油圧トルクレンチ

油圧トルクレンチとは油圧トルクレンチ

油圧トルクレンチとは、油圧を動力にして大きな力をかけられるトルクレンチのことです。

小さな力で大きなトルクを生み出すことができることから、油圧トルクレンチは主に大型ボルトの締結に使われています。

油圧トルクレンチは、大きく分けて3つの部品から構成されています。

  • 油圧ピストン
    作動油の持つ圧力エネルギーを運動エネルギーに変える
  • ラチェット
    歯止めによって動作方向を一方に制限する
  • ケーシング
    油を効率よく吐出する

また、油圧ポンプをエアー油圧ポンプにすると、防爆エリアでも使用可能です。

油圧トルクレンチの使用用途

油圧トルクレンチは、下記のように中型~大型ボルトやナットの締めや緩めが必要な場面で使用されています。

  • 電力発電施設
  • 石油化学
  • 鉄工所
  • 造船所
  • シールドトンネル工事
  • 建機
  • 大型構造物の建築

なかでもシールドトンネル工事は、動力源が離れていても使用できる油圧のメリットが活用されています。長い油圧ホースを使用することで海中でのボルト締め作業や、海底ケーブルのフランジボルトの締め作業が可能です。

油圧トルクレンチの原理

油圧トルクレンチは油圧を用いて小さな力で大きなトルクを発生できる「パスカルの原理」を用いています。

1. パスカルの原理とは

パスカルの原理とは、密閉した液体の入った容器に一定の力を加えると、体積は減らずに圧力がどの方向にも等しくなるという法則です。

例えば、容器にかかる圧力と断面積が以下だったとします。

  • 圧力:1.0 MPa
  • 入力側の断面積:10cm2
  • 出力側の断面積:100cm2

このとき、同じ圧力を保つためには、以下のトルクが必要です。

  • 入力に必要な力:100kg
  • 出力できる力:1,000kg

このように、小さな入力で大きな出力が得られるため、油圧トルクレンチはもちろん、自動車のブレーキや油圧ジャッキなどに使われています。

2. ボルトやナットを締め付ける原理

油圧トルクレンチを使えば、ボルトやナットを簡単に締め付けることができます。

  1. 圧力ポンプ内の作動油によって圧力を上昇させる
  2. 油圧の力で油圧ピストンを動かす
  3. 油圧ピストンがラチェットに連動する押し爪 (ラチェットボール) を押すことで回転方向の力に変える
  4. 回転方向の力によってラチェットを動かす

このとき、1回で規定トルクまで回るわけではなく、1ストロークで約30度ずつ回転します。また、ラチェット機構には反力板が含まれており、1方向でしか動かないようになっています。そのため、ピストンが戻ってもボルトは逆回転しません。

油圧トルクレンチのその他情報

1. 油圧トルクレンチを使うメリットとデメリット

  • 小型で軽量なゆえに持ち運びしやすい
  • 締め付け精度が高い (精度±3%以内)
  • インパクトレンチなどに比べて、作業中の騒音が少ない

上記が油圧トルクレンチを使用するメリットです。特に、作業中の騒音が少ないのは、油圧トルクレンチならではの強みと言えます。例えば、地上で夜間にトンネルを掘削したいときでも、近隣住民の迷惑になりにくいです。

しかし、油圧トルクレンチには、作業速度が遅いというデメリットがあります。ただし、2台連結して使用することで、作業時間を減らすことが可能です。

2. 油圧トルクレンチの使い方

  1. 油圧トルクレンチおよび油圧ポンプに、ソケットと油圧ホースを接続する
  2. トルク換算表から設定圧力を確認する
  3. 油圧ポンプの圧力を設定する
  4. 締め付けたいボルトに油圧トルクレンチをセットする
  5. 油圧ポンプの電源を入れる
  6. 回転が止まるまで締め付ける

トルク換算表は油圧トルクレンチと同封されていることが多いです。万が一ない場合は、Web上で単位換算できるサイトがあります。

「圧力が設定値まで上がったもののラチェットが回らない」という状態になれば、締め付け完了です。締め付け不足は事故やケガの原因となるため、必ず締め付け確認を行います。

参考文献
https://www.plarad-rent.net/torque-sc/movie.html
http://www.bestma.co.jp/products/torque_wrench/about_torque_wrench.html

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