ハーフピッチコネクタ

ハーフピッチコネクタとは

ハーフピッチコネクタとは、通常のフルピッチのコネクタに比べてピッチの長さが半分のコネクタです。

フルピッチのコネクタのピンの長さが2.54mmに対して、ハーフピッチコネクタは1.27mmになります。フルピッチのコネクタは、アメリカ軍の調達規格であるMIL規格や、ドイツの工業規格であるDIN規格に準ずる製品が主流ですが、ハーフピッチコネクタは製造会社によって、様々な規格の製品が発売されています。

ハーフピッチコネクタの使用用途

ハーフピッチコネクタは、様々な電子機器のインターフェースの役割があります。計測機器や産業用ロボット、半導体・液晶ディスプレイ製造装置、新幹線などの鉄道製品、ATM、発電設備など多くの工業製品で使用されます。

様々な製造会社から独自の規格のハーフピッチコネクタが発売されているので、使用用途に適しているハーフピッチコネクタを選定することが大切です。製品の一部として使用する場合は、ハーフピッチが取り付けられているソケット側とピッチに合った穴がついているプラグ側の2つで発売されている製品を選定すると使いやすくなります。

ハーフピッチコネクタの原理

ハーフピッチコネクタは、ピッチがついているソケット側と穴がついているプラグ側に分かれています。

1. ソケット側

ソケット側は、ピッチがついているソケットコンタクト部と、コンタクトが埋め込まれる本体であるハウジング部、絶縁体で作られているハウジングやソケットコンタクトを保護するためのケースであるソケットシェルで構成されています。

2. プラグ側

プラグ側は、ピッチの穴がついているプラグコンタクト部と、ハウジング部、プラグシェルで構成されています。それぞれの部品は、アイレットと呼ばれる留め具で固定されます。

ハーフピッチコネクタのその他情報

1. ハーフピッチコネクタの接続方法

接続の方式としては、基板と基板をつなぐ方式、機器と機器をつなぐ方式、短絡コネクタやICソケットなどの電子部品をつなぐ方式があります。

基板と基板をつなぐ方式の接続方法は、それぞれの基板にプラグとソケットを取り付けて接続します。水平接続や垂直接続、スタッキング接続といった接続の種類があります。

2. ハーフピッチコネクタの基板

ハーフピッチ基板は通常の基板の部品ピッチ2.54mmの半分の1.27mmになるため、かなり特殊な基板です。そこに実装できるリード部品もハーフピッチに合った部品となります。その中でもコネクタは、そのコネクタのピンピッチがハーフピッチに適合したコネクタを使用することになります。

従来であれば、ハーフピッチであることは2.54mmピッチの標準化から外れて不利でしたが、昨今ではリード付きの部品自体が減って、ほとんどの部品が面実装部品になってきました。そのため、逆に絶縁が確保できる低電圧回路であれば、面積を小さくできるハーフピッチの基板やコネクタや関連のハーフピッチ対応部品の方が優勢になり、自動車や事務機器で、ハーフピッチの基板設計が見直されつつあります。

しかし、ピッチが狭くなることによる弊害はあり、例えばマイグレーションやトラッキングと言った経年劣化に伴う絶縁破壊は起こりやすくなり、信頼性が低下することは避けられません。よって、ハーフピッチを採用するためには、使用環境をしっかりと把握しておくことが重要です。

3. ハーフピッチコネクタ対応半導体

ハーフピッチコネクタ対応半導体は、通常の基板ピッチの半分になるハーフピッチ基板に実装対応した半導体部品のことです。昨今、究極の微細化を追求する半導体テクノロジトレンドでは、特殊な狭いピッチのパターン、即ち千鳥配置のコンタクトやビアを伴う配線の最小ハーフピッチが主流です。

高密度つまり、単位機能当たりで低コストな集積回路が求められています。例えば、MPUロジックにおいて、その物理的なゲート最下部の長さによって、最高性能に不可欠な最先端技術を代表した経緯があります。

従来から大きな技術進歩をメタルのハーフピッチで表していて、DRAMが良い例です。

参考文献
https://www.omron.co.jp/
https://www.kel.jp/product/blog_detail/id=10803
https://www.fa.omron.co.jp/products/family/2919/dimension.html
https://semicon.jeita.or.jp/STRJ/ITRS/2003/01d%20Glossary.pdf

リニアレギュレータIC

リニアレギュレータICとは

リニアレギュレータIC

リニアレギュレータの種類

図1. リニアレギュレータの種類

リニアレギュレータICとは、安定した電圧を出力する電子部品です。

入力された電圧に対して、抵抗や半導体素子の電圧降下を利用し、一定の電圧を出力端子から出力します。入力電圧に対して、出力の電圧が小さいとその電圧差分損失が大きくなるため、小電力で動作する回路やセンサーなどの電源として利用されています。

リニアレギュレータICの中でも、半導体素子を使った能動可変抵抗素子を直列につないだものがシリーズレギュレータ、並列につないだものがシャントレギュレータです。

リニアレギュレータICの使用用途

リニアレギュレータICは、小電力で動作する電子機器や精密機器などの電源部分として使用されています。回路が単純であるため、低価格帯の製品が多い、供給する電源の電圧の安定性に優れている、ノイズが少ない点が特徴です。

リニアレギュレータICの中でも、シリーズレギュレータは、能動可変抵抗素子で電圧降下を行う際に発熱するため、ICの絶対最大使用温度を超えないようにする必要があります。レギュレータICの発熱が大きい場合には、必要に応じて外付けのヒートシンクを付ける等の処置をしなければなりません。

リニアレギュレータICの原理

一般的な3端子レギュレータのつに、リニアレギュレータICがあります。3端子レギュレータは、入力端子、出力端子、グランドの3つの端子があります。3端子レギュレータの構造は基本的に同じです。

入力端子に電源を接続し、且つ入力端子とグランド間に入力コンデンサを接続し、出力端子とグラント間にも出力コンデンサを接続することで、出力端子から一定の電圧が出力されます。

リニアレギュレータICの原理

図2. 3端子レギュレータの原理

リニアレギュレータICの内部は、トランジスタやFETを用いた能動可変抵抗素子と基準電圧源などで構成されている制御回路で構成されています。制御回路では、能動可変抵抗素子を通過した電圧を測定し、フィードバック制御を行い、能動可変抵抗素子の抵抗値を制御することで、出力端子から出力される電圧の大きさを一定に制御します。

能動可変抵抗素子では、ある一定電圧以上の電圧降下が発生するため、安定して電源を出力するためには、ドロップアウト電圧と呼ばれる入力電圧と出力電圧の差の最小値を上回る入力電圧が必要です。通常は1.5V程度ですが、最低入力電圧に注意してICを選定する必要があります。

リニアレギュレータICのその他情報

1. 3端子レギュレータの使用上の注意点

3端子レギュレータの放熱
3端子レギュレータは、不安定な入力電圧をトランジスタやFETなどの能動可変抵抗素子を用いて安定した出力電圧を得るものですが、入出力端子間の電圧差と出力端子から流れる電流 (出力電流) との積がレギュレータ内部の熱となって電力を消費します。従って、入力電圧と出力電圧の差が大きいほど、かつ出力電流が大きいほど発熱量は多くなります。

そのため、3端子レギュレータを使う際は放熱設計が重要な要素です。効率的に放熱するように、適切なヒートシンクを設計して3端子レギュレータに取り付けることが必要です。

3端子レギュレータの基板設計
3端子レギュレータは、出力電圧をフィードバックして常に安定した電圧を出力するよう動作しています。それ故入力端子-GND間と出力端子-GND間に接続するコンデンサは非常に重要ですが、特に、出力端子のコンデンサが適切なものでないと出力電圧が発信する恐れがあります。

一般的には3端子レギュレータのメーカーが推奨するコンデンサを選定することになりますが、その場合もコンデンサをなるべく3端子レギュレータの近傍に配置し、かつ3端子レギュレータとコンデンサ間の基板パターンを短くする様に基板設計を行って下さい。

3端子レギュレータの保護
入力や出力に何らかの異常電圧が加わることが予想される場合は、3端子レギュレータを保護する回路が必要になります。入力側に瞬間的な高電圧が加わる恐れのある場合は、入力にダンピング抵抗やツェナーダイオードを付加してその高電圧をクランプして下さい。

入力電圧が出力電圧より低下する可能性がある場合にも対策が必要です。何らかの理由で入力電圧が大きく低下する場合、一定の出力電圧を維持するためには出力端子に大きな静電容量のコンデンサを接続する必要があります。その背反として電源OFFした時などに、一時的に入力端子電圧よりも出力端子電圧の方が高い電圧になることがあります。

また、複数の電源を組み合わせた回路では、他の電源から廻り込んで出力電圧が入力電圧より高くなる可能性も考えられます。これらへの対策として、出力端子から入力端子方向に電流が流れるように保護ダイオード (入力側をカソード、出力側をアノードに接続) を付けておく方法があります。

2. LDO型レギュレータの特徴

LDO型レギュレータの特徴

図3. LDO型レギュレータの特徴

3端子レギュレータでは、ドロップアウト電圧 (入力電圧に対し出力電圧が低下した分) の大きさにより、「標準型」もしくは「LDO型」に分類されます。

標準型のドロップアウト電圧は3.0V程度になりますが、LDO型はドロップアウト電圧が1.0Vを下回り、標準型より小さいことが特徴です。尚LDOとはLow Drop Outを省略表示したものです。入力電圧を12V、 出力電圧を5Vとした組み合わせが一般的であった頃は、12Vから5Vに変換するのに3端子レギュレータが盛んに採用されました。この場合、ドロップアウト電圧が3V程度の標準型レギュレータでも問題なく使えました。

ところが3.3V系のデジタルICが主流となって入力電圧が5V、出力電圧が 3.3Vの組み合わせになると、基板上で5Vを3.3Vに変換する為にLDO型レギュレータを採用することが必須となりました。バイポーラトランジスタを使った標準型の出力回路は、NPNトランジスタ2個をダーリントン接続した構成になっていますが、LDO型の出力回路ではPNPトランジスタ1個で構成しています。これにより、小さなドロップアウト電圧での動作が可能になりました。

しかしながら、負帰還特性も変化し、LDO型は標準型に対して安定動作範囲が狭くなり発振し易くなっています。それ故にLDO型では、出力端子に接続されるコンデンサの容量やESR (等価直列抵抗) 特性が極めて重要なファクターです。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/dc-dc-converters/dcdc_what4
https://www.zuken.co.jp/club_Z/zz/tech-column/20171025_r002.html
https://pages.rohm.co.jp/Tech_download05.html
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/3-terminal-regulators-guide
https://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/34/34391/34391_onboard.pdf

検出スイッチ

検出スイッチとは

検出スイッチとは、オンとオフの切り替えに使用されるスイッチです。

赤外線や、マイクロ波、磁気、光、振動、加圧などを検出して動作します。機械的な接点によってスイッチが動作する場合や、内蔵されている検出素子が光などを検出したときに出る電子や抵抗の変化などによって、スイッチの動作を行う場合があります。

検出スイッチの使用用途

検出スイッチは、店舗や住宅、製品、生産工場、実験装置などで利用されます。検出スイッチの選定の際には、サイズや検出精度、ノイズへの対処、耐久性を考慮する必要があります。

検出スイッチの使用例を以下に示します。

  • 自動ドアにおける、人の接近を赤外線によって感知し、動作させるシステム
  • 工場における物体の通過を感知して、警報を鳴らすシステム
  • 入場ゲートにおけるICカードや磁気ストライプカードの検出システム

検出スイッチの原理

検出スイッチの動作原理を説明します。検出スイッチの中でも、接触によって動作するスイッチ、磁気によって動作するスイッチ、光によって動作するスイッチ、温度変化によって動作するスイッチの検出方法を説明します。

1. 接触

接触を感知する場合は、接触による圧力の変化を、ダイヤフラムなどを使用した検出素子の抵抗の変化量を計測し、スイッチを動作させます。その他にも、接触によって機械的接点を動作させる方式もあります。

2. 磁気

リードスイッチやホール素子、磁気抵抗素子といった検出素子を利用して、磁気の変化量を検知し、スイッチの駆動を行います。使用されている検出素子の種類によって、電源が不要なスイッチから、高速の応答が可能なスイッチ、高感度のスイッチなどがあります。

3. 光

フォトダイオードと呼ばれる検出素子を使用して、光を検出してスイッチを動作させます。フォトダイオードは光を電気に変換する検出素子です。

4. 温度

温度によって抵抗が変化する温度抵抗体などを検出素子として利用することで、スイッチを動作させます。ダイヤフラムなどを利用して、温度によって変化した抵抗量を検知します。

検出スイッチの種類

検出スイッチの種類は、まず検出方式の種類として「接触式」「非接触式」があります。

1. 接触式検出スイッチ

接触式検出スイッチは、物理的な力の作用によって接点を切り替える方式です。検出体が直接スイッチに接触して回路を切り替えるため、検出に間違いがないですが、物理的な接触が生じることにより検出スイッチの故障、経年劣化が起きてしまうというデメリットがあります。

2. 非接触式検出スイッチ

非接触式検出スイッチは、直接接触することなく、磁気や光を利用して検出するため、接触式検出スイッチよりも長寿命であることが特徴です。

検出スイッチには、内部回路の種類によって「a接点」「b接点」「c接点」という分類があります。

a接点
a接点は、スイッチオフ状態で回路が繋がっておらず、検出スイッチが反応すると回路がつながるタイプです。

b接点
b接点は、a接点とは逆にスイッチオフ状態で回路が繋がっており、検出スイッチが反応すると回路が切れます。

c接点
c接点は、a接点とb接点の両方の特性を持っています。入力端子1つと出力端子2つで構成されており、それぞれの出力端子に内部回路が配線され、a接点とb接点の機能を持っています。

なお、非接触式検出スイッチは、検出体が大きくなっても故障リスクが低く、耐久性に優れるため、機械の外部での使用や、水回り周辺での使用にも適しています。また、防水性のある検出スイッチを選定することで、検出スイッチ本体だけでなく、ハーネスコネクタからの水侵入による不良信号を防ぐことも可能です。

検出スイッチのその他情報

1. 検出スイッチの防水

検出スイッチは、使用環境に応じて防水性が求められる場合があります。たとえば、水回り周辺での電化製品や、車載機器で水に触れる可能性がある部分、外で使用する機械などが該当します。

2. 電化製品の防水検出

電化製品の駆動などに使用される防水の検出スイッチは、主に接触式で小型の検出スイッチです。

ただし、検出スイッチに防水タイプを選定するだけでは不十分で、ハーネスコネクタの防水性にも注意が必要です。

3. 屋外で使用する場合の防水検出

外で使用する機器では検出体が大きい場合があり、小型の検出スイッチでは故障のリスクが高くなります。そのため状況に応じて、非接触式で防水の検出スイッチを選択します。

熱分析装置

熱分析装置とは

熱分析装置とは、試料に連続的に熱を加えたときの試料の変化を測定する装置の総称です。試料の温度を連続的に変化させる機構と、測定したい物性を検出し記録する機構がセットになっています。測定したい物性によって、それぞれ異なる分析名がつけられています。

熱分析装置を用いて実施する分析として、測定試料と標準サンプルの温度差を分析する示差熱分析( Differential Thermal Analysis:DTA )、熱量の差を分析する示差走査熱量測定( Differential Scanning Calorimetry:DSC )、重量変化を測定する熱重量測定( Thermogravimetry:TG )、長さの変化を測定する熱機械分析( Thermomechanical Analysis:TMA )などが挙げられます。

熱分析装置の使用用途

熱分析装置を用いた熱分析は、あらゆる材料の熱物性の測定に使用されます。材料は、温度の変化により構造や状態が変化し、それに伴い物性や機能が変化します。物性や品質のコントロール、反応時の発熱/吸熱挙動の理解のためにも、温度変化に対する材料の挙動の把握は非常に重要です。

典型的な熱分析では、加熱によって生じるガラス転移、結晶化、融解、分解などの現象を、温度を横軸、各パラメータ( 重量変化や寸法変化など )を縦軸としてグラフ化し、追跡します。例えばTG-DTA分析では、試料温度を変化させたときの試料重量変化と、試料と基準物質の温度差を同時に測定することで、材料がどの温度でどのような変化を起こすかの分析が可能です。

また、熱分析と光学カメラや光学顕微鏡での測定を組み合わせて形態の変化を観察したり、ガスクロマトグラフィーによるガスの分析を同時に行う研究も実施されています。

熱分析装置の原理

熱分析の装置は、検出部、温度制御部、データ処理部から構成されています。検出部は、「ヒーター」「試料設置部」「検出器」を備え、試料の加熱冷却、温度と物性の検出を行います。

実施する熱分析によって、検出器の構成は異なります。温度を測定するDTA,、DSCは、標準物質と測定物質の温度差を測定するものです。温度制御部では、測定前に設定したプログラム通りにヒーターの温度制御を行います。データ処理部では、検出器からの信号を入力して記録し、得られた測定データを解析します。

熱分析装置の分析手法

熱分析は分析対象の特性に応じて様々な手法が用いられています。熱分析で一般的に用いられている分析手法は、示差熱分析( DTA )、示差走査熱量測定( DSC )、熱重量測定( TG )、熱機械分析( TMA )、動的粘弾性測定( DMA )の5つです。各手法の詳細は、下記の通りです。

1. 示差熱分析( DTA )

温度変化によって試料自体が転移や何らかの反応を引き起こした時、基準物質との温度差に変化が生じるため、この変化を検出します。これによって融解、ガラス転移、結晶化、気化、昇華等の反応現象をとらえることができます。

ガラス転移は、その他の状態変化に比べて温度変化が緩やかなため、DTAでは捉えることが難しい場合があります。未知試料の場合、DTA曲線のみでは反応現象を完全に理解することは難しいため、熱重量測定(TG)と組み合わせてデータを解釈する手法を用いる場合が多いです。

2. 示差走査熱量測定( DSC )

基準物質と試料を同様にに温度変化させ、それぞれの温度を熱電対で検知します。温度差が生じた場合、温度が同じになるようにヒーターで加熱します。この加熱に要するエネルギーを測定するのがDSCです。そのため、示差走査熱量測定という名称になっています。一般的にDTAよりも高精度に測定することができます。融解、ガラス転移、結晶化などの転移や比熱容量の測定が可能です。

3. 熱重量測定( TG )

基準物質と試料を同様に温度変化させ、基準物質と試料の重量差を追跡します( 基準物質は、測定温度域で重量変化しないものが用いられます )。温度変化によって、昇華、蒸発、熱分解、脱水などの質量が変化する反応を引き起こす試料が測定対象です。重量変化だけでなく、試料温度の変化も同時に測定することで試料の状態変化も捉えることができるため、DTA分析と同時に行える分析装置が普及しています。

4. 熱機械分析( TMA )

試料にプローブを当て、温度変化による変位を検出します。試料に加える荷重を変化させながら測定することも可能です。温度変化により形が変化する現象である、熱膨張、熱収縮、ガラス転移、硬化反応、熱履歴の検討などが主な測定対象となります。融解、結晶化も形状変化を伴う反応のため検出できますが、プローブと試料の接触状態を一定に保てなければ、適切に検出できないので注意が必要です。

5. 動的粘弾性測定( DMA )

試料に周期的な荷重を加え、試料に生じる歪を検出し、温度または時間の関数として出力します。分子内の運動や構造変化を伴う反応である、ガラス転移、結晶化、熱履歴の検討を行うために用いられる装置です。融解の初期状態も測定可能ですが、TMAと同様に、融解が進み形状が変化すると測定ができなくなります。

熱分析装置のその他情報

熱分析装置の応用

上述の通り、光学顕微鏡などのデバイスと組み合わせることで、様々なリサーチに応用されています。光学顕微鏡との組み合わせによる形態や色彩の変化をリアルタイムで観察する手法では、結晶化や液晶転移に伴う試料の白濁、状態変化温度付近での試料の変化を観察することができます。

その他、熱処理中に生じたガスを分析するため、熱分析装置とFT-IR( フーリエ変換赤外分光分析 )、MS( 質量分析 )といったデバイスを組み合わせた分析装置が開発されています。熱分析で得た熱物性の情報とガスの情報を組み合わせることで、材料の熱応答についてより深い理解を得ることが可能です。その他、温度発生デバイスとの組み合わせでは、様々なシチュエーションでの熱膨張、熱収縮を観測できます。

参考文献
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/cta/principle/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscta1974/7/1/7_1_11/_pdf
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/cta/tga/
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/cta/principle/
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/cta/dta/

マシンバイス

マシンバイスとは

マシンバイス

マシンバイスとは、金属板等の加工を行う際にテーブルや機械に取り付けて、対象物を動かないように固定する治具です。

主にフライス加工、研削盤を使用した研削加工、ボール盤を使用した穴あけなどの加工を行う際に利用されています。マシンバイスを利用し、精密かつ強力に固定することでX、Y、Z軸を正確にし、加工の精度を上げることができます。

ただし、加工時には強力な負荷がかかるため、マシンバイスを使用する場合でも、浮き上がったりしないよう注意が必要です。また、フライス盤やマシニングセンタなど、加工する機械に対応したマシンバイスを選択することが重要になります。

マシンバイスの使用用途

マシンバイスは、マシニングセンタやフライス盤等の加工で、対象物を固定するために使用されています。テーブル等に挟み込んでマシンバイスを固定する場合が多いですが、電磁チャックに固定して精密加工を行う機種や加工時の浮き上がりを防止する機能がついている機種もあります。

その他、強力な作業にも耐えるよう鋳鉄を使用したマシンバイスなど、用途に応じた材質を利用している機種も多いです。加工する対象に合わせられるように、小型用から大型用まで、幅広いサイズ展開があります。

マシンバイスの原理

対象物をテーブルや機材と挟み込み固定するために、ねじやシャフトを使用しています。主な固定方式は、ハンドル式とレンチ締め式の2つです。

通常はテーブルにマシンバイスを挟み込んで使用しますが、電磁チャックを使用したフライス盤の上にマシンバイスを固定する場合もあります。また、強力な油圧力で固定することができる油圧式のマシンバイスや、空圧によって対象物を固定する空圧式のマシンバイスも存在します。

加工方向は通常は一方向ですが、傾斜をつけるサインバイス、バイス自体が回転する二次元バイス、三次元バイスといった機種では加工する方向を自分で設定することも可能です。

1. ハンドル式

ハンドル式は、対象物をマシンバイスに挟み込んだら、ハンドルを回して固定します。

2. レンチ締め式

レンチ締め式では、対象物をマシンバイスに挟み込んだら、レンチを回して移動口金を動かしてシャフトを側面の溝穴に固定します。対象物の挟み込みが少し緩い程度の位置で、シャフトがきちんと溝穴にはまるよう注意が必要です。

棒ボルトを締めていくと、シャフトが支点となって対象物を挟み込んでいき固定することができます。シャフトが溝穴に引っ掛かっているだけの状態で棒ボルトを締めてしまうと故障の原因になります。

マシンバイスの種類

マシンバイスの主な種類は、以下の通りです。

1. 機械式マシンバイス

ネジやハンドルの把握力を利用して、対象物を固定します。最も一般的なマシンバイスです。基本的に、操作は手動で行います。

2. 空圧式マシンバイス

空圧式マシンバイス (英: Pneumatic Vise) は、空気圧を利用して工作物を保持するバイスです。バイスの開閉や固定力の調整に空気圧を使用し、素早く確実に工作物を固定します。このため、油汚れが問題になる場合や、自動化ライン、高速加工ラインでの使用に適しています。

3. 油圧式マシンバイス

油圧式マシンバイス (英: Hydraulic Vise) は、油圧を利用して工作物を保持するバイスです。バイスの開閉や固定力の調整に油圧を使用し、確実に工作物を固定します。このため、高い固定力が必要な場合や、正確な制御を必要とする場合に適しています。

 

空圧式や油圧式マシンバイスは、空圧回路や油圧回路などが必要になりますが、機械式マシンバスで必要なねじ回しやハンドル操作が不要です。そのため、省力化や自動化の流れを受けて、近年普及が進んでいます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/
https://www.nabeya.co.jp/search.php?grp=J
https://www.kousakukikai.tech/vise/

FPC

FPCとは

FPC

FPCは柔軟性のあるプリント基板のことです。紙のように薄く、柔らかいのが特徴です。通常の基板よりも軽量小型で経済的なため、近年では広く用いられるようになりました。

FPCはフレキシブル基板とも呼ばれ、Flexible Printed Circuitsの頭文字を取って略した名称です。

FPCの使用用途

FPCは電化製品や民生品に広く使用されます。代表的な使用用途はスマートフォンです。スマートフォンの制御基板はほとんどの場合、FPCが使用されています。小型軽量のため、普段から携帯する製品には重宝されます。

家電の中では液晶テレビなどに使用します。電子制御基板を小型化可能なため、経済的に有利です。他製品としてはキーボードやプリンターなどにも使用されており、使用用途は幅広いです。その他、重厚長大産業にも用いられています。近年では、宇宙開発や航空産業にも必需部品となりました。

FPCの原理

FPCの仕組みは、基本的にはプリント基板と同じですが、最大の相違点として基材がフィルムであることが挙げられます。絶縁性を持ったポリイミドやポリエステルなどのフィルムに、などの金属を配線として回路が印刷されます。フィルムと銅箔はともに12μm~50μm程度なので、貼り合わせてもかなりの薄さを維持することができます。

FPCは以下の方法で製作します。

  1. ベースとなるフィルムに、エポキシ樹脂などの接着剤で銅の薄い箔を貼り付けます。
  2. この基材に、エッチング用のドライフィルムをコーティングします。
  3. 紫外線を照射して回路図をドライフィルムに転写します。
  4. 必要な回路図の部分がドライフィルムに残るので、エッチングすると銅箔の回路パターンが完成します。
  5. ドライフィルムをはがして、全体に絶縁体のフィルムを貼ってメッキ処理します。

上記の工程で軽量で丈夫なFPCが完成します。FPCには片面FPCと両面FPCがあります。両面は片面よりも耐久性は劣る反面、設計が高密度にできるのが利点です。両面FPCでは、片面FPCの工程が繰り返されて製作されます。

近年では、FPCにリジッド基板をはさんだフレックスリジッド構造の基板や多層構造のFPC基板も開発されています。基材としては、ポリエステルよりもポリイミドの方が熱に強く丈夫です。

FPCのその他情報

1. FPCの特徴

FPCには、柔軟性が高い、重量が軽い、高価であるという3つの特徴があります。

  • 柔軟性が高い
    FPCの材料には、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが使用されます。プラスチックフィルムは柔軟で折り曲げ可能なため、電子機器の可動部などに使用されます。
  • 重量が軽い
    FPCの材料はプラスチックであり、軽量です。重量制限の厳しい宇宙業界や航空業界では必需品です。
  • 高価
    FPCは通常のプリント基板であるリジッド基板に比べて価格が高くなる傾向にあります。

2. FPCを使用する際の注意点

FPCを使用する上での注意点は、大きく分けて2つあります。

  • 耐屈曲性の違い
    FPCの特徴は高い柔軟性ですが、耐屈曲性はメーカーや製品ごとに異なります。FPCを使用する際には、耐屈曲性の確認が必須です。
  • 機械的に弱い
    FPCは軽薄なフィルムのため、機械的に弱いという性質を持ちます。部品を実装する際は補強板と呼ばれる板を電子部品の下に貼り付ける必要があります。

以上の点を考慮してFPCを使用する必要があります。

3. FPC市場規模の増加

Credence Resarchの調査によると、世界のFPC市場は年々増加しています。2018年から2027年にかけて年平均成長率 10.6%で推移すると予測され、フレキシブルエレクトロニクスの世界市場規模は2027年には約4.5兆円に拡大すると予測されています。

市場が拡大している背景として、自動車、家庭用電化製品、航空宇宙業界でのFPCの需要の高まりが関係しています。

参考文献
https://www.mektron.co.jp/product/fpc/
https://www.p-ban.com/about_pcb/flexible.html
https://www.okidensen.co.jp/jp/prod/fpc/flexible/fpc_setumei.html
https://www.elephantech.co.jp/pickups/what-is-flex-pcb/
https://www.credenceresearch.com/report/flexible-printed-circuit-boards-market

DINコネクタ

DINコネクタとは

DINコネクタ

DINコネクタとは、ドイツ工業規格であるDIN規格にを満たすコネクタのことです。

形状は直径13.2mmの丸形コネクタが多いですが、ツーピースコネクタと呼ばれるコネクタもあります。また、小型で丸形の直径9.5mmのコネクタはミニDINコネクタです。

丸形コネクタの場合、ピン数は3ピンから多数のピンを持つ構造です。古いタイプのスピーカーDINコネクタ等では2ピンのピン数を持つものもあります。通常、ロック機構がついていないので、強い力で引っ張ると抜けてしまいます。オス型とメス型があり、プラグの形状に合わせて接合して使用します。

DINコネクタの使用用途

DINコネクタは、音響機器に使用される場合が多いです。具体的には、ステレオ信号の入出力に使用され、レコーダーの接続用やリモートコントロール端子、カーオーディオ、スピーカー等の接続に使用されています。

その他、電子楽器、コンピュータ、テレビ、テレビゲーム機、マイクなどにも有用です。パソコン用には、電子基板同士を接続するツーピースコネクタが使用されている場合があります。ツーピースコネクタは四角い形状で、ピン数やピッチのバリエーションが多いです。

DINコネクタの原理

DINコネクタには、オスのプラグ側とメスのソケット側があります。DINコネクタの構造としては、オスにもメスにもハウジング部とコンタクト部があります。

オスとメスでうまく接合できるようそれぞれハウジングとコンタクトで多少形状は異なっていますが、役割は同じです。オスのプラグとメスのソケットを組み合わせるとコンタクトが接触し、電気的な接続が可能になります。

DINコネクタの丸形コネクタでは3pin以上のピン数を持ち、各ピンで別々の信号を送ることが可能です。例えば、ゲーム機で使用される丸形コネクタでは、音声、グラウンド、映像信号のGreen・Blue・Redの3色信号や電圧信号等のデータを送信しています。

DINコネクタの構造

DINコネクタは前述の通り、ハウジング部とコンタクト部から構成されます。

1. ハウジング部

ハウジング部は、コンタクトが組み込まれている本体部分です。コンタクトを保護する目的で、プラスチックを主とした絶縁体で作られています。

2. コンタクト部

コンタクト部は、コネクタをつないだ時に電気的な接続を行う接触子で、コネクタとしての役割を果たします。

コネクタの種類によって、コンタクトを保護するシェルやシェルとハウジングをつなぐアイレットという部品が使用されている場合もあります。

DINコネクタの種類

DINコネクタは形状によって丸形コネクタ、スピーカーDINコネクタ、小型丸形コネクタ、ツーピースコネクタ等に分類できます。丸形コネクタは直径13.2mmのコネクタであり、ピン数は3pin〜多数のピン数を持ちます。音響機器やゲーム機、パソコンのキーボードを接続するためにも使用されていました。

スピーカーDINコネクタはピン数は、2pinで以前スピーカーで使用されていたコネクタです。2pinのピン形状が異なるため、指し間違いを防いでいる構造です。

DINコネクタのその他情報

DIN規格

DIN規格は、ドイツ規格協会が規定するドイツ工業規格です。DINコネクタの他にもカーナビゲーションの外寸等が規定されています。

ドイツは標準化でビジネスや社会を発展させようといった思いがあり、標準化活動が盛んです。標準化規格は企業だけでなく、研究機関や消費者など誰でも提案することができます。

参考文献
https://www.omron.co.jp/

スリップリング

スリップリングとは

スリップリングとは、回転体の外部から電力や電気信号を伝えることができる回転コネクタのことです。

回転体に配置された金属製リングと固定側のブラシを介して電力や信号を伝達します。回転体の振動や応力、軸力を計測し、微小な信号を伝送して制御用に利用されています。回転体に電源を供給するリード線の役目として利用されることも多いです。

スリップリングの取り付けは主に2種類あり、軸端取り付けタイプと 中空タイプです。軸端取り付けタイプは回転体の末端に取り付けます。中空タイプは回転軸にリングブロックをはめ込みます。また、リングとブラシが一体型のタイプとリングとブラシが分離しているタイプもあります。

スリップリングの使用用途

スリップリングは低速回転用から20,000rpmの高速用まで展開されています。また、対応できる電力も3,000A以上の大電流のものもあり、実験、開発用から設備用まで広く利用されています。

風力発電機、工作機械、遠心分離機撹拌機ロボットアーム、クレーン車、監視カメラ、及びヘリコプター、ターンテーブル、ドラムヒーター、レーダーアンテナなどの回転体のヒーターやモーターの電源供給に使用されます。

また、半導体製造装置やCTスキャンのような医療機器、非破壊検査、音響装置など幅広い用途があります。回転体の温度、ひずみ、トルクの測定にも使われています。

スリップリングの原理

回転体のターンテーブルなどの回転軸にリング状の電極部分(リングユニット)がついています。リングユニットの外周や側面にブラシ状の電極部分が接触し、接触した箇所を接点として、電力と信号を伝送する構造です。

リングユニットが回転してもブラシとは常に接点を持つため、安定した電力の供給と信号の伝送が可能となります。リングユニットにはベアリングがあり、ブラシ側を支持しています。

スリップリングのリングとブラシの接点部分にはや銀などの貴金属を使用することで液漏れなどの心配もなく、接触抵抗を安定化させることが可能です。リングには青銅、銀、金などが使われ、ブラシ部分にはカーボンや銅、銀合金などが使用されます。

電力や信号の配線が多い場合にはスリップリングも必然的に大型になります。また、ある程度摩耗するため、定期的なメンテンナンスが必要です。

スリップリングのその他情報

1. スリップリングのブラシの役割

スリップリングは、ブラシが接点の役割をしていることによって回転体上の電気機器から固定側に送受信しています。ブラシが常に回転体と接触しているため、回転体が360°どの位置にあっても配線のねじれやシャフトへの絡まりなく送受信が可能となります。

回転体側と固定側との送受信が必要な信号数に応じて、ブラシ(接点)の個数は変化します。そのため、通信機器が多くなればなるほどブラシの個数が多く必要となり、結果としてスリップリング全体の巨大化につながります。

この場合、シリアル通信や自動車に使われているCAN通信を使用すれば、ブラシ数を減らすことが可能です。

2. スリップリングのデメリット

スリップリングのデメリットは、ブラシの摩耗による接点不良が発生する可能性があることです。ブラシは物理的に回転体と接触しているため、経年劣化により接触不良が発生することがあります。

特に屋外で使用する機器では、密閉ケースで保護されていない場合は、砂埃や水の侵入によって早期にブラシが損傷する場合もあります。そのため数年に1度はブラシの掃除や潤滑剤の塗布を行うことで寿命を延ばすのが一般的です。

このとき使用する潤滑剤は、導電性のあるものを選択します。導電性がない場合、ブラシ部分で通電不良が発生し、回転体側と固定側との間が通信不良となる恐れがるため注意が必要です。

ブラシ部の寿命は、一般的には1,000万回転~1億回転程度であり、メーカーによっては5億回転ぐらいまでです。長寿命の機器に使用する場合は、定期的にブラシ部のメンテナンスが必要になります。

参考文献
https://www.totukizai.co.jp/product/slipring/about.html
http://www.hikari-slipring.co.jp/publics/index/43/
http://www.kyoeidenki.jp/slipring/
https://slipring-japan.com/Slipring.html

ギヤードモーター

ギヤードモーターとは

ギヤードモーター

ギヤードモーターは、ギヤとモーターが組み合わせた装置です。ギヤとモーターを組み合わせることで、回転数やトルクを任意に設計できます。

ベルトプーリーなどと比べて摩擦による騒音が小さく、メンテンナンスも簡便です。モーターの回転数とトルクから、ギヤ比を選定して適切なギヤを選びます。ギヤヘッド部分のスペースが必要になるので大きさも確認する必要があります。

取り付け方法としては、フランジ取り付けタイプやタップ取り付けタイプなどがあります。

ギヤードモーターの使用用途

ギヤードモーターは、ギアによって低回転数で高トルクとなります。食品加工機や立体駐車場、半導体製造装置木工機械など、大型機械では特に使用されることが多いです。

身近な例としては、電動シャッターや洗車機にも使用されます。低回転数で高トルクな特性を活かし、産業用ロボットなどにも使用されます。

超小型から大型までギヤードモーターには多くのサイズがあります。また、電磁ブレーキ付きの製品やステッピングモーターを用いた製品など、ギヤードモーターは幅広いラインナップで展開しています。

ギヤードモーターの原理

ギヤードモーターは、モーターと減速機からなります。

高速で回転するモーターに対し、歯車を組み合わせてその回転数を調整しているのが減速機です。ギヤードモーターは、減速機によって低回転数で高トルクとなります。

モーターは、産業用では三相誘導モーターが多く使用されます。誘導モーターは定格回転数が周波数と極数によって決まっているため、ギヤ比を調節して回転数とトルクを選定します。

ギヤ比は、モーター回転軸と減速機出力回転軸の回転比で、ギヤ比を大きくするほどトルクが高くなります。高トルクを必要とする場合はギヤ比を高くします。

ギヤとモーターの位置によって平行軸か直行軸かを選定します。また、モーターの運転・停止が頻繁な際にはクラッチブレーキタイプを使用する場合もあります。

ギヤードモーターの使い方

ギヤードモーターの使用方法は多数ありますが、その中で代表的なものが、減速、高負荷、高精度になります。

1. 減速

三相誘導モーターなどは回転速度が極数や周波数で決まります。そこで、誘導モーターを所要の回転速度で使用するために減速機で減速します。

各社様々な減速比のギヤードモーターを販売しているので、所要回転数に合うように型式を選択します。

2. 高負荷

減速によって出力トルクが減速比に比例して大きくなり、許容慣性モーメントは減速比の2乗に比例して大きくなります。これにより速度は落ちる代わりに大きな物体を回転させることができます。

3. 高精度

位置決め運転に使用する場合、モーターの停止角度精度が良くなります。

例えば、減速比が2の場合、モーター出力軸の誤差が1.0°とすると減速機出力軸の誤差は0.5°となり、精度が良くなります。ただし、減速機にはバックラッシと呼ばれる遊びがあるものが多く、高精度位置決めに使用する際には注意が必要です。

ギヤードモーターのその他情報

ギヤードモーターの減速機

ギヤードモーターに使用される減速機にはいろいろな種類があり、用途によって選択します。代表的なものとして、「平歯車減速機」「ベベルギヤ減速機」「ハイポイド減速機」「ウォーム減速機」「遊星歯車減速機」「波動歯車減速機」などが挙げられます。

1. 平歯車減速機

平歯車減速機は最も一般的な減速機で、平歯車の組み合わせで減速します。多段式もあり、大きな減速比も製作することができますが、バックラッシが大きめです。

2. ベベルギヤ減速機・ウォーム減速機

ベベルギヤ減速機とウォーム減速機は入力軸と出力軸が直交しています。ウォームギヤはセルフロック機能を持っているので、昇降機などに多く使用されます。

3. ハイポイド減速機

ハイポイド減速機はスパイラルベベルギヤを使用した減速機で、大きな減速比と滑らかな動力伝達が特徴です。

4. 遊星歯車減速機

遊星歯車減速機は遊星歯車を使用した減速機で、入力軸と出力軸が同心になります。ステッピングモーターなどの減速に多く用いられます。

5. 波動歯車減速機

波動歯車減速機は開発したハーモニックドライブシステムズの社名から、「ハーモニック減速機」とも呼ばれます。バックラッシが無い減速機として、ロボットの関節に多く使用されます。

その他、ボール減速機やサイクロ減速機などもあり、減速機によって出力特性が変わるので、ギヤードモーターの選定には減速機の特性を知ることが重要になります。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/213/
https://www.cls-motor.com/products/dc/geared
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Products/SpeedChangersAndReducers/about.html
https://www.orientalmotor.co.jp/products/stepping/overview_3/

ディップスイッチ

ディップスイッチとは

ディップスイッチ

ディップスイッチは、プリント基板などに使用される小型スイッチです。デュアル・インライン・パッケージスイッチを省略してディップスイッチと呼ばれます。

端子間距離が3mm程度、高さも3mm程度と非常に小型で、精密ドライバー等で切り替えます。設定用スイッチとして使用され、操作頻度が低い場合に用いられます。

操作方式には、スライドスイッチやプッシュロックスイッチ、ロータリースイッチなどがあります。また、基板の穴に挿入するタイプや実装するタイプがあります。極数やシール性能もさまざまな種類が展開されています。

ディップスイッチの使用用途

ディップスイッチは家電製品、通信機器、音響機器など広範囲の製品に組み込まれています。産業用としては、温度調節器サーボコントローラに使用されます。

OA機器にも使用され、パソコンやストレージ基板などに用いられます。主に電子機器の基本設定用に利用されます。多様な使用条件に耐えるため、高温使用にも耐える耐熱仕様や薄型仕様などさまざまなタイプがあります。

ディップスイッチの原理

通常のスイッチと同様にオン・オフを切り替えることで回路の導通・遮断します。ストライカと呼ばれるつまみと摺動子が連動しており、摺動子と接点が接触・開放することで回路が切り替えます。ストライカは、摺動子と接点を接触させるおもりの役割も持ちます。

接点と端子はベース樹脂と一体に成型されます。はんだ付けの際に高温になるので、ベース樹脂には耐熱性の高いプラスチックが使用されます。部品を一体に成型することで、小型化軽量化します。また、ベース樹脂は端子保護の役割も持ちます。

接点端子の形状は基板穴に挿入するタイプと表面に実装するタイプがあります。長期間スイッチが放置されやすいので、酸化しないよう接点に金メッキを施すこともあります。セルフクリーニング機構で摺動時に接点を清掃し、異物や酸化物を除去する製品もあります。

ディップスイッチはとても小さいので、切り替えには先の細いドライバーピンセット等が必要です。

スイッチやディップスイッチの種類

スイッチは用途によって種類も様々です。スイッチには以下のような種類があり、産業、民生問わずさまざまな場所で使用されます。

スイッチの種類

  • プッシュスイッチ
    名前の通りボタンを押して切り替えるスイッチです。
  • トグルスイッチ
    レバーを上下や左右に倒して切り替えるスイッチです。
  • ロッカスイッチ
    ボタンの両端を押すことで切り替えるスイッチです。
  • スライドスイッチ
    名前の通りスライド操作で切り替えるスイッチです。
  • ロータリースイッチ
    スイッチ部のつまみをまわすことで切り替えるスイッチです。
  • マイクロスイッチ
    わずかな力で切り替えるスイッチです。
  • ディップスイッチ
    電子機器の各種設定に利用される基板上に実装されるスイッチです。
  • タクタイルスイッチ
    基板上に実装され、人がスイッチを押し込むことで電気回路を通電させる小型のスイッチです。

ディップスイッチの種類

  • スライドタイプ
    操作部を摺動させて切り替えます。操作部がフラットなものや凸型になっているものがあります。
  • ピアノタイプ
    操作部を押し下げて切り替えます。レバーが短いものや長いものなどがあります。
  • ロータリータイプ
    操作部を回転させて値を設定します。操作部が基板に対して垂直上面から操作するものや、水平方向に操作するものがあります。

操作部以外についても実装の方式や、極数などその特性によりさまざまな種類があります。

ディップスイッチの構造

ディップスイッチの構造は、カバー、ストライカ、摺動子、ベースの4つから構成されます。カバーは、スイッチ上面を覆う樹脂の射出成型部品です。ベースと嵌合させて内部機構を保護します。

ストライカはスイッチの操作部です。摺動子に力を伝え、接点を動作させます。摺動子は加工された金属板などで可動する接点です。ベースは、金属端子と接点を樹脂射出成型により一体化したもので、耐熱性がある樹脂材料が使われます。

参考文献
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120605/221411/
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120605/221411/