サーキットプロテクタ

サーキットプロテクタとは

サーキットプロテクタ

サーキットプロテクタとは、計装用の電源遮断器のことです。サーキット(circuit)とは、電気回路を指します。従って、サーキットプロテクタを直訳すると『電気回路保護装置』となり、その用途で使用されます。

低容量である代わりに、一般的な低圧用ブレーカよりも遮断速度が速いのが特徴です。その特徴より、制御回路や計装回路の保護用途で使用されることがほとんどです。一次側に設置される低圧用ブレーカーより先に動作し、上位回路を保護します。

サーキットプロテクタの使用用途

サーキットプロテクタは、計装回路や制御回路に使用されます。差圧伝送器や電磁流量計など、産業用途の測定機器を計装品と呼び、計装品の給電や信号受送信用の回路を計装回路と呼びます。計装回路は産業装置の中でも重要度が高い割に、電力消費が少ないのが特徴です。

サーキットプロテクタを用いることで、計装回路異常時に影響を最低限に止めつつ、上位回路を保護することが出来ます。制御回路は産業機器の動力や熱源を制御する電気回路です。

産業用の大型モーターは、電磁接触器などの駆動装置で運転・停止を制御されます。大型モーターは特大の電力を消費しますが、駆動装置の制御に使う電力消費は少ない傾向にあります。

ただし、制御回路に異常があると産業機器が制御不能に陥るため、制御回路の重要度は高いです。サーキットプロテクタを用いることで、制御回路異常時の影響を最低限に止めます。

サーキットプロテクタの原理

一般に普及しているサーキットプロテクタは、トリップコイル、接点部品、ケーシング、ハンドルなどのパーツに分かれます。トリップコイルは過電流時に電磁コイルの磁力で接点を開放して回路を遮断する部品です。バイメタルよりも即応性があるため、サーキットプロテクタの遮断機構に採用されます。

接点部分は実際に回路に電気を流す金属部品で、接点部分が開放することで回路を遮断します。材料としてはや銀の合金が使用されます。ケーシングはサーキットプロテクタの外枠で、絶縁性を有する樹脂が使用されます。駆動用ばねや取付金具から接点を絶縁する役割を持っています。

ハンドルは人が操作できるようにするインターフェイス部品です。ハンドルとばねによって接点を入切して導通遮断を制御します。サーキットプロテクタは、ほとんどの場合トリップフリー機能が備わっています。

トリップフリー機能とは、ハンドルを入状態で固定していても過電流トリップが優先されて接点を開放させる機能です。サーキットプロテクタの主要機能の一つで、回路遮断の信頼性と安全性を向上させています。

サーキットプロテクタの選び方

サーキットプロテクタは計装、制御回路に使用します。3相動力モーターの遮断器としてはあまり使用しません。

始めに、回路の相数を確認します。計装・制御回路に使用する場合は単相の場合がほとんどで、1相または2相のサーキットプロテクタを選定します。

1相のサーキットプロテクタを使用すると省スペースとなって経済的な反面、回路を完全に遮断できません。従って、対地間電圧が0Vの相を共通相(コモン線)として使用します。2相とも対地間電圧が0Vでなければ、必ず2相以上のサーキットプロテクタを選定してください。

3相のサーキットプロテクタは、電圧指示計などの3相電圧を指示する回路などで使用します。稀に、小型3相モーター用遮断器としても使用されます。

相数が決まったら、二次側に繋げる機器の定格電流を確認します。2台以上つなげる場合は合計値を定格電流とし、定格電流以上の容量のサーキットプロテクタを選定します。

定格電流以下のサーキットプロテクタを選定した場合、通常使用時にトリップする危険性が高いです。制御・計装回路は重要度が高い場合が多く、頻繁にトリップすると非経済的なため余裕を見て容量を選定してください。

サーキットプロテクタのその他情報

1. サーキットプロテクタのメーカー

産業機器のサーキットプロテクタとしては、国内では三菱電機製をよく見かけます。また、(株)日幸電機製作所は、配線用遮断器であるFMサーキットブレーカの専門メーカーです。

現在では、業界唯一の完全電磁式ブレーカに関して、そのシリーズ化に成功している他、関連パーツの漏電遮断器、電気機器保護用プロテクタ、電流制限器、各種の電源デバイス設計と製作、異色なところでは、生ごみ処理機なども設計製作や生産を行っている技術メーカーです。

タイコエレクトロニクスジャパンもサーキットプロテクタを製作しており、販売は朝日技研工業が行っています。イートン・エレクトリック・ジャパン(株)もサーキットプロテクタを販売しています。

完全な外資系企業で、発祥地は1899年に電気制御技術が生まれたドイツです。創業以来100年以上の経験を積んできた旧企業名ムーラーが、2008年に米国イートンGrの一員となり、イートン・エレクトリック・ジャパンは1974年、日本オフィスを設立し、その後45年以上に渡って日本でカスタマー支援を行っている会社になります。

2. サーキットプロテクタの価格

サーキットプロテクタは、ネット通販モノタロウで安いものだと1,000円程度で販売されています。メーカーは、三菱電機や富士電機など、国内大手電機メーカーのサーキットプロテクターが多くあり、特殊品でなければ手軽に入手可能な部品です。

参考文献
https://www.nidec-copal-electronics.com/j/featuring/circuit-protector/prologue/
http://nippon-thermo.co.jp/circuitprotector/index.html
https://www.nidec-copal-electronics.com/j/featuring/circuit-protector/trip-method/thermal/

サーマルリレー

サーマルリレーとは

サーマルリレー

サーマルリレーとは、ある電気回路へ設定値を超えた電流が流れた際に、接点出力する部品です。主にモーターや配線への過負荷を防ぐために用います。

サーマルリレーを回路に組み込むことで、回路の焼損などのトラブルを抑止できます。

サーマルリレーの使用用途

サーマルリレーはほとんどの場合、モーター保護のために使用されます。モーターに定格以上のトルクがかかると、定格を超える電流が流れます。この現象を過電流と呼びます。

モーターが長時間過電流状態となると、内部巻線が発熱します。これにより、内部のニスが溶けたり、巻線が焼き切れたりします。これがモーターの焼損です。サーマルリレーは、定格以上の電流が流れると、接点出力により電源を遮断させてモーターを保護します。

サーマルリレーの原理

サーマルリレー内部の回路導体にはバイメタルが採用される場合がほとんどです。

バイメタルは、2種類の熱膨張係数が違う金属を組み合わせた材料です。電流により発熱すると、熱膨張係数の違いによって偏って変形します。

サーマルリレー内部のバイメタルはこの偏りによって接点を駆動させ、接点出力します。バイメタルの太さなどにより、異なる電流設定値のサーマルリレーが販売されています。

モーターは始動時に、定格の倍以上の電流が発生します。バイメタルは発熱変形するため、温まるまで遅延時間があります。この遅延時間により、モーターの始動大電流には反応しません。

サーマルリレーの出力接点はばねで固定され、一度動作するとリセットボタンを押すまで出力し続ける場合がほとんどです。これにより、過負荷機器の再始動を防ぎます。

サーマルリレーの選び方

サーマルリレーは、保護するモーターの定格電流に合わせて選定します。モーターの保護要素には、瞬時要素と限時要素があります。

瞬時要素はモーター自体の異常時に、上位回路を保護するためにモーター電源を瞬時に遮断する保護要素です。高圧モーターに対してはパワーヒューズやモーターリレーを用い、低圧モーターでは主にショックリレーブレーカを用います。

限時要素はモーターの過負荷を検知し、モーター保護のために電源を遮断する保護要素です。高圧モーターに対しては過電流保護継電器などを用い、低圧モーターにはサーマルリレーを用います。

上記より、低圧モーターに対しては、ブレーカー、駆動装置、サーマルリレーを合わせて選定します。ブレーカーは始動電流でのトリップを避けるため、モータ定格電流の2倍以上を選定します。駆動装置とサーマルリレーはモーター定格電流に合わせてメーカーカタログを参照しつつ選定します。

サーマルリレーの劣化要因

メーカーごとに異なりますが、サーマルリレーの交換推奨期間は約10年といわれています。ただし、サーマルリレーを定期交換するとコストが余分にかかるため、重要負荷のサーマルリレーについてのみ定期交換する場合がほとんどです。

サーマルリレーは劣化しづらいバイメタルや樹脂で構成されるため、自然劣化はほとんどしません。強制劣化要因としては、以下に示す4つが挙げられます。

1. 電気的要因

駆動電圧や周波数、突入電流の大きさやその頻度に依存して絶縁劣化が生じます。これによりサーマルリレーが故障します。

2. 機械的要因

ネジの緩みや、衝撃・振動などの物理的要因が加わることにより金属疲労などの劣化が生じます。

3. 熱的要因

過電圧・過電流・自己発熱などによる熱の影響でサーマルリレーに反りや変形、溶融断線が生じることで故障します。

4. 環境要因

高温高湿、腐食性ガスやオイルミストなどによって金属腐食が生じます。また、粉塵や異物がサーマルリレーに噛み込み、接触不良が生じることもあります。劣化の要因を把握し、これらを回避することで製品寿命をユーザーの手により長くすることも可能です。

サーマルリレーのその他情報

1. サーマルリレーの配線

サーマルリレーは電磁開閉器の一部として使用されることが多くあります。その場合主回路一次側は市販品では給電用の銅バーで接続される場合がほとんどです。二次側の配線についてはサーマルリレー定格電流以上の許容電流を持つように設計します。

配線の許容電流は配線種類によって違いがありますが、種類ごとに内線規程によって定められています。国内で販売されている配線は内線規程を遵守しています。

2. サーマルリレーの設定

サーマルリレーはバイメタル式と電子式の2種類に分類されます。

  • バイメタル式

    バイメタル式は、バイメタルの熱膨張によりリレーを動作させる仕組みとなります。バイメタル方式の場合、設定用つまみを回転させることで±20%程の電流値設定が可能です。

    それ以上の設定変更は構造上できないため、リレーを取り換える必要があります。保護する装置がモーターである場合は、メーカーごとにモーター容量に見合ったサーマルリレーが販売しているためカタログを確認して選定します。

  • 電子式

    電子式は保護する駆動装置がインバータ等であった場合に使用されます。回路に流れる電流値を電子回路で読み取り、負荷特性曲線を外れた際に動作します。市販されているインバータでは、インバータ保護機能として本機能が常備されている場合がほとんどです。

    モーターコントロールセンターなどでも電子式のサーマルリレーが用いられます。電子式サーマルリレーの設定方法はメーカーにより異なりますが、下限電流値はバイメタル式よりも幅広く設定可能です。取扱説明書を確認して設定します。通常は定格電流値を設定することで自動的に設定されます。

3. サーマルリレーの接点

サーマルリレーの接点は、モニター用の通常時開接点(a接点)と回路遮断用の通常時閉接点(b接点)があります。

  • バイメタル式の接点

    バイメタル式の場合は購入段階でどちらをいくつ使うか選ぶ必要があります。接点に流れる定格電流値はリレーにより決まっており、通常は2A程度です。主回路に使用すると溶着する危険性が高いため、制御回路用として使用します。

  • 電子式の接点

    電子式のサーマルリレーは多くの場合、設定によりどちらの接点をいくつ使うかを選べます。ただし、電子式の場合はリレー接点ではなく、トランジスタ接点の可能性があります。トランジスタ接点では交流制御電源を使用すると電子部品が故障します。

4. サーマルリレーの復帰

過負荷状態が続きサーマルリレーが動作したとき、その原因を取り除いた後にサーマルリレーの出力接点を解除する必要があります。この手順を「復帰」や「リセット」と呼びます。

復帰手順にも2種類あり、手動復帰型と自動復帰型に分類されます。手動復帰型は単純で、過負荷原因を取り除いた後にリセットボタンを押すだけです。リセットボタンを押すことで出力接点が解除されます。

自動復帰はリセットボタンを押す必要はなく、サーマルリレー自身が自動でリセットをかけます。サーマルリレーに人が近付きづらいような特殊な用途で使用されます。

参考文献
https://jeea.or.jp/course/contents/08203/
三相誘導電動機の保護システム https://jeea.or.jp/course/contents/08203/
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/fujid-sougou/book/fujid-sougou-P0141.pdf
https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/techsheet/lvsw/bqn-s8-9497-03/BQN-S8-9497-03.pdf

垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボットとは

垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボットは、人の手の様に動作することができる産業用ロボットの一種です。

駆動するための軸が少ないロボットに比べて自由度が高く、人の手で行っていた作業や自由度の低いロボットで時間をかけて行っていた作業を効率良く進めることができます。垂直多関節ロボットは動作範囲が広いため、精密な作業を繰り返し行うことが得意です。その特徴を活かせる生産現場に導入することで、業務効率化が期待できます。

垂直多関節ロボットの使用用途

垂直多関節ロボットは、自動車や家電製品、食品など使用される分野は幅広いです。生産ラインにおいて、以下の工程で使用されます。

1. 溶接

自動車のボディなどを部材の金属を溶かして接合させる作業です。ロボットが行うことで、正確でばらつきの少ない溶接が可能になり、品質向上が期待できます。

2. 搬送

製品や部品を等間隔で高速に並べたり、高重量の荷物を移動させたりする作業です。

3. 組立

つかんだ部品を別の部品に組付けたり、ねじ締めなどを行う作業です。垂直多関節ロボットは人の手で行う作業も対応できるため、熟練の職人技のような作業を正確に再現することができます。

4. 塗装

垂直多関節ロボットの手先に取り付けたスプレーガンで、自動車のボディなどに色を塗る作業です。

5. 検査

検査用のカメラやセンサの計測範囲内に部品を近づけて、外観や品質の良し悪し (OK/NGなど) を判定させる作業です。

垂直多関節ロボットの原理

垂直多関節ロボットは、マニピュレータとコントローラ、ティーチングペンダントで構成されています。

1. マニピュレータ

マニピュレータは、ロボットアーム本体の部分です。関節に取り付けられたサーボモーターによって、様々な動作を行います。マニピュレータ先端には、垂直多関節ロボットが作業を行うための次のような道具を装着します。

2. コントローラ

コントローラはマニピュレータを制御するための装置で、次のような機能があります。

  • PLCなどの上位装置からの指令に応じてロボットの次の動作を決定する
  • ロボットが精密な動きをするためにモーターの動作を演算、指令する
  • 動作上の異常を検知して停止する

近年の製品ではAIが搭載されているものも多く出回っています。ティーチングしなくても、次はどのように動けばよいかロボット自身が判断して動作する製品もあります。

3. ティーチングペンダント

ティーチングペンダントとは、垂直多関節ロボットを人間が操作するための装置です。キーボードやタッチパネルを使ってロボットに動作を記憶させたり (ティーチング)、ロボットに異常が発生したときにアラーム内容を確認したりする際に使用します。

垂直多関節ロボットのその他情報

1. 垂直多関節ロボットと水平多関節ロボットの違い

垂直多関節ロボットと水平多関節ロボットの違いは「できる動作の複雑さ」にあります。

垂直多関節ロボット
垂直多関節ロボットは、一般的に6つの軸を持ち、それぞれの軸を回転させることで、3次元空間上を自由に移動できるような動作が可能です。つまり、X・Y・Zといったような水平・垂直動作に加えて、Rx・Ry・Rzといった回転動作も行うことができます。

水平多関節ロボット
水平多関節ロボットは、基本的に水平方向に動作する軸を3つ持ち、垂直方向に動作する軸を1つ持つような4軸構成で成り立っています。つまり、3つの軸を使って水平方向を自由に移動し (3次元方向で表せばX・Y) 、残りの1軸で垂直方向に移動します (3次元方向で表せばZ) 。そのような構造を持つため、水平多関節ロボットは、3次元空間での回転動作 (Rx・Ry・Rz) を行うことはできません。

2. 垂直多関節ロボットを導入するメリット

垂直多関節ロボットを導入し、今まで人が行っていた作業をロボットに置き換えられると次のようなメリットがあります。

工場の生産性が上がる
ロボットは精密な作業、または単調な繰り返し作業 (例えば製品のピックアンドプレース) が得意です。このような作業を垂直多関節ロボットに行わせると、働き手はより付加価値の高い仕事に集中できるようになります。これによって、工場の生産性を上げることが可能です。

ロボットを導入した工程の品質が上がる
ロボットは人間と違って同じ作業を繰り返ししたときにばらつきが少なく、品質向上が期待できます。垂直多関節ロボットを導入することで、繰り返し±0.1mm程度のばらつきで溶接したり、毎回正確な量で塗布したりすることが可能になります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/69/688/69_688_3293/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/61/581/61_581_259/_pdf
https://robogaku.jp/content/files/history/037_01.pdf

リードリレー

リードリレーとは

リードリレー (英: reed relay) とは、駆動コイルに電流を流すことによって、作動する電磁スイッチです。

1つ以上のリードスイッチの周囲に電磁コイルを組み合わせたもので、電磁力により開閉する小型のリレーで構成されています。コイルに発生する磁界によって、機械的に接点を作動させるので、半導体スイッチなどに比べて、作動していない時の電流の漏れが非常に少ないことが特徴です。

入力側と出力側で独立しており、極性がないため、取り付け時のミスの削減などに役立ちます。圧力に対して強く、絶縁性が高く、防塵性や外部のガスの影響を受けにくい長所もあります。

リードリレーの使用用途

リードリレーは、様々な電気機器に使用されます。現在のリレーの主流は半導体リレーですが、半導体リレーの使用に適していない用途で多く使用されます。

リードリレーの使用に適している環境は、以下の通りです。

  • 半導体リレーのオープン時に、微弱に流れる漏れ電流の影響が大きい電気機器
  • 半導体に対して汚染する物質がある環境で動作させる必要がある電気機器 
  • リレーに使用する回路が非常に高電圧の場合や、高圧の環境の場合 

なお、具体的な使用例は以下のとおりです。

  • 電気自動車の蓄電池、太陽光電池
    システム電圧が高電圧になり、DC1,500Vを越す電圧でも安定した動作が必要で、リードリレーが使われます。
  • 医療機器
    信頼性の高いスイッチが必要で、電気メスの制御、ベッドの位置検出回路、AEDの高電圧充電回路、手術器具の体内取り残し検出などの用途です。

リードリレーの原理

リードリレーは、リードスイッチとコイルで構成されます。リードスイッチは、不活性ガスが密閉されているガラス管の中に、2つのリードが隙間を空けて入っている構造です。リードスイッチの中のリードは、磁石の力を受ける磁性体で作られ、互いのリードが駆動時に接する接点は、高通電性の金属が取り付けられています。

リードスイッチの外側のコイルに電流が流れたときに発生する磁界により、リードスイッチ内の2つのリレーが接します。接点に電気が流れ、リレーとして機能します。リードリレーの駆動時は、コイルによって磁界が発生します。

そのため、周囲の電子部品に影響を及ぼす可能性があり、取り付け位置や使用条件に注意が必要です。また、リードリレーを使用する回路には、火花消去の回路を入れることや、一時的な高電流への保護回路、逆電流への保護回路を取り付けることなど、正しく使用する必要があります。

リードリレーの特徴

リードリレーは、他のリレーと比較して、多くの特徴があります。

  • 半導体スイッチと比べ、機械的なスイッチのため、接点が開時、リーク電流が極微少
  • 入力・出力とも極性の指定がなく、作業ミスが減少
  • 一般に高耐圧、高絶縁
  • 一般的な電磁リレーと比較すると、接点部が密閉構造で、塵埃・有機ガス類の影響が小
  • 小型・軽量・長寿命
  • 動作・復旧時間が約1/10で高速

リードリレーのその他情報

1. リードリレーの寿命

リレーには、電気的寿命と機械的寿命が存在します。

電気的寿命
コイルに定格電圧の負荷をかけることで、リードスイッチを開閉させる抵抗負荷試験での寿命です。電気的寿命は、負荷のボリューム、負荷のバラエティ、開閉の頻度、温度コンディションなどにより、リレーの寿命が違ってきます。

機械的寿命
負荷をかけない無負荷試験での寿命のことです。リレーは機構部品であり、開閉によって部品自体の疲労や消耗が生じます。こちらも、温度コンディションやコイル定格電圧以上の負荷を加えたケースなど、使用する環境によりリレーの寿命が違ってきます。

2. リードリレーの使用上の注意点

リードリレーを使用する上での重要な注意事項は、洗浄と磁気干渉です。

洗浄
リレーコイルのリード部分は、ガラス管で密閉されているため、洗浄によってリード部分の特性が劣化することはありません。ただし、製品を洗浄する際には必ず専用のクリーナーを用いて洗浄を行う必要があります。

磁気干渉
リレーコイルによって生じる磁界は、外部環境に対して影響を与えます。特に密着実装の場合は、リレー同士での磁気干渉によって正常に作動しない場合があります。そのため、磁気シールドされていないリレーは、リレー間の距離を最低15mm以上離して実装する必要があります。

さらに、トランスや永久磁石のような強力な磁界を発生する物体がある場所での使用は、誤作動の原因になるため、使用を控えるのが必要です。

参考文献
http://www.okita.co.jp/system/App/TechnicalInformation/file1s/000/000/002/original/tech_info.pdf
https://ac-blog.panasonic.co.jp/

フィールドバス

フィールドバスとは

フィールドバスとは、工場やプラントなどの現場で、センサーやアクチュエーターなどのフィールド機器と、PLCやDCSなどのコントローラーをデジタル通信で結ぶバスシステムのことです。

フィールドバスを使うことで、従来のアナログ信号やパラレル信号に比べて、配線を省略したり、データ量を増やしたり、ノイズに強くしたりできます。また、フィールド機器の自己診断や設定変更なども、遠隔から行うことが可能になります。

様々な種類があり、代表的なものとしてPROFIBUS、CANopen、AS-iなどが挙げられます。

フィールドバスの使用用途

フィールドバスはその多機能性と効率性から、製造業を中心に多岐にわたる産業で活用されています。コスト削減、効率化、そして最適化を実現するための重要なツールです。

1. 製造業

製造現場では、プロセスの制御と監視が重要な要素です。フィールドバスは、センサーやアクチュエーターなどのデバイスを統一された通信プラットフォームで連携させ、工程の自動化と効率化を可能にします。

2. プロセス制御

化学工場や製油所などのプロセス制御では、フィールドバスは温度、圧力、流量などのプロセス変数をリアルタイムでモニタリングし、最適な状態を保つために必要な調整を行います。

3. 自動化

建物やインフラストラクチャの自動化では、フィールドバスは照明、冷暖房、安全システムなどの多種多様なデバイスを1つのネットワークに統合します。これにより、オペレーターは中央からすべてのシステムを監視し、制御ができます。

4. 自動車製造

自動車製造業では、フィールドバスはプロダクションラインの各ステーションを結びつけ、アクチュエーターやセンサーからのデータを集約し、各ステーション間の精密なコーディネーションを可能にします。

フィールドバスの原理

フィールドバスの原理は、一言で言えば「デジタル通信を利用したデバイス間の情報共有」です。以下のような特性により、フィールドバスは製造業、プロセス制御など、さまざまな分野で活用されています。

1. マルチドロップ

フィールドバスは、工場やプラント内のさまざまなデバイスを1つのケーブルで接続する通信ネットワークです。これにより、各デバイスは個別の接続ケーブルを必要とせず、一つのフィールドバスケーブル上でデータを送受信できます。これはデジタルのマルチドロップ技術とも呼ばれ、複数のデバイスが同一の通信ラインの共有を可能にします。

2. 通信プロトコル

フィールドバスは通信プロトコルを使用します。通信プロトコルは、データの送受信方法を規定したルールのことで、フィールドバスではこのルールに従ってデバイス間の情報交換が行われます。これにより、どのデバイスも他のデバイスと互換性を保つことができ、情報の正確な伝達が保証されます。

 3. リアルタイム性

フィールドバスのもう1つの重要な原理は、リアルタイム性です。工場やプラントの運用では、迅速かつ正確な情報の伝達が求められます。フィールドバスはデータをリアルタイムで送受信して、これを実現します。

例えば、センサーからのデータを即座に制御システムに送信し、必要に応じてアクチュエーターを動かすなど、システムの迅速な反応を可能にします。

フィールドバスのその他情報

フィールドバスと産業用イーサネットの違い

工場のネットワークは、情報系ネットワーク、コントローラー間ネットワーク、フィールドネットワークに分類されます。コントローラー間ネットワークでは産業用イーサネットが、フィールドネットワークではフィールドバスが用いられています。

2017年に産業用イーサネット設置数が、フィールドバス設置数を逆転しました。ドイツを起点に提唱されたインダストリー4.0による、工場全体のIT化が実現され始めています。

参考文献
https://www.yokogawa.co.jp/pdf/provide/J/GW/TI/0000003445/0/TI38K02A01-01.pdf
http://www.jmacs-j.co.jp/documents/tech/fa.pdf
https://www.mnc.co.jp/fieldbus/comparison_chart.htm
http://www.jmacs-j.co.jp/documents/tech/fa.pdf
https://www.automation-news.jp/2019/05/41385/

https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1603/23/news003.html
https://products.sint.co.jp/aisia-ad/blog/deep-learning-vol.10
https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/5543/Default.aspx

EMIフィルタ

EMIフィルタとは

emiフィルタ

EMIフィルタとは、電子機器などから発生する雑音 (ノイズ) を遮断して、その他の電子機器に悪影響を与えない様に保護するためのフィルタです。

基板などの配線に接続され、配線を通じて伝えられる信号に電磁的なノイズがある場合に、EMIフィルタによってノイズを除去します。ノイズを除去するためには、EMIフィルタ単体でも使用できますが、シールドやコモンチョークコイルサージアブソーバなどと同時に利用することで、正確な信号の伝達を行うことができます。

なお、EMIとは「Eloctro Magnetic Interference」の略で、日本語では エミッション・電磁妨害放射規制のことです。

EMIフィルタの使用用途

EMIフィルタは、主に信号を受信する機器や送信する機器の電気回路全般で使用されます。生産工場における計測器やレーダ内の測定部や受信部や、基地局や人工衛星の発信部や、基地局や人工衛星などから発信される信号のノイズを除去するのに有用です。

ノイズにはさまざまな種類があるので、EMIフィルタがそのノイズに対応しているか注意が必要です。また、EMIフィルタでも製品ごとにノイズ除去の精度や方法が異なるので、適切に選定する必要があります。

EMIフィルタの原理

EMIフィルタはさまざまな電子部品によってノイズを除去しますが、EMフィルタで使われる代表的な電子部品は、コンデンサとインダクタです。

1. コンデンサ

コンデンサは回路の負荷に対して並列につなぐことで、ローパスフィルタとして機能します。コンデンサのインピーダンスの特性は、高周波ほど小さくなることです。

つまり、周波数が高いとコンデンサに電流が流れやすくなるため負荷には電流が流れにくくなります。またコンデンサの静電容量によって、除去する周波数を決定することができます。なお使用する回路のインピーダンスが高いほど、コンデンサのフィルタとしての機能を向上させることが可能です。

2. インダクタ

インダクタは回路中の負荷に対して、直列につなぐことで、ローパスフィルタとして機能します。原理はコンデンサの特性とは逆に、インダクタのインピーダンスは、周波数が高くなると大きくなるという特性を利用したものです。周波数が高くなるほど、この回路はインダクタのインピーダンスによって、電流が流れにくくなります。

EMIフィルタのその他情報

1. EMIフィルタの働き

フィルタは電波の伝導経路中に配置すると、回路の動作に必要な信号とノイズを選定し、ノイズのみを除去する働きを果たします。信号とノイズを選定する上では、両者を分離するための基準が必要です。

EMIフィルタではノイズを区分けするために、周波数分布の偏りを利用しています。対象となる電波雑音に対して、低周波のものを信号とし、高周波の電波は雑音として扱い、低周波の電波を通すため、ローパスフィルタとして機能します。

周波数分布で信号とノイズを分離するフィルタは、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタの4つの種類です。EMIフィルタでは、対象のノイズ周波数を先に絞り込むことが難しい場合が多いため、ローパスフィルタが多く使用されます。

ノイズ分離には周波数分布以外にも、コモンモードチョークコイルでは伝搬モードや電圧の違い、サージアブソーバでは電圧の違いを利用してノイズを分離します。

2. EMIとEMS、EMCとの関係

EMIと類似した用語に、EMSやEMCがあります。EMIはここまで説明したとおり、機器から放射されるノイズを抑えるものです。

EMSは他の機器から発せられるノイズに耐える「Electoro Magnetic Susceptibility イミュニティ・電磁感受性」を指しており、EMIとEMSの両方を兼ね揃えた機器をEMC対応品「Electro Magnetic Compatibility 電磁環境両立性」といいます。

参考文献
https://www.murata.com/ja-jp/products/emc/emifil/knowhow/basic/chapter06-p2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejias/124/9/124_9_893/_pdf

ネットワークスキャナ

ネットワークスキャナとは

ネットワークスキャナとは、コンピューターネットワークに接続できるスキャナの1種です。

スキャナ本体に直接接続するのではなく、ネットワーク経由でコンピュータに接続します。これにより、コンピュータやネットワーク上の他のデバイスから簡単にアクセスして操作可能です。

ネットワークスキャナは、紙文書をデジタルデータに変換するために使用します。請求書、領収書、契約書など、日常業務で使用される紙文書を電子化するのに最適な方法です。

これにより、文書を電子メールで送信したり、ファイル共有サービスに保存したり、他のデバイスで表示したりすることが可能となります。

ネットワークスキャナの使用用途

ネットワークスキャナは、紙文書をデジタルデータに変換するために使用可能です。以下に、その主な使用事例をいくつかご紹介します。

1. 事務処理の自動化

ネットワークスキャナは、書類のデジタル化を自動化して、事務作業を劇的に効率化します。これにより、データエントリの時間を削減し、人間のエラーを最小限に抑えることができます。

2. 遠隔地との情報共有

ネットワークスキャナを使用すれば、文書や画像をデジタル化してすぐにネットワーク上にアップロードができます。これにより、遠隔地のチームメンバーやパートナーとの情報共有が容易になります。

3. 文書のバックアップとアーカイブ

ネットワークスキャナは、重要な文書のバックアップとアーカイブを簡単に行うことができます。これにより、データロスのリスクを軽減し、必要な情報を瞬時に取得が可能になります。

4. 契約書や法的文書の管理

法的な文書や契約書はしばしば紙の形で保存されますが、これらをデジタル化して、検索とアクセスが容易になります。また、一部の高度なネットワークスキャナでは、スキャンしたデータに対するアクセス権を制限する機能もあります。

5. エコフレンドリーなオフィス

データをデジタル化して、紙ベースの文書の作成と保管に関連する環境への影響を大幅に減らすことができます。

これらはネットワークスキャナの一部の使用事例にすぎません。適切に選択と導入を行えば、これらのデバイスはあらゆる業務環境で生産性と効率性を向上させることができます。

ネットワークスキャナの原理

ネットワークスキャナは、その名前が示す通り、ネットワークに接続されたスキャナですが、その仕組みを理解するにはスキャニングとネットワーキングの2つの主要な要素を考慮する必要があります。

1. スキャニング

スキャナの基本的な機能は、紙の文書や画像をデジタルデータへの変換です。このプロセスは通常、CCD (電荷結合デバイス) センサーを使用して、物理的な文書をライン毎に読み取り、その情報をデジタル信号に変換します。このデジタル信号は、後で画像として再構築され、コンピュータで表示や編集が可能となります。

2. ネットワーキング

ネットワークスキャナのユニークな要素は、スキャニングされたデータを直接ネットワークに送信できる能力です。これは、Ethernet接続やWi-Fiを通じて、スキャナがネットワークに直接接続されている場合に可能となります。

スキャンされたデータは、指定されたネットワークロケーション (例えば、サーバや特定のPC) に直接送信されます。また、電子メールやクラウドストレージへの直接アップロードも可能です。

 

ネットワークスキャナは、この2つの機能を組み合わせて、物理的な文書をデジタル化し、そのデータを瞬時にネットワーク全体で共有する能力を提供します。これにより、情報のアクセス性と共有性が大幅に向上し、ビジネスプロセス全体の効率が向上します。

ネットワークスキャナのその他情報

ネットワークスキャナの機能

ネットワークスキャナの主な機能は以下のとおりです。

  • デジタル化
    最も基本的な機能は、物理的な文書や画像をデジタルフォーマットへの変換です。これにより、紙ベースの情報を電子的に保存、編集、共有が可能になります。
  • ネットワーク接続
    ネットワークスキャナは、Wi-FiまたはEthernet経由でネットワークに接続します。これにより、スキャンされたデータをネットワーク上の任意の場所に直接送信できます。
  • オートフィードと両面スキャン
    多くのネットワークスキャナには、オートフィーダーが搭載されており、一度に複数のページを自動的にスキャンできます。また、両面スキャニング機能を持つモデルもあり、これにより両面印刷された文書も容易にデジタル化できます。
  • OCR (光学文字認識) 
    高度なネットワークスキャナは、OCR技術を使用してスキャンされた文書のテキストを認識し、編集可能なテキストファイルに変換できます。これにより、検索可能なPDFを作成や、データ入力の時間を大幅に節約ができます。
  • セキュリティ
    ネットワークスキャナは、データを安全に送信するためのセキュリティ機能を備えています。これには、データの暗号化、ユーザーアクセスの制限、安全なネットワーク通信などが含まれます。
  • クラウド連携
    ネットワークスキャナには、クラウドストレージサービスとの連携機能を持っているものもあります。これにより、スキャンされたデータを直接Google Drive、Dropbox、OneDriveなどのクラウドサービスにアップロードが可能となります。これは、遠隔地のチームメンバーとの情報共有を容易にするだけでなく、データのバックアップとアクセシビリティを改善します。
  • メール送信
    スキャンした文書を直接メールとして送信する機能もあります。これにより、情報の共有がより迅速で簡単になります。
  • QRコードの認識
    一部のネットワークスキャナは、スキャンした文書からQRコードを読み取ることができます。これは、文書の自動分類やデータ入力を簡略化するのに役立ちます。

これらは、ネットワークスキャナが提供する一部の機能にすぎません。利用シナリオやビジネスの要件に応じて、さまざまな追加機能やカスタマイズが可能なモデルを選択できます。

高品質のネットワークスキャナは、情報のアクセシビリティと共有性を大幅に向上させ、ビジネスプロセス全体の効率化に寄与します。

参考文献
https://www.konicaminolta.jp/about/research/technology_report/2003/pdf/20.pdf
https://cweb.canon.jp/imageformula/sp/400/in02.html
https://www.konicaminolta.jp/business/download/copiers/bizhub_c250/pdf/nw_scanner_jp_45_c250.pdf
https://cweb.canon.jp/imageformula/sp/400/in04.html

リモートIO

リモートIOとは

リモートI/Oとは、工場などの計測装置や入力装置、制御機器などを、遠隔で操作を行うための装置です。

ネットワークを通じて使用するため、煩雑な配線の設定が不要で、長距離のデータ輸送によるノイズの削減に効果があります。人件費の削減や生産の効率性の向上のために、IoTなどを利用した工場の自動化が進んでいる現在では、さまざまな工場で多く使用されている製品になります。

リモートIOの使用用途

リモートI/Oは、さまざまなファクトリーオートメーションを導入している工場の現場で使用されています。工場内で測定や制御が必要な温度や圧力、湿度、電流、電圧などの測定機器がネットワーク通信に対応している場合、制御室などでまとめて管理するのに有用です。

さまざまな計測機器のネットワーク回線に対応している製品も多く発売されており、使用している計測機器のネットワークに応じて、適切に選定する必要があります。

リモートIOの原理

リモートIOは分散型IOとも呼ばれており、工場においてPCやPLCなどのマスタ機器に対して通信で入力信号を受け渡しています。

1. PLC

リモートIOが信号の受け渡しをしているPLCとは「Programmable Logic Controller」の略で、機器や設備の制御に使用するコントローラです。製造業の工場において、ベルトコンベアやセンサーなど、さまざまな機器の稼働の制御を行っています。

2. ネットワーク

リモートIOが使用するネットワークには、PLCを発売しているメーカーが提供しているさまざまな産業用ネットワークに対応している製品が多く発売されています。代表的な産業用ネットワークは、EtherNet/IPやEtherCAT、PROFINET、CC-Link、HLSなどです。

処理装置では、多くの通信を処理しており、CPUを使用して高速で処理できる製品から、CPUなどを使用せずに安価に提供している製品まであります。

リモートIOの構成

リモートI/Oは、ネットワーク通信部、処理装置、1本のケーブルで接続された接続部で構成されています。接続部では、さまざまな接続用の端子が付属されているものが多く、センサーやスイッチ、LEDなどの制御配線を繋げることが可能です。

製品によっては、60個以上の接続部の対応しているものもあります。また、リモートI/Oを並列で接続することも可能で、必要な接続数が1つのリモートI/Oでは不足なときや、新しく配線が必要な電子部品を導入するときは、追加でリモートI/Oを並列で付け加えることで、比較的容易に拡張することができます。ネットワーク通信部では、ネットワークを通じて、制御盤のPLCやDCS、またはその他のリモートI/Oと接続します。

リモートIOのその他情報

1. リモートIO無線

リモートIO無線に関する情報として、リモート、つまり、遠隔操作による機器のIOと呼ばれる入出力 (Input/Output) 通信方法には、機器同士を直接通信線で結線するワイヤード方式の他に、送受信機を機器に内蔵させて、無線で通信するワイヤレス方式があります。ここで、リモートIO無線とは、無線を使ったワイヤレス方式による機器のリモート遠隔操作のことを言います。

ワイヤレス無線による通信方式にもいくつかの種類があり、よく使われている通信方式がWiFiになり、特に最近の家電には多く採用されています。ただし、実際にリモートIOを無線化して使用する場合、工場やビルや特殊な建物等の産業用が多いです。

その高信頼性の要求に対処するため、メーカごとに独自で1G近傍の周波数帯域を使用するケースが多く見受けられます。なお、その適材適所による通信方式の信頼性は、各社のノウハウ次第です。

2. リモートIOイーサネット

リモートIOイーサネットは、リモートIOと言われる電気電子機器の遠隔操作による入出力を行う際に、イーサネットと呼ばれる通信規格を採用したものです。イーサネットとは、情報機器間の通信時に必要になる機能を整理したOSIモデルにて、その物理層からデータリンク層に対する通信プロトコル規格となります。

データリンク層のプロトコルのため、同じネットワークの中にあるデータを確実に転送することが主な役目です。具体的には、イーサネットの役目は同じネットワークの中のイーサネットのインタフェースから他のイーサネットのインタフェースにデータを転送することです。

そして、イーサネットのインタフェースからデータを送り出すには、「0」「1」の各ビットを電気信号から物理信号に変換し、イーサネットのインタフェースを使って受信した物理的な信号を電気的な「0」「1」信号に戻したりします。イーサネット規格では、物理的なプロトコルとして、その物理的な信号変換やケーブル媒体の利用も規格化しています。

3. HLS

HLSとは、デジタルIOを高速に一括で制御できる「1マスタ対複数スレーブ」のネットワークです。1つのマスタICに対し、最大63個のスレーブICが接続可能であり、最大2016点のIOが制御できます。

HLSのマスタICには各スレーブICに対応したIO制御用レジスタと通信制御レジスタ用のメモリを内蔵しています。

参考文献
https://www8.m-system.co.jp/pub/catalog_j/data_pdf/F/500496.pdf
https://www.m-system.co.jp/products/remote.html
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007161039/
https://www.melsc.co.jp/business/wireless/wireless_unit/wireless_unit_index.html
https://www.n-study.com/ethernet/summary-of-ethernet/

DCサーボモータ

DCサーボモータとはDCサーボモーター

DCサーボモータは、直流電流で動作するサーボモーターです。

サーボモーターは、制御信号に対して正確な動作の再現をするモータのことで、精密機器などに使用されます。DCサーボモータは、モータの回転数や位置を検出して制御するため、エンコーダレゾルバなどの速度・位置を検出するセンサーとモータが一体になっている製品が一般的です。

DCモータを回転させるためには、ブラシと呼ばれる部品でモータに供給する電流を回転軸に流す必要があるため、ブラシの摩耗による消耗があり、定期的なメンテナンスが必要になります。

DCサーボモータの使用用途

DCサーボモータの使用用途

図1. DCサーボモータの使用用途

DCサーボモータは、精密な制御が必要な産業用ロボットなどに多く利用されています。産業用ロボットのロボットコントローラから出される信号を、汎用のモータと比較して素早い応答で回転数やトルクを出力し、ロボットアームなどを精密に動作させるためのアクチュエータとして機能します。

その他にも、ラジコン自動車の舵角駆動、工作機械のXYZ軸駆動、精密機器の位置決め駆動などに利用されています。DCサーボモータの選定は、使用する機器が求める水準の出力・トルク容量や精度、応答速度などに応じて、適切に選定することが大切です。

DCサーボモータの原理

DCサーボモータの原理

図3. DCサーボモータの原理

DCサーボモータは、「モータ」「エンコーダ」「制御装置」で構成され、永久磁石と2つ以上に分かれた鉄心 (ロータ) と、それぞれの鉄心に巻かれているコイル、コイルに電流を受け渡す電極およびブラシで構成されています。

DCサーボモータの動作原理を、モータとその他の機能に分けて説明します。

1. モータ

モータは、コイルに流れる電流と、永久磁石からの磁界の2つから発生するローレンツ力によって、鉄心を回転させることにより、モータを回転させます。ここで、コイルに電流を流すときに、外部からの直流電流を、ブラシを通じて、鉄心に流し、コイルに伝達します。直接電流をコイルに流すため、ローレンツ力の制御が素早く行え、反応速度が速いことが特徴です。

2. その他の機能

DCサーボモータは外部のコントローラから送信される指令信号によって、指令される目標値になるようにモータを回転させます。モータに付属しているエンコーダからは、速度や位置情報が制御装置に送られ、制御装置はコントローラから送られる指令に対し、エンコーダからの位置・速度情報を元にフィードバック制御を行い、モータの回転速度や回転位置が目標値に近づくように制御します。

DCサーボモータの制御

DCサーボモータの制御

図3. DCサーボモータの制御

DCサーボモータは、以下の3つの制御が可能です。

1. 位置制御

DCサーボモータにはエンコーダという回転角や位置を検出するセンサが付いていて、回転速度・位置を検知して制御装置へとフィードバックします。そして指令位置に対して位置ズレを検出した場合は、ズレ量に対するゲインをかけて位置補正指令を出し、目的の位置まで移動させ、モータを停止させる精度の高い制御が可能となります。

2. 速度制御

DCモータの速度コントロールはモータに加える電圧を変化させるのが最も簡単で、プラモデルなどに使われる様な小さなDCモータを速度制御するためには、可変抵抗器 (ボリューム) をつないでモータに加える電圧をコントロールすることによって目的とする速度に調整することができます。

DCサーボモータでは可変抵抗器の代わりにサーボアンプに組込まれているIGBTFET等のパワー半導体で構成したHブリッジを介して、モータに与える電圧をコントロールします。

一方、ACモータの速度コントロールはモータに加える電圧だけでなく、駆動周波数を変える必要があるのですが、DCモータでは電圧を変化させるだけなので、速度制御用の小型モータにおいてはDCモータが広く使われています。

3. トルク制御

DCサーボモーターのトルク制御は電流とトルクが比例関係にあるため、 電流センサや電流シャント抵抗の電圧値から電流を検出し電流指令をフィードバックすることで、トルクを一定値に保つよう電流を制御します。

DCサーボモーターのその他情報

サーボモーターの種類

厳しい環境下でも繰り返し動作するために一般的なモーター以上に耐久性に優れた構造のサーボモーターですが、大きく分けてDCサーボモーターとACサーボモーターの2種類に大別できます。

1. DCサーボモータ
DCサーボモータは直流電源で駆動するサーボモーターで、DCモータの特徴としてACモータに比べて回転の制御が簡単で効率がよく、機械構造も簡単なため安価なことから多種多様な用途で使用されています。しかしDCサーボモータには「ブラシ」という機械式の摩耗部品があり、定期的な交換やメンテナンスが必要な点がデメリットです。

2. ACサーボモータ
ACサーボモータは交流電源で駆動するサーボモーターで、DCモータと比較すると制御が複雑ですが、制御技術の進歩とともに、ロボットの小型・軽量化が進むなど、その実用性の高さから、ほとんどの産業分野の機器類に利用されています。

ACモータの種類として永久磁石を使った同期型 (SM) モータと永久磁石を使わない誘導型 (IM) モータがありますが、現在は同期型モータが主に使用されています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/55/12/55_12_2215/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/65/3/65_3_464/_pdf
https://jp.aspina-group.com/ja/learning-zone/columns/what-is/004/

カーブトレーサー

カーブトレーサーとは

カーブトレーサーとは、半導体デバイスに電圧を印加したとき、その電圧と流れる電流との関係をディスプレイ上に表示する装置です。

電圧-電流特性のグラフ (カーブ) をトレースしてディスプレイ上に表示することから、カーブトレーサーと呼ばれています。半導体デバイスは印加した電圧と流れる電流との関係は非直線であり、抵抗器のように比例関係にあるわけではありません。

そのため、半導体や電子デバイスの電圧対電流特性の測定には、電圧を変化させて電流値を測定しその結果を用紙にプロットするなどの手順が必要です。一方で、カーブトレーサーを使用すれば、電圧-電流特性を直接ディスプレイ上に表示することができます。

カーブトレーサーの使用用途

カーブトレーサーは、半導体デバイスの開発時の特性測定や製造部門におけるデバイスの検査、半導体を使用する回路の動作検証などの場面で使用されています。主な測定対象はダイオード、バイポーラトランジスタ、FETなどの半導体デバイスです。

半導体では、測定対象に印加した電圧を徐々に変化させその際に流れる電流を計測します。それに対して、カーブトレーサーの表示部では、X軸方向が電圧値を、Y軸方向に電流値を表示することで、電圧に対する電流値の関係がグラフとして描かれます。

なお、高電圧を印加する場合や高電流を流す場合などでは、それぞれに応じたオプション電源が用意されていて、さまざまなデバイスに対応できるよう機材が準備されています。

カーブトレーサーの原理

1. ダイオードの測定

測定対象がダイオードであれば、アノードとカソード間にデバイス駆動用電源を接続し、印加する電圧の最大値Vmaxと最小値Vminを設定すると、電源はその間の電圧を自動的に50Hzから60Hzの周波数でスイープします。また、この時ダイオードに流れる電流値を測定します。

一方、CRTの水平掃引回路では半導体デバイス駆動用電源の電圧を入力信号とし、垂直掃引回路にはダイオードに流れる電流を入力信号とすることにより、印加電圧に対する電流特性 (V-I特性)  がCRT上に描かれます。

2. トランジスタの測定

バイポーラトランジスタ/FETの測定では、ステップジェネレータを用いた電流源/電圧源をベース/ゲート電極に接続します。デバイス駆動用電源はエミッタ/ソースとコレクタ/ドレイン間に接続して、印加する電圧の最大値Vmaxと最小値Vminを設定しておきます。

バイポーラトランジスタの場合
ベース電流をステッププジェネレータで段階的に可変し、その時のエミッタ-コレクタ間電圧とコレクター電流をCRT上に表示すると、トランジスタの静特性カーブが描かれます。

FETの場合
ゲート電圧をステップジェネレータで段階的に変化させると、ソース-ドレイン間の電圧とドレイン電流の関係を示すFETの静特性カーブが描かれます。

 

カーブトレーサーは、表示部にCRTを用いる前提で作られているものです。ところが、CRTがほとんど生産されなくなったことから、従来タイプのカーブトレーサーは姿を消してしまいました。

それに代わって、PCに電圧-電流特性のデータを取り込み、ディスプレイ上に特性カーブを描くものが製品化されています。

カーブトレーサーの構成

カーブトレーサーは、デバイス駆動用の電源、トランジスタのベース電流やFETのゲート電圧を制御するためのステップジェネレータ、CRTとその水平掃引回路、垂直掃引回路等から構成されています。

カーブトレーサーのその他情報

半導体パラメータアナライザ

カーブトレーサーは半導体の基本的な特性を知る上で非常に有効な測定器で、特にデバイスメーカでは研究開発から製品の検査に至るあらゆる工程で活用される基本測定器でした。半導体デバイスのユーザーの受け入れ検査でも使われることがあり、以前は日本メーカーも数社生産していましたが、現在は一部のメーカーを除いて撤退してしまいました。

一方、太陽光パネルの評価用として開発されたカーブトレーサーが新たに販売される様になりました。なお、カーブトレーサーに代わって使われているのが半導体パラメータアナライザです。

これは複数の電圧源や電流源を備え、コントローラ (PC) から電圧や電流を制御して、半導体の特性を測定するものです。