蒸着フィルム

蒸着フィルムとは

蒸着フィルム

蒸着フィルムとは、アルミニウムなどの金属やシリカなどの酸化物を蒸発させて、薄膜としてフィルム状に形成される製品です。

蒸発させる物質や膜の厚み、フィルムの素材などを変更することで、さまざまな目的に応じた機能を付加することができます。蒸着方法には、主に物理蒸着と化学蒸着の2つがあり、使用される物質や製品の製造方法に応じて適切な方法が選ばれます。

蒸着フィルムの使用用途

蒸着フィルムは、フィルム基材と蒸着される膜の組成によって、さまざまな機能を持たせることが可能となります。例えば、アルミ蒸着フィルムはフィルム上にアルミニウムの薄膜を形成する製品です。

このフィルムは水蒸気バリア性や酸素バリア性、光遮断性などの機能を有しています。アルミ蒸着フィルムは、電子部品などの精密機器、食品や飲料のラベル、菓子類やレトルト食品の袋、サプリメントなどの用途に使用されます。

また、シリカ蒸着フィルムはフィルム上にケイ素酸化物の薄膜を形成する製品であり、優れたガスバリア性、保香性、耐薬品性を備えており、印刷や包装などの目的に有用です。

蒸着フィルムの原理

蒸着フィルムとは、物質を蒸発させてプラスチック基材 (フィルム) の上に層を形成する製品の総称です。蒸発させる物質としては、金属 (アルミニウムやシリカなど) や酸化物が使用されます。

これらをフィルムの表面に薄膜として付着させることで、基材の性質を変えずにバリア性やデザイン性などの新たな機能を追加することができます。蒸着の方法は、物理蒸着 (英: Physical Vapor Deposition、PVD) と化学蒸着 (英: Chemical Vapor Deposition、CVD) の2つです。

PVDは加熱や衝突などの物理的な反応によって薄膜化を行う方法で、真空蒸着やスパッタリングなどの手法があります。一方、CVDはガス状の原料を化学反応によって薄膜化する方法で、熱CVDやプラズマCVDなどの手法が一般的です。

フィルムの基材としてはPE (ポリエチレン) 、PP (ポリプロピレン) 、PET (ポリエチレンテレフタラート) など、用途に合わせて様々な高分子材料が用いられています。

蒸着フィルムの種類

蒸着フィルムはさまざま種類があるため、用途や使用環境に応じて選ぶことが大切です。

1. アルミニウム蒸着フィルム

アルミニウム蒸着フィルムは、優れたバリア性能によって食品の新鮮さや品質を保ち、外部からの湿気や酸素の侵入を防ぐことができます。また、光遮断性によって食品や製品の光や熱による劣化を防ぐことも可能です。

長期保存や品質維持が求められる食品や医薬品の包装において、重要な役割を果たしています。

2. シリカ蒸着フィルム

シリカ蒸着フィルムは、その優れたガスバリア性によって、酸素や水蒸気などのガスの透過を防ぎます。これにより、食品や医薬品の鮮度や品質を長期間にわたって保持することが可能です。

また、保香性によって、食品や製品の香りや味を逃さずに保ちます。さらに、シリカ蒸着フィルムは耐薬品性にも優れています。化学物質や薬品に対して高い耐久性を示し、製品や試薬の包装などで使用されることがあります。

3. クロム蒸着フィルム

クロム蒸着フィルムの特徴的な特性は、その高い反射率です。クロムは可視光や赤外線を効果的に反射し、鏡面のような光沢と明るさを提供します。

この特性は、ミラーや反射板の製造において重要な要素であり、光学デバイスや照明機器などの分野で広く活用されています。

4. 銅蒸着フィルム

銅は非常に高い導電性を持つ金属であり、電気信号を効率的に伝えることができます。銅蒸着フィルムは、この性質を利用し電子部品の製造において電気的な接続や回路形成に重要な役割を果たしています。

さらに、高速データ伝送や高周波信号の伝達などの要件にも対応し、通信機器や半導体デバイスなどの分野で広く利用されている製品です。

5. 金蒸着フィルム

金は非常に高い導電性を持つ貴金属であり、電気信号の伝送や電気的な接続に適しています。金蒸着フィルムは、電子デバイスのコンタクトパッドや接触部分、高精細な配線などに有用です。

その高い導電性により、信号のロスやノイズの発生を最小限に抑え、高性能な電子機器の実現を支えています。

6. チタン蒸着フィルム

チタン蒸着フィルムは、チタンを蒸発させて形成される薄膜で、耐摩耗性と耐蝕性が特徴です。チタン蒸着フィルムは硬い金属であり、摩擦やスクラッチに対して耐性を持ちます。

また、酸化チタン層を形成するため、化学的な薬品や環境からの保護にも効果的です。これにより、装飾品や工業製品の表面加工、自動車部品やバイオメディカルデバイスなどの耐久性向上に利用されます。

さらに、チタンは生体親和性が高く、バイオとの互換性があるため、医療機器や人工関節などの分野で重要な役割を果たしています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1954/12/5/12_5_8/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/61/10/61_10_688/_pdf
https://www.sanko-shoji.jp/lecture/cn4/pg128340.html

熱伝導樹脂

熱伝導樹脂とは

熱伝導樹脂とは、熱伝導率 (固体中における熱の伝わりやすさ) が高い樹脂です。

近年、電子機器の高性能化・高集積化・小型化が急激に進んでいます。これに伴って電子機器からの放熱量が増加しており、電子機器の放熱性能が課題となっています。

このような電子機器に熱伝導樹脂を使用することで、放熱性能を高めることが可能です。現在、ポリカーボネート樹脂ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂などが熱伝導樹脂として製品化されています。

熱伝導樹脂の使用用途

熱伝導樹脂は、高い放熱性能が要求される分野での利用が進んでいます。例として、各種電子機器をはじめ、OA機器やIT機器、LED部品やセンサー部品などでの使用が挙げられます。

電気自動車を制御するためのパワー半導体も用途の1つです。パワー半導体は熱損失が大きいため発熱量が多く、使用時には効率的に熱を放出することが求められるからです。パワー半導体を熱伝導樹脂でパッケージすることで、半導体チップからの放熱性を高められます。

熱伝導樹脂の原理

熱伝導樹脂は、既存の樹脂に熱伝導性フィラー (黒鉛など) を配合することで製造します。熱伝導性フィラーを配合すると、樹脂内部に熱伝導性フィラーからなる熱伝導パスが形成され、内部で発生した熱がこの熱伝導性パスを通って外部に放出されます。これが樹脂の放熱性能が向上する理由です。

しかし、樹脂内部で熱伝導性フィラー同士が接触しない場合、当然熱伝導性パスは形成されません。そのため、熱伝導性フィラーの配合方法によっては熱伝導性の付与に失敗する場合もあります。

また、熱伝導性フィラーを大量に添加すると樹脂の加工性が損なわれるので、さらに別の添加剤を追加して樹脂に流動性を付与するケースもあります。

熱伝導樹脂の種類

1. シリコン樹脂

シリコン樹脂は、シリコン原子と酸素原子が主成分で構成されるポリマーの1種です。耐熱性が非常に高く、通常耐熱温度は200℃以上に達しますが、一部の特殊なグレードでは300℃以上に耐えるものもあります。シリコン樹脂は非常に柔軟性があり、高い耐薬品性を持ちます。

また、優れた電気絶縁性と耐候性も特徴的です。これらの特性から、電子機器やLED照明のヒートシンク、電気部品の断熱材料、耐熱シールなどに広く使用されています。

2. ポリアミド樹脂 (ナイロン樹脂)

ポリアミド樹脂は、アミンとカルボン酸の反応によって生成されるポリマーの1種で、一般的にナイロンとして知られている樹脂です。ポリアミド樹脂は高い耐熱性を持ち、一部の特殊なグレードでは300℃以上の耐熱温度を持つものもあります。

耐薬品性にも優れ、高い機械的強度を有します。これらの特性から、自動車部品や産業機械の冷却フィン、電気・電子機器の冷却材料として使用されることが多いです。

3. ポリカーボネート樹脂

ポリカーボネート樹脂は耐熱性に優れ、透明性を持つポリマーです。高い耐熱性により、耐熱温度は100℃以上になります。

光学的な透明性が求められる用途に加えて、熱を発散する必要があるLED照明や電子機器のケース、ヒートシンクにも広く利用が可能です。また、耐衝撃性にも優れているため、頑丈な製品に適しています。

4. ポリエステル樹脂

ポリエステル樹脂は高い耐熱性を持ち、通常、耐熱温度は100℃以上ですが、一部の特殊なグレードでは150℃以上に耐えるものもあります。また、耐薬品性や耐摩耗性も優れた樹脂です。

電気・電子機器の冷却材料や電源部品、自動車部品、産業機械の断熱材料などに広く使用されます。

5. アクリル樹脂 (PMMA)

アクリル樹脂は透明性に優れ、一部のタイプは高い熱伝導率を持つ樹脂です。一般的な耐熱温度は80℃から100℃程度ですが、熱伝導性の高い特殊なグレードでは150℃以上に達するものもあります。

主にLED照明のレンズや光学素材として広く使用されていますが、一部の高熱伝導性のタイプは熱を発散させる用途にも利用されます。

熱伝導樹脂のその他情報

熱伝導樹脂のメリット

  • 使用箇所の局所的な温度上昇を防ぐことが可能
  • 金属やセラミックスと比較して低コスト化・軽量化が可能
  • 射出成形などの成型が容易であり、加工の自由度が高い
  • 周辺部品と一体化することで、部品数を減らすことが可能

参考文献
https://www.unitika.co.jp/plastics/products/nylon/heat-radiation/
http://www.aichi-inst.jp/other/up_docs/no161_04.pdf

温湿度ロガー

温湿度ロガーとは

温湿度データロガーとは、温度・湿度を自動で設置場所の温度・湿度を測定し、一定間隔で記録し続けられる機器です。

測定間隔が任意に変更可能で、輸送環境の保証や冷凍冷蔵庫内の温湿度えお把握することで、カビや細菌の発生リスクを予見したり、労働の快適性などを判断する用途で使用されています。

温湿度ロガーの使用用途

温湿度ロガーは、温湿度管理の保証が必要なあらゆる場所で幅広く使用されています。主な用途としては以下のような場所が挙げられます。

  • スーパー・コンビニの食品保管ケース
  • 冷凍ケース
  • 食品製造環境
  • 冷蔵庫・冷凍庫
  •  医薬品参考品
  • 倉庫
  • 低温輸送の荷物
  • コンピュータールーム
  • 実験室・研究室内
  • トラック・船・コンテナ
  • ワイン庫内
  • 美術館・博物館

温湿度データロガーの原理

温湿度データロガーは、温湿度センサーとデータ保管が可能なメモリー及び電池で構成されています。

1. 温度センサー

温度センササーミスタで、別名NTCサーミスタと呼ばれます。温度が上がると電流が流れやすく抵抗値が下がります。このように、温度の変化は電気抵抗に変化するため、その性質を利用し温度を測定します。

2. 湿度センサー

湿度のセンサは電気抵抗式と静電容量式の2種類に分類されます。電気抵抗式も静電容量式も質分を吸湿、脱湿する感湿材を電極で挟む構造で、水分を電気抵抗として捉えるか、静電容量で捉えるかで方式が違います。

主流は静電容量式で、湿度20%以下でも測定出来、応答速度も早いのがメリットです。電気抵抗式はノイズに強いため、センサー部分が小型化出来ます。

温湿度ロガーの選び方

温湿度ロガーには様々な機種があり、表示の有無、センサーの方式、データの抽出方法、使用環境などによって使い分けることが大切です。主な選び方のポイントは下記の通りです。

1. 表示やボタンの有無

表示・ボタンなし
温湿度のデータを蓄積することに特化したタイプです。操作はすべてコンピューターを通しておこなわれます。本体にボタンがないので、不慣れな担当者がデータを削除するリスクが小さいタイプです。

表示・ボタンあり
測定したデータが目視できるタイプです。正常に動作しているかどうかを確かめられるので、安心感があります。また、測定開始と一時停止が手元でできるので、測定箇所からデータを取り出す場所までの間無駄に温湿度が記録されることがありません。

2. センサーの方式

センサー一体型
本体にセンサーがついているタイプです。ケーブルなどがないため、断線などのリスクが低く壊れにいタイプです。

ケーブルセンサー型
本体からセンサーを伸ばせるので、狭い場所にも差し込めるタイプです。高温高湿で、本体を置けない場所や狭い場所の温湿度測定に活用されています。

3. データ抽出方法

常時通信タイプ
無線LANやBluetoothを使って、データを常時管理できるタイプです。温度の監視が必要な場所などで役に立ちます。

抽出タイプ
一定期間データを集積し、その後データを抽出するタイプです。FDAやGMP、HACCP、ISO9001の品質マネジメントシステムなど、厳密なデータ保証が必要な場合に使われます。データ抽出はPCだけでなく、スマホやタブレットにも対応している機器も発売されています。

4.使用環境

高精度タイプ
厳しい環境の中で使用できるように温湿度ロガーです。温湿度ロガーをステンレスで覆ったタイプで、高温の測定が可能です。

防水タイプ
屋外で使用されるタイプです。雨が降りこんでも故障せず、安心して使えます。

校正タイプ
GMPやHACCP、ISOなど、各種企画に準拠する測定の場合は、定期的な構成が必要です。メーカーでも校正を請け負っていますが、メーカー校正品を二次標準として使用する場合もあります。

温湿度ロガーのその他情報

温度と湿度の関係

通常温度と湿度は密接な関係をもちます。温度が低いほど空気中に含む事が出来る水蒸気の量が少なくなり、逆に温度が高いほどより多くの水蒸気を含む事ができます。このことで、結露のリスクやカビの発生リスクなどが判断できます。

また、温度が高くても湿度が低ければ快適に感じるなど、人間の感覚にも影響しています。このことから温湿度ロガーは、労働衛生や店舗の快適性の管理など多用途に使用されています。

参考文献
https://www.keisokuten.jp/file.php?id=4236
https://www.jqa.jp/service_list/management/management_system/
https://product.tdk.com/info/ja/products/sensor/sensor/humidity/technote/tpo/index.html

油圧装置

油圧装置とは油圧装置

油圧装置とは、油圧を利用した力を動力の変換あるいは伝達を行う装置のことです。

具体的には、電動機や発動機を元に油圧ポンプを動かし、そこから得られた圧力で油圧シリンダや油圧モータを作動させています。油圧装置は小さな入力で大きな出力が得られるため、省スペースや高温への耐久性にも優れています。

こうした特徴から大型車両や工業機械といった幅広い製品に取り入れられており、産業を支えている製品です。

油圧装置の使用用途

油圧装置の使用用途は、車両から工作機械まで多岐にわたります。

1. 車両関連

車両関連では、主に大型車両で使われています。大きな力が必要な作業を、小さな力でこなすことができるためです。

  • 建築建機 (パワーショベル、ブルドーザ、トラックレーンなど)
  • 産業車両 (フォークリフト、コンクリートミキサー車、ダンプカーなど)
  • 農業機械 (トラクタ、コンバインなど)

2. 工業機械

油圧装置は製造現場でも多くの場面で活用されています。

油圧装置の原理

油圧装置は、静止している流体でどの方向にも同じ圧力が伝わるという「パスカルの原理」を活用しています。パスカルの原理とは、管の断面積が違うとき、圧力を保つために必要な力は断面積と反比例することです。

例として、下記のケースを解説します。

  • 圧力:1.0 MPa
  • 入力側の断面積:10cm2
  • 出力側の断面積:100cm2

このとき、同じ圧力を保つためには、以下の力が必要です。

  • 入力が必要な力:100kg
  • 出力される力:1,000kg

以上のように、パスカルの原理を活用することで、小さな入力で大きな出力が得られます。油圧装置はもちろん、自動車のブレーキや油圧ジャッキなどにも活用されています。

なお、油圧装置の仕組みは以下の通りです。

  1. エンジンなどの動力で、油圧ポンプに回転力を与える
  2. 油圧ポンプから吐出する油に圧力を発生させる
  3. 加圧された油は油圧制御装置で制御されたあと、油圧シリンダや油圧モータに伝達される
  4. 油圧シリンダや油圧モータにより流体エネルギーから運動エネルギーに変換する

このとき、直線方向の運動は油圧シリンダ、回転方向の運動は油圧モータで変換可能です。また、油圧制御装置によってドレーンされた油は、油タンクに戻ります。そして再びエネルギーが必要になった際に、油圧ポンプから再び吐出されます。

油圧装置の構造

油圧装置は下記の3つと作動油タンク、圧力計などの付属機器、継手や油圧ホースなどから構成されます。

  • 油圧発生装置
    油に加えるためのエネルギーを発生させる装置 (主に油圧ポンプ)
  • 油圧駆動装置油圧
    ポンプから送り出された圧油を動力に変える装置 (油圧シリンダ、油圧モータ、ベーンモータ、プランジャモータ)
  • 油圧制御装置
    油圧ポンプから吐出される圧力や流量を制御する装置 (リリーフ弁方向制御弁流量制御弁)

また、油圧ポンプには以下の4種類があります。

油圧装置のその他情報

1. 油圧装置のメリット

  • 機械や電動と比較して簡単な構造
  • 小型で強力な力を得られる
  • シリンダへの供給流量を変えるだけで制御できるので、変速機が必要ない
  • リリーフ弁があるため、過負荷を防げる
  • エネルギーを蓄積できる
  • 振動が少ない
  • 高温に強く耐久性も高い

狭いスペースや高温など、幅広い環境で活躍できることが油圧装置の魅力です。

2. 油圧装置のデメリット

  • 油漏れが生じやすく、錆やゴミに弱い
  • 作動油の汚染や劣化がないか管理する必要がある
  • 作動油の温度によって機械効率が変わる

油圧装置を導入するのであれば、油のメンテナンスは欠かせません。事故防止のためにも点検頻度や方法などのマニュアルの作成が必要です。

参考文献
http://www.housho.co.jp/publics/index/24/
http://www.crane-club.com/study/mobile/pressure.html
https://www.mhi.com/jp/products/industry/hydraulic_system.html
http://www.khi.co.jp/kpm/pdf/kpm_sanki_j.pdf

油圧プレス機

油圧プレス機とは油圧プレス機

油圧プレス機とは、作動油と油圧ポンプで機構を動かし、プレス金型を用いて加工したい素材を所定の形状にする装置です。

機械装置のベット上側と下側にプレス金型を設置して、下型の上に素材を置いた状態で作動油圧により上ベッドを降下させると、素材が上下の金型で挟みこまれて所定の形状になります。

油圧プレス機の使用用途

油圧プレス機は加圧力別で大小さまざまな機械装置が存在します。1,000トン級の油圧プレス機は自動車産業で使われることが多く、乗用車、トラックバスなどの外板やシャーシフレーム加工で活用されています。またダイカスト品、鍛造品、CFRP素材で作られる発電用タービンなど成形加工力や成形時間が必要な大型製品用途でプレス加工が活用されています。

流し台シンクやステンレス容器等の深絞り形状において、リンク駆動によるメカプレス機では絞りじわや割れが発生し品質不良となることがあります。それに対し油圧プレス機では加工速度を調整することが可能なため、深絞り形状の品質問題を改善することができます。

油圧プレス機の原理

油圧とは流体を使用してエネルギーを伝達するシステムで、パスカルの原理が基本です。油圧プレス機は電気モーターで油圧ポンプを動作させることで作動油圧が発生します。その加圧された作動油が油圧シリンダへ送られることで、ベット上側が機械で設定された範囲内で上下に動作します。

比較的大きいトルクを得るために、エンジンや電動機器は適切な変速機を組み合わせる必要があります。それに対し油圧機器の場合はシリンダへ送る作動油の供給量を変えて機械制御をするため、変速機が不要となります。

油圧プレス機のその他情報

1. 油圧プレス機の特徴

加圧力の比較
シリンダーは、油圧ポンプから吐出された作動油圧力と流量調整弁により上下運動します。小さな動力で大きな出力が得られるため、最大加圧力は機械式プレス機で80,000kNに対し、油圧式プレス機は200,000kNとなります。機械式プレス機で用いられる駆動モータと比較すると、油圧プレス機で使う駆動モータは質量あたりの出力が10倍程度大きいため、油圧式機械は装置が軽く小さくなるメリットがあります。

機械の比較
油圧プレス機は機械式プレス機より動作ストロークが長く、高圧縮力を発生させたり速度調整が可能で油圧装置の仕組みであるリリーフ弁によって過負荷が起こりにくく扱いやすい半面、メンテナンスに手間が掛かり加工時間も遅いです。

生産時の比較
一般的に大量生産時は機械式プレスが用いられます。機械式プレス機は作動油や油圧動作ポンプが不要で気温の影響を受けず静穏性があり、油圧ユニット設置が不要で、加工速度が速い利点を持っています。特にせん断加工曲げ加工絞り加工、打抜き加工においては加工時間が短くて済むため大量生産に向いています。

2. 油圧プレス機の注意点

油圧プレス機は非常に大きな圧力が発生する機械のため、事故が起きると大けがや死亡する事例が散見されます。日常メンテナンスや安全衛生教育が欠かせません。作動油の漏れや汚染等で機械管理が不十分ですと動作不良に繋がり、停止している機械が突然動き出すこともあります。事業者や管理責任者は、作業終了時にプレス機のベット上下に安全バーを挟むなどの安全衛生教育を現場作業員へ徹底して行う必要があります。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/machining/plasticity/press.jsp
http://www.nikkin.or.jp
https://j-fma.or.jp/newsletter_information/hydraulic-press-textbooks
https://j-fma.or.jp/images/2019/05/yuatsu_zukan.pdf

油圧ナット

油圧ナットとは

油圧ナットとは、ねじではなく油圧によって発生させた軸力で締結するナットです。

ねじによるボルトとナットの締結力は、ねじの螺旋を使い、ねじの軸を引っ張り上げることによって発生させます。それに対して、油圧ナットでは油圧によってボルトを引っ張り締結力を発生させます。ねじを使ったボルトのように、ねじの摩擦力によるねじりを受けたり、軸力のばらつきなどを抑えることができます。

ナット本体に油圧機能を持たせた部品によって、ボルトを引っ張って締結するため締め付け工具が不要です。油圧ナットはボルトをセットし、油圧ポンプに繋いだホースを油圧ナット供給口に接続します。ホースを取り付けることで、複数のナットの同時締付可能です。油圧をかけられると、油圧ナット内にオイルが送り込まれボルトが引っ張られることで締め付けられます。

油ではなく、不燃性グリコール液を用いて油圧機能を持たせたものを液圧ナットと呼びます。ボルトテンショナとの違いは、油圧ナットがナットの役割を果たすのに対し、ボルトとナットにボルトテンショナをセットし、締め付けた後に外すため油圧ナットのようにその場に残らない点です。

油圧ナットの使用用途

油圧ナットは、比較的大きいサイズのボルトの締結で使用されます。ねじの使用実績はM20~300程度です。

成形プレス機や射出成形機の金型固定ボルト、火力発電用ガスタービンや蒸気タービンのケーシングの合わせ面の大型ボルトの仮締めなどにも用いられています。

油圧ナットの原理

油圧ナットでは油圧によってボルトを引っ張り、ボルトに軸力を発生させます。油圧はパスカルの原理によって、密閉した液体の入った容器に一定の力を加えると、体積は減らずに圧力がどの方向にも等しく、容器の面に垂直作用する性質を利用しています。

油圧ナットでは、油圧によってボルトが引っ張られた状態でナットが被締結物に着座させることによって、油圧を除去した後でもボルトに軸力を発生させ続けることが可能です。一般的なねじによって軸力を発生させる場合には、ねじ面やボルトのヘッド部分の座面の摩擦によってボルトにねじりが生じるので、単純な引っ張りよりも低い軸力で破断してしまいます。

また、ねじや座面の摩擦力はばらついており、締め付けトルクのばらつきと合わせると、軸力には非常に大きなばらつきがあるのが一般的です。油圧ナットを使えば、ボルトにねじりを生じさせることなく、また油圧から正確な軸力を知ることもできます。

油圧ナットのその他情報

油圧ナットの長所

油圧ナットは油圧トルクレンチや、ボルトテンショナでは作業しにくい狭い場所での作業が可能です。その他、工具が入らないような狭い場所や多くのボルトを同時に均一に締めたい時には油圧ナットが向いています。複雑な形状や工具が入りにくい場所でも、油圧ホースが取り付けられれば締め付け作業が可能です。ナットを締めた時に土台がずれる箇所も油圧ナットによる締め付けならねじる動力がないため、ズレの心配がありません。

油圧トルクレンチのように、トルク管理する締付方法より、摩擦の影響を受けずに精度が高い締め付けができます。ホースを取り付けることで、複数のナットの同時締付可能なため、ボルトの締付にバラツキが出ません。フランジの片締めを防ぎ、対角締めが不要なので作業効率がアップするのもメリットの1つです。

また、油圧ナットは頻繁かつ複数のボルトとナットの着脱、締め付けの精度が要求される時、振動による緩みが懸念される時や高温な箇所などで活躍します。作業効率や高温で使用できるため、原子力発電所で使用されており作業者の被ばく軽減にも寄与しています。

手動締めやトルク管理の油圧トルクレンチとは異なり、ボルトをねじって固定せず直接軸力をかけるため、締め付け時に摩擦が生じず高精度な軸力の管理が可能です。また、ボルトをねじらないので摩擦熱が生じず、フランジ部分やネジ部分に焼き付きが生じることもありません。

参考文献
https://www.torque-system.jp/tsm
https://www.titanti-jp.com/products/oil_nut.html
https://www.plarad-rent.net/bolt-tensioners/feature.html
https://www.bolt-engineer.net/nuts/

油圧トルクレンチ

油圧トルクレンチとは油圧トルクレンチ

油圧トルクレンチとは、油圧を動力にして大きな力をかけられるトルクレンチのことです。

小さな力で大きなトルクを生み出すことができることから、油圧トルクレンチは主に大型ボルトの締結に使われています。

油圧トルクレンチは、大きく分けて3つの部品から構成されています。

  • 油圧ピストン
    作動油の持つ圧力エネルギーを運動エネルギーに変える
  • ラチェット
    歯止めによって動作方向を一方に制限する
  • ケーシング
    油を効率よく吐出する

また、油圧ポンプをエアー油圧ポンプにすると、防爆エリアでも使用可能です。

油圧トルクレンチの使用用途

油圧トルクレンチは、下記のように中型~大型ボルトやナットの締めや緩めが必要な場面で使用されています。

  • 電力発電施設
  • 石油化学
  • 鉄工所
  • 造船所
  • シールドトンネル工事
  • 建機
  • 大型構造物の建築

なかでもシールドトンネル工事は、動力源が離れていても使用できる油圧のメリットが活用されています。長い油圧ホースを使用することで海中でのボルト締め作業や、海底ケーブルのフランジボルトの締め作業が可能です。

油圧トルクレンチの原理

油圧トルクレンチは油圧を用いて小さな力で大きなトルクを発生できる「パスカルの原理」を用いています。

1. パスカルの原理とは

パスカルの原理とは、密閉した液体の入った容器に一定の力を加えると、体積は減らずに圧力がどの方向にも等しくなるという法則です。

例えば、容器にかかる圧力と断面積が以下だったとします。

  • 圧力:1.0 MPa
  • 入力側の断面積:10cm2
  • 出力側の断面積:100cm2

このとき、同じ圧力を保つためには、以下のトルクが必要です。

  • 入力に必要な力:100kg
  • 出力できる力:1,000kg

このように、小さな入力で大きな出力が得られるため、油圧トルクレンチはもちろん、自動車のブレーキや油圧ジャッキなどに使われています。

2. ボルトやナットを締め付ける原理

油圧トルクレンチを使えば、ボルトやナットを簡単に締め付けることができます。

  1. 圧力ポンプ内の作動油によって圧力を上昇させる
  2. 油圧の力で油圧ピストンを動かす
  3. 油圧ピストンがラチェットに連動する押し爪 (ラチェットボール) を押すことで回転方向の力に変える
  4. 回転方向の力によってラチェットを動かす

このとき、1回で規定トルクまで回るわけではなく、1ストロークで約30度ずつ回転します。また、ラチェット機構には反力板が含まれており、1方向でしか動かないようになっています。そのため、ピストンが戻ってもボルトは逆回転しません。

油圧トルクレンチのその他情報

1. 油圧トルクレンチを使うメリットとデメリット

  • 小型で軽量なゆえに持ち運びしやすい
  • 締め付け精度が高い (精度±3%以内)
  • インパクトレンチなどに比べて、作業中の騒音が少ない

上記が油圧トルクレンチを使用するメリットです。特に、作業中の騒音が少ないのは、油圧トルクレンチならではの強みと言えます。例えば、地上で夜間にトンネルを掘削したいときでも、近隣住民の迷惑になりにくいです。

しかし、油圧トルクレンチには、作業速度が遅いというデメリットがあります。ただし、2台連結して使用することで、作業時間を減らすことが可能です。

2. 油圧トルクレンチの使い方

  1. 油圧トルクレンチおよび油圧ポンプに、ソケットと油圧ホースを接続する
  2. トルク換算表から設定圧力を確認する
  3. 油圧ポンプの圧力を設定する
  4. 締め付けたいボルトに油圧トルクレンチをセットする
  5. 油圧ポンプの電源を入れる
  6. 回転が止まるまで締め付ける

トルク換算表は油圧トルクレンチと同封されていることが多いです。万が一ない場合は、Web上で単位換算できるサイトがあります。

「圧力が設定値まで上がったもののラチェットが回らない」という状態になれば、締め付け完了です。締め付け不足は事故やケガの原因となるため、必ず締め付け確認を行います。

参考文献
https://www.plarad-rent.net/torque-sc/movie.html
http://www.bestma.co.jp/products/torque_wrench/about_torque_wrench.html

比重計

比重計とは

比重計

比重とは、ある特定の物質の質量を、それと同体積の標準物質と比較した時の比率の事であり、一般的には標準物質として4℃の水が用いられます。

比重計は、この比重を測定するための装置です。なお、比重という用語は、固体、液体、気体のいずれにも用いられますが、本記事では液体の比重を測定するための装置について解説します。

まずはじめに、物体に働く浮力について整理すると、水の比重を1とする場合、対象物質の比重が1より大きければ水に沈み、小さければ浮きます。この原理を利用したものが、最も一般的な浮ひょう(浮き秤)型の比重計です。

これは、液体に浮かせてその目盛りを読み、その値から比重を測定する秤であり、図1のような形状を持ちます。

比重計の概略図

図1. 比重計の概略図

比重計は、図1に示したような浮ひょう型のものが主流ですが、最近ではロードセル方式、振動式、差圧式、放射線式などもあり、表示もデジタルで従来のものよりも簡単に計測できる製品も開発されています。

比重計の使用用途

比重計は、医薬品分野、食品加工分野、工業分野、科学研究分野などのような幅広い分野において、様々な用途で使用されています。

具体的には以下の通りです。

  • 海水の塩分濃度測定
  • ジュースの材料となる果実の糖度測定
  • 半導体、メッキ、バッテリー電解液など、工業に用いられる各種薬液の濃度測定
  • 牛乳中の脂肪分の測定
  • アルコール製品の水の体積比によるアルコール度数測定
  • 石油製品中の不純物含有量の測定

比重計の原理

比重計の基本的な構造は図1に示した通りであり、胴部とけい部で構成されています。 胴部は浮力を保ち、けい部には目盛りが入れられています。

胴部の底には、浮力調整用の錘が内包されています。 胴部を測定したい液体に入れると、浮ひょうは、液体の中に沈んだ体積に応じた重さに等しい浮力を受けます。

その結果、浮ひょうは、自重と浮力が釣り合う分だけ液体中に沈むことになります。けい部には目盛りがふられおり、浮ひょうの浮きが平衡に達した時点で、水面に一致する目盛りの示度を読み取ります。

多くに場合、浮ひょうはガラスで作られていますが、プラスチック製のものもあり、用途に合わせて選ぶことができます。

比重計のその他情報

浮ひょう以外の比重計について

比重計には、浮ひょう以外にもロードセル方式、振動式、差圧式、放射線式などがあり、これらの比重計は主に工業分野で用いられています。

ロードセルとは、力の大きさを電気信号に変換する機械であり、液体中に沈めた錘の重量を正確に測定し、その荷重の変化量から試験液体の比重を算出します。

このタイプの比重計は、従来の浮ひょう型比重計と比較して測定精度が高く、また、分析者の技術差が分析結果に影響しにくいというメリットがあります。

振動式の場合は、U字管の内部に試験液体を注入し、外部からU字管を振動させます。この時U字管は、液体分を含むU字管全体の質量に応じて、固有の周波数で振動します。そのため、この周波数からU字管内部の液体の質量を算出し、この値から試料の密度を算出する事が出来ます。このタイプの比重計は、操作が勘弁であり短時間で測定が終了する事もあり、特に食品業界における品質管理など用途で広く用いられています。

差圧式では、測定漕の2点間の圧力の差が液体の比重に比例するという原理が用いられています。 放射線式では、放射性同位元素から放出されるガンマ線の透過率が、物質の密度により変化するという性質を利用しています。

参考文献
https://yokotakeiki.co.jp/contents/resource/various_hydrometers.html
https://www.andokeiki.co.jp/hizyuukei/hizyuukeitop.html

https://www.tactec.co.jp/download/suntex_dl/application_note_sg2110.pdf
https://www.m-system.co.jp/rensai/pdf/r0312.pdf

接触角計

接触角計とは

接触角計とは、ある固体の表面に滴下された液滴の、固体表面との接触角を評価する装置のことです。

ぬれ性の評価における接触角とは、固体の表面と液滴が成す角度のことで、材料のぬれ性を表す数値として使われます。ぬれ性とは、固体表面と液体との接触に関する相性を数値で表現したものです。

私たちの日常生活においては、例えば防水性に優れたレインコートや雨傘の表面などは、水をよく弾きます。逆に塗装作業においては、塗料が塗装面で弾かれることなく広がることが、塗装作業を効率的に行う上で欠かせません。

また、建物の外壁塗装においては、乾燥後の塗料表面が雨水を流れやすい状態にすることによって、外壁の汚れを落としやすくする効果を狙った製品もあります。

接触角計の使用用途

接触角計は、さまざまな工業製品の撥水や防水性能、逆に親水性能を表すために用いられます。なお、液体が固体表面で弾かれる状態をぬれ性が低い、逆に液体が固体表面上に広がりやすい状態をぬれ性が高いと言います。

ぬれ性が低いと接触角は大きく、ぬれ性が低いと接触角は小さくなります。

1. 接触角洗浄評価

清浄度が製品の特性や品質に大きな影響を与えるような場合には、接触角によって比較的容易で安価に清浄度を評価できます。具体的には、シリコンウェハ、半導体、ガラス基板、電子部品、液晶ガラスなどの製造において用いられます。

2. 接触角ぬれ性評価

塗装などにおいては、塗料と塗装する材料との密着性が重要になります。接触角によって、塗料ののりの良さを評価します。インク、塗料、塗布工程などが評価対象です。

建物の外壁塗料でも、建物の汚れにくさを評価する指標として使われ、ぬれ性が良いと汚れは雨と一緒に流れ落とされます。

3. 接触角疎水性評価

防水性が必要な製品においては、接触角によって水をどれだけ弾くことができるかを評価します。例えば、撥水剤、ワックス、防水コーティング、レインウェアなどが挙げられます。

4. 接触角接着性評価

接着や隙間を埋めるシール部材において、母材との相性を評価します。封し、密着性、シール性、塗布工程の評価として行われます。

5. 接触角洗浄度コンタミネーション評価

クリーンルームなどの清浄度の評価として、接触角の測定が行われます。

6. 接触角表面改質評価

UVO3、プラズマ、コロナ放電などの表面改質における工程の評価として、接触角が用いられます。

接触角計の原理

接触角計では実際に対象となる基板表面上に液体を滴下して、滴下した液滴を真横からカメラで撮影し、液滴の形状から接触角を判断します。接触角の定義をそのまま実験し、画像から判断する比較的原始的な方法です。

評価する試料のぬれ性が大きい場合、基板上の液滴はつぶれて広がった形状になり、接触角は小さくなります。一方で、ぬれ性が小さい場合、基板上の液滴は球状を維持し、接触角は大きくなります。

なお、ぬれ性には液体の表面張力、固体の表面張力、液体と固体間の界面張力が関わっており、その関係性を示すのがヤングの式です。

   γs = γlcosθ + γsl 

γs: 固体の表面張力、γl: 液体の表面張力、γsl: 固体液体間の界面張力、θ: 接触角

接触角計の構造

接触角計は液滴を作製するディスペンサー、界面を観察するための光源とCCDカメラ、基板を設置する試料ステージなどから構成されています。また、後述する動的接触角を測るためには、装置全体や試料ステージを傾ける滑落ユニットを装着します。

接触角計のその他情報

1. 接触角の種類

接触角には「静的接触角」と「動的接触角」があります。撥水性のある材料に滴下された液滴は、高さや接触半径などの形状は緩仲に変化していき、安定しているわけではありません。着滴してから1~数秒後における接触角が、「静的接触角」と見なされることが一般的です。

また、評価材の表面に液滴が滴下された後、評価材を傾けていくと液滴は表面を滑り始めます。液滴が滑り始めた瞬間の角度を滑落角、または転落角といい、液滴が落下していく方向の接触角を前進接触角、反対側を後退接触角と呼び、いずれも動的接触角といいます。

2. 接触角の測定方法

接触角計は、試料表面上に実際に滴下された液体の形状から接触角度を読み取りますが、いくつかの測定方法があります。

液滴法
液滴法は静的接触角を評価するための基本となる方法です。試験表面に対してディスペンサーで液体を滴下し、真横から液滴の形状を画像として取得して液滴の接触角度を算出します。

拡張収縮法
拡張収縮法は、液体を吐出したり吸引を繰り返しながら画像を撮影します。接触角は動的接触角として、前進接触角、後退接触角が求められます。

滑落法
滑落法はまず水平な固体の試料表面に液体を滴下し、その後試料ステージを傾斜させ、滑落角と動的接触角を求める試験方法です。

参考文献
https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/1922.pdf
http://www.aichi-inst.jp/other/up_docs/no122_04.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/60/1/60_1_21/_pdf
https://www.face-kyowa.co.jp/science/theory/what_contact_angle.html

ハンドプレス

ハンドプレスとはハンドプレス

ハンドプレスとは、ハンドルやレバーを手動で操作し、局所的に対象物に圧力をかけて、プレス加工をすることが出来る板金などの工具のことです。

ハンドプレスの箇所に加工したい対象物を設置し、上からハンドルを下におろして圧力をかけることで加工します。加工できる部分の金型を換えれば、切断や穴あけや刻印などの加工も可能です。製品の種類や大きさによって、圧力の大きさが異なり、目的別にハンドプレスの金型があります。

ハンドプレスの使用用途

ハンドプレスによる加工は、垂直方向の力によって対象の部分にピンポイントに圧力を加えることで、加工できるもの全般に使用されています。例えば、ピンの圧入や薄い金属の曲げ、細い棒材の加工などです。また、ハンドプレスは印刷用で使用されていた歴史を持つことから、プラスチック材や金属板に印字する際にも使用できます。

一般的に、組み立てや小規模のロットの製造などの作業工程において、曲げたり、切断したりする加工を施す際に使用される場合が多いです。これらの加工の他にも、カシメやホックなどの留め金具の取り付けや、ベアリングの圧入や、対象物の粉砕なども使用用途の一つとして挙げられます。

ハンドプレスの原理

ハンドプレスは、ハンドルやレバーを手動で操作し、局所的に対象物に圧力をかけます。ハンドプレスによる加工では、レバーやハンドルを手動で操作して下におろすことで、レバーが取り付けられた芯棒が下に動き、本体に設置した対象物に力が分散せず圧力がかかるという仕組みになっています。

芯棒に取り付けられたばねのおかげで、力がゆっくりと伝わり、手動でも負担がかからず小さい力で大きな圧力をかけられるのが大きな特徴です。ハンドプレスは、鉄製の本体にばねが取り付けてある芯棒があり、この芯棒に取り外し交換が可能なレバーやハンドルがついています。

ハンドルにはホッチキスに似た形のものや自動車のハンドルに似た形のものまでさまざまです。かけたい圧力に応じてハンドプレス機を選定する必要があります。また、ハンドプレス機の本体は破損しやすいため、水平な場所で使用しなければなりません。

ハンドプレスのその他情報

1. ハンドプレスの長所

手動でレバーを操作するという単純な構造をしていることから、ハンドプレスには2つの長所があります。1つ目の長所は維持管理を簡単に行えるため、長期的に使用できることです。2つ目の長所として、手動による加工作業ができるため、電力を使わずコストやエネルギーがかからない点が挙げられます。

2. ハンドプレスの歴史

ハンドプレスの歴史は古く、大正時代にまで遡ります。大正時代の印刷手法としてアルビオン印刷機を利用した印刷が盛んに行われていました。活版印刷の時代であるため、ハンドプレスはアルビオン印刷機を真似して作られた経緯があります。大正時代に、ポストカードを印刷するために製造されたのが始まりです。

手動で圧力を加えることで対象物に印字するなど、大正時代と現代のハンドプレス機の基本原理は共通しています。ただし、現代の方が工学向きに改良されており、ピンなどの圧入や細い棒材の曲げや切断などに使用されています。

現代は、ハンドプレス機のメーカーが多く出現し、500kgプレスから12tプレスまで、ハンドプレス機の圧力を選べる時代になりました。エキセンプレス機に代表される自動車のハンドル型のハンドプレス機なども登場しています。

最も馴染みのあるハンドプレス機はハンディプレス機です。ハンディプレス機は、構造はホッチキスの芯で紙を留める構造に似ています。そのため、ハンドプレス機はホッチキスの芯を留めたことのある人であれば簡単に使用できます。

参考文献
http://yatsurugi.co.jp/hand_press/
https://www.monotaro.com/p/3351/6576/
https://www.monotaro.com/g/00025643/
https://jp.misumi-ec.com/
https://www.partslabo.com/goods/kougu/handpress.html