ゲートバルブとは
ゲートバルブ (英: Gate Valve) とは、液体や気体などの流体をディスク (弁体) で仕切るように遮断して、流路を閉止するバルブです。
一般的に、「仕切弁」「スルースバルブ」も同義語として扱われています。ゲートバルブは、JIS B0100 バルブ用語 Glossary of terms for valves で、「弁体が流体の流路を垂直に仕切って開閉を行い、流体の流れが一直線上になるバルブの総称 」と規定されています。
水門のゲートのようにディスク (弁体) が流路内に滑り込んで遮断するので、ゲートバルブはと呼ばれるようになったと言われています。
ゲートバルブの使用用途
図1. ゲートバルブの使用例
ゲートバルブは、流体の流れを広い圧力・温度範囲において制御できるため、家庭用から一般産業用、学術研究用に至るまで幅広く利用されています。身近な使用例は、水道メータやガスメータ、給湯器の配管などです。
特にゲートバルブは、ディスクの中間開度で使用するとディスクが振動するため、通常は全開もしくは全閉で使用します。したがって、止弁として遮断目的で使用されるバルブです。
一般的に、パイプラインの止弁や水道などの給水配管の仕切弁として、常時開弁もしくは閉弁目的で設置されます。手動ゲートバルブの場合は、ハンドルを多く回す必要があり開閉操作に時間がかかります。
そのため、非常に頻繁に開閉したり、遠隔操作したりする場合は、自動開閉用アクチュエータが装備されたゲートバルブを使用します。
ゲートバルブの原理
図2. ゲートバルブの開閉弁状態と流体の流れ
ゲートバルブの原理は非常にシンプルで、開弁はボディ (弁箱) でディスク (弁体) を下降させ、流路を遮断し流体を閉止します。閉弁はその逆にディスクを上昇させ流路を開放し流体を流します。
ディスクの上昇下降は、ハンドルやアクチュエータによりステムを回転させ、ステムのねじ機構により行われます。
1. ゲートバルブの圧力損失
ゲートバルブはフルポートバルブと設計されていることが多く、ボディ内部と出入口配管の流路面積に差が少なく流路はほぼ直線のため、全開時の圧力損失が極めて小さいことが特徴です。
また、ゲートバルブと同様に止弁として使用することの多いグローブバルブは、ボディ内の流路がS字状なので、ゲートバルブと比べて全開時の圧力損失は大きくなります。
なお、圧力損失とは、流体が配管を通過するときに失われるエネルギー量のことです。配管内壁面による摩擦損失や乱流の生成によって引き起こされます。
2. ゲートバルブのウォーターハンマー現象
ゲートバルブは、開閉時のストロークが比較的大きく、急な開閉ができないため、ウォーターハンマー現象が発生しにくいバルブです。ウォーターハンマーとは、バルブを急速に開閉したときに、流速の急激な変化により管内圧力が過渡的に上昇または下降する現象を指します。
ウォーターハンマーによる圧力変動で、下記のような問題が発生します。
- 急激な圧力上昇により、配管や接続されたポンプやバルブなどの機器、配管支持金物が破損する
- 急激な圧力降下により、配管の変形や、水柱分離に伴う二次的な圧力上昇で配管が破損する
- 圧力変動により圧力制御が困難になる
ゲートバルブの構造
図3. ゲートバルブの構造
ゲートバルブは主に、ボディ (弁箱) 、ディスク (弁体) 、ステム (弁軸) 、ハンドルなどで構成されています。ゲートバルブは、ハンドルまたはアクチュエータによって操作可能です。
ハンドルはステムに取り付けられ、回転をステムに伝達します。開弁時はハンドルの回転でステムねじがディスクを上昇させる方向に回転し、閉弁はその逆回転でディスクを下降させます。
ゲートバルブの種類
1. 開閉操作方式による分類
図4. ゲートバルブの操作・駆動方式
ゲートバルブは、主に下記3種類の開閉させるための操作・駆動方式があります。
- 手動式
ハンドルなどでステムを回転 - 空動式
空気作動式アクチュエータでステムを回転 - 電動式
電動アクチュエータでステムを回転
2. ディスクの形状と構造による分類
ゲートバルブは、下記のようなディスクの形状と構造による種類があります。
- パラレルもしくはウェッジディスク
ディスクの断面が「平行」もしくは「くさび状」 - パラレルスライド
互いに平行な2つのディスクの組み合わせで、流体の圧力によって出口側のシート (弁座) 面に面圧を与えられる - ダブルディスク
2枚のディスクで構成され、ステムがディスクを押し広げ、入口側と出口側のシート (弁座) 面に面圧を与えられる
3. ステム上昇式・非上昇式
ゲートバルブは、ディスクを上下動させるためにステムを回転させますが、ステム回転に伴い位置が変化かしないかの種類があります。
ステム上昇式
ステム上昇式はステムの回転に伴い、ステムもしくはハンドルの位置が上昇もしくは下降します。ステムやハンドルの位置で開閉度合いが判別できるため、状態を目視などで確認できます。
また、ステムやハンドルが上昇するため、ハンドル操作のため空間が必要です。
ステム非上昇式
ステム上昇式はステムの回転に伴い、ステムもしくはハンドルの位置が上昇もしくは下降しません。ステムやハンドルの位置で開閉度合いが判別できないため、状態を目視などで確認できません。
また、ステムやハンドルが上昇しないため、ハンドル操作のため空間は小さくなります。
4. ボディの材質による分類
ゲートバルブの材質は、ボディの材質で種類を分けることができます。一般的なボディ材質は、下記の通りです。
- ねずみ鋳鉄品 JIS G5501 FC200
- 球状黒鉛鋳鉄品 JIS G5502 FCD400
- 圧力容器用炭素鋼鍛鋼品 JIS G3202 SFVC 2A
- 高温高圧鋳鋼品 JIS G5151 SCPH2、SCPH21
- ステンレス鋼鋳鋼品 JIS G5121 SCS13A、SCS14A
- 銅及び銅合金鋳物 JIS H5120 CAC406 青銅鋳物3種
- 銅及び銅合金の棒 JIS H3250 C3771 鍛造用黄銅
ボディ材質は、下記のような要件に基づき選定します。詳細は各メーカのカタログ等を参照してください。
- 流体の種類、圧力、温度、流速、不純物の有無
- 耐食性対応の要否
- 適用される法規、規格
参考文献
https://www.kitz-valvesearch.com/kiso/type_index.html
http://www.yamatovalve.co.jp/products/gate-v.html
http://www.cgc.co.jp/tomoe/products/pdf/precautions/precautions5.pdf