切断加工

切断加工とは

切断加工

切断加工とは、物体を2つに切断するための加工法の総称です。

丸棒や板材などの機械部品の材料を組み合わせる際に行われます。工具に刀刃、はさみ、鋸刃を使用したり、火炎で被削材を溶かして切断したり、微粉末を吹きつけて切断する加工法などが一般的です。

材料を切り出す際には、素材の形状に合う工作機械を使用します。パイプ材、アングル材、チャンネル材を利用すると機械加工が容易です。

切断加工の使用用途

対象の素材によって、多種多様な加工法があります。適切な切断加工を使い分ければ、最適な手順で加工可能です。

例えばレーザー切断加工では、作成したデータ通りにカットでき、板金、アクセサリー、看板のような、幅広い用途で使用可能です。素材によって切断可能な厚みが変化します。

ワイヤーカット放電加工はセラミックやタングステンのような硬い物質の切断に利用可能です。ウォータージェット加工は熱により変形しやすいゴムや強化プラスチックの加工に適しています。フライス加工は機械部品のスペーサーに、旋盤加工はシャフトの軸や軸受けなどに使用されます。

切断加工の種類

1. 旋盤加工での切断

様々な切削加工が可能な旋盤です。突っ切りバイトなどを取り付けて、棒材などの工作物を切断できます。棒材などを目的の長さより長い状態で加工した時などに、最後の方の段階でこの切断方法が使用されます。

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2. フライス加工による切断

多種多様な切削加工を行う旋盤ですが、メタルソーなどの工具を取り付けて切断できます。

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3. プレス加工による切断

工作物の上下に2枚の刃を用意してプレスすると、目的のサイズ・形状に切断できます。この場合には切断加工の一種である、せん断加工と呼ばれることも多いです。

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4. レーザーカットによる切断

レーザーにより切断します。複雑な形に切断可能です。

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5. ウォータージェット加工による切断

超高圧域に昇圧した水を、極めて小さい径のノズルで噴出させて切断します。

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6. ワイヤーカットによる切断

電極線を使用して放電現象により切断します。複雑な形に切断可能です。

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切断加工の選び方

切断加工では多種多様な工作機械を用います。

1. 帯のこ盤

板材を切断する際に、帯のこ盤を使用します。帯のこ盤は幅8mm程度の帯状の刃が上から下方向に回転していて、材料を切断可能です。帯のこ盤で板材を切り出す際には、削りしろ (3〜5mm) を考慮してけがきます。軍手を使うと巻き込まれる恐れがあるので、使用せず両手で材料をしっかり押さえます。ただし刃の進行方向に指を置いてはいけません。

2. 弓のこ盤

丸棒を切断する時には、弓のこ盤を使います。弓のこ盤は自動的に刃が往復運動を繰り返します。固定した材料の上に刃を乗せれば、簡単に丸棒を切断可能です。適当な長さに材料を固定して、弓のこ盤を動かします。ゆっくりと材料の上に刃を当てると、自動的に切断が完了します。

3. 手のこ

直径10mm以下の丸棒を切断する場合は、弓のこ盤ではなく手のこで行います。理由は弓のこ盤の刃を破損するからです。 手のこで材料を切断する時には、押すときに力を入れて、引くときには力を抜きます。材料は万力で固定する方法が一般的です。

4. 足踏み切断機

厚さ1mm以下の鉄板や2mm以下のアルミニウム合金板などを切断する時には、足踏み切断機を使います。けがいた板材を刃の位置に合わせて、ペダルを強く踏み込むだけで切断可能です。足踏み切断機は直線で切断する際に使用します。

5. 高速切断機

高速切断機は高速で回転する厚さ5mm程度の砥石で材料を切断します。鉄鋼製のパイプやアングル材など、肉厚が薄い材料を素早く切断可能です。

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6. ガス切断

ガス切断はアセチレンガスと酸素の燃焼熱で、鉄鋼材料を溶かして切断します。初心者だと切断面が曲がってしまい、品質が確保できません。またガス切断を行うには、資格が必要です。

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スポット溶接

スポット溶接とはスポット溶接

スポット溶接は、正確には電気抵抗スポット溶接と呼ぶべき方法で、溶接用の電源に接続された通電用銅電極の間に2枚の金属板を重ね合わせた状態で通電し、その後の抵抗発熱で重ね部を溶融させ接合する方法です。

つまり溶接前に重ねた場所で抵抗発熱が発生する程度に2枚の金属板を接触させるように圧迫して、接合が完了するまで圧力を加えた状態で溶接が行われることから圧接法に分類されます。 ただその接合のメカニズムは溶接と同じです。

スポット溶接の応用例

スポット溶接の応用として、電極を円盤状にしてスポット溶接点を連続して繋ぐシームレス溶接や、接合の安定性を高めるために一方の材料の接合部に突起を成型して、突起部に集中的に抵抗発熱を生じさせるインジェクション溶接、接合面に弄剤を置き抵抗発熱でロウ付けを行う抵抗ろう付けなどがあります。

スポット溶接の条件

溶接の条件は溶接する金属材料の種類で選択する必要があります。

①溶接性の良い軟鋼の場合

製品の品質要求に見合う強度条件を選択します

②硬い高張力鋼など合金鋼

加圧力を高めて接触状態を確保して溶接を行い、その後は溶接部に焼き戻し処理のための通電を行います

③熱伝導性が良く割れやすいアルミニウム

大電流短時間の通電で溶接します

④チタン材

溶接中、溶接後にアルゴンなどのシールドガスを送給します

⑤メッキ鋼板

表面のメッキ材が電極との溶着で電極面の変形が起きるので、変形に応じた先端の修正を行います

スポット溶接の品質確保

溶接品質は科圧力や電流、通電時間などの溶接条件で決まります。 それらを製品の品質要求を満たすように選定することが必要です。

①加圧力は、その大きさで通電が行われる接触面積が変化し、小さすぎると通電不足、大きすぎると入熱不足を起こして接合不良の原因になります

②溶接電流は、小さすぎると入熱不足で接合不良を生じますが、大きすぎると溶接強度が高まりますが、製品の変形による外観不良の原因になります 通電時間は電流との関係で溶接部形成を左右し、少ないと接合不足が、多すぎると過大な溶接部形成で品質への悪影響が起きます

研削加工

研削加工とは

研削加工 (英: grinding) とは、円形の砥石で工作物の表面を研削加工することです。

高速回転する砥石を工作物に押し当て、工作物表面を少しずつ削り、目的の形状へ仕上げる加工法です。研削加工は、研磨加工とよく似ていますが、研磨は砥石ややすり・バフ等を用いて一定の圧力をかけて加工を行い、表面の「平面度・きれいさ」を追求します。

一方、研削は一定の切り込み量で加工を行うことで、仕上がり後の「寸法精度」を追求します。

研削加工の使用用途

研削加工は、鋳造や鍛造、切削加工を行った工作物に対する仕上げとして多くの工業用の部品や製品に利用されます。特に自動車産業や産業用機械類を中心に、研削加工の用途は、シャフトや軸受け、エンジン内部の可動部分 、ブレーキディスクなどの精密仕上げです。

また、家具などの製造、家電製品の軸受、丸鋸などの製造にも使われます。非常に硬い工作材が加工できることから、シリコンウエハや電子部品内部で使用する水晶やサファイアなどの鉱物の加工など、半導体産業での活用も広まっています。

研削加工の原理

1. 平面研削

平面研削は、平面研削盤を使用して、工作物の平面を加工します。テーブルに工作物を固定して、テーブルを前後上下に移動させて研削します。また、2つの方式があり、砥石軸がテーブル対して垂直である縦軸方式と平行である横軸方式です。テーブルの移動方法や軸の方向の組み合わせなどにより、多種類の加工方法があります。

2. 円筒研削

円筒研削は、円筒研削盤を使用して円筒の工作物の外面を研削する加工です。トランバース研削、プランジ研削、アンギュラ研削と呼ばれる方式があります。

トランバース研削は工作物を往復させて研削する方式です。プランジ研削は、工作物を回転させながら砥石を工作物に垂直にあてて研削します。アンギュラ研削は、砥石を傾斜させて工作物の外面と端面を同時に研削できる方式です。

3. 内面研削

内面研削は、内面研削盤を使用して穴のある工作物の内面を研削する加工法です。普通型とプラネタリ型と呼ばれる方式があります。

普通型は工作物の内面に砥石を入れて、工作物と砥石の両方を回転させて加工する方式です。プラネタリ型は工作物の内面で砥石だけを回転・公転させて加工する方式で、大きい工作物やバランスをとるのが難しい工作物に採用されます。

4. センタレス研削

センタレス研削は、円筒研削と同様に円筒の外側を削る方法です。しかし、両者は工作物の固定方法が異なります。

センタレス研削では支持刃、調整車、砥石の3点で工作物を均等に支え、回転する砥石を工作物に当てて工作物が自然に回るように調整します。このため、工作物表面を均一に仕上げることが可能です。

シリンダのロッドのような細い円筒や長い円筒の加工に適しています。工作物を固定する工程が不要なため大量生産に向き、均一な仕上げが可能です。

研削加工の特徴

1. 高精度な加工

1度の加工での切り込み量が小さいため、加工精度が良くなります。研削砥石を構成する砥粒の1つ1つに刃としての役割を持たせ、高速で回転して使用するので、切くずはきわめて小さくなります。したがって、切削工具による仕上面より粗さが非常に良好で、寸法精度も良好です。

2. 高硬度材料の加工が可能

研削砥石の切刃は非常に硬い鉱物質の粒子でるため、超硬合金や陶磁器でも容易に加工できます。砥石に自生作用があるため、切れ味を維持しながら少しずつ削ります。切削工具では削れない材料でも研削可能です。

3. 高い表面粗度

少しずつ削っていくため、なめらかな表面仕上げが可能です。

4. 切刃の自生作用

研削砥石は、使用中に切刃が磨耗すると、砥粒が脱落して新しい切刃と気孔が生じます。したがって、切削工具のような研ぎ直しの必要はありません。

5. 高い生産性

研削加工は、1回の切り込み量は小さいが、砥石は高速で回転し、周速が他の切削加工の10倍以上なので、加工の生産性は、高くなります。

研削加工のその他情報

研削砥石について

研削加工に使用する研削砥石は、「砥粒」「結合剤」「気孔」の3つの要素を使用して加工物を研削します。

  • 砥粒
    1粒1粒が刃物となって工作物を削ります。砥粒は使用して削れなくなると脱落し、新しい砥粒が出来て作業を続けられます。
  • 結合材
    砥粒を保持するものであり、種類や配合する量によって性能を調整します。
  • 気孔
    砥粒の間にある隙間で、削りかすが入り、回転の遠心力で排出されます。

また、砥石の問題として、「目つぶれ」「目詰まり」「目こぼれ」が発生します。これらが発生すると、工作物が削れない状態になります。

  • 目つぶれ
    研削条件が悪いと、砥粒が脱落せず砥石表面が平坦になります。
  • 目詰まり
    削りかすや砥粒が気孔に入り込んでしまう現象です。
  • 目こぼれ
    砥粒が工作物を削る前に脱落してしまうことです。

旋盤加工

旋盤加工

旋盤加工

旋盤加工とは

旋盤加工とは、旋盤と呼ばれる工作機械を利用した機械加工法のひとつです。

被加工物をチャックと呼ばれる工作機械の爪部に挟み、旋盤に組込された駆動モーターで主軸を回転させて、側面や正面からバイト (刃物) を押し当て切り子を排出しながら形状を作り出す切削加工に分類されます。

旋盤加工の使用用途

一般的な切削加工方法として幅広い用途で活用されています。 軸物加工に適している加工法であるため、軸シャフトやねじ類の精密加工に用いられることが多いです。

一方で被加工物の形状に合わせて、使用する旋盤、バイト選択、加工油選択、回転速度や送り速度等の加工条件を最適化する必要があり、高精度加工を行うにためはある程度以上の熟練を要します。

手動操作の旋盤は作業者が複数の工程を加工するため、大量生産には向いてません。 近年は、CAD上の設計データを基にして自動でカッターパスが計算された数値データで切削加工を行うNC旋盤 (NC加工) やCNC旋盤が利用されており、高精度・大量生産が可能です。

旋盤加工の原理

 旋盤加工は被加工物の大きさや用途別に複数の種類があります。

  • 正面旋盤
    一般的に普及している工作機械で、正面削りを行う旋盤です。
  • 縦旋盤
    加工台に被加工物を固定し加工台を回転させた上で、上下左右に移動するバイトを動かして切削加工を行う旋盤です。
  • 卓上旋盤
    作業台の上に設置できる小型の旋盤で、主に小径物や加工力が低い製品を削る旋盤です。
  • NC旋盤
    バイトの加工軌跡を数値制御によって動かすことで、複雑形状が安定して加工できる旋盤です。

旋盤加工の特徴

1. 加工の方法

旋盤加工は被加工物 (母材) を回転させながら加工を行います。加工物は対称形状となり、真円度や直径寸法精度や形状精度が得られます。ただしチャッキング方法にコツが存在し、加工前に被加工物の芯ブレを必要な精度以下に調整する必要があります。

切削バイトは被加工物に最適な材質や刃先形状を選ぶ必要があり、被加工物の送り速度や主軸の回転数、加工油のかけ方等を最適化する必要があります。また立体形状が必要な場合は、フライス盤と組合せて加工する必要があります。

2. 加工時の考慮点

被加工物は各種金属材、樹脂材、木材、セラミック材等が該当します。 加工するためには材料硬度や加工熱による被加工物の変形、芯ブレなどを考慮した上で、被加工物の回転速度、バイト送り速度、切削切り込み量や加工する順番、バイトの選択、切削油の種類と油かけ方を適切に選ぶ必要があります。また被加工物へバイトを当てる方式の違いで、複数の加工方法が存在します。

  • 外周削り
    被加工物の外周にバイトを押し当て削ります。
  • 内周削り
    被加工物の内側が除去された状態で、内周にバイトを当て削ります。
  • ねじ切り
    専用バイトとねじ切り送りで、ねじ形状を作ります。
  • 穴あけ
    回転している被加工物へドリルを当て、加工物の中心に穴を開けます。
  • 突っ切り
    専用バイトを押し当て、被加工物へ溝切および切断をします。

旋盤加工のその他情報

1. 加工時の安全留意点

被加工物が回転する加工のため、チャックへの巻込み事故や内部プーリーでの挟まれ事故等が発生する工作機械です。安全に留意するポイントを示します。

  • 加工物のチャッキングやバイト取付けに十分留意する。
  • 切込量が多い切削条件や、超高速回転で切削しない。
  • 切削加工で切り子が飛散する場合があるため作業時は必ず保護具、保護メガネを着用して作業する。
  • 巻込みや挟まれ事故が起きる危険性が十分にあるため旋盤加工機の周りに、加工に不要な道具等は置かない。
  • 旋盤加工時には軍手等はせず、巻き込み事故に注意する。

2. 旋盤加工の切削工具

 旋盤加工はバイトと呼ばれる切削工具を使用します。被加工物や加工方法の違い、作業工程に合わせて最適なバイトを選びます。

バイト構造

  • ムクバイト
    旋削用バイトです。グラインダーで刃先を成形して使用します。
  • ろう付けバイト
    刃先がろう付けされているバイトです。複数の種類がありますが、刃先を自由な形に成形して使用することが可能です。
  • スローアウェーバイト
    チップを保持するホルダーと加工チップで構成されます。専用ホルダー向けチップを、加工に応じて交換しながら使用します。被加工物や加工方法によってチップの形状や材質を選択します。

バイトの種類

  • 片刃バイト
    外形や端面加工をします。
  • 剣バイト
    剣形のバイトです。外形や端面加工をします。
  • 突っ切りバイト
    ワークを切り落とすために使います。
  • ねじ切りバイト
    ねじ切り加工をするために使います。
  • ローレット
    ローレット加工をするために使います。

熱カシメ

熱カシメとは

熱カシメとは、圧着したい2つの工作物を上下から挟んで接触部を加圧する加工方法です。

加圧部分には電極 (チップ) を当てながら電気を流して熱を発生させるか、その他の方法で熱を発生させてワークを溶かし接合させます。

熱カシメの種類

熱カシメの種類にはいろいろな加熱方式があり様々な方法が提案されています。

1. インパルスウェルダー

インパルスウェルダーとは、点溶接機 (熱カシメ) 機とも呼ばれ、電流を流すと電極部分の抵抗体が発熱する方式です。 発熱した抵抗体は300℃以上に加熱されて工作物を溶かし、その後冷えた空気を吹きかけ直て室温まで戻します。

具体例としては、熱可塑性樹脂の円筒状先端部を高温溶解した後に圧接し、その後冷却用空気を当てて瞬時に冷やすものです。 特に、ネジ止めが難しい場所や、隙間があまりない場所で樹脂接合を行う場合に使用されます。

この装置は、パルス電源で電流のON/OFFをするため微妙な加熱調整ができ、樹脂加熱時の糸引きを抑えて綺麗な仕上りを実現できます。

ある装置では多点の溶着チップとパルス制御を用いて、多点ワークの同時加熱を行えます。 さらにパルス方式は短時間で電流をON/OFFするため、電力消費は低く抑えられます。 また、高温のチップ部は瞬時に空気冷却されるため、火傷を防ぎ安全に作業できます。

インパルスウェルダーの使用用途は下記の4つです。

  • プラスチック同士の溶着 (特に熱可塑性樹脂) 
  • プラスチックと金属の溶着
  • 金属と金属の溶着 (特に金属板同士の組み合わせ) 
  • リード線、リッツ線、マグネットワイヤーの溶着 (ヒュージング) 

2. 超音波ウェルダー

超音波を発するホーンをワークに押し当て、溶着を行う部位に超音波を集中させます。 ホーンは超音波により高速振動し、プラスチック部分はその振動に伴う摩擦熱で溶け出します。 溶着後すぐに振動を止めると、摩擦熱は無くなるため温度が瞬時に下がり固着されます。

この工法はプラスチックを接着剤やビスを用いない接合方法として開発され普及しました。 そして、プラスチック同士やプラスチックと金属板等の溶着固定にも使用されています。

超音波ウェルダーの使用用途は下記の通りです。

  • プラスチックパーツと金属パーツ
  • プラスチック同士の溶着 (ガスライター、電源アダプター、金属の端子配線部、ICチップ内の金属配線) 

3. 赤外線ウェルダー

C.I.T (英: Contoured Infrared Technology) は、起伏のある部材を赤外線で加熱溶着する工法です。 エミッタと呼ばれる赤外線を放射する部分とワークは、数mm以上の間隔を保ち完全に非接触状態になります。

エミッタ部から放射された赤外線は、ワーク表面とその内部まで加熱するため樹脂深くまで溶解し溶融層を厚くすることが可能です。 そのため、ワーク同士の接合強度は他の工法より強くなります。

赤外線ウェルダーの使用用途は下記の通りです。

  • 衝撃や熱に弱い電子部品を表面実装したPCB
  • 多数の部品を実装した基板の一括カシメ
  • 高さが異なるカシメ部を含むコンポジット部品

タフトライド処理

タフトライド処理とは

タフトライド処理とは、塩浴軟窒化処理と呼ばれる表面硬化処理の商標名で、鉄系金属の表面に炭素と窒素を侵入させ、炭化物と窒化物による硬化層を形成させる熱処理方法です。

熱処理の方法としては、溶融塩浴熱処理法に分類されます。ドイツのデグサ社が開発したタフトライド法 (tafftriding) によるもので、デグサ社が特許と商標権を持っています。

日本ではデグサ社から商標権を得た事業者がタフトライドの名称を使用していましたが、2007年に独占契約の交渉が決裂したことを受け、現在は「イソナイト法」という商標が使われています。実際の処理方法も同一です。ただし、ものづくりの現場では現在でもタフトライドという商標が広く認知されています。

タフトライド処理の使用用途

タフトライド処理は鋳鉄、ステンレス、炭素鋼等の機械部品に使われています。特に耐久性が求められる部品に使われており、表面硬さの向上による耐摩耗性、耐焼付き性、耐食性の向上が期待できます。具体的な使用用途は、以下の通りです。

1. 自動車用部品

エンジンギア、エンジンバルブ、カムシャフト、クランクシャフト、オイルポンプ、ユニバーサルジョイント

2. 各種家電製品

各種切削部品、プレス部品

3. 金型

アルミサッシ用押し出し金型

4. 工具

キリ、ボブカッター

5. ポンプ用部品

ベーンポンプ、ソレノイドポンプ、スクリューポンプ

6. 機械部品

スクリューヘッド、船のメーンシャフト用ギアカップリング、スラストワッシャ、旋盤チャック

タフトライド処理の原理

タフトライド処理は、まず鉄系部材を高温 (500~600℃) のシアン化合物溶液に1~3時間浸します。処理品の表面では高温溶液により金属元素と窒素が結合して、硬い窒化膜が形成されます。窒化膜の厚さは数十ミクロン程度の薄い層ですが、硬度は加工前の材料に比べて非常に高く、耐摩耗性、耐かじり性 (焼き付き防止) 、耐食性、耐熱性を改善することが目的です。

塩浴軟窒化とは別に「窒化」と言う処理もあります。窒化と軟窒化の違いは、硬化層である窒化膜の厚さです。窒化の方が硬化層は厚くなりますが、処理時間が長くなります。軟窒化が1~3時間ほどの処理時間であるのに対して、窒化では20時間以上の処理時間が必要です。タフトライド、イソナイトともに軟窒化処理に含まれます。

タフトライド処理の特徴

タフトライド処理には、大きく6つの特徴があります。

1. すべての鉄系金属に有効である

タフトライド処理は全ての鉄系金属に対して使えます。普通鋼、構造用合金鋼、工具鋼、高速度鋼、ステンレス鋼、各種鋳鉄、鉄系焼結金属など、それぞれの材質と目的に合わせた処理が可能です。

2. 寸法変化が少ない熱処理方法である

鉄系金属の熱処理方法として知られる焼き入れは、処理すると寸法変化が生じてしまいます。焼き入れは処理温度が高く、材料を硬化させるために「変態」という、金属材料の結晶格子構造の変化を利用しているためです。

結晶格子構造が変化することによって、一つの結晶格子に含まれる鉄の原子の数も変わるので、形状にも影響が出てきます。タフトライド処理であれば、影響が出る温度よりも低い温度で処理されるため、焼き入れのような寸法変化は極めて少ないです。

3. 耐摩耗性の向上

塩浴軟窒化によって金属の表面層には化合物層が形成されます。この化合物層は硬さが高く、部品の耐摩耗性を向上させることができます。さらに、化合物層には非金属的性質があり、動摩擦係数はμs=0.05~0.12と低い値を示します。塩浴軟窒化された最表面は初期摩耗で滑らかになり、相手と馴染みやすいこともあわせて、耐摩耗性の向上が見込まれます。

4. 疲労強度の向上

塩浴軟窒化処理によって、金属材料の表面に硬い化合物層が形成されるため、部品の疲労強度を向上させることができます。疲労強度が高くなれば、部品を小型軽量に設計したり、より負荷の高い使い方もできます。その他、金属材料の種類を低廉化するとによって、製品のコストダウンにつなげることも可能です。

5. 耐焼付き性の向上

前述した変態を利用した焼き入れでは、温度が高くなると材料の軟化が起こります。タフトライド処理された化合物層は300~600℃の温度域でも軟化することがないので、部品に高い耐焼付き性を与えられます。

6. 耐食性が高い

処理によって形成された化合物層は炭素や窒素が多く含まれるため、非金属的性質を持っています。よって腐食しにくく、亜鉛めっきやユニクロめっきと同程度の耐食性を有しています。タフトライド処理は、部品の機械的強度と耐食性を同時に向上させることができます。

スロッター加工

スロッター加工とは

スロッター加工

スロッター加工とは、工作物 (ワーク) を立て方向に削る加工方法です。

工作物 (ワーク) を回転式のテーブルに固定後、上下方向に動く刃物台 (ラム) に切削工具のバイトを取り付けます。その後ラムを上下に動かすと、バイトがワークを少しずつ削り所定の形を彫り出します。

また、この加工装置はワーク内面を削るだけでなく、テーブルを回転または傾けることで円筒加工やテーパー加工等のいろいろな加工が可能です。これにより、モータ―、シャフトや歯車カムなどの伝動機器の部品に様々な機能を有する溝を加工することを目的として使用されます。

加工した溝にキーを組み込んだり、加工した部品同士を組み合わせて連結、接続したりすることで、動力を伝達する機能が得られます。

スロッター加工の使用用途

スロッター加工は、加工形状によって様々な方式があります。

1. キー溝加工

図1. キー溝加工

キー溝加工とは、回り止めを差し込むための長方形の溝加工です。軸が回転する力をギアーに伝達する場合、空回り防止用キーを掘る溝加工です。

この穴にキーを差し込むことで、軸と軸穴部を固定して軸の回転を連結部分に伝えます。主な使用用途は、シャフト、ギア、プーリー、軸加工等の加工です。

2. スプライン加工

スプライン加工とは、キー溝加工と機能は同じですが、複数本の長方形の溝を掘る加工方法です。軸と歯車を結合して軸の回転運動を歯車へ伝えます。主な使用用途は、大ギア、軸、プーリー等の加工です。

3. インボリュート加工

インボリュート加工とは、溝の形が長方形で、細い先細りの溝を掘る加工方法です。 また、スプライン加工より溝の数が多くなります。主な使用用途は、クラッチ板、ドライブホイール等の加工です。 

4. テーパ加工

テーパ加工とは、ワークを加工する際、その厚み、直径、幅がだんだん先細るようにする加工方法です。 よく「テーパーをつける」と言われる形状は、このような形を指しています。主な使用用途は、円筒形状の内側にテーパー加工を実施し、キー溝を作る加工です。

5. アリ溝加工

アリ溝加工とは、ワーク表面に近づくにつれて、掘った溝幅が細くなる台形形状の溝の加工方法です。加工方法が難しく、台形形状を加工する工具が必要となるため、加工技術が重要です。主な使用方法は、Oリングが脱落しないように溝を掘る加工です。

6. その他の加工

その他の加工形状として、四角形や六角形などの角穴を掘る加工方法が挙げられます。また、半月形状の加工も可能です。主な使用用途は、レンチやボルトに六角形の形状を掘る加工です。

スロッター加工の原理

図2. スロッター加工の方法

スロッター加工は、スロッターバイトという先端がとがった形状の工具を上下方向に動かして溝を掘っていきます。加工品を水平2方向および回転できるテーブルに取り付け、上下方向に作動するラムに取り付けた工具により、各種溝加工を行います。 

スロッター加工の特徴

スロッター加工の特徴は、旋盤やフライス、マシニングセンタなどでは加工できない様々な形状の溝加工ができることです。時間をかけて少しづつ溝を掘っていくため、底が行き止まりとなっている部分の加工もできます。

同じ溝加工する方法としてブローチ加工がありますが、工具が一気に溝を加工するため、大量生産に向いています。それに対して、スロッター加工は加工時間が長く、作業効率は比較的低いため、少量生産に向いています。

スロッター加工のその他情報

1. スロッター加工の課題

スロッター加工は、一般的な材料や溝形状は問題なく加工できますが、難削材や小径で軸長が長い部材への加工では加工精度が出ない、下加工や仕上げ加工など工程を分ける必要があるなどの課題があります。

2. スロッター加工の対策

図3. ガイドブッシュを用いたスロッター加工

前述した課題の対策としては、加工内面にガイドブッシュを入れて、加工時のビビりや工具の逃げを抑える方法があります。そのため、スロッター加工機械にもガイドブッシュを組み込める機能が必要となりますが、部材の材質や要求される加工精度に応じて適用されています。

ヒュージング加工

ヒュージング加工とは

ヒュージング加工とは、束ねられた電子機器用被覆線 (リッツ線・リード線・マグネットワイヤー等) の絶縁コーティングを取り去りカシメる方法です。

線から作られた被覆線は一般に先端がバラバラになり易いため、これをまとめて一体化することが必要です。 また、この被覆線は銅線に絶縁コーティングがあるためこの被膜を破る為には、薬品除去するかまたは加熱溶解します。

ヒュージング加工では抵抗溶接の原理を利用して溶接電流を流して加熱します。 そして圧力を加えながら被覆膜を溶かして溶着し先端部を一体化します。

次に一体化した先端部を上下から挟み込んで均一な圧力を加え、非常に密着した状態を作りだします。 そのため、二次加工として先端部を抵抗ロウ付けして熱カシメを行うことができます。

ヒュージング加工の種類

ヒュージング加工には下記のような種類があります。

1. 大容量インバータ式溶接

モーターコイル等に利用されるマグネットワイヤーを束ねた被覆線の接合に使用されます。 このワイヤーは電気機器用の巻き線用であり、電気エネルギーを鉄芯等を使って磁気エネルギーに変換します。ワイヤーは一般的にエナメル等の皮膜で覆われているため使用用途により耐熱性能が変わりますが、最高使用温度は120℃となります。

束ねられたマグネットワイヤー製のコイルとU字端子を溶接する場合、皮膜除去が溶接の邪魔になります。 大容量インバータ式溶接は通電と加圧により皮膜除去を行いこの課題を解決します。 このヒュージング加工は、電流量、圧力、潰れ量等の条件をあらかじめ設定し自動溶接できます。多線マグネットワイヤーのコイルとU字端子のヒュージングなどに使用されます。

2. インバーター式抵抗溶接を使用したヒュージング

高精度の上下位置コントロールにより、あらかじめ設定した仕上がり寸法になった時点で装置への通電を強制停止し精密な寸法精度を実現できるようになります。 また、細かい通電時間制御により、徐々に加熱しながら皮膜を除去し最適な条件で溶接を行います。圧着端子と多数のエナメル線の接合に使用されます。

高周波誘導加熱

高周波誘導加熱とは

高周波誘導加熱

高周波誘導加熱とは、導体に巻き付けたコイルに高い周波数の交流電流を流すことで、導体を加熱する加熱方式のことです。

特に火力を使用せず電源制御だけで行われるこの加熱方法は環境負荷を低く抑えるため、作業環境の改善や地球環境保護の観点からも注目されています。

また、主に金属を加熱するこの方法は、作業対象物を直接触らず加工できるため安全です。さらに、一般家庭用には、IH炊飯器、IHクッキングヒータ、IH鍋、IHホットプレート、IHフライパン等の各種製品が使われています。 なお、IHはinduction heating (誘導加熱) の略称です。

高周波誘導加熱の使用用途

高周波誘導加熱は、工業や一般家庭で様々な用途に使用されています。

1. 一般家庭の用途

電磁調理器 (IH) は、クッキングヒーターとして有名です。IHヒーターはトッププレートとコイルから構成されています。コイルに交流電流を流すことで磁場が生じ、この磁場が調理器具を通過することで渦電流が生じ、調理器具を加熱することができます。

従って、電気を流さない材質 (セラミックス・ガラスなど) の調理器具は、渦電流を発生させられないためIHヒーターで加熱することができません。

2. 工業の用途

加工用途としては、高周波誘導溶接が溶接法として使用されています。IH (誘導加熱) 式自動ろう付け、はんだ付け装置としてIH方式が使用されています。

金属の強度を上げる方法として、焼き入れと焼き戻し装置があります。 たとえば鉄は焼き入れを行うと硬化し機械強度が増しますが、靭性 (粘り強さ) が失われ、脆くなってしまいます。

高周波誘導加熱で焼き入れを行うと、加熱対象の表面が強く加熱され、表面が硬く内部は靭性が高い材料にすることが可能です。この特性を生かし、摺動部のある自動車部品の焼き入れ処理に高周波誘導加熱が用いられることがあります。

高周波焼入れ

図1. 摺動部を持つ部品への高周波焼入れ

各種金属の溶解装置にも使用されます。具体的には、真空溶解炉、金属溶解炉、雰囲気溶解炉などです。アルミ押し出し用ヒータなどの各種ヒータ、接着剤の硬化促進装置に用いられることもあります。

高周波誘導加熱の原理

1. 渦電流の発生

金属 (導体) の周りにコイルを巻きつけて交流駆動の電流を流すと、磁界の方向が絶えず変化する交番磁界が出現します。 導体内に磁界が生じると、レンツの法則によりその金属の中に「渦電流」と呼ばれる電流が発生します。

2. 渦電流による加熱

この「渦電流」により金属内に「ジュール熱」が発生します。ジュール熱の発生原理を図1にて説明します。 

ジュール熱

図2. ジュール熱の発生原理

また、磁界の変化による「ヒステリシス損失」によっても導体が加熱されます。ヒステリシス損失とは、磁場の交流変化に伴い導体の磁性分子が振動・摩擦することで熱としてエネルギーが放出される現象のことです。

渦電流損 (渦電流によるジュール熱) と、ヒステリシス損失は併せて「鉄損」と呼ばれます。高周波誘導加熱においては、渦電流損とヒステリシス損失の相乗効果で導体を加熱しています。

3. 表皮効果と近接効果

交流電流の周波数を高くすると、「表皮効果」が強くなります。表皮効果とは、導体に交流電流・交番磁場を印加した際、渦電流が導体表面に集中する現象のことです。

表皮効果図3. 表皮効果

表皮効果に加え、「近接効果」も生じます。近接効果とは、近接した導線に流れる電流の向きが反対方向の場合、動線同士を引き寄せるような電流密度分布になる効果のことです。

導体は渦電流によるジュール熱により加熱されるため、周波数を高くすると「表皮効果」と「近接効果」の相乗効果により、導体の表面が強く加熱されます。この性質を利用して、材料の表面のみを焼き入れしたい場合などに高周波誘導加熱が用いられることがあります。

高周波誘導加熱の種類

高周波誘導加熱には、直接加熱方式と間接加熱方式の2種類があります。

1. 直接加熱方式

加熱する金属内に直接「渦電流」を流して加熱する方法です。加熱対象に電流が流れる必要があるため、絶縁体はこの方式で加熱することができません。

2. 間接加熱方式

セラミックスやガラス等の絶縁体を加熱する場合は、電気を通す容器 (導体) に加熱する物質 (絶縁体) を入れて加熱を行います。

表面分析

表面分析とは

表面分析とは、分析したい対象物 (サンプル) の表面に電子線、X線、イオン等を励起源として当て、照射した部位から放出された電子、イオン等を検出してサンプルの状態を分子・原子レベルで明らかにする手法です。

表面分析装置を使用することによって、他の手法では不可能な物質の化学状態や元素組成なども分析できるようになります。

表面分析の使用用途

1. XPS (X線光電子分光法:X-ray Photoelectron Spectroscopy)

表面分析3

図1. XPSによる試料表面のスペクトル分析事例

有機物 (ポリマー含む) や半導体、その他の無機物の分析が可能です。事例として、シリコンウェハにコバルトを蒸着した試料を測定した光電子スペクトルを示します。 (図1)

横軸は光電子の運動エネルギーを結合エネルギーに換算して示しています。つまり、照射した特性X線のエネルギーから電子の運動エネルギーを引き算しています。

結合エネルギー= (X線のエネルギー) - (電子の運動エネルギー) 

なお、イオンエッチングを使用すれば、更なる深さ方向の分析も可能です。

2. TOF-SIMS (飛行時間型二次イオン質量分析法:Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)

半導体表面の汚染物質解析、有機材料の分子量測定及び有機物の偏析の解明に使用されます。 微量元素の高感度分析が可能なため、元素分布の3D表示ができます。

3. AES (オージェ電子分光法:Auger Electron Spectroscopy)

リチウムより大きな原子核の元素について定性分析、半定量分析が可能です。 なお、イオンエッチングを使用すれば更なる深さ方向の分析もできます。

表面分析の原理

表面分析

図2. 表面分析の励起源と検出信号

サンプル表面に励起源を当てると、その刺激を受けて表面原子のエネルギー状態が変化します。その変化に伴い表面原子から種々の電子やイオン等が放出され、その放出粒子を検出器で分析することにより、サンプル表面の状態や構造を明らかにすることが可能です。

分析するサンプルに当てる励起源の種類により、サンプル表面のどれくらいの深さまで届くかが変わります。また、表面に当てる粒子の種類により、表面から放出される粒子等の種類も変わるため、いろいろな分析装置が提案されています。

表面分析の種類

分析するサンプルの表面の深さや、分析する表面の原子 (分子) により、様々な分析法が用意されています。

1. XPS (X線光電子分光法:X-ray Photoelectron Spectroscopy)

別名ESCA (Electron Spectroscopy for Chemical Analysis) と呼ばれる分析手法です。高真空状態にサンプルを置きその表面にX線 (アルミニウムのKa線、マグネシウムのKa線) を当てると、サンプル表面から光電子が放出されます。

この光電子のエネルギースペクトル (光電子強度と結合エネルギー) を検出器で調べると、サンプル表面の元素組成や結合状態が分かります。特に、サンプル表面のごく薄い層 (数ナノメートル) の分析を得意とした方法です。

2. TOF-SIMS (飛行時間型二次イオン質量分析法:Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry) 

高真空状態にサンプルを置き、その表面にイオンビーム (ガリウム、金、ビスマス等のイオン) を当てると、サンプル表面からイオンが放出されます。この放出イオン (二次イオン) には低いエネルギーから高いエネルギーまでの幅があり、そのエネルギー差に応じて検出器までの到達時間が異なります。

この到達時間 (飛行時間) はイオンの質量に関係し、その情報から元素分析が可能です。そのため、深さサブミクロン以下で、微量の元素組成や有機物の化学構造の情報が高い精度で得られます。

3. AES (オージェ電子分光法:Auger Electron Spectroscopy)

サンプル表面に電子線を当てると、入射した電子が表面物質のエネルギー状態を変化させて「オージェ電子」と呼ばれる電子を放出します。この電子は元素毎に固有なエネルギーを持っているため、そのエネルギーを調べることにより元素分析が可能です。