていく方式で、高い圧力が必要な場合に使われます。
渦巻ポンプの使用用途
渦巻ポンプは、流量が多く圧力をそれほど必要としない場合に使われることが多いです。排水用、ボイラの給水、上下水道、及び鉱山、化学工業用など産業用として広く使用されています。また、灌漑用など農業分野や空調機の給排水にも使用されます。
渦巻ポンプは、液体中の固形物容積濃度が20%以下で、比較的粘度の低い溶液に使用されることが多いです。また、羽根の形状や材料を改良して、摩耗や腐食に耐えるようにしたものは、泥水、汚水、スラリー、及びパルプ混液、砂礫、石炭などの輸送に使われます。さらに、羽根数を減らして流路面積を広げることにより、魚やみかんなどを水と共に輸送する用途もあります。
渦巻ポンプの原理
渦巻ポンプは、羽根車状のインペラーをケーシングの中で回転させることにより、遠心力で流体に圧力と速度のエネルギーを与えます。そして渦巻き形状のケーシングの中で減速されて、速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されます。これはベルヌーイの定理と呼ばれている現象です。
インペラーには、半径方向に流体が流れる2次元曲面の半径流形と、軸方向から半径方向に序々に変化する3次元曲面の混流形があります。速度エネルギーを効率よく圧力に変えるための重要な要素です。
ケーシングは、インペラーの外側に渦巻き形の部屋を形成するように設置されます。回転方向に徐々に断面積が増加することで、インペラーから遠心力で噴出した高速の流体は次第に減速され、圧力(静圧)が上昇します。
1つのインペラーによる発生圧力には限界があり、より高い圧力が必要な場合は、多段式のポンプにします。多段式は、最初のインペラーを出た流体を2段目のインペラーに吸い込ませて、さらに圧力を上げる方式です。これを何段か繰り返せば、高圧を得ることができます。
ポンプの構造
ポンプの構造は流量と揚程とに密接に関係しており、ポンプを選択する際の選定基準として重要になってきます。渦巻ポンプは、インペラーと渦巻き形ケーシングのほか、シャフト、軸受、駆動用カップリング、及び吸込み口と吐出し口のカップリング、軸封装置、必要に応じて圧力計・圧力センサー・圧力スイッチなどから構成されます。
インペラーの外周に、回転しない固定案内羽根を配置したポンプがあります。渦巻ポンプの仲間ですが、ディフューザーポンプ或はタービンポンプと呼ばれ、遠心式ポンプの1つです。仕組みは渦巻ポンプと類似ですが、インペラーを出た流体は、案内羽根を通る間に効率よく減速されて静圧が上昇するので、全体の効率が良いという特徴があります。
渦巻きポンプのその他情報
渦巻ポンプとキャビテーション
ポンプの構造は液体を圧力変換することを目的として設計されているので、ポンプの内部にガスが混入したり、ガスが発生したりすると問題が発生します。この問題の一つにキャビテーションがあります。
ポンプにおけるキャビテーションとは、ポンプ内部で液体の圧力が急激に低下し、飽和蒸気圧に達すると液体が急激に気化する現象のことです。渦巻ポンプでのキャビテーションは、インペラーに流入した液体の流速が上昇することで流体の静圧が低下し、流入部付近の静圧が流体の飽和蒸気圧を下回ると発生します。
キャビテーションが繰り返し発生すると、インペラーが損傷し、キャビテーション壊食が生じます。振動や騒音も発生し、性能も低下します。これは渦巻ポンプ内だけではなく、管やバルブの損傷も生じ、設備の早期な劣化や破壊に繋がります。
キャビテーションの防止法は、運転条件を変えるほか、吸込み側の抵抗を減らしたり、流体の圧力を飽和蒸気圧以下とならないように、インペラーの形状や面積などを改善する方法があります。
参考文献
https://speckjapan.com/aboutcent
https://engineer-education.com/pump-1/
https://engineer-education.com/pump-2_cavitation/
http://www.ebara.com/about/technologies/abstract/detail/1196383_4292.html
https://hightemperaturepump.eichitwo.com/?page_id=547