コアレスモーター

コアレスモーターとは

コアレスモーター

コアレスモーターとは、鉄心のない小型のモーターです。

無鉄心電動機とも呼ばれます。コアレスモーターのメリットは、鉄心がないため鉄損による損失がないことです。コギングによる振動がなく、静かに稼働します。

ただし、発生する磁力が通常のモーターより弱いので、トルクは小さくなります。

コアレスモーターの使用用途

コアレスモーターは、小型で振動や騒音、電磁障害が少ない特徴を活かし、携帯電話のバイブレーションを起こす振動モーターやラジコンやロボットのサーボモーター等に利用されています。

応答性や制御性も優れているため、測量機器やカメラレンズのモーター、超音波内視鏡、サージカルドリル等でも使用されており、特に医療用途で欠かせないモーターです。各メーカーで、独自のコイルの巻き方や材質等の開発が進んでいます。

コアレスモーターの原理

通常のモーターは鉄心にコイルを巻き、その外側に磁石が配置された構造です。コイルに電流を流し、電磁誘導により発生する磁界を利用して磁石に回転を起こしています。

コアレスモーターでは、逆に内側に永久磁石を配置して、磁石の外側に樹脂などを利用してカップ状にコイルを巻くことで鉄心をなくしています。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則を受け、コイルが回転する仕組みです。コイルが回転するため、ロータと呼びます。

1. 電流への応答

コアレスモーターは巻き数のインダクタンスが少なく、高効率なモーターです。入力電圧に対する電流立ち上がりの特性を示すパラメータとしてモーターの電気的時定数があります。

電流がピーク値の63.2%に達するまでの時間を示します。コアレスモータでは電気的時定数が比較的低いため、電流は非常に高速に反応します。

2. 加減速応答

コアレスモータは重量が軽くなっている分、イナーシャも小さいモータです。イナーシャとは、慣性モーメントのことを指し、質量に比例して大きくなります。

イナーシャは、所定の回転速度まで加速または減速するのに必要なトルクである加減速トルクと比例関係にあります。つまり、コアレスモータでは加減速トルクも小さくなるため、急な加速・減速に適したモータです。

内部の磁石をネオジム磁石など、強力な希土類磁石を使用することで、より一層の小型化とトルクの拡大が進んでいます。小型、薄型、軽量化に役立っています。

コアレスモーターのその他情報

1. コアレスモーターの効率性

コアレスモーターの場合、鉄損が発生しません。鉄損は、主にヒステリシス損と渦電流損から成ります。鉄心の磁界報告が変化することで生じるエネルギー損失をヒステリシス損と呼びます。

また、磁界方向の変化によって鉄心内部で電流が発生します。発生した電気エネルギーは熱となり外へ逃げていきますが、この損失が渦電流損です。

コアレスモーターの場合、上記の鉄損が生じないため、高速回転時であっても高効率に動作可能です。コイルの巻き方に各社の技術が現れており、無駄を少なくし、効率を上げるよう工夫がなされています。

2. コアレスモーターとブラシレスモーターの違い

コアレスモーターとは、鉄心 (コア) を使用せずコイルと磁石から構成されたモーターのことです。一般的な鉄心の周りにコイルが巻かれたモーターのことをコアードモーターと呼びます。

ブラシレスモーターとは、ブラシを使用せず電子回路によって電流の向きを制御し、回転させているモーターのことです。一方、ブラシと整流子により回転させているモーターのことをブラシ付きモーターと呼びます。DCモーター (直流モーター) では、回転させ続けるために電流の向きを定期的に反転させる必要があるため、これを電子回路で制御するか整流子とブラシで制御するかで分類されます。

コアレスモーターは、ブラシ付きとブラシレスの2種類です。コアレスかつブラシレスであるモーターのことをコアレスブラシレスモーターと言います。ブラシ付きモーターの場合はローターがコイル、ステータが永久磁石です。ブラシレスモーターの場合は、ローターが永久磁石、ステータがコイルとなります。

3. コアレスモーターのメリットとデメリット

メリット

  • 小型で軽量
  • 高速回転が可能
  • 高効率で消費電流が少ない
  • コギングレス

モーターの重量は、鉄心が大部分を占めています。コアレスモーターでは鉄心がない分、小型・軽量化を実現しています。また、慣性モーメント (イナーシャ) が小さいため、応答性や制御性に優れ、モーター効率が良く高速回転が可能です。

コアードモーターの場合は、鉄心と磁石が近づいたり離れたりという動作を繰り返し、その度にコギングという磁力の引っ掛かりを生じます。しかし、コアレスモーターではコギングが発生しないため、滑らかで静かな回転である点もメリットです。

デメリット

  • トルクが小さい
  • 熱に弱い
  • 高価格

コアレスモーターは、一般的にトルクが小さい点がデメリットです。トルクの大きさは電流値に比例します。高トルクにするためには大電流を流す必要がありますが、線が細い上に鉄心がないため機械的にコイルが弱く、大きな電流をかけることができません。

許容電流値の小さなコアレスモーターに大きな電流を流すと、熱でコイルが変形しモーターの故障につながる可能性があります。

参考文献
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/ninja/041
https://jp.aspina-group.com/ja/learning-zone/columns/what-is/002/
https://toshiba.semicon-storage.com/
https://www.hamacho.net/jp/
https://www.cls-motor.com/products/dc

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