トルクリミッタとは
トルクリミッタとは、回転機器の過負荷時に動力伝達を遮断または制限する装置です。
主に人体や機械装置保護のために使用されます。動力の遮断構造はさまざまな種類があるため、使用用途によって使い分ける必要があります。
トルクリミッタの使用用途
トルクリミッタは身近な日用品から大型産業装置まで、幅広い用途で使用されます。具体的な使用用途は、以下の通りです。
外部から想定外の力がかからないようにすることで、装置を保護し人身災害を防止します。また、インパクトレンチのように、トルクリミッタでトルクを制限し、作業を均一化することも可能です。電動工具では、多くの場合に利用されます。
トルクリミッタの原理
トルクリミッタは動作原理から2種類に分類されます。動力切断タイプとスリップタイプです。
1. 動力切断タイプ
設定トルク以上となった際に駆動軸と従動軸の縁が切れるタイプです。スリップによる熱も発生しないため、大型装置に適用可能です。
2. スリップタイプ
スリップタイプは設定トルク以上となった際に駆動軸と従動軸が滑ることでトルクを制限するタイプです。小型で安価ですが、高トルクには適しません。
トルクリミッタの種類
トルクリミッタにはさまざまな種類があります。以下の記述はその一部です。
1. 摩擦式
駆動軸と従動軸を多板クラッチやねじリコイルを介して接続する方式です。多板クラッチやねじりコイルがスリップすることで伝達力を制限します。多板クラッチタイプではクラッチの与圧によってスリップ力を調整可能です。摩擦力を利用するため、作動頻度が高いと摩耗が進み伝達力が低下します。
2. マグネット式
駆動軸と従動軸に磁石を用意し、磁石の吸引力で動力を伝達する方式です。トルクの過負荷時は軸同士がスリップしますが、摩耗や発熱はありません。磁石同士は接触しない状態で保持されているため、静音性にも優れています。
3. クラッチ式
設定以上のトルクが加わったときにクラッチが作動して動力を遮断します。クラッチの作動と電気接点を連動させれば、接点出力することも可能です。
4. シャーピン式
シャーピンと呼ばれる材料の破断を使用した方式です。シャーピン材質及びノッチ径で規定トルクを設定します。取り付けたシャーピンが破断することで停止してトルクを制限します。構造は単純で比較的安価に導入できることから大型な装置で利用されます。ただし、部品の定期交換が必要な上に、作動後はシャーピンの取替が必要です。
5. 電気式
上記は全て機械式のトルクリミッタですが、電気的なインターロックでトルク制限することも可能です。ショックリレーやインバータによって過負荷時に動力電源を遮断します。
また、インバータを利用する場合は電流値を制御してトルク制限するとも可能です。協働ロボットなどは、トルクセンサーによってトルクを制限している場合もあります。
トルクリミッタのその他情報
トルクリミッタ付きモーター
産業機器のトルクリミッタは減速機付モータなどに適用されます。従来は、従動側のスプロケット部などに取り付けるものが一般的でした。近年では、小型化を目標にトルクリミッタ付きの減速機付モーターが開発されています。
モーターにコイルばねやロードセルをセンサとしたトルクリミッタが設置されており、高精度なトルク管理が可能です。また、モーターだけではなくスプロケット部にも異なる種類のトルクリミッタを組み込むことで、2重の安全対策も可能となります。
トルクリミッタ付き減速機付モーターは、調整ボルトにより任意にリミットトルク値を設定可能な商品も販売されています。現場に設置後稼働に併せて調整することが可能です。
参考文献
https://www.sankyo-seisakusho.co.jp/product/torque_limiter/index.html
https://mighty-corp.co.jp/application/faq_torquelimiter.html
https://cyclo.shi.co.jp/product/feauter/gear-motor/cyclotl.html?selection=category
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/mechanical-protectors/torque-limiter/