フローティングナット

フローティングナットとは

フローティングナットはタップの位置をある範囲内で自由に動かすことができ、固定する部品同士の中心がずれていてもねじを締めることができるナットのことを言います。

基本的には板金のような薄板に穴をあけるだけで専用工具を使うことなく取付が可能で、タップの動く範囲は中心値±2mm以下程度です。バネ構造をもち、幅広い板厚に対応できるナットもあり、着脱可能なので、外して別のところで再利用することも可能です。

フローティングナットの使用用途

産業用機械の内部およびパネル取付部などで使用されています。特に寸法精度がでにくい部品同士、もしくは公差の累積によりタップ位置の調整が必要な箇所で効果を発揮します。タップ位置を調整できるため、精度が必要な箇所へのタップ追加工の代わりに使用されています。また、薄物板金やアルミなど強度が弱い部品に対してねじ止めする際にタップを強化するために使用されることもあります。

タップの位置が安定しないため、部品間の位置精度が必要な箇所にはむきません。

フローティングナットの原理

丸穴を空けるだけでタップ機能を持たせることができます。おねじのタップ加工がなくなり、部品の加工時間を短縮することができます。また、位置調整が可能なため、穴加工の位置精度も不要です。ただし、フローティングナットの部品代は100円を超えるものが多く、単純なタップ加工よりは高価になるため、費用対効果を考慮する必要があります。

取付方法によってさまざまな種類がラインナップされています。クリップやフック、ラックと呼ばれる横方向にはめ込むタイプだけでなく、角穴に押し込み固定するケージと呼ばれるタイプもあります。クリップ系のフローティングナットはクリップが外れる方向への力に弱いので取付箇所には注意が必要です。また、かしめによりとりつけるセルフクリンチングタイプのフローティングナットもあります。

材質はステンレスや鉄材+めっき品などがあり、基本的には並目ネジに対応しています。

参考文献
http://www.japan-drive-it.co.jp/flo-flo.html
https://neji-one.com/lineup/6R001289.htm

フランジカバー

フランジカバーとは

フランジカバーは配管に取り付けるカバーの一種で、その中でもフランジ部分に取り付けるカバーになります。

プロセス配管やユーティリティ配管には加熱冷却している配管があります。それらを保温するために保温材取り付けとラッキングを行います。このラッキングを行うとき、フランジに取り付けるカバーをフランジカバーと呼んでいます。

取り付ける際は板金加工にて取り付けを行います。主に材質は亜鉛鉄板、ステンレス、アルミなどを使用します。

フランジカバーの使用用途

ラッキングを行う際には取り付ける対象によって種類が変わります。例えばフランジカバー、バルブカバー、フレキカバー、Yストカバー、エルボカバー、ジャケットです。

フランジカバーの取り付けにはサヤ式、バックル式、ビス止めの3種類があります。サヤ式はカンザシとも呼ばれます。ビス止めはカバー同士を差し込んでそれらが外れない様にビスで止めます。サヤ式はカバーの先端がそれぞれ外側に向いており、それらにサヤと呼ばれる板を差し込むことでカバー同士が外れない様にしています。

フランジカバーの原理

フランジカバーは板を板金加工することで作成します。基本的にフランジカバーは二つの半月型カバーを組み合わせることで作られます。

まず胴体部分を一枚板から切り取ります。これの辺部分を折り曲げることで差し込み先を作成します。側面部分も同様に半月型の板に切り取ります。胴部分を丸い形に曲げて側面部分を差し込むことでフランジカバーができます。

フランジカバーを取り付ける際はまず配管の周りに断熱材を巻きます。断熱材にはグラスウールなどがあります。断熱材の上から半月型のフランジカバーを巻き付けます。その後サヤやビス止めなどを用いてカバーが外れないように固定します。

カバーにはオスとメスがあります。それぞれ鍵の形をしており、オスとメスがそれぞれはめ込まれることで釣り針の返しの様になっており、カバーが外れないように合っています。カバー同士をはめ込む際には外れなくて良いですが、外すときは少し鍵を緩めないと外れない様になっています。 

参考文献
https://sakaishokai.com/product/racking/
http://www.yuuwasyoukai.co.jp/service/%E5%A4%96%E8%A3%85%E6%9D%90/
https://search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%80%80%E4%BD%9C%E3%82%8A%E6%96%B9&x=wrt&aq=&ai=&ts=2656&ei=UTF-8&fr=crmas

フラッパーゲート

フラッパーゲートとは

フラッパーゲートとは、駅の改札やビル内の関係者以外立ち入り制限区域の境界に設けられている、開閉する小さな扉によって人の立ち入りを管理するゲートのことです。

フラッパーゲートは、一般の人が往来するエリアと許可された人だけが立ち入りすることができるエリアの境界線に設けられていて、認証システムを使って自動で一人一人毎にその人が制限エリア内に立ち入り可能か否かを識別し、立ち入り許可者が来た場合にのみ扉が開きます。

ゲートの鍵として使われるのは、ICカードやFeliCa対応のスマートフォンを始め、指紋認証や顔認証など様々です。

フラッパーゲートの使用用途

フラッパーゲートは多人数の出入りがあり、且つ一人一人の立ち入りを正確に管理する必要がある場所で使用されています。フラッパーゲートは、一人一人の立ち入りや退出を自動で管理し、部外者の侵入を阻止し、立ち入り者の記録を残すことが可能です。そのため、セキュリティゲートと呼ばれることもあります。

駅の自動改札では、不正乗車や不正入場の防止と共に、ラッシュ時の混雑緩和に貢献しています。

オフィスビルや工場などの特定エリアへの出入り口では、セキュリティー対策として設置されており、勤怠管理システムと連動させて従業員の勤怠管理として利用されるケースもあります。

スポーツクラブなど会員制商業施設に設置されたフラッパーゲートは、会員の入場手続きを簡素化すると共に、データは顧客の動向把握に使われます。

臨時のイベント会場では、多人数の来場者に備えて移動可能なフラッパーゲートが設置されることがあります。

フラッパーゲートの原理

フラッパーゲートは、ゲート (門) の通り抜け部分にフラップと言われる観音開きの仕切り板が設けられていて、ゲートを通り抜けようとする人が通行許可者であると判断された場合に、フラップにつながるモーターが回転してフラップが前方に開きます。

このため、フラッパーゲートは、通行人を識別するための何らかの認証システムを併用します。自動改札の場合には、ICカード読み取り機と磁気式の切符読み取り機が付随しています。オフィスビルなどのフラッパーゲートでは、事前に発行されたICチップ内蔵の社員証や、ゲートの外の有人受付で発行してもらった通行許可証を所持していれば、それをセンサーにかざしてゲートを通過できるようになります。また、顔認証などの生体認証システムを使用したフラッパーゲートもあります。

フラッパーゲートには、監視カメラとアラームが設置されており、不正入場者の侵入を阻止し、ゲートの不正通過を警備員室などで監視できます。

フラッパーゲートの選び方

フラッパーゲートを選択する際には、ドアの構造、デザイン、認証システムの選択と他のシステムとの連携などを検討すると良いでしょう。

1. ドアの構造

フラッパーゲートのドアの構造は、フラップ (フラップバー) 式の他にアーム (回転式) があります。アーム式は回転扉のように、三又状のアームの回転に沿って、一人一人が通行して行きます。アーム式の方が複数が同時に通る共連れによる不正侵入をより確実に防止できます。逆に、同じ時間あたりに通過できる人数は、フラップ式の方が優れています。

2. デザイン

フラップゲートは、扉や通行レーン間の仕切りを透明の樹脂で作り、外側と内側との視界を確保すると同時に、見た目のものものしさを抑えたものが多くあります。施設の玄関に当たる部分に設置される設備ですので、その場の雰囲気に合ったデザインや色を選択するのも重要です。また、設置場所によっては車椅子の人が通行できるレーンを確保する必要もあります。

3. 認証システムの選択と他のシステムとの連携

フラップゲートは殆どの場合、本人認証のためのシステムと一体となって動作します。オフィスビルなどで、既に部屋の出入り口に何らかの認証システムを使用している場合や、社員証を始めとするIDカードにICチップ内蔵のカードを使用している場合などは、それらと共通性を持たせた認証システムが合理的です。

またこの認証システムは、勤怠管理システムや、顧客管理システムなどとデーターの連携を持たせることができれば、セキュリティ管理の他にも、勤怠管理業務の合理化や売り上げ増大のために活用できます。

参考文献
https://businesschatmaster.com/office/flapper-gate

ピペッター

ピペッターとは

様々なピペッター

図1. 様々なピペッター

ピペッターとは、ホールピペットやメスピペットなどのピペットに取り付けて溶液を吸い上げ・吐出するピペッティング動作を行う器具のことです。

あるいは、それ自身が吸い上げ機能を持つピペットのことを指す場合もあります。ピペッターには、手動式の安全ピペッターやピペットポンプ、電動ピペッターなどがあります。

最近では、ボタン操作だけで手元のダイヤルでピペット量を設定し、ワンプッシュで吸引、ワンプッシュで吐出できる電動ピペッターが主流です。

ピペッターの使用用途

ピペッターは、化学・バイオロジー分野全体において、一定量の液体を吸引して計量したり他の容器に吐出したりする、ピペッティング動作全般に用いられます。

使用する液体の例は、溶媒・溶液・試料・培地・添加剤などです。1mL以下の微量液体の注入には、マイクロピペッターなどもよく使われています。

ホールピペットやメスピペットは、古くは口で溶液を吸い上げる方法で使用されていました。しかし、薬品、特に有害物質をピペットやメスピペットなどを使って口で吸引することは危険であることから、現在では代わりとしてピペッターを使用するのが主流です。

手動式、自動式ピペッターは先端のチップのみが接液し、触れることなくチップを外すことができるので、有機物などを一定量吸引・吐出する際に使用されています。

ピペッターの原理

安全ピペッターの使用方法

図2. 安全ピペッターの使用方法

ピペッターの一つである安全ピペッターは、メスピペットなどに取り付けて使用する手動式のものです。空気吸入バルブを押し、ゴム球を凹ませ、液吸入バルブを押して液体を吸い上げ、排出バルブを押して液を排出することができます。

使用方法は下記の通りです。 (図2参照)

  1. Aを押しながら、大きなゴム球の中の空気を抜く
  2. ピペットを差し込む
  3. ピペットの先端を溶液につけ、Sを押して試料を多めに吸い上げる
  4. Eを押して、目盛りに合わせる
  5. ピペットの先端を吐出したい容器に合わせて、Eを押して液を吐出する
  6. ピペットの先端に少し液が残るため、Eの先にある穴を塞ぎながらゴム球を押して吐出する

ピペットポンプは、ピストンの上下により空気を出し入れする構造で、上下する距離をダイヤルで細かく調整し、出し入れする空気量を細かく調節できるので、液体量を細かく正確に調節することが可能です。

電動ピペッターは、一連の動作をモーターを用いることにより省力化しており、ボタン操作で済むようになっています。現在出回っているほとんどの製品の動力は充電式です。ただし、充電時間や充電中に使用できるかどうかは製品によって異なります。

通常のピペットは薬品を変えるたびに洗浄、乾燥させる必要がありますが、手動および電動ピペッターを使うと、接液する先端のチップ・ピペットの交換だけですぐに違う液体の注入が可能です。先端のピペットに触れることなく外すことができる構造になっているため、有害物質が体に付着する危険性がなくなり、作業性だけでなく安全性も向上します。

ピペッターの選び方

ピペットを装着したピペッター

図3. ピペットを装着したピペッター

ピペッターにはそれぞれ特性があるため、自分の実験用途・目的にあった適切なものを選ぶことが重要です。

まず、自分の使用したい実験系において1回のピペッティングで扱う液量を明らかにします。1mL未満になるようなスモールスケールの場合はマイクロピペットが適切な場合がありますし、100mLを超えるような場合はメスシリンダーが適切です。その上で、安全ピペッター、ピペットポンプ、電動ピペッターのいずれが好ましいかを選定します。

電動ピペッターで扱えるメスピペットの大きさは、多くのもので下限が0.5mLまたは1mL、上限が100mLです。ピペットポンプには、2mL用、10mL用、25mL用などの種類があります。また、充電時間や充電中の使用可否、吸引・吐出速度などが製品によって異なるので注意が必要です。

正確な実験データを得るため、製品選定の際には、コンタミネーション防止の観点からも製品を検討することが必要です。キャップやフィルターが洗浄しやすい構造になっているものを選ぶことが望ましいと考えられます。また、バイオロジーの実験では、キャップやフィルターなどがオートクレーブ可能なものを選ぶことが推奨されます。

テープスイッチ

テープスイッチとは

テープスイッチは名前の通り厚みが薄いテープ状のスイッチで、感圧スイッチなどとも呼ばれます。

内部に上下2枚の薄型電極が入っていて、厚み方向も力が加わると電極の接点がつながり通電するようになっています。厚みが薄いことに加えて長さがあるためどこを押しても感知します。反応しやすくするため表面は突起があるものが多いです。同様の構造をもつもので面積の広いものはマットスイッチと呼ばれます。

数cm~数mの長さで使用できるものがあり、ユーザーが任意の位置で切断できる製品もあります。検知できる範囲が広いため様々な用途に使えます。薄型で自由に曲げられるため曲面に対応した製品が多いのも特徴です。軽量なため両面テープで簡単に取り付けられます。防水処理を施したタイプは水のかかるところや屋外で使える製品もあります。

テープスイッチの使用用途

人や車両が通過したことを検知できるため、通路や窓枠に設置して防犯などの用途で使えます。

工場や大型設備の非常停止装置としての用途では、侵入しては危険なエリアに設置してテープスイッチが侵入感知したら設備停止させるなどの使い方ができます。薄型なので複数設置しても邪魔になりにくいです。類似の用途としてはドアや扉、自動シャッターなどの挟まれ検知、開閉検知にも使用されます。

無人搬送車両などのバンパーに設置して、稼働中に何かと接触したときの緊急停止装置として使えます。

病院や介護施設では患者さんがベッドなどから降りてしまったことを検知するために使われます。テープスイッチとナースコールなどを連動させて知らせたりします。曲げに対応した製品が多いため、ベッドの手すりなどの曲面に取り付けることが可能です。

各種装置の足踏みスイッチとして使用することも可能です。省スペースなので複数設置に便利。動作荷重を選べるので、立ち作業、座り作業など必要な合わせてON・OFF感知する荷重を選べます。

テープスイッチの原理

テープスイッチの構造は、電極2枚とその間の絶縁体、外側をビニール外装(塩ビ系など)で覆われています。強度を確保するためにビニール外装と電極の間にナイロン繊維で包まれているものもあります。外装のビニール素材を工夫して高温・低温環境、耐薬品性をもたせた製品もあり使用する環境に合せて選ぶことができます。

動作原理は、テープ内の上面と下面に薄い電極が入っていて、の厚み方向に荷重がかかったときに上面の薄型電極が湾曲することで下面の電極と接触し導通します。電極間には絶縁体が挟まれているため荷重のかかっていない時は導通しません。2枚の電極はテープ内の端から端まで入っていて、末端を除いてどこを押しても作動するようになっているので長い面に設置することができます。2枚の電極からはリード線が出ており各種装置と接続して使用します。2線式と4線式があり、用途に合わせて選びます。

面積の広いマット状のシート内に何本かテープスイッチを入れたタイプのマットスイッチもあり、広い範囲で検知できる製品もあります。

参考文献
(1) センシングエッジ (https://ojiden.co.jp/sensingedges/)
(2) テープスイッチジャパン 各種スイッチ (http://www.tapeswitch.co.jp/other/)
(3) テープスイッチ・マットスイッチ (http://www.sunnyltd.co.jp/)

ハイドロゲル

ハイドロゲルとは

ハイドロゲルとは、高分子などの固体が水を吸い込んで膨潤し、流動性がない形態(ゲル)となった物質の総称です。例えば、多糖類やゼラチンなどの高分子鎖が架橋されて三次元網目構造をとると、網目構造のなかに多くの水を含んで膨潤体となり、水に溶けることのできない状態になります。具体的な例として、こんにゃく、寒天や、ゼリーなどが挙げられます。

ハイドロゲルのイメージ

図1. ハイドロゲルのイメージ

ハイドロゲルの使用用途

ハイドロゲルは豆腐、寒天など食べ物に含まれるほか、ソフトコンタクトレンズや紙おむつの吸収体(高吸水性高分子)などでも使用されています。組成が生体軟組織に類似していることから、近年は医用材料としての利用法が模索されていますが、体内の水分を吸収することで特性が失われてしまう点などは解決すべき課題です。

具体的な例としては、人工軟骨や人工椎間板としての利用や、薬を徐放する素材としての利用、また、再生医療分野では、細胞の足場素材としての利用法が模索されています。ハイドロゲル上で細胞を培養したのち、還元剤によってゲルだけを溶解することで、細胞同士がくっついた細胞シートを作成し、損傷部に貼りつけて治療を行う方法に用いられます。

ハイドロゲルの原理・物性

1. 物理ゲルと化学ゲル

ハイドロゲルは架橋方法によって物理ゲルと化学ゲルに分類されます。

  • 物理ゲル
    水素結合やイオン結合、配位結合などで架橋されたもの
  • 化学ゲル
    共有結合で架橋されたもの

具体的な例では、寒天やゼラチンなど、熱によって可逆的にゾル-ゲル転移するものは物理ゲル、紙おむつの高吸水性高分子やソフトコンタクトレンズなどの化学的に安定なものは化学ゲルです。

2. ゲル化の例

アルギン酸ナトリウムのゲル化の例

図2. アルギン酸ナトリウムのゲル化の例

よく知られているものに、天然高分子であるアルギン酸があります。アルギン酸のナトリウム塩は水溶性を呈しますが、Ca2+などの多価陽イオンを加えると、瞬時にイオン架橋が起きます。この際、架橋の網目構造に溶媒の水を取り込み、ゲル化(ハイドロゲル化)します。

ハイドロゲルの種類

図3. HEMAなどの従来素材の場合

HEMA (ヘマ:ヒドロキシエチルメタクリレート) は、水分を含ませると軟らかくなることから従来のソフトコンタクトレンズで使用されてきました。含水率を上げると酸素透過性が高まることから、含水率を高める試みや、レンズの厚さを薄くする工夫が行われてきました。しかし、含水率を高くすると水分が蒸発しやすくなるため、装用中に目が乾燥しやすくなり、技術開発には限界があるとされてきました。

図4. シリコーンハイドロゲルの場合

そこで、HEMAの課題を解決する新素材として、近年、シリコーンハイドロゲルが注目されています。シリコーンハイドロゲルは低含水率でありながら、高酸素透過性を示す素材です。酸素が直接コンタクトレンズを通るため、レンズ内の水分量に依存することなく、多くの酸素を届けることができ、目の負担を軽減できるというメリットがあります。

これまでコンタクトレンズで問題となってきた、角膜の角膜内皮細胞の減少などを軽減する効果が期待されています。また、含水率が低いため、レンズの装用中に目が乾燥しにくいことも良い点です。更に、シリコーンハイドロゲル素材の方が涙の中に含まれるたんぱく質が付着しにくく汚れにくい特徴も持っています。

しかし、親油性が高いので一度油分がついてしまうと落ちにくいとも言えます。そのため、アイメイクなど油分が付着しないように注意しなければなりません。課題は、低含水率故にHEMAよりも堅い素材であることであり、つけ心地を向上させる技術開発が行われています。

参考文献
https://med.m-review.co.jp/article_detail?article_id=J0027_1103_0057-0059
https://www.menicon.co.jp/whats/column/detail6.html
https://alcon-contact.jp/eyenavi/siliconehydrogel.html

ノッチフィルタ

ノッチフィルタとは

光学フィルタ

ノッチフィルタとは、特定の波長帯域の光のみをとても低いレベルにまで減衰 (遮断) させ、それ以外の波長帯域の光は高い透過率を示す光学フィルタです。

ノッチフィルタは、バンドストップ、または、帯域防止フィルタとも呼ばれています。一般的にバンドパスフィルタは、特定の波長帯域の光のみを透過させる時に使われ、ノッチフィルタはこの逆 (特定帯域の光のみを透過させない) の機能を有するわけです。

ノッチフィルタの使用用途

ノッチフィルタは、単一波長のレーザー光に含まれる励起光の除去などで使用されています。レーザーは、一般的に励起光により発振して、高強度で高出力を得ることができる装置です。

単一波長の光を放出しますが、励起光が混ざってしまうことがあります。ノッチフィルタを、レーザーで発振した光を取り出し、励起光を遮断する目的で使用することも可能です。

また、レーザーを用いた分析科学装置であるラマン分光や蛍光分光においても、ノッチフィルタが活躍します。励起光源などの光をカットして、測定したいラマンスペクトルや蛍光スペクトルのみを検出することで、バックグラウンドの少ない測定が可能となります。

ノッチフィルタの原理

ノッチフィルタは、光学研磨されたガラス基板に屈折率の異なる誘電体を多層重ねた誘電体多層膜を形成しています。誘電体多層膜は光を吸収せず、各層間の屈折率差から、反射や干渉をおこし、特定帯域の光を遮断できます。また、入射角や偏光 (S偏光やP偏光) によって透過率が変わるのが特性です。遮断中心波長は入射角が大きくなると短波長側にシフトします。

誘電体多層膜を構成する材料は、高屈折率材料 (屈折率2~2.5) として酸化チタンやタンタル、低屈折率材料 (1~1.5) として酸化シリコンやフッ化マグネシウムなどです。真空中で蒸着させる、または電子ビームを誘電体にあてて蒸着させることで、成膜できます。

誘電体多層膜や反射防止ARコートなどによりフィルタの表面は非常に強固になり、傷にも強くなる特徴があり、時間や温度、また湿度による性能劣化を抑えることが可能で、特定波長領域以外の透過率を高めることもできます。また、入射方向が決まっており、一般的にフィルタの縁に矢印のようなマークが記載されています。矢印の先の方から入射するか、矢印に沿って入射するかはメーカーによって違うため、事前に確認が必要です。

ノッチフィルタのその他情報

ノッチフィルタの性能を表す用語

ノッチフィルタの性能を規定するための以下の用語は、ノッチフィルタを選定する上で、必要となります。

1. 光学密度</br /> 光学密度 (OD) により、ノッチフィルタが特定波長のレーザー光をどの程度遮断できるか分かります。OD=6は透過する割合が10のマイナス6乗すなわち透過率が0.0001%を示し、OD値が大きいほど遮断率が高いということです。

しかし、OD値が高いものほど、光学であり、ブロッキング領域が広がる傾向にあるため、事前に使用するレーザーの強度からどれくらいカットする必要があるのかを確認し、遮断に十分なOD値を知っておくことで適切なOD値のノッチフィルタを選択できます。

2. 中心波長
中心波長とは、光がノッチフィルタを透過しない波長領域の中心で、OD値が最大の波長のことです。ノッチフィルタの用途は主にレーザーのブロッキングが目的であるため、市販のノッチフィルタの多くは、中心波長が使用頻度の高いレーザーの波長に合わせた設計となっていることが一般的です。特注で中心波長を選んでノッチフィルタを製作するメーカーもありますが、市販のものより高額になります。

3. ブロッキング領域
ブロッキング領域とは、ノッチフィルタによって、光が遮断される波長領域のことです。光が透過しない領域の半値全幅により規定されます。ノッチフィルタは、一般的にブロッキング領域の外側の波長領域での透過率が高く設定されており、離れると透過率が下がるものもあります。そのため、幅広いスペクトル測定の際に、ノッチフィルタを通すと、目的の光が通らないという問題があるため、事前に測定波長範囲での透過率スペクトルの確認が必要です。

参考文献
https://www.thorlabs.co.jp/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=3880

ダイオードアレイ

ダイオードアレイとは

ダイオードアレイは、光検出器の一つであるフォトダイオードをアレイ上にならべて同時に複数の位置での光量を検出できる光検出器です。

使用される材料によって検出できる光の波長が変わり、可視域でもっともよく使われているのはシリコンをつかったダイオードアレイで190nm~1100nmまで検出できます。ゲルマニウムインジウムガリウム・ヒ素をつかったものもあり、硫化鉛を材料とするダイオードは赤外域(~3500nm)まで検出することができます。

波長軸方向にアレイを並べることで同時に多波長測定をすることができます。

ダイオードアレイの使用用途

光の位置検出、CCDカメラのようなイメージング、分光光度計や液体クロマトグラフィーの検出器部などで用いられています。

ストライプディテクタと呼ばれ、基板上に数μmから数十μmのストライプ状に受講部をもったダイオードアレイを使うことで、ミクロン単位で位置検出が可能になります。

1つのフォトダイオードを検出器としてもち、1つの波長データが出力される分光器をモノクロメータ、ダイオードアレイにより複数の波長データを同時に出力できる分光器をポリクロメータとよびます。

ダイオードアレイの原理

CCDカメラやCMOSカメラのように、1次元もしくは2次元のイメージング検出を行うことができるダイオードアレイを使った検出器は同時に複数の波長で吸収を測定することができるので、どの波長で吸収が起こるかわからないサンプルや同時に複数の波長で反応が起こるサンプルなどの変異を同時に測定することができます。

ダイオードが1つの場合は、変異する波長を特定する作業を行ってから変異をみる必要がありますが、ダイオードアレイを使うと、変異する波長の特定と実際の変異工程を同時に検出することができます。

ダイオードアレイを構成するダイオードは光電子増倍管などにくらべて受光感度はおとりますが、検出器としてとても安定しており、検出可能な波長範囲が広いといった特徴をもっています。また、高感度化可能なアバランシェフォトダイオードアレイを使うことで高感度化を実現することができるため、さまざまな計測器に搭載されています。

参考文献
https://www.hamamatsu.com/jp/ja/product/optical-sensors/photodiodes/si-photodiode-array/index.html

クリーンベンチ

クリーンベンチとは

クリーンベンチは、ホコリや浮遊微生物などの混入を防ぐために洗浄度を保つ囲い付き作業台のことを言います。フィルタに通すことで洗浄された空気が対象物に当たるようにすることで局所的に高い洗浄度にすることができます。

HEPAまたはULPAフィルタなど高性能なエアフィルタや送付機、照明などに構成されています。JIS B9922によって構成や性能、試験方法が規定されています。また、防爆構造のクリーンベンチはJIS C 0903に規定されています。

クリーンベンチの使用用途

クリーンベンチは微生物や細胞などをはじめ、外から菌や遺物の混入を避けたいものを取り扱う際に使用されます。

例えば、医薬の分野では微生物や細胞の培養、医薬品の調整など、産業分野では、半導体や液晶など精密さが要求される電子部品などの作製時に使用されます。

空気の吹き出す位置は正面と天井の2種類あり、正面から吹き出す場合は、作業者や器具の周辺に空気が滞留し、洗浄度が下がってしまう可能性があるため、生物の培養などの無菌作業には天井から送風するタイプが使用されています。

通常は囲いが付いたクリーンベンチがほとんどですが、囲いがないタイプのクリーンベンチもあり、作業性改善に貢献しています。

クリーンベンチの原理

クリーンベンチは、ホコリや浮遊微生物などの混入を防ぐためにベンチ内を陽圧(ベンチ内の圧力を外気の圧力より高くする)にすること外から中への空気の流れを遮断し、HEPAフィルタなど高性能な粉塵除去機能をもったフィルタにより洗浄された空気だけを中に取り込む仕組みになっています。一般的には、99%を超える集塵効率をもっています。

クリーンベンチの構造はJIS B9922にて細かく規定されています。例えば、壁面の剥離や錆びがないことに加えて、メインとなるエアフィルタはHEPAもしくはULPAでなければなりません。また、酸や有機・有毒ガスを扱う場合は所定の経路から排気できる構造を持つことや、照明灯と殺菌灯は協定がない限り同時に点灯してはならないなどが明記されています。

性能については定格風速が0.3~0.6m/sと定められており、平均風速が定格風速の±20%であることや洗浄度はクラス1~8などがあるが、「特別仕様の作業空間の場合は,風速は受渡当事者間での協定によってもよい」とも明記されています。

クリーンベンチのその他情報

1. HEPAフィルター

High Efficiency Particulate Air Filterの略であり、定格風量で粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を有し、初期圧力損失が245Pa以下のエアフィルターとJIS規格で規定されています。

クリーンルームの清浄度を保つために重要な部品でありますが、使用していくと目詰まりにより性能が下がっていきます。一般的な寿命は3年程度ですが、使用環境によっても異なります。定期的に風量が出ているか、フィルターに亀裂やクラック等がないかなどの性能チェックを行い、クリーンベンチ内の清浄度を維持することが重要です。

2. クリーンベンチとドラフトチャンバーと安全キャビネットの違い

クリーンベンチとドラフトチャンバーと安全キャビネットの違い

図1. クリーンベンチとドラフトチャンバーと安全キャビネットの違い

クリーンベンチと似たものとしてドラフトチャンバと安全キャビネットがあり、気流の流れと使用目的が大きく異なります。

クリーンベンチはホコリなどの異物の混入を防ぐために用いられ、サンプルの保護が第一目的です。クリーンベンチでは陽圧になった容器内の空気が作業する窓から外に流れ出るため、有害なものを取り扱うと作業者に被曝する恐れがあります。

ドラフトチャンバーは有害ガス等をスクラバーで処理し、ダクトを介して系外に排出するため、作業者の保護が第一目的です。一方で、容器内を負圧にするため大気の空気が容器内に入り込むため、清浄環境を保つ目的には不向きです。

安全キャビネットはフィルターで正常にした空気を容器内に送りつつ、作業窓と別の吸気口から排気用フィルターを介して安全に排気を行います。このため、安全キャビネットではサンプルと作業者を同時に保護可能であるため、バイオハザードのリスクのあるウィルスや細菌を取り扱う場合に使用されます。

ガルバノスキャナ

ガルバノスキャナとは

ガルバノスキャナはレーザーなどのスキャンを行うための一つの方法です。

回転軸に取り付けた光学素子(ミラーやレンズ)を電磁モータ等にて高速に回転、位置センサからの出力をもとにサーボドライバがモータを高速、高精度に制御してスキャン機能を実現します。

X用、Y用の2つのガルバノスキャナを使うことで、2次元平面状にレーザー走査することができます。また、Z方向のガルバノスキャナを追加して3次元的に走査できる3Dガルバノスキャナもあります。

ガルバノスキャナの使用用途

高速で高精度なレーザーによる穴あけ加工やレーザーマーキング、溶接などの加工や、流行の光硬化性樹脂を使った3Dプリンターのレーザースキャンに使用されています。ミクロンレベルの精度が求められる部品加工に活用されています。

また、分光光度計の分散素子の回転や共焦点顕微鏡、生化学や生物工学で活用されているレーザー顕微鏡などで高精度、高速かつ広範囲のスキャンに、ナノ単位でも制御可能な特徴を活かして、微細な組織内部構造を視覚化する光干渉断層計(OCT)でも使用されています。

ガルバノスキャナの原理

ガルバノスキャナはスキャン精度が良好、高速対応可能、高分解能で操作が簡単、コストパフォーマンスに優れている特徴を持ちます。長時間高速運転を行い、温度が変化した場合でも高い繰り返し位置決め精度を維持することができるため、レーザースキャンなど多用途で採用されています。

ミラーサイズ(イナーシャ)によってガルバノスキャナの構成が決まります。イナーシャに適したスキャナが選定されているため、特に重量や重心位置が異なるミラーに交換するとうまく動かないことがあります。

ガルバノスキャナの選定ではミラーサイズだけでなく走査方法(ステップ走査、ラスタ走査、ベクタ走査)や要求スピードおよび精度から行い、アプリケーションによって使い分けが必要です。また、回転できる範囲に制限(例えば、±30度など)があるため、注意が日宇町です。

ミラーは使用するレーザーなどの波長によって様々なコーティングが用意されています。

参考文献
https://www.optoscience.com/maker/raylase/lineup/3-axis/
https://www.novanta.co.jp/precision/products.html
https://www.cambridgetechnology.com/ja/laser-beam-technology