裏面照射型CMOSセンサー

裏面照射型CMOSセンサーとは

裏面照射型CMOSセンサーは、CMOSセンサーの一種です。

デジタルカメラやスマートフォンなどに搭載され、レンズを通して受光した光の情報を電気信号に変換する撮像素子として使われています。

CMOSセンサーには表面照射型と裏面照射型の2種類のタイプがあります。

従来型の表面照射型CMOSセンサーでは、表面の入射側とは反対側にフォトダイオードが配置されているのに対し、裏面照射型CMOSセンサーでは、基板裏面から光を照射することで、入射側にフォトダイオードが配置される構造をしています。

裏面照射型CMOSセンサーの使用用途

CMOSセンサーは、デジタルカメラ、スマートフォンのカメラ、画像検査装置などの撮像素子として広く使用されます。

裏面照射型CMOSセンサーは、従来型CMOSセンサーに比べて高感度・低ノイズという特徴があるため、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)、自立動作が要求されるロボットやドローン、物体認識・障害物検知装置などにおける距離画像センサーとしても使われています。

また、先進運転支援システム(ADAS)や、バックミラーの代わりとしてのカメラモニタリングシステム(CMS)など車載用途にも使用されています。

裏面照射型CMOSセンサーの原理

CMOSセンサーは、1画素ごとに1つのフォトダイオード、増幅器、スイッチで構成されていて、受光した光をフォトダイオードで電荷に変換・蓄積し、増幅器で電荷を電圧信号に変換し、格子状に並んだフォトダイオードを選択するスイッチを次々と切り替えて、1画素ごとに信号を読み出していくという原理で動作します。

従来型の表面照射型CMOSセンサーは、通常のCMOS回路同様、シリコン基板の一番下の層にフォトダイオードを配置し、配線層はフォトダイオードの上層、さらにその上層にカラーフィルターとオンチップレンズを配置するという構造をしています。

このような構造の従来型CMOSセンサーには、オンチップレンズで集光した光がフォトダイオードに届くまでに、配線やトランジスタ回路などが妨げとなり、感度が低下するという問題点があります。

一方、裏面照射型CMOSセンサーでは、シリコン基板上にフォトダイオードと配線層を設置した後、基板を反転し、基板を削ってから裏面にカラーフィルターやオンチップレンズを搭載しています。

このような構造の裏面照射型CMOSセンサーでは、光の照射面がシリコン基板の裏面となり、集光した光が配線やトランジスタの影響を受けないため、表面照射型に比べて単位画素が受ける光量が増大します。また、斜めから入射した光に対する感度も高くなっています。

アナログオシロスコープ

アナログオシロスコープとは

アナログオシロスコープ

オシロスコープは、電気信号の時間的変化を観測する計測器です。

ある一時点の電圧・電流を計測するだけのテスターとは異なり、オシロスコープは電気信号の周期・周波数や立ち上がりの状況、複数の信号間の時間差・位相差などを観測することができます。

アナログオシロスコープはオシロスコープの一種で、入力信号の時間的変化をCRT(ブラウン管)の画面上に表示させ、その波形を観測する計測器です。

入力信号を離散的な時間間隔でサンプリングしてデータ変換するデジタルオシロスコープに比べて、アナログオシロスコープは波形更新レートが速いという特徴があります。

アナログオシロスコープの使用用途

オシロスコープは、電気回路中の電圧・電流・周波数などの電気信号を、時間軸を横軸とする波形として観察できるため、産業機器や民生機器などに搭載されているあらゆる電気回路に対して、開発時の動作検証・デバッグ、製品出荷後の故障解析などに使用されます。

アナログオシロスコープは、デジタルオシロスコープに比べて波形の更新レートが速く、デッドタイムが存在しないというメリットがあり、以前はよく使われていました。

しかし、2000年以降、画面更新レートの高速化と低価格化が進んだデジタルオシロスコープが普及し、現在アナログオシロスコープはあまり使われていません。

アナログオシロスコープの原理

アナログオシロスコープは、入力信号の時間的変化をCRTの画面上にリアルタイムで表示させます。

CRTの裏面には蛍光膜がコーティングされていて、電子ビームが当たった箇所の蛍光膜が発光し、他の部分よりも明るい輝点が発生します。蛍光膜には一定の残光特性があるため、輝点の軌跡を波形として観測することが可能になります。

アナログオシロスコープは、入力信号をアッテネータ(減衰器)で感度を調節し、アンプ(増幅器)で振幅を調整した後、遅延ケーブルと垂直増幅器を経て、CRTの垂直偏光板に印加されます。この垂直偏光板は、入力信号の大きさに比例した距離だけCRT内部の電子ビームを上下方向に移動させます。

一方、アンプから分岐した入力信号は、トリガ回路を経て、のこぎり波を発生させます。のこぎり波は水平増幅器を経てCRTの水平偏光板に印加されます。アナログオシロスコープでは、のこぎり波が立ち上がっている区間だけCRT上に波形を表示することで、安定した波形観測を実現しています。

アンモニア燃料電池

アンモニア燃料電池とは

アンモニア燃料電池は燃料電池の一種で、アンモニアを燃料電池への水素供給源として発電を行う装置です。

アンモニアは安価で大量に合成可能な物質で、輸送や貯蔵が水素より容易、燃焼もしくは分解した際に二酸化炭素を排出しないといったメリットがあり、燃料への応用が期待されていましたが、エネルギー密度の面で課題を抱えていました。

アンモニア燃料電池はよりエネルギー効率に優れ、かつ燃料電池が抱える水素供給の問題を解決する方法として開発が進められています。

アンモニア燃料電池の使用用途

アンモニア燃料電池は開発途上の技術であり、現状では1kW程度の装置が試験的に運転されている段階ですが、産業用、家庭用の発電装置への応用が期待されています。

高温で作動するため大量の排熱が発生すること、アンモニアのリーク防止の工夫が必要になるため小型の装置にはやや不適ですが、エネルギー効率に優れていること、二酸化炭素や窒素酸化物を排出しないため環境負荷が少ないことから発電源としての利用が想定されています。

アンモニア燃料電池の原理

アンモニア燃料電池は他の燃料電池と同様に水素が酸化され、水が生成する際に発生する化学エネルギーを電気に変換することによって起電力を得ます。

基本的な構造は固体酸化物型燃料電池に準じており、燃料極及び空気極、セラミックス等の固体電解質から形成され、燃料極側で水素の酸化反応、空気極側で酸素の還元反応が起こります。

しかし、アンモニア燃料電池においては水素の供給方法が異なっており、都市ガスを改質した水素の代わりにアンモニアを直接装置内に供給します。アンモニアは窒素と水素に分解されますが、この反応は吸熱反応であるため、固体電解質型燃料電池の作動温度700℃以上で触媒等を用いることなく自発的に進行し、水素を生成することが可能です。

アンモニア燃料電池については比較的低温で作動する固体高分子型燃料電池の研究も進められており、その場合はアンモニアを事前に加熱することによって水素と窒素に分解し、電池内に供給することによって用います。

レジスト

レジストとは

レジスト

レジストはエッチングやはんだ付けなどの工程で基板の特定箇所を保護するために用いる材料です。一般的には半導体プロセスで用いられる「フォトレジスト」を単に「レジスト」と呼んでいます。

フォトレジストは特定の波長の光を吸収すると化学構造が変化して洗浄液、現像液に対する溶解性も変わります。そのため、基板にレジストを塗布した後に、回路パターンを描いたマスク越しに基板へ光を照射することで、一部のレジストのみを可溶化、もしくは不溶化させることが可能です。この状態で現像液を用いて基板を洗浄すると可溶なレジストのみが溶出し、基板の一部だけがレジストに保護された状態を作り出すことができます。

なお、レジストには光が照射された部位が現像液に溶解する「ポジ型レジスト」と、光が照射された部位が不溶化する「ネガ型レジスト」があります。

レジストの使用用途

レジストとはエッチングやはんだ付けなどの工程において特定の場所を保護する材料です。半導体プロセスにおける感光剤である「フォトレジスト」のことを単に「レジスト」と呼ぶことが多いので、本記事でもフォトレジストについて紹介します。

フォトレジストは光を照射することで化学構造が変化し、耐薬品性を発現したり逆に現像液に溶解したりする性質があります。この性質を利用し、シリコンウェハ上に塗布されたレジストに対して所定のパターンを描いたマスク越しに光を照射し、最後に現像液で洗浄することでレジストが無い加工部分とレジストに保護された非加工部分を基板上に作り出すことができます。このようなレジストは高集積化、微細化された半導体集積回路の製造には欠かせない材料の一つです。

レジストの使用方法

レジストの使用方法

図1. レジストの使用方法

半導体製造工程ではシリコンウェハーをエッチング処理によって削り取り、細かな凹凸を作ります。このエッチング処理において基板を選択的に保護するものがレジストです。

まず基板上にレジストを均一に塗布した後、レジストへIC回路を描いたマスク越しに光を照射します。このとき、光が照射された場所のレジストは光を吸収して化学構造が変化するため、光照射の有無によって現像液に対するレジストの溶解性を変えることが可能です。「ポジ型レジスト」と呼ばれるレジストでは光照射された場所が可溶になり、「ネガ式レジスト」では光照射されなかった場所が可溶となります。

このように基板上にレジストが選択的に残存した状態でエッチングすることでレジストがない領域だけ選択的に基板を削り取ることができます。そしてエッチング後に基板に残存したレジストを除去、洗浄することで基板のパターン形成が完了となります。

レジストと液晶ディスプレイ

レジストと液晶ディスプレイ

図2. レジストと液晶ディスプレイ

レジストには、顔料などの色材を入れたインクであるカラーレジストと呼ばれるものがあります。ガラス基板上に塗布されたカラーレジストは紫外線などの光を照射することで硬化するため、光照射後のレジストは現像液に流されることがありません。

液晶ディスプレイは赤・青・緑の三原色でパターンが形成されており、ここにカラーレジストが使われています。まず赤色のカラーレジストを塗布、所定の位置だけを光硬化させた後に現像液で洗浄、次いで青・緑のカラーレジストについても同様の操作を行うことで赤・青・緑のパターンを形成することができます。

 

レジストの種類

レジストの種類

図3. レジストの種類

レジスト材料は「ポジ型」「ネガ型」という分類のほか、吸収する光の波長ごとにも分類できます。半導体製造プロセスにおける露光装置ではg線(波長436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)が用いられており、それぞれの波長を吸収する構造を有したレジストが販売されています。

例えばg線、i線用のポジ型レジストではノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル(NQD)系化合物から成る化合物が用いられています。この化合物はNQDが疎水性であり、通常はアルカリ水溶液に不溶です。

しかし、g線かi線を照射するとNQD部位が分解し、親水性の化合物へと変化します。その結果、照射後のレジストはアルカリ性の現像液に溶解させることができます。その他、KrFレーザー用のポジ型レジストでは露光によって酸を発生させ、その酸の触媒反応によって露光部位のレジストの変化を促進させる化学増幅型フォトレジストが使われています。

交流アーク溶接機

交流アーク溶接機とは

アーク溶接機には、溶接電源に直流式と交流式の2つが存在しており、交流アーク溶接機は溶接電源が交流式のアーク溶接機を表します。

直流式と比較して価格が安価でメンテナンスも簡単なため、家庭用のコンセントで使うDIY用途には交流式が一般的です。

また、交流アーク溶接機は無負荷時(アークを発生させていないときの待機状態)の電圧が高いため、端子電圧を25V以下に抑制する「電撃防止装置」を付けることが義務付けられています。

交流アーク溶接機の使用用途

工場の製造現場はもちろん、家庭用電源は交流ですので家庭用のDIYとしても広く用いられています。

自動車の製造ラインでは、ワイヤーが自動供給される半自動溶接が多く使用されており、ロボットに取り付けてボディの溶接が自動化されています。

また、電極にタングステンを用いた「TIG溶接」においては、交流と直流を切り替えることができる機種もあり、アルミからステンレス、鋼材などの様々な母材の溶接が可能です。

交流アーク溶接機の特徴

アーク溶接機には、様々な種類の溶接が存在しており、特徴やメリット、デメリットもそれぞれ異なります。

  • 被覆アーク溶接
    細長い棒状の溶接棒を使って母材との間にアークを発生させて溶かしながら接合していく溶接方法です。
    溶接棒は溶接中、徐々に減っていきますので、常に母材との間隔を最適に保ちながら溶接する方向へ進行していく必要があり、作業者によって仕上がりにムラがあるのが欠点です。
  • MAG溶接
    炭酸ガスとアルゴンガスの混合ガスをシールドガスとし、電極ワイヤーを自動で供給しながら溶接していく方式です。
    被覆アークのように溶接棒が短くならないため、溶接方向へ進行する動作だけで済む「半自動溶接」の一つで、楽に溶接できますが、アルゴンガスが高価なのがデメリットです。
  • TIG溶接
    電極にタングステンを使用し、アルゴンガスでシールドして溶接する方式です。
    交流の場合はアルミの溶接が可能となっており、主に薄板の非鉄金属を接合するのに使用します。

交流電流計

交流電流計とは

交流電流計

交流電流計とは、主に家庭用コンセントなどに使われている交流電気の電流を測定する際に使用する測定機器です。

電流計の中でも指針で目視するアナログ式は主に「整流形計器」を使用しており、ダイオードなどを内蔵した整流器を用いて交流を直流に変換し、コイルを動かしてトルクを発生させ、電流の大きさを測定します。

感度が高く、且つ消費電力が少ないため交流電流計の中でも広く採用されており、電圧計にも使われている方式です。

交流電流計の使用用途

主に家庭用のコンセントからの電気や照明など、電流の向きが交互に変わり、電圧が周期的に変わる交流の電流を測定するために用いられています。

電流計を使用するとき、直流電流計と要領は同じで回路に対して必ず直列に接続します。

交流を測定するときに大切なのが、周波数の特性で、家庭用の電源は50Hzと60Hzですが、オーディオなどで可聴帯域を超える10Hz、1MHzを測定するには、一般的な電流計では測定できません。

交流電流計の特徴

交流電流計には主に「整流形計器」「誘導形計器」「可動鉄片形計器」の3種類があります。

整流形計器は、交流電流計に幅広く使われており、感度が高く、且つ消費電力が小さい特徴があります。デメリットは、正弦波交流でないと正確な測定ができないため、誤差が生じることが挙げられます。

誘導形計器は、交流電流によって生じた磁界と、金属製の円盤内部で発生した誘導電流との境目に発生したトルクで電流を測定する計器の種類で、交流のみを測ることができ、可動する部分の構造が単純なのがメリットです。デメリットは、感度が高くないことが挙げられます。

可動鉄片形計器は、コイルの内部に鉄片を入れて、反対側のバネが付いた可動鉄片が設置されており、電流が流れると可動鉄片と固定鉄片が磁化することで電磁石となり、可動量を読み込んで測定する計器です。交流と直流の両方を測ることができますが、精度はあまり良くないといったデメリットが存在します。

SOFC

SOFCとは

SOFCとは、固体酸化物燃料電池 (英: Solid Oxide Fuel Cell) の略称であり、高温で動作する燃料電池の一種です。

燃料電池とは、燃料と酸素を化学反応させて、直接電気エネルギーに変換する装置です。SOFCは、固体の電解質を用いて、水素や一酸化炭素などの燃料と酸素との間に反応を起こします。SOFCは、高い発電効率や低排出ガスなどが特徴です。

SOFCの使用用途

SOFCの使用用途は、主に以下の2つです。

1. 分散型発電

分散型発電とは、需要地点に近い場所での発電をいいます。分散型発電では、送電ロスや停電リスクを低減できます。SOFCは、高発電効率や低排出ガスなどの特徴を活かして、分散型発電に適しています。例えば、以下のような場合に使われています。

産業用
工場やビルなどの大規模な施設で、自家発電やコージェネレーション (発電と同時に熱利用) を行う場合。

家庭用
家庭や集合住宅などの小規模な施設で、自家発電やエネファーム (発電と同時に給湯) を導入する場合。

2. 水素社会

水素社会とは、水素を主要なエネルギー源とする社会です。水素社会では、水素の安全かつ効率的な生産・輸送・利用が重要です。SOFCは、水素社会で以下のような役割を果たすことが期待されています。

水素製造
SOFCは、逆方向に動作させることで、水や二酸化炭素から水素を製造できます。このプロセスは、高温蒸気改質やCO2分解と呼ばれます 。

水素利用
SOFCは、水素を直接燃料として利用できます。

SOFCの原理

SOFCの動作時に各部位で起こっている現象を以下に説明します。

1. 燃料極

燃料 (水素や一酸化炭素) は、インターコネクタによって分けられた燃料側の流路に流れ込みます。燃料は、燃料極に到達すると、空気極から来た酸素イオンと反応して、水や二酸化炭素と電子を生成します。この反応は、以下の式で表されます。

   水素の場合: H2 + O2- → H2O + 2e-
   一酸化炭素の場合: CO + O2- → CO2 + 2e-

2. 空気極

空気 (酸素) はインターコネクタによって分けられた空気側の流路に流れ込みます。空気は、空気極に到達すると、電子を受け取って酸素イオン (O2-) になります。この反応は、以下の式で表されます。

   O2 + 4e- → 2O2-

3. 電解質

酸素イオン (O2-) は、電解質を通って空気極から燃料極にイオン伝導します。電解質は、高温でないとイオン伝導性が低いため、SOFCは高温で動作する必要があります。

4. 外部回路

電子は、インターコネクタを通って外部回路に流れ出します。このとき、電気エネルギーが発生します。外部回路で負荷を動かした後、電子は再び空気極に戻ります。

SOFCの構造

1. 電解質

固体酸化物から作られる薄いセラミックス板であり、イオン伝導性を持ちます。一般的には、ジルコニアやセリアなどの金属酸化物にイットリウムやスカンジウムなどの希土類元素を添加したものが使われます 。

2. 電極

電解質の両面に貼り付けられる金属やセラミックスの層であり、電気伝導性と触媒作用を持ちます。一般的には、燃料極としてニッケルや銅などの金属、空気極としてランタノムやストロンチウムなどの希土類元素を含むペロブスカイト型酸化物などが使われます 。

3. インターコネクタ

電極と電極を電気的につなぐ金属やセラミックスの板であり、ガスの流れを分ける役割もします。一般的には、クロムやマンガンなどの金属酸化物や合金が使われます 。

SOFCのその他情報

1. SOFCのメリット

SOFCのメリットは、主に以下の3つです。

発電効率が高い
SOFCは、高温で動作するため、熱エネルギーの損失を減らし、発電効率を高めることができます。一般的に、SOFCの発電効率は、50%から60%程度です。これは、一般的な火力発電や内燃機関の発電効率 (30%から40%程度) よりも高いです。

また、SOFCは、コージェネレーションやエネファームなどのシステムと組み合わせることで、発電効率をさらに高めることができます。

排出ガスが少ない
SOFCは、水や二酸化炭素以外の排出ガスがほとんどありません。特に、窒素酸化物や硫黄酸化物などの有害な排出ガスが発生しません。

また、SOFCは、二酸化炭素の排出量も低く抑えることができます。これは、SOFCが高い発電効率を持つため、同じ発電量を得るために必要な燃料の量が少ないからです。

多様な燃料
SOFCは水素だけでなく、一酸化炭素やメタンなどの水素含有ガスも燃料として利用できます。これは、他の燃料電池と違い、イオン化した酸素が燃料極に移動して反応するからです。

2. SOFCのデメリット

SOFCのデメリットは、主に以下の2つです。

高温で動作する必要がある
SOFCは、高温 (800℃から1,000℃) で動作する必要があります。このため、起動・停止時間が長くなる、部品・材料の劣化や破損が起こりやすい、冷却システムが必要、などの課題があります。

高価
SOFCは、高価な材料や製造技術を必要とします。特に、電解質や電極などの部品は、高温で動作するため、高品質で耐久性の高い材料が必要です。

また、SOFCは、複雑な構造を持つため、製造技術も高度です。これらの要因により、SOFCは、他の種類の燃料電池に比べて高価となります。

ガラスエポキシ基板

ガラスエポキシ基板とは

ガラスエポキシ基板

ガラスエポキシ基板 (英: Glass epoxy board) とは、プリント基板 (英: Printed circuit board) の1種です。

プリント基板は、絶縁体の基板の表面または内部に配線だけを配置したもので、基板上に電子部品を実装して電子回路を製作するための基本的な部品です。プリント基板には、柔軟性を持たない硬質な材料を用いたリジット基板と柔軟性を有する薄い材料を使ったフレキシブル基板があります。

ガラスエポキシ基板は、リジット基板の1種です。布状にガラス繊維を重ねてエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ材で作られています。

ガラスエポキシ基板の使用用途

最も一般的なプリント基板は、ガラスエポキシ基板です。電気的特性や機械的特性に優れており、両面基板や多層基板として使用されるほとんどのプリント基板がガラスエポキシ基板となっています。

ガラスエポキシ基版は耐久性、断熱性、難燃性、低導電率などに優れています。そのため、パソコンや民生用電子機器、OA機器、ICカード、デジカメ、マザーボードなど、高周波数動作や高信頼性が要求される回路に使用可能です。

ガラスエポキシ基板の原理

プリント基板は、ベースとなる銅張積層板 (英: Copper Clad Laminate) 、回路パターンを形成する銅箔、基板表面保護用インク (ソルダーレジストインク) から作られています。

ガラスエポキシ基板は、銅張積層板としてガラス繊維製の布にエポキシ樹脂を加えたガラスエポキシ材で構成されています。

ガラスエポキシ基板の種類

プリント基板の種類には、銅張積層板を構成する基材によって、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板などがあります。FR (英: Flame Retardant) グレードと呼ばれる規格によって、プリント基板の耐熱性や難燃性を分類可能です。

一般的なガラスエポキシ基板はFR-4に分類されており、FR-4基板と呼ばれます。FR-4基板は高周波特性や電気的特性が良く、耐久性、吸湿性、難燃性が高く、低誘電率などの長所がある一方で、吸湿性が高くて加工性が悪いなどの短所もあります。

さらに、ガラスエポキシ基板にはFR-4より耐熱性の高いFR-5に分類されるタイプもあり、FR-5基板は高耐熱性が要求される車載用途などに応用可能です。

ガラスエポキシ基板の構造

ガラスエポキシ基板などのリジッド基板には、材質として紙やガラス布がベースの基板があり、ベースになる樹脂にもエポキシ樹脂やフェノール樹脂があります。ガラスエポキシ基板の回路層ごとの構造の種類は、片面基板、両面基板、多層基板に分けられます。

1. 片面基板

片面基板は配線パターンが片面だけに形成されて、電子部品が実装されています。ガラスエポキシ基板の場合には上から構造が、ソルダレジスト、銅箔、ガラス布の順番になっています。

2. 両面基板

両面基板は配線パターンが両面に形成されています。上から構造は、ソルダレジスト、銅箔、ガラス布、銅箔、ソルダレジストです。基材であるガラス布が中央に位置し、片面基板の構造が両面にあります。両面基板の場合にはビアやスルーホールなどの穴を施すと層間に電流が流れたり、リード部品を挿入できたりします。

3. 多層基板

多層基板は絶縁体とパターンを4層以上重ねた基板です。基本的には、両面基板と同じような構造です。銅箔、ガラス布、銅箔が中央にあり、層を積み重ねると銅箔が増えてソルダレジストで覆っています。

ガラスエポキシ基板の選び方

プリント基板は材質によって吸湿性や耐熱温度が違うため、コストを下げるのに安価なプリント基板を選ぶと使用用途に合っていない可能性があります。用途に合わないプリント基板を使うと、電子機器が安定して作動しなかったり、燃焼事故が起きたりする場合もあります。

材質の耐用年数や耐熱温度を比べて、使用用途に合った材質を選ぶことが重要です。精密なプリント基板の場合には、製造時や表面実装時の取り扱い方や保管方法も確認する必要があります。

フローセル流量計

フローセル流量計とはフローセル流量計

フローセル流量計とはオリフィス流量計の一種で、水や空気が流れている配管にオリフィスを設置することによって差圧を発生させ、発生させた差圧を支流内に設置したフロートの指し示す値を計測することによって流量を測定します。

オリフィス流量計は他の流量計と比較して構造が単純で取り付けが容易ですが、配管内でオリフィスによる圧力損失が発生すること、水や空気を想定して設計されているため、粘度が大幅に異なる物質の測定には不向きであることが課題です。

フローセル流量計の使用用途

フローセル流量計は機械内の配管の流量計測及び制御を目的として使用されます。

コンパクトで水や空気を対象とした測定であれば校正が不要、ストレーナ等を用いることで流れを止めずにメンテナンス可能といったメリットがあるため、高い精度が求められない環境で主に使用されます。

単純な構造のものでは流量確認の際、流量計内のフロートの位置を直接目視しますが、必要に応じてデジタル表示のもの、設定範囲を外れると警報を発生させる装置も販売されています。

フローセル流量計の特徴

フローセル流量計は配管内に設置するオリフィスプレート及びフローメーター部分で構成されています。

流体が配管内のオリフィスプレートに接触すると差圧が発生し、差圧の大きさに応じて支流であるフローメーター部分に流れ込みます。

フローメーター部分に流れ込んだ流体はフロートを差圧に応じて押し上げるため、その変化量を求め、ベルヌーイの式に当てはめることによって流量を測定します。また、測定に使用された流体に関しては戻り管を通して配管本流へと戻されます。

配管内で発生する差圧とフローメーターで観測可能な差圧はほぼ等しく、それぞれの管への流量は比例するため、フローメーター内の流量を求めることで配管内の流量の導出が可能です。

フローセル流量計は常温の水または空気を基準としているため、流体の種類によっては補正が必要です。また、温度変化に伴う測定値変化を補正するため、熱線センサーが取り付けられた製品も存在します。

リン酸型燃料電池

リン酸型燃料電池とは

リン酸型燃料電池 (英: Phospheric Acid Fuel Cell)とは、電解質にリン酸水溶液を用いる燃料電池のことです。

都市ガスやLPガスを改質して得られる水素を燃料として、発電を行う装置です。固体高分子型燃料電池と同様に1970年代という比較的古くから開発が行われ、早期に製品化されたことから他の燃料電池と比較して実績や信頼性の面で優れています。

一方、他の方式と比較して単位体積当たりの発電効率に劣ること、白金触媒を用いているため比較的高コストなのがデメリットです。また、基本的に200℃程度の高温で動作させますが、低温で動作させる場合は一酸化炭素による被毒に注意が必要なことなどが課題として挙げられます。

リン酸型燃料電池の使用用途

ガス切り替えによる発電

図1. ガス種を切り替えて発電する仕組み

リン酸型燃料電池は、信頼性と耐久性の面では非常に優れている燃料電池です。そのため、病院、ホテル、オフィスビル、下水処理場などに導入された実績が既にあります。弱点である発電効率の低さをカバーするため、据置型の電源として主に用いられます。

燃料電池パッケージには、燃料電池本体のほか、発電した直流電流を交流電流に変換するインバーター、燃料を水素に改質する改質装置、冷却装置、制御装置が含まれます。100kW程度の発電力を持った製品が実用化されており、都市ガスや工場運転に伴う副生成物である炭化水素を改質した水素を供給することによって発電を行う仕組みです。

発電は200℃程度の高温で行われますが、多くの製品では排熱を温水プール等の熱供給源として使用する、コジェネレーションシステムの仕組みが取り入れられています。今後、都市ガスやLPガスから改質した水素だけでなく、各工場から副生成物として発生する水素を利用して発電することで、よりコストを下げることが期待できます。

また、ガスを水素に改質して発電するため、災害などにより都市ガスかLPガスのどちらかの供給が停止しても、ガス種を切り替えて発電を継続することが可能です。

リン酸型燃料電池の原理

発電の仕組み

図2. リン酸型燃料電池の発電の仕組み

リン酸型燃料電池は、水素が酸化され水が生成する際に発生する化学エネルギーを電気に変換することによって起電力を得ます。

1. 天然ガスの改質

原料に都市ガスを使用する場合、脱硫及び水蒸気改質、一酸化炭素の酸化のプロセスを経て高純度の水素が燃料極に供給されます。脱硫は、Ni, Mo系などの脱硫触媒を用いて天然ガス中の硫黄分を反応性の高い硫化水素 (H2S) に変換し、酸化亜鉛 (ZnO) で吸着除去する方法です。

脱硫した蒸気を、触媒の存在下で水蒸気と反応させることで、水素と一酸化炭素になります。触媒はニッケル系や、ルテニウム系のものが用いられます。この反応は吸熱反応のため、熱の供給が必要です。一般的には、余剰水素を燃焼させた熱を利用します。

ここで生じる一酸化炭素は白金触媒の被毒 (触媒の反応サイトに吸着し、触媒反応効率を低下させること) を引き起こす物質ですが、200℃付近で動作させるため固体高分子型燃料電池よりも一酸化炭素の許容濃度が高いです。

2. 発電

燃料極に供給された水素は白金触媒下で酸化されて水素イオンと電子となり、電解質であるリン酸水溶液中へと供給される一方、空気極側では空気中の酸素が電子を受け取り水素イオンと反応し、水が生成します。この時電子が外部回路を移動するため、電力を取り出すことが可能です。

この電池によって得られる起電力は、1.23Vとリチウムイオン電池等と比較すると低くなっています。一般的に施設用電源として用いるには200V程度の電圧が必要なため、複数のセルをスタックして使用します。

リン酸型燃料電池の構成

電池の構成

図3. リン酸型燃料電池の構成

燃料極はリン酸で腐食されにくく、気体を通しやすい多孔質のカーボンを用います。電解質はリン酸水溶液を用います。

電解質を燃料極、空気極が挟み込み、セパレータで各々のセルを隔てる構造です。また、燃料極及び空気極には白金触媒が担持されています。