油圧ジャッキとは
油圧ジャッキとは、油圧の力で重量物を持ち上げるための工具です。
油圧を利用することで、人の力でも容易に数トン以上のものを持ち上げることができるようになります。少ない動力で大きな力が得られる油圧システムは、多くの機械に採用されており、機械産業などにおいて必要不可欠な存在です。
近年は、IOTを活用した施工事例もあり、設置した油圧ジャッキのデータを現場で目視確認しなくても、スマホやPCで確認できる油圧ジャッキのシステムなども開発されています。
油圧ジャッキの使用用途
油圧ジャッキの最も身近な使用例は、自動車整備での車両の持ち上げです。小型自動車では機械式のジャッキでも対応できますが、より重量の大きい中型や大型の車両では油圧ジャッキを使用することが多いです。
また、油圧ジャッキは重量物を持ち上げるだけではなく、対象物を押す、拡げる、位置を合わせるなどの様々な動作にも対応可能です。そのため、災害時の人命救助や建築工事、大型精密機械の組立等にも幅広く使用されています。
油圧ジャッキの原理
油圧ジャッキは、パスカルの原理を応用した製品です。パスカルの原理は、密閉容器に流体を閉じ込めた際、その一部に圧力が加わると、その圧力の増加分が増減することなく、流体のすべての方向に伝わるという原理を指します。
油圧ジャッキに置き換えると、小さいピストンと大きいピストンの2本を連結管で繋ぎ、中が油で満たされた状態でし。小さいピストンと大きいピストンは断面積が異なり、それぞれA1とA2とします。この状態で小さいピストンに力F1が加わると圧力Pが発生します。この圧力Pは連結管の中を伝わり、大きいピストンの下面に同じ強さで伝わります。この時、大きいピストンには上向きの力F2が加わることになります。
圧力は「力/面積」で表され、この時の圧力Pを式で表すと、パスカルの原理から「P=F1/A1=F2/A2」が成り立ちます。大きいピストンにかかった力F2は「F2= (A2/A1) ×F1」となり、ピストンの断面積比に比例して、力が増幅することがわかります。これにより、油圧ジャッキは小さな力で大きなものを持ち上げることが可能です。
油圧ジャッキの種類
使用されている油圧ジャッキは、以下の2種類が主流です。
1. シザースジャッキ
パンタグラフジャッキに油圧機能を付けたのが、シザースジャッキです。純正の手動式ジャッキと違い、油圧の力で簡単にジャッキアップすることが可能です。コンパクトな形状をしているため、持ち運びに便利で車載用におすすめです。
2. フロアジャッキ
フロアジャッキは、縦長のボディーにジャッキアップのためのレバーを備えたタイプです。地面との設置面積が広く、安定性に優れているのが特徴で、大型車両のジャッキアップに適しています。ただし、シザースジャッキと比べ作業スペースを多くとる必要があり、重量があるため持ち運びに適さないのがデメリットです。
油圧ジャッキの選び方
油圧ジャッキは各メーカーより、様々なタイプの製品が販売されています。それぞれの特徴を把握し、使用目的に合ったものを購入することが大事です。
1. 耐荷重
油圧ジャッキの耐荷重を選ぶときは、持ち上げるものの重さを確認する必要があります。2tの車ならば、最大荷重が2.5t以上のものであれば安全にジャッキアップすることができます。持ち上げるものの重量より、最大荷重が大きい油圧ジャッキを選ぶのがおすすめです。
2. 最高位と最低位
油圧ジャッキで車を持ち上げる場合、持ち上げ可能な最大の高さを「最高位」、一番低い位置を「最低位」といいます。エアロパーツを組んだ車高が低い車であれば、最低位が低いタイプ、ミニバンやSUV車のような車高が高い車の場合は最高位が高いタイプを選ぶ必要があります。
購入する時は、事前に車高を確認することで、ジャッキの高さが合わないというトラブルを防ぐことができます。
3. 製品の素材
油圧ジャッキの素材は、ガレージで作業するときは「スチール製」、車に搭載されるのであれば「アルミ製」がおすすめです。アルミ素材はスチールの約半分の重量であるため、軽くて携帯性に優れています。
スチール素材は頑丈で車体をしっかり支えてくれるため、二輪上げなどの作業に適しています。油圧ジャッキを選ぶときは、耐荷重に加え素材も検討するとよいです。