油圧装置とは
油圧装置とは、油圧を利用した力を動力の変換あるいは伝達を行う装置のことです。
具体的には、電動機や発動機を元に油圧ポンプを動かし、そこから得られた圧力で油圧シリンダや油圧モータを作動させています。油圧装置は小さな入力で大きな出力が得られるため、省スペースや高温への耐久性にも優れています。
こうした特徴から大型車両や工業機械といった幅広い製品に取り入れられており、産業を支えている製品です。
油圧装置の使用用途
油圧装置の使用用途は、車両から工作機械まで多岐にわたります。
1. 車両関連
車両関連では、主に大型車両で使われています。大きな力が必要な作業を、小さな力でこなすことができるためです。
- 建築建機 (パワーショベル、ブルドーザ、トラックレーンなど)
- 産業車両 (フォークリフト、コンクリートミキサー車、ダンプカーなど)
- 農業機械 (トラクタ、コンバインなど)
2. 工業機械
油圧装置は製造現場でも多くの場面で活用されています。
- 製鉄機械 (出銑口油圧開孔機など)
- 工作機械 (旋盤、フライス盤、ボール盤、マシニングセンタなど)
- 射出成型機の駆動源
- 鍛圧機械
- 建築物の免振装置 (オイルダンパーなど)
- 発電設備 (サーボ用油圧源装置など)
- トンネル掘削機
- 精密ギヤポンプ
- 試験装置 (三次元大型振動台、荷重試験機、バネ試験機など)
油圧装置の原理
油圧装置は、静止している流体でどの方向にも同じ圧力が伝わるという「パスカルの原理」を活用しています。パスカルの原理とは、管の断面積が違うとき、圧力を保つために必要な力は断面積と反比例することです。
例として、下記のケースを解説します。
- 圧力:1.0 MPa
- 入力側の断面積:10cm2
- 出力側の断面積:100cm2
このとき、同じ圧力を保つためには、以下の力が必要です。
- 入力が必要な力:100kg
- 出力される力:1,000kg
以上のように、パスカルの原理を活用することで、小さな入力で大きな出力が得られます。油圧装置はもちろん、自動車のブレーキや油圧ジャッキなどにも活用されています。
なお、油圧装置の仕組みは以下の通りです。
- エンジンなどの動力で、油圧ポンプに回転力を与える
- 油圧ポンプから吐出する油に圧力を発生させる
- 加圧された油は油圧制御装置で制御されたあと、油圧シリンダや油圧モータに伝達される
- 油圧シリンダや油圧モータにより流体エネルギーから運動エネルギーに変換する
このとき、直線方向の運動は油圧シリンダ、回転方向の運動は油圧モータで変換可能です。また、油圧制御装置によってドレーンされた油は、油タンクに戻ります。そして再びエネルギーが必要になった際に、油圧ポンプから再び吐出されます。
油圧装置の構造
油圧装置は下記の3つと作動油タンク、圧力計などの付属機器、継手や油圧ホースなどから構成されます。
- 油圧発生装置
油に加えるためのエネルギーを発生させる装置 (主に油圧ポンプ) - 油圧駆動装置油圧
ポンプから送り出された圧油を動力に変える装置 (油圧シリンダ、油圧モータ、ベーンモータ、プランジャモータ) - 油圧制御装置
油圧ポンプから吐出される圧力や流量を制御する装置 (リリーフ弁、方向制御弁、流量制御弁)
また、油圧ポンプには以下の4種類があります。
- 歯車ポンプ
歯車のかみ合わせ部分を活用して輸送するポンプ - ベーンポンプ
数枚の板により体積を変化させ、輸送するポンプ - ピストンポンプ
ピストンを往復させることでシリンダの容積を変化させ、輸送するポンプ - スクリューポンプ
スクリューの回転を活用して輸送するポンプ
油圧装置のその他情報
1. 油圧装置のメリット
- 機械や電動と比較して簡単な構造
- 小型で強力な力を得られる
- シリンダへの供給流量を変えるだけで制御できるので、変速機が必要ない
- リリーフ弁があるため、過負荷を防げる
- エネルギーを蓄積できる
- 振動が少ない
- 高温に強く耐久性も高い
狭いスペースや高温など、幅広い環境で活躍できることが油圧装置の魅力です。
2. 油圧装置のデメリット
- 油漏れが生じやすく、錆やゴミに弱い
- 作動油の汚染や劣化がないか管理する必要がある
- 作動油の温度によって機械効率が変わる
油圧装置を導入するのであれば、油のメンテナンスは欠かせません。事故防止のためにも点検頻度や方法などのマニュアルの作成が必要です。
参考文献
http://www.housho.co.jp/publics/index/24/
http://www.crane-club.com/study/mobile/pressure.html
https://www.mhi.com/jp/products/industry/hydraulic_system.html
http://www.khi.co.jp/kpm/pdf/kpm_sanki_j.pdf