アスファルト乳剤

アスファルト乳剤とは

アスファルト乳剤

アスファルト乳剤とは、常温で施工することを可能とした材料です。

アスファルトは、通常は加熱して液状として施工しますが、アスファルト乳剤は常温で施工できます。

アスファルト乳剤の使用用途

1. 道路の舗装

アスファルト乳剤は、アスファルト舗装のプライムコートやタックコートとして用いられています。一般的なアスファルトによる舗装は、路床 (地面) の上に砕石などによって形成された路盤と加熱アスファルト混合物を路盤の上に敷設することによって形成された基層及び表層とからなる構造です。

このとき、アスファルト乳剤は、路盤の形成後に路盤の表面に散布され、その上に形成される基層と路盤の馴染みを良くするプライムコートを形成しています。なお、単に乳剤と称されることもあります。プライムコートとして使用される場合は、路盤表面に浸透して路盤表面を安定化させる効果もあります。

さらには、降雨による路盤の洗掘防止や表面水の浸透防止、路盤からの水分の毛管上昇の遮断にも効果的です。また、アスファルト乳剤は、基層の形成後に基層表面に散布されて、その上に形成される表層と基層との間の馴染みを良くするタックコートを形成する場合もあります。

そのほか、表層の形成後に散布されて舗装の表面処理に使用されることもあります。アスファルト乳剤は、舗装以外の構造物の防水加工にも好適です。

2. 緑化の促進

アスファルト乳剤は、緑化の促進にも使用されています。例えば、のり面に種子を蒔く場合、そのままでは雨などにより流れてしまいます。

しかし、種子と土、肥料および水などを混合したものをのり面に吹き付け、その上から乳剤を散布すると、雨などの浸食を防止して種子の保護が可能です。このため、アスファルト乳剤は、緑化促進にも好適です。

アスファルト乳剤の原理

アスファルト乳剤は、乳化剤を使用して水中にアスファルトの微粒子を分散させたものです。常温でも散布が可能な点が特徴として挙げられます。散布後に水とアスファルト微粒子が分離することでアスファルトの微粒子同士が集合し、粘着性を有する被膜を形成します。

なお、主な成分はストレートアスファルトと水と乳化剤であり、主成分であるストレートアスファルトは全体の50%~70%を占めています。ストレートアスファルトの次に多い成分が水で、その次が乳化剤です。

アスファルト乳剤の種類

アスファルト乳剤は、界面活性剤である乳化剤の種類により「カチオン系乳剤」と「アニオン系乳剤」および「ノニオン系乳剤」の3つに分類されています。乳化剤は他の成分に比べて含有量が少ないものの、その性質がアスファルト乳剤の性質に大きく影響します。

1. カチオン系乳剤

カチオン系乳剤の乳化剤は、カチオン系乳化剤です。散布後に水とアスファルト微粒子が分離しやすく、水の蒸発を待つことなく被膜が形成されます。

砕石の表面にすばやく被膜を形成できるため、アスファルト舗装に使用されているアスファルト乳剤のほとんどはカチオン系乳剤が占めています。

2. アニオン系乳剤

アニオン系乳剤は、アニオン系乳化剤を使用している乳剤です。水とアスファルト微粒子が分離しにくく、被膜の形成に時間がかかるという欠点があります。

しかし、乳剤としての安定性が高く、長期間の保存が可能です。スラリーシールや防水用アスファルト乳剤などとして使用されています。

3. ノニオン系乳剤

ノニオン系乳剤の乳化剤は、ノニオン系乳化剤です。ノニオン系乳剤は、電荷をもたず化学的安定性が高いのが特徴です。セメントなどのアルカリ性の物質とも容易に混合して使用することが可能で、路上路盤再生工法およびセメント乳剤モルタル用の乳剤などとして使用されています。

アスファルト乳剤のその他情報

アスファルト乳剤の利点

通常のアスファルトの場合、常温では流動性が低い特性を持ちます。そのため、道路の舗装などに使用する際は、数百度の高温で加熱する、あるいは有機溶媒を混ぜるなどの処理が必要です。このため、加熱時の異臭の発生などが課題となっています。

一方、アスファルト乳剤は、加熱を必要とせず常温で施工可能です。そのため、取り扱いが容易で異臭の発生もなく、二酸化炭素の排出量を削減できることから環境的にも貢献できると利用分野が拡大しています。

参考文献
http://www.askyo.jp/knowledge/index.html
http://www.jeaa.or.jp/new/nyuzai/index.html

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