ターボファン

ターボファンとは

ターボファン

ターボファンとは、遠心ファンのカテゴリに分類され、空気を吸い込んだ後にその吸込み方向から90°変えて風を送出する特性を持つ送風機の1つです。

静圧を高める能力があり、特定のシチュエーション、例えばダクトを通じての気体送風などでの使用に適しています。また、このターボファンの機能は産業機器や家電製品など、多岐にわたる用途で利用されているのが特徴です。

ターボファンの使用用途

ターボファンは、その性能と汎用性から多岐にわたる産業や製品に取り入れられています。幅広い場面で特性を発揮しており、私たちの生活やビジネスをサポートしています。

1. ジェットエンジン

航空分野では、ジェットエンジンの心臓部として、旅客機や戦闘機の飛行をサポートしています。これはターボファンの高効率と推進力が、機体を確実に空中へと持ち上げるために不可欠であるためです。

2. 工業分野の現場

工業の現場でもターボファンは欠かせない存在です。パソコンの冷却や高精度な機器の熱対策として、その気体の吸排気能力が活用されています。この種の冷却システムは、機器の性能を最大限に引き出すために必要です。

3. 換気システム

住宅やビルの換気システムにおいても、ターボファンは重要な役割を果たしています。前述の通り、ターボファンは静圧を高めることが可能です。

ダクト接続を介して、効果的な換気が実現されています。通気性を確保し、快適な室内環境を提供する上でその能力が求められています。

ターボファンの原理

ターボファンの基本的な動作原理は、遠心力に依存しています。空気は質量を持っており、ファンを回転させることで生じる遠心力によって、中心から外側へと押し出されます。

この原理を最大限に活かすために、ターボファンは空気を吸い込んだ後、90°の角度を変えて効果的に送風する設計となっているのが特徴です。しかし、ターボファンの欠点は騒音が比較的大きいと指摘される場合があることです。

その一方で、高い静圧と大きな風量を持つため、多くの用途に適応できます。その風量は羽根の枚数や幅、回転数などの要因により変動しますが、全体としては強力な送風能力が特徴として挙げられます。

ターボファンの構造

ターボファンは独特の構造により、高い送風能力を持ちます。中心に位置するのは、後ろ向きに沿って取り付けられた羽根です。

この形状は、空気を効果的に取り込み、送風するためのものです。比較対象として、シロッコファンの羽根は前向きに取り付けられている点が挙げられます。これら2つのファンはしばしば混同されることがありますが、羽根の向きの違いで識別が可能です。

ターボファンの種類

ターボファンには、いくつかの異なる種類やバリエーションがあります。これらの種類は主に設計や機能、目的に応じて分類されます。

選択する際は、使用する環境や必要な風量、効率などの要因を考慮することが大切です。

1. 軸流ターボファン

最も一般的なのが、軸流ターボファンです。このタイプのファンは、空気の流れが主軸に沿って直線的に進む特徴があります。高い風量を持ち、主に大型のエンジンや工業用途で用いられます。

2. 遠心ターボファン

遠心ターボファンは、空気が中心から放射状に外向きに流れる特徴を持っています。コンパクトで効率的に空気を送風するため、家電製品や小型の装置に適しています。

3. 混合流ターボファン

混合流ターボファンは、軸流と遠心の特徴を組み合わせたもので、中規模の設備や特定の産業用途で利用される場合が多いです。

参考文献
https://www.miw.co.jp/column/post-243/
https://www.miw.co.jp/column/post-155/
https://www.mitsubishielectric.co.jp/ldg/ja/air/guide/support/knowledge/detail_03.html

ソーラー発電機

ソーラー発電機とは

ソーラー発電機

ソーラー発電機(英語:Solar Generator)とは、ソーラーパネルで発電した電力を供給する装置です。一般的には、ポータブル蓄電器、ソーラーパネルパワーコンディショナを組み合わせた製品を指します。非常用電源として、昨今では需要が向上しています。

ソーラー発電機の使用用途

ソーラー発電機はキャンプや災害時に利用されます。日中にソーラーパネルで発電しつつ、夜間は蓄電した電力を利用するのが特徴です。送電線網を必要としないため、緊急時は特に重宝されます。

ソーラー発電機は「固定式」と「可搬式」の2つのタイプに大別でき、使用用途に合ったソーラー発電機を選定します。使用例を下記します。

  • 自然災害発生時のの非常用電源
  • オフグリッド発電としての独立電源
  • 車中泊、キャンプ時の電力確保

ソーラー発電機の原理

ソーラー発電機は、ソーラーパネル、蓄電器、パワーコンディショナなどから構成されます。ソーラーパネルで太陽光を電力へ変換し、変換した電力を蓄電器で蓄え、パワーコンディショナで利用しやすい電圧へ変換します。

ソーラーパネルはシリコン系と化合物系の2種類に分類されます。ソーラー発電機向けには、シリコン系の「アモルファスシリコン」と「多結晶シリコン」のソーラーパネルが使用されます。

1. アモルファスシリコン

ガラスなどの基板の上に薄いアモルファスを乗せて製造します。変換効率が低い反面、軽量で生産性と汎用性が高いのが特徴です。単結晶シリコンや多結晶シリコンと比べると、高温時にも発電変換効率が低下しません。

2. 多結晶シリコン

単結晶シリコンを作る際に発生した端材のシリコンなどで作られた廉価版のソーラーパネルです。単結晶シリコンと比較して発電量低い反面、安価で製造可能です。

ソーラー発電機用の蓄電池

太陽光発電に限らず、電力エネルギーは貯めておくことができません。電力会社からの送電電力も必要量だけその瞬間に発電されます。電力会社は需要を予測しながら発電計画を立案しています。

ソーラー発電機では、蓄電池によって化学エネルギーとして電力を保存しています。そのため、地震・台風などの自然災害による停電時も電力を使用可能です。

ただし、蓄電池は高価なためソーラー発電機の蓄電池も大きな価格割合を占めています。また、温度によって寿命が左右されるため、温度管理も必要です。ソーラー発電機には鉛蓄電池リチウムイオン電池などが用いられます。それぞれの特徴を下記します。

1. 鉛蓄電池

電解液である希硫酸の中に鉛の電極板を挿入します。正極(陽極)に二酸化鉛、負極(陰極)に鉛を使用し、希硫酸と鉛の化学反応によって電力を発生させます。ソーラー発電機の他に自動車用バッテリーや無停電電源装置にも使用されます。

鉛蓄電池は安価に製造が可能ですが、重量があるというデメリットもあります。また、充・放電を繰り返すことができますが、過放電すると性能が低下します。

2. リチウムイオン電池

正極にコバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物、負極にグラファイトや黒鉛などの炭素材料、そして電解液に有機溶媒を使用した蓄電池です。プラスとマイナスの電極の間をリチウムイオンが動くことで充・放電します。

ソーラー発電機の他にもスマートフォン用バッテリーなどに使用されます。リチウムイオン電池は小型軽量で劣化しにくい反面、温度変化に弱く高価です。その他に、ニッケル水素電池やNAS蓄電池などがあります。

参考文献
https://www.jackery.jp/products/jackery-solarsaga-100
https://www.ankerjapan.com/item/A1601.html
https://www.shouene.com/battery/battery-knowledge/pros-and-cons.html
https://www.eco-hatsu.com/battery/pv_battery_merit_demerit/

ホモジナイザ

ホモジナイザとは

ホモジナイザ

ホモジナイザーとは液中の物質を均質化するために分散・解砕を行うための機器であり、「均質化する」を意味するhomogenizeが由来である。

広義にはプロペラ等で粉体を撹拌することも含まれます。粒子の破砕方法には磨り潰す(高圧式)、高周波破砕(超音波式)、切り刻む(攪拌式)に分類することができます。

高圧式のものは、圧力をかけて一度に大量の試料をホモジナイズできるので、工場などでよく使用されます。

超音波式は、コンパクトサイズで少量の試料をホモジナイズするのに向いているため、主に科学実験に使用されていましたが、最近では大型化が進み、製造分野でも使用されています。

攪拌ホモジナイザーは、高速で試料を粉砕するため、硬いものでも短時間で均一化できます。

ホモジナイザーは、製造、研究、医療など、様々な分野において使われています。

ホモジナイザーの使用用途

ホモジナイザーは微粒子の破砕・分散・混合や水と油分の乳化を行う際に使用され、様々な分野で活用されています。

1. 食品製造

生クリーム、牛乳、バターなどの乳製品、コーヒー、果汁飲料などの飲料品、トマトケチャップ、ソース、ドレッシング、調味料等、様々な食品の製造に使用されています。

2. 研究分野

細胞や組織からのタンパク質、DNA、RNA、抗体、オルガネラ、ウイルス等の抽出などに用いられています。
また、磁性体の分散や、新素材の研究等にも使われています。

3. 医療

ソフトカプセル、軟膏、クリームなど、医薬品の製造に生かされています。

更に、染料や化粧品等の製造、汚泥の均一化等にも使われています。

ホモジナイザーの原理

ホモジナイザーの原理

図1. ホモジナイザーの原理

1. 圧力式

圧力式は圧力をかけて微細化を行う装置です。具体的にはポンプにより流体を加圧しホモバルブに通過させることにより、微細な隙間からの噴出により粒子同士やインパクトリング等への衝突、圧力差によるせん断力により均質化が行われます。ほかの方式と比べて処理量も多く、微細化が可能です。使用時に摩擦熱が発生するので、氷水等で外筒を冷却する必要があります。

石臼や乳鉢・乳棒も高圧式ホモジナイザーの一種といえます。

2. 超音波式

液体中に超音波を与えることにより均質化を行う方法です。液体に高周波振動を与えるとキャビテーションにより微細な気泡が発生し、その気泡のはじける衝撃波により微粒子や細胞を破砕します。物理的な衝撃ではなく粒子同士の衝突を起こさせるため、最終粒形は比較的球形に近くなります。このため、分散の最終工程や粒度分布の前処理などに使用されます。また、乳化能力が高いことも特徴ですが、処理量は少ないです。

3. 攪拌式

金属製の固定された外刃と回転式の内刃をジェネレーターで回転させることで遠心力によりジェネレーター内から液が入り込み、外刃の窓に放射状に放出される流れが発生します。この際、内刃と外刃に粒子が接触することで破砕が行われます。加えて、内刃の高速回転により生じる超音波などにより微細化、均質化が行われます。

油水分離装置

油水分離装置とは

油水分離装置

油水分離装置とは、油と水が混ざり合った液体から油を分離する装置です。

工場排水に混入した油分の除去や、使い捨てに出来ない高額な液体の再利用のために用いられます。油水分離装置は大きく分けて、「エマルジョン分離」と「油水分離」の2種類です。エマルジョンは乳化油を意味し、油と水が完全に混ざり合っている状態を指します。

油の状態や除去する対象・除去後の要求純度などにより、複数の分離タイプが存在し、各種産業で環境負荷・コスト低減の為に重要な役割を果たします。

油水分離装置の使用用途

冷却水や冷媒・洗浄液と油分が混合する恐れのある工程では非常に多く採用されています。具体的な使用用途は以下の通りです。

  • 真空オイルポンプの異物 / 水分除去
  • めっき / 表面処理の洗浄貯留槽の浮上油
  • 土壌地下水
  • 洗浄液
  • 切削加工 / 研磨加工などで用いるクーラント
  • 圧縮空気のドレイン廃水
  • ダイカスト廃水
  • 圧延クーラント廃水
  • 印刷工場のインキや顔料の廃水
  • 鍛造工程での冷却水
  • 発電所の冷却水
  • 洗車排水
  • 食品工場の排水
  • 塗装ブースの排水

水分や油分を除去することで、洗浄液や潤滑油のロングライフ化・廃水の清浄化による産業排水処理費の低減・環境負荷の低減などに寄与します。

油水分離装置の原理

油水分離の方法は多数あり、特によく用いられる手法は下記の通りです。

1. 透過分離法

多孔性濾過糸の集合体や濾過膜に含油水に圧力をかけて通すことで油や固形物を除去し、正常な水分だけを取り出します。

2. 比重分離法

油が混入した液体と油との比重差を利用して、タンク等で貯留・浮上した油を除去する方法です。比重差が少ないと分離が困難である他、時間を要するデメリットがあります。

3. 化学的分離

油水分離剤などで混入した油を脱脂・除去する手法です。電解イオン水など水溶性の油水分離剤もあり、低環境負荷が特徴です。エマルジョン状態の油分も分離できます。洗浄機への油分の持込が多い場合、油水分離装置の前に浮上油を除去することも重要です。洗浄液タンクにベルト式のオイルスキマーを設置して、浮上油を回収します。

4. 遠心分離式

油分が混入した液体を高速回転させ、遠心力によって比重差により分離する手法です。 エマルジョン化した油分も除去できる特徴があります。水溶性切削油やクーラント・水系洗剤に混ざる浮上油とスラッジを同時に除去します。

 

この他にも、超音波分離・電気的分離・空気噴出分離・生物分離・真空吸引分離など多数の手法が存在しますが、除去後の純度・処理時間など要求性能によって適宜使い分ける必要があります。

油水分離装置の特徴

透過法の油水分離装置は、水中でエマルジョン形成している油分を薬品添加などを行わずに確実に処理できます。スラッジが出ないのも特徴です。廃液量を1/10~1/20まで濃縮減量できます。分離濃縮することで大幅な産廃費の削減に繋がります。また、透過液は回収して再利用することができるため、環境に優しく経済的です。

タンク内で比重差により浮上した油を除去する方法は最も簡便で、多くの装置に使われています。遠心式は、エマルジョン化した油分や固形分も分離できます。

油水分離装置のその他情報

油水分離装置の法規制

廃油の処理や漏油事故などいくつかの法的規制があるので、注意が必要です。

1. 廃棄物処理法
自動車や家電製品などを廃棄する場合、適切な廃油処理を行うことをリサイクル業者に義務付けています。廃棄物を不法投棄したり不法焼却したりした場合には、罰則があります。

2. 水質汚濁防止法
事業場の排出水に関して、正しい対応を行っているか責任が問われる法律です。誤って漏油させるなど、適切な廃油処理を行わなかった場合、罰則が適用されます。

3. 消防法
事業場などの廃油処理に対し、漏油事故の場合、被害の拡大を抑制する対策を義務付けています。正しい対応をしないと罰則がかけられます。

4. 河川法
事業場が誤って河川に廃油を流出させた場合、漏油を回収するための対応や費用負担が課せられます。リサイクル業で廃油を取り扱う場合は、河川に廃油が流出しないように、廃油の取り扱いについての明確なマニュアルを整備することが大切です。

5. 労働安全衛生法
灯油などを労働者が使用する場合、健康に障害を引き起こす可能性のある際は、事業者は事前に労働者に情報を通知する義務があります。対応が不適切の場合、罰則が適用されます。

6. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
廃油などの産業廃棄物を適切に管理・処分する方法について定めています。正しい処理方法で廃油を処分しないと罰則がかけられます。

クリーンウェア

クリーンウェアとは

クリーンウェア

クリーンウェアとは、清浄度環境であるクリーンルーム内部で着用する衣服です。クリーンウェア内部に着用している衣類や人体から発生する塵や埃を外部へ放出させない為に着用します。
クリーンウェア自身から塵や埃を出さない機能性はもちろんの事、静電気の発生を抑える帯電防止性能、摩耗からの発塵を抑える耐摩耗性能などが要求されます。クリーンウェアには複数
のタイプがあり、クリーンルームの清浄度に合わせて使い分けられます。

クリーンウェアの使用用途

主に半導体など精密製品を製造するクリーンルームや、塵や埃の混入を嫌うフィルムの貼り合わせ工程などで用いられます。バイオテクノロジー分野でのバイオクリーンルームへの外部から
の浮遊微生物や細菌、バクテリア等の持ち込みを防ぐ為や、逆に人体への感染、付着防止の為にも着用します。 バイオクリーンルーム向けのクリーンウェアは滅菌済みのもので、ディスポー
ザブル(使い捨て)の製品が用いられます。 その他、発塵の多い環境で人体への汚染を防ぐ為にもディスポーザブルタイプが使われます。

クリーンウェアの原理

クリーンウェアはポリエステルを素材とした製品が多く、ディスポーザブル製品ではデュポン製のタイベック(高密度ポリエチレン)などがよく用いられます。 素材そのものの非発塵性や
衣服からの塵や埃を通さず適度な通気性をもち。帯電防止性能が高く、摩擦による発塵が少ない耐摩耗性能が要求されます。 縫製に使われる糸は同じくポリエステル製が多く、布地
断面からの発塵を低減する為にパイピング縫製、巻き縫い等の製法が用いられます。

デザインについては、作業時の動作で擦れる事の多いファスナーを身体正面より避ける為にサイドファスナー、斜めファスナーにしたり、全域ダウンフローのクリーンルーム向けにズボン
の裾が床向きにオープンとなっている裾開き等が考慮されます。

クリーンルームの清浄度クラスにより、クリーンウェアは次の様にタイプ分けされます。

  • クラス100000以下
    簡易的なクリーン対応として、上下セパレートタイプや白衣タイプのものが用いられます。フードの代わりに帽子で運用する事が多いです。
  • クラス1000~10000
    上下繋ぎタイプでフード一体型やフードセパレートタイプが用いられます。靴も専用のクリーンシューズを着用します。
  • クラス1~10
    上下繋ぎタイプで、場合によってはインナーもクリーンタイプを着用します。フードはフェイスシールド付きを用います。

参考文献
http://www.cic-lab.co.jp/950697355

トルクリミッタ

トルクリミッタとは

トルクリミッタとは、回転機器の過負荷時に動力伝達を遮断または制限する装置です。

主に人体や機械装置保護のために使用されます。動力の遮断構造はさまざまな種類があるため、使用用途によって使い分ける必要があります。

トルクリミッタの使用用途

トルクリミッタは身近な日用品から大型産業装置まで、幅広い用途で使用されます。具体的な使用用途は、以下の通りです。

外部から想定外の力がかからないようにすることで、装置を保護し人身災害を防止します。また、インパクトレンチのように、トルクリミッタでトルクを制限し、作業を均一化することも可能です。電動工具では、多くの場合に利用されます。

トルクリミッタの原理

トルクリミッタは動作原理から2種類に分類されます。動力切断タイプとスリップタイプです。

1. 動力切断タイプ

設定トルク以上となった際に駆動軸と従動軸の縁が切れるタイプです。スリップによる熱も発生しないため、大型装置に適用可能です。

2. スリップタイプ

スリップタイプは設定トルク以上となった際に駆動軸と従動軸が滑ることでトルクを制限するタイプです。小型で安価ですが、高トルクには適しません。

トルクリミッタの種類

トルクリミッタにはさまざまな種類があります。以下の記述はその一部です。

1. 摩擦式

駆動軸と従動軸を多板クラッチやねじリコイルを介して接続する方式です。多板クラッチやねじりコイルがスリップすることで伝達力を制限します。多板クラッチタイプではクラッチの与圧によってスリップ力を調整可能です。摩擦力を利用するため、作動頻度が高いと摩耗が進み伝達力が低下します。

2. マグネット式

駆動軸と従動軸に磁石を用意し、磁石の吸引力で動力を伝達する方式です。トルクの過負荷時は軸同士がスリップしますが、摩耗や発熱はありません。磁石同士は接触しない状態で保持されているため、静音性にも優れています。

3. クラッチ式

設定以上のトルクが加わったときにクラッチが作動して動力を遮断します。クラッチの作動と電気接点を連動させれば、接点出力することも可能です。

4. シャーピン式

シャーピンと呼ばれる材料の破断を使用した方式です。シャーピン材質及びノッチ径で規定トルクを設定します。取り付けたシャーピンが破断することで停止してトルクを制限します。構造は単純で比較的安価に導入できることから大型な装置で利用されます。ただし、部品の定期交換が必要な上に、作動後はシャーピンの取替が必要です。

5. 電気式

上記は全て機械式のトルクリミッタですが、電気的なインターロックでトルク制限することも可能です。ショックリレーインバータによって過負荷時に動力電源を遮断します。

また、インバータを利用する場合は電流値を制御してトルク制限するとも可能です。協働ロボットなどは、トルクセンサーによってトルクを制限している場合もあります。

トルクリミッタのその他情報

トルクリミッタ付きモーター

産業機器のトルクリミッタは減速機付モータなどに適用されます。従来は、従動側のスプロケット部などに取り付けるものが一般的でした。近年では、小型化を目標にトルクリミッタ付きの減速機付モーターが開発されています。

モーターにコイルばねやロードセルをセンサとしたトルクリミッタが設置されており、高精度なトルク管理が可能です。また、モーターだけではなくスプロケット部にも異なる種類のトルクリミッタを組み込むことで、2重の安全対策も可能となります。

トルクリミッタ付き減速機付モーターは、調整ボルトにより任意にリミットトルク値を設定可能な商品も販売されています。現場に設置後稼働に併せて調整することが可能です。

参考文献
https://www.sankyo-seisakusho.co.jp/product/torque_limiter/index.html
https://mighty-corp.co.jp/application/faq_torquelimiter.html
https://cyclo.shi.co.jp/product/feauter/gear-motor/cyclotl.html?selection=category
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/mechanical-protectors/torque-limiter/

セパレータ

セパレータとは

セパレータ

セパレーター (英: Separator) とは、二次電池(例:ニッケル水素電池リチウムイオン電池燃料電池等)の正極(アノード)と負極(カソード)を分割し、正負極間の電気的接触を防ぎ、イオン電導性を確保する部材のことです。

ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、燃料電池などのそれぞれの用途に応じた電池応じて、仕様が異なっていますが基本的な正極と負極間の電気化学反応を促す部材であることが共通項です。

例として、リチウムイオン電池では、正極(アノード)と負極(カソード)の間をリチウムイオン(Li+)電子が出入りすることで充放電を行っています。

これはセパレーターにリチウムイオンが通るぐらいの小さな穴を設けることによって実現されています。

セパレータの使用用途

ここでは、リチウムイオン電池に使用されるセパレータを事例に使用事例を記載させて頂きます。タブレットパソコンや電気自動車の普及に伴い、リチウムイオン電池には大容量化、高エネルギー密度化が求められています。

その中で、セパレータは正極(アノード)と負極(カソード)を絶縁し、短絡による異常発熱を防止及び正極(アノード)と負極(カソード)間の適切なイオン電導に基づく充放電に使用されています。

  • リチウムイオン電池に使用されるセパレータの使用例をご紹介します。
  • 車載用ラミネート型リチウムイオン電池用セパレータ
    車載用角形リチウムイオン電池用セパレータ
  • スマートフォン用ラミネート型リチウムイオン電池用セパレータ

セパレータの原理

ここではリチウムイオン電池に使用されるセパレータを事例に原理について説明します。

リチウムイオン電池は正極と負極の間でリチウムイオンが伝導することで充放電が行われるが、このリチウムイオンを伝導させるために電解液が注入されています。このとき、電解液中を電子が伝導すると外部回路に電気を伝えることができません。セパレータは正極と負極の間に設置することで、リチウムイオンのみを透過し、正極と負極の接触による内部短絡を防止することができます。

このため、セパレータはイオン伝導性と電気絶縁性が必須であり、電気的・化学的・機械的に強い材料が電池の安定した動作のためにも必要です。このため、正極(アノード)から負極(カソード)へのリチウムイオンの電気化学反応を高効率化するために、セパレーターの材料や形状が用途に応じて色々と変更されます。

セパレータにおける技術革新の事例を以下で解説します。

フッ素樹脂コーティング

  • 目的
    ラミネートセル製造における接着性向上
  • 概要
    フッ素樹脂のコーティングを使用することにより、電極(正極、負極)とセパレータ間の高い密着が可能となり、セル変形の防止やCレートの向上、高容量化に繋がる構造開発に繋がる技術として注目されている。

スラストベアリング

スラストベアリングとは

スラストベアリング

スラストベアリング(英語:Thrust bearing)は、アキシャル方向(軸中心と平行方向)荷重を受ける場合に使用するベアリングです。一般的にラジアル方向の荷重に対しては対応していなく、高速回転する場合の使用には適していませんので、使用方法は注意が必要です。

ベアリングは、軸(シャフト)などの回転体を正確で滑らかに支持するための機械部品です。軸を回転させると、軸と支持している構造物や支持物は接触しているため、必ず摩擦による抵抗力や摩擦熱が発生し、回転するエネルギーの損失が生じます。その摩擦によるエネルギーの損失と発熱を防ぐためにベアリングを使用します。ベアリング以外にも「軸受」と呼ぶことがあります。
スラストベアリングなおスラストベアリングに関連する規格としては下記があり、寸法など製造者間の互換性があります。

  • JIS B1512 転がり軸受 主要寸法 第2部:平面座スラスト軸受
  • JIS B1536 転がり軸受 針状ころ軸受の主要寸法及び公差

スラストベアリングの使用用途

スラストベアリングは下記のような種類があり、その種類ごとに用途が異なります。スラストベアリング 種類

1. スラストボールベアリング(スラスト玉軸受

工作機械の主軸などに使用されています。

  • 単式:軸軌道盤、ハウジング軌道盤、転動体(ボール)、保持器の1組で構成されたベアリングです。
  • 複式:軸軌道盤x1組、ハウジング軌道盤、転動体(ボール)、保持器は2組で構成されたベアリングです。複式は両方向のアキシャル荷重に対応しています。

スラストボールベアリング

※ 取り付け誤差が許容できるよう、単式、複式のいずれの場合も、ハウジング軌道盤の形状は、球面調心座形タイプと調心座金つきタイプがあります。

2. スラストローラーベアリング(スラストころ軸受)

単列、2列、3列ところを並べて大きな負荷に対応したものもあり、複式は鉄鋼生産設備の圧延機ロールネックなどに使用されています。

  • スラストローラーベアリング(スラスト円筒、円すいころ軸受)
  • スラスト自動調心ローラーベアリング(スラスト自動調心ころ軸受)
  • スラストニードルベアリング

スラストローラーベアリング

3. スラストメタル、ワッシャ

スラストベアリング使用例

スラストベアリングの原理

スラストベアリングは、ハウジング軌道盤、軸軌道盤、転動体(玉、ころ)、保持器で構成されています。

アキシャル荷重は、シャフト(軸)と軸軌道盤はボールもしくはローラーを介して、ハウジング軌道盤でシャフト中心軸に対して平行方向に加わるスラスト荷重を支持します。ただし、スラストアンギュラボールベアリングを使用することで、ラジアル荷重も支持することができます。

スラストローラーベアリングは、大きなアキシャル荷重を支持することもできますが、スラストニードルベアリングは小さい荷重の場合に使用します。スラスト自動調心ローラーベアリングは、ハウジング軌道盤の転動体接触面が球面形状で、円すいころの転動体との位置関係に自由度があるため、調心性があり大きなアキシャル荷重も支持することができます。

スラストベアリングの使用に際して、ベアリングの潤滑は非常に重要で、特にスラスト自動調心ローラーベアリングは形状が複雑で、潤滑剤が各箇所にいきわたり難いため、オイル潤滑方式でオイルが十分にいきわたるように設計することが必要です。

スラストベアリングの組み付け

スラストベアリングは組み付け方向が決まっているため正しい向きに組み付けが必要です。特に軸軌道盤とハウジング軌道盤の大きさの違いを見極めることが重要で、内径側が小さいのが軸軌道盤になります。それぞれの軌道盤の組み付ける向きと順番を間違えないように組み付けをします。
また組み付け時には、各部品の付着物を十分に洗浄し、ボールもしくはローラーにグリースを塗布します。(オイル潤滑の場合は不要です)

スペーサ

スペーサとは

スペーサ

スペーサ (英: Spacer) とは、モノとモノの間に挟み空間を開け、モノの高さを調整するための器具・治具です。

機械設備や製品の内部にある固定部や可動部、器具、金型などの間に挟んだり、高さを変動させたい部分に固定したりして使用します。スペーサは、使用用途や使用環境に応じたサイズや厚みの違いにより、多岐に渡る種類が存在します。

材質や長さの違いによる既製品が主であり、さまざまな製品に汎用可能です。材質は金属製・樹脂製の2種類で、絶縁性や耐熱性、耐薬品などの用途に応じて最適なものを選定する必要があります。

スペーサの使用用途

スペーサは、製造業において製品や生産設備、金型など、モノとモノの間にはさんで空間を開けるために使用されます。多くの業界で用いられており、自動車・航空機・工作機械・産業用機械・電子機器・医療機器など、使用される分野は非常に幅広いです。

身近な製品では、パソコン内部の電子機器や基盤などのパーツを高い位置に配置するために使用されています。空間を作って部品収納をアップし、通風性を確保するのが目的です。

その他、プレス金型や生産設備設置時、位置決めやストローク調整のための固定部取り付け位置調整など、高さを調整する部位にも使われます。

スペーサの種類

スペーサは形状によって分類され、代表的な種類は以下の通りです。

1. ネジスペーサ

ネジスペーサーは、ネジ機能が付いており、ネジスペーサの構造は円筒や多角柱形状でネジ部 (オスねじ) やネジ穴 (めねじ) が付いた構造です。レンチスパナで簡単に固定できるため、六角形状の六角スペーサーを頻繁に使用します。

また、電子機器や制御装置などの内部にあるプリント基板の取付け用として使用される場合も多いです。基板を保持しつつスペーサで隙間を確保し、使用される部品の配置高さを調整し、ネジ部で固定、締結する機能を持ちます。

2. ワッシャー

ワッシャーは、部品へのねじの食い込み防止を目的として、部品と部品の間に数枚ワッシャーを挟んで高さ調整をしたり、ネジスペーサと組み合わせたりして使用されます。また、部品と部品の間にも隙間を確保したい場合には、必要な隙間になる複数枚のワッシャーを挟むことで、簡易的に必要な隙間を作ることが可能です。

3. 中空スペーサ

中空スペーサは、中央が丸く空いている円筒形状のスペーサーで、ネジ機能がないスペーサです。軸回り部品などの回転体など、回転する機械要素の部分に使用されます。ネジスペーサーの代わりに、製品をより軽量化したいときにも使用可能です。

4. シムスペーサ

シムスペーサは、ワッシャーよりも薄い隙間の高さを調整するときに使います。一時的に何枚かシムスペーサを挟んで調整し、固定した後は容易に取り外すことも可能です。寸法精度はミクロン単位の厚さになっており、高精度な高さ調整ができるスペーサです。

5. ホイールスペーサ

ホイールスペーサは、円盤状の形状をしたスペーサのことで、自動車に使われるタイヤのハブとホイールの高さを調整したいときに使われます。ホイールスペーサを間に挟むことで、スペーサーの幅の分だけホイールが現行の位置より車体外側にせり出します。

車体表面とホイールの面を同じ位置に揃えたいときに使用される場合が多いです。ホイールスペーサは軽量性を必要とするため、アルミの合金が材質としてよく頻繁に用いられます。ホイールスペーサーは数ミリのものから幅広くラインナップされており、選択の幅もあり使い勝手が良いです。

スペーサの材質

スペーサの材質は、2種類に分類することができます。材質によってスペーサの特徴が異なるため、用途に応じて適切な選定が必要です。

1. 金属製スペーサ

金属製の材料を用いて厚みや形状の違いにより、生産設備、治具、プレス金型の高さやクリアランス、部品間の位置や間隔を微調整するために用いられます。使用される主な材質は、鉄・ステンレス・アルミニウムなどです。

表面仕上げとして、メッキや熱処理など表面加工されたスペーサも挙げられます。金属製であるため、剛性が強く頑丈であるという点がメリットです。

2. 樹脂製スペーサ

樹脂製の材料を用いて厚みや形状の違いにより生産設備、治具、プレス金型の高さやクリアランス、部品間の位置や間隔を微調整するために用いられます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/el_wire/E1417000000/E1417010000/
https://hirosugi.co.jp/products/shape/metal_spacer.html

ステンレスベアリング

ステンレスベアリングとは

ステンレスベアリング

ステンレスベアリングとは、材料にステンレスを使用したベアリングです。ステンレス素材は耐腐食性に優れるため、食品加工工場や高温多湿な地域で使用します。

ステンレスベアリングの使用用途

ステンレスの耐腐食性を活かせる環境として、水中や多湿環境、食品加工工場、高温環境、酸・アルカリ環境などがあります。それぞれの使用用途を下記します。

1. 水中や多湿環境

耐腐食性によって、水中や多湿環境で使用されます。使用例としては、水中ポンプ洗浄装置などが挙げられます。

2. 食品加工工場

ステンレスの耐腐食性から異物が固着しにくいため、清潔感ある外観を維持可能です。食材や製品に接触する恐れがあるため、潤滑に食品用グリスを使用する場合もあります。使用例としては、食品搬送装置などが挙げられます。

3. 高温環境

高温下では、大気腐食に特化したステンレスベアリングが使用されます。使用例としては、金属焼成炉内などが挙げられます。

4. 酸・アルカリ環境

腐食に耐性があるため、酸性やアルカリ性の気液薬品移送に使用可能です。使用例としては、化学装置や鍍金装置などが挙げられます。

ステンレスベアリングの特徴

ステンレスベアリングの特徴は、ステンレスを用いていることです。ステンレスは国際規格で、『鉄を主成分として、クロム、炭素がそれぞれ10.5%以上、1.2%以下含まれている合金鋼』と定められています。耐食性に優れ、腐食環境でも使用する可能です。

製品によっては、使用用途に合わせてセラミックやフッ素樹脂加工などが施されます。用いる素材を変えたり加工を加えることで、使用用途や使用環境に適したベアリングとして販売されています。

ステンレスベアリングの種類

ステンレスベアリングは材料であるステンレスの種類によって性能が異なります。ステンレス鋼材はJIS(日本工業規格)にてSUSという記号が割り当てられており、「ステン」や「サス」とも呼ばれます。

材料として使用される代表的なステンレスを下記します。

1. SUS304

SUS304とは、鉄にクロムやニッケルを添加したオーステナイト系ステンレスで、高い耐食性や耐熱性を持ちます。クロムやニッケルを含むため比重や密度は大きく、磁性をもたないため磁石にはくっつきません。価格は相応ですが、流通量が多く入手しやすいステンレス材です。

2. SUS440C

SUS404Cとは、鉄にクロムと炭素を添加したマルテンサイト系ステンレスです。焼入れや焼戻しによってステンレス中でも最高硬度を持つため、強度が必要な場合で使用されます。耐食性は他のステンレスよりは低いです。

3. SUS630

SUS630とは、を添加することで強度を強化した析出硬化系ステンレスです。磁性を持っているため、磁気発生場所での使用は困難です。JIS規格ではH900、H1025、H1075、H1150に分類され、数字が低いほど硬くなります。

ステンレスベアリングのその他情報

ステンレスベアリングの錆について

ベアリングは日本語では「軸受」と呼ばれ、「物の回転を手助けする部品」です。回転体を支えつつ、摩擦を少なくして回転を滑らかにする役割を担っています。

そのため、錆びると本来の役割を果たせないだけでなく、固着や劣化によって機械の故障原因になります。したがって、ベアリングは使用環境に耐えるよう選定する必要があります。ステンレスベアリングは鉄製や樹脂製と比較して高価な反面、耐食性や耐熱性に優れています。

参考文献
https://smtbearing.com/wp/wp-content/uploads/2020/02/16-%E4%BD%BF%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E6%94%B9%E5%96%84%E4%BA%8B%E4%BE%8B.pdf
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/3903.pdf
https://www.nsk.com/jp/products/spacea/corrosive/
https://koyo.jtekt.co.jp/2018/11/column01-01.html
https://www.susjis.info/austenitic/sus304.html
https://www.silicolloy.co.jp/material/sus440c/