湿度センサー

湿度センサーとは

湿度センサー

湿度センサーとは、空気中の湿度を測定するセンサーのことです。

一般的に、飽和水蒸気量に対する相対湿度を測定するセンサーを指します。温度センサーを組み合わせて温湿度センサーという形で利用される場合もあります。もちろん、絶対湿度を検出する湿度センサーもありますが、相対湿度を検出する湿度センサーの方が一般的です。

湿度センサーは、エアコンや乾燥機など家電製品だけではなく、機械のメンテナンスや食品加工の現場でも使用されています。

湿度センサーの使用用途

湿度センサーは、一般家庭用の家電製品やプリンターなどのOA機器、一般家庭やビルおよび施設の空調、工場や倉庫などの工業施設などで幅広く使用されています。それぞれの用途例は下記のとおりです。

1. 一般家庭向け製品

湿度センサーは一般家庭用の製品に搭載されています。例えば、エアコンや冷蔵庫、自動車、乾燥機、空気清浄機、加湿器などに使用されています。空気環境を調整する空調製品に湿度センサーは不可欠です。

2. OA機器

プリンターなどのOA機器にも湿度センサーは搭載されています。OA機器は極度な乾燥や湿度を嫌うため、湿度センサーにより外部環境を測定し、機器の故障を防いでいます。

3. 工業用途

さらに幅広く湿度センサーが利用されているのが、工業用途です。食品加工工場や植物栽培工場などはもちろん、半導体などの製造現場や保管場所などの湿度管理に使用されています。また、医療機器の製造および使用環境、航空宇宙事業の現場などの湿度管理が重要な場所でも湿度センサーが利用されています。

4. 保管用途

博物館や美術館の展示物の保管にも湿度管理は非常に重要です。そこで、湿度センサーは、保存場所の湿度管理に重要な役割を果たしています。

湿度センサーの原理

湿度センサーは、相対湿度を測定するものが一般的です。センサーにより空気中の湿度を測定し、これをその環境下の温度における飽和湿度に対する相対値として算出して相対湿度を導き出します。

一方で、絶対湿度を測定する湿度センサーは、その空間における1立方メートルあたりに含まれる水蒸気量を測定します。この絶対湿度は温度に依存しない値で、その空間内の水蒸気量を示しており、容積絶対湿度とも呼ばれます。

湿度センサーの種類

湿度センサーは電子式高分子湿度センサーが主流であり、さらに「抵抗変化型」と「静電容量変化型」に分類されます。いずれも、電極と高分子膜により構成されており、高分子膜の吸湿による湿度の変化を電極間の電気信号の変化として取り出すものです。

1. 抵抗変化型湿度センサー

抵抗変化型湿度センサーは、湿度変化に対応する電気信号を電気抵抗の変化で捉えて検出します。くし形状をなす電極を互い違いになるように配し、このくし形状の向かい合う電極間の隙間を埋めるように高分子膜が配された構造です。

この高分子膜が湿気を吸い込み水が吸着すると、膜内のイオンが自由に動き回れるようになり、このイオンにより膜の抵抗が変化する性質を利用しています。この膜の抵抗の変化により電極間の抵抗 (インピーダンス) が変化するので、電気抵抗の変化により湿度を検出できます。

電気抵抗変化式の湿度センサーは、構造が簡単で、大量生産も可能です。また、比較的安価で耐久性が良く、電気抵抗を測定することからノイズに強い、湿度が高い部分に向いているというメリットもあります。ただし、湿度が低いと検出がうまくいかないデメリットがあります。

2. 静電容量変化型湿度センサー

コンデンサの技術を応用し、湿度変化に対応する電気信号を電気容量で捉えて検出するのが、「静電容量変化型」の湿度センサーです。通常の電極上に、湿気を吸い込むセルロースやPVAといった高分子膜の誘電体を挟んだ状態で、水分を透過する電極を設けた構造です。

水分を透過する電極側においては、空気中の水分は電極の有無に関係なく、高分子膜に吸湿され、高分子膜の誘電体の静電容量が吸湿した水分量によって変化します。この結果、水分量の違い、つまり湿度の変化を静電容量の変化として検出できます。

静電容量変化型湿度センサーのメリットは、抵抗式よりも反応が敏感で、応答速度も速いことです。しかし、静電容量変化型湿度センサーには、回路が複雑になるというデメリットがあります。

湿度センサーのその他情報

1. 湿度センサーのタイプ

湿度センサーには、小型の素子形状で電子回路に接続して使用するタイプのほか、プローブ状の測定部内に湿度センサーを配しているタイプもあります。また、結露に強いもの、結露に弱いものもあるため、用途に応じた適切な選定が必要です。

2. 湿度センサーの寿命

湿度センサーは、長年使用し続けると徐々に劣化し、当然のことながら、測定精度が低下します。また、湿度センサーと外部出力間の接合部の劣化も生じます。これらを考慮すると、使用環境や搭載センサーの種類にもよりますが、センサーの寿命は2~5年程度です。

3. スマートフォン用湿度センサー

近年、温度・湿度センサーを搭載しているスマートフォンが増えています。このように温度・湿度センサーを搭載したスマートフォンで温度・湿度を計測するためには、無料アプリなどをダウンロードする必要があります。

また、温度・湿度センサーを搭載していないスマートフォンにおいては、外付けセンサーを取り付ければ測定可能なケースも多いです。スマートフォンに連携するワイヤレスセンサーとしては、Bluletooth機能を有した温湿度センサーなども販売されています。このような外付けセンサーは、一般的に「環境センサー」と呼ばれています。この環境センサーは湿度だけでなく、温度、照度、気圧、騒音等の複数センサー機能を有しているものが多いです。

参考文献
https://product.tdk.com/info/ja/products/sensor/sensor/humidity/technote/tpo/index.html
https://empex.co.jp/usefulInfor.html
https://www.sensirion.com/jp/environmental-sensors/

PINダイオード

PINダイオードとはPINダイオード

PINダイオードとは、P型半導体とN型半導体の間に電気抵抗の大きい真性I型半導体が入っており、空乏層を広くしたダイオードです。

空乏層が広いことにより応答特性が向上しています。中央のI型半導体が高抵抗なので、ダイオードの中で最も端子間容量が小さいダイオードです。PN接合のダイオードと順方向電圧はほぼ変わりません。PINダイオードは流れる電流によって抵抗が変わるので特に高周波の可変抵抗器として利用されます。また、逆電圧をかけた時にはコンデンサとして利用できます。

PINダイオードの使用用途

PINダイオードは端子間容量が小さく、直列抵抗が低い性質があり周波数特性が高い特徴があります。そのため高周波の通信ラインに影響を及ぼしづらいことから、携帯電話をはじめとした高周波信号のスイッチングに使用されています。また、電流に応じて抵抗が変化する性質があり可変抵抗としてバンド切り替え用、AGC回路や受信用アッテネータにも用いられています。また、逆電圧をかけた時にはコンデンサの役割も果たします。

PINダイオードの原理

1. PINダイオードに順方向の電圧を印加した場合

PINダイオードの順方向の電圧を印加した場合

図1. PINダイオードの順方向の電圧を印加した場合

PINダイオードは、順方向に電圧をかけるとP型半導体から正孔、N型半導体から電子が移動してI型半導体の中で出会い再結合します。I型半導体内ではかけられた電圧によって非常に早く電子と正孔が移動することになり、電流が流れやすい状態になります。このP型、N型から移動してきた正孔と電子がI型半導体中で出会うことで抵抗が変化していきます。つまり、電圧に応じて抵抗が変化するので電圧を制御することで可変抵抗として利用することが可能になります。

また、I型半導体の空乏層の厚みや面積を変えることで端子間容量を変化させることができ、抵抗特性を選択することができます。I型半導体を持たないPN型半導体と比べて、PINダイオードは正孔、電子といったキャリアの蓄積効果が高いため、性能が向上しています。

2. PINダイオードに逆方向の電圧を印加した場合

PINダイオードに逆方向の電圧を印加した場合

図2. PINダイオードに逆方向の電圧を印加した場合

一方、逆電圧をかけた時には、P型、N型それぞれの表面に正孔、電子が集まり、I型半導体は誘電体となり、コンデンサとして働きます。

PINダイオードのその他情報

1. PINダイオードの伝導度変調

伝導度変調とは、バイアスをかけたときに高抵抗の層にキャリアが流れ込むことで抵抗値が変化することをいいます。

P層とN層の間に挟まれたI層は、シリコン (Si) やゲルマニウム (Ge) といった4価の原子価をもつ元素からなります。これらは他の元素を含まない純粋な半導体として真性半導体と呼ばれ、電子を8個もつ安定した共有結合により拘束されているため電子の移動ができない絶縁層です。

しかし、PINダイオードにおいて順バイアスされると、P層から正孔、N層から電子が流れ込みI層は高濃度にドーピングされたような状態になります。その結果、伝導度変調が発生し高抵抗だったI層は順方向の電流が流れるようになり低オン抵抗となります。

2. PINダイオードによるスイッチ

PINダイオードは、高周波スイッチにも利用されています。低周波の領域では機械的なスイッチもありますが、高周波においては同軸リレーや半導体スイッチが用いられます。近年では、LAN通信システムや車載レーダーシステムの普及によりミリ波帯MMICスイッチとしても利用されています。

PINダイオードのスイッチ回路は、順バイアス時には高周波信号が出力され、逆バイアス時には高周波信号が出力されない原理となっています。 製品のラインナップとしては、反射型と吸収型どちらも存在します。反射型スイッチは、高周波電力が逆バイアス時には透過、順バイアス時には反射するタイプです。吸収型スイッチは、ON/OFFどちらにおいても電圧定在波比 (VSWR) が小さく信号ロスが少ないタイプです。

3. PINダイオードスイッチのメリット・デメリット

一般的に、PINダイオードスイッチはスイッチング速度や小型な点で優れていますが、消費電力が大きいというデメリットが挙げられます。

消費電力が大きくなる要因としては、挿入損失を少なく抑えるために高いバイアスをかける必要があるためです。 この欠点を補うミリ波帯のスイッチとして、MEMS (Micro Electro Mechanical System) という光スイッチが開発されており、今日の市場においてシェアを拡大しています。

参考文献
https://www.fbnews.jp/201509/rensai/ja3fmp_electronics_workshop_28_01.html
http://www.nteku.com/diode/pin_diode.aspx
http://fhirose.yz.yamagata-u.ac.jp/img/pn5.pdf
https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=48298
https://books.google.co.jp/books?vid=ISBN4501324201
https://core.ac.uk/download/pdf/147691708.pdf

赤外線ランプ

赤外線ランプとは

赤外線ランプ

赤外線ランプとは、赤外線を放射するものの総称です。

電磁波は波長の帯域により分類され波長が短い順に並べると、γ線、x線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波、ラジオ波があります。この内の概ね400nm~800nmの帯域のことを可視光と呼び、人の眼で視認することが可能です。赤外線は概ね800nm~1mmの帯域を指し、この内の800nm~2,500nmを近赤外線、2,500nm~4,000nmを中赤外線、4,000nm~1mmを遠赤外線と呼びます。

可視光と隣接する紫外線と赤外線は、特定の条件下で間接的に可視化できる性質をもっています。そのため、電磁波でありながら光と同じように扱われることがあり、電磁波を放射するものでありながらランプと称されています。

赤外線ランプの使用用途

赤外線ランプには大別すると、照明用途のものと加熱用途のものの2種類があります。照明用の物はIR (Infrared) と称されることもあり概ね近赤外線を用いているものが多いです。

加熱用のものは、近赤外線を用いたものと遠赤外線を用いたものの両方があります。

1. 照明としての用途

人間の眼は可視光しか視認できませんが、カメラなどに用いられるCCD (Charge Coupled Device) 素子には製品の多くに受光感度特性が備わっています。製品によっては近赤外線を受光できるものもあり、赤外線カメラなどとして販売されています。

赤外線カメラは、赤外線で発光するものや照らされたものを映像化するため、その照明用の機器として赤外線ランプを使用します。この場合、赤外線は人間の眼では視認されないため光害にならない、あるいは秘匿性があることがメリットです。防犯カメラと組み合わせて使用されています。

その他、検査装置・加工装置などの照明機器として赤外線ランプは使用されています。水にはO-H伸縮振動の基準振動がある2,600nm~2,700nm付近に吸収スペクトルがあり、この波長の赤外線を吸収する性質を持っています。水は工業、医療、食品などにおいて密接な関係があり非常に多くの場面で関わりのある物質です。

2. 加熱としての用途

前述した通り、水には赤外線を吸収する性質があります。吸収された赤外線のエネルギーは、熱に変換されます。そのため、水分に対して効率よく加熱することが可能で、暖房や加熱加工や乾燥などの用途として赤外線ランプが利用されています。

加熱用の赤外線ランプは赤外線ヒーター、シーズヒーター、セラミックヒーターなどと称される場合がありますが、どれも赤外線を放射する赤外線ランプです。

赤外線ランプの原理

1. 照明用途の赤外線ランプ

照明用途としての赤外線ランプは、ほとんどの場合、赤外線LEDにより構成されています。LED (Light Emitting Diode) には、赤外線に特化して発光する物があり、これらを赤外線LEDと称しています。

概ね800nm~1,500nmの帯域の物が商品化されていていますが、どれも発光波長の帯域が狭く任意の波長を得やすいのが特徴です。このLEDを使って作られた赤外線ランプが、照明用として多く使われています。

2. 加熱用途の赤外線ランプ

加熱用途としての赤外線ランプは。ハロゲンヒーターランプ、カーボンヒーター、ニクロムヒーター、赤外線レフランプなどを熱源とした構造をしています。その他にも、熱源のニクロム線などをセラミックで覆ったセラミックヒーターや熱源のニクロム線などを酸化マグネシウムで絶縁して金属管などに埋め込んだシーズヒーターなどがあります。

赤外線ランプの選び方

赤外線ランプは前述した通り、照明用途と加熱用途の2種類があるため、選定の際は用途を明確にすることが重要です。特に加熱用途には、多種多様な製品があります。

用途や大きさ、電力などを考慮した上で選定しましょう。

マイカコンデンサ

マイカコンデンサとはマイカコンデンサ

マイカコンデンサとは、誘電体に雲母という天然鉱物のセラミックを用いたコンデンサです。

耐熱性が非常に高く、温度特性が良いコンデンサです。雲母は薄い層状になっているため、1枚ずつ剥がして使用します。雲母の層は割れやすい特徴があり、他のコンデンサと比較して加工が難しいうえ高価なコンデンサです。

最近では、セラミックコンデンサの性質が向上した影響でシェアが低くなっていますが、オーディオ関連の用途で引き続き好まれています。

マイカコンデンサの使用用途

マイカコンデンサは、真空管アンプやパワーコンディショナとして特に1970~80年代に好まれて使用されました。マイカコンデンサならではの音質が注目され、高級オーディオアンプ等に搭載されている機種があります。

また、歴史が古いコンデンサで1850年頃登場し、第二次世界大戦頃には無線通信機や電子計算機といったほとんどの電子機器に使用されていました。その後もテレビやラジオ等にも使用されていましたが、高価なため近年では安価なコンデンサが主流になりつつあります。

マイカコンデンサの原理

1. 特性

マイカとは天然鉱物の雲母のことで、マイカコンデンサでは誘電体に雲母が使用されています。雲母はケイ酸塩鉱物であり、鉱物が原料なので高温でも安定した特性を維持することができます。また、高周波特性も良いです。

容量の精度を示す静電容量許容差を非常に小さくすることが可能であり、等価直列抵抗が小さいため、誘電正接を小さく抑えられます。

2. 静電容量

コンデンサの容量は、電極面積が広くなるほど大きくなります。マイカコンデンサは薄く剥がした雲母板と銀箔をサンドイッチ状に交互に重ねた構造です。サンドイッチ状に積層するのは、電極面積を大きくしながら小型化を図るためです。

雲母は薄くはがれやすいといった変わった性状をもつ鉱物であり、電気絶縁性にも優れています。この雲母の特徴からマイカコンデンサは発案されました。コンデンサの中には電極面積を大きくするために、電極と誘電体を巻物のように巻くペーパーコンデンサと呼ばれる手法もあります。

マイカコンデンサの種類

マイカコンデンサには主に、電極にスズ等の金属箔と雲母を交互に配置したスタック型と、雲母に銀ペーストを印刷して重ねたシルバード型があります。シルバード型は加熱圧着しているので特性が良く、スタック型よりも使用される場面が多いです。

雲母は白雲母や黒雲母などがあり、原料の組成によって形態や色が若干異なります。産地や使用する部分によりその品質や組成が微妙に変わり、天然に産出する鉱物なので安定した品質を維持することが他のコンデンサよりも難しいです。

また、雲母の薄い層を丁寧にはがす工程を人の手で行う必要があるため、技術が求められる分コストが高くなっています。

マイカコンデンサのその他情報

マイカコンデンサにおける雲母の役割

コンデンサは、隙間をあけて対面させた2枚の電極が基本構造です。2枚の電極に直流電圧を加えることで、瞬間的に片方の電極に電子が集まってマイナスに帯電し、他方の電極は電子不足となることでプラスに帯電します。

この状態は直流電圧の印加をやめても維持され、2枚の電極間には電荷が蓄えられることになります。電極間に誘電体を挿入すると誘電体の誘電分極が発生することで蓄えられる電荷が増大します。マイカコンデンサでは、この誘電体で雲母を使用しています。

誘電率は50Hzにおいて測定した値は6.5~9であり、他の物質と比較しても誘電率が高いです。また、雲母は耐熱性と絶縁性があり、薄膜状なので誘電体に適しています。

参考文献
http://venetor-sound.jugem.jp/?eid=64
https://www.matsuzakidenki.co.jp/product/

アルミ電解コンデンサ

アルミ電解コンデンサとは

アルミ電解コンデンサ

アルミ電解コンデンサとは、誘電体に酸化アルミニウムが使用された、小型で静電容量の大きいコンデンサです。

陰極に電解液を使う湿式タイプが主流ですが、性能を向上させた導電性高分子等の固体を使用した乾式タイプもあります。価格が安く汎用性が高いため、家電やパソコンなど電子基板をもつ製品の多くに使用されています。

アルミ電解コンデンサの使用用途

アルミ電解コンデンサは他のコンデンサよりも小型で容量が大きく、価格も安価であるため、自動車分野、家電分野、産業機器分野など広い分野において、電子基板をもつ様々な製品に使用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 自動車分野
    エンジン制御装置、先進運転支援システム、エアバック制御、カーステレオ、カーナビゲーションシステム
  • 家電分野
    テレビ、レコーダー、デジカメ、オーディオ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ、照明器具、パソコン、テレビゲーム機
  • 産業機器分野
    各種製造装置、再生エネルギーのパワーコンディショナ

再生エネルギーのパワーコンディショナとして使用する場合、多いものだと10~100個のアルミ電解コンデンサを使っています。汎用性が高い分、アルミ電解コンデンサに要求される性能は年々高くなっている状況です。

アルミ電解コンデンサの原理

アルミ電解コンデンサの陽極、陰極には薄いアルミニウム箔、誘電体に酸化アルミニウムが使用されています。酸化アルミニウムは、アルミニウム箔に電気化学的な酸化処理 (化成) を施すことでアルミニウム箔の表面に形成されます。

アルミニウム箔表面は、エッチング処理で凹凸をつけることにより表面積の大きくしています。コンデンサの静電容量は以下の式で表され、誘電体の表面積に比例、厚さに反比例することから、エッチング、化成処理を通じて作成される酸化アルミニウムは非常に高い静電容量をもった誘電体です。

静電容量C=ε×S/d 
ε:誘電体の誘電率 S:誘電体の表面積 d:誘電体の厚さ

酸化アルミニウムの被膜は、電圧がかけられると微小な電流が流れるので、漏れ電流が他のコンデンサよりも多く発生することが欠点として挙げられます。湿式のアルミ電解コンデンサの内部の陰極には、電解液が使用されているため、故障時に電解液が漏れてしまう可能性があります。

また、電解液の漏れや蒸発により電解液が減る場合があり、耐久性が低いことも欠点の一つです。一方で、乾式のアルミ電解コンデンサは、内部の陰極に導電性高分子が使用されているため蒸発せず、湿式よりも耐久性が向上しています。

アルミ電解コンデンサのその他情報

1. アルミ電解コンデンサの寿命

電子部品の中でも湿式のアルミ電解コンデンサは、特に寿命が短いことが知られています。LSIには数万時間の動作時間が求められるのに対し、一般的なアルミ電解コンデンサで85℃中で2,000時間、高信頼性を謳うものでも105℃中で5,000時間が寿命といわれています。

寿命が短い理由として、絶縁紙に含浸された電解液が時間の経過とともに封止ゴム部から徐々に漏洩していくというアルミ電解コンデンサの構造が挙げられます。電解液が抜けると静電容量が減少し、ESR (等価直列抵抗) は増加します。

アルミ電解コンデンサの寿命は、最大使用温度以下であればアレニウスの法則 (熱エネルギーによる化学反応式) に従うといわれており、温度が10℃低くなると寿命は約2倍になります。従って、85℃/2,000時間のアルミ電解コンデンサは、75℃中で使えば4,000時間、65℃中であれば8,000時間程度が寿命です。

また、アルミ電解コンデンサは他のコンデンサと比べるとESRが大きく、動作時に大きな電流が流れるとコンデンサ内部が発熱します。この発熱はコンデンサの温度上昇をもたらすため、電解液の漏洩を更に促し、寿命を短くする要因となります。

2. アルミ電解コンデンサの極性表示

有極性コンデンサには、容易に極性を確認出来るようにするため、何らかの表示が必ず付けられています。

  • 縦型電解コンデンサ
    一般的に、本体の下方の負極側にラインがあります。また、負極のリード線が短くなっています。
  • 表面実装型電解コンデンサ
    電解コンデンサの上面に静電容量や耐電圧が表示されていますが、その一角に着色されたマークがあります。このマークの下側の電極が負極です。
  • アキシャルリード型コンデンサ
    矢印が付いたラインが負極のリードを示しています。また、電解コンデンサ本体に凹みが設けられていますが、この凹みがある側が正極です。

極性を誤って取り付けると、コンデンサが故障するだけでなく、発火などの危険性もあるため極性表示の確認は極めて重要です。

参考文献
https://www.chemi-con.co.jp/faq/detail.php?id=29AJZG2
https://www.chemi-con.co.jp/catalog/pdf/al-j/al-sepa-j/001-guide/al-technote-j-2020.pdf
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/aluminum-electrolytic-capacitors-guide
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/electronics_primer/10

スライドスイッチ

スライドスイッチとは

スライドスイッチ

スライドスイッチとは、つまみをスライドさせてオンオフを切り替えるスイッチです。

縦スライドと横スライドがあり、身近な電化製品にも使用されています。ただし、デジタル化されている製品に採用される機会は減少傾向です。スライドスイッチの端子接続方法は様々で、スルーホールやライトアングル、はんだやねじなどがあります。近年は小型化が進み、ディップスイッチとして搭載される製品もあります。

スライドスイッチの使用用途

電源のオンオフなどが主な用途で、産業用製品から家電製品まで幅広く使用されます。以下はスライドスイッチの使用用途一例です。

  • 扇風機などの家電製品
  • ひげそりやドライヤーなどの可搬製品
  • 懐中電灯などの照明器具
  • インバータなどの産業機器設定用

薄型のものでは、厚さ1.4mm程度の製品もあり、一層の小型化が進んでいます。小型のスライドスイッチはディップスイッチとして基板に組み込まれて使用される場合もあります。接触機構を工夫してセルフクリーニング効果のある製品もあります。

スライドスイッチの原理

スライドスイッチは端子、つまみ・ケーシング、接点などで構成されます。

端子は外部配線を接続する部品です。ピン形状やはんだ端子などが使用されます。一般的には銅合金などを材料としますが、微少電流負荷向けに金や銀を用いた高価な接点を使用する場合もあります。

つまみは人が操作する可動部品であり、ケーシングは他部品を支持しつつ絶縁する部品です。強度のある絶縁材料が好ましいため、一般的には硬質の合成樹脂が使用されます。つまみの下は接点の可動切片があり、つまみを切り替えることでスイッチを切り替えることが可能です。

接点は電気の通り道となる部品で、可動切片と固定切片で構成されます。可動切片と固定切片との接触機構が1点の製品よりも、2点で接触する製品はスイッチとして信頼性が高くなっています。さらに、クリップ型で摺動させて接触させる方式では、セルフクリーニング効果が期待できます。

スライドスイッチの選び方

スライドスイッチは必要な回路数と端子数などに応じた製品を選択します。具体的には以下のような観点から選定します。

1. 許容電流・許容電圧

許容電流はスライドスイッチが通電することができる電流の大きさです。許容電流が大きいほど大電流を流すことができますが、小型化するほど許容電流が小さくなる傾向です。数十Aから数百mA程度の製品が販売されており、一般的には0.1~1A程度の製品が多いです。

許容電圧 (耐電圧) は製品が許容する電圧の大きさです。AC100Vでの使用を想定された製品は許容電圧がAC125Vと表記される場合が多いです。また、基板実装用などの場合、許容電圧はDC30V程度の製品が多いです。

2. 実装方法

実装方法はスライドスイッチを取り付ける方法です。端子形状と密接に関係しており、基板表面実装用や基板穴挿入用等があります。スイッチの配置が実装面に対して垂直方向の製品や水平方向の製品など、形状もさまざまです。

3. 機能動作

スライドスイッチの機能動作として、極や投、接点種類があります。これらを組み合わせて、二極双投などと表現することが多いです。

スイッチの極とは1つの操作を行って開閉することができる回路数です。スイッチをスライドさせることで、電気回路上の接点切替をいくつ同時に行えるかを指します。小型の製品は1極が多く、2極から4極の製品が販売されています。

接点種類は切替によって動作する接点の種類を指します。a接点やb接点などがあります。スライドスイッチでは通常時開端子と通常時閉端子を有し、1つのコモン端子を持つc接点が使用される場合が多いです。またスイッチの投とは、スイッチで行う操作の数を示します。スライドスイッチの投は2接点を意味する双投式が一般的です。

4. 切替方式

切替方式は切り替える際の接点動作です。ショーティングとノンショーティングの製品があります。

接点を切り替える際に同時に2接点以上が導通する方式がショーティングで、接点を切り替える瞬間は回路が一度断線する方式がノンショーティングです。一般的にはノンショーティングの製品が多いです。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/1368/
https://www.nkkswitches.co.jp/support/klg/knowledge.html
https://www.nkkswitches.co.jp/support/klg/knowledge.html
https://www.omron.co.jp/ecb/product-info/basic-knowledge-series/basic-knowledge-of-switches

光センサー

光センサーとは

光センサー

光センサーは、受光素子とも呼ばれ、半導体素子でもあります。様々な光の性質を電気信号に変換して検出する補器のひとつで機械を構成する付属機器です。光を感知する方法として光センシングという技術が使われています。そして、あらゆる状況に対応するために様々な種類の光センサーが存在しています。光の対象が規定値内に入っているかを検出してONであれば合格、OFFであれば不合格とし、通知を行う種類や単一光子を検出できるような高感度なセンサーまで幅広く開発されています。

自動ドアの人感センサーにも光センサーは使われています。センサーの応答が早いため、余計なタイムラグが発生しません。また、光の検出で動作するため、人や物が接触する必要がなく、検出する対象物の汚染にも繋がりません。よって、安心して使用することが出来ます。以上のことから産業用や民生用でも光センサーが使用されています。

光には、目に見える「可視光線」や目に見えない「紫外線」「赤外線」などがあります。したがって、光センサーを選択する際は、波長に応じたセンサーを選ぶ必要があります。

光センサーにはフォトダイオードなどの半導体を使用したタイプと光電子倍増管を使用したタイプがあります。

光センサーの使用用途

近年、日常生活の中で機器の自動化が進んでおり、光センサーの用途が広がっています。代表的なものにはテレビやオーディオのリモコンがあり、これらのリモコンは、赤外線に反応して動くので赤外線用の光センサーが使われています。また、カメラのオートフォーカスやイメージセンサにも使われています。その他にも光センサーは、洗面台の水道でも使用されており、人の手を感知することで自動でスイッチがオンオフされるようになっています。

一歩家を出てみれば私たちの生活の至る所で光センサーが使われています。

現金自動預け払い機(ATM)では「カード検知」「紙幣検知」「内部機構検知」で光センサーが使われています。券売機では「硬貨検知」「切符検知」「紙幣検知」で使用されています。化粧室に入ると人感センサーにより照明が点灯したり、人のいないときには照明を消して省エネに貢献しています。

果物類の糖度検査にも光センサーが使われており、果実を傷つけず糖度が測定できるので需要が増えています。果汁の中に溶けている糖分や酸の成分が多いほど光の屈折率が大きくなるという原理を応用して糖度を測定することもできます。

また、天文学への応用もされており、古くは写真乾板に天体画像を記録していたが、1990年代に入ってから電荷結合素子(CCD)が採用されるようにないました。

光センサーの技術

近年では光センサーの技術は、目覚ましい進歩を遂げています。産業用分野では物を壊すことなく対象物の状況を調べることができる検査法に非破壊検査があります。この検査方法では対象物に放射線や超音波を当てることで傷や損傷度を対象物を壊すことなく調べることが出来ます。光センサーにもこのような検査方法に似た仕組みで近赤外分光法と呼ばれる方法が採用されています。近赤外分光法は、近赤外分光センサーで使われており、観測する対象物に影響を与えない仕組みになっています。赤外線は「近赤外線」「中赤外線」「遠赤外線」に分類されており、そのなかでも近赤外分光センサーでは近赤外線を取り扱っています。

近赤外分光センサーは、無機物から有機物まで広範囲の観測をすることが出来ます。例えば、機械学習分野と連携して無機物ではコンクリートが劣化しているかの確認に使用されたり、有機物では人や魚の体内脂肪量を観測したりすることに使用されています。

このようにひとつの分野だけでなく更なる技術を取り込むことで光センサーの技術は、今でも進化を遂げています。

光センサーの原理

光センサーの検出方式は多くあります。その中で主なものは透過型と回帰反射型です。透過型では、光を発する投光器と受光器が必要で、その間で遮るものがあると反応します。回帰反射型では、投光器と受光器が一体になっていて、投光部から出た光が反射板で跳ね返る光の遮りを検出します。

また、原理としては内部光電効果を利用したセンサーと、外部光電効果を利用したセンサーがあります。

内部光電効果

フォトダイオードに代表される半導体を利用しており、光起電力効果もしくは光伝導効果を利用しています。シリコンのセルでは可視光域、ゲルマニウムのセルでは紫外~赤外の波長に対応しています。カメラによく利用されるCCDは可視光域です。

外部光電効果

光が照射されると陰極から電子が飛び出し陽極に集めて増幅し、検出します。光電子増倍管を利用しているセンサーは、真空紫外域から1700㎛までの広い領域が検出できます。光電管によるセンサーも紫外光~可視光まで検出できます。

光センサー製品の特徴

光センサー製品は、検知対象に合わせた設計をして光路に特徴を持つ下記のようなタイプがあります。

1. 透過型フォトセンサー

発光素子が発する光をある一定の間隔を持たせ受光素子に当たるように双方の素子が向き合うコの字型構造をしています。発光素子の光が遮蔽物により変化する受光素子の出力で計測します。

2. 分離型フォトセンサー

発光素子と受光素子が分離したパッケージになり、長いセンサ間で距離を実現することで、任意の設定ができます。

3. 反射型フォトセンサー

発受光素子を同じ方向に並べたり、ある角度で取り付けます。発光素子からの光をある検知物に当て、そこから反射した光を受光素子で計測します。

4. プリズムフォトセンサー

発光素子と受光素子を同じ方向に並べて取り付けた光センサーで、発光素子と受光素子の間にプリズムを通して計測します。

5. アクチュエータフォトセンサー

透過型フォトセンサーに回転動作をするアクチュエータ(レバー)を組み合わせることで、レバーで遮断して機械的に判別を行います。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/sensorbasics/pe_type.jsp
https://www.klv.co.jp/iot/iot-optical-sensor.html
http://sensait.jp/1380/
http://sensait.jp/1411/

積層セラミックコンデンサ

積層セラミックコンデンサとは

積層セラミックコンデンサ

積層セラミックコンデンサは、MLCC (Multi -Layer Ceramic Capacitor)とも呼ばれ、内部電極と誘電体層が多層に積層されたチップ部品タイプのコンデンサです。小型化、大容量化が進むコンデンサ業界の中でも一層の進化が期待されています。

誘電体として主にチタン酸バリウム酸化チタンなどが利用され、内部電極と誘電体がいくつもの層になって形成されています。積層数を増やすことで静電容量を大きくすることが可能で、MLCCの小型化に繋がっています。

最近のMLCCの主流のサイズは、0603(0.6×0.3mm)およ0402(0.4×0.2mm)です。一部の容量値では、すでに次世代の0201サイズも実現できていますが、ハンドリングの難しさもあり、まだ市場で広まるには至っていません。

積層セラミックコンデンサはチップ型とラジアル型があります。他のコンデンサと比較して高周波のインピーダンス、ESR(等価直列抵抗)が低く、高周波特性が良い特徴があります。

積層セラミックコンデンサの種類

積層セラミックコンデンサは様々な特徴を備えたものが製品化されていますが、用途によって大きさ(サイズ)、耐電圧、温度特性等を考慮して採用する品種を決定することが求められます。積層セラミックコンデンサは、特性面から大きくClass1・Class2の2種に分類されます。

1. Class1

Class1は温度補償型とも呼ばれますが、ESRが極めて小さいうえ、静電容量の温度変化が少なくかつ変化も直線的であるため比較的容易に補正ができます。

しかしながら静電容量は1pF~1μF程度と小さなものが主流です。 主に発振回路や時定数回路など、静電容量の変化が望ましくない用途に使われます。

2. Class2

Class2は強誘電型とも呼ばれ、チタン酸バリウムを主原料として、小型でも100μF程度の大きな静電容量が得られます。しかしながらESRは大きめで、静電容量の温度変動が大きく、かつDCバイアスが加わると実質的な静電容量が低下するなど、使用する上で留意すべき事項が多々あります。

従って、Class2の積層セラミックコンデンサを採用する場合は、その特性を踏まえた上での回路設計が必須となります。 主な用途としては電源源の平滑用やデカップリングコンデンサなど、静電容量が多少変化しても影響が少ない回路に用いられます。

積層セラミックコンデンサの使用用途

積層セラミックコンデンサは層の数に応じて性能を選択することができ、ラインナップが幅広いので用途も広いです。積層セラミックコンデンサは、デカップリング、カップリング、平滑回路、DC/DCコンバータの平滑用、コンピュータ電源、ノイズ除去用として、携帯電話やテレビ、産業機器に搭載されています。

車載用には、長寿命で故障しにくいものが選ばれています。産業機器用には、高容量で小型のものが多く使用されており近年では他のコンデンサからの置き換えも進んでいます。

現在主流の積層セラミックコンデンサの大きさは1.0×0.5×0.5mmの1005サイズや0.6×0.3×0.3mmの0603サイズでかなり小さいですが、今後市場ですでに使われ始めている0402サイズおよびさらに次世代の0201サイズなどの超小型のコンデンサが主流になると考えられています。

積層セラミックコンデンサの原理

コンデンサの静電容量Cは誘電体の誘電率ε及び電極面積Sに比例し、電極間距離dに反比例します。また、コンデンサ同士を並列に接続すると、全体の静電容量は各コンデンサの静電容量を合計したものと等しくなります。

そのため、コンデンサの静電容量を増やすには誘電率の高い誘電体を使用し、電極面積を増やして電極板間の距離をできるだけ小さくすることがポイントです。積層セラミックコンデンサは、非常に薄い電極板を何層にも積み重ねた構造をしており、これは電極板間距離が近いコンデンサがたくさん並列に繋がれたものと考えることができます。

つまり積層数Nは、コンデンサの静電容量Cに比例します。そのため、積層数Nで容量を大きくすることにより、積層セラミックコンデンサは小型化と大容量化を両立することが可能です。

また、誘電体には誘電率の非常に高いチタン酸バリウムが使用されることが主流ですが、その性能はやがて頭打ちになると見込まれています。そこで、より優秀な誘電率を持ち、かつ疲弊しにくい材料の開発が期待されています。

積層セラミックコンデンサの構造

電極にニッケル、誘電体には主にチタン酸バリウムが使用されています。シート状の誘電体に内部電極となるニッケルのペーストが塗られ、そのシートを何枚も重ねて圧力をかけて成型します。

その後、小さくカットされて1000℃程度で焼結し、外部電極を取り付けると積層セラミックコンデンサになります。内部電極が左右交互に外部電極と接続されるようにすることで、層が並列に接合されていることと同じ状態になっています。

シート状で作製されるようになってから効率的になり、小型化、薄型化が一層進化しました。層の数は多くて1000層に及ぶものもあります。誘電体に主に酸化チタンを用いた低誘電率系とチタン酸バリウムを用いた高誘電率系に分類されます。

また、静電容量変化率と温度範囲によってClass1とClass2に分類されています。Class1は温度補償用、低容量で信号回路等に使用されます。Class2は高誘電率で温度係数が大きくなっており、電源のデカップリングや平滑回路用に利用されます。

積層セラミックコンデンサのその他情報

1. 積層セラミックコンデンサの特徴

積層セラミックコンデンサは温度によって静電容量が変動します。そのため、積層セラミックコンデンサを選ぶときには、容量や定格電圧から選択するだけでなく、使用環境での温度も考慮する必要があります。

積層セラミックコンデンサは、電極にニッケルやなどの金属を使用しているため、等価直列抵抗(ESR)が低いことが特徴です。また、積層セラミックコンデンサはその構造上、寄生インダクタンス(ESL)が小さいことも特徴で、これにより、高周波での利用に適しています。

すなわちこれらのESRやESLが小さい特徴を生かすことで高いQ値を有する共振回路や、低損失な整合回路を形成することができ、電源箇所のデカップリング用途や、ノイズ対策用途と共々に、MLCCは高周波回路製品の分野ではなくてはならない部品の一つです。

電極板の層数を変えることで小容量から大容量まで自在なコントロールが可能です。そのため、製品としての積層セラミックコンデンサは、用意されたラインナップの静電容量の範囲が非常に広いことも特徴の一つと言えます。

2. 大容量化の基本技術

コンデンサの静電容量は内部電極板の面積に比例して大きくなります。積層セラミックコンデンサのサイズを変えずに大容量化を実現するにはできるだけ多くの電極層を積み重ねることが重要です。

一般に小型化、かつ大容量を実現するには、サブミリメートルオーダーの厚みで形成された電極を積層することが求められるため、電極層の薄層化が必須技術となります。電極層の薄層化には誘電体の原料である酸化バリウムの調整と、ペースト状の内部電極をシートにするための印刷技術が重要です。

誘電体は、酸化バリウムに添加物を加え、シート状に印刷した後焼結することで形成されるグレインと呼ばれる微粒子がその役割を担っています。薄層化した誘電体が十分に機能するかはグレインの微細構造を如何に設計するかが重要です。

また、ペースト上の内部電極を薄く印刷するには、シルクスクリーンで用いられるような、スクリーン印刷技術が用いられています。微細孔からペーストを押し出すことで均一な内部電極の薄層を形成することが可能です。

3. 積層セラミックコンデンサのシェア

電子機器の世界で、積層セラミックコンデンサは、今や産業の米とまで言われるほど広く利用されています。例えばTV受像機1台当たり200個から300個程度、スマートフォンでは1台当たり1,000個程度の積層セラミックコンデンサが使われています。

また、電気自動車であれば1台当たり15,000個以上です。この積層セラミックの生産において、日本の企業が多くのシェアを占めています。少し古いデータではありますが、2017年の金額ベースのシェア上位4社は下記となっており、日本企業3社で世界市場のシェアの過半数を占めています。

  • 村田製作所: 33.9%(2020年は40%超え)
  • サムスン電機: 18.1%
  • 太陽誘電: 10.3%
  • TDK: 8.4%

特に自動車では高性能な積層セラミックコンデンサが要求されますが、村田製作所とTDKが世界市場を独占している状態です。積層セラミックコンデンサは、5G世代のスマートフォンが普及する2021年以降更に使用量が増えることが予想され、当分の間品薄状態が続くと考えられています。

参考文献
https://www.chemi-con.co.jp/catalog/pdf/ce-j/ce-all-1002a-2020.pdf
https://www.yuden.co.jp/jp/solutions/mlcc/
https://article.murata.com/ja-jp/article/basics-of-capacitors-2
https://article.murata.com/ja-jp/series/capacitor-guide
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/multilayer-ceramic-capacitors-guide
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2005/04/p211-212.pdf

配線ダクト

配線ダクトとは

配線ダクト

配線ダクトは配電盤分電盤、照明器具等の配線をまとめて内部に格納し、配線の取り回しを確保しつつ、保護するために使用されます。

配線ダクトの形状としては、例えば図1に示すような四角の筒状の筐体が一般的です。店舗など屋内の照明器具の配線用の配線ダクトとしては、図2に示すような細い配線を1本など数本しか通さないレール形状のものもよく使用されます。

配線ダクトの形状

図1. 配線ダクトの一般的な形状(左) / ライティングレールの構造図(右)

このような形状のものは、配線ダクトのほか、ライティングレールやダクトレールなども一般的な呼称です。このようなライティングレールは配線をまとめて保護し、取り回しを確保するほかに、美観を保つ役割を果たします。

ぶら下がり型の照明器具であるシーリングライトなどを吊り下げる際には、配線ダクトの代わりに電源を持つ引っ掛けシーリングを利用することもあります。

配線ダクトの使用用途

配線ダクトは前述のように電線をまとめるための部材です。

屋外では、太陽光発電の配線によく利用されますまた、ビルや商業施設の様な大規模な建物に電気を供給する際の変圧装置キュービクルと併設されて、実際に電気を動力に送る配電盤への使用も一般的です。配電盤はキュービクルとともに屋外に設置されることが多いため、配線ダクトも屋外で使用されます

これら屋外で使用される配線ダクトは、雨や風にさらされるため、防水性があり丈夫な材質のものが好適です。このほか、屋外用の配線ダクトとして二重をもち、外側は耐候性優れ、内側は自己消火性のある製品が開発されています。

また、配線ダクトは、家屋の分電盤から各部屋への配線や、家屋や店舗の照明の配線を保護するためにも使用されています。このような配線ダクトには、環境にやさしく、燃焼した時に有毒ガスが発生しないノンハロゲン材料製などが好適です。特にEUの法律RoHSでは指定されたハロゲンを使用しない製品が求められています。

配線ダクトの原理

配線ダクトは、電線むきだしにならないようにまとめることで、取り回しを確保するとともに、電線の保護をおこなっています。

このため、上述したように、屋外用では雨風に強く防水性を持ち、気候に左右されづらい材質が多く使用されます。

一方、屋内用では特に火災に対する信頼性が高い材質が好まれ、燃焼時に有毒ガスを排出しない材料が使用されます。

配線ダクトのその他情報

1. 配線ダクトの材質

配線ダクトを設置する場所や用途に応じて難燃性、耐候性等が求められるので、用途に合う材質を選択する必要があります。

アルミ
アルミ製の配線ダクトは、アルマイト表面処理されており、耐食性が強化されています。同じ大きさや構造でも、製のものと比較して30%ほど軽量です。

ポリフェニレンオキシド(PPO)
ポリフェニレンオキシドは、ハロゲンを含まない材質ですただし、エーテルやガソリン、有機溶剤等が付着すると亀裂が入る可能性がありますので使用には注意が必要です。

ポリプロピレン
ポリプロピレンハロゲンを含まない材質で、環境に優しい材質です。耐油性難燃性も高く、ステンレス等に比べて軽量なので、航空機や鉄道車両に使用されて軽量化にも貢献しています。

ポリ塩化ビニール(PVC)・硬質塩化ビニール
ポリ塩化ビニール(PVC)、硬質塩化ビニールともに、よく利用されている材質です。弾力性があり、腐食の心配もありませんがハロゲン使用材料です。ただし、絶縁性を強化して自己消火性のある材質も開発されています。

2. 配線ダクトの形状と取り付け方

配線ダクトの形状としては、図1に示すような四角い筒状の筐体が一般的ですが、これの側面や底面に孔が設けられた製品もよく使用されます。ただし、この孔部からほこりなどが侵入するため、ほこりがたまりやすい場所等には孔などの加工のない製品が好適です。

また、配線ダクトの形状としては、内部に配線を入れやすい様に、管の上下方向に切り込みが加工されている製品やニッパー等で穴を開ける製品も一般的です。

配線ダクトの取り付け方にも種類があります。

天井直付け形
天井に直付けするタイプで、配線ダクトとしては一般的です。簡単に取り付けることができます。

また、配管ダクト同士を接続したり、配線ダクトの終点をふさぐキャップとしてL形やT形などたくさんの種類があるので、配線ダクトを自由な形に配置し、内部の配線も自由に配置することが可能です。

天井埋込形
天井に直接埋め込むタイプなので、直付け形とは異なり、全体的に室内をすっきりと見せることができます。

天井吊り下げ形
天井が高い部屋で使用するタイプであり、この形を使用することによって、照明器具を低い位置に取り付けることができます。

簡易取り付け形
一般的な家庭にある、シーリングやローゼットといった電気配線が接続する箇所に設置することができる便利な製品です。

このように配線ダクトには多数の取り付け方法があるので、用途や好みによって様々な形で取り付けることができます。

また、材質、色など様々な種類のものがあり、取り付け方法と材質や色を考慮して、使用する場所や照明器具に適合した自分の好みに合ったものを選ぶことが可能です。

3. レースウェイとの違い

配線ダクト以外の照明器具の取り付けるための一般的な部材としてレースウェイがありますが、以下に両者の違いを紹介します。

まず、レースウェイの一番の特徴は、電気を供給する機能を持つということです。

そのため、蛍光灯などを取り付けるのに使用される設備として使用され、工場や倉庫などで多く使用されます。そして、一般に幅が5cm以下ものレースウェイ、それ以上のものを配線ダクトと分類するのが一般的です

配線ダクトは一般家庭をはじめ、室内のムードを高めるためのスポットライトやダウンライトなどが必要となるカフェやブティックなどに多く設置され、照明器具の取り付けや取り外しが簡単にできるので、その使用目的に合わせて照明器具の移動や種類の変更ができます。

一方、レースウェイは、工場や倉庫での使用が主なので、配線ダクトほど照明器具の移動や種類の変更に対応する必要がなく、取り換えなどに応じた機能はあまりありません。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/wiring_duct/
https://www.panduit.co.jp/column/nattoku/6410/

端子台

端子台とは

端子台

端子台とは、外部配線と内部回路を接続する端子列のことです。分電盤配電盤などに使われています。ターミナルブロックとも呼ばれます。

電線を圧着端子などで端末処理して端子台に固定します。端子台には、ねじで固定するタイプやスクリューレスタイプなどが販売されています。

二段タイプや耐油、耐薬品性の高いタイプもあります。端子台上でテスターを使って、電圧や導通を測定できます。

端子台の使用用途

盤内部回路と外部配線をつなぐ役割として端子台が使用されています。分電盤や配電盤、ブレーカノイズフィルタ、航空宇宙関連、リレー、空調制御などに端子台が使われています。

端子台は種類が多いので、用途に応じて選択することができます。例えば、インターフェース用には、専用のインターフェース端子台があり、小型で端子数も多く便利です。また、接地用やヒューズ用など、用途に応じた端子台が販売されています。

端子台の原理

端子台は、導電板と樹脂架台などの部品に分かれます。

導電板は導電性材料の板で、電線同士を通電させる部品です。樹脂架台は、電路が地絡しないように絶縁している部品です。

導電板には、圧着端子で端末処理した電線をつないで使用します。圧着端子のみで使用する場合もありますが、マークチューブや絶縁キャップで感電しないように保護するとより安全です。

圧着端子を導電板上に付属するねじの下に挟み込みます。導電板を通じて電流を流すことができます。一般的に1つのねじに3本以上の電線を止めないようにします。接触抵抗の増加を防ぐことが目的です。

感電や地絡を避けるため、配線が機器や器具の上に乗らないようにします。使用前に、端子台の仕様を確認し、電流や電圧が許容範囲内であることを確認します。

スクリューレスタイプであれば端子を必要とせず、電線を剥いて直接端子台に差し込んで使用することができるため便利です。

また、樹脂架台には熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があり、耐熱性や耐薬品性に違いがあります。ねじや導電板には、やステンレス、クロムメッキなど導電性の良い金属が使用されています。RoHS指令に順じた製品が多くなっています。

端子台の種類

端子台には接続方法の分類とは別に、いろいろな機能を持った便利な端子台があります。

コモン端子台は、各端子接続部が内部でつながっており、主に電源の分配に使用されます。10極、20極、差込型、ねじ接続など様々なタイプがあり、機器の仕様によって選定します。

コネクタ端子台は、様々な規格のコネクタを端子に変換するためのものです。端子台にコネクタを接続し、コネクタのピンに対応する端子に電線を接続することで、ハンダづけなどを行わずに電線を接続することができます。

使用できるコネクタは多数あり、D-SubやMIL、FCNなどいろいろなコネクタ対応品が販売されています。端子接続部もねじ接続、差込型などがあります。

コネクタ端子台はPLCへのIO接続に多く用いられます。PLCのIOコネクタとコネクタ端子台をケーブルで接続し、端子台にI/Oを配線することでPLCへ入出力可能であり、配線工数を削減できます。

端子台のその他情報

端子台の規格

端子台の規格は「JIS C2811-1995」に規定されています。規格には、定格絶縁電圧や、適合電線、電線に対するねじの呼びなどの寸法まで、細かく規定されています。

また、各種性能試験についても規定があり、試験電流を流した時の温度上昇を測定する温度試験、絶縁抵抗試験ヒートサイクル試験、強度試験など様々な試験が規定されています。

試験は一つの型式に対して行うものと、毎製品に対して行うものとが規定されています。各メーカーは規格に従って検査を行い、製品の機能を保証できるようになっています。

海外で使用する際には、その地域の規格を満たす必要があります。メーカーによってはUL規格品(アメリカの規格)やCE規格品(EU圏の規格)などを製品化しています。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/el_control/E3100000000/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/284/
https://www.kimden.co.jp/gijyutu/h134_138.pdf
https://jp.misumi-ec.com/vona2/el_control/E3100000000/