NTCサーミスタ

NTCサーミスタとはntcサーミスタ

NTCサーミスタとは、温度が上がると抵抗値が下がる性質を持つ電子部品です。

NTCとは、Negative Temperature Coefficient (負の温度係数) の頭文字をとったもので、温度と抵抗に負の相関があるという意味です。サーミスタ (英: Thermistor) は、Thermal Sensitive Resistor「熱に敏感に反応する抵抗体」から派生した言葉です。抵抗体を被測定体に接触させ、電気抵抗の差から温度を測定することができる部品のことを指します。抵抗体には金属酸化物半導体を使用していることが特徴です。

NTCサーミスタは材料が安価で加工しやすいため、サーミスタの中でも最も汎用性が高いです。微小な温度変化でも抵抗値が変化するため、高精度なサーミスタです。身近な家電製品や産業機器など広く利用されています。

抵抗値の違いを検出して、温度センサーとして利用されています。リードタイプやチップタイプ、ディスクタイプ、薄膜タイプなどがあります。

NTCサーミスタの使用用途

NTCサーミスタは安価な特性から、産業用途から家電製品まで幅広く使用されます。主に温度センサーとして利用されており、一例を以下に示します。

  • スマートフォンの内部温度検知
  • 電子基板における突入電流低減
  • 電子体温計の温度測定
  • 掃除機のモーター温度監視
  • 冷蔵庫の温度検知

1. スマートフォンへの応用

スマートフォンは熱に弱い部品や熱で精度が落ちる部品が使用されているため、熱がこもらないようにすることが重要です。そこで内部の温度変化をNTCサーミスタが検知して、ICに情報を伝えています。室温を測定するだけではなく、回路の安定化や故障を防ぐために過熱から回路を守る温度保護素子としても利用されます。

2. 突入電流低減

電気・電子機器において、電源投入時に一時的に定常電流値を超えて大きな電流が流れることがあります。この電流は突入電流と呼ばれます。突入電流の発生理由としては、大容量コンデンサの初期充電などが考えられます。

NTCサーミスタにおける低温時の高抵抗値を利用し、電源投入時の突入電流抑制に使用される場合があります。電流負荷によってサーミスタの温度が上昇すると、抵抗値が減少して電力も同様に減少します。

通電による温度上昇で抵抗値が低下するため、固定抵抗を使用するよりも電力損失を低減することが可能です。そのため、NTCサーミスタは突入電流を簡便・効果的に制限するICL(Inrush Current Limiter:突入電流リミッタ)として、電気・電子機器の回路保護に使用されます。

3. 温度測定回路

NTCサーミスタは温度測定回路として広く使用される部品です。温度変化を抵抗値変化で検出する部品のため、他の抵抗器と組み合わせて使用することが多いです。最もよく使用される回路構成は、定電圧源にプルアップ抵抗またはプルダウン抵抗を介して、サーミスタを接続し使用する方法です。

NTCサーミスタの原理

NTCサーミスタの主成分はセラミックスです。NTCサーミスタはマンガンニッケル、コバルトなどの酸化物を混合・焼結した半導体セラミックスに電極をつけています。ドーピング物質によってN型半導体とP型半導体があります。

通常は温度上昇時に自由電子と正孔の移動速度は小さくなります。しかしながら、NTCサーミスタは価電子帯の電子が熱エネルギーを受けて伝導体へ移動し、伝導体中の自由電子と正孔の増える割合のほうが上回るため、抵抗が小さくなります。温度が上がると指数関数的に抵抗値が下がる特性を持っており、抵抗温度係数は1℃あたり3~5%下がります。NTCサーミスタは抵抗値がなだらかに低下する点が特徴です。

NTCサーミスタを作るには、原料の酸化物を均一になるように混合して800℃~1,000℃で仮焼きします。それらを粉砕した後に粒の大きさを成型に適したサイズまで大きくし、最終形状に成型して1,300~1,500℃で焼成します。最後に電極を形成し、エポキシ樹脂で外装して完成します。

NTCサーミスタの選び方

NTCサーミスタは用途や寸法、B定数、抵抗値などによって選定します。用途はNTCサーミスタを使用する用途です。車載用や電子基板実装用などがあります。寸法と合わせて実装する場面に応じて選定します。

B定数は温度変化に対する抵抗値の傾きで、NTCサーミスタの材料配分によって変化します。B定数が大きいほど温度による抵抗変化が大きくなります。したがって、B定数が大きい製品は高感度であり、小さい製品は低感度です。

抵抗値は室温 (25℃) における通常抵抗値です。一般的には低温環境下では抵抗値が小さい製品を選定し、高温環境下では抵抗値が大きい製品を選定します。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/3898/
https://product.tdk.com/info/ja/products/protection/temperature/chip-ntc-thermistor/technote/apn-chip-ntc-thermistor.html
https://product.tdk.com/info/ja/products/protection/current/ntc-limiter/technote/apn-ntc-limiter.html

ヒューズホルダー

ヒューズホルダーとは

ヒューズホルダー

ヒューズホルダーとは、電気回路にヒューズを取り付けるための器具です。

固定用の留め金と電気回路との接続用端子から構成されます。ヒューズを簡単に交換できるように設計されています。

ヒューズは、過電流による機器の故障防止に利用されます。ヒューズ素材や配合具合に応じて適性があり、場面に応じて選定します。

ヒューズホルダーの使用用途

ヒューズホルダーは電気回路の保護機能向上させるために広く使用されます。以下はヒューズホルダーの使用用途一例です。

  • テレビなどの家電
  • 家庭用または産業用照明器具
  • 自動車用オーディオやETC用車載装置

家電にはヒューズホルダーを使用した製品も多く、異常時にヒューズが切れて電気回路を保護するため安全性が確保されます。車載製品でもヒューズホルダーが広く使用され、車両の電気回路を保護します。LEDライトや高精度電子基板にも、使用される場合が多いです。

ヒューズホルダーの原理

ヒューズホルダーの原理は、ヒューズの原理と密接に関係しています。ヒューズは通常状態で回路を通電させるための低抵抗状態です。しかしながら、電流が異常に高くなった場合にはヒューズの熱膨張により、ヒューズが切れて回路を遮断することができます。

ヒューズホルダーは、このヒューズを回路に固定するための器具です。ヒューズを取り付けるための留め金と電気回路接続用の端子があります。

回路に接続されたヒューズホルダーの中にヒューズを差し込んで使用します。ヒューズホルダーはさまざまなラインナップがあり、ヒューズの大きさに合わせてサイズを選びます。

ヒューズホルダーの種類

ヒューズホルダーは、場面に応じてさまざまな種類が存在します。以下はヒューズホルダーの種類一例です。

1. パネルマウント

パネルに取り付けて使用するヒューズホルダーです。パネルに穴を開けて固定し、ヒューズを差し込む形式が一般的です。パネルマウントタイプには取り付けネジがついている製品や、クリップでパネルに固定する製品など、さまざまな種類が販売されています。

2. インライン

電気回路中で直接使用するヒューズホルダーです。ヒューズを差し込む形式やスイッチのようにON/OFFできる形式などさまざまなラインナップがあります。また、インラインタイプはスルーホールやワイヤーリードなど接続方法も多彩です。

3. スルーホール

ヒューズホルダーの端子が穴状になったヒューズホルダーです。ヒューズをスルーホールに通して取り付けるため、ヒューズとヒューズホルダーの接触面積が大きく点が特徴です。したがって、接触抵抗が少なく信頼性が高い利点があります。

4. クリップ式

クリップでヒューズを固定するヒューズホルダーです。ヒューズを差し込む形式ではなく、クリップを開いてヒューズを挟み込んで使用します。ヒューズを簡単に取り外すことができるため、交換が簡単に行えるという利点があります。

5. ヒューズボックス

ヒューズを収納するボックス状のヒューズホルダーです。ヒューズを収納するためのボックスと、ヒューズと電気回路を接続する端子が一体化しています。防塵性や防水性に優れているため、屋外での使用に適しています。

ヒューズホルダーの選び方

ヒューズホルダーを選ぶ際には、サイズ、種類、定格電流、接続方法などを考慮します。

1. サイズ

まず、ヒューズのサイズに合わせたヒューズホルダーを選ぶ必要があります。ヒューズホルダーにはヒューズを取り付けるため、サイズ一致は必須です。

2. 種類

また、多彩な種類から適切な製品を選定することも必要です。ヒューズの種類に応じてヒューズホルダーを正しく選定します。ヒューズとホルダーが不一致であった場合、正しく電気回路に導入できません。

3. 定格電流

次に、定格電流を選定し、電流に応じて適切なヒューズを選んでヒューズホルダーに取り付けます。

4. 接続方法

ヒューズホルダーの端子部分に接続する配線の種類に応じて、適切な接続方法を持つヒューズホルダーを選定します。

参考文献
https://www.diylabo.jp/basic/basic-100.html
https://jp.misumi-ec.com/

IGBT (日本語)

IGBTとは

IGBT

IGBTとは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのことを言います。IGBTの頭文字は「Insulated Gate Bipolar Transistor」から取られており、IGBTの構造はMOSFETにP型半導体を追加した、PNP型バイポーラトランジスタです。

すなわち等価回路として、入力部にNチャンネルのMOSFETがあり、出力部にPNP型バイポーラトランジスタがある複合型のトランジスタの回路構成と考えればよいです。一方で、バイポーラトランジスタ部のベース部分にMOSFETがある構造とも言えるために、小さな電流に対して非常に大きな出力電流を発することができるという特徴があります。

高性能な半導体で、ベースとしているMOSFETよりも高耐圧で、損失が少ないです。さらに熱が発生しにくい利点があります。IGBTは1980年代に日本で開発された半導体で、その当時の構造はパンチスルー型と呼ばれました。

近年はウエハプロセスの進展に伴いさらに小型化、低コスト化が進んでおり、ノンパンチスルー構造やフィールドストップ型と呼ばれるIGBTデバイスが製造されています。

IGBTの使用用途

電力の大きい使用動作条件下においても高速なので、可変速駆動装置や電力変換器に用いられるのが一般的な使用用途です。IGBTの適用範囲は広く、大型の製品だとハイブリッド車や電気自動車、電車といった乗り物の高出力用三相モーター制御用のインバータに使用されています。

また、IH調理器具や洗濯機、エアコンのインバータ回路、プリンターなど大型の家電の電力制御にも広範囲に使用されています。近年の省エネ化に伴って、電力の損失を減らすことができるIGBTはさらに使用用途が拡大しています。

IGBTの原理

IGBTは、冒頭で説明したように入力部分にMOSFET、出力部分にバイポーラトランジスタの構造を持っていて、それぞれの特徴を合わせたような性質があります。IGBTはMOSFETにP型半導体を追加した構造で、そのキャリアは電子と正孔の2種類です。

キャリアが2種類なのでスイッチング速度がMOSFETよりは遅いですが、バイポーラトランジスタよりは早く、耐圧性はMOSFETより向上しています。端子の入力部であるゲートから電圧がかかるとMOSFETから電流が流れ、P型半導体まで導電すると、今度はバイポーラトランジスタの性質として少量の電流を増幅してエミッタとコレクタ間に大きな電流を流すことが可能です。

また、バイポーラトランジスタのように伝導率変調が起こるので、オン抵抗を低くすることができ電流密度が高くなります。コレクタとエミッタ間に一定の電圧降下が生じるので、電流が大きい場合にはMOSFETよりも損失を少なくすることができます。

IGBTのその他情報

1. IGBTを適用したインバータ回路について

インバーター回路とは、ACからDCへのコンバータ回路と対に用いられるDCからACへの変換回路です。このインバータ回路で電圧や周波数を変えた交流を出力の際に、IGBTが用いられます。

IGBTをスイッチングし、ONとOFFの間隔調整を行い、パルス幅の調整をします。異なるパルス波を生成整形することで、正弦波に近づけていきます。これをパルス幅変調と呼び、ここにIGBTはよく利用されています。

パルス幅変調での周波数変換により、モーターの回転数を変えて家電商品の機能は制御されています。エアコンや、冷蔵庫、産業用モーター、コンピューターの電源などの家電商品には広く用いられてます。

2. IGBTとMOSFETの違い

IGBTは、MOSFETとBJT(バイポーラジャンクショントランジスタ)のいいとこ取りのデバイスという説明はよくありますが、実はMOSEFETと比較すると欠点もあります。IGBTでは、その構成上オフセットを有する立ち上がり電圧を有するために、特に低電流領域では、一般にMOSFETデバイスの方がVdsが低くなります。

IGBTは中大電流領域を主眼に置くデバイスですので、この領域ではむしろMOSFETよりも低いオン抵抗を示しますが、低電力領域での効率を重視するようなアプリケーションの場合には、むしろMOSFETの方が良い特性です。Vdsが1V未満の領域は言うまでもなく、Vds=2V程度まではMOSEFETに効率面では軍配があがり、それより大きい電圧ではIGBTが優れています。

3. IGBTモジュールについて

IGBTは複合デバイスであるために、その動作を一から自力で制御するように組み立てるには労力が必要です。そのため、その制御部分の信号処理や増幅回路、保護回路、寄生ダイオード等を複合モジュールにまとめたIGBTモジュールは広く製品化されています。

IGBTはSOA(Safety Operation Area)や絶対最大定格を超えると破壊しやすいトランジスタであるため、その保護回路を内蔵しているものもあります。耐圧とスイッチング速度の両立の為に開発され、長年改良されてきたIGBTですが、このパワーデバイス領域に最近SiCやGaNという化合物半導体の新材料を用いたパワー半導体デバイスが導入され始めています。

これらの次世代パワー半導体デバイスは、IGBTよりも高速なスイッチング動作を可能とし、耐圧にも優れるため、近年研究開発がますます活発です。とはいえ、コストや供給面などのクリアすべき課題も残されており、現在のIGBTの市場領域をすべて置き換えるわけではなく、当面は住みわけが進むでしょう。

参考文献
https://detail-infomation.com/igbt/
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/2857/

外観検査装置

外観検査装置とは

外観検査装置

外観検査装置とは、製品の外観を検査する装置です。

大量生産による生産品の外観を検査することができます。装置を導入することで検品でかかる人件費の削減が可能であり、生産性を向上させて製品価格を抑えられます。また、人間の目では見落としやすい微細な欠陥や異常を高精度に検出し、品質を向上できる場合も多いです。

近年では、カメラや画像処理技術の向上により、微細な異物や欠陥の判定も可能となりました。製品や工程に応じて、さまざまな状況に特化した外観検査装置が製作されています。

外観検査装置は製造した製品の表面異物や汚れ・バリといった外観の検査を行い、瞬時に判定します。適用される外観検査の工程としては、製造途中工程や製品の組み立て工程などがあります。

外観検査装置の使用用途

外観検査装置は、多くの生産ラインで使用されています。食品包装や電子デバイス、医療機器、成型シートなど、業界はさまざまです。以下は用途の一例です。

1. 食品工場

食品包装においては容器のへこみや傷を検出するために使用されます。また異物などがないかといったことや、ラベルに印刷不良がないかどうかを検査します。

2. 医薬品工場

錠剤に欠けやヒビがないか、アンプルに異物が入っていないかどうかを検査します。

3. 電子機器工場

電子部品の形状や不良配線を検出することができます。ベアリングにおいては、錆・腐食やへこみを検査します。、また機器の表面や画面に傷や汚れがないかどうかなども検査が可能です。

4. 自動車工場

自動車部品に傷やバリがないか、表面傷や、塗装にムラがないかどうかを検査します。

外観検査装置の原理

画像処理検査方式はあらかじめ多数の合格品の画像を記録しておいて、それぞれの画素の濃淡を記録する方法です。一定の区画に区切った濃度差の平均値と標準偏差を求め、その値と検査対象の画素値を区画ごとに比較します。

合格品と比較して大きく濃度が異なる場合には、傷や異物として判断します。傷や異物の寸法基準を登録しておくことで合格、不合格を判断するという仕組みです。誤検出を防ぐために、微分処理や投影処理が行われる場合もあります。

外観検査装置の動作は一般的に高速で、全数検査が可能です。ただし、装置自体の導入コストが比較的高額です。また、対象物の形状や外観検査基準に応じたソフトウェアの最適化が重要で、立ち上げまで時間がかかる場合があります。以下は、外観検査装置の主な構成です。

1.  カメラ

製品を撮影するカメラです。高画質のカメラを使用することで、より詳細な検査が可能になります。

2.  照明

製品を均一に照らす照明です。照明の種類や角度を変えることで、検査対象となる欠陥をより鮮明に映し出すことができます。

3. 画像処理装置

外観処理装置の画像処理装置は、カメラで撮影した製品画像を分析することで、製品の欠陥を自動的に検出する装置です。目視検査に比べて、人間の目よりも精度が高く、安定した検査が可能です。

4. 排出装置

不良品を自動で排出する装置です。

外見検査装置の選び方

外観検査装置を選ぶ際には、製品や産業の要件に合わせて適切な装置を選びます。一般的には個別に設計して製作します。

まずは何を検査するかを明確にすることが重要です。製品の種類や材料、表面特性などに応じて適切な装置を選びます。特定の外観欠陥や品質基準を定義し、それに基づいて装置を設定できるかどうかも考慮することが必要です。

製造ラインに導入する際は、外観検査の速度と精度も重要です。高速な製造プロセスに対応し、所定の品質基準を満たす精度を持つ装置を選びます。

また、外観検査装置のカメラとセンサーには、さまざまな種類があります。製品の特性に合わせて適切なカメラの解像度、光源の種類、センサーのタイプを選ぶことが大切です。

外観検査装置のその他情報

1. 外観装置検査の機能

近年では、外観検査装置と人工知能 (AI) とを組み合わせ、より高度な外観検査や品質管理を実現するのがトレンドです。人工知能は機械学習や画像処理のアルゴリズムを活用して、大量のデータを解析し学習することができます。これにより、さまざまな機能が実現可能です。

欠陥検出
学習済みのモデルを使用して異常なパターンや欠陥を検出することができます。例えば、不良品の画像データを学習し、それを基に製品の外観を判定することができるため、より高い精度で欠陥を検出することが可能です。

パターン認識
複雑なパターンや形状を認識することが得意です。外観検査装置に搭載されたAIは、製品の外観パターンを学習し、正常な外観との比較を行います。異常なパターンや形状が検出されると、不良品として判定することができます。

自動学習と改善
外観検査装置が取得するデータを分析し、自動的に学習や改善を行うことができます。不良品のデータや検出結果をフィードバックし、モデルを更新することで、検査の精度や効率を自動的に向上させることが可能です。

多品種少量生産への対応
従来の外観検査装置では、品種の切り替え (段取り替え) に人間の手間がかかります。そのため、頻繁に段取り替えの生じる多品種少量生産だと、効率が落ちるという問題が生じます。これに対して、人工知能では、同時に複数の品種の学習を行わせることで、検査の段取り替えを最低限にすることができます。

人工知能を組み込んだ外観検査装置は、より高速かつ正確な検査を実現し、人間の目では見逃しがちな微細な欠陥やパターンを検出することが可能です。

2. 外観検査装置と人による外観検査の使い分け

外観検査装置と人による外観検査は、それぞれ特定の状況や要件に合わせて使い分けることが一般的です。

外観検査装置
外観検査装置は高速で一貫性のある検査を提供し、製造プロセスの効率性を向上させます。機械的な精度を持ち、連続的な監視が可能です。したがって、高速な製造ラインや大量生産が必要な場合や、検査対象が微細な部品である場合などに使用されます。

人による外観検査
人による外観検査は、新しい検査基準や変更に対応しやすく、柔軟に作業を調整できます。また、視覚的な経験や判断力を活用することも可能です。製品の外観基準が主観的で人間の判断が重要な場合や、小規模生産や試験生産では人が外観検査を実施します。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/landing/req/vision/lp_visual-inspection_01070123.jsp

電流プローブ

電流プローブとは

電流プローブとは、オシロスコープで直接電流を測定するためのプローブです。

被測定電流が流れるケーブルをヘッド部で挟み込むことにより、電流波形を観測します。ケーブルを切断せず、ケーブルに流れる電流を測定することを目的とした計測器にクランプメータがあります。

測定する度にケーブルの切断が不要なため、普段通り照明や設備を稼働したまま電流を測定できることが大きなメリットです。クランプメータと同様、電流プローブもケーブルを切断せずに電流波形を観測することができます。

電流プローブの使用用途

電流プローブは、オシロスコープを用いて電流波形を観測する場合に使用されています。用途としては、産業機器や電子機器の電流測定です。具体的にはインバータ機器の電流測定、モーターの負荷電流、スイッチング電源の測定、LED照明の駆動回路の評価などさまざまです。

電流の大きさや用途により、大電流用、微小電流用、高速電流用など、色々な機種が販売されています。また、直流電流及び交流電流両用の電流プローブと交流電流のみ測定が可能な交流専用の電流プローブがあります。

電流プローブの原理

電流プローブは電源ケーブルに電流が流れる際に生じる磁束を利用しているため、電流計を挿入する場合とは異なり、被測定回路を切断せずに測定できます。電流プローブのヘッド部 (ケーブルを挟む部分) は、トランスのコアと同様に高透磁率磁性材料 (パーマロイなどの鉄系の素材) を用いて、ケーブルから発生する磁束を閉じ込める構造です。

ただし、交流専用の電流プローブと交直両用の電流プローブとでは、磁束の検出方法が異なります。

1. 交流専用の電流プローブ

トランスは、1次側に加えた交流を2次側で巻数比に応じた電圧や電流に変換することができるものです。電流プローブにおいて、コアで囲まれた空間に交流電流が流れるケーブルが置かれると、トランスの1次側巻線と同様に作用します。

また、コアには2次側巻線に相当するコイルが巻かれていて、コア内の磁束変化に応じてその両端に現れる電圧からケーブルに流れる電流値を知ることができます。交流専用の電流プローブでは、この方法が主に採用されています。

ただし、直流では磁束の変化が無いため、2次側巻線に電圧が現れません。したがって、トランスの原理を利用した上記方法は使えません。

2. 交直両用の電流プローブ

直流電流も計測できる交直両用タイプのものは、ホール素子をコアの内部に埋め込んだヘッド部を用います。ホール素子は直流、交流どちらでもホール効果により磁束密度に応じた電圧を出力するため、この電圧をオシロスコープの端子に入力すると、電流値 (波形) がディスプレイ上に描かれることになります。

電流プローブのその他情報

1. 電流プローブの調整

電流プローブを使用する際に、事前に調整しておくべき事項として以下の2点があります。

オフセットキャンセル
交直両用の電流プローブは、直流から120MHz程度の交流まで測定可能であるため使いやすいですが、電流の検出にホール素子を用い、その出力をDCアンプで増幅してオシロスコープの入力端子に繫げることから、DCオフセットが避けられません。したがって、正確な測定にはこれをキャンセルする必要があります。

なお、手順は以下の通りです。

  1. プローブの先端にあるコアの残留磁気を消去するため、デガウス処理を実行します。
  2. オフセット電圧調整機能を使って、オシロスコープの表示が0Aとなるように調整します。
  3. この調整が終わってから、電流プローブを被測定回路に取り付けます。しかし、長時間測定を続けていると、徐々にDCオフセットが変動して0Aのポジションが変わってしまうため、時々上記手順を繰り返す必要があります。

スキュー調整
電源回路での電力測定など、電流プローブと電圧プローブを使って電流波形と電圧波形を同時に観測する場合、オシロスコープ本体に到達する信号の遅延時間がプローブ毎に異なるので、信号波形の位相合わせ、いわゆるスキュー調整が必要です。パワー測定デスキュー・フィクスチャ等の名称で調整用機器が販売されているので、これらを利用してプローブ間の位相合わせを行います。

2. 交流電流プローブにおける測定対象

交流電流プローブは前述した通り、トランスの原理を利用して被測定回路に流れる電流を検出しますが、低い周波数の電流では波形が小さく観測されます。特に低速のパルス信号はサグにより波形が歪んでしまいます。

したがって、直流を含む低い周波数の信号を測定する場合は、交直両用の電流プローブを選択することが重要です。

3. 電流プローブの周波数特性

電流プローブで扱える電流の大きさはその周波数に依存し、周波数が高くなると測定可能な電流は低下します。これは高い周波数ほど、コアやトランスの発熱が激しくなるためです。

被測定電流の周波数を踏まえ、使用するプローブの機種を選択する必要があります。

4. 挿入インピーダンスの影響

電流プローブを被測定回路に取り付けるのは、被測定回路に小さなインピーダンスを挿入することになります。このインピーダンスが回路に及ぼす影響は小さいので、通常は無視しても差し支えありません。

しかしながら、微小電流を測定するために電流が流れるラインをコアに複数回巻き付けると、前述のインピーダンスは巻き付けた回数倍の大きさになるため、被測定回路に影響を及ぼす可能性が高くなります。

参考文献
http://www.ktek.jp/probe-v-a-frm2011-11/tek-current-probe-tech-note.pdf
https://tmi.yokogawa.com/jp/solutions/products/oscilloscopes/current-probes/
https://news.mynavi.jp/article/oscilloscope2-8/
http://www.ktek.jp/hantek-dso-dmm-awg-2018/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%96%E5%85%A5%E9%96%80-2009-TEK%E7%89%88.pdf
https://www.keysight.com/ja/pd-1325146-pn-U1880A/power-measurement-deskew-fixture?cc=JP&lc=jpn

電気二重層コンデンサ

電気二重層コンデンサとは

電気二重層コンデンサは電極と電解液の界面に形成される電気二重層を利用して電荷を蓄えるコンデンサで、中でも特にエネルギー密度が高いのが特徴です。エネルギー密度が高いので、ニッケル水素電池リチウムイオン電池といった二次電池とよく比較されますが、電池は充放電時に化学反応を伴うのに対して、電気二重層コンデンサは物理的な電荷の吸着のみで化学反応を伴いません。

このため、電気二重層コンデンサはエネルギー密度(単位重量または体積当たりに貯められるエネルギー量)では二次電池と比べて劣りますが、その反面、出力密度(瞬間的に取り出せる電力の大きさ)や、繰り返し充放電による性能の劣化(寿命)が極めて小さいといったことがメリットとしてあげられます。

電気二重層コンデンサの使用用途

電気二重層コンデンサは蓄電デバイスとして利用されており、多くのエネルギーを必要とする用途では二次電池が適していますが、急速充放電が必要とされ、耐久性が要求される箇所では電気二重層コンデンサが選択されています。

具体的にはモバイル機器等の電子回路のバックアップ用電源、プリンター、コピー機、電動歯ブラシ、太陽電池時計等に使用されています。小惑星探査機のはやぶさのロボット動力システム、自動車の減速時のエネルギー回生にも利用されています。

電気二重層コンデンサの原理

電解二重層コンデンサは、活物質の界面に発生する電気二重層を利用してコンデンサにしています。静電容量Cは「C=εS/d」という式で定義され、この式から静電容量Cを大きくするためには、下記の対策が必要です。

  1. 活物質の表面積(S)を大きくする
  2. 電気二重層の厚さ(d)を小さくする
  3. 電解液の誘電率(ε)を大きくする必要があります。

電解液は4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩などの電解質を有機溶媒に溶解させたもの、正極と負極の活物質は活性炭が使用されており、静電容量Cを大きくするためには下記の対策が必要です。

  1. 表面積の大きい(粒径が小さい)活性炭を使う
  2. イオン半径の小さい電解質を使う
  3. 高誘電率の有機溶媒を使う

コンデンサの充放電は、電解液中の正負のイオンがそれぞれの電極に吸着されると、対になるように電解液と電極の界面に電荷が増える作用を利用しています。蓄えた電荷が放電されるとイオンが電気二重層から脱着します。電気二重層コンデンサの形状は円筒型または積層型があります。円筒型は正極、負極、セパレータを重ねて丸めて円筒に入れた後、電解液を注液するだけで、生産しやすいといった利点があります。

電気二重層コンデンサのその他情報

1. 電気二重層コンデンサの寿命

電気二重層コンデンサは電池と違って充放電時に化学反応を伴いません。このため二次電池では1000サイクル程度で初期から容量が大きく減少するのに対して、電気二重層コンデンサは原理的には100万回充放電してもほとんど性能低下しないとも言われています。しかし、実際は以下のような要因により電気二重層コンデンサの容量は低下していきます。

  • 充放電時、内部抵抗により発熱するため、温度上昇による劣化が起こり、容量が低下していきます。
  • 使用環境温度が、10℃上がるにつれて劣化速度が2倍になります。(使用環境70℃以下において)
  • 使用上限電圧以上の電圧がコンデンサに加わると電解液が分解します。

電気二重層コンデンサを使用する際には寿命への影響を考え、温度上昇・直列や並列に使用する場合は電圧や電流の偏りなどに注意する必要があります。

2. 電気二重層コンデンサの欠点

電気二重層コンデンサの欠点としては、以下のような点が挙げられます。

ドライアップ
電気二重層コンデンサの封止部から電解液が外へと蒸発してしまうことが原因で起きます。このデメリットは沸点の高い電解液を使用することや封止部を小さくすることで抑えることが可能です。

液漏れ
封止しているブチルゴムが劣化し液漏れすることがあります。ゴムを劣化させる原因となる水分が内部に侵入しにくいように封止部を小さくすることで抑制できます。

交流回路で使用できない
直流回路における電源バックアップ等の二次電気的な使用を想定しているため、交流回路で使用ができません。

 

参考文献
https://www.tokin.com/products/cap/sucap/edlc-guide/
https://www.tokin.com/products/cap/sucap/edlc-guide/#life_time
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/electric-double-layer-capacitors-guide

Tofセンサ-

ToFセンサ-とは

ToFセンサ- (英: time of flight sensor)とは、パルス投光した光が対象物表面で反射して返ってくるまでの時間から距離を測定するセンサーです。

多くのセンサーは、レーザー等から発された赤外線などを使用します。ToFセンサ-は時間を測定して距離に換算するので、近距離、長距離に関わらず、検出精度を一定に保つことができます。

ToFセンサ-は、対象物との距離の測定をはじめ、レベルセンサーとしての使い方、物体の位置確認・位置決め、空間内の人数確認等に使用されます。

ToFセンサ-の使用用途

1. VRやARの認識

TOFセンサーの使用用途-AR

ToFセンサーは対象との距離の測定が正確なので、近年話題のVR (Virtual Reality) やAR (Augmented Reality) の認識に利用され、画像をこれまでより立体感を持って表示することが可能です。

2. モニタリング

ToFセンサはレベルセンサとして機械のリフト量の監視、タンク内の残量のモニタリング、倉庫の在庫確認、ロール材料の残量確認、及び自動倉庫の在荷確認等に利用します。

3. ワークの着座確認

生産ラインで、ワークが治具に着座したことを、ToFセンサで確認します。

4. 空間内の人の人数把握

3次元ToFセンサーにより、特定の空間内の人数をカウントできます。物体までの距離をデータ化し、AIを使って人物を判別して人数を把握します。

5. 物体の寸法や体積の測定

3次元ToFセンサーを使って、物体の各部寸法を測定し、体積の測定が可能です。

6. スマートフォンの顔認証機能

暗い場所でも立体的に物体の像をとらえ、オートフォーカスの機能を高めることができるので、今後のスマートフォンの顔認証機能への応用が増加すると予想されます。

ToFセンサ-の原理

ToFセンサーの原理は比較的シンプルです。まず、センサ内のレーザーダイオードから変調された近赤外線などを投射します。対象物に当たって反射した近赤外線などはセンサ内の受光素子に戻ってきます。発した近赤外線と反射した近赤外線の位相差を時間差に変換し、発した光の速度を掛け合わせることで距離を割り出す仕組みです。

位相差の測定の他、時間差を直接測定する方法もあります。ToFセンサーでは距離に関わらず検出精度を一定にすることが可能で、暗い環境でも奥行きの精度が良く作動させられる点が、他のセンサより優れています。

レーザーの光には赤外線や近赤外線を用いることが多くありますが、センサによって異なり、人の目に害のある波長もあるので、用途によっては注意が必要です。

赤外線や近赤外線のレーザーの場合は、測定ポイントを目で見て確認することはできません。対象物にレーザーが照射されているかを確認するために、別にスコープやガイドレーザー等が必要になります。

ToFセンサーの種類

ToFセンサーには、1DToFと3DToFがあります。

1. 1DToFセンサー

1DToFセンサーは、センサから特定の点までの距離を測定します。人感センサや液体・粉体の量を測るレベルセンサなどに使用されます。

2. 3DToFセンサー

3DToFセンサーは、カメラのように画像で距離情報の取得が可能です。空間全体にある物体との距離を測定します。

ToFセンサーのその他情報

ToFセンサーのメリット

1. 遠距離設置が可能
ToFセンサーは、遠距離でも精度よく検知できるので、対象物から離れた場所に設置することが可能です。人やロボットの動線を避けた位置に設置できます。自動車などの大きなものはToFセンサーを複数設けて、多方向から位置決めが可能です。

2. 設置の自由度が高い
センサー自体が小型であり、省スペースで設置が可能です。また、照射方向も上下・水平・斜めなど自由に選択できます。

3. 対象物の表面状態に無関係
ToFセンサーは、高速でサンプリングして平均化処理するので、対象物の色、材質などを問わず、受光量が不足しても安定して検出できます。

参考文献
https://www.appps.jp/333174/
https://www.optex-fa.jp/tech_guide/tof_special/
https://news.mynavi.jp/article/20200320-smartphone_word/

コアレスモーター

コアレスモーターとは

コアレスモーター

コアレスモーターとは、鉄心のない小型のモーターです。

無鉄心電動機とも呼ばれます。コアレスモーターのメリットは、鉄心がないため鉄損による損失がないことです。コギングによる振動がなく、静かに稼働します。

ただし、発生する磁力が通常のモーターより弱いので、トルクは小さくなります。

コアレスモーターの使用用途

コアレスモーターは、小型で振動や騒音、電磁障害が少ない特徴を活かし、携帯電話のバイブレーションを起こす振動モーターやラジコンやロボットのサーボモーター等に利用されています。

応答性や制御性も優れているため、測量機器やカメラレンズのモーター、超音波内視鏡、サージカルドリル等でも使用されており、特に医療用途で欠かせないモーターです。各メーカーで、独自のコイルの巻き方や材質等の開発が進んでいます。

コアレスモーターの原理

通常のモーターは鉄心にコイルを巻き、その外側に磁石が配置された構造です。コイルに電流を流し、電磁誘導により発生する磁界を利用して磁石に回転を起こしています。

コアレスモーターでは、逆に内側に永久磁石を配置して、磁石の外側に樹脂などを利用してカップ状にコイルを巻くことで鉄心をなくしています。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則を受け、コイルが回転する仕組みです。コイルが回転するため、ロータと呼びます。

1. 電流への応答

コアレスモーターは巻き数のインダクタンスが少なく、高効率なモーターです。入力電圧に対する電流立ち上がりの特性を示すパラメータとしてモーターの電気的時定数があります。

電流がピーク値の63.2%に達するまでの時間を示します。コアレスモータでは電気的時定数が比較的低いため、電流は非常に高速に反応します。

2. 加減速応答

コアレスモータは重量が軽くなっている分、イナーシャも小さいモータです。イナーシャとは、慣性モーメントのことを指し、質量に比例して大きくなります。

イナーシャは、所定の回転速度まで加速または減速するのに必要なトルクである加減速トルクと比例関係にあります。つまり、コアレスモータでは加減速トルクも小さくなるため、急な加速・減速に適したモータです。

内部の磁石をネオジム磁石など、強力な希土類磁石を使用することで、より一層の小型化とトルクの拡大が進んでいます。小型、薄型、軽量化に役立っています。

コアレスモーターのその他情報

1. コアレスモーターの効率性

コアレスモーターの場合、鉄損が発生しません。鉄損は、主にヒステリシス損と渦電流損から成ります。鉄心の磁界報告が変化することで生じるエネルギー損失をヒステリシス損と呼びます。

また、磁界方向の変化によって鉄心内部で電流が発生します。発生した電気エネルギーは熱となり外へ逃げていきますが、この損失が渦電流損です。

コアレスモーターの場合、上記の鉄損が生じないため、高速回転時であっても高効率に動作可能です。コイルの巻き方に各社の技術が現れており、無駄を少なくし、効率を上げるよう工夫がなされています。

2. コアレスモーターとブラシレスモーターの違い

コアレスモーターとは、鉄心 (コア) を使用せずコイルと磁石から構成されたモーターのことです。一般的な鉄心の周りにコイルが巻かれたモーターのことをコアードモーターと呼びます。

ブラシレスモーターとは、ブラシを使用せず電子回路によって電流の向きを制御し、回転させているモーターのことです。一方、ブラシと整流子により回転させているモーターのことをブラシ付きモーターと呼びます。DCモーター (直流モーター) では、回転させ続けるために電流の向きを定期的に反転させる必要があるため、これを電子回路で制御するか整流子とブラシで制御するかで分類されます。

コアレスモーターは、ブラシ付きとブラシレスの2種類です。コアレスかつブラシレスであるモーターのことをコアレスブラシレスモーターと言います。ブラシ付きモーターの場合はローターがコイル、ステータが永久磁石です。ブラシレスモーターの場合は、ローターが永久磁石、ステータがコイルとなります。

3. コアレスモーターのメリットとデメリット

メリット

  • 小型で軽量
  • 高速回転が可能
  • 高効率で消費電流が少ない
  • コギングレス

モーターの重量は、鉄心が大部分を占めています。コアレスモーターでは鉄心がない分、小型・軽量化を実現しています。また、慣性モーメント (イナーシャ) が小さいため、応答性や制御性に優れ、モーター効率が良く高速回転が可能です。

コアードモーターの場合は、鉄心と磁石が近づいたり離れたりという動作を繰り返し、その度にコギングという磁力の引っ掛かりを生じます。しかし、コアレスモーターではコギングが発生しないため、滑らかで静かな回転である点もメリットです。

デメリット

  • トルクが小さい
  • 熱に弱い
  • 高価格

コアレスモーターは、一般的にトルクが小さい点がデメリットです。トルクの大きさは電流値に比例します。高トルクにするためには大電流を流す必要がありますが、線が細い上に鉄心がないため機械的にコイルが弱く、大きな電流をかけることができません。

許容電流値の小さなコアレスモーターに大きな電流を流すと、熱でコイルが変形しモーターの故障につながる可能性があります。

参考文献
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/ninja/041
https://jp.aspina-group.com/ja/learning-zone/columns/what-is/002/
https://toshiba.semicon-storage.com/
https://www.hamacho.net/jp/
https://www.cls-motor.com/products/dc

ピンヘッダ

ピンヘッダとは

ピンヘッダ

ピンヘッダは、プリント基板上に取り付けて使用する端子です。

ピンやソケット、ジャンプソケットを含む総称としても使われています。総称であっても、実際には差し込むオス端子を持つものをピンヘッダ、端子を差し込むメス側の端子を持つものをピンソケットと呼び分けられています。いずれにしても、プリント基板にケーブルを使わず電気的な接続を行えるのが特徴です。

例えば、ブレッドボードブレッドボードにピンヘッダを取り付けてPICkitを接続し、PICマイコンにプログラムを書き込んだりします。

ピンヘッダの使用用途

ピンヘッダの使用用途は、基盤同士をケーブルを使うことなく、ピンを差し込むことで接続する用途です。

例えば、ブレッドボードやユニバーサル基板などの基板に取り付けて、信号の入力や外部との接続をしやすくしています。また、基板間にピンヘッダをはさみ、複数の基板間にスペースを確保するのもよくある用途です。

一般的には、2.54mmのピッチのものがよく利用されています。この他にも様々なサイズや長さのものがあります。ピンの片側がエル字に曲がったものなど形状のバリエーションが多いのも特徴です。

車載制御、産業機器、コンピュータ、通信機器、医療機器、ストレージ、家電製品など様々な電子機器の内部接続に使われています。

ピンヘッダの原理

伝導体であるピンと絶縁体であるハウジングからできていて、回路をつなぐ役割をしています。両側ともオス型やオス‐メス型などがあるコネクタです。オス‐オス型は両端にピンが出ていて、基板に取り付けることができます。ブレッドボードは差し込むだけで使用できますが、ユニバーサル基板でははんだ付けをします。ピンヘッダの基本的な構造は、プリント基板に差し込むオス側の端子を複数有し、これをハウジングと呼ばれる絶縁体の筐体で保持している構造です。

端子は金やスズでメッキされています。筐体であるハウジングは細長い形状のものが一般的です。細長いハウジングに40本ものピンが一列になっていて、1本ずつ取り外せるようになっているものが多く販売されています。これらピンは、カッターやニッパーで取り外せます。

なお、ピンヘッダには種類があり、ハウジングの長さ方向に対向する2面の両方にピンが配されたものがオス・オス型、2面の片側のみピンが配され反対皮の面には端子を差し込むメス側の端子があるものがオス・メス型です。片側のメス側の端子しかないものや両面にメス側の端子のものはピンソケットと呼ばれています。

オス‐オス型は両端にピンが出ていて、複数の基板を電気的に接続可能です。ブレッドボードは差し込むだけで使用できますが、ユニバーサル基板でははんだ付けをします。ピンヘッダの径がブレッドボードの穴経と合わないと基板の穴に納まりが悪くなるため、ピンヘッダの径の検討は重要です。

ピンヘッダのその他の情報

1. ピンヘッダのピンの種類

ピンヘッダで電気的な接続をおこなう端子であるピンには色々な種類があります。
まず、ピンの形状には、角ピンと丸ピンがあります。角ピンは、基板の穴に挿入する端子部分となるコンタクトの根元部分が板バネ状になっているピンです。この角ピンの根元部分をピンを保持する筐体であるハウジング内部の板で挟み込んでいます。角ピンを基板の穴に差し込むと、板バネの力で穴の内部にピン先端部の面が押し当てられ、電気的な接続がなされます。
丸ピンは、円柱状のピンです。丸ピンはハウジングに嵌合されています。そのため、ピンの挿抜は最低500回程度可能です。保持性もよく、衝撃や振動に対しても高い耐久性を持ちます。

なお、ピンの材質は黄銅で、スズメッキか金メッキが施されています。金メッキのほうが防錆効果が高く耐久性があります。使用温度範囲は―40℃~105℃程度です。

2. ピンヘッダの仕様

ピンヘッダの仕様には、ピンのピッチがあります。複数のピン間の寸法で表され、ピンとピンの中心間の距離で表されます。2.54mm、2.0mm、1.27mmが一般的です。
また、ピンヘッダの仕様にはピンの列数もあります。ハウジングの長さ方向に並ぶピンの列の数を示します。1列と2列が一般的です。定格電流、定格電圧がありますので超えないように注意してください。

ピンヘッダの仕様には、ピンの向きもあります。基板とピンの取り付け方向が垂直取り付けのものをストレートといい、平行に接続するものをライトアングルといいます。

3. ピンヘッダの取り付け

ピンヘッダを基板に固定する場合、差込 (DIP) もしくは、表面実装 (SMT) 半田付けでおこないます。基板と基板を連結するピンヘッダでは、両端ともはんだ付けをします。また、補強板を使用することでフレキシブル基板にも使用可能です。ピンヘッダを利用してフレキシブル基板とリジッド基板を実装接続することも可能です。また、メス側の端子を利用して着脱を可能にすることもあります。

参考文献
https://hirosugi.co.jp/technical/pn-code/pinheader_1.html

スペクトラムアナライザー

スペクトラムアナライザとは

スペクトラムアナライザ

スペクトラムアナライザは電気計測器の一つです。通称「スペアナ」と呼ばれています。スペクトラムアナライザの画面では、周波数を成分として分布することで横軸に周波数、縦軸に振幅を表示します。

高周波用と低周波用が存在しており、それぞれで用途が異なっています。主に高周波用は、電波の高周波信号の「周波数成分の分布の表示」「AC電源の成分の分析」を行なっており、低周波用では「ノイズの分析」などに使用されています。

静電気や過大電力信号等で不正確な結果になる場合もありますので、使用方法や条件をよく確認してから使用することをお勧めします。

スペクトラムアナライザの使用用途

高周波のスペクトラムアナライザは「無線機」「送信機」「受信機の検査」「測定」「設計」「修理」「送信波」「スプリアスの測定」などに使用されています。各種の設定項目が重要なので、用途に応じて適切な値を入力する必要があります。

低周波用では、小型で持ち運べる製品もあり、フィールド試験で「電界強度の測定」「周波数特定」「騒音測定」「機械の診断」「構造解析」「振動試験」と幅広く使用されています。 身近な例としては、ワイヤレスランの設置作業にも利用されます。

スペクトラムアナライザは、オシロスコープと比較して説明されることがあります。一般に、オシロスコープは、低い周波数帯の時間軸を観察することが多いため、信号を周波数で捉えて観察することが可能なスペクトラムアナライザと共に使用されます。しかし、オシロスコープとスペクトラムアナライザは、信号を違う角度から観測しており、得意な領域が異なるため、必要な情報を検討して使用する必要があります。

スペクトラムアナライザの原理

多くのスペクトラムアナライザは、スーパーヘテロダイン方式です。ヘテロダインとは、信号の処理技術のことを表しており、受信した電波にその他の周波数を混ぜたり、組み合わせることで発生する周波数の差を波に変換して生まれる信号周波数のことを指しています。

一般的にはスーパーヘテロダインは、受信した信号を元の搬送波よりも処理しやすい固定の中間周波数(IF)に変換する受信方式のことを指しています。しかし、スーパーヘテロダインは、受信機のことを呼称している場合もあり、受信方式を採用している受信機のことをまとめてスーパーヘテロダインと呼ぶこともあります。アナログ時代からある方式で、ラジオや受信機と同じ仕組みです。

スーパーヘテロダイン同調掃引方式では、入力信号をアッテネータとローパスフィルターで制限されながら通過します。さらに、ミキサと局部発振器(ローカルオシレータ)が入力信号を周波数変換します。そして、バンドパスフィルターによって設定された周波数分解能で帯域制限された周波数を掃引して測定していきます。狙った周波数範囲のみを測定可能なため、ノイズレベルを下げることができます。

近年では、FFT方式が開発されたことで人気が出てきています。入力信号が周波数変換されるところまではスーパーヘテロダイン同調掃引方式と同じです。バンドパスフィルターの出力をADコンバータでデジタル信号に変換してから高速フーリエ変換で周波数を表示する場合もあります。計測するまでの時間を短縮することが出来るため、スペクトラムが短時間で変化する場合の測定に向いています。

スペクトラムアナライザのアプリケーション

スペクトラムアナライザには大きく分けて2つの種類があります。まず、オーディオ信号を取り扱うものが挙げられます。次に、電波の強度を可視化するタイプが挙げられます。

スペクトラムアナライザは、入力された信号を周波数成分に分解することで、それぞれのシグナル強度をグラフ化するための計測器です。測定信号をアプリケーションのデジタル解析により演算処理を行います。

オーディオ信号を取り扱うものは、数十~22kHz程度の音声信号をパソコンのサウンドボードに入力します。そして「FFT演算」「グラフ表示」を行うことで、どの周波数信号が強く出ているかをアプリケーションで可視化して確認することが出来ます。これらの過程を経て部屋の音響確認や楽器のチューニングなどが行えます。

電波強度用の計測器に付属するアプリケーションは、Wi-Fi信号の検出や強度の確認のために可視化ツールとして使用されています。Wi-FIデバイスなどで受信した信号を演算処理することで「2.4GHz帯」「5GHz帯」の信号強度をグラフ化することができます。

スペクトラムアナライザの価格

オーディオ信号用のスペクトラムアナライザは、パソコンのサウンドボードで代用できるため、数千円で購入することができます。

実質的にWi-Fi信号の可視化だけが目的のスペクトラムアナライザであれば、スマホやパソコンのWi-Fi受信機で実現が可能なため、追加の購入費用の削減が見込めます。

10GHzまで計測できるような電子機器の電波解析用スペクトラムアナライザの場合は、200万円から1000万円が相場になります。

スペクトラムアナライザの通過帯域幅(RBW)

スペクトラムアナライザで観測したい信号成分だけを検出して不要なノイズを除去するために重要なのがRBW(Resolution Band Width:分解能帯域幅)の設定です。

必要な信号に対して、基準となる既知の周波数の信号をミキシングすると、中間周波数と呼ばれる信号が生成されます。この中間周波数の通過帯域を絞り込むことで不要な信号を除去することが出来るため、観測したい信号だけを取り出すようにします。

このときに絞り込む通過域によって信号の分解能が決まることから「RBW」と呼ばれています。

RBMを狭くした場合は、計測に時間を伴いますが、精度を上げることが出来ます。RBMを広くした場合には、計測する時間が短縮されます。しかし、ノイズが含有されるため、分解能は低下します。

参考文献
http://www.micronix-jp.com/note/application/fundamentals_of_speana_1.html
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/spectrum-analyzer-guide
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/8/39_627/_pdf
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-SpectrumAnalyzer-01/?page=2
https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/test-measurement/files/Application-Notes/Application-Note/MS269xA_MS2830A_JF4100.pdf