ノッチフィルタ

ノッチフィルタとは

光学フィルタ

ノッチフィルタとは、特定の波長帯域の光のみをとても低いレベルにまで減衰 (遮断) させ、それ以外の波長帯域の光は高い透過率を示す光学フィルタです。

ノッチフィルタは、バンドストップ、または、帯域防止フィルタとも呼ばれています。一般的にバンドパスフィルタは、特定の波長帯域の光のみを透過させる時に使われ、ノッチフィルタはこの逆 (特定帯域の光のみを透過させない) の機能を有するわけです。

ノッチフィルタの使用用途

ノッチフィルタは、単一波長のレーザー光に含まれる励起光の除去などで使用されています。レーザーは、一般的に励起光により発振して、高強度で高出力を得ることができる装置です。

単一波長の光を放出しますが、励起光が混ざってしまうことがあります。ノッチフィルタを、レーザーで発振した光を取り出し、励起光を遮断する目的で使用することも可能です。

また、レーザーを用いた分析科学装置であるラマン分光や蛍光分光においても、ノッチフィルタが活躍します。励起光源などの光をカットして、測定したいラマンスペクトルや蛍光スペクトルのみを検出することで、バックグラウンドの少ない測定が可能となります。

ノッチフィルタの原理

ノッチフィルタは、光学研磨されたガラス基板に屈折率の異なる誘電体を多層重ねた誘電体多層膜を形成しています。誘電体多層膜は光を吸収せず、各層間の屈折率差から、反射や干渉をおこし、特定帯域の光を遮断できます。また、入射角や偏光 (S偏光やP偏光) によって透過率が変わるのが特性です。遮断中心波長は入射角が大きくなると短波長側にシフトします。

誘電体多層膜を構成する材料は、高屈折率材料 (屈折率2~2.5) として酸化チタンやタンタル、低屈折率材料 (1~1.5) として酸化シリコンやフッ化マグネシウムなどです。真空中で蒸着させる、または電子ビームを誘電体にあてて蒸着させることで、成膜できます。

誘電体多層膜や反射防止ARコートなどによりフィルタの表面は非常に強固になり、傷にも強くなる特徴があり、時間や温度、また湿度による性能劣化を抑えることが可能で、特定波長領域以外の透過率を高めることもできます。また、入射方向が決まっており、一般的にフィルタの縁に矢印のようなマークが記載されています。矢印の先の方から入射するか、矢印に沿って入射するかはメーカーによって違うため、事前に確認が必要です。

ノッチフィルタのその他情報

ノッチフィルタの性能を表す用語

ノッチフィルタの性能を規定するための以下の用語は、ノッチフィルタを選定する上で、必要となります。

1. 光学密度</br /> 光学密度 (OD) により、ノッチフィルタが特定波長のレーザー光をどの程度遮断できるか分かります。OD=6は透過する割合が10のマイナス6乗すなわち透過率が0.0001%を示し、OD値が大きいほど遮断率が高いということです。

しかし、OD値が高いものほど、光学であり、ブロッキング領域が広がる傾向にあるため、事前に使用するレーザーの強度からどれくらいカットする必要があるのかを確認し、遮断に十分なOD値を知っておくことで適切なOD値のノッチフィルタを選択できます。

2. 中心波長
中心波長とは、光がノッチフィルタを透過しない波長領域の中心で、OD値が最大の波長のことです。ノッチフィルタの用途は主にレーザーのブロッキングが目的であるため、市販のノッチフィルタの多くは、中心波長が使用頻度の高いレーザーの波長に合わせた設計となっていることが一般的です。特注で中心波長を選んでノッチフィルタを製作するメーカーもありますが、市販のものより高額になります。

3. ブロッキング領域
ブロッキング領域とは、ノッチフィルタによって、光が遮断される波長領域のことです。光が透過しない領域の半値全幅により規定されます。ノッチフィルタは、一般的にブロッキング領域の外側の波長領域での透過率が高く設定されており、離れると透過率が下がるものもあります。そのため、幅広いスペクトル測定の際に、ノッチフィルタを通すと、目的の光が通らないという問題があるため、事前に測定波長範囲での透過率スペクトルの確認が必要です。

参考文献
https://www.thorlabs.co.jp/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=3880

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