旋盤加工
旋盤加工とは
旋盤加工とは、旋盤と呼ばれる工作機械を利用した機械加工法のひとつです。
被加工物をチャックと呼ばれる工作機械の爪部に挟み、旋盤に組込された駆動モーターで主軸を回転させて、側面や正面からバイト (刃物) を押し当て切り子を排出しながら形状を作り出す切削加工に分類されます。
旋盤加工の使用用途
一般的な切削加工方法として幅広い用途で活用されています。 軸物加工に適している加工法であるため、軸シャフトやねじ類の精密加工に用いられることが多いです。
一方で被加工物の形状に合わせて、使用する旋盤、バイト選択、加工油選択、回転速度や送り速度等の加工条件を最適化する必要があり、高精度加工を行うにためはある程度以上の熟練を要します。
手動操作の旋盤は作業者が複数の工程を加工するため、大量生産には向いてません。 近年は、CAD上の設計データを基にして自動でカッターパスが計算された数値データで切削加工を行うNC旋盤 (NC加工) やCNC旋盤が利用されており、高精度・大量生産が可能です。
旋盤加工の原理
旋盤加工は被加工物の大きさや用途別に複数の種類があります。
- 正面旋盤
一般的に普及している工作機械で、正面削りを行う旋盤です。 - 縦旋盤
加工台に被加工物を固定し加工台を回転させた上で、上下左右に移動するバイトを動かして切削加工を行う旋盤です。 - 卓上旋盤
作業台の上に設置できる小型の旋盤で、主に小径物や加工力が低い製品を削る旋盤です。 - NC旋盤
バイトの加工軌跡を数値制御によって動かすことで、複雑形状が安定して加工できる旋盤です。
旋盤加工の特徴
1. 加工の方法
旋盤加工は被加工物 (母材) を回転させながら加工を行います。加工物は対称形状となり、真円度や直径寸法精度や形状精度が得られます。ただしチャッキング方法にコツが存在し、加工前に被加工物の芯ブレを必要な精度以下に調整する必要があります。
切削バイトは被加工物に最適な材質や刃先形状を選ぶ必要があり、被加工物の送り速度や主軸の回転数、加工油のかけ方等を最適化する必要があります。また立体形状が必要な場合は、フライス盤と組合せて加工する必要があります。
2. 加工時の考慮点
被加工物は各種金属材、樹脂材、木材、セラミック材等が該当します。 加工するためには材料硬度や加工熱による被加工物の変形、芯ブレなどを考慮した上で、被加工物の回転速度、バイト送り速度、切削切り込み量や加工する順番、バイトの選択、切削油の種類と油かけ方を適切に選ぶ必要があります。また被加工物へバイトを当てる方式の違いで、複数の加工方法が存在します。
- 外周削り
被加工物の外周にバイトを押し当て削ります。 - 内周削り
被加工物の内側が除去された状態で、内周にバイトを当て削ります。 - ねじ切り
専用バイトとねじ切り送りで、ねじ形状を作ります。 - 穴あけ
回転している被加工物へドリルを当て、加工物の中心に穴を開けます。 - 突っ切り
専用バイトを押し当て、被加工物へ溝切および切断をします。
旋盤加工のその他情報
1. 加工時の安全留意点
被加工物が回転する加工のため、チャックへの巻込み事故や内部プーリーでの挟まれ事故等が発生する工作機械です。安全に留意するポイントを示します。
- 加工物のチャッキングやバイト取付けに十分留意する。
- 切込量が多い切削条件や、超高速回転で切削しない。
- 切削加工で切り子が飛散する場合があるため作業時は必ず保護具、保護メガネを着用して作業する。
- 巻込みや挟まれ事故が起きる危険性が十分にあるため旋盤加工機の周りに、加工に不要な道具等は置かない。
- 旋盤加工時には軍手等はせず、巻き込み事故に注意する。
2. 旋盤加工の切削工具
旋盤加工はバイトと呼ばれる切削工具を使用します。被加工物や加工方法の違い、作業工程に合わせて最適なバイトを選びます。
バイト構造
- ムクバイト
旋削用バイトです。グラインダーで刃先を成形して使用します。 - ろう付けバイト
刃先がろう付けされているバイトです。複数の種類がありますが、刃先を自由な形に成形して使用することが可能です。 - スローアウェーバイト
チップを保持するホルダーと加工チップで構成されます。専用ホルダー向けチップを、加工に応じて交換しながら使用します。被加工物や加工方法によってチップの形状や材質を選択します。
バイトの種類