シャーレ

シャーレとは

シャーレ

別名ペトリ皿とも呼ばれます。口径がわずかに異なる2枚の平皿様形状であり、それを組み合わせて使用します。組み合わせることで適度な密閉性を保持したまま、空気が入る状態となります。 ドイツの細菌学者ペトリが微生物培養のために用いたことが命名の由来です。

原料としてはガラスやプラスチックが使われており、一般的なサイズとしては直径約10cm、高さ1cm~2cmのものが多いです。加熱滅菌が必要な操作に用いる際は、板ガラス製のものを使います。プラスチック製のものは使い捨てであり、γ線によって滅菌されたものが販売されています。

シャーレの使用用途

微生物や動植物の組織培養のほか、検体を入れる等の用途で使用します。研究施設や食品、化粧品、医薬品等の検査現場で見かけることが多いです。

微生物を培養するときは、寒天培地と呼ばれる培地成分と寒天が溶解した液体をシャーレに流し入れて、室温で放置する事で寒天培地をシャーレ内で固化させ、その表面に検体となる微生物を塗布します。 検体を入れた寒天培地を、一定の温度でコントロールされている恒温器という機械の中に入れて微生物を培養します。

細胞培養の場合は、温度・湿度・pH等の培養環境を生体と同様にコントロールするために、細胞へ栄養補給するため調整された培養液を使用し、インキュベーターという恒温恒湿器の中で培養します。

シャーレを用いた細胞培養の特徴

培養される細胞の足場となる基材には、以下の特性が必要とされています。

1. 基材の表面が細胞培養に適していること
2. 細胞毒性がないこと
3. 滅菌が可能であり、滅菌状態が保たれていること
4. 培養条件において基材が変質しないこと
5. 顕微鏡での観察が可能であること

この条件に当てはまるのが、ポリスチレン樹脂製のシャーレであり、これはガラス製のシャーレよりも安価に供給されている点でメリットがあります。ポリスチレン樹脂は、その特性上表面が疎水性であるため、細胞との親和性が悪いという特徴があります。

そのため、シャーレ表面を酸化し 親水化させる処理を施して、細胞接着性を向上させたシャーレを用います。表面処理の種類としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、酸化剤処理、親水物質コーティング処理等が挙げられます。

また、細胞培養には適度な通気性も必要となります。シャーレを用いた細胞培養の場合は、径がわずかに異なる2枚の皿を重ね合わせて使用するため、外気を完全に遮断すること無く培養が可能です。また、上皿の自重で蓋がされるため、コンタミネーションも防止しながらの培養が可能となります。

シャーレを用いた微生物培養の特徴

以下のような手順で行います。

①シャーレ内の固化した寒天培地に検体を塗布する。
②コンラージ棒で検体を寒天培地上に均一に分散させる。
③シャーレの上皿を半開放し、余計な水分を蒸散させる。
④シャーレの上皿を閉じで2枚を合わせ、上下を逆さまにして培養器内で培養する。

重要な点は④の『シャーレを逆さまにして培養する』であり、この操作により培地水分の過剰な蒸散を防ぎながら、大気中に浮遊する雑菌の混入を避ける事が可能です。

このような培養方法は、『固化している』という寒天培地の性質を上手く利用したものであるといえます。

また、寒天培地を用いた微生物の培養においては、適切な条件下において、生育した微生物が単一コロニーを与えるという特徴があります。そのため、土壌などの自然試料から天然の微生物を単離する目的でも良く用いられます。

シャーレとペトリ皿の違い

シャーレとペトリ皿は同じものですが、シャーレがドイツ語で「平らで円形または楕円形で上部が開いている容器」を指す「schale」に由来するのに対し、ペトリ皿は英語の「petri dish」に由来しています。上述の通り、「petri」はドイツの細菌学者であるリヒャルト・ユリウス・ペトリに由来しており、ドイツ語では「Petrischale」、つまり「ペトリ皿」です。

シャーレの素材

ガラス製、プラスチック製のほか、ステンレス製やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン;テフロン)製、アルマイト製のシャーレもあります。また、深さがある腰高シャーレやアルミホイルシャーレなどもあります。

ガラスシャーレの特徴

ガラス製のシャーレの場合、材質については「板ガラス製」や「並ガラス製」等と表記される事が一般的です。「透明板ガラス」「ソーダ石灰ガラス」とも言われ、一般的にその最高使用温度は380℃、常用使用温度は100℃です。

ガラス製のシャーレは、バーナーなどのような直火で加熱すると急な熱膨張により割れる危険性があります。そのため、火炎滅菌する際には、蒸発皿や金網の上において間接的に加熱する必要があります。一般的には、急加熱・急冷却をしなければ、約300℃までは加熱が可能です。

ガラスシャーレは加熱滅菌(オートクレーブ、乾熱滅菌)が可能なので、ろ紙やガーゼなどの滅菌の際の容器として使うこともあります。この場合は、滅菌する器具をシャーレ内に入れてシャーレごとオートクレーブ処理や乾熱滅菌処理を行います。耐熱ガラス製シャーレであれば、より安全に加熱滅菌することが可能です。

価格は、並ガラス製、直径約10cmのもので1個500円程度です。

ガラスシャーレの滅菌方法

ガラス製シャーレは、雑菌の混入を避けるために使用前に実験者が滅菌処理をする必要があります。

その方法としては、以下の2種類が一般的です。

1. オートクレーブ滅菌

高圧条件下で水蒸気により滅菌する方法であり、圧力釜のような専用の装置(オートクレーブ装置)を用いて行います。
処理条件としては、2気圧、120度、20分などが一般的です。

2. 乾熱滅菌

熱による滅菌操作であり、専用の乾熱滅菌装置を用いて行います。処理条件としては160~170℃、2時間などが一般的です。

プラスチックシャーレの特徴

プラスチック製のシャーレの材質には、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などの合成樹脂が用いられています。

プラスチックシャーレには、底に目盛付きのグリッドが入っているものなど、培養細胞の位置確認がしやすい製品もあります。
ガラス製シャーレと比較して、透明度、耐熱性、物理・科学特性では劣りますが、破損しにくい点では優れています。また、直径90mmのもので1枚30円弱と価格が安いので、使用頻度が高く、使い捨てをする場合に適しています。

多くは、10枚×50包や20枚×25包(500枚)などで販売されています。

プラスチックシャーレの滅菌方法

プラスチックシャーレは、その性質の問題から加熱滅菌ができません。また、微生物や細胞培養に用いられる市販のプラスチックシャーレは、γ線滅菌などの方法によりあらかじめ滅菌処理されている事が普通です。そのため、実験者は使用前に加熱滅菌する必要はありません。

一般的には、70%エタノールなどで表面殺菌したのちクリーンベンチ内に持ち込み、UV滅菌処理をしてから使用します。

 

ウエス

ウエスとは

ウエス

ウエスとは、汚れを拭き取るために使用される布やタオルのことです。

一般的に清掃やメンテナンスの際に使用され、油や水などの汚れを吸収する能力に優れているのが特徴です。ウエスのほとんどは、古着など不要となった布製品で作られます。

古着等以外に、紙や不織布から作られたウエスもあります。生地の種類はさまざまで、使用用途・目的により適切なものを選択して使用します。

ウエスの使用用途

ウエスは清掃やメンテナンスにおいてさまざまな用途で使用されます。以下はウエスの使用用途一例です。

1. 清掃

家庭用や業務用の掃除や清掃作業で使用されます。床や家具の拭き掃除やトイレ清掃などの際に、雑巾代わりとして使われます。

また、工場や製造現場での清掃作業にも使用されます。機械装置は潤滑用に油を使用することが多いため、油汚れのふき取りを主に使用されます。機械部品や工具のクリーニングなどに使われるのが一般的です。

自動車の洗車やメンテナンス作業で使用されることもあります。柔らかい布製であれば塗装を傷つけないため、塗装面の拭き掃除やエンジンルームの清掃などに使われます。

2. 美容・医療

美容業界では、ネイルアートやヘアカラーなどの作業時に使用されます。ジェルネイルの拭き取りや、染毛剤の付着を防ぐための保護シートとして使われることもあります。

医療現場では、消毒や手術の際の清潔な作業環境を保つために、不織布ウエスやマイクロファイバーウエスが使用されます。

ウエスの原理

ウエスが汚れを拭き取る原理は、表面張力と吸着力です。ウエスの繊維表面には微小な隙間があり、これが汚れの粒子を捕らえることで吸着力を生み出します。また、ウエスに含まれる繊維は表面に張り付きやすく、汚れを効果的に拭き取ることが可能です。

さらに、水分が汚れの吸着力を高める効果もあります。水分が汚れと接触すると表面張力が働き、汚れがウエスの繊維に密着しやすくなります。このため、使用する際は、水分を含ませて使うことが多いです。

以上のように、ウエスは微細な隙間や表面張力、吸着力などによって汚れを拭き取ります。ただし、効果は汚れの種類や使用するウエスの素材によって異なるため、適切な種類を選び、正しい使い方をすることが重要です。

ウエスの種類

ウエスは材質に応じてさまざまな種類があります。以下はウエスの種類一例です。

1. メリヤス生地製

メリヤス生地の衣類 (Tシャツや肌着) などを再利用したウエスです。メリヤス生地は綿やポリエステルなどが素材のため、肌に触れたりすることが多いウエスに適しています。

細かいループ状の編み目が特徴で、この編み目が水分を吸収しやすいです。そのため、メリヤス生地ウエスは水拭きや洗車などの際に水分を効率的に吸収することができます。表面に傷が付きにくい柔らかい生地であるため、版画を拭く場合も適しています。

2. 紙製

主に木材繊維を原料としたパルプが原料です。紙製ウエスは、使い捨てができるため、使い終わった後に洗濯や清掃が必要ありません。手軽に使用することができます。

布ウエスに比べて毛羽立ちや発じん性が少なく、衛生面・安全性の面で優れています。繊維が細かいため、大量の油汚れも拭き取りやすいです。

素材の安価さや使い捨てできることから、コストが抑えられるという利点があります。また、洗濯や乾燥などの手間や時間も必要ないため、作業の効率化にもつながります。

3. 不織布製

不織布は合成繊維が原料です。化学的に結着させるなど、織り・編み以外の方法で作られます。不織布製ウエスは繊維を糸状に絡め合わせた構造のため、吸水性・吸油性に優れています。

糸状に絡め合わせた繊維が織り込まれた構造で作られており、繊維や粉じんが発生しにくい点が特徴です。そのため、クリーンルームや食品工場などの清潔な環境で使用されることが多いです。耐久性も高く、複数回の使用できます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0495.html
http://zokeifile.musabi.ac.jp/ウエス/

アスファルト乳剤

アスファルト乳剤とは

アスファルト乳剤

アスファルト乳剤とは、常温で施工することを可能とした材料です。

アスファルトは、通常は加熱して液状として施工しますが、アスファルト乳剤は常温で施工できます。

アスファルト乳剤の使用用途

1. 道路の舗装

アスファルト乳剤は、アスファルト舗装のプライムコートやタックコートとして用いられています。一般的なアスファルトによる舗装は、路床 (地面) の上に砕石などによって形成された路盤と加熱アスファルト混合物を路盤の上に敷設することによって形成された基層及び表層とからなる構造です。

このとき、アスファルト乳剤は、路盤の形成後に路盤の表面に散布され、その上に形成される基層と路盤の馴染みを良くするプライムコートを形成しています。なお、単に乳剤と称されることもあります。プライムコートとして使用される場合は、路盤表面に浸透して路盤表面を安定化させる効果もあります。

さらには、降雨による路盤の洗掘防止や表面水の浸透防止、路盤からの水分の毛管上昇の遮断にも効果的です。また、アスファルト乳剤は、基層の形成後に基層表面に散布されて、その上に形成される表層と基層との間の馴染みを良くするタックコートを形成する場合もあります。

そのほか、表層の形成後に散布されて舗装の表面処理に使用されることもあります。アスファルト乳剤は、舗装以外の構造物の防水加工にも好適です。

2. 緑化の促進

アスファルト乳剤は、緑化の促進にも使用されています。例えば、のり面に種子を蒔く場合、そのままでは雨などにより流れてしまいます。

しかし、種子と土、肥料および水などを混合したものをのり面に吹き付け、その上から乳剤を散布すると、雨などの浸食を防止して種子の保護が可能です。このため、アスファルト乳剤は、緑化促進にも好適です。

アスファルト乳剤の原理

アスファルト乳剤は、乳化剤を使用して水中にアスファルトの微粒子を分散させたものです。常温でも散布が可能な点が特徴として挙げられます。散布後に水とアスファルト微粒子が分離することでアスファルトの微粒子同士が集合し、粘着性を有する被膜を形成します。

なお、主な成分はストレートアスファルトと水と乳化剤であり、主成分であるストレートアスファルトは全体の50%~70%を占めています。ストレートアスファルトの次に多い成分が水で、その次が乳化剤です。

アスファルト乳剤の種類

アスファルト乳剤は、界面活性剤である乳化剤の種類により「カチオン系乳剤」と「アニオン系乳剤」および「ノニオン系乳剤」の3つに分類されています。乳化剤は他の成分に比べて含有量が少ないものの、その性質がアスファルト乳剤の性質に大きく影響します。

1. カチオン系乳剤

カチオン系乳剤の乳化剤は、カチオン系乳化剤です。散布後に水とアスファルト微粒子が分離しやすく、水の蒸発を待つことなく被膜が形成されます。

砕石の表面にすばやく被膜を形成できるため、アスファルト舗装に使用されているアスファルト乳剤のほとんどはカチオン系乳剤が占めています。

2. アニオン系乳剤

アニオン系乳剤は、アニオン系乳化剤を使用している乳剤です。水とアスファルト微粒子が分離しにくく、被膜の形成に時間がかかるという欠点があります。

しかし、乳剤としての安定性が高く、長期間の保存が可能です。スラリーシールや防水用アスファルト乳剤などとして使用されています。

3. ノニオン系乳剤

ノニオン系乳剤の乳化剤は、ノニオン系乳化剤です。ノニオン系乳剤は、電荷をもたず化学的安定性が高いのが特徴です。セメントなどのアルカリ性の物質とも容易に混合して使用することが可能で、路上路盤再生工法およびセメント乳剤モルタル用の乳剤などとして使用されています。

アスファルト乳剤のその他情報

アスファルト乳剤の利点

通常のアスファルトの場合、常温では流動性が低い特性を持ちます。そのため、道路の舗装などに使用する際は、数百度の高温で加熱する、あるいは有機溶媒を混ぜるなどの処理が必要です。このため、加熱時の異臭の発生などが課題となっています。

一方、アスファルト乳剤は、加熱を必要とせず常温で施工可能です。そのため、取り扱いが容易で異臭の発生もなく、二酸化炭素の排出量を削減できることから環境的にも貢献できると利用分野が拡大しています。

参考文献
http://www.askyo.jp/knowledge/index.html
http://www.jeaa.or.jp/new/nyuzai/index.html

CMOSカメラ

CMOSカメラとは

CMOSカメラ

CMOSカメラとは、CMOSイメージセンサーが搭載されたカメラのことです。

Complementary Metal Oxide Semiconductorの略で、CMOSイメージセンサーによりカメラのレンズから入射した光を電気信号に変換しデータ転送を行うことができます。当初は感度と画質という観点からCCDイメージセンサーが多く普及していましたが、現在ではCMOSイメージセンサの改良により出荷個数で逆転しました。CCDセンサーメーカーとして世界を引っ張っていたソニー社は2025年にCCDセンサーの生産を終了し、CMOSセンサーに注力すると発表しています。

CMOSカメラの使用用途

CMOSカメラは民生品から産業用途まで幅広く使用されています。現在ではWebカメラや携帯電話のカメラはほとんどがCMOSカメラとなっており、特徴はフレームレートとピクセル数の高さです。また省電力であることに加えノイズ性能や色再現率がさらに向上しているため、CCDカメラからCMOSカメラが取って代わりつつあります。

CCDイメージセンサーと比較して消費電力が少ないことからデジタル一眼レフカメラにも使用されています。企業によってはCMOSカメラを使用した民生用の小型HDビデオカメラなども開発中です。

CMOSカメラの原理

CMOSカメラとはCMOSイメージセンサーが搭載されたカメラです。CMOSイメージセンサーの原理はCCDイメージセンサーと同じ部分が多くあります。

CCDイメージセンサーは光を受けたフォトダイオードがその強弱に合わせて電荷を発生しますが、画像処理を行うにはあまりに電荷が微弱です。そこで画像処理回路までにアンプを設置することで信号を増幅します。その過程をバケツリレー方式で行うのがCCDの大きな特徴です。フォトダイオードとアンプを使い電荷を電気信号に変換する仕組みは同じですが、1つのフォトダイオードに対して1つのアンプがあるということがCMOSイメージセンサーの特徴です。

各素子からの電荷は予めアンプにより増幅された状態で画像処理部分へと伝達される為、ノイズによる影響を受けにくいという利点があります。また1つの半導体に仕組みを詰め込むという特徴から、大量生産する際に低価格にできるというのも利点の一つです。

CMOSカメラのその他情報

1. CMOSカメラとCCDカメラの違い

CMOSとCCDでは信号の読み出し方式や構造が大きく異なっています。
CCDはフォトダイオード上に読み出し信号線が位置する回路層とマイクロレンズアレイが配置された構造です。回路層が薄く、マイクロレンズアレイで集光された光が効率良くフォトダイオードに到達します。CMOSには回路層が厚くなりフォトダイオードに到達するまでの光路が長く感度が低いという欠点がありました。しかし2009年にSONYが裏面照射型CMOSを発表し、分厚い回路層はそのままで基板を裏返してシリコン基板層を削り、そちら側にマイクロレンズアレイを形成した構造を実現しました。これが現在CMOSで採用されている技術として一般化しつつある裏面照射型CMOSセンサです。

2. スマートフォン用CMOSカメラ

近年、スマートフォンの高画素化に伴ってCMOSセンサ業界も飛躍的な成長を遂げており、その画質は一眼レフカメラに接近しつつあります。光学ズームなどは一眼レフカメラが良好な性能を持ちますが、光学ズームのみで画像の良否が決まるわけではなく、総合的に見てスマホは一眼レフに肉薄しているというのが現状です。DXOmarkという海外サイトにsmatrphone vs Cameras:Closing the gap image qualityという記事があり、スマホと一眼カメラを多角的な視点から評価しています。

参考文献
https://www.jp.tdk.com
https://www.baslerweb.com
https://japanese.engadget.com/jp-2019-10-30-sony-cmos.html
https://www.dxomark.com/smartphones-vs-cameras-closing-the-gap-on-image-quality/

1軸ステージ

1軸ステージとは

1軸ステージ

1軸ステージとは、1方向の移動を行う軸を持った位置決めステージのことです。

1軸ステージでは、製品により水平方向や上下方向 (鉛直方向) などの1方向にのみステージが動きます。1軸ステージでは任意の位置での位置決めが可能です。1軸ステージを使用する際は、用途に合わせてステージの可動方向や位置決め精度を考える必要があります。

あくまで1軸であるため、例えば左右方向の移動と前後方向の移動の2軸の移動が必要な場合には2軸ステージを使用する必要があります。マイクロメーターを採用する1軸ステージでは、精度を必要とする位置決めにも対応可能です。

1軸ステージの使用用途

1軸ステージは、位置決めや調整などを目的として検査装置などの装置で使用されます。ガイド機構や送り機構の違いによって、精度はさまざまです。

また、ガイド機構や送り機構によって1軸ステージの特長も異なります。そのため、使用目的や条件に合った1軸ステージの選定が必要です。

なお、1軸ステージの使用例は以下の通りです。

  • 製品検査用装置の位置決め
  • 装置位置 (部組) のストローク調整用
  • 製品組み立て用治具のモデル変更への対応調整
  • FA装置の搬送や位置決め

1軸ステージの原理

1軸ステージは基本的にガイド機構・送り機構・クランプ機構の3つの機構により構成されています。3つの機構の組合せにより1軸ステージの精度などを変更できます。

以下、ガイド機構と送り機構の代表的な方式を説明します。

1. ガイド機構

ガイド機構には、大まかに3種類の機構があります。

アリ溝方式
台形状のアリ溝とアリ溝の収まるアリほぞを利用したガイド機構です。アリ溝とアリほぞの間の摩擦係数が高いため、精度の高い位置決めには不向きです。一方、コストが抑えられるので、簡単な位置決めを行う用途には向いています。

クロスローラ方式
ローラーが内蔵されるスライダーとV溝が形成されるレールを利用したガイド機構です。レールに沿ってスライダーが移動するときに、V溝の中でローラーが転がります。剛性が高いのが特長です。また、低摩擦で微小な送りができるため、正確な位置決めに向いています。

ボール方式
ボールが内蔵されるスライダーと円弧状のR溝が形成されるレールを利用したガイド機構です。レールに沿ってスライダーが移動するときにR溝の中でボールが転がります。クロスローラ方式と同様に正確な位置決めに適しています。

2. 送り機構

送り機構には、おおまかに3種類の機構があります。

ラック&ピニオン
ラックギアが形成されるレールとピニオンと呼ばれる歯車を利用した送り機構です。送り速度が速い点が特長ですが、精密な位置決めには不向きです。

送りねじ
おねじとめねじを利用したねじ方式の送り機構です。例えば、ボールねじがこの送り機構に該当します。細かな送りは可能ですが、送り速度が遅いため、長いストロークでの位置決めには不向きです。

マイクロメーター
送りねじよりも細かな精度での送りが可能なねじ方式の送り機構です。送りねじよりも精密な送りが可能ですが、送りねじよりも送り速度は遅くなるため、長いストロークでの調整には向いていません。

1軸ステージの種類

1軸ステージには、直動ステージと回転ステージ、ゴニオステージがあります。

1. 直動ステージ

直動ステージは、水平方向または上下方向の1方向に直線移動するステージを持つ1軸ステージです。

2. 回転ステージ

回転ステージは、上下方向を回転の軸方向として回転するステージを持つ1軸ステージです。

3. ゴニオステージ

ゴニオステージでは、ステージの垂線上の一点を回転中心にしてステージが円弧状に移動します。ステージの傾斜角度を調整できます。

1軸ステージのその他情報

モーター式の1軸ステージ

1軸ステージは手動で操作するものに限らず、駆動をモーターで行うものもあります。この場合、位置決めの精度は、送り機構の精度とモーターの分解能によって決まります。

そのため、モーターの仕様も重要です。一般的に、精密な位置決めを行う場合には、サーボモーターやステッピングモーターが使用されます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/d0039.html
https://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/mech/product/xy/faq/faq01.html

インサーター

インサーターとは

インサーターとは、文章やカードなどのアイテムを自動的に封かんする装置です。

通称では封入封かん機とも呼びます。 本装置の導入により、作業時間短縮によるコストダウンと誤封入の防止を図ることが可能です。これにより、封かんの品質向上と労働力の削減んが見込まれます。

また、昨今では個人情報漏洩防止の観点からクレジットカードの利用明細書の封入封かんに本装置が使われます。 具体的には利用明細書と封筒をバーコードで管理し、封入時に誤封入や誤発送が発生しないように自動処理する仕組みです。したがって、現在はクレジットカードの紙面明細発行に必要不可欠な装置です。

インサーターの使用用途

インサーターは手作業で封入していた封かんを機械化する装置です。具体的な使用用途は以下の通りです。

1. 印刷・出版業界

書籍や雑誌に付録を挿入する際にインサーターが使用されます。一例として、特別な冊子やポスターまたはDVDなどがこれに該当します。これにより、読者に付加価値を提供し、販促効果を高めることが可能です。

また、定期購読の場合には、付随する請求書やアカウント情報などの文書を出版物に封入する際に使用されます。これにより、読者への情報提供やサービス提供を効率的に行うことが可能です。

印刷・出版業界では他業界での郵便物の封入・作成を委託されることが多いです。したがって、業務の効率化および品質向上を目的にインサーターを導入する事例があります。

2. 通信業界

インサーターは大量の郵便物を処理するために、通信業界で広く使用されます。これにより、郵便物の封入作業が自動化され、処理速度を向上させることが可能です。請求書や明細書そしてカタログなど、様々な種類の郵送物の封入に利用されます。

3. 医療業界

医療業界においては、様々な個人情報を取り扱うことが多いです。患者の診断結果や処方箋、およびその他の医療文書や患者情報を封入する必要があります。これらの文書を秘匿性を保ちながら挿入し、封かんするためにインサーターが使用されることも多いです。

インサーターの原理

インサーターは装置本体と操作部および制御部の3つで構成されています。

装置本体は封入封緘作業を実際に行う部分であり、主要な機械構造部です。一般的には書類などを挿入するためのフィーダーやトレイ、封入材料供給部、挿入された部品を封緘するための封緘機構などを有します。書類の挿入や封緘作業を行うための機械構造部であるため、作業の正確性などに影響を与える要素です。

操作部はインサーターを操作するための部分であり、使用者のインターフェイスとなる重要な要素です。一般的にはユーザーが機械を起動・停止したり、設定を調整するために使用されます。作業を監視するためのボタンや表示灯などを有する部分で、近年では液晶タッチパネルなどが使用されることが多いです。

制御部はインサーターの動作を管理するための電子制御システムです。モーターやセンサーなどの機械部品を制御するための制御回路やプログラムが含まれます。操作部からの指示に基づいて装置本体の動作を調整し、作業を自動化する部分です。

インサーターの選び方

インサーターを選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 対応用紙

インサーターを選ぶ際には対応する用紙の種類やサイズが重要です。一般的な用紙のサイズに加えて、光沢紙や厚紙などにも対応できるかを確認する必要があります。また、特大サイズや異形用紙への対応可否や、自動フィーディングや整列機能の有無なども確認することが重要です。

2. 動作速度

インサーターの動作速度は1時間あたりに処理できる用紙や製品の量を示す指標です。自社の生産量や需要に合わせて適切な動作速度を選択する必要があります。高速のインサーターは大量生産ラインで効果的に使用できますが、柔軟な条件での生産ができない場合があります。

3. 歩留まり

歩留まりはインサーターが正確に書類などを挿入する能力を示す指標です。センサーの性能や調整・メンテナンス状態によっても異なります。高い歩留まり率を保つことは、品質の一貫性を確保する上で重要です。

参考文献
https://www.rakurakumeisai.jp/column/invoice/190620.php

EMC試験機

EMC試験機とは

EMC試験機

EMC試験機とは、電磁環境両立性 (英: Electro Magnetic Compatibility, EMC) を試験するための機器のことです。

電磁環境の両立性とは、電子機器が他の電子機器に電磁的な妨害を与えないことと、もし電磁ノイズを受けたとしても誤動作しないことを要求することを指します。また、ノイズを出すものをエミッションと言い、外来ノイズに耐える力のことをイミュニティと分類されます。両方の性質を表すものが電磁環境両立性 (EMC) です。

EMC試験機の使用用途

EMCには電子機器から発生するノイズを測定するための機器および電子機器にノイズを印加する機器など様々なものが存在します。

ノイズの測定や印加は、電波暗室と呼ばれる電波を完全遮断した試験室で実施します。試験室は公的な認証が必要なため、試験を実施出来る場所は限られます。

電波暗室とは、オープンサイトの電波伝搬特性を模擬した人工試験サイトのことで、金属製の壁によって外来電波をシールドしつつ、壁面や天井に設置された電波吸収体によって電波が吸収される仕組みです。

また、試験室での認証試験は一般的に一日数十万円の費用が発生し、時間をかけるほど試験費用が発生します。電子機器を搭載したメーカーにとっては、開発時の大きな課題となっています。

EMC試験機の原理

電子機器のエミッション (発生ノイズを測定) 試験方法は、伝導エミッションと放射エミッションの2種類があります。

伝導エミッションは、擬似電源回路網と呼ばれるLISN (英: Line Impredance Stabilization Network) と呼ばれる専用ノイズ測定器を使用し、電子機器の発生するノイズを測定します。一方、放射エミッションはアンテナで受信したノイズを測定します。外部ノイズが完全に遮断された場所で行われるため、これらのエミッション試験機の測定システムは、測定する部屋も含めて大変複雑な試験設備となっています。

イミュニティの主な試験は、静電気試験機、方形波インパルスノイズ試験機、スイッチ等の開閉器によるノイズを想定したファストトランジェントバースト試験機、雷サージ試験機、サグやディップとも言われる電源電圧変動試験機等の専用の試験機を使用し、EUTと呼ばれる対象の被試験機にノイズを印加して、規格値まで耐え得るか否かを確認します。

他の試験は、電源ラインの伝導ノイズを評価する試験やマルチメディア機器の通信ポートに流れる伝導ノイズを評価するための試験、放射性の電界ノイズを評価する試験、吸収クランプを使用して電源LINEに流れる伝導ノイズを測定する試験なども実施されています。

以上のことから、EMC試験機を使用した各々の試験によってIEC等の規格をクリアしたものだけが正式に市場で販売ができるということになります。

EMC試験機の種類

エミッションとは「放出・放射」と訳され、排気ガス規制の場面で使用されています。EMCにおけるエミッションは「電子機器が周囲に対して不審な電磁ノイズを放射する」という解釈です。

イミュニティは「免疫」と訳され、EMCにおけるイミュニティは「周囲から印加される電磁ノイズに対する耐性」という解釈です。

また、世界で電子機器を搭載した自社製品メーカー企業に とって、EMCが日本の電気用品安全法や海外のIEC規格に基づいた各国の法律を遵守しないと販売できないことから、EMCをクリアすることが販売する必須条件として重要なポイントになります。

したがって、EMC試験は電子機器から発生するノイズレベルを測定するエミッション試験と電子機器が、外来ノイズに耐えるレベルをチェックするイミュニティ試験になります。

参考文献
http://www.micronix-jp.com/products/emc/
http://www.noiseken.co.jp/modules/products/index.php?content_id=165

絶縁耐圧試験機

絶縁耐圧試験機とは

絶縁耐圧試験機とは、電気機器や電子部品の絶縁耐圧特性を評価するための測定器具です。

電気機器や電子部品が正しく絶縁されており、電気回路が漏電や短絡によって危険を引き起こさないことを確認するための重要な手段です。正しく絶縁されていない場合、電気ショックや火災のリスクが高まります。絶縁耐圧試験機は、絶縁耐圧試験において電圧を印加するために使用されます。

多くの国や地域で、電気機器や電子部品は規制要件に従うことが必要です。絶縁耐圧試験の実施が義務付けられていることも多く、法的規制を順守するために実施されます。製品の品質を確保し、不良品を検出するための有効な手段です。

絶縁耐圧試験機の使用用途

絶縁耐圧試験機は、さまざまな電気機器や電子部品の製造および安全性確保のために使用される測定器具です。以下は絶縁耐圧試験機の主な使用用途です。

1. 電気工事

高圧ケーブルや変圧器などの高圧設備に対して高電圧絶縁耐圧試験を実施することが多いです。これにより、安全性と適切な動作を確認します。工事において機器を損傷させ、絶縁破壊が発生していないかなどを確認し、工事品質を保証します。

2. 電気製品製造

コンピュータやテレビなどの電気機器製造プロセスで使用される場合が多いです。絶縁耐圧試験機は製品の絶縁性能をテストし、絶縁不良を検出します。これにより、不良品が市場に流通するのを防ぐことが可能です。

3. 研究・開発

新しい電子機器や電子部品の開発プロセスでは、絶縁耐圧試験が新製品の評価に役立ちます。新しい材料や新構造の絶縁性能をテストし、改良を加えるために使用されます。これにより、新開発された機器・部品が要件を満たした絶縁耐力があるかを確認することが可能です。

絶縁耐圧試験機の原理

絶縁耐圧試験機の原理は、電気機器や電子部品の絶縁性能を評価するために、電圧を印加して絶縁抵抗を測定することに基づいています。試験対象の電気機器や部品に、特定の企画や要件をに基づいた高電圧を印加します。

印加される電圧は正弦波の交流電圧であることが多く、数百Vから数キロV以上にわたる高電圧です。高電圧を印加することにより、絶縁材料が高電圧に耐えることを確認できます。絶縁耐圧試験機は高電圧が印加された状態で絶縁抵抗を測定することが可能です。

絶縁抵抗は電流を通しにくい程度を示す指標であり、通常はオーム (Ω) の単位で表されます。絶縁抵抗が高いほど、絶縁性が優れていることを示す指標です。絶縁抵抗の測定方法としては、高電圧が印加された最中に絶縁材料から漏れる電流を検出します。漏れ電流と印可電圧の関係によって、絶縁抵抗を測定する仕組みです。絶縁不良や絶縁材料の劣化によって、漏れ電流が増加することがあります。

絶縁耐圧試験機の選び方

絶縁耐圧試験機を選ぶ際に考慮すべき重要な要因はいくつかあります。以下は絶縁耐圧試験機の選定要素です。

1. 印可電圧

印可電圧は、試験対象に印加することができる電圧です。選択する絶縁耐圧試験機は、試験対象の用途に適した範囲の印可電圧を提供する必要があります。高電圧試験が必要な場合、試験機の印可電圧が高い製品を選択します。

2. 電源

絶縁耐圧試験機は電源供給が必要なことが多いです。選択する試験機の電源要件が、設置場所の電源供給に合致していることを確認します。AC電源またはDC電源で動作するモデルがあります。

また、バッテリー駆動の製品も多いです。移動して使用する可能性がある場合は、バッテリー駆動の製品が有利です。

3. 漏れ電流の範囲

絶縁耐圧試験では、漏れ電流を観測して絶縁耐力を測定します。試験機の漏れ電流測定範囲が、試験対象の特性に合致していることを確認します。低漏れ電流要件を持つ製品に対しては、低い漏れ電流範囲を持つ試験機が必要です。

4. 補助機能

試験機の操作性や機能も重要です。直感的なインターフェースやデータ保存・転送機能、試験プロセスの自動化機能など、作業効率を向上させる機能を持つかどうかを検討します。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/support/faq/detail/?dbid=2027
https://www.kikusui.co.jp/knowledgeplaza/?d=safetytest

PC用電源

PC用電源とは

PC用電源

PC用電源とは、コンピュータ用の電源回路を収めた電源ユニット・電源装置です。

PSUと略称されています。商用電源 (交流) を入力し、PC用電源内部で整流ブリッジ、スイッチング回路、高周波トランスを介して直流に変換を行い、CPUマザーボード、周辺機器などコンピュータ各部へ安定的に給電するための出力を作り出す役割を持っています。また、ノイズ対策、過電流からの保護などもPC用電源の役割です。

PC用電源の使用用途

PC用電源は、様々なタイプのパーソナルコンピュータの稼働に欠かせません。それぞれのPCタイプに最適な電源の選択が、その性能と寿命に重要な影響を与えます。

1. ノートPC

ノートPCの電源は通常、外部ACアダプターと内部バッテリーの両方から供給されます。このようなデバイスは、電力効率と軽量性が重視され、しばしば内蔵バッテリーによって移動中も使用可能です。

2. 小型のデスクトップPC

小型デスクトップPC (ミニタワーやスモールフォームファクター) では、スペースが限られているため、コンパクトな電源ユニットが必要となります。これらのシステムでは、通常、200Wから300Wの電源が使用されます。

3. ミドルタワー以上のデスクトップPC

これらの大型デスクトップPCでは、複数の内部デバイスを駆動する必要があるため、より高出力の電源が必要となります。400Wから600Wの電源が一般的です。

4. ゲーミング用のデスクトップPC

高性能なグラフィックスカードとプロセッサを搭載したゲーミングPCは、大量の電力を必要とします。これらのPCには、通常600Wから1200W、場合によってはそれ以上の電源が使用されます。

5. サーバーとデータセンター

これらのシステムは、連続的な稼働と高い信頼性が求められ、しばしば冗長性を持たせるために複数の電源ユニットを使用します。それぞれの電源ユニットは、サーバーの電力需要に応じて500W以上のものを使用します。

 

以上のように、PC用電源は、使用するPCの種類とその必要とするパフォーマンスによって大きく異なります。これらの用途に合わせて適切なPC用電源を選ぶことで、各PCがその最高のパフォーマンスを発揮できます。

PC用電源の原理

PC用電源は金属製の板やパンチングメタルなどの筐体を持っており、そのうち1面が外面に露出する前提で作られています。露出面には商用電源の入力ソケットを持ち、コンピュータ内部側には出力や制御信号線からなる給電用電線、または電線接続用のソケットを備えています。

筐体内部の構成要素は、スイッチング式の電源回路・ヒートシンク・冷却ファンです。スイッチング式の電源回路は、商用電源で使用されているAC (交流電気) からDC (直流電気) へ変換し電流を安定供給させる役割があります。

ヒートシンクはアルミニウム製で、電源回路に搭載されている半導体素子を冷却します。筐体内部では大容積を占めているものです。冷却ファンは1基か2基を筐体のいずれかの面に備えてあります。コンピュータ内部または外部から取り込んだ空気で筐体内部の熱を奪い、温まった空気をコンピュータ外部へ強制排出したりコンピュータ内部の気流の生成に用います。

PC用電源の種類

PC用電源には様々なサイズや電力出力を持つものがあります。

1. ATX (英: Advanced Technology Extended) 電源

ATX電源は、今日のデスクトップPCのほとんどに標準装備されています。信頼性があり、効率的で、基本的なコンピューティングタスクからハイエンドのゲームやプロフェッショナルなワークステーションに対応する様々な電力出力を提供します。

2. SFX (英: Small Form Factor) 電源

SFX電源はATX電源の小型版です。スペースが限られている小型PCでの使用を目的として設計されています。

3. EPS (英: Entry-level Power Supply)

電源: EPS電源は、一般的にサーバー環境や高性能ワークステーションで使用されます。サーバーグレードのコンポーネントの高い電力要求を処理し、高可用性のための冗長性のような機能をサポートするために設計されています。

4. 外部電源アダプター

これらは通常、ノートPCや一部の小型なデスクトップPCで使用されます。筐体内部に配置される代わりに、外部ユニットとして、ACをDC電源に変換してPCに供給します。

5. 冗長電源

これらの電源は、ミッションクリティカルなサーバーやデータセンター向けに設計されています。1つの電源が故障した場合にバックアップを提供し、連続した運用を保証します。

PC用電源のその他情報

1. 80PLUS

パソコン用電源ユニット (PSU) の性能を評価するための認証として、80PLUSがあります。この認証は、エネルギー効率、つまり電源がどれだけの電力を効果的にPCのコンポーネントに変換できるかを示しています。

効率が高ければ、無駄な電力消費を抑えることができ、PCの動作中に発生する熱も低減します。最も変換効率がよいものにはTitaniumのグレードが与えられ、変換効率はおおむね90%以上となります。その他、Platinum、Goldとスペックが下がっていき、Standardのものであっても80%以上の変換効率が保証されています。

2. PC用電源の寿命

PC用電源の寿命は短く、一般的には3~5年で交換が必要といわれています。電源は壊れやすいパーツであるため、止めることができないミッションクリティカルのシステムを設置するサーバーなどでは、多重化を行い機器故障による障害確率を低下させる対策が必要です。

PC用電源の故障は、PCの全パーツに対して電源供給の停止を意味するため、異常な電源断によるパーツ故障があります。電源が安定しない、突然PCが停止するなどの故障の兆候が見られた際には、早期の電源交換をおすすめします。

長期間利用しているPC用電源からは、異音の発生があります。これも故障の兆候なので、PCから変な音がした時には電源が故障している可能性が高いです。

参考文献
https://www.atmarkit.co.jp/fpc/pcmainterepair/pcmr006/pcmr006_04.html
https://www.nipron.co.jp/product_info/technical_dictionary/2_1.htm
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/electric_electronic_design/ee01/a0146.html
https://jp.rs-online.com/web/c/power-supplies-transformers/power-supplies-psus/pc-power-supplies/
https://torano-maki.net/guide/course/power_supply.html
http://www.pasonisan.com/customnavi/z1012power/01yakuwari.html
https://kakaku.com/pc/power-supply/guide_0590/

ATX電源

ATX電源とは

ATX電源

ATX電源とは、ATX仕様のコンピュータ用電源ユニット・電源装置です。

PSUと略称されています。ATXは、「Advanced Technology eXtended」の頭文字を取った言葉です。1995年にアメリカ合衆国のインテル社によって発表されたパーソナルコンピュータ用の規格で、現在ではデスクトップ型パソコンに広く使用されています。

電源などに対する記載もありますが、最も詳細に記載されているマザーボードの規格として扱われる場合もあります。ATX電源内部では、商用電源 (交流) を入力して直流電源へ変換します。変換された直流電源は、CPUやマザーボードなどコンピュータ各部へ給電されます。また、過電流発生時の保護やノイズ対策などもATX電源が担っています。

ATX電源の使用用途

ATX電源は主に、パーソナルコンピュータの電源として使用されます。特にデスクトップパソコンで使用される電源で、フルタワーからミニタワーまでパソコンの種類は幅広いです。パソコン内部におけるATX電源の役割は、内部装置およびバスパワー対応の周辺機器などに電源を供給することです。

パソコンのパーツ構成やスペックによって総消費電力が異なるため、計算した必要電力以上の電源容量を持ったATX電源を選定します。使用環境・用途により、電源容量には余裕を持たせた選定が望ましいです。

ATX電源の原理

ATX電源は筐体、スイッチング式電源回路・ヒートシンク・冷却ファンなどで構成されます。

1. 筐体

ATX電源は金属製の板やパンチングメタルなどの筐体を持っており、そのうち1面が外面に露出する前提で製作されます。露出面には商用電源の入力ソケットを持ち、コンピュータ内部側には制御信号線からなる給電用電線が取り付けられます。給電用電線の先端には電線接続用のソケットが取り付けられている場合が一般的です。

2. スイッチング式電源回路

スイッチング式電源回路は、商用電源で使用されているAC (交流電流) からDC (直流電流) へ変換して安定供給する役割を持つ部品です。主に、整流器や平滑用コンデンサなどで構成されており、整流器でAC/DC変換を行って平滑コンデンサで波形を安定化させます。整流器は動作の際に熱を発するため、冷却するための機構が必要となります。

3. ヒートシンク

ヒートシンクはアルミニウム製の冷却用部品です。電源回路に搭載されている整流器の発熱を分散させ、放熱する手助けをします。筐体内部では大容積を占めています。

4. 冷却ファン

冷却ファンはヒートシンクに冷風を吹き込んで冷却する部品です。冷却ファンは1基か2基を筐体のいずれかの面に備えており、筐体の露出面から風を吹き込みます。温まった空気は上昇するため、筐体側面から吹き込み、上面から吹き出す構造が一般的です。

ATX電源のその他情報

1. ATX電源のピンアサイン

ATX電源には、ピンアサインと呼ばれる出力に関する規格が存在します。配線コネクタのピン配列を詳細に定めた規格であり、マザーボード用ケーブルやSATA用ケーブルなど様々なケーブルについて適用されています。

ピンごとに出力電圧が異なり5Vや12Vの出力電圧が広く使用されます。各ピンには出力に応じて3.3Vはオレンジ、5Vは赤などと色別がされています。ピンを誤って機器に接続すると故障の原因となるため注意が必要です。

ATX電源は安全のためマザーボードに接続し、マザーボードから許可がない限りは電気を各ピンに出力しない構造となっています。ただし、PS_ONというピンをショートさせると、疑似的に電流を流すことが可能です。PS_ONはATX電源のテストなどに使用されます。

2. ATX電源のサイズ

ATX電源のサイズは規格により定められており、もっともよく用いられる電源サイズは幅150mm、高さ86mmです。奥行きは規定がないため様々なサイズが販売されていますが、155mmや158mmなどが一般的なATX電源の奥行きです。

また、ATX電源には小型シャーシに対応するように規格化された電源としてSFX電源があります。小型のパソコン筐体を使用したい場合はSFX電源が候補となります。ただし、一般的にはSFX電源はATX電源より出力容量が小さいため、高性能のグラフィックボードなどを利用する際には注意が必要です。 

参考文献
https://www.atmarkit.co.jp/fpc/pcmainterepair/pcmr006/pcmr006_04.html
https://www.nipron.co.jp/product_info/technical_dictionary/2_1.htm
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/electric_electronic_design/ee01/a0146.html
https://www.nipron.co.jp/product_info/technical_dictionary/Q&A_1-4-5.htm
https://mato-memo.net/pc/atx-pin.html