ピペッターとは
図1. 様々なピペッター
ピペッターとは、ホールピペットやメスピペットなどのピペットに取り付けて溶液を吸い上げ・吐出するピペッティング動作を行う器具のことです。
あるいは、それ自身が吸い上げ機能を持つピペットのことを指す場合もあります。ピペッターには、手動式の安全ピペッターやピペットポンプ、電動ピペッターなどがあります。
最近では、ボタン操作だけで手元のダイヤルでピペット量を設定し、ワンプッシュで吸引、ワンプッシュで吐出できる電動ピペッターが主流です。
ピペッターの使用用途
ピペッターは、化学・バイオロジー分野全体において、一定量の液体を吸引して計量したり他の容器に吐出したりする、ピペッティング動作全般に用いられます。
使用する液体の例は、溶媒・溶液・試料・培地・添加剤などです。1mL以下の微量液体の注入には、マイクロピペッターなどもよく使われています。
ホールピペットやメスピペットは、古くは口で溶液を吸い上げる方法で使用されていました。しかし、薬品、特に有害物質をピペットやメスピペットなどを使って口で吸引することは危険であることから、現在では代わりとしてピペッターを使用するのが主流です。
手動式、自動式ピペッターは先端のチップのみが接液し、触れることなくチップを外すことができるので、有機物などを一定量吸引・吐出する際に使用されています。
ピペッターの原理
図2. 安全ピペッターの使用方法
ピペッターの一つである安全ピペッターは、メスピペットなどに取り付けて使用する手動式のものです。空気吸入バルブを押し、ゴム球を凹ませ、液吸入バルブを押して液体を吸い上げ、排出バルブを押して液を排出することができます。
使用方法は下記の通りです。 (図2参照)
- Aを押しながら、大きなゴム球の中の空気を抜く
- ピペットを差し込む
- ピペットの先端を溶液につけ、Sを押して試料を多めに吸い上げる
- Eを押して、目盛りに合わせる
- ピペットの先端を吐出したい容器に合わせて、Eを押して液を吐出する
- ピペットの先端に少し液が残るため、Eの先にある穴を塞ぎながらゴム球を押して吐出する
ピペットポンプは、ピストンの上下により空気を出し入れする構造で、上下する距離をダイヤルで細かく調整し、出し入れする空気量を細かく調節できるので、液体量を細かく正確に調節することが可能です。
電動ピペッターは、一連の動作をモーターを用いることにより省力化しており、ボタン操作で済むようになっています。現在出回っているほとんどの製品の動力は充電式です。ただし、充電時間や充電中に使用できるかどうかは製品によって異なります。
通常のピペットは薬品を変えるたびに洗浄、乾燥させる必要がありますが、手動および電動ピペッターを使うと、接液する先端のチップ・ピペットの交換だけですぐに違う液体の注入が可能です。先端のピペットに触れることなく外すことができる構造になっているため、有害物質が体に付着する危険性がなくなり、作業性だけでなく安全性も向上します。
ピペッターの選び方
図3. ピペットを装着したピペッター
ピペッターにはそれぞれ特性があるため、自分の実験用途・目的にあった適切なものを選ぶことが重要です。
まず、自分の使用したい実験系において1回のピペッティングで扱う液量を明らかにします。1mL未満になるようなスモールスケールの場合はマイクロピペットが適切な場合がありますし、100mLを超えるような場合はメスシリンダーが適切です。その上で、安全ピペッター、ピペットポンプ、電動ピペッターのいずれが好ましいかを選定します。
電動ピペッターで扱えるメスピペットの大きさは、多くのもので下限が0.5mLまたは1mL、上限が100mLです。ピペットポンプには、2mL用、10mL用、25mL用などの種類があります。また、充電時間や充電中の使用可否、吸引・吐出速度などが製品によって異なるので注意が必要です。
正確な実験データを得るため、製品選定の際には、コンタミネーション防止の観点からも製品を検討することが必要です。キャップやフィルターが洗浄しやすい構造になっているものを選ぶことが望ましいと考えられます。また、バイオロジーの実験では、キャップやフィルターなどがオートクレーブ可能なものを選ぶことが推奨されます。