SIM

SIMとは

SIM

SIMとは、「Subscriber Identity Module」の略で、利用者の契約情報や電話番号などが記録された小さなチップです。

携帯電話を利用する際、SIMカードが必要になります。SIMカードを携帯電話に挿入することで、通信事業者のネットワークに接続できるようになります。

SIMカードには大きさや種類によっていくつかの種類がありますが、最近ではnanoSIMやeSIMなどの小型化や電子化が進んでいます。

SIMの使用用途

SIMを携帯電話に挿入すると、電話番号や通信プランなどが利用できるようになります。SIMは携帯電話だけでなく、他のデバイスにも使われています。

具体的な使用用途は、以下のとおりです。

1. スマートフォン

スマートフォンは、SIMを使って音声通話やデータ通信を行うことができます。SIMによって、自分の電話番号や通信プランを自由に選択可能です。また、海外旅行時には、現地のSIMを入れ替えることで、ローミング料金を節約できます。

2. タブレット

タブレットはWi-Fiだけでなく、SIMを使ってモバイルネットワークにも接続可能です。SIMを使えば、外出先でもインターネットにアクセスしたり、メールやSNSの利用したりできます。また、タブレットに音声通話機能があれば、SIMで電話にも対応します。

3. ノートパソコン

ノートパソコンにも、SIMを使ってモバイルネットワークに接続できるものがあります。SIMを使えば、Wi-Fiがない場所でもインターネットにアクセスしたり、オンライン会議やリモートワークを行ったりができます。また、ノートパソコンに音声通話機能があれば、SIMを使って電話もできます。

4. 監視カメラ

監視カメラは、SIMを使ってリアルタイムに映像や音声を送信できます。SIMを使えば、インターネット環境がない場所でも監視カメラを設置可能です。また、監視カメラから送られた映像や音声は、スマートフォンやパソコンなどで確認できます。

5. 車載カメラ

車載カメラは、SIMを使ってドライブレコーダーの映像や位置情報を送信できます。SIMを使えば、事故やトラブルの際に証拠として活用したり、遠隔地から車両の状況を確認したりできます。また、車載カメラから送られた映像や位置情報は、スマートフォンやパソコンなどで確認できます。

6. デジタルサイネージ

デジタルサイネージにSIMカードを挿入すると、モバイルネットワークに接続できます。これにより、デジタルサイネージを使用してリアルタイムの情報を表示したり、タイミングによって表示を変更したりできます。

SIMの原理

SIMカードには、以下のような情報が格納されています。

  • IMSI (英: International Mobile Subscriber Identity)
    国際移動体通信加入者識別番号。SIMカードを発行したキャリアや国、ユーザーを識別するための番号です。
  • ICCID (英: Integrated Circuit Card Identifier)
    SIMカード自体の固有の識別番号。
  • 認証キー (Ki)
    通信を暗号化するための秘密鍵。キャリアのネットワークと暗号化された通信を行うために使用されます。
  • SMSや連絡先情報
    一部のSIMカードには、SMSメッセージや電話帳のデータが保存されています。

携帯電話が通信を行う際、まずSIMカードのIMSI番号を基地局に送信します。基地局は、このIMSI番号を使ってユーザーの契約情報や通信プランを確認し、通信が許可されると、認証キー (Ki) を用いて暗号化された通信が始まります。

SIMの種類

SIMには大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを見ていきます。

1. ミニSIM

ミニSIMは、最も一般的なSIMカードのサイズで、幅25mm×高さ15mm×厚さ0.76mmです。iPhone 4S以前やAndroidスマートフォンの多くがこのサイズを採用しています。ミニSIMは、携帯電話の機種変更やキャリア変更に対応しやすいメリットがありますが、カード自体が大きいため、端末のデザインに制約がかかるデメリットもあります。

2. マイクロSIM

マイクロSIMは、ミニSIMよりも小さいサイズのSIMカードで、幅15mm×高さ12mm×厚さ0.76mmです。iPhone 4以降やiPadなどのタブレット端末がこのサイズを採用しています。マイクロSIMは、カードが小さいため、端末のデザインに柔軟性があります。しかし、ミニSIMと互換性がないため、機種変更やキャリア変更に際しては専用のアダプターが必要になる点がデメリットです。

3. ナノSIM

ナノSIMは、マイクロSIMよりもさらに小さいサイズのSIMカードで、幅12.3mm×高さ8.8mm×厚さ0.67mmです。iPhone 5以降や最新のAndroidスマートフォンがこのサイズを採用しています。ナノSIMは、カードが非常に小さいため、端末のデザインに最大限の自由度があります。しかし、マイクロSIMやミニSIMと互換性がないため、機種変更やキャリア変更に際しては専用のアダプターが必要になるのがデメリットです。

参考文献
https://www.qtmobile.jp/beginner/simcard/
https://umobile.jp/magazine/kno022/
https://mobile.line.me/guide/article/20190607-0002.html
https://www.ntt.com/personal/services/mobile/one/hajimete/sim/what.html

レーザー墨出器

レーザー墨出器とは

レーザー墨出器

レーザー墨出器とは、レーザー光を用いて墨出しを行う装置のことです。正確に垂直線や水平線を示すことができます。建築現場などでは、配管や各種導線を正確に設置するためにこの墨出し作業が重要になります。レーザー光を用いることで簡単に正しい配置を見つけることができるのです。また、窓や床面が水平になっているか確認することもできます。測定用の三脚を用いて固定されたり、レーザーが見えにくい場合は検出用の受光器が用いられたりすることもあります。

レーザー墨出器の使用用途

主にレーザー墨出器が使われるのは建築現場です。配管などの正しい位置を確認する墨出作業に用いられます。昔は墨やチョークなどを用いて壁や柱に印をつけていましたが、レーザーを用いることで簡単に垂直線や水平線を調べることができます。これにより図面通りの正確な位置に配管を設置することが可能になりました。さらに、大きな建物でも簡単に垂直や水平を調べることができるので、柱や窓、床などが歪んでいないか確認することができます。

レーザー墨出器の原理

レーザー墨出器には、垂直・水平を出す方法の違いから主に二種類の方式があります。ここでは、その二つの原理から特徴までご紹介します。

ジンバル式

ジンバルと呼ばれる振り子のような仕組みを利用する方式です。レーザーを放つ機構には振り子がつけられており、これは重力によって常に垂直下向きを示します。振り子の垂直方向に従ってレーザーが放たれ、この光と垂直方向に水平なレーザーが放たれます。単純な構造のためコストが低い墨出器になります。しかし、振り子が揺れてしまうため、動かしながら正確なレーザーを放つことはできません。あた、風などの影響で横揺れの心配があるビルの高層部分などでの使用には適していません。

電子整準式

液体中の気泡のずれから水平を算出する方法です。振り子の代わりに気泡の入った液体が取り付けられます。傾きによって気泡の位置が変わることを利用して水平さを調べているのです。電子所整準式は壊れにくく建築現場での使用に適していますが、温度や気圧で気泡が変化して誤差が生じる可能性があります。

参考文献
https://diytools1.com/2017/02/12/post-17167/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/553/

気化性防錆剤

気化性防錆剤とは

気化性防錆剤とは、錆の発生の防止に使われる気化性の薬剤です。

VCI (英: Volatile Corrosion Inhibitor) やVRI (英: Vapor-phase Corrosion Inhibitor) などの略称でも呼ばれます。屋内や密封された空間において、金属が錆びることを防止する薬剤です。気化性防錆剤は、常温で気化する性質があります。気化した防錆剤は、防錆対象の金属に対して吸着もしくは反応し、錆の発生を抑制するために有利です。

金属と直接吸着・反応するのではなく、金属が錆びにくい雰囲気にすることによって防錆を行う製品もあります。気化性防錆剤は一般に液体またはスプレーとして提供され、金属表面に比較的簡単に適用可能です。特別な設備や技術は、必要としない場合がほとんどです。

ただし、一部の気化性防錆剤には有害な成分が含まれている場合があります。使用前に安全データシートを確認し、製品の安全な取り扱い方法に従うことが必要です。また、適切な通気を確保し、個人保護具を使用することも重要です。

気化性防錆剤の使用用途

気化性防錆剤は、金属製品の錆を防止する目的で使用されます。以下に使用用途のうち代表的なものを挙げます。

1. 自動車

自動車部品は、道路の塩や湿気などの要素からの保護が必要です。気化性防錆剤は、自動車部品の製造時やメンテナンス時に使用され、錆の発生を防止することできます。エンジンなど、少しの劣化が事故の原因となるような部品の錆対策にも広く使用されます。 

2. 倉庫

金属製品の長期保管時には、湿度や環境条件が錆の発生に影響を与える場合があります。気化性防錆剤によって金属の腐食防止を実施し、金属製品を保管する倉庫や保管場所での錆の発生防止に役立てることが可能です。

3. 金属加工

金属加工や加工中の金属を保護する目的でも、気化性防錆剤は有用です。溶接や塗装などのプロセスによって、金属の表面が露出します。したがって、防錆処理を行って金属を保護しなければならない場面も多いです。

4. 屋外設備

屋外に設置される発電機やエアコンユニットは、気候条件により錆びやすいです。気化性防錆剤は、これらの設備の表面に適用され、錆の発生を防止します。

気化性防錆剤の原理

気化性防錆剤は、金属表面に薄い保護膜を形成し、金属を酸化させる原因となる要素を遮断することで、錆を防止しています。一般的な気化性防錆剤は、揮発性の成分を含んでいます。これらの成分は液体または固体の状態で提供されることが多いです。

防錆剤を金属表面に適用すると、成分が金属表面から揮発して周囲の金属に付着し、金属表面に薄い保護膜を形成します。形成された保護膜は、酸化反応を促進する材料の侵入を防ぐことにより、金属表面を保護することが可能です。

保護膜は、さまざまな機構によって機能する場合があります。一部の気化性防錆剤は金属表面に油性の膜を形成して金属表面を覆い、酸化を防ぐ仕組みです。また、一部の気化性防錆剤は金属表面に化学反応を引き起こし、保護膜を形成します。

これにより、金属表面が酸化や腐食から保護されます。効果の持続性はさまざまな要件によって異なりますが、適切に選択して使用することで金属の耐久性を向上させ、錆の発生を防止するために有利です。

気化性防錆剤の選び方

気化性防錆剤を選定する場合には、使用環境や金属の種類を考慮することが必要です。その上で、コストなどを考慮して予算に見合った製品を選定します。

1. 使用環境

気化性防錆剤の効果は、使用環境によって異なる場合があります。湿度の高い環境や酸性ガスの存在する場所では、より強力な防錆剤が必要となることも多いです。使用する場所の気候条件や化学的環境を考慮し、製品の仕様や推奨用途に注目します。

2. 金属の種類

気化性防錆剤は、対象金属に応じて多くの種類が存在します。一部の防錆剤は特定の金属に適している一方、他の金属には適用できない場合も多いです。使用する金属の種類を確認し、その金属に適した防錆剤を選択します。

3. 製品の信頼性

防錆剤の製品評価やメーカーの信頼性も重要な要素です。製品の評価やレビューを調査し、信頼性の高いメーカーからの製品を選ぶことが推奨されます。

参考文献
https://www.juntsu.co.jp/rust/rust_kaisetsu01.php

真空タンク

真空タンクとは

真空タンク

真空タンクとは、内部に真空状態を保持することができる容器です。

大きさや形状、用途によっては真空チャンバと呼ばれることもあります。内部が減圧状態になるため、外圧に耐えることができる肉厚なステンレス鋼から作られています。

真空タンクは、内部に真空を保持することで熱の伝導を防ぐことが可能です。これにより、外部からの熱の侵入や内部の熱の逃げを最小限に抑えることができます。断熱性に優れた冷蔵庫や断熱容器として使用することが可能です。

また、内部の気体や液体を外部の環境から遮断します。液体や気体の蒸発や酸化を防ぐため、真空中で保管することができます。液体窒素や液体酸素などの冷却材料や特殊な化学物質の保管に有利です。

ただし、真空タンクは気密性が重要な要素です。タンク内の真空を維持するためには、定期的なメンテナンスと監視が必要です。気密性の劣化やリークの問題を早期に発見し、修復することが重要です。

真空タンクの使用用途

真空タンクは、さまざまな使用用途で利用されます。以下は一般的な使用用途一例です。

1. 半導体

電子機器の製造や半導体製造のプロセスでは、真空状態が必要です。真空中では酸素や水分などの不純物が存在しないため、電子機器や半導体の製造プロセスにおいて清浄な環境を提供します。また、真空タンクはガスや液体の分離・除去にも使用され、工業プロセスの効率や製品品質の向上が可能です。

2. 医療分野

真空タンクは、医療分野で利用されることも多いです。医薬品の製造や保存において、真空状態が必要な場合があります。一部の薬剤は酸素や湿気と反応しやすいため、真空タンクを使用してその劣化を防ぐことが可能です。

また、一部の医療機器も真空状態が必要とされる場合があります。さらに、外科手術や処置においても真空装置が使用され、血液や体液の排出や創傷の治療に有利です。

3. 宇宙探査

真空タンクは宇宙探査において、重要な役割を果たします。宇宙空間はほぼ真空状態であり、真空タンクは宇宙船や人工衛星などの内部環境を保護するために使用されることも多いです。

真空タンクの断熱性能により、外部からの熱や放射線を遮断し、内部の機器や乗員を保護します。また、宇宙空間での燃料や冷却材の保管にも真空タンクが使用されます。

真空タンクの原理

真空タンクは内部を減圧状態に保つことができる容器であり、高い耐久性と密閉性が求められます。したがって、真空タンクの素材は肉厚のステンレス鋼で、排気用のラインやリーク用のラインが取り付けられることがほとんどです。また、内部を観察するために窓が取り付けられた製品もあります。

真空タンクは内部の気体圧力を外部の気圧よりも低く保つことで、真空状態を実現する機器です。内部の気体圧力を外部よりも低く維持するために、タンクの構造は気密性が重要です。気密性の高い材料や接合部を使用し、気体の漏れを最小限に抑えます。

真空タンクの選び方

真空タンクを選ぶ際は、真空度や容量を考慮します。

1. 真空度

一部の用途では、超高真空にすることが必要があります。真空タンクの仕様には最大真空度や漏れ率などが明示されているため、それらの値をチェックして真空タンクを選ぶことが重要です。

2. 容量

必要な容量は、保管する物質や液体の量によって異なります。必要な容量を評価し、タンクのサイズや容量を選択することが必要です。容量が不足していると、目的に合った量を保管することができない場合があります。

真空タンクのその他情報

真空タンクの使い方

真空タンクを使用する際は、容器に亀裂やリークがないことを事前に確認することが必要です。仮に亀裂等があると真空が保たれなかったり、真空環境で大気圧によって装置が破損したりする危険性があります。また、蓋とタンク本体に隙間があると真空引きができないため、蓋をしっかり密着させて留め具で固定してから真空引きを行います。

保管環境によっては、真空タンクの内側の表面に水分や気体が吸着することも多いです。一度吸着した水分や気体は真空状態でも脱離しないことがあるため、使用前に加熱真空乾燥などの処理を行うことが望ましいです。

SICダイオード

SICダイオードとは

SICダイオードとは、シリコン (Si) と炭素 (C) からなる化合物半導体の基本素子の1つです。

SICはSi (シリコン) と比較して絶縁破壊強度が約10倍、バンドギャップが約3倍あり、より高耐圧で小型の電気回路素子を作ることが可能です。この特性を活かしてSICを用いたパワー半導体の開発が進められています。SICダイオードは、SICパワー半導体の代表例であり、ディスクリート (単体) 品として製造されている他、モジュールに組み込まれインバーターやコンバータ、IGBT等で使用されています。

特に、SICのショットキーバリアダイオード (英: Schottky Barrier Diode) は、順方向電圧を小さくしながら小型で高耐圧・高効率なスイッチング動作が可能な素子を作れることから、近年注目されている高性能なダイオードです。

その一方で、SICのウエハはSiのウエハと比較すると結晶を成長させるのが難しく、SICを加工して半導体素子を作るのもSiと比較して難しいと言われています。そのため、SICダイオードはSiダイオードを全て置き換えるのではなく、用途によって使い分けをしながら適用範囲を拡大して行くと予想されています。

SICダイオードの使用用途

SICダイオードは、電気自動車のインバータとして積極的に採用されています。電気自動車に搭載するインバーターにSICダイオードを使用することで、より少ない消費電力で、より遠くまで走れるようになります。

また、電車は消費電力が少なくなることが電気代の節約につながります。SICダイオードを使用した機器の導入はイニシャルコストは高くなりますが、運用コストの削減を実現しやすいです。東海道新幹線の最新車両ではSICダイオードを利用したインバーターが搭載されています。

SICダイオードを使用したパワーデバイスは、小型・軽量でかつ高電圧・高電流を扱えるうえ、高周波数の動作においても効率の低下が少ないのが利点です。今後は、SICダイオードの価格が安くなるに従って、消費電力の大きな機器から順に導入が進むと予想されています。

なお、SICと同じように新世代のパワーデバイスとして、GaN (窒化ガリウム) を素材とした半導体も注目されています。SiCとGaNの住みわけは、SiCがより高電圧・高出力を要する機器に、GaNはより高周波数で動作する機器に使用するのが一般的です。

SICダイオードの原理

SIC製ダイオードは従来のSi製ダイオードと比較してより高い電圧や電流に耐え、より高い動作温度に耐えることができます。これは、ベースとなるSICウエハーの物性が、Siウエハーと比較して優れているからです。

具体的には、SICはSiと比較すると、バンドギャップ、絶縁破壊電界強度、熱伝導度が大きくなります。バンドギャップは、Siの1.12 (eV) に対して、SiCは3.26 (eV) 、絶縁破壊電界強度はSiの0.3 (MV/cm) に対して、SICは2.5 (MV/cm) 、熱伝導度は、Siの1.5 (W/(cm・K) ) に対して、SICは4.9 (W/  (cm・K) ) とそれぞれに優れた値を示しています。

なお、SICウエハーの結晶構造には様々なタイプがありますが、パワーデバイスとして優れた特性を持つのは、4H-SiCと呼ばれる構造をもつもので、上記の値もこれに該当します。

SICダイオードの種類

SICダイオードには、SiCショットキ―バリアダイオードとSICpn接合ダイオード等の種類があります。基本構造はSiダイオードと同じですが、同じ大きさの電圧・電流を扱うのであれば、SICダイオードの方が小型になります。

1. SICショットキーバリアダイオード

構造としては、SICに金属がショットキー接続している形です。電子の移動によって電流が発生する仕組みになっています。

高速性と高耐圧が特徴的なダイオードです。高速性だけで言えば従来のSiダイオードも優れていましたが、SICショットキーバリアダイオードはSiの約10倍の絶縁破壊電圧を持っている点で優れています。1,000Vを超える電圧に対応する製品の製作も可能となっています。

2. SICpn接合ダイオード

構造としては、pn接合を利用しています。SICショットキーバリアダイオード以上の高耐圧と低抵抗が特徴です。これは、n型層に少数キャリアとして正孔が蓄積していくためです。

参考文献
https://techweb.rohm.co.jp/knowledge/sic/s-sic/03-s-sic/4968
file:///C:/Users/karug/Downloads/application_note_ja_20190404.pdf
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/sic/sic_what2

IOエキスパンダ

IOエキスパンダとは

IOエキスパンダとはマイコンの周辺ICとして使用される半導体デバイスです。

一般的にマイコンのピン端子として用意されているIOポートの数は限られています。例えば1つのマイコンを複数の製品に搭載することを考えた場合、機能の限定された製品と高機能の製品に対応する必要があります。

この様な場合、マイコン本体のピン数をできるだけ抑えることで、マイコンのコストを抑え、これを廉価型の製品に搭載します。同じマイコンを高機能製品に搭載する場合、制御ピンが足りなくなりますのでこのような時にIOエキスパンダを使ってIOポートを拡張します。

以上により、マイコンとIOエキスパンダの組み合わせによってシステムの拡張性を広げることが可能となります。 

IOエキスパンダの使用用途

マイコンを含むシステムの設計を行い製品としてリリースした後に、機能変更や機能の拡張が必要となった際に、マイコンに内蔵されているIOポートの数が足りなくなった場合、IOエキスパンダーを使って、不足するIOポートを補う場合に使われます。

用途として考えられるのは、例えば、多くの制御ピンが必要となる7セグメントのLEDを制御する場合の他、ごく一般的な入出力ポートとして使われます。

IOエキスパンダはマイコンからの制御により動作しますが、一般的にはI2Cバスなどのシリアルバスが使用されますので、高速にIOエクスパンダーのポートを切り替えたり、高速にデータを読み込んだりする用途には不向きです。 

IOエキスパンダの原理

IOエキスパンダはI2Cバス等のシリアルバス経由でマイコンから制御されます。一般的に8bitや16bitのIOポートが装備されていることが多いです。

マイコンからIOエキスパンダ内のポート用方向レジスタへ入力もしくは出力の設定をビット単位で行います。

その後、ポート入出力レジスタに所定のデータを書き込むことでデータの書き込みもしくは読み出しを行います。出力ポートに設定した場合はIOエキスパンダの各ポートから設定したデータが出力され、入力ポートに設定した場合は、設定された入力ポートからデータを読み込むことができます。

更に、IOエクスパンダーによっては割込み入力を受け付ける端子が用意されているタイプがあります。
あらかじめセットした所定の条件に合致した場合に、IOエクスパンダーの割込み端子の出力をアクティブにします。

この端子をマイコンの割込み入力に接続すれば、マイコンに内蔵する割込みを動作させることが可能です。この機能は、外部のイベントに対して瞬時にマイコンがこれを受けて、システムの制御を行いたい場合などに有効です。 

参考文献
https://docs.rs-online.com/964b/0900766b8137eed1.pdf
https://www.petitmonte.com/robot/howto_io_expander.html 

 

静電塗装器

静電塗装器とは

静電塗装器とは、静電塗装をするために使用される装置です。

静電塗装は塗装方式の1種で、塗料の粒子および塗装したいターゲットをそれぞれ帯電させることによって塗装します。通常の塗装と比べて塗装の効率が良いとされており、塗料の使用量を減らすことができるという利点があります。

欠点としては、塗装部分の形状によって塗料の付着しやすさが変わること、溶剤系の塗料を用いる際にスパークが生じて引火する場合があり、引火対策が必要なことなどが挙げられます。

静電塗装器の使用用途

静電塗装は、前述の通り塗装効率が良い塗装方式です。塗料の使用量や作業にかかる時間を削減できるため、費用や作業の効率化の面で優れており、大量生産を行う製品の塗装に向いています。自動車や建材、家電製品などの塗装では、静電塗装器が広く用いられています。

静電塗装において、塗料の付きやすさが塗装部分の形状に左右されるという点は課題の1つです。自動車の塗装ではこの課題を解消するため、エアーを利用して塗装部分の形状に合わせた塗装を行う技術が導入されています。

静電塗装器の原理

静電塗装は、静電感応とよばれる現象を利用した塗装方式です。

塗装対象であるターゲットをアースしておき、静電塗装器の負電極を接近させると、ターゲットの表面に正極が現れます。このような現象が静電感応現象です。

静電塗装器にかける電圧を上げていくと、放電電極の先端部ではコロナ放電が生じます。コロナ放電により空気中の酸素がイオン化し、酸素アニオン(オゾン)が大量に生成されます。この酸素アニオンが塗料の粒子に付着することで、粒子が負の電荷を持つようになるのです。

負電荷を帯びた粒子は、酸素アニオンによって形成されたイオン電流に沿って、ターゲットまで運ばれます。ターゲットに到達した塗装粒子は静電的な相互作用により、正電荷を帯びているターゲットの表面に付着します。これが静電塗装器を用いた塗装の原理です。

静電塗装器での塗装は、イオン電流の集中度によって塗料粒子の付着しやすさが異なります。そのため電流が多く集まる凸部は塗装しやすいが、電流が少ない凹部は塗装しにくいといった差が生じるのです。

静電塗装器のデメリット

静電塗装は、大量少品種であれば効率的に塗膜を形成する可能でこれが大きなメリットとして挙げられます。一方で、静電気と粉末を利用すことが逆にデメリットになることもあります。

塗装ムラや特有の欠陥発生
静電塗装は静電感応力を利用した塗装であるため、被塗装物の形状が均一でない場合は電場も不均一になりムラが生じます。凸部では電場が集中しやすいため、そこに塗料が集中するので他よりも厚くなったり、また電場が届く範囲であれば塗装できてしまうことで不要な部分も塗装されることがあるので注意が必要です。

静電気により雰囲気中のゴミや埃も同時に引き寄せられ巻き込み塗装されるため、「ゴミ・ブツ」と呼ばれる塗装の欠陥も生じることがあります。また「ゆず肌」と呼ばれる塗装表面が広い範囲で波打ったような状態なる欠陥で、電圧が高すぎて発生する逆電離現象が原因となります。

薄い膜厚が困難
静電塗装機では粉体を塗料として直接塗装するため、薄い厚みの塗膜を形成することができません。最小値の厚みで30μm程度とされていて、それより塗膜を薄くしようとするとムラなどの欠陥が発生し易くなるため、有機溶剤塗装のような液状塗料による塗装に切り替える必要があります。

少量多品種が困難
静電塗装は塗装前の洗浄に始まり、塗料の密着、高温での焼付乾燥と工程が長く複雑であるため、細かい色調が求められ複数回の塗装が必要とされる少量多品種では、生産性が著しく低下するため対応が困難になります。

専用塗装設備と安全対策が必要
高圧の電気と粉末を使用するため、感電事故や火災に対する安全対策を施した専用の塗装設備が必要なり初期投資費用が大きくなります。また塗装装置だけでなく、塗膜を定着させるための乾燥炉などや油分や錆を落とす前工程の設備も必要となるため、工程全体で見ると設備と作業員のコストも掛かることもデメリットの一つです。

塗料の粉末管理
使用する塗料は粉末であるため、使用だけでなく保管においても粉塵爆発などに対する安全対策が重要になります。また、粉末は表面積が大きく酸化などの汚染が進みやすくこれが欠陥の原因にもなるため、長期間保管する場合は清潔な環境を整える必要があります。 

静電塗装と電着塗装の違い

静電塗装と電着塗装の一番の違いは、静電塗装が塗料をスプレーで噴射し電解の力を利用して塗料を付着させるのに対して、電着塗装は塗料が入った浴槽に被塗装物を浸し、そこに電流を流すことで被膜を析出させる点です。電着塗装の特徴は、液状の塗料に浸し塗装することによる、高い均一性にあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/73/10/73_512/_pdf
https://bikou.cc/201
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1954/9/6/9_6_19/_pdf 
https://www.ncc-nice.com/co_mame/vFl20140815154843-327.html

除塵装置

除塵装置とは

除塵装置とは、水から藻類や小魚をはじめとする塵芥を取り除き、清浄な水を供給するための装置です。主に発電所や用水路などで利用されています。

除塵装置として使用するには、ただ塵芥を除去するだけでなく、その除去した塵芥を搬送したり一次的に貯留したり、水分を分離したりする機能まで求められます。そのため、それぞれの機能を備えたスクリーン、除塵機搬送装置、貯留装置、制御機器といった複数の設備で構成されています。

除塵装置の使用用途

除塵装置は、塵芥が含まれていない清浄な水を供給するための装置です。代表的な導入事例としては、火力発電所や原子力発電所、水力発電所が挙げられます。

火力発電所や原子力発電所では、大量の冷却水が必要です。この冷却水として海水が利用されていますが、海水にはクラゲや海藻、小魚といった多種多様な塵芥が含まれており、そのままでは冷却水に使用できません。

また、水力発電所では大量の水で発電を行っております。取水口に土砂や落葉、倒木などの流木、人の捨てるごみといった塵芥が詰まると発電効率が低下し、機器の故障を引き起こす可能性があります。

そこで発電所の取水口に除塵装置を設置することで、これらの塵芥を除去しているのです。

除塵装置の原理

除塵装置はスクリーンの水中の塵芥を捕捉します。レーキ型とネット型は塵芥を掻き揚げて取り除き、渓流取水工型が余剰水で塵芥を下流に流します。

除塵機はレーキ型とネット型、渓流取水工型に大別されます。

レーキ型・ネット型の除塵機の種類は、1つの箇所に固定する定置式と、台車に積載して移動できるようにした移動式の2つです。移動式はコスト面で秀でていますが、移動の時間がかかるため、除塵能力においては定置式が勝ります。

除塵装置の種類

1. レーキ型

レーキの降下方式によって、回転式と往復式に分類することができます。回転式は、レーキがスクリーンの上流または下流側を降下した後、反対側を上昇する方式です。上昇の際に、スクリーンで捕捉した塵芥を掻き揚げているのです。

往復式では、レーキがスクリーン前面もしくは前方を降下した後、スクリーン面に沿って上昇します。往復式の駆動には、装置の規模が大きい場合はワイヤロープ、規模が小さい場合にはチェーンラックなどが用いられます。

2. ネット型

除塵機は、デュアルフロー式とストレートフロー式が主要なタイプです。ネットの洗浄および除塵を行う際、ストレートフロー式では下流側に塵芥が流出する危険がありますが、デュアルフロー式では流出しにくいといった違いがあります。 

3. 渓流取水型

大規模な水力発電所では、レーキ型やネット型といった除塵機がよく使われていますが、小規模な水力発電所では、これらのタイプに加えて、渓流取水型除塵機などが利用されています。

渓流取水工型には自然取水方式、取水堰方式、水クッション方式、バースクリーン方式、越流水俯角面付着取水堰方式の方式があります。

特に、小水力発電では渓流取水工型バースクリーン方式が主要なタイプとして採用されています。この方式では、渓流河川に固定堰を設置し、堰広頂部に水平又は傾斜したスクリーンを取り付けることでスクリーンの隙間から水を取り込みます。

スクリーンの取り付け角度は重要で、水平から30度以下にすると、土砂や落ち葉などのゴミが詰まりやすくなります。一方、スクリーンの取り付け角度を45度から50度にすると、ゴミが詰まりにくく、大容量の水流にも対応しやすくなります。さらに、スクリーンのスリット幅を小さくすることで、ゴミの除去能力を高めることができます。

参考文献
http://www.kakoki.co.jp/products/m-019/index.html
https://www.ubemachinery.co.jp/totalservice/dustclean/products/rotary-bs.html
https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/sutomane/pdf/jyojin.pdf 

品質管理用手袋

品質管理用手袋とは

品質管理用手袋

品質管理用手袋は異物混入のリスクを下げる

品質管理用手袋は品質管理や精密作業などで使用される手袋です。通常の手袋を用いた作業では手袋の繊維や糸くずなどが落下、製品に混入する可能性があるため、精密部品や塗装現場などのホコリ、チリを嫌う現場で品質管理用手袋は用いられます。

品質管理用手袋には様々な特徴がある

品質管理用手袋は手先を使った細かな作業を行えるように手のフィット性に優れていたり、グリップ性に優れています。また電子部品など静電気を嫌う現場に向けた帯電を防ぐ手袋も販売されています。

品質管理用手袋の使用用途

品質管理用手袋は幅広い分野の品質管理で用いられる

異物の混入はクレームの原因となるため、品質管理用手袋は様々な業界で使用されています。特に食品加工や精密部品、塗装現場などで品質管理用手袋は用いられています。また、指先にウレタン樹脂をコートして手先を使った細かな作業を行うことができる手袋もあり、この手袋は自動車部品の組み立てや一般機械の組み立てなどのライン作業でも用いられています。

その他、通気性に優れた品質管理用手袋もあり、これは品質管理や仕分け作業など長時間手袋を着用しながら作業を行う際に用いられます。

品質管理用手袋の特徴

品質管理用手袋は糸くず、摩耗によるゴムの粉の発生を防ぐ

品質管理用手袋は綿やナイロンポリエステルなど様々な材質から作られています。いずれの手袋も繊維の糸くずや摩耗によって生じるゴムの粉などの異物が製品に混入しないように作られています。また、ウレタンゴムをコートして指先のフィット感を高めたりグリップ性を高めた手袋や、カーボンを練り込んで導電性を高めることで静電気の帯電を防ぐ手袋も販売されています。

長時間使用し続けるとゴミが発生する可能性あり

一方でゴムがコートされていたり、繊維がむき出しになっている手袋は長時間使用し続けたり強い力を加え続けると摩擦によって糸くずやゴムの粉が発生することがあります。異物混入を防ぐためにも使い捨てタイプの品質管理用手袋は頻繁に交換することが望ましいです。

回転体の近くでは手袋を外した作業が必須

なお回転体などの近くで作業する際は手袋が巻き込まれて大きな怪我につながる恐れがあるため、そのような作業では手袋など引っかかりやすいものは外してから作業する、もしくは回転体の電源を落としてから作業することを強く推奨します。

参考文献
https://ec.midori-anzen.com/shop/c/cHAIA/
https://www.monotaro.com/s/c-17931/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/fs_health/T1700000000/T1708000000/T1708140000/

帯電装置

帯電装置とは

帯電装置とは、静電気を生じさせることで、目的の物体を帯電状態にする装置です。

火花の発生原因になったり、電子機器のノイズを引き起こしたりするため、静電気を嫌う環境や製品は多いでしょう。そのためイオナイザとよばれる静電気を除去できる装置や、静電気の防止対策がなされた製品が広く普及しています。

静電気はこうした危険性を持つ一方で、物体どうしの付着などに利用できます。そのため、静電気を強制的に起こしたい際に帯電装置が使用されます。

製品の形状としては、帯電ガンとよばれる銃のような形のものや、棒状の帯電バーなどがあります。

帯電装置の使用用途

帯電装置は静電気を生じさせ、物体を帯電させる装置です。静電気の力を利用して、物体を付着または吸着することができます。

帯電装置を用いると、絶縁性のものであっても帯電させることが可能です。そのため紙やビニール、フィルムなどを帯電させたのち、金属をはじめとする導電体やガラスに付着するといった使い方ができます。この場合には帯電を利用して付着するので、粘着剤やテープを使う必要がありません。

他にも、プラスチックやセラミックなどの粉体を吸引するなどの目的で使用されることがあります。

帯電装置の原理

帯電装置の帯電方式としては、コロナ放電を利用したものが代表的です。

一般に、空気は絶縁体として扱われます。こうした絶縁性を有する気体に高電圧をかけると、一部が電離し、電子およびイオンが生じます。これらが移動することにより電流が流れ、絶縁性であった気体が導電性を持つようになるのです。

この状態で電圧をさらに上げると、電離で生じた電子が加速され、運動エネルギーが上昇していきます。電子のエネルギーが一定以上になると、これに衝突した中性分子を電離し、発生した電子が別の中性分子を電離するといった連鎖的な反応が起こります。こうなると加速度的に電流が増加していき、最終的には火花を伴って発光するのです。この現象がコロナ放電です。

帯電装置の放電極にかかる電圧を上げてコロナ放電を起こすと、周辺の空気が電離されて大量のイオンが生じます。このイオンを付着させることによって、目的の物体を帯電させています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/26/3/26_3_203/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1954/9/6/9_6_19/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/73/10/73_512/_pdf
https://www.greentechno.co.jp/power/gun.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/28/4/28_245/_pdf