ビームスプリッタ

ビームスプリッタとは

ビームスプリッタ

ビームスプリッタとは、一本のビーム (光速) を2本に分離するための光学素子です。

ビームスプリッタは、光路図などでBSまたはB/Sなどと略記されることがあります。ビームスプリッタに光を通すと、ビームスプリッタに設計された比率で透過光と反射光に分けることができます。その比率は1対1であったり、2対8であったりとさまざまです。

特に、1対1のものハーフミラーと呼ぶことがあります。通常、比率は固定ですが、波長板などと組み合わせることで任意に分割する装置を作ることも可能です。また、分離した光を再びビームスプリッタに通して再結合させることもできます。

ビームスプリッタの使用用途

ビームスプリッタは、主にカメラや顕微鏡などの光学機器に用いられます。ビームスプリッタには、直角プリズムを2つ張り合わせた「キューブ型」と、薄いガラスに特殊なコーティングを施した「プレート型」があります。

蛍光光学顕微鏡などには、プレート型のビームスプリッタが用いられることが多いです。キューブ型は光学系をコンパクトにしたい場合や、透過光と反射光の光路量を揃えたい場合などに用いられます。一般的に、キューブ型のほうは価格が高く、プレート型のほうが安価な傾向があります。

ビームスプリッタの原理

ビームスプリッタは、誘電体多層膜により一部の光を反射させることで、ビームを2本に分離させることができます。ビームスプリッタの形状には、キューブ型とプレート型があり、形状によって原理は異なります。

1. キューブ型

キューブ型ビームスプリッタは、2つの直角プリズムの接着面に、誘電体多層膜という光学皮膜を張り合わせたものです。誘電体多層膜の厚みを調整することで反射光と透過光の割合を変えることができます。キューブ型の特徴は、ビームスプリッタへの光の入射角が0度であることです。そのため、入射光の同軸上で反射が起こり、光源方向に迷光として戻ってしまう可能性があります。

2. プレート型

プレート型は、平たいガラス板に誘電多層膜を蒸着しています。プレート型は光を45度で入射させるので、キューブ型のような迷光は発生しにくいですが、透過光が屈折して出てくるため、反射光との光路差が出てしまいます。そのため、光学系でのアラインメントが重要になり、頻繁な抜き差しですぐに軸ズレなどを起こしてしまうので注意が必要です。

ビームスプリッタの種類

ビームスプリッタは、反射するビームの偏光特性により、以下の2種類あります。

1. 無極性ビームスプリッタ (NPBS)

無極性ビームスプリッタは、ビームを単純分割しただけで、極性は有していません。光学機器の様々なアプリケーションで利用され、顕微鏡や干渉光学系にはなくてはならない存在です。

通常、反射面にはクロム系のコーディングがなされており、透過側には何もありません。よって、入射経路を間違えると分割された2つのビームの強度が大きくことなってしまうので注意が必要です。前述の通り、透過光と反射光の比率が1:1となった場合に、ハーフミラーと呼ばれ、検査用照明の1つである同軸落射照明にも活用されます。同軸落車照明を使うことで対象物からの正反射光を効率的に拾うことができ、きれいな像を取得できます。

2. 偏光ビームスプリッタ (PBS)

ビームをS偏光、P偏光に分離するためのビームスプリッタです。半導体・液晶露光装置、干渉光学系、各種測定器に使用されています。P偏光は透過し、S偏光は反射する特性を利用して、無偏光状態から偏光状態を作り出す素子として活用されます。その消光比は高く、製品にもよりますが、おおよそ1,000:1程度となる場合が多いです。

偏光ビームスプリッタと波長板を組み合わせることで、任意の比率で光を分割することが可能です。1/4波長板を通過した直線偏光は、その波長板の角度に応じて、偏光角を変えることができます。波長板の光路の後ろに偏光ビームスプリッタを設置すれば、波長板の角度調節によって、ビームスプリッタで任意の強度比でビームを分割できる装置を作ることが可能となります。

ビームススプリッタのその他情報

ビームスプリッタとプリズムの違い

ビームスプリったとプリズムの違いは用途です。キューブ型ビームスプリッタは直角プリズム2個で構成されています。一方、プリズムの斜面にビームスプリッタとして機能するための光学薄膜を形成し、もう片方のプリズムと接合することでキューブ型を作成します。プリズムを2個活用しているので、光学薄膜が直接空気と接することがなく、薄膜の劣化が生じません。

プリズムは積極的に屈折を利用して光路を変える、分光するなどの用途で用いられますが、ビームスプリッタとして活用した場合は、透過光の屈折はなく、反射と透過を利用した光学素子となります。

参考文献
https://www.global-optosigma.com/jp/community/comm05_11.html
https://www.edmundoptics.jp/knowledge-center/application-notes/optics/what-are-beamsplitters/
https://www.keysight.com/ja/pc-1000004018%3Aepsg%3Apgr/high-performance-beamsplitters?cc=JP&lc=jpn
https://www.edmundoptics.jp/knowledge-center/application-notes/optics/what-are-beamsplitters/
https://www.chuo.co.jp/core_sys/images/main/pdf/38GC0946.pdf

赤外線サーモグラフィー

赤外線サーモグラフィーとは

赤外線サーモグラフィー

赤外線サーモグラフィーは、赤外線量を熱エネルギーに換算して温度分布を可視化することができる赤外線カメラです。

温度計は基本的に点で温度を計測するのに対し、赤外線サーモグラフィーは面で温度測定ができるのが特徴です。そのため高速かつリアルタイムの可視化も可能です。

また物体から放出される赤外線を感知しているので、非接触で離れたところから測定を行えるというメリットがあります。

赤外線サーモグラフィーの使用用途

赤外線サーモグラフィーは、医療・産業分野で広く使用されます。
医療分野では、皮膚の表面温度を測定し、それをもとに血流の良し悪しを判断する目的で使われることがあります。近年では、イベント会場などで体温測定に使用されることも一般的です。

また、建築分野で欠陥部位の検出などに使われることもあります。例えば、ひび割れなどの欠陥部分に水がたまり、周囲よりも温度が低いことがあります。これを赤外線サーモグラフィーで検出すれば、建物の老朽化や欠陥部位を調べることが可能です。

赤外線サーモグラフィ―の原理

赤外線は熱を発するものからは必ず放出されます。このとき放射される赤外線量は、温度の四乗に比例しています。したがって、赤外線量をカメラによって検出すれば、赤外線源の温度を逆算的に求めることが可能です。

しかし、これはいわゆる黒体輻射のような理想的な赤外線の放射体の場合です。実際にはカメラ測定時の損失や画像センサーの量子収率によって誤差があるため、その補正を行う必要があります。

赤外線サーモグラフィーは赤外線を光として検出する方式と、熱線として検出する方式があります。
光として検出する場合は一般的なデジタルカメラと同様です。ただし、赤外線領域に感度を持つセンサーを用いています。
熱線として検出する場合、センサーが赤外線受光時における温度上昇に伴った抵抗値の変化から、それを電流値の変化として検出しています。

赤外線サーモグラフィ―のその他情報

1. 赤外線サーモグラフィーでの検温

2019年末の中国・武漢市で初めて確認された新型コロナウイルスが世界中で広がりました。その際は、感染症防止対策としてサーモグラフィーによる検温が重要な役割を果たしました。企業や店舗、公共施設、イベント会場の入館ゲートなどあらゆる箇所で検温が行われるようになりました。

赤外線サーモグラフィーでは熱画像ピクセルごとに合計で数千の温度変化を把握可能です。このため、赤外線サーモグラフィー1台で、数万個のスポット放射温度計での同時測定と同じ効果を発揮します。精度も高く、検査スピードを短縮することも可能です。

高度な顔認証や管理ソフトウェアを併用することで、高度な入館管理をサポートするAI認証端末の導入も進んでいます。

AI認証端末の特長は、ウォークスルーで検温し、異常体温を発見するとアラーム音で知らせることが可能です。体温測定は、非接触で0.4秒以内に体温を認識し、体温検出における測定精度は±0.3度程度です。また認証精度は30~50 cmの距離で顔や手の平を高速認証するほか、マスクを着用しているときでも可能です。

2. 赤外線サーモグラフィーのアプリ

スマートフォンに装着できる赤外線サーモグラフィーと専用アプリを連携させることで、簡単に熱を可視化させることができます。

AndroidのmicroUSBやiPhoneのLightningアダプターで装着します。業務用機器というイメージが強い赤外線サーモグラフィーが、アプリによって一般ユーザーも手軽に利用できます。

フリアーシステムズでは、無料の専用アプリFLIR ONE(フリアー ワン)を起動して熱画像を撮影可能です。特殊なカメラで読み込んだ長波赤外線情報と標準カメラの写真を組み合わせることにより、従来の業務用サーモグラフィーより鮮明な赤外線画像を撮ることができます。

このダブルカメラ構造によって、「温度」という情報をスマートフォン画面で確認できるようになりました。

参考文献
http://www.avio.co.jp/products/infrared/what-thermo.html
https://viewohre.co.jp/Views/Theory/AboutThermo.aspx
https://time-space.kddi.com/digicul-column/suguyaru/20170816/2075

刻印機

刻印機とは

刻印機

刻印機 (英: marking press) とは、様々な材質や形状の物体に文字や模様をつけるための装置です。

プリンターと類似していますが、インクなどを塗布するのではなく、対象物を物理的に削ったり、化学的に変色させたりする点で異なります。したがって、刻印機で印字したものは摩擦などに強く、消えにくいのが特徴です。

従来、針や型などを使って圧力をかけることで印字を行っていましたが、近年は、レーザーを使って非接触的に印字を行う方式が顕著です。

刻印機の使用用途

刻印機は部品や製品の品質保証や管理体制の強化を目的として、製造年月日、製造番号やシリアルナンバー、ロットナンバーなどの刻印に用いられます。近年は、レーザーを使って非接触的に刻印する技術が進歩しています。

製品に物理的な負荷がかからないことや、凹凸のある複雑な形状でも印字できること、更に高速に詳細な印字ができることなどから、レーザー刻印機の使用が顕著です。また、レーザーを使用すると特殊な型などを必要としないため、印字内容の変更にも柔軟に対応できる点がメリットです。

刻印機の原理

刻印機の種類は、大きく分けて接触式と、非接触式があります。

1. 接触式刻印機

接触式はさらに、活字を必要とするタイプと針状のもので印字するタイプの2種類に分類できます。

活字を必要とするタイプ
活字を必要とするタイプは、ホルダ式やナンバリング式があります。それぞれ印字したい活字をホルダにセットしたり、ダイヤル式に並んだ活字を選んだりして、その後圧力をかけることで表面をへこませて印字を行います。

針状のもので印字するタイプ
針状のもので印字するタイプは、ドット刻印機や精密グラインダーなどがあります。ドット刻印機は、マーキングピンと呼ばれる針を表面に押し当てることで一つの点を打ちます。この点を複数打ち、点描することで刻印を行います。

精密グラインダーは、先端がドリルのように回転する針を使って表面を削り取ることで印字が可能です。基本的には手作業で印字を行うので、処理能力は低く、産業分野ではあまり使われません。

2. 非接触式刻印機

非接触式は、レーザーを照射したときに酸化などの化学反応を用いてコントラストを付ける方式で、レーザーマーカーとも呼ばれます。

刻印機のその他情報

1. プレス式の刻印機

プレス式の刻印機は、スプリングの反発力を利用した衝撃 (インパクト) で、プレス加工のように印字対象物に対して直接打刻するものです。刻印機は、手動式とエアー駆動式があります。いずれも操作が簡単であり、半永久的な刻印が可能です。

手動式の刻印機は、打刻荷重を0から自由に設定可能で、対象物の厚さによる高さ微調整が必要ありません。また、プレス用途だけではなく、カシメ、圧入、曲げ等の作業も可能です。

一方、エアー駆動式の刻印機は、エアー源だけで刻印ができるメリットがあります。このため、持ち運びができるハンディタイプの刻印機が、各メーカーから販売されています。

2. レーザー刻印機

レーザー刻印機は、レーザービームで印字対象物の表面を熱変化させて、対象物に印字や刻印を行うもので、主に金属や樹脂などへの刻印やマーキングに使用されます。刻印に使用するレーザーはコンピューターで制御します。

小さなパターンを精細に、かつ高速で刻印することができます。印字対象物に対して非接触の状態で行われるため、製品に打刻の衝撃を与えず刻印が可能です。

使用されるレーザーは、ファイバレーザーが知られています。ファイバレーザーは固体レーザーの1種で、この固定レーザーからの光源を共振媒体によって増幅し、レーザー光として発振させて使用します。ファイバレーザーは、ビームスポットが小さく、ビーム品質に優れるため装置の小型軽量化が可能であり、切断加工やマーキング、溶接などの産業用途に広く使用が可能です。

また、使用されるレーザーとしてUVレーザーも使われます。UVレーザーは、基本波長レーザーの波長 (1,064nm) の1/3 (355nm) の波長を有しており、各素材に対して吸収率が非常に高く、熱損失を与えない印字や加工を行うことが可能です。高い発色性や製品へのダメージを抑えた印字が求められる用途に最適なレーザーです。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/basics/marking-press.jsp
https://bipj.brother.co.jp/printer/cat/marker/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/basics/marking-press.jsp
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/basics/uv-laser.jsp
http://www.dimach.co.jp/standard/
https://www.toyo-tos.co.jp/marking/product/impact_press.html

LEDドライバ

LEDドライバとは

LEDドライバとは、LEDを安定駆動し、かつ安全に制御するための集積回路 (IC) のことです。

LEDドライバである制御IC内には、さまざまな機能を組み込むことができますが、基本となる機能はLED専用のスイッチング電源です。LEDは電流値によって発光量が変動し、その色によっても電流値は異なるため、安定した駆動には高い精度の電流制御が必要となります。

そのためには、定電流回路による制御が非常に重要であり、これがLEDドライバの主な機能です。LEDドライバは、光源用や照明用などの用途によって適切な制御ができる専用の製品が、各メーカーから多品種用意されています。

LEDドライバの使用用途

LEDドライバの使用用途は、その名の通りLEDの駆動制御用に使用されていますが、近年では照明器具に蛍光灯ではなく、低消費電力で長寿命なLEDを採用するのが主流となっていることから、LEDドライバも照明用のものが数多く販売されています。

照明器具は明るさの調節を要求されることが多く、特にLEDドライバの場合には厳密な電流の制御が重要です。昨今、SDGsに代表されるように省エネ推進の観点からLEDを照明に切り替えるニーズも多く、高効率な点灯を行うことも要求されます。

他にも、家電製品や自動車などに搭載されるインジケータランプとしてもLEDを採用するのが主流であり、こうした用途に専用のLEDドライバが開発されている状況です。

LEDドライバの原理

LEDとは、「Light Emitting Diode (発光ダイオード) 」のことで、PN接合の順方向にバイアス印加した際に発光する半導体素子を指します。LEDドライバの原理は、この半導体素子のダイオード部分に、順方向電流を適切にバイアス供給するための回路を内蔵している点にあります。LEDドライバはIC上に集積された定電流生成回路と、製品によってはPWM制御回路や、SPIやI2Cインターフェイスを一緒に内蔵しています。

一般にLEDの発光量は流す電流の大きさで変動しますが、LEDは電流値に応じて、発光色 (発光波長) も同時に変化します。また、電流を流しすぎると素子寿命に大きな影響を与えてしまいます。よって、LEDの発光特性に応じて、光量や色合い、発光効率などを考慮の上、使用するLEDに最適な電流値を精度よく制御しながら流す必要があり、そのためにLEDドライバが用いられているのです。

LEDドライバは、単機能の場合はディスクリートのツェナーダイオードMOSFET等を組み合わせても構成できますが、複数のLEDを直列や並列接続し、最適電流値の異なるさまざまな発光色のLEDを組み合わせて動作させたい場合には、要求仕様を満足するためのICが用いられています。

LEDドライバのその他情報

1. LEDドライバのドライバ形式

LEDドライバに用いられるドライバ形式は、リニア型や昇降圧型などさまざまな形式があります。

リニア型
DCDCコンバータを内蔵せず、MOSFETと抵抗などで定電流制御を行う回路形式です。単機能ゆえ、小型化やコスト低減は図れますが、入力電圧が高い際にMOSFETの損失が大きいというデメリットがあります。

昇降圧型
LEDの段数増加にも対応可能な昇圧機能や降圧時の損失増加を抑制し高効率動作が可能な回路形式です。ただし回路が複雑でコストも高くなるため、用途に応じて昇圧や降圧のみ対応可能なLEDドライバ形式も広く普及しています。

2. PWM制御

LEDドライバには調光のためにPWM制御が広く用いられています。ドライバのDC電流値を調整する手法では、効率低下による発熱影響の問題と、電流変化に伴う波長変化 (発光色の変化) の問題があるためです。

PWM制御のドライバの場合、矩形パルスの幅 (デューティー比) を調整し見かけ上の電圧を可変すればよく、調光に伴う電力ロスは発生しません。このようなドライバでは、LEDの調光は半固定抵抗器で行う場合が多く、半固定抵抗器を取り外してボリュームに付け替えればボリュームで調整可能なLEDドライバが実現します。

LEDの明るさは、パルスのデューティサイクルに比例しますが、あまりにもON/OFFのサイクルが遅い場合には、人の目で識別できてしまい照明のチラツキに繋がります。そのため、PWM制御の設定周波数には注意が必要です。

3. シリアルインターフェイス

家電品や自動車のインパネには、複数の異なる色のLEDが使われている場合が一般的です。制御するLEDの種類と数量によっては、ON/OFFやバイアス値のアナログ信号のやり取りだけでは、IC接続が困難になることがあります。このような場合には、SPIやI2Cといった数線のデジタル制御でのシリアルインターフェイスが用いられます。

シリアルインターフェイス機能を有するLEDドライバには、数百個のLEDを同時制御可能な大規模なものや、チャンネル毎の輝度の制御や診断が可能な製品もあります。

参考文献
https://www.ti.com/
https://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja409/jaja409.pdf
https://www.otsuka-shokai.co.jp/products/led/knowledge/parts/driver-circuit.html
https://strawberry-linux.com/catalog/items?code=13001

フォトインタラプタ

フォトインタラプタとは

フォトインタラプタとは、一組の発光器と受光器を用いて光によって、物体の有無や位置を検出する機能を持った装置です。

フォトインタラプタは透過型と反射型に分けられます。透過型のフォトインタラプタは、発光器と受光器の間を物体通過する際に光を遮断することにより検知するものです。一方で、反射型のフォトインタラプタは、発光器が発する光を物体が反射し、その反射光を受光器が検出することで検知するものです。

一般的に透過型をフォトインタラプタ、反射型はフォトリフレクタと呼び、両者を区別しています。本記事では、前者に限定して記します。なお、透過型のフォトセンサでは、発光素子と受光素子を向かい合わせて設置しそれらを1つのパッケージに収めたものが半導体メーカーから販売されていて、いろいろな機器で使われるものはそのような製品 (部品) です。

投光器と受光器が別体のものは、生産ライン上の製品検出や屋外での人物の検出など比較的大きな物体の検出に採用されます。前者を一体型、後者を分離型と呼んで区別することがあります。

フォトインタラプタの使用用途

フォトインタラプタは、物体の通過を検知する機構のセンサーとして使われます。

具体的な応用例の一部を以下に挙げます。

  • デジタルカメラ等の撮影機材において、レンズの繰り出し量の検出や絞りの口径検出等
  • 複写機における感光ドラムのタイミング検出、コピー用紙の通過検知等
  • プリンターにおける印字ヘッドのポジション検出やタイミング検出、印刷用紙の通過検知等
  • 自動改札機における人の流れの検知
  • 自動販売機での紙幣の通過検知

以上のように、多くの分野で様々な用途に使われています。

フォトインタラプタの原理

フォトインタラプタの原理

図1. フォトインタラプタの原理

フォトインタラプタは、検出光を発する発光器とその光を受光する受光器から構成されています。

  • 発光器
    発光素子である近赤外LEDを用いて、スリットを通して特定の方向に近赤外光を投射するもの。
  • 受光器
    フォトトランジスタを近赤外光のセンサーとして用いて、フォトトランジスタのコレクタ電流の変化から物体の有無を検知するもの。

即ち、発光器から投射された近赤外光は常に受光器で受けていることから、その光路上に物体が来ると光が遮られ、受光器のフォトトランジスタのコレクタ電流が減少します。受光器の処理回路はコレクタ電流の大きさの変化を捉えて信号を出力するので、物体の通過を検出できることになります。

なお、一体型は製造時に発光器と受光器の光軸を合わせているため、改めて位置調整する必要はありません。一方、分離型では設置時に発光器の光軸と受光器のセンサー位置を正確に合わせる必要があり、この調整が不十分だと物体の検出ができなくなります。

フォトインタラプタのその他情報

フォトインタラプタの使用上の注意点

透過型のフォトインタラプタを使用する際は、以下の点に注意する必要があります。

1. 透過率の高い物体の検出
透明度が高く光が透過する物体は近赤外光も透過させるので、受光器で検出できない場合があります。

2. 小さな物体の検出
発光器のスリットより小さな物体では近赤外光を充分遮れないため、検出できない場合があります。スリットの大きさは仕様書に明記されているので、設計時に確認することが大切です。

3. 外乱光が廻り込む環境下での使用
受光器のセンサーに強い光が廻り込むと、センサーであるフォトトランジスタが飽和して物体の検出が困難になります。特に、白熱電球の様に波長1,000nm付近に大きなエネルギーを有する光は、フォトトランジスタ前面に設置された可視光カットフィルタを通過しますので、大きな影響を与えます。

4. 経時による発光器 (近赤外光) の出力低下
連続して通電動作する機器で使われる場合、発光器の近赤外LEDの光出力が徐々に低下し、正常に動作しなくなります。感度の低下に充分余裕を持った設定がおすすめです。

参考文献
https://jp.sharp/products/device/about/electronics/photointr/index.html
http://www.kodenshi.co.jp/top/seminar/vol_04/
https://www.omron.co.jp/ecb/sensor/pms-basics/precautions?sectionId=precautions
https://www.omron.co.jp/ecb/sensor/pms-basics/basics?sectionId=basic#basics02

タッチパネルディスプレイ

タッチパネルディスプレイとは

タッチパネルディスプレイ

タッチパネルディスプレイは、表示装置としてのディスプレイと入力装置としてのタッチパネルが一体となった、画面に触れることで操作ができる電子部品です。誰にでも簡単で直感的な操作を可能にするので、様々な機器に搭載されている身近な製品です。

以前は、手袋などをしていると操作ができないという問題がありましたが、近年では、さまざまな方式の開発と改善によって、こういった問題もほとんど解消されています。

タッチパネルディスプレイの使用用途

タッチパネルディプレイは、日常生活に浸透している非常に身近な部品です。例えば、スマートフォンやタブレットには必ずと行ってよいほど搭載されています。

タッチパネルディスプレイは、用途に応じて、指による入力と専用のペンによる入力ができるものもあります。

例えば、ATMの入力など、ボタン操作のような単純な動作や決まった操作を行う場合は指による入力が向いていますが、宅配伝票などにサインなど、繊細で複雑な動作にはペンの入力が適しています。

タッチパネルディスプレイの原理

タッチパネルディスプレイで入力ができる原理は、大きく分けて以下のものがあります。

1. 静電容量方式

人体の静電容量を検知して、その座標を返します。画面表面に微弱な電場を張り巡らせ、パネル表面に指が近づいたときに流れる電流を検出しています。

2. 抵抗膜方式

透明な電極膜を近接させて貼り合わせた構造をしており、パネル表面を押さえると電極同士が接触し電流が流れます。その際の電圧の変動を検出することで押された位置の絶対座標を決定します。感圧式などと呼ばれることもあります。

3. 赤外線方式

パネル表面に平行な赤外線ビームがはられており、指が近づいて遮光された位置を三角測量をもとに検出します。 超音波表面弾性波:パネル表面を超音波(表面弾性波)で振動させておき、指で触れた際の振動数や振幅の変化を検出します。 電磁誘導方式:磁場を発生させる専用のペンでの入力が前提ですが、ペンが近づいた際に電磁誘導で発生する電場の変化を検出する方式で非常に検出精度が高いのが特徴です。

操作性、視認性および薄型化

スマートフォンに代表されるタッチパネルディスプレイは、ATMや自動券売機、自動販売機、カーナビ、製造・検査装置など、数をあげたらキリがないほど、現代社会に欠かせないものになっています。

操作性と視認性の観点から、いくつかの事例を挙げてみます。 まずは、カーナビ用途に広く用いられた、液晶ディスプレイ上に抵抗膜方式のタッチパネルを貼り合わせた構成です。この構成におけるタッチパネルの操作性の特徴として、下記の特徴があります。

  1. タッチ座標の検出は1箇所(シングルタッチ)に限定
  2. 物理的に一定程度の圧力が必要
  3. タッチ手段の導電性が不要(あらゆる手袋の着用が可能)

同じ構成におけるディスプレイの視認性の特徴としては、下記のものが挙げられます。

  1. パネル透過率(ディスプレイの明るさ)がやや低い
  2.  エアギャップの存在によりニュートンリングが見えやすい

近年、この抵抗膜方式が、投影型静電容量方式(静電容量方式の一種)に置き換わった構成が主流となっており、その操作性の特徴としては、下記の特徴があります。

  1. 複数の座標の検出(マルチタッチ)が可能
  2. 指をパネル表面に近づけるだけで座標が検出されるため、感度向上によりタッチレス操作(ホバー入力)も可能
  3. 多彩な動きの入力(フリック、スワイプ、ピンチアウトなど)が可能
  4. タッチ手段の導電性が必要(手袋の着用は限定的、爪に反応しにくい)

同じ構成におけるディスプレイの視認性の特徴としては、下記のものが挙げられます。

  1. パネル透過率(ディスプレイの明るさ)が高い
  2. エアギャップがないためニュートンリングや不要な表面反射が抑制され、視認性が向上

このような投影型静電容量方式のタッチパネルディスプレイは、カーナビのみならず、現在さまざまな機器に搭載されており、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器は、その代表格と言っていいでしょう。これらのモバイル機器においては、薄型軽量化を追求した結果、タッチパネルの機能をディスプレイに内蔵したタッチパネルディスプレイも実用化されています。

タッチパネルをディスプレイ上に外付けする従来の方式を「アウトセル方式」と呼ぶのに対し、タッチ機能内蔵型は、「インセル方式」と呼ばれます。アウトセル方式からインセル方式への移行に併せて、駆動用のドライバICもディスプレイドライバとタッチドライバが一つに統合され、部品点数や製造工程の簡略化も進展しています。一方、ディスプレイ側でも、液晶ディスプレイから有機ELディスプレイへの置き換えなどにより、さらなる薄型化や視認性および表示性能の向上が図られています。

大型タッチパネルディスプレイ

ディスプレイの大型化に伴い、大きさも用途も豊富なバリエーションが揃っています。テレビや液晶モニタに取り付けることで、タッチパネル化する事ができる製品も登場してきております。

大型のテレビやモニタは、視認性が高く、離れていても多くの人が同時に見ることができる為、大人数での鑑賞用や宣伝、会議など幅広い用途で利用されてきました。

タッチパネル機能が付加されることによって、新たな使い方や従来の使い方を更に便利にすることができます。

利用機会としては、学校などで、電子黒板として利用したり、展示会でのデモンストレーションや会議でのプレゼンテーション、デジタルサイネージなどがあります。

デジタルサイネージは、駅の構内や、デパートなどに設置され、商品の宣伝や案内表示などに利用されていますが、タッチパネル化することにより、商品の説明や、道案内など双方向のコミュニケーションが可能であり、店員や案内係の代わりとして活用することもできます。操作したデータを蓄積できる為、販売促進への活用など新たな価値を生み出しています。

タッチパネルとペン入力

タッチパネルの入力方法としては、指での操作の他にペンでの操作があります。ペンは、入力方式の違いでいくつか種類があります。

  • 感圧式:タッチパネルを押した時の圧力を検知する仕組みです。古くから使われてきた方式で、指よりも細かく操作可能な為、操作ミス軽減、操作性向上の利点があります。
  • 静電容量式:一般的なスマートフォンは、静電気に反応する仕組みの為、シリコンゴムや導電性繊維のペン先が使われています。ただし、ペン先がある程度の太さがないと静電気が弱く反応しないこともあります。
  • 静電容量方式(自己静電発生):電池を内蔵し静電気を発生させる為、ペン先を細く出来、細かい描写が可能です。電池内蔵の為、交換や充電が必要となります。
  • 電磁誘導式:ペン先から発生する磁界を、タッチパネル側のセンサーが検知する仕組みで、タッチパネルと専用ペンの組み合わせとなります。ペン側に電池を内蔵することが不要です。

参考文献 https://www.eizo.co.jp/eizolibrary/other/itmedia02_08/ http://f-connect.co.jp/comparison/ https://www.iodata.jp/product/lcd/option/da-touch/sp.htm https://yamato-signage.com/about/what-is-touch-signage/ http://www.fmworld.net/biz/column/Touchpanel_tab/ https://news.mynavi.jp/article/20161122-pen/ https://daily-gadget.net/2020/01/26/post-10520/

光ケーブル

光ファイバーケーブルとは

光ファイバーケーブル

光ファイバーケーブル (光ケーブル) は、光信号により情報を伝える光ファイバー通信で使用するケーブルです。

光ファイバーとよばれる繊維を複数束ねて被覆を施しています。現代のインターネットは電話回線通信から光ファイバー通信へと移行しており、光ファイバーケーブルの重要性はますます高まっています。

光ファイバーは高純度のガラス繊維からできた透明度の高い繊維であり、遠距離でも光信号をほぼ減衰させずに伝搬できます。そのため、電話回線よりも長距離で高速な通信が可能です。

光ファイバーケーブルの使用用途

光ファイバーケーブルの主な使用用途として、各種計測器やイルミネーションなどの照明、医療用・工業用のファイバースコープなどが挙げられます。光ファイバーケーブルはインターネット用光回線以外にも様々な用途に使用されます。

ファイバースコープは、アクセス困難な装置・人体の内部を観察するために使用する機器です。医療用の内視鏡もファイバースコープの一種であり、光ファイバーを伝搬する光情報を基に患部をリアルタイムで確認することが可能です。

光ファイバーケーブルの原理

光ファイバーケーブルを構成する光ファイバーは、中心部の「コア」とその周囲の「クラッド」という2種類のガラスから作られます。コアは高屈折率、クラッドはやや低屈折率のガラスで作られるため、ケーブル内の光信号はコアとクラッドの境界で全反射します。これにより、光信号をほぼ減衰させずに遠くまで伝播します。

光ファイバーケーブルの種類

光ファイバーケーブルを構成する光ファイバーは、コアの直径によりシングルモードファイバーとマルチモードファイバーの2種類に分類されます。

1. シングルモードファイバー

コアの直径が小さい (10μm程度) 光ファイバーです。ある一定の角度で全反射する光のみを伝えます。光の到着速度が一定なので、長距離でも安定して大容量の通信を行うことができます。

2. マルチモードファイバー

コアの直径が大きい (50μm程度) 光ファイバーであり、全反射角度が異なる複数の光を同時に伝えます。各光の到着速度が異なるため長距離には適さず、近距離の中・小容量通信における使用がメインです。 

光ファイバケーブルの接続方法

光ファイバーの接続方法は大きく分けて「融着による方式」と「コネクタによる方式」の2種類があります。それぞれ特徴が異なるため、用途に応じた接続方法を選定します。

1. 融着方式

光ファイバーの先端部を加熱して融解し、光ファイバー同士の先端部を接着します。融着方式は接続部の信号減衰が小さいことから、接続のために必要なスペースも小さいです。接続部は衝撃に弱くなり折れやすいため、心線補強にファイバー保護スリーブを被せて加熱処理します。

顕微鏡でコアの中心軸が一致するよう位置決めして接続する「コア調心方式」と、多心ファイバーを固定V溝に並べて溶融時の表面張力で融着する「固定V溝調心方式」があります。

2. コネクタ方式

専用コネクタを使用して接続する方法です。融着方式では1度接続すると取り外しが不可能ですが、コネクタ方式は繰り返し着脱が可能です。光サービスの運用、保守など切り替えポイントが必要な場所で使用されます。コネクタの先端形状は自由に選択できるため、機器に直接接続できる点もメリットです。

光ファイバーケーブルのその他情報

光ファイバーケーブルの断線

光ファイバーケーブルは細いガラス素材でできているため、金属ケーブルに比べると曲げに弱く折れやすい性質があります。そのため、以下の原因で断線する危険があります。

1. 外部からの衝撃
光ファイバーケーブルに衝撃が加わって断線する最もシンプルなケースです。細いガラス素材の光ファイバーケーブルは、衝撃によって破損する場合があります。人通りが多い場所などには配線はしないよう注意が必要です。

2. 災害による電柱への衝撃
光回線を引き込んでいる電柱に衝撃が加わることで、断線する場合もあります。地震や事故などで電柱が衝撃を受け、接続している光ファイバーケーブルが損傷します。

3. 動物による損傷
動物がかじったりなどして断線するケースもあります。ペットを飼う場合はペットの導線上に配線しないようにするか、ペットが通れない措置を講じる必要があります。

光ケーブルの価格

光ケーブルは種類によって価格が異なりますが、マルチモード・ファイバのケーブルでおおむね100mで2~3万円程度から購入できます。シングルモード・ファイバはもう少し値段が上がり、100mで4~5万程度となります。

コネクタの形状により値段は変わります。SCコネクタが最も安く、次いでLCコネクタ、FCコネクタの順に価格が上昇していきます。コネクタが不要の場合は、コネクタがないケーブルを購入することもでき、その場合は費用が最も安くなります。

また、より通信速度が早い10Gbit対応の光ケーブルはもう少し値段が高くなります。その他、屋外用の高耐久性のケーブルであれば、さらに値段はあがります。

一般的にはボリュームディスカウントが効きますので、大量にケーブルを購入することで値段を下げることができる会社もあります。

参考文献
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/08.html
https://www.sanwa.co.jp/product/network/hikaricable/index.html
https://www.panduit.co.jp/column/naruhodo/4390/

ヒートシンク

ヒートシンクとは

ヒートシンク

ヒートシンク(heat sink)とは、冷却を目的に機器へ取り付けられる部品です。主に電子機器に対して使用され、過度な温度上昇を防ぎます。放熱板とも呼ばれます。

原理や構造が非常に単純で、物理的な動作を必要としません。そのため、故障しにくいというメリットがあります。

ヒートシンクの使用用途

ヒートシンクは、発熱を伴う電子部品などに組み合わせて使用されます。代表例はパソコンのCPU冷却です。

CPUなどの電子部品は、内部に半導体や導電体を使用しています。これらのパーツは動作時に常時発熱しており、発熱を放置すると電子製品内部の温度が上昇して、周囲のニスを溶かしたり、半導体部品を焼損させたりします。ヒートシンクでこれらの発熱部品を放熱すると、過熱による故障を防げるようになります。

通常のCPUではヒートシンクを取り付けた上で、ファンを用いて冷却しています。これらをセットでCPUクーラと呼びます。

ヒートシンクの原理

ヒートシンクは、金属を櫛状に並べた構造とします。櫛部分をフィンと呼び、櫛状にすることで表面積を増やして放熱性能を高めます。ヒートシンクの原理は熱力学第二法則です。これは、熱が必ず高温物質から低温物質へ流れるという、極めて単純な原理です。

したがって、ヒートシンクのみで運用した場合は、大気温度以下に下げられません。そのため、小型の電子部品や耐熱温度が高い機器対して使用します。ヒートシンクに合わせてファンやポンプを用いて強制循環を行うことで、冷却効率を向上できます。

発熱量が多い場合は、ペルチェ素子ヒートポンプなど、冷却効率がさらに高い機器を使用します。

ヒートシンクのその他情報

1. ヒートシンクの性能

ヒートシンクの性能は主に「熱抵抗」によって示されます。熱抵抗とは温度の伝わりにくさを示す値であり、「ある物体に1ワットの熱を加えたら何度温度が上昇するか」を意味します。熱抵抗の単位は「K/W」または「℃/W」です。

熱抵抗はヒートシンクの表面積や利用する素材によって異なり、値が小さいものほど性能が高くなります。表面積を大きくすることで最も効率良く熱抵抗を低減できるため、ヒートシンクは櫛状や蛇腹状に設計されます。

ヒートシンクの性能を示す値としては、圧力損失もあります。圧力損失はヒートシンクを通る空気や冷却水の抵抗を示したもので、値が低いほど高性能です。

2. ヒートシンクの素材

ヒートシンクの素材には熱伝導性が高い金属が使用されます。アルミニウム合金や真鍮・青銅といった銅素材、あるいは銀や鉄などの金属が用いられます。熱伝導性が良いのは銅素材ですが、重量があり高価です。そのため、ヒートシンクの素材として用いられることは稀と言えます。

それに対してアルミニウムは軽量低コストです。アルミニウムは自己放熱性も高く、風量が少ない環境ではアルミニウムがより適している場合もあります。

ヒートシンクの素材としては主にアルミニウムが用いられます。アルミニウムでは必要スペックを満たさない場合に他素材が検討されます。

参考文献
https://www.alu4all.com/what-is-a-heat-sink-and-its-working-principle/
https://www.furukawa.co.jp/jiho/fj115/fj115_16.pdf
https://www.koaglobal.com/-/media/Files/KOA_Global/technology/seminar_doc/CEATEC2019session1forWEB.pdf?la=ja-JP&hash=E38C0CD04A078CEC167CE17E0D449029
https://www.micforg.co.jp/jp/c_ref2.html
https://www.denshi.club/parts/2016/01/2.html
http://www.hardwarepartss.com/Company-news/775.html

ペルチェ素子

ペルチェ素子とは

ペルチェ素子

ペルチェ素子 (英: Peltier element ) とは、接合した2種の異なる金属に電流を流すと、接合部での熱の移動が起きるペルチェ効果を利用した素子です。

現在実用化されている効率の良いペルチェ素子は2つの金属ではなく、n型半導体、金属、p型半導体の3種類の素材で作られています。熱の移動を利用して、通常は冷却装置として利用されますが、電流の方向を変えれば熱の移動方向も変わるので加熱装置としても利用できます。

ペルチェ素子は、ヒートポンプなどと異なり、電流を流すだけで冷却効果が得られるので、騒音や振動などが発生しないメリットがあります。また、冷媒が不要で、腐食性液体などを使用しないので、環境負荷が低い冷却装置です。

ペルチェ素子の使用用途

ペルチェ素子は、クリーンな冷却素子として幅広い分野で使用されます。

1. 食品分野

ペルチェ素子は小型・清潔・安全です。食品ショーケース、小型ドリンクケース、ミルククーラー、ホテルパンなどに使われます。

2. 産業分野

産業分野の機器は、例外なく水に弱いものですが、温度をコントロールして結露発生の少ない冷風を供給したり、結露ドレーンを内蔵したりするなどの対策をしています。操作盤の冷却、監視カメラの冷却、制御盤内部部品の局所冷却、成形金型の冷却、恒温湿エア供給装置などの用途があります。

3. 光学分野

限られたスペースでのデバイスの冷却に、ペルチェ素子が多く使われます。具体的には、発熱源の直接冷却、小型中継ボックスの冷却、光検出素子の温度制御、レーザーダイオードの温度制御、CCDカメラ・プロジェクター・複写機・監視カメラの冷却、レーザー等の冷却水などです。

4. 民生分野

振動や騒音が全く無く、また冷却機構が小型であるという利点を生かして、病院やホテル客室向けの業務用冷蔵庫としてペルチェが使われます。小型冷蔵庫、クーラーボックス、ビールサーバー、ワインセラー、水槽の水の温度管理、コンピュータCPUの冷却、除湿器、空気清浄機、ドライヤー、美顔器のマイナスイオン発生装置などです。

5. その他の分野

計測・分析分野、半導体分野、医用・理化学分野などにおいても、ペルチェ素子が冷却・加熱に使用されます。

ペルチェ素子の原理

ペルチェ素子は、現在は金属ではなくp型半導体とn型半導体を使用します。エネルギーレベルの低いp型半導体から、エネルギーレベルの高いn型半導体に電子の移動が起きるには、外部からエネルギーを取り込む必要があり、この際に吸熱が起き、温度が下がります。

このとき、電流を流す方向を逆転させると、今度はエネルギーの高い方から低い方へ電子の移動が起きるので、余剰なエネルギーを放出する発熱が起きます。したがって、ペルチェ素子は、流す電流の向きによって、冷却装置としても、加温装置としても利用が可能です。

ただし、ペルチェ素子を用いた熱変換は、電力消費の割に効率が良くないので、あまり大掛かりな冷却や加熱には向いていません。効率よく冷却を行うためには、フィンやファンを用いた放熱・排熱機構と合わせて用いるのが、効果的です。

ペルチェ素子のその他情報

1. 電子冷却のメリット

一般に冷却装置は、冷媒と呼ばれる冷却ガスを用いることで熱交換を行います。この冷媒は、少なからず地球温暖化に影響する温室効果ガスの1つであるため、環境負荷は無視できません。

一方、ペルチェ素子を用いた電子冷却は、冷媒を必要としないため、環境負荷の低い冷却システムであると言えます。また、冷媒を用いる冷却装置ではコンプレッサが必要で、これにより騒音や振動の発生は避けられないが、電子冷却はこうした心配がありません。

2. ベルチェ素子の冷却機能

ペルチェ素子の特性を利用することにより、冷却の機能の実現が可能です。ペルチェ素子にDC電流を流すことで、低温側では吸熱が、高温側では発熱が起きます。この現象を利用したのが、ペルチェ素子の冷却機能です。

市販されているものは、マイナスの温度まで冷却することが可能です。保冷ボックスやパソコンのCPUの冷却などに利用されます。

3. ウェアブルデバイスへの応用

ペルチェ素子の性質を利用したウェアブルデバイスが開発されています。販売されているウェアブルデバイスの中には、首を温めたり冷やしたりすることができるデバイスがあります。

このデバイスは、首に触れる位置にあるパネルを温度制御することにより、温かさや冷たさを感じることが可能です。

参考文献
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B0080431526018222
https://www.z-max.jp/peltier/about/
http://ham-ham-ham.com/pc.technical.nagamoti.html
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1907/22/news071.html
https://www.apiste.co.jp/nrc/feature/
http://scnt.co.jp/

ヒューズ

ヒューズとは

ヒューズ

ヒューズとは、過電流が発生した際に電気火災や上位回路への波及を防止するための電気・電子部品です。

電気回路で短絡や過負荷などの異常が発生した際、電流値が回路の設計値を超える過電流が発生します。過電流は電気回路上の機器自体の故障につながるだけでなく、異常な発熱や発火によって火災を引き起こす危険もあります。

また、電源側の上位回路に電圧降下などの異常が発生する危険性も高いです。ヒューズは、過電流からこうした危険を保護するために、組み込まれています。回路に直列に接続することで、通常時は電流を流す導体として振る舞います。過電流が発生した際は、ヒューズ内の導体部分が溶断することで負荷側回路への電源供給を遮断します。

ヒューズの使用用途

ヒューズは産業においては幅広い用途で使用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 計装・制御回路の保護用
  • 自動車用制御パーツの保護用
  • プリンタ・複合機などのOA機器保護用
  • テレビやエアコンなどの白物家電保護用
  • 高電圧送配電網の変圧器短絡保護用
  • 高圧モーターの短絡保護用

以前は多くの家庭の配電盤に使用されていましたが、近年は一度切れると交換が必要なヒューズよりも、ノーヒューズブレーカのほうが普及しています。

しかし、現在でも自動車には、電気系統の保護や車両火災防止のためにヒューズが使われています。用途によって様々な形状をしており、板ヒューズやブレード型ヒューズなどがあります。

ヒューズの原理

ヒューズは、過電流による発熱で自己溶断することが基本原理です。主に口金、ヒューズエレメント、ハウジングなどから構成されます。

1. 口金

口金は、電気回路と接続する金属部分です。ガラス管ヒューズなどではヒューズリンクと呼ばれます。Y端子やブレード形となっているヒューズも販売されています。

2. ヒューズエレメント

ヒューズエレメントは、過電流時に溶断する部分です。ヒューズエレメントに電流が流れると、電流値の二乗に比例したジュール熱が発生します。定格電流以下であれば、ジュール熱発生に伴う温度上昇よりも放熱が優位なので溶断は起こりません。定格電流を超えると温度上昇し、溶断して電流を遮断します。一般に溶断は不可逆であり、復帰するにはヒューズの交換が必要です。

3. ハウジング

ハウジングは、ヒューズのエレメントや口金を支持する部分です。材質はガラス・磁器や樹脂などの絶縁材料で構成されます。ハウジングがガラス管で構成されたヒューズをガラス管ヒューズと呼びます。

ヒューズの選び方

ヒューズをは、主に定格電流値で選定します。回路上部品の定格電流値以下の定格電流を選択しつつ、誤作動による回路遮断が無いように選ぶのがポイントです。

選定する際に考慮するべき電流として、定常電流や突入電流などが挙げられます。定常電流は実際に使用する回路が安定しているときに流れる電流値で、突入電流は回路へ電源投入した際に発生する始動時大電流です。突入電流では溶断せず、定常時に定常電流を超過すると溶断するように選定します。溶断-時間特性と定格電流を合わせて保護条件を検討します。

溶断-時間特性とは、電流の大きさと遮断される時間の特性です。突入電流の継続時間内は溶断しないように、かつ短絡事故時には即座に溶断するように選定します。その他、選定する際に重要な検討項目として、実際に回路を使用する環境温度があります。ヒューズは熱により溶断する仕組みなので、機器周辺の雰囲気温度によって影響を受けるためです。

ヒューズの種類

ヒューズは、実装する回路の種類や環境に合わせてさまざまな形状があります。代表的な種類は、以下の通りです。

使用したいタイプ、形状が既製品の中にない場合は、特注に応じてくれるメーカーも存在します。また、ほとんどのヒューズは過電流で遮断する電力ヒューズですが、温度で遮断する温度ヒューズも存在します。

周囲の温度上昇を検知して溶断するため、ドライヤーなど熱を発生させる電化製品などで多く使用されています。温度ヒューズのエレメントは抵抗値が低く、電流による発熱はほとんどありません。

参考文献
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/support/analogware/09/chap2.pdf
https://byjus.com/physics/working-principle-of-an-electrical-fuse/