流量センサー

流量センサーとは

流量センサー

流量センサーとは、気体から液体まで流体の流量を測定する計測器です。

流量計として扱われる場合もあります。流量とは、1つの断面を単位時間に通過する流体の体積、または重量を表したものです。

流量センサーには、流体回路を流れる流体に異常がないか監視する目的のアナログ式の流量センサーもあれば、ガス供給量などを一定量に調整するためにフィードバック制御機構へつなげるデジタル式のものなど、さまざまなタイプがあります。

流量センサーの使用用途

流量センサーは以下の分野で使われています。

1. 油圧機器・製薬/化学薬品・食品分野

主に製造工程内で原料の投入量の管理に使用されています。これら分野で使われるのは容積式の流量センサーです。

2. 工業用ガス・燃料ガス・排ガスの測定

工場で使用される工業用のガスや燃料となるガスの使用量、排気ガスの管理に使われます。サーマルマスフローメータとも呼ばれる熱式質量流量計が主流です。

3. 飲料水・ソース類・可燃性/爆発性の流体

食品関係や危険性の高い流体では、流体に触れない非接触測定が求められ、そのために電磁式流量センサーが使われます。

4. 工業設備・水処理施設

工場や水処理施設において、流量管理のために流量センサーが用いられます。特に既存の経路に流量センサーを追加する際に用いられるのは、超音波式のセンサーです。

5. LNGプラント・自動車業界・化学業界・薬品業界

さまざまな製造現場で、流量センサーが使われています。多く使われているのはコリオリ式の流量センサーです。

6. 化学業界・薬品業界

天然ガスや水蒸気を扱う工場では、カルマン渦式の流量センサーが広く使われています。

流量センサーの原理

流量センサーは、測定する対象流体の性質や測定の目的に応じて、さまざまな計測形式が採用されています。ここでは空気や水など一般的な流体に適用可能な、差圧式の流量センサーの原理について説明します。

差圧式流量計では用いられる原理は、ベルヌーイの定理です。一定のサイズの流体の流路中に、意図的に流路を狭めると流体には圧力損失が生じることにより圧力差が生まれます。この圧力差をベルヌーイの法則に当てはめて、流速を算出します。

流路を狭める仕組みにどのような機構を使うかによって、オリフィス型やノズル型などさまざまな種類がありますが、その前後での流体の圧力差を測定原理としている点は全て同じです。

流量センサーの選び方

測定する流体の種類によって、適切な流量センサーは異なります。気体用か液体用かを間違えると誤った流量を認識してしまうのはもちろんのこと、有害な物質や可燃性の物質の流量測定に誤った流量センサーを選定してしまうと、大きな事故につながるリスクもあります。そのため、まずは測定したい物質の性質を精査することから始めることが重要です。

また、流量センサーは一般に広いレンジを一度に計測することはできません。あらかじめ想定される流量が決まっているのであれば、そのレンジに合わせた精度の高い流量センサーを選定すると良いです。

流量センサーのその他情報

1. クランプオン式流量センサーについて

クランプオンとは、計測したい流体が流れる配管の外側に計器を取り付けることです。クランプオン式流量センサーには、超音波式流量計や超音波式流量センサーがあります。

計測したい対象が超音波で測定できる流体などであれば、測定機器として使用することが可能です。超音波式流量計には、伝搬時間差式やドップラー方式を利用した周波数を計測する方式などがあります。超音波式流量計のメリットは、配管を取り外したり切断したりしなくても取り付けることが可能なので、設置した際のコストが抑えられることです。

また、施工後のメンテナンス性が大幅に向上すること、配管内の圧力損失がなくなることもメリットとして挙げられます。反対にデメリットは、配管の外側に取り付けるため、直管部の長さが必要であること、配管の口径なども関係してくること、計測する流体に固形物や気泡が多いと計測ができなくなることなどです。

2. エアー流量計について

エアー流量計には、クランプオン式流量計やねじ接続式流量計などがあります。ねじ接続式では直感部が不要になり、計測機器が小型で省スペースで使えます。

従来のエアー流量計は、測定する気体が圧縮性流体ならば、熱式質量流量計が使われてきました。熱式質量流量計にはいくつかの測定方法があり、キャピラリ式では、管内に抵抗値をもつフローエレメントを設置し、管外側にヒーターを巻き付けることでヒーター両側の温度センサが流量バランスを測定しています。

しかし、熱式質量流量計は汚れに弱く低圧環境が得意ではないため、オイルミストが多い設備には不向きです。現在の熱式質量流量計は、フローセンサ式が主流です。

この形式は半導体のフローセンサによって構成されており、測定範囲が広く汚れを気にせずに、低圧な環境でも利用できます。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/flowmeter/
https://www.hitech-flow.co.jp/product/usflow_list.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/instruments/products/flow_ultra/top.html
https://www.oval.co.jp/techinfo/keisoku/ultrasonic.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/flowmeter/type/ultrasonic.jsp
https://www.pisco.co.jp/product/detail/d/d01/
https://www.compoclub.com/products/knowledge/mf/netu_kiso1.html
http://www.ksplz.info/
https://www.aichitokei.co.jp/products/flowmeter/trx25_32-2/

ボールスプライン

ボールスプラインとは

ボールスプラインとは、直動ベアリングの1つであり、主に滑らかな直線運動を行いたい箇所に用いられる機械要素です。

ボールスプラインには、スプラインという直線移動の軸になるシャフトの長手方向に連続して掘られた溝があります。シャフトの上からスプラインナットと呼ばれる外筒部品によって挟むことで、軸方向のなめらかな動作と、回転動作を1軸で実現できます。

ボールスプラインには類似した機械要素がいくつかありますが、それらの中でも比較的大きな荷重を受けながら、滑らかな直線移動と軸回りの回転動作も伝えたい場合には最適な機械要素です。

ボールスプラインの使用用途

ボールスプラインは、さまざまな産業用機械において、回転動作と垂直動作が同時に必要な場面で用いられます。例えば、ロボットのアーム先端の動作、回転研磨装置のように、回転と被加工物への押しつけを同時に行う必要がある場面もボールスプラインの使用用途の1つです。

さらに、搬送装置など滑らかな長ストロークの1軸動作が必要な場面でも用いられます。

ボールスプラインの原理

ボールスプラインは、ボールの転動とスプラインによる嵌合によって回転トルクが伝達されます。まず転動はガイドとなるシャフト外部には複数のガイド溝と、スプラインナットと呼ばれる外筒部品の内側に、任意の曲率を持った楕円軌道の間で、複数の鋼球が転がる構造です。

鋼球には潤滑油が塗布されており、スプラインナットとスプラインシャフト間を非常に小さな摩擦力で転がります。一方で、シャフトが回転すると、鋼球はスプライン溝で嵌合しているため、シャフトとスプラインナットは回転方向にずれません。この2つの仕組みによって、スプライン軸に沿った直線運動と、回転運動が1軸で実現できます。

ボールスプラインの選び方

どのボールスプラインも、内部構造はほぼ同じです。しかし、対応できる荷重やトルクは、スプライン軸サイズなどによって異なります。そのため、使用する装置の設計にしたがって、適切なスプライン軸のサイズを選定することが重要です。

また、腐食性のガスや湿気のある空間での使用が予想される場合は、素材をステンレス製にしたり、高清浄度が求められるような場面では、ボールの潤滑油を専用の潤滑油に変更したりと、使用環境に即したオプションを検討することも欠かせません。

ボールスプラインのその他情報

1. ロータリーボールスプライン

ロータリーボールスプラインは、1つのアセンブリで直線的および、回転的な運動を行うことができる機構を有している機械要素です。一般的なボールスプラインにさらに独立して、滑らかな回転運動をするためのクロスローラー という機構が追加されているのが特徴です。

スプライン部と回転部が一体であることにより、従来の機構と比べて大幅に部品点数を削減でき、取付の累積誤差を減らすことができます。また、ボールスプラインの外筒に直接クロスローラーが配置されているので、軽量かつコンパクトに構成できるのが特徴です。従来機構よりも、軽量かつ取付性も改善します。

ロータリーボールスプラインは、スカラロボットと呼ばれる水平多関節型の産業用ロボットを含む組立機、ローダー、レーザーフライス加工などに使用されます。

2. ボールスプラインとリニアブッシュとの違い

リニアブッシュは転がり案内の直動機構であり、リニアシャフトと組み合わせて使用され、鋼球の転がりを利用して無限直線運動をします。外見からの一番の違いは、シャフトにスプライン溝があるものがボールスプライン、シャフトに溝がないものがリニアブッシュです。

リニアブッシュは、ボールがブッシュに対して直線状に配列されており、ボールと軸とが点接触で摺動します。これに対して、ボールスプラインは、ボールがスプライン軸の溝の上を転動するため、ボールと軸の接触面積が大きく、さらに回転方向へのずれることもないため、同時にトルクも伝達できます。

参考文献
https://www.nipponbearing.com/product/lineup/ballspline/ball_spline.html
http://www.thk-niigata.com/profile/techno.html
https://www.mekasys.jp/series/detail/id/NB_0071
https://jp.misumi-ec.com/special/linearbushing/about/

真空計

真空計とは

真空計

真空計とは、ある空間内の真空度を測定するためのセンサーです。

その目的によって、分圧真空計と全圧真空計のどちらかを選択します。また、計測手法も多数多様であり、その違いによって計測可能な真空度のレンジにも差があるのが特徴です。

真空計の用途例

真空空間には水分を含めた不純物が限りなく少なくなるため、高清浄度が必要な製造現場ではよく真空空間が活用されます。そのなかでも、真空到達度管理が必要なチャンバーや石英管などに接続された流体回路中に設置されるのが真空計です。

真空計の用途としては、半導体製造装置のプラズマエッチング空間や、冶金、有機合成などの実験設備に設置されることが多いです。また、イオンビーム装置や蒸着装置など、対象物表面への加工用途など表面清浄度が求められる場面でも使用されます。

真空計の原理

真空計の種類と測定原理は多岐にわたります。真空計はごく少量存在する気体分子の運動量をうまく測定することで、空間内の気体密度および真空度へと換算しています。真空計の中でも一般的に普及しているのが「ピラニ真空計」です。

ピラニ真空計は、電気抵抗型の真空計であり、電流を流した白金線へ気体が衝突する際に消失する熱エネルギーから電流を算出し、その値から圧力を逆算します。この微小圧力がそのまま真空度に相当するという仕組みです。

真空計の選び方

真空計には数多くの種類が存在するため、目的に合った真空計を適切に選択する必要があります。用途別のタイプ、計測方法によって特徴が異なるため、それぞれの特徴について十分な理解が重要です。

また、各種真空計にも種類が複数存在するため、計測したい目的の真空空間の真空度によって選定する必要があります。最終真空到達度を保証したい場合は、1つの真空計で十分ですが、真空ポンプによる排気速度などのふるまいを知りたい場合は、複数の真空度を設置しなければなりません。

真空計の種類

真空計には用途別や計測方法、測定範囲の観点からいくつかの種類に分類できます。

1. 用途別

分圧真空計
分圧真空計は、個別の気体のみの真空度を測定する場合に選択します。2種類以上の気体が混ざっている状態で、それぞれの気体が示す圧力が分圧です。

同じ圧力でも気体の種類によって性質が異なるため、真空の質を分析するために使用します。分圧真空計として一般的なのが、質量分析計です。

質量分析計は、イオン源、分析部、検出部の3つで構成されています。電場や磁場を使用することで、特定のイオンのみを観測することにより、各気体の圧力を知ることが可能です。

全圧真空計
全圧真空計は、空間内の真空度を単純に計測したい場合に選択します。測定方法により数多くの種類が存在するため、目的に合わせた選択が必要です。

2. 計測方法

計測方法としては主に3つに分類されます。それは、「圧力そのものを検知する方法」「気体の輸送現象を利用する方法」「気体中の電離現象を利用する方法」です。

圧力そのものを検知する方法
圧力そのものの検知を利用した真空計として、U字管真空計があります。U字真空計は、ガラス製のU字管の一方を真空に排気して封じた差圧計です。

圧力差によって生じる液柱の高さから、気体の圧力差を読み取ることができます。U字真空計は、気体の種類にされないのが特徴です。このため、圧力の絶対測定が可能となることから、他の真空計の校正基準として用いられています。

気体の輸送現象を利用する方法
気体の輸送現象を利用した真空計が熱伝導真空計です。気体の熱伝導率は圧力によって変化するという性質を利用した真空計です。

熱伝導真空計にも数多くの種類があり、「ピラニ真空計」「サーミスタ真空計」「熱電対真空計」などがあります。熱伝導真空計の注意点は、高真空になると熱伝導率よりも熱放射の影響が大きくなることです。そのため、熱伝導真空計は高真空の測定には利用できないというデメリットがあります。

気体中の電離現象を利用する方法
気体の電離現象を利用とした真空管としては、ペニング真空計 (冷陰極電離真空計) やイオンゲージ (熱陰極電離真空計) があります。ペニング真空計は、真空中での放電現象を利用して、圧力を測定できます。耐久性に優れていますが、気体の種類によって感度が大きく変わります。

ペニング真空計は、回路構成が簡単であるというのがメリットです。一方、デメリットは、ペニング放電は不安定になることがあるため、あまり精度の良い測定が難しいことです。さらに、表面の汚れが強いと 陰極からの電子放出量が少なくなり放電しなくなること、高真空の状態になると放電を開始させることが難しいことなどがあります。

3. 測定範囲

圧力は、低真空、中真空、高真空、超高真空などの真空度で分けられており、真空計の種類により測定真空度が異なります。真空度はJIS (日本工業規格) により、以下のように圧力の範囲によって5つに分類されています。ピラニ真空計は低真空から中真空を測定でき、電離真空計は、中真空から超高真空まで測定が可能です。

  • 低真空 (low vacuum): 105Pa~102Pa
  • 中真空 (medium vacuum): 102Pa~10-1Pa
  • 高真空 (high vacuum): 10-1Pa~10-5Pa
  • 超高真空 (ultra high vacuum): -5Pa~10-8Pa
  • 極高真空 (extremely high vacuum): 10-8Pa以下

参考文献
https://www.irie.co.jp/products/vacuumgage-nmv/
http://www.nucleng.kyoto-u.ac.jp/people/ikuji/edu/vac/chap3/penning.html
http://jvia.gr.jp/
https://www.horiba.com/jp/horiba-stec/element-technology/what-is-a-capacitancemanometer/

エアシャワー

エアシャワーとは

エアシャワー

エアシャワーとは、クリーンルームなどの入口に設置される箱型の装置です。HEPAと呼ばれる高清浄度多層フィルターを通した無塵な空気で、人の衣服に付着した塵埃を払い落とす役目があります。

エアシャワーの使用用途

エアシャワーは主に半導体や精密機器製造施設などで使用されます。クリーンルームへの塵埃の持ち込みを防ぐために、ほとんどの場合は入り口に設置されます。

クリーンルーム内の清浄度を保つためには、エアシャワー内ですべての塵埃を落とすことが重要です。数十秒で衣服の塵埃を取り除けるため、花粉症患者向けにマンションのエントランスに設置されることもあります。

エアシャワーの原理

エアシャワーは二重扉となっており、2つ同時には開かないようにインターロックが仕組まれます。外界側からエアシャワーへ入室すると、設定された秒数だけ噴射口から空気が噴射されます。噴射される空気はHEPAフィルタを通した高清浄度空気です。

これにより、塵埃が混ざった空気を強制循環させてエアシャワー空間を高清浄度に保ちます。人が入っていない状況でも緩やかに空気を循環させて、エアシャワー空間は常に高清浄度に保たれます。

二重扉に設けられたインターロックによって、退出の際も塵埃が少量しか混入せず、HEPAフィルターの長寿命化にも寄与します。

エアシャワーの選び方

除塵性能が高いと高価になるため、クリーンルームの必要清浄度に合致したエアシャワーを選定します。クリーンルームの清浄度は、内部に存在する粒子のサイズと数量からISOで分類されています。

エアシャワーごとにその保証クラスを確認して選定します。部屋を持たない簡易型のエアシャワーを選定してコストダウンを図ることも可能です。出入りする人数や頻度が多い場合は、複数人同時に入室可能な大型エアシャワーを選定する場合もあります。

エアシャワーのその他情報

1. エアシャワーの使い方

エアシャワーはクリーンルーム内に塵埃を持ち込まないように除塵する設備です。ただし、使用方法が悪いと想定された除塵効果を得られません。まず、決められた定員で立ち位置を決定し、「止まれ」の目印を付けます。立ち位置によっては体に当たる風速が落ち、除塵効果も低くなります。

次に、吹き出し口を立ち位置に向けて、やや下向きに調整します。これは空気の舞い上がりを抑え、埃の舞い上がりによる再汚染を低減させる効果があります。エアシャワー中は両手を広げて2~3回転し、体全体に風が当たるようにします。回転後はその場で設定時間まで待機します。

一般的に、片側吹き出しタイプでは30秒程度、両側吹き出しタイプで20秒程度を目安にエアシャワー時間を設定します。

2. エアシャワーの効果

エアシャワーにおいて、除塵効果と設定時間の相関関係を実験した結果があります。実験では、片側吹き出しタイプと両側吹き出しタイプで、設定時間を10秒、20秒、30秒とし、各サイズの塵埃の除去率を測定しました。

この実験では、片側吹き出しタイプでは微少な塵埃の除去率が低く、除塵効果は劣るという結果でした。両側吹き出しでは各サイズの埃の除去率がほぼ横並びになり、除塵効果は高い結果となりました。

この結果から、高清浄度が必要なクリーンルームには両側吹き出しタイプを選定するのが妥当だと分かります。清浄度の要求が高くない場所では、片側吹き出しタイプで大きな埃やごみを除去すると経済的です。

除塵時間については、両側吹き出しタイプの実験データから見ると10秒の時に除塵効果が劣ります。20秒と30秒では顕著な違いは見られないことから、除塵時間は20秒程度に設定するのが一般的です。エアシャワーは使用方法で除塵効果が変化するため、効果的な使用方法を徹底する必要があります。

参考文献
http://www.airtech.co.jp/products/airshower/
https://www.csc-biz.com/comunication/arubeki/sugata4a.html
https://www.csc-biz.com/csc%20bland/booth/as/kouka.html

圧電素子

圧電素子とは

圧電素子

圧電素子とは、水晶や石英などの誘電体で起こる圧電効果と逆圧電効果を利用して、微小動作制御や検知などをする受動素子のことです。

動作にギアやモータなどを必要としないシンプルな構造なため、他の微小動作機構素子に比較して小型の素子になります

圧電素子の使用用途

圧電素子は、主に工業向けの微小動作の検知および制御する装置に使用されています。例えば、振動計にも使用されており、振動による微小な力変化を圧力として圧電素子にインプットし、圧力を与えられた圧電素子に生じる電圧をアウトプットとして電圧値を得ることで振動の大きさとして数値化する仕組みです。

また、精密な動きが要求される顕微鏡や干渉計のような装置のステージ動作に付随する駆動系としても使用されています。このような駆動系の圧電素子の部材は、ピエゾドライバピエゾアクチュエータと呼ばれており、圧電素子を複数積層させた積層アクチュエータなども汎用的な部材です。

これらにおいては、圧電素子に微小なパルス電流を加えることで、微小動作を実現しています。このように高応答性と精密な動作制御が必要な場面では、圧電素子が好適です。

圧電素子の原理

圧電素子で用いられる素材には、主に圧電体セラミックスが使用されており、圧電体は結晶内部に電気的な歪みである極性を持っています。

図1に示すように、圧電素子は、圧電体をプラス側の電極とマイナス側の電極で挟み込んだ構造です。

圧電素子の模式図

図1. 圧電素子の模式図

 電極間に電圧をかけることにより圧電体に圧力がかかり、電圧の大きさに応じて青い矢印のように伸縮して変位し、この変位を駆動力などとして利用しています。なお、その逆で圧電素子を変形させるような圧力をかければ電圧を検知することも可能です。

圧電体内の結晶格子は、図2に示すように、平常時は、雰囲気中のイオンを取り込むことで電気的に安定した状態を保っています。ところが、電圧が加わると図3に示すように容易にそのバランスが崩れ結晶内の極性が変化し、結晶格子自体が矢印で示すような方向に伸縮し、これによる変位が圧電体の変位です。

圧電状態の変化による模式図

図2. 圧電体が通常状態の模式図(左) / 圧電体に圧電をかけた状態の模式図(右)

圧電素子ではこの極性を利用し、電気エネルギーを効率的に素子の変形エネルギーへと変化させるため、圧電体を電極で挟んだ構造となっています。この電極間に印加された電圧に対して、圧電体へ圧力がかかり変形します。また、その逆で圧力をかければ電圧を検知することも可能です。

この際の圧電体の変形は、圧電体の持つ結晶格子の電子的な極性を利用した歪み変形のため、高々数ミクロンレベルの変形量となります。そのため、一般的には数ミクロン微小な駆動量しか表現することができないため、さらに大きな駆動量を確保しようとすると複数の圧電素子を合体積層させる必要があります。

圧電素子の選び方

圧電素子を設置して動作させる物質の構成が、質量負荷か弾性負荷かによって適切な動作をする圧電素子を見極める必要があります。

特に、バネなどの弾性部材を介して保持された実際に動く構成物の動作を行う場合は弾性負荷条件となり、圧電素子で負荷をかけていくに従ってバネの弾性により圧電素子による力を押し返す力が働き、力の伝わり方が変わるためです。

具体的には、図3に示すように、圧電素子が駆動部材を押圧したときに発生する力をそのまま、実際に動く構成物に伝達する場合を質量負荷といい、圧電素子に電圧がかかった時から青い矢印方向の一定の力が掛かり続けることになります。

質量負荷の模式図

図3. 質量負荷の模式図

一方、上述した弾性負荷とは、図4に示すように、青い矢印で示す圧電素子が駆動部材を押圧したときに発生する力をバネなどの弾性部材を介して、実際に動く構成物に伝達する場合です。

圧電素子に電圧がかかった時から赤い矢印で示すバネの抵抗を受けながら押圧することとなり、構成物に加わる力は徐々に大きくなって一定の力に達するがことになります。

弾性負荷の模式図

図4. 弾性負荷の模式図

そのため、バネなどの弾性部材を介して押圧する場合に、圧電素子が一定の電圧しかできない素子では動作の前半と後半で移動量が異なってしまいます。

また、圧電素子には動かせるストロークが決まっているため、目的の動作が叶うストロークを備えたものを選定することが重要です。

圧電素子のその他情報

1. 圧電素子材料

圧電効果をもつ材料にはセラミック系とフィルム系があります。

圧電セラミックス

  • チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT) 
    もっとも普及している圧電セラミックスで、広い用途に使用されており、ブザー、振動センサ、アクチュエータなどが代表的な製品です。
  • リチウムタンタレート (LT) 
    単結晶で安定性がよいため、電子デバイスに使用されます。もっとも多い用途はSAWフィルタと呼ばれる、特定の電波だけを通過させる電子デバイスです。携帯電話などで広く使用されています。

圧電フィルム

  • ポリフッ化ビニリデン (PVDF)
    圧電特性をもつ樹脂フィルムです。変位量はセラミックスに及ばないものの、安価に生産でき、様々な形状に加工できることから、自走式掃除機の近接センサやタッチセンサなど、家電で広く使用されています。

2. 圧電素子が使用されている製品例

ライター用圧電素子
圧電素子は衝撃を印加すると高電圧の電荷を発生することを利用して、電子ライターやガスコンロの発火部に使用されています。フリント (発火石) は使用するごとにすり減ってしまいますが、電子ライターで使用される圧電素子は破損しない限り半永久的に使用できるため、充てん式ガスライターなどに好適です。

圧電素子使用のスピーカー
圧電素子は、電気信号を印加すると伸び縮みする性質を利用して、発音部品としても使用されます。金属板に圧電セラミックスの薄板を貼り合わせ、広がり振動を利用した振動振幅を得て、大きな音を発することができます。

主に家電のお知らせ音、パソコンのビープ音、時計の電子音、車室内の後退音やオーディオのクリック音などに使用されています。

一部の高級オーディオでは、人の耳にほとんど聞こえないような20kHz付近の音を出すツイータとして圧電スピーカを搭載したものもあり、クラシック音楽などで音の広がりをもたせる効果を生み出すものもあります

圧電アクチュエータ
圧電素子は、電気信号で伸び縮みする性質を生かして、物体を押し引きするためのアクチュエータ (駆動部) としても好適です。インクジェットプリンターの駆動部に使用して高精度なインク吐出機能や、液体を押し出すためのディスペンス機能を実現しています。

圧電素子を使用したアクチュエータは、電磁コイルを使用したアクチュエータに比べて小型にできることがメリットですが、振動振幅ではコイル式に及ばないため、微小で高精度な駆動振幅が要求される用途に限定して使用されています。

参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/whats_piezo.html
https://www.pi-japan.jp/ja/technology/piezo-technology/fundamentals/
http://www.piezoposition.jp/piezo/choose.html
http://www.piezoposition.jp/piezo/choose.html

グローブボックス

グローブボックスとは

グローブボックスグローブボックスとは、細胞培養作業や人体に有害なガスを取り扱った作業など、外気や人間との接触が好ましくない作業を行う際に主に用いられる、グローブと密閉容器が一体化することで密閉環境内で作業が可能な装置のことを言います。

グローブボックスの使用用途

主に細胞培養などの生物分野の実験室や、外気と接触することで何かしらの反応を引き起こしてしまう材料研究など、多くの実験室で使われています。

特に、材料開発の分野では、外気は酸化の原因となる酸素はもちろん、腐食の原因になる水分も含んでいる外気中での実験では予期しない反応がおきてしまうことが多く、実験環境としては不十分です。

その際に、実験用の試料は水分と酸素から隔離した空間に置きつつ実験作業を手作業で行うために考案されたのが、グローブボックスというわけです。

グローブボックスの種類

グローブボックスは、その内部の清浄度管理の仕組みの違いから、大きく2種類に分けることができます。

1. 真空型グローブボックス

1つは内部空間を一度真空引きし、その後窒素やアルゴンなどの不活性ガスを注入するグローブボックスです。

2. 置換型グローブボックス

もう1つは置換型と呼ばれ、内部を真空引きすることなく、不活性ガスによって置換するグローブボックスです。

一度真空に引く真空型の方が、グローブボックス内の水分や酸素などの不純物質を一掃できるため、清浄度の高い空間を作り出すことができます。

また、グローブボックス内に置くサンプルが非常に反応性の高い場合は、容器本体やグローブとも反応を起こすことが考えられます。そのため、反応性が高いサンプルに対応するため、本体やグローブの素材はプラスティックからステンレスまで幅広い素材を適切に選定することが必要です。

グローブボックスの選び方

一般に、真空型のグローブボックスの方が清浄度の高い空間を確保できますが、付帯設備として真空ポンプが必要であり高額になることが多く、環境がシビアでない簡易的な実験を行うには少し大がかりとなります。そのため、比較的周辺環境の依存が少ない実験用に使う場合や、初めての導入などの場合は、置換型のグローブボックスから取り扱ってみるのもいいでしょう。

ただし、どちらの場合も本体とグローブの素材には、実験を予定しているサンプルとの反応性がない素材を選ぶことが重要です。

その他のグローブボックスの情報

1. グローブボックスと不活性ガス

グローブボックスのみならず不活性ガスとして窒素が用いられる頻度は高いです。例えば不活性である特性を活かして食品パッケージのパージ用ガスとして利用されたり、半導体分野などのエレクトロニクス関連の工場でも頻繁に利用されています。

窒素は大気中に容積比で約78.1%存在し、手軽に入手できるのでコスト的にも有利という特徴をもっています。またその比重は0.97であり、空気=1よりも少し軽くなっています。

一方アルゴンも空気中には存在していますが、容積比で0.93%しか存在していません。とはいえ大気中に3番目に多く存在するガスであることには代わりありません。アルゴンは希ガス類であるため、窒素よりもさらに反応性が低いことが特徴です。その比重は1.38と窒素や空気と比較して重いため、グローブボックスの中に溜まっていき、上から空気を押し出していくのが特徴です。

より不活性な環境を要求される場合はアルゴンガスが必要となります。また、グローブボックス内の圧力を大気圧より高く維持することでグローブボックスのわずかな隙間から大気が侵入することを防ぎ、より清浄な環境を保ちます。

2. グローブボックス内の水分除去

グローブボックス内部を不活性ガスで置換した後、所望の反応を進めた場合、水分が発生することがあります。グローブボックス内の水分は水分吸着剤によって除去されています。吸着剤には活性炭やモレキュラーシーブと呼ばれる特殊材料を用いることがあります。

ここでモレキュラーシーブについて説明します。

モレキュラーシーブとは結晶性ゼオライトを指します。多孔性結晶であり、この細孔に分子が吸着することでグローブボックス内の不純物を取り除きます。当然ながら結晶構造を変化させることで、その吸着特性を制御可能ですので、特定の有機ガスのみを吸着させたい場合は、用途に合致したモレキュラーシーブを選定することが重要です。

近年では、その種類も豊富となってきています。先述の通りその結晶性を制御することで吸着対象を選択することが可能です。多くの場合、分子の有効直径が<0.3nm、<0.4nm、<0.5nmといった条件での吸着が可能となっています。

水分を除去したいだけなのであれば、<0.3nmのものを選定すれば大丈夫であり、露点温度-76℃以下(水分量:1ppm以下)の超低湿度雰囲気を作ることも可能です。水分を吸着したモレキュラーシーブは不活性ガスを流したり、真空加熱することで再生し、再度利用することができます。

3. グローブボックス内の酸素除去

嫌気性環境を必要としたり、酸素と反応性が強いものを取り扱う必要があるなど酸素を取り除くことも重要です。

酸素を取り除くためには触媒を使用する必要があり、ニッケルのような酸素吸着材とパラジウムや白金のような貴金属触媒の2種類があります。酸素吸着材を使用した場合、再生するためには数%の水素を含んだ不活性ガスを流す必要があるのに対し、貴金属触媒であれば再生時に再生ガスが必要ありません。貴金属系触媒の導入コストは高いですが、水素混合ガスを使用しないため安全性も高く、ランニングコストも低いことが特徴です。

4. グローブボックスを使用する上での注意点

グローブボックス内は密閉であるという特徴から、試薬等によりグローブボックス内に汚れがたまりやすいため、コンタミネーション等を防ぐためには内部を清掃する必要があります。

また、グローブボックスは水分や酸素をppmオーダー以下の雰囲気にすることが可能ですが、その一方でわずかに大気が入り込むだけで急激に環境が悪化してしまいます。グローブボックス内の環境をより厳密に保つためには、試薬等をグローブボックス内に入れる際はきちんと水分・酸素を取り除いた状態にすることや、グローブ等に穴が開かないよう定期的なメンテナンスが重要となります。

DRAM

DRAMとは

DRAM

DRAMとは、半導体素子を利用した揮発性の記憶装置 (メモリ) の一種です。

Dynamic Random Access Memoryの略称で、主にパソコンに搭載されています。内部回路が電荷を蓄えるためのコンデンサーとFET (電界効果トランジスタ) を有する非常に単純な構造であるため、FETの半導体プロセスの微細化に伴う大規模集積化に適していますが、SRAMなどの他の記憶媒体に対して記憶容量単価が低いという特徴があります。

DRAMの使用用途

DRAMの主な使用用途はパソコンです。記憶部分がコンデンサーとFET (電界効果トランジスタ) を使った単純な構造をしており、記憶容量に対する単価が安く製造できるため安価で大容量のメモリが必要なパソコンや産業機械の制御装置などに用いられています。

DRAMはコンデンサーの蓄積電荷で情報を記憶する構造上、電荷を維持するために常に情報の書き込みと読み出しのリフレッシュ作業を行っているため消費電力が大きく、スマホや携帯端末などの小型装置ではあまり使用されません。

DRAMの原理

DRAMの原理は内部回路のコンデンサーの蓄積電荷がある場合に1、ない場合に0という2進数で膨大なデータを記憶媒体として扱います。DRAMはその内部に大量に存在するメモリセルと呼ばれるFETとコンデンサーの一対の回路から構成されます。

データを書き込む場合はコンデンサーへFETを介して電荷を蓄積させて電圧が高くなった部分を1、蓄積していない部分を0とします。データを読み込む場合は該当箇所の電荷を開放し、書き込みと逆の動作によりコンデンサーに蓄積されていた電荷状態から0と1を識別します。これらを無数に行うことでデジタルデータを記憶し表現する仕組みです。

DARMはこのしくみからわかるように、コンデンサーへ電荷を蓄積させるには電圧印加が必要なため電気が流れている間しか情報を保持することができません。そのためDRAMは揮発性メモリに分類されます。

DRAMのその他情報

1. DRAMとSRAMの違い

一般に、パソコンのメモリ容量を増強したい場合に比較するのはDRAMとSRAMになります。

それぞれに特徴があり、記憶性能はSRAMのほうが優れています。大きな違いは記憶様式が動的か静的かであり、DRAMは常に情報を読み書きし続けていますがSRAMはその反対です。高速読み書きと低消費電力ではありますが、内部回路が複雑なため大規模な集積化が難しいのが欠点になります。小型で安価な大容量のメモリが必要である場合は、DRAMから適切なメモリサイズのものを選ぶことが大切です。

2. DRAMとフラッシュメモリの違い

DRAMと同様の機能を持った半導体製品としてフラッシュメモリがあげられます。両者はその特性からコンピュータ上で異なる役割を担います。

DRAMは電源を供給しないと揮発するという性質がありますが、処理速度が速いためコンピュータの主記憶装置として演算処理に必要となるデータを一時的に置く目的で用いられます。一方でフラッシュメモリには不揮発性という特性がありデータを保持するために継続的に電荷を供給する必要がないため主にデータを長期保存する用途に使われます。

フラッシュメモリとDRAMのデータ読み書き速度を比べるとDRAMのほうが早いですが、その分DRAMのほうが価格は高いです。フラッシュメモリはデータの長期保存用途で用いられる磁気テープやHDDと比較するとデータの読み書き速度が速く、近年では価格も低下傾向にあるため近年ではSSDやUSBメモリ等のストレージ用製品として用いられています。

3. DRAMのリフレッシュ動作について

DRAMは継続的に電源供給を行わなければ記憶が失われる揮発性の装置であるため、定期的に電荷を補充する必要があります。この電荷を補充する動作のことをリフレッシュ動作といいます。この間隔のことを「リフレッシュサイクル」といいます。通常であれば15マイクロ秒~60マイクロ秒程度の間隔でリフレッシュが行われます。

リフレッシュ動作中はメモリにアクセスすることができないため、なるべく短時間で行う必要があります。リフレッシュ動作を短時間で行うことができるメモリのほうが高性能と言えます。

4. DRAMの記憶容量トレンド

日本のメーカーが主力だった1990年代は、DRAMは1Mビットから4Mビットと世代毎に4倍ずつ記憶容量を増加してきました。しかし2000年代に入ると1Gビットから2Gビットという具合で増加量が鈍化し、2020年代の昨今では16Gビットより少ない量で増え続けています。

DRAMの記憶容量の増大トレンドに寄与するのは、半導体のFETの微細化プロセス技術です。半導体プロセスの最先端プロセスノードは数nmまで進化し、世界の名だたる企業や研究機関で活発な開発競争が進められています。

 

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/memory/memory_what2
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1904/23/news04.html
https://www.sophia-it.com/content/

パスボックス

パスボックスとはパスボックス

パスボックスは、クリーンルームなど清浄度クラスの違う2つの部屋の間に設置される装置です。

外部とクリーンルーム間での物品や機器の受け渡しに使用され、クリーンルーム内に微粒子や細菌真菌など製品や動作の不良や汚染の原因となる物質を持ち込まないようにするために使用されます。

パスボックスを使用すると、人間が清浄度クラスの違う2つの部屋の出入りをしなくても物品が持ち込め、簡単かつ汚染が少なくなります。着替えなどで人件費が削られないのでコスト面でも有効です。パスボックスは設備の一部であるため、工場の建築や増設の際に設置されます。

パスボックスの使用用途

パスボックスは清浄度クラスの違う部屋を持つ製造工場や研究機関などで使用されます。

半導体の製造や、液晶ディスプレイ、電子部品、印刷、精密機器などの微粒子の混入が製品の品質を左右する製品や、製薬工場、無菌治療室、培養など微生物の混入に気を使う場所など、幅広い分野で使用されています。

発売されているパスボックスには、標準型やシャワー型、コンベア型などの種類があり、使用用途や使用環境に応じた適切な選定をすることによって業務の効率化につながります。

パスボックスの原理

パスボックスには、2つ扉がついているだけの標準型、内部にエアシャワーがついているシャワー型、コンベアがついているオート型などのタイプがあります。

パスボックスには、エアーロック機能もあり、クリーンルームを汚染から守ります。

パスボックスのその他情報

1. パスボックスの種類

標準型
標準型のパスボックスは、両面に2つの扉がついているだけのシンプルな構造です。片方を開放しているときは他方の扉が開かないようインターロック機能がついているものが多いです。両側のドアを解放して、清浄度の低い部屋から、汚染を直接持ち込むのを防止しています。

シャワー型パスボックス
シャワー型のパスボックスは、パスボックス内に物を入れるとエアシャワーがジェットエアを周囲から吹き付けます。これは表面の微粒子や菌を吹き飛ばし、付着したまま移動させないようにするためです。

吹き付ける空気HEPA フィルターで清浄化されて供給されます。ただし、エアシャワーは表面にしか空気を吹き付けることができませんので、物と物が重なった部分などには効果がなく万能ではありません。

オート型のパスボックス
工場ではフォークリフトを使って物品を運搬するのが一般的です。精密機器や医薬品など、製造場所がクリーンルームである場合にはパレットごと搬入できるコンベア型のパスボックスが設置されます。コンベア型にはエアシャワーも装備され、外部からの微粒子の持ち込みを防ぐ構造になっています。

循環型パスボックス
他にも、パスボックスの中には正常な空気をパスボックス内に循環させて庫内の汚染を防止し、受け渡しする物品や部材等の清浄化をはかった循環式も販売されています。

2. パスボックスの使い方

品質の高い製品を製造する場合には、人や物が粉塵や菌汚染の原因となります。パスボックスを使用すれば服の着脱にともなう微粒子の影響を除去でき、微粒子や菌類が付着しません。また、清浄度区域をまたぐ人の動気が減り、物だけを持ち込めます。このようにしてクリーンルームの清浄環境を維持します。

具体的な使用方法は以下の通りです。

クリーンルームと反対側の扉を開けて、エタノールなどを用いてパスボックスの中を清拭します。清拭の方法は用途により変わりますが、移動させたい物も清拭できる場合は清拭しパスボックスの中に入れます。

その後、パスボックスを閉じます。UV照射機能がついている場合、扉を閉めると設定した間は自動で UV ランプが点灯してUV殺菌を行います。また、エアシャワー付きのパスボックスは扉を閉めた後にジェットエアを吹き付け外面に付着した粉塵を取り除きます。

ジェットエアの吹き付けが終了後一定時間が経過し、吹き飛ばされた粉塵が落ちた後にもう片方の扉を開いて物品をクリーンルーム内に運び入れます。

3. パスボックス付のグローブボックス

空気に敏感な物質を扱う時や化学的に不活性な状況下で作業をしたい時など、直接扱うと危険な物質や菌を扱う場合にグローブボックスが用いられます 。

外部のポンプで循環させるものや、真空ポンプが接続できるものもあります。グローブボックスにはパスボックスが付いてるものがあります。パスボックスを使うことによってグローブボックス内への外気の持ち運びを最小限にすることができます。

参考文献
https://www.airtech.co.jp/products/airshower/
https://e-cleanbooth.jp/reference/box.html
http://www.excel-ct.co.jp/passbox.html
http://www.excel-ct.co.jp/passbox.html
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223005684572/

プログラマブルコントローラ

プログラマブルコントローラとは

プログラマブルコントローラ

プログラマブルコントローラとは、マイクロプロセッサを内蔵している制御装置のことです。

通常、機器内のセンサーやスイッチなどの入力をメカニカルリレー、タイマーなどの制御機構を介してモーターやディスプレイなどに出力します。それに対して、プログラマブルコントローラは、メカニカルリレーなどの制御機構を用いらずにプログラマブルコントローラのプログラムによって機器の動作を制御します。

機械的な接点などが少なくなるため、電子部品間の接点の摩耗や不良、煩わしい入出力装置、制御用メカニカルリレー間の配線が不要で、機器を制御することができます。また、電気配線を簡易的にできるので、機器の小型化や量産の実現に繋がります。

図1はメカニカルリレー、タイマーなどを用いてランプ制御を行う制御盤の簡単な例を示します。

プログラマブルコントローラの使用用途

プログラマブルコントローラは、工場の自動化システムや、自動車、家電製品、産業機器など幅広い分野で使用されます。主に産業用機器や業務用機器で使用される場合が多いです。

業務用としては、シーケンス制御を伴う大型の洗濯機や乾燥機で使用されている例があります。PCを使用するよりも安価で頑丈なためです。グラフィックボードがなく、マイクロプロセッサの発熱も少ないので冷却装置も不要な場合が多いことも要因の1つです。

プログラマブルコントローラは、動作に必要な電子部品がすべて内蔵されている1パッケージタイプと、1つ1つの機能部品を自分で選定するビルディングタイプがあります。

メモリやプロセッサ、出力・入力端子のスペックなどを、使用する電子機器に応じて選定することが大切です。

プログラマブルコントローラの原理

プログラマブルコントローラは、入力部、出力部、演算部、メモリで構成されています。入力部では、センサーやスイッチなどと接続され、入力された情報をもとに、メモリ内部のプログラムコードに基づいて、演算部で処理して、モーターやディスプレイ、通信装置などに出力します。

プログラマブルコントローラで制御する電子機器機器の動作を変更したい場合は、配線などの変更は不要です。プログラムコードを変更するだけでよいので、時間や人件費の削減に繋がります。

プログラマブルコントローラで使用するプログラムは、ラダー方式やSFC方式、フローチャート方式、ステップラダー方式があり、ラダー方式が最も一般的です。ラダー方式はパソコン上で、2本の平行な直線の間にリレーやスイッチ、タイマーなどのシンボルをはしご (ラダー) の様につなげるように、プログラムを記述する方式です。

視覚的な操作によって、プログラムコードを作成できるので、習得が容易であることが特徴として挙げられます。図3はメカニカルリレー、タイマーで構築していたランプ制御をラダープログラムで表した例となります。

プログラマブルコントローラのその他情報

1. プログラマブルコントローラとシーケンサの違い

生産現場で仕事をしていると、「シーケンサ」という言葉を耳にすることがあるかと思います。結論から言うと、プログラマブルコントローラとシーケンサに違いはありません。

シーケンサは、三菱電機製プログラマブルコントローラの商品名を指しています。シーケンス制御を可能とする機械装置として、シーケンサという名称で販売されました。

機能を示す名称として完全にハマったため、プログラマブルコントローラの別名として現在ではシーケンサも使われています。

2. プログラマブルコントローラとPCの接続

プログラマブルコントローラへプログラムを記憶させるとき、一般的にPCを使用します。コントローラを販売している各社でプログラム編集PCソフトを販売しており、それらを使用してプログラムを記憶させます。

PCとの接続は古くからシリアル信号が用いられてきました。昔のPCはシリアルポートが常設しているものも多くありましたが、最近では稀になってきています。

また、シリアル信号はCOMポートを合わせたり、専用のドライバをインストールする必要がありました。近年は、USBポートを使用してシーケンス編集を行う場合が多いです。COMポートの合わせこみも必要もなく、一般ユーザーに馴染みもあります。

Ethernetでネットワークを構築している場合は、Ethernetポートから複数台のコントローラへ編集を行えるようになってきています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsei/27/2/27_KJ00007706910/_pdf
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/26/283/index.html

差動プローブ

差動プローブとは

差動プローブとは、オシロスコープなどで信号を測定するときに、コモンノイズと呼ばれるアースの振動など、信号を発信している機器とは関係のない場所から発生するノイズを検出し、アンプによって測定信号を増幅させて測定しやすくするための装置です。

USBやHDMIなどの通信において、正確に信号を出力側が検知するために必要になります。差動プローブは使い方を間違えれば、壊してしまう可能性や正確な出力が得られない場合もあるので、注意が必要です。

オシロスコープを販売している会社から、差動プローブが発売されている場合も多く、接続性が優れているので、オシロスコープと同じ会社の差動プローブを購入すると良いです。

差動プローブの使用用途

差動プローブは、多くの通信機器における試作品の製造段階や製品の試験段階で使用されます。USB接続やHDMI接続、DisplayPort接続、Ethernet、SATAなどの通信において、オシロスコープなどでノイズを検知して、そのノイズが製品に対して影響を及ぼさないか、ノイズに影響がある場所はどこかを検査するために使用されます。

差動プローブは高価な製品が多いので、購入前に使用する規格を満たしているかなどを正しく調べておくことが大切です。

差動プローブの原理

差動プローブは、2本の性質が全く同じアクティブプローブをまとめた構造となっており、片方のアクティブプローブを、測定対象の信号を発信する機器の接続部のプラス端子に、もう片方をマイナス端子に接続します。この2本のプローブから検出される信号の差を計測することで、コモンノイズの検出が可能です。

差動プローブには、オシロスコープで波形を測定しやすくするために、工夫されている製品が多く発売されています。低電圧の信号をオシロスコープで測定しやすくするために、アンプによって増幅したり、高電圧の信号を与えてオシロスコープに負荷を与えない様に一部の電圧をアースに逃したり、信号を明確な矩形波にしたりするなどさまざまです。

差動プローブを使用する信号に応じて、適切に選定すれば明確なノイズを測定することができます。

差動プローブのその他情報

1. 差動プローブの等価回路

差動プローブは、アクティブ・プローブを2本組み合わせた構成で、プローブの先端から直接半導体回路の入力端に接続されることから、入力容量が極めて小さい1pF 程度のものもあります。一方、入力抵抗は減衰器を介するパッシブ・プローブとは異なり、数十KΩ~1MΩ程度です。

そのため、高インピーダンス回路に差動プローブを接続して波形を測定する場合は、プローブの影響を踏まえて測定結果を考察する必要があります。その際、差動プローブの等価回路を被測定回路に接続して、影響をシミュレーションすることが有効な手段です。

差動プローブの場合、片側のピンとGND間はメーカーが公表している入力抵抗と入力容量が並列に接続されたものとなります。もう片側のピンとGND間も同様に入力抵抗と入力容量が並列に接続されたものとなります。したがって、差動プローブの2本のピン間では入力抵抗が2倍、入力容量は半分となります。このインピーダンスが被測定回路に与える影響を踏まえた上で、測定結果を判断して下さい。

2. アクティブプローブ

プローブは、安定した信号を測定するために使用されるものです。プローブが無ければ、ケーブルが持つ容量成分の影響で回路動作が変わってしまいます。特に高い周波数の測定に強い影響を与えます。

アクティブプローブは、先端の入力部に半導体素子を使用するものです。アクティブプローブ自体の入力容量も非常に小さな入力容量を実現しており、1pFより小さな入力容量のものもあります。

プローブの入力容量も、波形に影響を与えます。パッシブプローブはアクティブプローブよりも容量成分が大きく、パルス立ち上がり部で波形の振動であるリンギングが大きく出ます。

3. 高電圧差動プローブ

差動プローブはフローティング状態の信号分を観測するのに適したものですが、一般的なプローブは差動電圧、対地電圧いずれも30V~100V程度の耐圧しかありません。商用電源など高い電圧を扱う回路でフローティング状態のポイントの測定には、大型の高電圧プローブが必要になります。差動電圧で6,000V以上、対地電圧2,000V以上のスペックのものが市販されています。

高電圧差動プローブを使う測定では、放電する恐れがあるため、2本のピン間距離を充分離さなければなりません。その結果、リード線のインピーダンスにより高周波領域でリンギングが発生し、振幅が大きく変動してします。その対策として、2本のリード線を捩って使う方法が有効です。

4. コモンモードノイズ

電気回路内のノイズは、ディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズに大きく分けられます。ディファレンシャルモードノイズとは、回路内の導線を通って伝導するノイズです。

一方、コモンモードノイズとは信号が一部大地や筐体を通て戻ってくるノイズで、入力信号とリターン時の信号が同位相のノイズです。コモンモードノイズは、ノイズの伝わり方が複雑であるため対策が難しいものとされています。

スイッチング電源の動作試験では、高電圧差動プローブが非常に有効な手段として使用されます。スイッチングレギュレータでは対地電圧が数百Vも変動するコモンモードノイズが発生します。

差動プローブを利用すると対地電圧の変動をキャンセルして観測できるはずですが、実際には差動出力に対地電圧の変動分が若干乗ることが避けられません。この変動の影響を減らすには、CMRR (Common-Mode Rejection Ratio) が優れたプローブを選択する必要があります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jipe/37/0/37_130/_pdf
http://www.ktek.jp/
https://jp.tek.com/probe-selectionguide-51z-21484-5