ウェッジプリズム

ウェッジプリズムとは

プリズム(prism)とは、透明な物質で作った三角柱です。素材には、ガラスやプラスチックが用いられます。プリズムに平行光線やレーザー光線を当てると、反射されたり屈折されたりします。

ウェッジプリズムは、リズレープリズムとも言われ、傾斜した光学面があるプリズムを指します。通常は、1面がもう片面に対して非常に小さい角度で傾斜しています。

ウェッジプリズムに入った光は厚い方へ屈折するため、特別な角度に光を屈折させるときに用いられます。

ウェッジプリズムの使用用途

ウェッジプリズムは、光を微小な角度に偏角する(偏向させる)用途に用いられます。偏角とは、プリズムによる光の屈折において、入射光線と射出光線が作る角のことで、プリズムの頂角(三角形の底辺に向かい合っている角)と屈折率によって異なります。

単体もしくは他のウェッジプリズムと組み合わせて用いることで、ビームステアリングに利用できます。ビームステアリング部品は、レーザーを搭載する多くの光学システムに不可欠な要素で、内視鏡レーザーメスなどにも使用されています。

ウェッジプリズムの原理

ウェッジプリズムは、1面がもう片面に対して非常に小さい角度で傾斜しているプリズムです。ウェッジプリズムに入った光は、プリズムの厚い方向へ屈折するので、特別な角度に光を屈折させることができます。これは出射面の角度に依存し、通常、直角面に入射するビームを2°~10°の角度に偏向させます。

レーザーを光源にしてウェッジプリズムを回転させると、軌跡が円を描きます。2枚のウェッジプリズムを使用すると、自由に光ビームを回転させることが可能で、入力したビームに対してどのような方向にも方向付けすることができます。偏角量を最大2倍にすることも可能です。

また、ウェッジプリズムを2枚組み合わせて使うことで、アナモルフィックプリズムとして機能させることができます。アナモルフィックプリズムは、楕円形の半導体レーザー光の縦横の像倍率を変更して、ほぼ円形のビームに変換することに用いられます。逆に、円形のビームを楕円形に変換することも可能です。

参考文献
http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/colorworld2010/law/prism/prism.htm
https://www.thorlabs.co.jp/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=147
http://www.bblaser.com/bbl_item/uoptic_wedge_prism.html
https://www.sugitoh.com/product/prism/wedgeprism.html
https://www.sekiyarika.com/lens/22.html

POEスイッチングハブ

POEスイッチングハブとはPOEスイッチングハブ

POEスイッチングハブとは、Ethernetポートから給電する機能を持ったスイッチングハブのことです。

POEは「Power over Ethernet」の略で、Ethernetケーブル (いわゆるLANケーブル) で受電機器に電源を供給する機能を指します。POEの標準規格に対応した機器同士をEthernetケーブルで接続することで使用します。

スイッチングハブとは、複数のコンピュータ同士で通信を行う際、ネットワークを効率的に中継する機器のことです。Ethernetという通信規格が使用され、Ethenetポートを使用してコンピュータのやり取りを中継します。

スイッチングハブは1990年代に製品が発売されました。その頃のネットワークは10Gbpsが一般的なスピードでしたが、現在では100Gbpsやそれ以上の通信速度に上がっており、スイッチングハブもこのスピードに対応した製品が発売されています。

POEスイッチングハブの使用用途

POEスイッチングハブは、Ethernet通信によるネットワーク上で使用されます。以下は、POEスイッチングハブに接続される機器の一例です。

  • IP電話機やネットワークカメラ
  • WiFiアクセスポイント
  • 照明器具
  • スイッチングハブ

POE対応受信機器は電源ケーブルが不要となるため、遠隔地に配置される機器に適しています。したがって、監視カメラなどに多く使用されます。

ただし、POEスイッチングハブによって給電可能機器数や電源容量などの仕様が異なるため注意が必要です。

POEスイッチングハブの原理

POEスイッチングハブはPOE機能とスイッチングハブ機能を有する装置です。それぞれの機能は、以下の通りです。

1. POE機能

POE機能とは、LANケーブルの配線を使用して給電する機能です。LANケーブルは2本4対の細い芯線がまとまったケーブルです。

100Mbps以下の通信では、送信用と受信用の2対しか使用していませんが、1Gbps以上の通信では4対全て使用します。給電方式にはTypeAとTypeBがあります。

TypeAは通信線と電源線を共有する方式で、1Gbps以上の通信ではこちらを使用します。TypeBは、100Mbps以下では使用されない2対を使用して給電する方式です。

2. スイッチングハブ機能

スイッチングハブとは、Ethernet通信を効率的に中継する機能です。ただのハブも中継機能がありますが、入ってきた通信データを接続された全機器に再送信する特徴があります。

通信相手以外にも届いてしまうことから、ネットワークが渋滞しやすい欠点があります。それに対してスイッチングハブは、MACアドレスという機器固有アドレスを使用して通信すべき相手を特定します。必要な機器にのみデータを送信するため、効率的に信号を中継可能です。

POEスイッチングハブのその他情報

1. PoEの規格

PoEは、アメリカの標準化団体であるIEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers) によって規格として定義されました。規格化によって受給電する機器同士のメーカーが異なる場合も接続が可能です。

PoEの規格は、IEEE802.3afおよびIEEE802.3atにて定義されています。IEEE802.3afは少し古い規格で、より高い電力出力に対応できるようにIEEE802.3atが策定されました。IEEE802.3atは「PoE+」と表記されることが多く、最近のPoEスイッチングハブはPoE+に対応している製品が増加傾向です。

PoEは供給電力に応じて0~8までクラスが分かれており、クラスが大きいほど電源供給能力が上がります。最大のクラス8では給電電力90W、受電電力73Wと定義されています。

2. PoEスイッチングハブのパススルー

PoE受電対応のPoEスイッチングハブが販売されています。この製品は、POE給電機器からの電力をPOE受電機器に伝達することが可能です。この機能をパススルーと呼びます。

通常であれば、最大距離が100mまでと定められているPoEですが、パススルーによって合計200mの伝送距離を実現することが可能となります。大規模な工場などで役立つ機能です。

パススルーを利用する際は、総電力量が最大値を超えないように設計する必要があります。PoEで利用できる電力量は大きくないため、多数の機器をPoEスイッチングハブに接続すると容易に最大電力量を超えてしまいます。

参考文献
https://www.jp.netgear.com/business/solutions/feature/PoE/
https://www.jp.netgear.com/business/solutions/feature/PoE/default.aspx
https://www.netgear.jp/faqDetail/919.html

高周波電源

高周波電源とは

高周波電源 (英: radio frequency power supply) とは、数kHzから数百kHz程度の周波数で、一定の電圧を出力する電源のことです。

スイッチング素子によって電源の種類が分類され、トランジスタを用いるものと真空管を用いるものがあります。真空管式は古くから用いられ、大型の送信管やトランスを用いるので電源のサイズが大きくなります。

一方、トランジスタを用いる方法は、近年、MOSFETと呼ばれる素子を利用したインバーターの開発が進み、メリットは小型化と電源出力の効率向上です。高周波電源は、誘導加熱と呼ばれる手法で、主に物体を加熱するのに使われます。

産業分野での用途は、焼入れ、電縫管溶接、薄鋼板加熱、及びプラズマ発生、洗浄などです。

高周波電源の使用用途

高周波電源は、高周波誘導加熱において、物体を加熱するための渦電流の生成に使用されます。具体的な使用用途は、以下のとおりです。

  • マイクロ波・電磁誘導加熱
  • プラズマ発生
  • 表面改質
  • 洗浄

半導体製造や液晶製造、MEMS製造、太陽電池製造、プラズマ洗浄、鉄鋼・鍛造業界などで使用されます。また、新素材業界、食品製造、建材製造、木材乾燥、医用温熱治療、電子機器、自動車、ビニール融着などの産業分野での使用も増えています。

プラズマ発生用の高周波電源は、高周波電界によりプラズマを励起させることで、プラズマを形成するイオンや電子を加熱することが可能です。高分子材料などの表面に照射することで、官能基の種類を選択したり、表面のラジカル種を制御したりすることで、機能性材料の開発にも利用されます。

高周波電源の原理

高周波電源を生成するためには、入力された交流電源を一旦直流へと変換し、インバータを通した後、再度交流への変換が必要になります。まず、交流電源は、ブリッジダイオードを用いて直流へ変換されます。

ブリッジダイオードは、ブリッジ接続された6個のダイオードを1つにまとめた素子です。交流電源の負電圧側を反転させることで、直流電圧を出力することが可能です。次に、直流電圧をスイッチング素子を用いて矩形波へ変換し、この矩形波をマッチングトランスに接続します。

そして、トランスの巻き数に応じた電圧変換が施され、最終的に共振回路において交流電源へ変換されます。

高周波電源の種類

高周波電源装置 (インバーター) は、スイッチング素子により分類されます。

1. サイリスタインバーター

発振素子にサイリスタを使用しています。 商用電源周波数〜10kHz、高電圧向きで、素子は大きめです。    

2. バイポーラトランジスタインバーター

小型発振器500W〜2kWに向いています。素子が小型で、ハンディタイプ等に使われます。

3. IGBTインバーター

IGBTは、「Insulated Gate Bipolar Transistor」の略で、「絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ」です。素子が大きく、大電流用途・直列共振回路向きです。周波数10kHz〜50kHz、大出力用です。

4. MOSFETインバーター

MOSFETは、「Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor」の略で、「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ」と呼ばれます。高周波用途向きで、他の素子に比べ小型です。周波数100kHz 〜400kHzが多く、大出力には向いていません。

5. 真空管系

高周波用途に向き、自励発振型で周波数は100kHz 〜10MHz程度です。大型送信管や大型トランスを使用するので装置が大きくなります。

高周波電源のその他情報

電源制御の種類

1. 電圧制御
サイリスタなどで、DC電圧を抑制する素子を使った制御方式です。周波数が固定され、電流浸透深さを固定できるため、焼入れに向いています。

電源コンデンサで平坦化の必要があるので、回路が複雑で高価です。

2. 電流制御
発振器側では、指示された電流値に合うように、負荷抵抗値を自動調整して周波数を変化させるので、出力電流値が一定です。したがって、発振周波数は常に変化します。

3. 電力制御
DC部の電圧と電流値を掛け合わせて、投入電力値を算出します。そして、指示値に対して出力を制御します。

4. PWM制御
小型の発振器で見られる制御方式です。パルス幅 (デューティ比) を変化させる制御方式で、周期は一定のままです。

参考文献
http://www.nikoha.co.jp/high-frequency_supply/cat05_class02/1441.html
http://www.tokyo-seiden.co.jp/tag/ps-hf/

高周波誘導加熱装置

高周波誘導加熱装置とは高周波誘導加熱装置

高周波誘導加熱装置 (英: high frequency induction heating device) とは、高周波誘導により加熱する装置です。

金属体を入れたコイルに交流を流すと、コイルの中を流れる電流により磁界が発生し、誘導損失、即ちヒステリシス損が生じて熱が発生します。同時に、交流によって変化する磁場中で発生するのは、電磁誘導による渦状の電流、即ち渦電流です。この渦電流はジュール熱を発生させて渦電流損が起こります。

高周波誘導加熱装置は、ヒステリシス損と渦電流損の2つの加熱原理を活用して加熱を行います。被加熱物に単位面積・単位時間当たりに供給されるエネルギーが大きく、高速加熱ができる点が特徴です。

高周波誘導加熱装置の使用用途

高周波誘導加熱は、金属などの導体を非接触で加熱できるため、金属の溶解や焼入れ、ろう付けなどによく使われます。身近な例は、IHクッキングヒーターです。この他、樹脂や木材、繊維、食品、医療などにも利用されます。

熱可塑性樹脂の場合、樹脂を金型でプレスしながら誘導加熱を行うことで、樹脂の溶着が可能です。また、食品製造の場合、多量の食品を加工する際に高周波誘導加熱装置を工場ラインに組み込み、食品を急速に解凍することができます。

医療現場では、がん温熱治療などが開発されており、高周波誘導加熱法も利用されています。

高周波誘導加熱装置の原理

高周波誘導加熱は、電磁誘導を利用して物体を加熱する方法です。被加熱物に直接電流を流すか、導電性の容器に電流を流して加熱するかによって、直接加熱方式と間接加熱方式とに分類できます。

1. 直接加熱方式

一般に電磁誘導の法則では、コイルに交流電流を流すと、その中心を通過し外部を取り囲むように磁束が発生します。この磁束の変化を妨げるように、金属内に発生するのは渦電流です。

この渦電流の大きさと、金属が持つ電気抵抗に応じて金属内にジュール熱が発生します。直接加熱方式では、このように金属内に直接渦電流を発生させることで、被加熱物を直接加熱が可能です。

2. 間接加熱方式

間接加熱方式では、セラミックなどの絶縁体を加熱する場合で、被加熱物に渦電流を生成することができません。そこで導電性の容器に被加熱物を入れ、容器を温めることで間接的な加熱が可能です。

加熱効率を高めるためには、被加熱物の外形と加熱コイルのギャップを小さくすることで、透過する磁束密度を高めます。さらに、交流電源の周波数を、数十Hzから数百kHzの間で制御することで加熱します。

高周波誘導加熱装置のその他情報

1. 高周波誘導加熱装置の長所

均一加熱
電磁誘導で生じる渦電流に対する抵抗加熱による発熱なので、被加熱物の内部から均一に加熱されます。

急速加熱
発信機を制御することで被加熱物に対して瞬時に高周波は与えることができ、さらに内部自己発熱であるため急速加熱が可能です。外部から熱を加える加熱炉と比較して生産性に優れ、さらに待機加熱も不要なので、低コストな生産方式です。

選択加熱
アルミニウム合金と鋼などのクラッド鋼のような複合材料であっても、そのうち電気抵抗率の高い材料を使用した部分のみを、選択的に加熱できます。

高いエネルギー効率
一般的な加熱炉では燃焼や発熱体による外部加熱になるため、被加熱物はもちろん、炉の構成物や雰囲気などが余計に加熱されてエネルギーロスが生じています。高周波誘導加熱装置では、被熱処理物のみが自己発熱で加熱されるため、無駄がなく、高いエネルギー効率での熱処理が可能です。

2. 高周波誘導加熱装置の短所

設備投資が高価
高周波誘導加熱には、高周波電源や制御装置が高価であるうえ、周囲への電磁波漏れの対策設備などが必要になるため、初期の設備投資が高価というデメリットがあります。

形状選択性が低い
被加熱物の電界が不均一になると、発熱自体も不均一になるため温度ムラが生じてしまい、最悪の場合溶融するなどのトラブルに繋がる可能性があります。そのため、被加熱物は円柱などの対称性の高い形状であることが望ましく、角材や歯車のような複雑な形状の物は、均一に加熱するのが困難です。

個別・部分加熱
高周波誘導加熱は、被加熱物を均一に加熱するために設計された任意形状のコイルにより、被加熱物の全体もしくは一部分のみを加熱する方式です。このため、基本的には一個流し処理になるため、外部加熱のようなバッチ式の大量同時処理ができません。製品や生産の状況によっては生産性が低下するデメリットもあります。

参考文献
https://www.inductionheating.jp/technical/about_ih/
https://www.avio.co.jp/products/assem/principle/highfrequency/
http://www.vinita.co.jp/institute/radiofrequency/010070.html
https://i-mecs.com/highfrequency-etc/index30.html

電動トルクレンチ

電動トルクレンチとは

電動トルクレンチ

電動トルクレンチとは、ボルトやナットの締結作業をモーターなどの電気による動力源によって行う工具のことです。

ナットランナと呼ばれる場合もあります。電動トルクレンチは、電動ソケットレンチとトルクレンチの役割を一挙に担うことによって、高速でボルト・ナットを規定トルクで締め付けられます。ボルトやナットの締結作業の効率を飛躍的に向上させられる電動工具です。

電動トルクレンチには仮締めから最終目標の条件 (締結トルクや回転角度) まで行うもの以外に、仮締めまでを電動で行い、最終の締め付けは手動で行うことができる製品もあります。一部を手動で作業するため、半自動電動トルクレンチと呼びます。

電動トルクレンチの使用用途

電動トルクレンチは締結するボルトやナットの数が多い作業、作業スピードが求められる現場の他、人力で締め付けるのが困難な高トルクの締結作業に使用されます。例えば、鉄骨構造の大型建築物では、多数のボルト締結が必要です。

作業効率の向上は、工期短縮にもつながります。また、送電線鉄塔や風力発電用風車の建設の場合、高所での作業となるため、作業者がバランスを崩せば転落事故につながりかねません。

電動トルクレンチは反力を受け止めるサポート機構や作業者が操作する部分には応力が発生しにくい構造にすることで、安全かつ効率的な作業ができます。大きなトルクが必要な作業としては、例えばISO方式の大型車用10穴ホイールナットの規定トルクは、600N・mと非常に高きなトルクです。

3軸車であれば、6輪分で60本締め付けなければなりません。電動トルクレンチは、大きなトルクで多数の締結が求められる作業に適した工具です。

電動トルクレンチの原理

電動トルクレンチは電気モーターによる回転によって締結作業を行います。小型のモーターでも大きなトルクまで締め付けられるよう、減速機機構が組み込まれています。減速機に多く用いられているのは、遊星歯車機構です。また設定したトルクで作業を完了させるためのクラッチ機構や角度管理による作業にも対応できるよう、角度検出機構も組み込まれています。

電動トルクレンチの特徴

電動トルクレンチはインパクトレンチのような打撃音が発生しないため、夜間や住宅地での作業に使用に向いています。加騒音や振動が少ないことは、労働災害の予防にも役立つ工具です。作業者の身体的負担が減るほか、振動が原因となって引き起こされる手腕振動症候群や手根管症候群や、騒音による難聴などの発症リスクを低減できます。

一部の製品には、コンピューターと接続することによって作業自体の管理を行うことができるものがあります。これは「どのボルト・ナットがどれくらいのトルクで締め付けられたか」を記録しデータ化することにより、締め忘れによる事故を防ぐとともに作業手順の確認を行うことが可能です。

多くのメリットがありますが、大トルクに対応するものは重量増が避けられません。大型の電動トルクレンチを使用する際には、ダンパーで持ち上げをサポートするレンチハンガーを使用する必要があるため、作業場の広さや収納場所の制約を受けるというデメリットがあります。

電動トルクレンチのその他情報

1. 小型の電動トルクレンチ

小型電動トルクレンチは手持ちで使われることが多く、バッテリー充電式が多く利用されています。充電式は電源コードが無いため、作業動作や配置に制限がないメリットがあります。

また、電動トルクレンチに要求されるトルク管理も、ワイアレスでホストと通信ができる機能を保持している機種も多く、測定したデータの送信、制御信号の受信が可能です。この機能はコード式であっても同様に機能することができるため、工場内のデータ管理を一元化できます。

2. 電動トルクレンチによるトルク管理

電動トルクレンチは、締付時のトルクとその角度や速度の変化をモニターしながら動作します。作業の記録は電動トルクレンチ自体で記憶したり、ワイヤレスでホストへ転送し、組立結果のデータとして管理できます。また、これらの機能を利用すれば、ボルトの締付けの良否を判定することも可能です。例えば、ボルトを斜めに差し込んでしまう斜め締めやワッシャの挿入漏れ、2枚挿入などをトルクのデータから検出できます。

また、高機能な機種では、電動トルクレンチの姿勢や位置の検出にも対応しています。締結する穴の位置を判断して、締め付けているボルトやナットが指定されたものに合致しているかどうか判断したり、ボルトやナットの仕様を作業位置から判断して、締付トルクを自動的に変更したりすることも可能です。

参考文献
https://www.plarad.net/nutrunner/
https://www.tohnichi.co.jp/products/detail/253
https://hytorc.co.jp/product/liongun.html
https://www.tohnichi.co.jp/

電動グリッパ

電動グリッパとは

電動グリッパ

電動グリッパとは、電動モーターを使用して対象物をつかむための装置です。

グリッパ (Gripper) は物体を掴んで保持するための機構です。その中でも電動で駆動し、物体を掴む装置を電動グリッパと呼びます。一般的にロボットアームや自動機械に組み込まれ、対象物をつかんで移動するまたは解放するために使用されます。

グリッパの形状は保持する対象物の形状や表面性状などによって異なります。ただし、最も汎用的に使用されるグリッパは、2本指で物体を挟む二指平行グリッパです。ロボットアームなどとして広く活躍しています。

電動グリッパは空気圧グリッパと比較して精密な制御が可能です。また、対象物の大きさが変化する場合や、掴む力を必要に応じて変化させたい場合にも有利です。

電動グリッパの使用用途

電動グリッパは様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. 製造業

自動車製造においては部品の組み立てや車体の溶接、塗装などの工程に電動グリッパが使用されます。ロボットアームに取り付けられ、自動車のドアやパネルなどの部品をつかんで組み立てたり、車体を移動させたりします。また、電子機器産業においては、基板やコネクタなどの部品を適切な位置に配置するために使用される場合も多いです。

2. 物流

電動グリッパは自動倉庫のピッキングロボットに組み込まれ、棚から商品をつかんで運搬するのに使用されます。これにより、効率的な在庫管理と迅速な発送が可能です。配送センターでは荷物の積み込み作業で使用される場合もあります。

3. 医療機器

精密な手術を実行するための手術ロボットには、微細な操作を可能にする電動グリッパが装備されています。これにより、手術中に必要な器具を正確に操作することが可能です。手術ロボットの活用により、外科手術の精度や技術を向上させることができます。

4. 航空宇宙

惑星探査機には目的地の地表サンプルを採取するためのアームが装備されています。これらのアームには、試料をつかんで採取するための電動グリッパが組み込まれている場合も多いです。採取された試料は地球に持ち帰られて分析されることがあります。

電動グリッパの原理

電動グリッパはグリップと直動機構、モーターなどで構成されます。

1. グリップ

電動グリッパのグリップは、対象物をつかむ部分です。一般的には可動部品であり、対象物に密着してしっかりとつかむように設計されています。掴む力を制御したい場合には、これにロードセルなどのセンサが組み込まれる場合もあります。

形状や素材は、対象物や使用環境に応じて選定します。例えば、ゴム製の爪は滑りにくく、柔らかな素材にも対応できます。鋼鉄製は堅牢で、摩耗や衝撃に強い点が特徴です。

2. 直動機構

直動機構はアームを開閉するための構造部品です。一般的にはスクリューやレールなどの機構を使用して、アームを正確に移動させて開閉動作が制御します。モーターからの動力を受け取り、その動力をアームの動きに変換する役割を果たします。

3. モーター

動力源として使用されるのは一般的に電動モーターであり、直動機構を駆動してアームの開閉を制御する部品です。一般的に使用されるモーターには直流モーターやステッピングモーターなどがあります。これらのモーターは高いトルクや精密な制御が可能であり、グリッパの動作を効率的に制御することが可能です。

モータの回転方向と速度を制御することで開閉動作を制御します。モータに内蔵されたロータリーエンコーダから回転数を読み取ることで、開閉の幅をフィードバックする仕組みが多く採用されます。これらの情報に応じてプロセス制御やPID制御を構築することで、精密な制御を実現することが可能です。

電動グリッパの選び方

電動グリッパを選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. モーター出力

電動グリッパのモーター出力はつかむ対象物の重さや操作する環境に応じて選択する必要があります。重い対象物を持ち上げる場合や、操作に速度や力が必要な場合は、より高出力のモーターが必要です。一般的にはkWなどの単位で表され、動作速度はrpmなどの単位で表されます。

2. 動作精度

電動グリッパの動作精度は対象物を正確につかむために重要な要素です。特に精密な組み立て作業や検査作業などでは高い動作精度が求められます。モーターの制御性や直動機構の精度によって決まる要素です。

3. グリップ形状・素材

グリップの形状や素材は、つかむ対象物に合わせて選択する必要があります。滑り止め加工が施されたグリップは、滑りやすい対象物をしっかりとつかむのに有利です。また、グリップの形状も、対象物の形状やサイズに合わせて選択する必要があります。

4. インターフェイス

電動グリッパの制御方法も重要な要素です。一般的なインターフェイスにはアナログ入力やシリアル通信などがあります。特定の制御システムやロボットアームとの互換性を考慮して、適切なインターフェイスを選択します。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/products/solution_application/detail15/
https://www.nbk1560.com/resources/handling_technology/article/electric-gripper/

離型剤

離型剤とは

離型剤とは、金型を使った成形加工において、成形物の金型からの脱型性を軽くするための薬剤です。

金型は同じ形のものを素早く大量に製造するのに役立ちます。ただし、金型に材料を流し込んで成形するだけでは、綺麗に製品を金型から外すことができず、金型に張り付いてしまうトラブルが発生します。

離型剤は金型成形の際に、金型からの離型性を上げて、生産効率を改善するために使われます。

離型剤の使用用途

主な用途は、製造ラインで製品を作成するための金型成形作業です。その他、以下の用途が挙げられます。

1. 医療分野

人体からの剥離を容易にするために、手術用具や医療機器に使用されています。

2. 建築現場

コンクリートや石材の製造で、汚れや錆を防止できます。

3. 食品業界

食品の形状を作る金型や、容器や包装材料を製造するために使用されます。

4. 製造業界

プラスチックやゴム製品、鉄鋼製品、紙製品などの製造にも使用されています。これらの分野で使用される離型剤は、それぞれの材料に合わせて選択されます。

離型剤の原理

離型剤が金型と成形物との間に存在することにより、成形物が金型から外れやすくなります。離型剤は、金型成形する際には必ず使用するものです。なお、使い方と構成成分によって分類できます。

1. 使い方による分類

外部離型剤
金型に塗って使用するタイプの離型剤です。食品用途では、パン焼き用の型やフライパンにあらかじめ塗っておく油やマーガリンなどに相当します。塗るだけのタイプをはじめ、焼き付け型やスプレー型などがあります。

内部離型剤
成形する材料にあらかじめ混ぜて使用するタイプです。これは成形の際に材料が溶けて流動性が上がった状態で、金型と材料の界面に移行し、脱型時に離型性を向上させる効果を発揮します。用途によっては、外部離型剤、内部離型剤の両方を併用することもあります。

2. 構成成分による分類

組成面では、離型剤成分以外に含まれる成分から、水型、乳化型、溶剤型、ペースト型、オイル型などに分けられます。一般的に外部離型剤は、脱型後の製品本体への離型剤付着を防止するため、金型表面には極めて低濃度になるように塗布する必要があります。このため、溶媒により希釈された、水型、乳化型、溶剤型が用いられることが多いです。

離型剤の種類

離型剤成分の種類としては、大きく分けてワックス系、シリコーン系、フッ素系があります。成分により効果は大きく変わります。フッ素系は、手間が少ない分潤滑性が低いです。シリコーン系は、潤滑性が良いですが洗浄手間がかかります。

1. ワックス系

離型剤成分として、ワックスを使用したものです。ワックスとは油脂のことですが、主に低分子のポリエチレンなどが挙げられます。

金型と成形品との間に層を形成し、層の間で剥離を起こしますが、これを層間剥離と呼びます。塗装性に優れるのが特徴です。しかし、製品への転写量が多く、金型が汚れやすい不具合があります。

2. シリコーン系

ワックス関係と同様に層間剥離を行います。シリコーンオイル特有の優れた潤滑性を利用しているため、離型性が非常に高いです。こちらも同様に転写量が多く、金型が汚れやすい不具合があります。

3. フッ素系

フッ素の非粘着剤を利用しています。界面剥離を起こすことで離型性を向上させます。少ない使用量で離型効果を発現できるのが特徴です。

単独として高い潤滑性を持たせることが困難なので、シリコーンと合わせて利用される場合が多いです。

離型剤の選び方

まずは使用目的に応じて選ぶ必要があります。食品や医療品など特殊な用途には、特殊な離型剤が必要となるため、選定の際には使用目的をしっかりと把握しておくことが重要です。

1. 成形品の素材

離型剤は、成形品の素材によって選ぶ必要があります。成形品によっては特定の離型剤の使用が適している場合があるため、素材に合わせた選定を行うことが重要です。

2. 脱脂・洗浄の容易さ

離型剤の使用により成形品から剥離しやすくなりますが、逆に金型表面の離型剤が原因で汚れが発生する場合があります。特に大量生産を行う際は、脱脂・洗浄の容易さも考慮することが大切です。

3. 健康・環境への影響

離型剤によっては、健康や環境に悪影響を与える場合があります。特に医療用品や食品包装材料には注意が必要です。安全性や環境性に配慮した離型剤を選ぶことが求められます。

参考文献
http://www.seimichemical.co.jp/product/fluoro/mold/
https://www.sankyo-chem.com/wpsankyo/2516

防爆モーター

防爆モーターとは

防爆モーター

防爆モーターとは、爆発性のある環境で安全に使用するために設計された電動モーターです。

化学工場や採鉱場など、爆発性ガスや粉塵などの危険物が存在する場所で使用されます。防爆モーターを使用することで、爆発性のある環境での安全性を向上させることが可能です。特別な構造や回路によって内部でのスパークや点火を防止し、爆発や火災のリスクを軽減します。

また、作業者の安全を確保するための重要な手段です。爆発性ガスなどの危険物が存在する環境では、通常のモーターを使用すると引火や爆発の危険が高まります。したがって、防爆モーターを使用することで作業者の健康と安全を守る必要があります。

防爆モーターは特定の規制基準に準拠して設計・製造されるモーターです。これにより、法的要件や安全規格に適合することが可能です。また、防爆モーターは認定機関によって評価・承認される場合があり、信頼性と品質の高さが保証されます。

防爆モーターの使用用途

防爆モーターは化学プラント、採鉱業、ガス・石油業界などで使用されます。

1. 化学プラント

化学プラントではさまざまな原料を混合するための混合機が使用されますが、爆発性ガスや粉体を混合する場合もあります。それらの混合機の駆動に使用され、爆発性ガス存在下でも安全を担保している場合が多いです。

排気や換気システムにも使用されることがあります。爆発性ガスを安全に排気するために送風機を駆動させている場合や、防爆モーターが駆動源となる場合もあります。

2. 石油・ガス業

ガスプラントでは、ガスを圧縮して送気している場合が多いです。防爆モーターはガス圧縮用のコンプレッサーに使用され、引火や爆発を未然に防止します。

石油精製所では精製工程の一部に蒸留塔や反応器などの装置が使用されることがあります。これらを安全に駆動するために防爆モーターが必要です。

3. 採鉱業

採鉱場では、粉砕機によって鉱石を粉状にして運搬します。したがって、ガスや粉塵の発生が頻繁に起こります。防爆モーターによって粉砕機設備に換気システムを導入し、爆発性ガスや粉塵の除去をしている場合が多いです。

また、鉱石や材料の輸送にはコンベアが使用されます。ただし、鉱石などは火花によって発火するため危険です。防爆モーターによってコンベアを駆動させることで、可燃性の環境での鉱石の移動を安全に行います。

防爆モーターの原理

防爆モーターはエンクロージャやケーシングによって、内部で発生するスパークが外部へ流出することを防止します。エンクロージャは電気機器や電子機器を保護し、外部の要素から守るためのケースや筐体のことです。防爆モーターのエンクロージャは、防爆性能を確保するために厳密な規制に基づいて設計・製造されます。

また、防爆モーターは過電流が発生した場合に自動的に遮断する保護装置が備わっています。過電流が長時間継続すると、電磁部品の過熱や火災のリスクが高まるため、過電流保護装置は重要です。

過熱が検知された場合に、運転を停止する保護装置も搭載しています。過剰な熱は絶縁材料の劣化や火災の原因となるためです。

防爆モーターの種類

防爆モーター、安全増防爆型と内圧防爆型、耐圧防爆型の3種類に大別されます。

1. 安全増防爆型

内部のスパークや火花が爆発性ガスと混合した環境においても、安全に運転するために設計されたモーターです。略して安増 (あんまし) とも呼ばれます。これらのモーターは点火源とならぬよう構造が工夫されており、危険な雰囲気の中でもそのまま使用することが可能です。

具体的には、モーター巻線が通常よりも低い温度となるように設計されています。これによってモーターの過熱を防止し、発火のリスクを低減することが可能です。また、端子間の離隔も通常よりも広く、スパークを防止する構造です。

2. 内圧防爆型

内部に常に窒素などの不活性ガスを注入し続けることで、可燃性ガスなどが入らないように保護したモーターです。内圧が周囲環境よりも常に高く、可燃性ガス内部に入る危険性がありません。

したがって、可燃性ガスの雰囲気でも問題無く使用できます。ただし、この構造の場合は不活性ガスを注入するための設備が必要となります。

3. 耐圧防爆型

内部に可燃性ガスが侵入して爆発が起こっても、その爆発が点火源とならない特殊な構造のモーターです。ケーシングが爆発に耐える堅牢な構造です。また、ケーシング内圧を安全に解放する装置が組み込まれており、ケーシングの損傷や破損を防ぎます。

参考文献
https://www.tmeic.co.jp/product/rotating_machinery/motor/exp_japan/policy/

防爆コネクタ

防爆コネクタとは

防爆コネクタ(英: Explosion-proof connector)とは,爆発性の環境や危険な場所で使用される電気の接続用コネクタです。

防爆は爆発または火炎を防止する構造を指します。爆発性のガスや引火性・揮発性の液体を扱う工場では防爆仕様の機器を使用することが必要です。防爆コネクタは、爆発を引き起こす可能性のある火花や強い電磁放射を防ぐための設計がされています。

爆発性ガスが漏れ込んだ場合でも、コネクタ内の火花を制限する機能を有します。特殊な材料を使用しており、爆発性環境下でも堅牢かつ高耐久です。防爆コネクタは特定の規格や安全基準に適合していることが求められます。国際的な規格としては、ATEX (欧州) 、NEC (米国) 、IECEx (国際) などがあります。

防爆コネクタの使用用途

防爆モーターは化学プラントや採鉱業、軍事などで使用されます。

1. 製造業

化学薬品や石油製品の製造過程で発生する爆発性ガス下環境で使用されることが多いです。防爆コネクタによって電気機器や計測装置との安全な電気接続を確保します。

2. 鉱業

鉱業においては、鉱山内での採掘や精錬作業において、爆発性ガスや粉塵が発生する可能性があります。したがって、防爆コネクタが必要です。鉱山の照明、通信システム、モーター制御などに使用されます。

3. 軍事施設

軍事施設では、爆発物の取り扱う施設が多いです。したがって、防爆コネクタが広く使用されます。爆発性物質による事故や火災を防ぐため、電気の接続や通信システムにおいて高い安全性が求められます。

防爆コネクタの原理

防爆コネクタは、外部からの爆発性ガスや粉塵の侵入を防ぐために密閉された筐体を持ちます。筐体はステンレス鋼などの金属合金で作られる場合が多いです。

また、電気信号の伝達を行うための接触部があります。金属製のピンやソケットで構成され、信号の安定性と低い接触抵抗が特徴です。防爆コネクタの接触部は爆発のリスクを最小限に抑えるために、防爆ギャップなどを使用して爆発のリスクを軽減します。

外部からの電磁干渉や静電気の影響を防ぐ、シールド機能を備えている場合もあります。また、コネクタとケーブルの接続部にはケーブルグランドが配置されることが多いです。これにより、静電放電が制御され、爆発のリスクが軽減されます。

未完全な接続による火花や放電を防ぐために、インターロック機構を有することも多いです。コネクタが正しく接続されていない場合には電気回路が断たれ、安全性が確保されます。

防爆コネクタの種類

防爆コネクタの防爆性能は、国内外の規格で定められています。また、取り扱う危険物の種類や量によって危険度の大きい順にZone0からZone2に分類されます。エリアごとに必要な防爆構造が指定されています。

主に使用される防爆構造は、「本質安全防爆構造」「耐圧防爆構造」「内圧防爆構造」「安全増防爆構造」の4種類です。

1. 本質安全防爆構造 (記号i)

正常時および故障時に火花または高温が発生した場合に爆発性の空間に対して発火点とならないことが確認された構造です。Zone0でも使用可能です。

Zone0のエリアにおいては、制御盤などの本質安全化が難しい機器については防爆エリアの外に設置することが多いです。制御盤からの電気接続に防爆コネクタを用います。

2. 耐圧防爆構造 (記号d)

外部で爆発が起こった場合でも、その圧力に耐えて更に発火する恐れのない密閉構造です。堅牢な金属ケーシングが使用されます。Zone1から使用可能です。

3. 内圧防爆構造 (記号f)

内部に保護気体を封入することで発火の恐れがないようにする構造です。保存気体には窒素ガスなどが使用されます。Zone1から使用可能です。

4. 安全増防爆構造 (記号e)

火花やアーク、高温が生じないように安全策をとった構造です。配線同士の離隔が大きかったり、配線径を太くして温度上昇を低減したりした構造です。Zone3で使用可能です。

参考文献
https://aiwaok.jp/explosion-proof
https://www.amphenol.co.jp/military/techinfo/ExplosionproofConnector.html

防振台

防振台とは

防振台とは、微細な加工を要する製造現場や精密な光学実験などを行う場面などで、振動を発生する機器から、振動が外部への伝搬を抑えることを目的とした装置です。

防振台の性能を決めるのは、防振台自体が有する固有振動数です。固有振動数とは、物体が自由に振動する時の振動数であり、外部からの力が加わらなくても、その物体は固有振動数で振動します。物体の固有振動数が小さいほど、周囲からの振動に追従できなくなるため、固有振動数が低い防振台は防振性が高まります。

防振台にはよく空気ばねが用いられており、水平方向のみならず三次元方向に対して防振することが可能です。空気ばねは空気の粘性抵抗により、すみやかに振動を減衰させることができます。

防振台の使用用途

防振台は、空気ばねなどを用いた振動低減方法によって、半導体・液晶ディスプレイ製造といった振動を嫌う精密機器製造の場面においてよく利用されています。特に振動を発生させるポンプや工作機械などを台上で用いる場合、防振台を使えば外部に振動が伝わることを抑制することが可能です。

あるいは精密ばかりを用いた計測やマイクロスコープによる観察においても、作業時の机上の振動、あるいは外部からの振動を速やかに抑制できるため、計測時間の効率化を図ることができます。

防振台の原理

防振とは、振動する機械などの振動体から外部へと伝わる振動をできるだけ抑制することです。気体中を伝わる振動は途中にある壁などの障害を通じて大きく減衰するため、あまり遠くまで振動が伝わることはありません。しかし、固体を伝わる振動の場合では、固体が媒質となり振動を伝搬するので、物理的に振動の伝達を抑えることが必要となります。

固体中の振動の伝播を抑えるためには、固体が固有に持つ振動数 (固有振動数) が低くなるようにすることが大切です。もし、ある物体の固有振動数をと同じ周波数の振動が入力された場合、その物体は激しく振動します。これを共振と言います。共振現象は最悪の場合に、機械が壊れる原因にもなりかねません。

したがって、振動を減らすためには、伝播する周波数と固有振動数をできるだけ大きく遠ざけることで振動の伝搬は低減できます。特に、固有振動数を小さくするほど振動伝達率が低減するため、防振台においても空気ばねやコイルスプリングを取り付ける手法などを用いています。その固有振動数は、10ヘルツ以下という低振動数です。

空気ばね方式では、金具とゴム膜で構成された空気ばねに圧縮空気を封入します。外部からコンプレッサなどで空気供給を行い、台の水平を維持しています。一方で、コイルスプリング方式では、空気を必要としないメリットがありますが、台に載せているものの重心が移動するとスプリングがたわ無ことによって、傾きが生じてしまうことがデメリットです。

防振台の種類

防振台にはメカニズムによって、大きく2つの種類があります。

1. パッシブ型

パッシブ型の防振台は、入力された振動エネルギーを防振ゴムなどの柔らかい材質の部材や空気ばねなどによって吸収するタイプの防振台です。多くの防振台はパッシブ型です。パッシブ型の防振台の中には、コンプレッサーや工場エアなどによって空気を供給する必要があります。

2. アクティブ型

アクティブ型の防振台は、強制的に振動を打ち消すタイプの防振台です。センサーによって振動を検知し、アクチュエータが入力振動とは逆向きの力を加えることによって、振動を打ち消します。

アクティブ型の防振台はパッシブ型と比較すると、コントローラやアクチュエータなどの装置が必要で大掛かりになりますが、特に10Hz以下の低い周波数の防振に向いています。

防振台のその他情報

除振台

防振台は振動を発生する装置などを載せ、載せた装置が発生する振動を周囲に伝えにくくするための装置です。逆に振動がある環境において、周囲から入ってくる振動を低減させる装置を除振台と言います。

振動の発生を抑えるのが防振であり、入ってきた振動を低減させるのが除振台です。役割によって呼び方は違いますが、装置としては多くの場合は防振、除振のいずれにも使うことができます。

また、制振という用語もありますが、制振は振動する物体に直接ブレーキをかけることです。具体的には、ダンピングという減衰装置によって振動を少なくします。

参考文献
https://jpn.surugaseiki.com/products/category/vibratoin-isolating-table
https://www.vibra.co.jp/products/detail/83
http://www.boushin.com/mechanism/