輪郭形状測定機

輪郭形状測定機とは

輪郭形状測定機

輪郭形状測定機とは、物体の輪郭形状をトレースし、その形状を正確に記録、解析、測定するための装置です。

輪郭形状測定機の中でも、スタイラスと呼ばれる触針で測定対象の表面を直接なぞり、その動きを正確にトレースするものは接触式と呼ばれます。対して、レーザ等で表面からの反射光をとらえて表面をトレースするものを、非接触式と呼びます。

非接触式の輪郭形状測定機は、比較的容易に作業ができる反面、物体表面の材質や性状などにより反射光の状態が大きく変化してしまうのが欠点です。そのため、条件に左右されない接触式のものが広く普及しています。

輪郭形状測定機の使用用途

輪郭形状測定機は、主に金属加工製品の開発や生産、品質管理のために、広く用いられています。さらに、一連の測定動作をプログラムにして、生産ラインサイドでの自動計測用として使用されることもあります。

なお、触針式の輪郭形状測定機は表面にキズをつける恐れがあるため、外観品質が重要な製品の場合には、抜き取りで検査を行うことも多いです。輪郭形状測定機は細かいピッチで正確に形状、寸法が測れるため、リバースエンジニアリングとしての活用例もあります。

輪郭形状測定機の原理

ここでは、広く普及している接触しきの輪郭形状測定機の原理について説明します。接触式の輪郭形状測定機は、水平方向に移動する検出器と、上下に大きく円弧運動するスタイラスで構成されています。

水平方向の移動によるX座標と、スタイラスの上下位置のY座標とし、デジタルスケールを用いてスタイラスの先端の座標を常にプロットすることで、輪郭形状をトレースすることが可能です。スタイラスを取り付けるアーム部分は、円弧運動として上下運動することに注意が必要です。

つまり、スタイラス先端も測定物の形状に従い、円弧運動で追従します。よって正確にXY座標をプロットするには、円弧運動によるX方向の誤差を補正しなければなりません。また、スタイラスの上下運動量を測るためのデジタルスケールが、直動の移動量しか測れないものは、円弧運動を直動運動に変える機構が必要です。

検出器には正確な位置決めが重要なので、ボールネジステッピングモーターを使用した動作を行います。高精度機は、熱膨張による影響を最小限にするために、電源や制御基板などの電装部品は外部ボックスとして独立していることが一般的です。

輪郭形状測定機のその他情報

1. 輪郭形状測定機の追従角度

輪郭形状測定機の先端には、スタイラスと呼ばれる針が付いています。この針の上下動とX軸の移動量で輪郭形状をトレースするわけですが、スタイラスはアームに垂直に取り付けられているため、直角の部分を測定することはできません。

輪郭形状測定機が測定できる角度のことを追従角度といい、上り方向と下り方向のそれぞれを指します。追従角度はスタイラスの形状に左右され、上り方向と下り方向のそれぞれに限界があります。

スタイラスの形状が円錐形や左右対称の形状をしていれば、上りと下りの追従角度は等しくなります。しかし、スタイラスが左右非対称の形状をしている場合は、上りと下りの追従角度が変わるため注意が必要です。また、測定速度や測定力によっても追従角度は変化し、測定速度が速いほど急勾配の追従が難しくなります。

2. 輪郭形状測定機の日常点検

接触式の輪郭形状測定機は、スタイラスの先端が測定対象の表面に接しているため摩耗します。摩耗が少ない場合でも、繰り返し使用することによるヒステリシスなどの経年変化による影響を受けてます。

そのため、定期的な点検が必要となりますが、大掛かりなメンテナンスを頻繁にすることは、工数や費用の面からも現実的ではありません。そこで、日常点検として重要な機能、性能に関する点を簡易的に補正することになります。

輪郭形状測定機の日常点検では、主に以下の3点を確認・補正します。

  • 測定値の正確性
    ブロックゲージなどの校正された基準器を測り、校正値と実測値のズレを補正します。
  • スタイラス先端の摩耗量
    値付けされた段差などを測ると、スタイラスの摩耗量に応じて先端が沈み、実際の形状と測定された形状にわずかなズレが生じます。このズレをもとに、摩耗量を計算して補正します。
  • 上り測定と下り測定の同等性
    ピンゲージや精度等級の高い鋼球など、左右対称な形状を測定し、測定された形状の左右の歪みを同等になるよう補正します。

ほとんどの場合、いずれの補正も測定値からソフトウェアが自動で計算を行ってくれるため、使用する上では日常点検を忘れずに行うよう管理することが重要です。さらに、自動車産業と品質マネジメント規格であるIATF16949や、ISO9001などを取得、維持するなら、定期的にトレーサビリティが確保された校正作業も行う必要があります。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/measurement-selection/type/shape.jsp

DCファンモーター

DCファンモーターとは

DCファンモーターとは、モーターによってファンを回転させるもののうち、直流電流で駆動するものです。

構造によりプロペラファン、ブロワ、クロスフローファンなどの種類に大別されますが、送風を行うという点では共通しています。DCファンモーターはどれも大きさや風量、特性があります。

そのため、カタログスペックを確認し、用途や目的に応じて使い分けることが大切です。最も一般的なものは、プロペラファンによる送風なので、選定に迷った場合はこちらを選択するのが無難です。

DCファンモーターの使用用途

DCファンモーターは、ファンの回転で空気を送風したり、対流させて家電製品やOA機器などの電子機器内部を冷却したりするために使用されています。DCファンモーターによる冷却には、内部の熱を外部に排出する方法と外部の熱を内部に流入させる方法があります。

温度が上昇すると、電子機器の熱暴走を招くだけでなく、故障の原因も起きやすいです。DCファンモーターによる冷却は、空気の対流によるものなので、機器の構造や温度などを考慮して、最も効率の良い方法を選ぶことが求められます。

DCファンモーターの原理

DCファンモーターの構造は、大きく分けて構造部材のケーシング、送風のためのファンやランナー、それを回すためのDCモーターに分けられます。DCモーターでファンを連続回転させることで、空気を圧送して送風します。

プロペラファンの場合、送風方向は回転軸と同一方向になるため、小型で大きな風量が得られ、比較的静かに回転します。対してブロアは回転軸と垂直になり、送風の吐出口が絞られるために空気の流れを集中させて高い静圧を得られます。

DCファンモーターの構造

代表的なファンは、羽根車、ケーシング、主軸、軸受、軸封から成り立っています。

1. 羽根車

風をつくる部分でファンにおいて心臓部となる部品です。送風の効率にかかわり用途や環境などに応じてさまざまなものがあります。

2. ケーシング

ファン自体の外枠と内側の風の流れ道をつくるもので、ファンの吸入部や吐き出し部をつくる部分です。

3. 主軸

ファンの中心の軸になる部分で、羽根車を支える強度をもちます。

4. 軸受

主軸の回転運動を受ける部分で、その作用をスムーズにし支える部分です。軸受があることにより、摩擦や摩耗を軽減できます。品質が悪いと、機械的な摩耗などにより故障につながるため、重要な部分です。

DCファンモーターのその他情報

1. 送風抵抗とは

空気を流路内に送る際、流路内に空気が進む方向とは逆向きに送風抵抗が発生します。流路内に送風を妨げる障害物があるほど送風抵抗は大きくなり、風量は減少します。送風抵抗は、装置内の静圧を上昇させるエネルギーとなり、圧力損失とも呼ばれます。

ファンによる冷却の場合、送風抵抗が発生するため、内部構造による圧力損失を考慮してファンの性能を選ぶ必要があります。また、ファンによる冷却を考えると、送風を妨げることない構造となるような設計が重要です。

必要な風量や静圧を得るために、ファンを複数使用する場合は、直列、並列どちらで使用するのが最も効率がよいかも検討します。一般的には、ファンを並列に使用すると風量が大きくなり、直列に使用すると静圧が高くなります。

2. ACファンモーターとの違い

DCファンはモーターと回路で回転速度を変えることが可能です。一方、ACファンは交流電源の周波数で回転速度が固定されます。現在は、回転速度を自在にコントロールできるDCファンが主流になっており、AC電源でDCファンを回転させるACDCファンもあります。

3. DC軸流ファンとは

DC軸流ファンとは、直流駆動の軸流ファンになります。軸流ファンはフレーム中央に羽根が取り付けられており、羽根正面から空気を取り込み、後方に排出します。

ファンを使って風を送る方向が軸方向であり、高風量・低騒音といったメリットが挙げられます。発熱した物質の冷却用途として幅広く使用されています。抵抗物による風量の増減が比較的少ないことが、軸流ファンの特徴です。

4. その他ファンの種類

その他の軸流ファンの種類として、遠心ファン、斜流ファンが挙げられます。遠心ファンは、風を送る方向が後方ではなく、吸い込んだ方向とは90度の方向です。

また、斜流ファンは、軸流ファンと遠心ファンの間のようなファンです。羽根の形状によって軸方向から吸気し、軸の斜め方向に圧力が加わることで、排気方向を変えて送風します。小型・軽量になることが特徴です。

遠心ファンは装置のスペース上、風を後方に送風できない際に適したファンになります。密集した装置の内部の空気を引き出す時等に使用されます。軸流ファンで代表的なファンモーターは、プロペラファンです。翼状のプロペラをケーシング内に置き、回転させることで、回転軸方向に風を発生させます。

風の流れが回転軸方向になるため、コンパクトな構造になります。遠心ファンで代表的なファンモーターは、ブロワです。ブロワは、円筒状に配した前向きの羽根の遠心力によって回転軸にほぼ垂直な向きに風の流れを作ります。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/cooling_fan01/
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00011/
https://techcompass.sanyodenki.com/jp/training/cooling/fan_basic/002/index.html
https://fan-blower-soufuuki.com/handbook1_1/handbook1_9

測長センサー

測長センサーとは測長センサー

測長センサーとは、測定対象物に投光器側からレーザなどの光を照射し、寸法測定を行う装置です。

測定対象物がレーザなどを遮断することによる光量を受光器側でCCDセンサーやフォトダイオードなどでとらえます。レーザなどの光を、レンズを用いて帯状にすることで、光が受光部まで届いているか届いていないかを検出します。その光が届いていない部分の寸法を正確に測定することにより、寸法測定が可能です。

レーザなどの光を用いて測定するシステムなため、非接触で測定できるという利点があります。しかし、比較的外乱に弱いという欠点もあるため注意が必要です。

測長センサーの使用用途

測長センサーは、鋼材の外径やシート状のフィルムの厚みなどを測定する際に使用されています。0.1秒以下の微小間隔で連続してスキャンすることができるため、製造工場の現場などにおいて、測定対象物が長く連続しているものを途中で切断せず測定し続ける場面に適しています。

また、測長センサーを直行させて使用することでXY方向の寸法を測定したり、断面形状が大きいものは測長センサーを2個以上用いて片側端面ずつ測定することで対応したりすることも可能です。

測長センサーの原理

測長センサーは、レーザ光を測定対象物に照射し、レーザが遮られた箇所の幅をセンサーで検出することで対象物の長さを計測します。レーザを測定軸に対して、平行に照射することも重要です。

レーザが遮られた部分をエッジとして、センサーでエッジの両端の幅を検出することで寸法測定が可能となります。よって構成上、レーザなどを照射する発光部と照射されたレーザなどを読み取る受光部に分かれており、測定した値を表示する表示部も必要です。

なお、レーザは帯状もしくは長方形のように幅を持たせた形状になっています。レーザを読み取る受光部は、一断面でレーザが受光できている部分とそうでない部分を連続して読み取る必要があるため、多くの測長センサーにおいてはCCDラインセンサなどが用いられています。

エッジを読み取って寸法を測定するスキャン間隔は表示部の処理速度に依存しますが、通常の製品では、0.1秒間隔でスキャンできるため、測定対象が多少振れても正確に測定することが可能です。

測長センサーのその他情報

1. 測長センサーの受光部のCCD方式と光量変化方式の違い

測長センサーの受光部は一般にCCD方式と光量変化方式の2種類があり、その構成は大きく異なっています。

CCD方式
受光器に投光された平行な帯状の光をCCDイメージングセンサにて検出する方式です。CCDは平行光を受光する分、受光器側に帯状に配置されており、物体が光を遮った箇所だけ、影がCCDに反映されますので、その分から対象物の長さ計測を実施することが可能です。

光量変化方式
受光器側にレンズがあり、そのレンズで集光された光をフォトダイオードなどの受光素子で検出する方式です。対象物が遮った分の集光の光量は減少するため、その割合から対象物の長さを検出します。

2. 測長センサーの誤差要因と対策事例

測長センサーは、非接触で計測可能な利点がある一方で、外乱の影響を受けるため注意が必要です。特に生産現場などの振動を生じる箇所においては、機器の本来有する測定精度以上に誤差を発生させる要因になります。

センサーとワークを一体化した治具で固定する事例の他、場合によってはローパスフィルタ等のノイズフィルタを用いて対策しなければなりません。CCD受光器の場合には、機種によってはシェーディング補正機能という内部の受光器のリニアリティのキャリブレーション補正が実施可能なものもあります。

その場合には、実際の計測前にキャリブレーション補正を実施することが重要です。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/displacemente_linewidth_tg_j_1_1.pdf

トルク計

トルク計とは

トルク計とは、トルクと呼ばれる軸に掛かる回転方向の力を計測する装置です。

ばねの弾性力やセンサーを用いて、回転方向の力を数値として求めることができます。アナログ式のものはトルク計単体で数値の表示ができますが、デジタル式のものは数値の表示器と動作させるための電源が必要です。

トルクには静的トルクと動的トルクがあり、測定の目的によりどちらを測る必要があるのかをあらかじめ決めておく必要があります。近年はどちらも測れるタイプのものが広く普及しています。

トルク計の使用用途

トルク計は、軸に回転力を加えて回転方向の力を数値で測定するために使用します。ねじの締付力や容器キャップの栓を開閉するトルク、軸や梁などの構造部材のねじり剛性などを実際の数値として測定、管理を行うために使用されます。

近年はトルクだけでなく、歪や軸の回転数を同時に計測できるものも多いです。トルクを測定・管理することは、装置の適切な動作、維持だけでなく、寿命や故障時の安全性を確保するために非常に重要な項目です。

トルク計の原理

最も簡単なトルク計の原理は、軸に直結させたトルク計を回転させ、ばねなどの反発力で回転力を数値として表示させるものです。近年は、センサーを用いて回転時の歪を軸のねじれ角として測定してトルクを算出するもの、直接だけでなく間接的にトルクを測るタイプのものなど、さまざまなタイプのトルク計があります。

回転軸には、モータなどの回転を伝えるための動力とタービンなどの回転を利用する機構の両方が必ず付いているので、軸の終端に目盛の付いている機械式のトルク計は、使用するためにどちらかの機構を外さなければなりません。

軸の中間に挿入するタイプのトルク計もありますが、トルク計を取り付けるために軸を外すのは同じです。そのため、トルク計を取り付ける際は、取付や取り外しのことを考慮する必要があります。

トルク計のその他情報

1. トルク計でのモーター試験

トルク計には非回転型の歪ゲージ式、回転型の磁歪式、歪ゲージ式などがあります。回転式のトルク計は、実験・研究目的や製品の品質管理などの目的で使用されています。トルクに関しては、タイヤのナットの締め付けなどでよく耳にし、ナットの種類によって規定のトルクが異なります。

また、モーターにおいてもトルクは重要です。モーターは、鉄道や自動車以外にもポンプやコンプレッサ、エレベーターなど多くの場所で使用されています。

そして、モーター製造では、最終的にトルク計で目的のトルク値になっているかを確認するのに使用します。一般的にモーターが製造された後は、モーター試験機でモーターに負荷を掛けて、センサータイプのトルク計にて測定を行います。

2. トルク計の使い方

トルク計は非回転型と回転型があります。

非回転型
非回転型は、ゲージがついており、測定する機器に取り付けて、トルクをかけたときの値がゲージに表示されるものです。車のタイヤの締め付けに確認するトルクレンチは規定トルクをセットし、その値になるとレンチから音がなり、締め付けられたことが確認できます。元のトルクは校正機器で確認が取られているため、規定の値にセットするだけで、目的の締め付けが達成できます。

回転式
また、回転式では、主にモーターのトルク測定に用いられ、モーターの芯にカップリングを経由してトルク計を設置します。トルク計の他に機器からの信号を受信する機器やオンラインで確認するパソコンなどの周辺機器も必要になります。

トルク計は、軸に加わるトルクによって生じるその軸のねじりや歪みを計測するので、モーターを回転させ、負荷に応じた信号をトルクという値に変換し、測定していきます。

参考文献
http://www2.me.osakafu-u.ac.jp/fset/fset-goods-tech-info/%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%90%E3%81%AE%E3%81%93/%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AF%E8%A8%88%E3%81%AE%E4%BD%BF%E3%81%84%E6%96%B9/
https://www.unipulse.tokyo/techinfo/loadcell-torque/
https://www.sugawara-labs.co.jp/motor/torque

研削盤

研削盤とは

研削盤

研削盤(英語:grinding machine, grinder)とは、高速で回転する砥石に、加工物を接触させて表面を削り、精密に仕上げ加工をする工作機械です。砥石の運動と、加工物の運動の組合せにより多くの種類があります。円筒の内・外径用、平面用、歯車用などです。

研削盤は、通常の切削加工が困難な焼入鋼や特殊合金鋼などの硬い材料でも加工できる特徴があります。機械の操作により加工量を正確に調整して加工をするものは機械研削盤と呼ばれ、いわゆるグラインダーと呼ばれる自由研削盤と区別されます。

自由研削盤は労働安全衛生法による規制があります。研削砥石の取替え又は取替え時の試運転の業務等においては、グラインダ特別教育を受けなければなりません。

研削盤の使用用途

研削盤は、主として加工物の表面を仕上げ加工することに用いられます。切削加工により、形状や精度を整えた一次・二次加工を施した後、寸法や表面性状をさらに精度よく仕上げるために研削加工を行います。

具体例は、クランクシャフト・カムシャフト、歯車・ねじおよびスプライン・工具・ジグ研削・ローラーなどの仕上げ加工に使用します。また、ガラスや宝石・セラミックスの加工にも使用します。

研削盤の原理

研削盤は、研削砥石を使用して加工物の表面を削り取って精度良く加工するものです。使用する研削砥石は砥粒を結合剤で固めたもので、内部には気孔が無数に存在します。砥粒は加工時に切れ刃の役割をし、加工の際に結合剤から剥離して切り粉とともに排出されます。

研削盤では、剥離と排出が常に繰り返されて常に新しい砥粒が使用されるので、非常にきれいな加工面を形成することが可能です。研削盤は、非常に小さい切り込み量で高精度加工をします。高い周速の砥石で繰り返し加工するので、熱が大量に発生します。

そのため、加工液などをかけ続けて常に冷却しながら加工します。研削盤は僅かな切り込み量で加工するため、他の加工法に比べ、加工時間が長くなる短所があります。

研削盤の種類

研削盤には、研削加工の目的や加工物の形状に応じていくつかの種類があります。

1. 平面研削盤

前後方向および左右方向に移動するテーブルに加工物を固定します。そして、加工物の平面部を回転する砥石で研削します。

2. 円筒研削盤

円筒状の加工物の外周を研削します。加工物は左右に、砥石は上下に移動させます。そして、砥石と加工物の両方を高速回転させながら、外周を研削します。

3. 内面研削盤

円筒状の加工物の内面を研削します。固定した加工物を高速回転させ、加工物の穴に挿入した砥石で研削を行います。

4.センターレス研削盤

円筒や円柱の形をした加工物の研削を行う機械です。芯なし研削盤とも呼ばれ、回転速度が異なる2つの砥石の間に加工物を挟んで研削します。加工物を固定せずに軸方向に移動して連続作業ができるため、生産性が高くなるメリットがあります。

研削盤のその他情報

1. 研削盤の砥石

研削盤を使った研削加工の際は、研削砥石と呼ばれる工具が必要です。研削砥石は、砥粒・結合剤・気孔の3つの要素があります。砥粒で削り取りを行い、摩耗した砥粒は自然に脱落して新しい砥粒が表面に出てくるのが特徴です。

砥粒は対象物を削る働きをします。結合剤は砥粒を結合し、砥石の性能を調整します。気孔は切り屑を排出して目詰まりを防ぐ働きと、砥石の発熱を抑える働きをします。

砥粒は、金属や難削材を削るための硬い材質の粒子です。一般的にはアルミナ(酸化アルミニウム)や炭化ケイ素を用います。アルミナは鉄鋼や非鉄金属の研削に使用し、炭化ケイ素は非鉄金属に使います。難削材の場合は、ダイヤモンドやCBN砥粒(立方晶窒化ホウ素)を使用します。

結合剤は、砥粒同士を固めるための接着剤です。セラミック系、樹脂系、金属系の3つに分けられます。精密研削にはセラミック系の「ビトリファイド」、研削から仕上げまで幅広く行う場合には樹脂系の「レジノイド」、粗研削や切断では金属系の「メタル」など、加工目的に合わせた材質の砥石を選定します。

2. 研削盤のチャック

研削盤に加工物を取り付けるチャックは、研削盤の種類によって異なります。平面研削盤は直方体の素材を切削するため、チャックはテーブルタイプです。加工物をマグネットなどの磁気チャックや真空チャックで吸い付けて固定します。

円筒研削盤の場合は、円筒状の加工物の直径を小さくするような加工を行うため、素材の両中心部を固定します。内面研削盤の場合は、旋盤のように素材の端を三つ爪または四つ爪のチャックに取り付けて加工を行います。

滑り軸受

滑り軸受とは

滑り軸受

滑り軸受は、軸受の滑り面で直接的に、軸の回転や移動部品の直線運動を支持する軸受です。回転軸もしくは移動部品と滑り軸受の滑り面は、直接接触しているために摩擦力が大きく、摩擦熱が発生します。そのため相互の接触面は、オイルで潤滑させたり、軸受滑り面に潤滑剤を含侵させた金属を使用したり、潤滑性の高い樹脂素材を使用します。

潤滑剤を使用しない滑り軸受は、ドライベアリングと呼ばれています。滑り軸受は、安価で使い勝手が良く材質や大きさは自由度が高く、用途や使用環境によって使い分けられています。

滑り軸受の英語名表記は下記の3種類です。

  • Plain Bearing
  • Sliding Bearing
  • Slide Bearing

滑り軸受の使用用途

滑り軸受は、下記の特徴(特に転がり軸受と比較した場合になります)があります。

  • 構造や形状が単純
  • 寸法がコンパクト
  • 高速性能(高速回転)に有利
  • 低速性能(低速回転)は不向き
  • 許容荷重は比較的大きい
  • 発生音は静かで、振動も少ない
  • 寿命が長い

滑り軸受の種類

一般的産業用途で使用する滑り軸受の種類は、「荷重の種類」「材質」「形状・構造」に分けられます。

またISO 4378-1では下記のように分類されています。

滑り軸受の分類

図1. 滑り軸受の分類

1. 荷重の種類

荷重の種類は、「動圧軸受」「静圧軸受」「ジャーナル軸受」「スラスト軸受」の4種類に分けられます。

動圧軸受と静圧軸受

動圧軸受と静圧軸受

図2. 動圧軸受と静圧軸受

動圧軸受は、軸の回転により発生する動圧により、軸と軸受滑り面の間に油膜が形成され、軸を支持します。動圧が発生するように、隙間をくさび状にしたり、滑り面に滑り面工したりする方法があります。一般的に、滑り軸受動とは動圧軸受を示すことが多いです。

静圧軸受は、軸受外部の機器や設備から、油(潤滑油)や圧縮空気を軸受へ供給し、軸と軸受間のポケットに充満させることで、軸を支持します。

ジャーナル軸受とスラスト軸受

ジャーナル軸受とスラスト軸受

図3. ジャーナル軸受とスラスト軸受

ジャーナル軸受は、軸の中心線方向(ラジアル方向)に荷重がかかる場合に使用します。スラスト軸受は、軸の中心線と垂直方向(スラスト方向)に荷重がベアリングにかかる場合に使用します。

2. 材質

材質による種類は、「樹脂系」「金属系」の2種類に分けられます。

樹脂系
樹脂系材質の例を下記に示します。

  • 四フッ化エチレン樹脂(PTFE)
  • ポリアセタール樹脂(POM)
  • ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)
  • ポリフェニレンサルファルド樹脂(PPS)
  • ポリエステル系エラストマー樹脂
  • ポリアミド樹脂(PA)

樹脂系滑り軸受は、オイル・黒鉛など添加し、潤滑性を向上させているため、ほとんどの場合は無給油で使用されます。また、機械的強度の向上のために金属と組み合わせて使用する場合もあります。

金属系
金属系材質の例を下記に示します。

  • 鉛製銅鋳物 (JIS H5120 CAC601, CAC603, CAC606)
  • リン青銅鋳物 (JIS H5120 CAC502A)
  • ホワイトメタル (JIS H5401 WJ1~WJ10)
  • アルミニウム系合金 (JIS AJ2, SAE770, 780, 781)

潤滑油を使用する金属系材質では、ホワイトメタル、銅系合金、アルミニウム合金などが一般的です。ホワイトメタルは、静荷重や船用エンジンに使用されることが多く、銅系合金は耐摩耗性に優れるため、ブッシュなどに多く使用されます。

一方でアルミニウム合金は、エンジン用、ブッシュなど幅広い用途で使用されます。無給油の滑り軸受は、潤滑材の添加、表面のコーティング、固体潤滑材料を埋め込んでいます。無給油の滑り軸受は、オイルレス軸受と呼ばれています。

形状・構造

滑り軸受の種類

図4. 滑り軸受の種類(1)

形状・構造による種類は、「円筒形」「円筒形鍔(フランジ)付き」「円盤形(スラスト軸受) 」「球面形(球面スラスト軸受) 」に分けられます。

滑り軸受の種類

図5. 滑り軸受の種類(2)

滑り軸受の原理

滑り軸受は、回転軸や移動部品と滑り軸受の滑り面が画接触して支持しています。そのため、相互の面間(摺動面)で発生する摩擦の対処方法が重要になります。

一般的な滑り軸受は、摺動面に潤滑油・潤滑材や空気などを介在させ、摩擦抵抗を低減させています。よって摺動面の潤滑状態は非常に重要になります。この潤滑状態は下記3種類に区分されており、図3 ストライペック曲線にて示されます。

1. 境界潤滑

摺動面は、十分な潤滑被膜が形成されてなく摩擦が大きいため、ほぼ固体潤滑で良好な潤滑状態ではなく、焼き付き固着することがあります。

2. 混合潤滑

摺動面は、表面粗さと潤滑被膜厚みがほぼ同一で、流体接触と固体接触の混在状態になっていて、完全に十分な状態ではありません。

3. 流体潤滑

摺動面は、十分な潤滑被膜が形成されて、相互は直接接触していない状態で、相互が摩耗することなく良好な潤滑状態です。

 ストライペック曲線

図6. ストライペック曲線

滑り軸受の潤滑方法は、「強制給油」「油浴」「飛沫給油」「滴下給油」があり、軸受の使用条件により使い分けます。強制給油は、ポンプで軸受給油部に潤滑油を送る方法で、確実に一定量の潤滑油を給油することができます。油浴と飛沫給油は給油装置の必要がなく、シンプルな構造にすることができます。滴下給油は潤滑油の量が少ないので高負荷運転には適していません。

強制給油では、ハウジング側に給油する方法と軸側に給油する方法があります。また、ハウジングや軸に油溝を設けることで冷却効果を上げることも可能です。ただ、潤滑膜が不連続になり軸受の負荷能力の低下が起こることもあり、油溝の設計は十分注意が必要です。

潤滑油が使用できない環境(高温など)は、固体潤滑材を使用する場合もあります。固体潤滑材にはグラファイト、PTFEなどがあります。滑り軸受は、油圧、油膜等の管理を正確に行うことで、長寿命化を実現することが可能です。

滑り軸受のその他情報

滑り軸受の規格

滑り軸受に関するJIS, ISO規格を下記に示します。

JIS規格

ISO規格

番号

規格名

番号

規格名

JIS B01623-1

滑り軸受−用語、定義及び分類 第1部 設計、軸受材料及びその特性

ISO 4378-1

Plain bearings -Terms, definitions and classification- Part 1: Design, bearing materials and their properties

JIS B01623-2

滑り軸受−用語、定義及び分類 第2部 摩擦及び摩耗

ISO 4378-2

Plain bearings -Terms, definitions and classification- Part 2: Friction and wear

JIS B01623-3

滑り軸受−用語、定義及び分類 第3部 潤滑

ISO 4378-3

Plain bearings -Terms, definitions and classification- Part 3: Lubrication

JIS B01623-4

滑り軸受−用語、定義及び分類 第4部 計算パラメーター及びその記号

ISO 4378-4

Plain bearings -Terms, definitions and classification- Part 4: Calculation parameters and their symbol

 

転がり軸受の仕様は、規格で規定されているため、軸受型式によって嵌め合い公差や製作公差、隙間公差などは、全てのメーカーで同じ仕様になっています。したがって互換性があり汎用部品として使用することが可能です。

それに対して滑り軸受は、現状国際的に共通の規格はありません。そのため互換性はなく、汎用性はありません。したがって、使用用途、使用環境、設計仕様によって独自に検討し決定する必要があります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0016.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/5116.pdf
https://www.skf.com/group/products/plain-bearings
https://engineer-education.com/machine-design-12/
https://www.tribology.jp/outline/shokai.html

リニアガイド

リニアガイドとは

リニアガイド

リニアガイドは、直線運動の摩擦を減らして、部品を案内する機械要素です。JIS用語では「玉[ころ]循環リニア軸受」(英語:recirculating ball [roller] linear bearing)、工作機械工業会では「リニアガイドウェイ」と呼んでいます。THK株式会社ではLMガイド(Linear Motion Guide)と呼び、登録商標になっています。

摩擦を減らすために、一般には金属ボールが使われます。ローラーや高機能エンプラを使うものもあります。ボールは搬送台と直線レールとの間で転動して重量を支えながらレール上を移動します。ボールは搬送台の中で循環できるようになっています。

リニアガイドは小さい力で滑らかに移動ができます。精密加工されたガイドレールとボールはガタが少なく、ボールの回転が正確に搬送台の移動に伝わるため、高い位置決め精度を得ることができます。リニアガイド自体では推進力を持っていないため、搬送台を任意の方向に動かすためにボールネジシリンダなどの機構と組合わせて使用されます。

リニアガイドの使用用途

リニアガイドは、正確な直動運動が必要な箇所に使用されます。工作機械などのテーブル・搬送装置・検査機・ロボットなどに使用されます。さらに、木材加工機・建設機械・自動化機械などでも使われています。直線運動部のころがり化は、メカトロニクス機器の高精度化・高速化・省力化など、機械性能を向上させています。

液晶製造ライン・鉄道車両・福祉車両・医療用機器・高層ビルや住宅の免震制震装置・アミューズメント機器・ドローン・プリンターなどにも使用が拡大しています。正確な直線運動が必要な場合では、ガイドレールを2本使用します。そしてリニアガイドの取付面は精度よく加工されていることが必要です。

リニアガイドの原理

リニアガイドは、ガイドレール・搬送台ブロック・ボール及びボールリテーナ・リターンキャップなどで構成されます。構造部材に取り付けられたガイドレールの上を、搬送台ブロックがボールによるころがり運動で移動します。

ガイドレールの転動面にボール径に近似したR形状の溝を設けます。転動面とボールとの接触が点接触から面接触に近づき、許容荷重と寿命が大幅に向上します。複数の条列でボールを受ける構造により、急加減速時のモーメント荷重や長時間連続運転などの厳しい可動条件でも精度が維持できます。

稼働時にボールが転がることで、ボール間の距離が変化し稼働にムラができることを防ぐ必要があります。そのためリテーナを設け、ボール間の距離を一定に保ちながら稼働できるようになっています。リニアガイドには、ボールやガイドレールの精度によって等級別に分かれています。

精度等級が上がるほど使用環境が制限されてきますので、使用の際は荷重計算を行い、定格寿命を考慮した上で使用する必要があります。ガイドレールのボールが転がる溝の形状が、オフセットゴシックアーチ溝のものもあります。静的負荷容量が高いメリットがあります。

リニアガイドの種類

リニアガイドには、「ミニチュアタイプ」と「中・重荷重タイプ」などがあります。

1. ミニチュアタイプ

ガイドレールの軌道面と4点で接触するボールを2条列に配置したタイプです。特別大きな荷重がかからない状況下で使用されます。

2. 中・重荷重タイプ

ガイドレールの軌道面と2点で接触するボールを4条列に配置したタイプです。重切削を行う工作機械などで使用されます。ボールが転動する溝をガイドレールに設けることで、許容荷重が大きくなります。

3. その他のタイプ

ボールを使用しないタイプがあります。ローラー・高機能エンプラ・オイルレスメタルなどが摺動部に使われています。ボール式に比べ、耐荷重が大きく、粉塵などの異物環境下に強いという特徴があります。短所は摩擦力が大きいことです。

さらに、直線レールのほか、クロスガイドやRガイドなどの種類があります。また、高剛性を必要としない場合は、ステンレス鋼鋼板をU字形に精密成形し、軌道部分と取付面を一体にした小型・軽量・低価格の精密ボールスライドがあります。

リニアガイドのその他情報

リニアガイドの特徴

循環ボールタイプのリニアガイドは、剛性が高い、長寿命で高精度、静かで滑らかな作動、優れた振動特性などの特徴があります。ボールを使わないすべり式のリニアガイドは、ボール式に比べ最大40%ぐらい低コストです。メンテナンスフリー・潤滑剤不要で粉塵や水分に強く、優れた耐食性・衛生的で低騒音・軽量などのメリットがあります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md01/c1087.html
https://jp.misumi-ec.com/special/linearguide/about/
https://jp.misumi-ec.com/special/linearguide/select/

オーリング

オーリングとは

オーリングオーリングとは、管などから流体の漏れを防ぐために使用するシールです。

断面は円形で、文字のOの形をしているため、こう呼ばれます。シールする部分の部材で押しつぶして使用するので、材質はゴムやシリコンなどの弾性力があるものが主流です。

ガスケットやパッキンなどと同じような使われ方をしますが、Oリングは使い方や、取り外しなどのメンテナンスの容易さ、安価であるなどの理由から、様々な場所で広く使われています。

オーリングの使用用途

オーリングは、管などから流体の漏れを防ぐためのシール材として使用します。また、電子顕微鏡のような高真空が必要な機器内にガスが入り込まないようにするためにも用いられます。

オーリングは使用するにあたり、リングのための溝が必要です。これは、シールするためにオーリングを押しつぶして使用する必要があることから、オーリングが適切な形に変形するためや、適切な圧力をかけるためなどの理由があります。
また、ガスケットやパッキンと異なり、オーリングは固定・稼働のいずれにも使用できます。その際は、使用箇所に合わせて適切な硬さのオーリングの選定することが重要です。

オーリングの原理

オーリングの原理

図1. オーリングの原理

オーリングは、押しつぶすことで変形してシール部分の隙間を塞ぎ、つぶした際の反発力によってシールをします。そのため、オーリングは取付用の溝にはめて使用します。オーリングを押しつぶして圧力をかけると、オーリングは溝からはみ出す方向に向かって変形します。そのため、溝が大きすぎるとオーリングが部材からはみ出してしまい、その部分から劣化が進み、最終的にはシール機能を失ってしまいます。

また、流体圧力が高くなると、その圧力によりオーリングが押し出され、はみだしによりシール機能が低下します。バックアップリングを使用することでオーリングのはみだしを防止することができ、流体圧力が6.9MPa以上ではバックアップリングを使用することが望ましいです。

加えて、使用部分の部材でオーリングを押しつぶす際は、変形によるシールを確実にするため、つぶし代を考慮して溝深さを決める必要があります。適切な溝深さとオーリングの太さ(断面直径)は、JIS規格を参照することで選定が容易になります。JIS規格では、Oリングのつぶし率が太さの約8~30%となるよう溝寸法を規定しています。

JIS規格にはオーリングの種類と用途によって、材料や硬さも決められているため、用途に応じた使い方が求められます。

オーリングのその他情報

1. オーリングの材質

オーリングに使用される材質の一例を紹介します。

NBR (ニトリルゴム)
Oリングに使用される最も一般的な材質です。耐油性と耐磨耗性に優れ、安定した耐熱性を持ちます。一般的な工業機械に使用されています。ただし、NBRの中でもJIS規格、ISO規格にある材料番号によってさらに細かく性能が分かれているため、選定時には規格を確認してから適切な材質を検討する必要があります。

FKM (フッ素ゴム)
耐熱性、耐油性に優れた材質です。材料番号によって耐酸性や耐アルカリ性に優れているものがあり、薬液を取り扱う機器に広く使用されています。また、高圧機器に使用される場合や低温機器に使用される場合もあります。価格はNBRと比較すると高価です。こちらも、NBRと同様材料番号によって細かく性能が分かれているため、規格と用途を確認し材質決定を行う必要があります。

FFKM (パーフロロエラストマー) 
耐熱性に優れ、合成ゴムの中で一番優れた耐薬品性を有している材質です。通称パーフロです。薬品によるOリングの膨潤が発生しにくい材質です。価格はFKMよりさらに高価であり、サイズにもよりますが1万前後~/個という驚きの値段です。危険物など絶対に漏洩を防ぎたい場合などは導入しています。

主要メーカーから各種Oリングが生産、販売されています。選定の際には、過去実績や在庫管理の面からも統一性を持たせつつ、適切な選定を行いましょう。

2. オーリングの規格 (P,G,V)

オーリングには様々な規格がありますが、ここではその一部を紹介します。一般的に使用頻度が高いOリングはP-〇〇、G-〇〇、V-〇〇などと表記されています。それぞれの頭文字には次のような意味があり使用目的によって使い分けます。

  • P (Packingの頭文字) 
    運動用、固定用のOリングとして使用されます。
  • G (Gasketの頭文字)
    固定用のOリングとして使用されます。
  • V (Vacuumの頭文字)
    真空用のOリングとして使用されます。いずれも線径で判別できます。また、それぞれの規格で対応表がありますので選定時には確認が必要になります。

昇降機

昇降機とは

昇降機

昇降機とは、人や荷物を載せて垂直や斜めに移動させるための装置です。

水平移動するものも昇降機と呼ばれることがありますが、一般的に上下移動するものを指します。人を載せず、荷物のみを昇降、運搬するものはリフトと呼ばれる場合もあります。

人を載せて垂直移動するものは箱型のものはエレベーターと呼ばれ、階段式のものはエスカレーターをイメージするのが分かりやすいです。現在は、日常生活のさまざまな場面で昇降機を目にすることができます。

昇降機の使用用途

昇降機は、人や荷物を載せて垂直、斜めもしくは水平に移動させる装置の総称です。油圧ジャッキなどにより荷物を載せて移動させるものはハンドリフトなどとも呼ばれ、移動式の台車として活用されています。

電動で箱型の昇降機はエレベータと呼ばれ、荷物専用のものから人が乗り降りできるものまであります。自動車に昇降機を組付け、人が運転操作できるようにしたものはフォークリフトとして使用されています。事務椅子などの高さを変える部分に使用されているガスシリンダーによるものも、広義の意味では昇降機の使用例です。

昇降機の原理

昇降機を上下移動させるための機構は、歯車によるもの、電動アクチュエータによるもの、油圧ジャッキやガススプリングによるものなど、大きさや対象物、移動量によってさまざまなものがあります。最も単純で身近な昇降機構は滑車によるものです。その場合、釣り合い用のおもりや動滑車などを用いて負荷を軽くすることで小型化や省エネを実現しています。

エレベーターなどのように、昇降機そのものは移動せず、その場で昇降を繰り返すものは機械式、電気式タイプがあります。ハンドリフトやフォークリフトのように、昇降機そのものを別な場所へ移動させるものは機械式によるものが多く、電気式であっても内蔵バッテリー等を使用しているものが見られます。

また、昇降機は故障した際に自由落下を防止する安全装置が付いています。これは、故障時の人的、物的被害を最小限にするために必ず必要なものです。さらなる安全策として、建築基準法や労働安全法といった法により寸法や点検、使用方法などに規制をかけています。

昇降機の種類

昇降機の代表的な種類は、以下の通りです。

1. エレベーター

エレベーターは、人や荷物の移動に使われます。高層ビルやマンションなど幅広い建築物に設置されており、私たちの日々の生活に欠かせない昇降機です。主索や鎖で吊るタイプと、油圧ジャッキを使った駆動タイプがあります。

2. 段差解消機

段差解消機は、段差がある場所で使われます。テーブル台が段差に合わせて上下し、玄関の出入りや建物内で段差がある場所でも楽に移動が可能です。スロープを設置できない狭い場所などでも活躍します。

3. いす式階段昇降機

いす式階段昇降機は、階段の上り下りを助ける昇降機です。公共施設や個人宅のどんな階段にも設置が可能で、高齢者や足腰が不自由な方を助けます。いす式と車いす式の2タイプがあり、利用者の介助のレベルに合わせて選びます。

4. エスカレーター

エスカレータは移動階段とも呼ばれ、踏段が動力により連続的に昇降する装置です。時速1.8kmほどの速度で移動し、1段に2名が乗ると1時間に9,000名が利用できます。より多くの人が移動する場所に設置されます。

5. 小荷物専用昇降機

小荷物専用昇降機は、荷物専用の昇降機です。比較的小さめの荷物を運ぶ昇降機なので強度などの安全基準が緩和されており設置費用は割安です。荷物を運ぶ多様な職場で活用され、機能性や安全性だけでなく環境負荷の軽減にも貢献します。

昇降機のその他情報

1. 昇降機の価格

昇降機の価格は大きさ、構造、機能によって大きく異なります。手動で小さな荷物を昇降させるタイプであれば1万円前後です。しかし、小型といっても昇降以外に走行可能なタイプや電動タイプなど、機能が増える分だけ価格は増加し、少なくとも数万円程度は必要となります。

エレベータタイプの昇降機は、設備の設置費用がかかるため割高です。配膳や書類用の小荷物用昇降機は90万円以上、工場などで使用される何百キロも昇降可能なタイプは150万円以上となります。

昇降機には介護・医療施設で使用される階段昇降機もあります。階段の端にレールを施工し、そこに備え付けられた椅子に乗ることで階段の上り下りが可能となる昇降機です。直線の階段に据え付ける昇降機であれば工期1日で取り付けることが可能で、価格は60万円程度です。曲線タイプも工期1日で価格は120万円程度となります。

昇降機には様々な種類、使用用途があるため、目的によって価格は大きく異なります。また、選択する機能によっても価格が変化するため、本当に必要な機能を選ぶことが大切です。

2. 昇降機のレンタル

昇降機は機能によっては非常に高額となる場合があります。そのため、昇降機はレンタルをしている企業が多く存在します。購入と同様に施工は1日で、施工前に設置可能かどうか相談することも可能です。一般的に、階段式昇降機のレンタルが多くあります。お年寄りがいる家庭、ケガで階段の昇降が困難になっている場合など、昇降機が必要ではあるものの購入まではしたくないという要望を叶えてくれます。

直線式、曲線式などタイプにもよりますが、相場は月々1~2万円程度です。契約年数は、最低契約期間を定めている業者があるため注意が必要です。また、設置および撤去費用として別途費用が必要であり、この費用も業者によって異なります。メンテナンス費用を無償としている業者もあり、使用中に不具合が出ても対応してくれるサービスが安心です。

参考文献
https://www.n-elekyo.or.jp/encyclopedia/mechanism/elevator.html
https://www.monotaro.com/k/store/%E6%89%8B%E5%8B%95%20%E6%98%87%E9%99%8D%E6%A9%9F/
http://www.shinkosangyo-as.com/stairlift/index.html
https://www.kaidan-shoukouki.com/rental/
https://www.smilecare.co.jp/price_rentallinear/

パワーサプライ

パワーサプライとは

パワーサプライ

パワーサプライとは、コンセントなどの交流電源から安定した直流電源に変換する装置です。

コンセントなどの交流電源は産業用・家庭用にかかわらず高電圧のため、そのままでは電子機器を使用することができません。そのため、機器に適した直流の電圧に変換する必要があります。

一般的なパワーサプライには、「スイッチング方式」「トランス方式」の2種類に大別されますが、現在は小型で軽量、高効率などの観点から、スイッチング方式が主流となっています。

パワーサプライの使用用途

パワーサプライは、その名の通り、電源を供給するための装置です。交流の電源から電子機器に適した直流の電圧に変換するためのものなので、どこの家庭にもある電子機器類のほぼ全てに内蔵されています。

壁のコンセントにケーブルを繋ぐと、ケーブルの反対側にはパワーサプライがあると思ってよいと思うほど、どの電子機器にも使用されています。

電圧を調整することのできる装置ですので、パワーサプライの使用によってトランスを使用しなくでも電源電圧を供給することができます。

パワーサプライの原理

トランス方式のパワーサプライは、交流の電源電圧をトランスで適切な電圧に変圧し、整流器で直流に整流します。それをコンデンサで平滑して安定化した直流電圧を供給します。

スイッチング方式のパワーサプライは、交流の電源電圧を直流にし、それを高速スイッチング回路でパルス状の高周波電力に変換します。この高周波電力をトランスを用いて電力を整流、平滑して、直流の適した出力電圧を得ます。

トランス方式はノイズを小さく抑えられますが、大きく重くなり、電力効率も悪くなってしまいます。対してスイッチング方式は、高効率で軽くすることができますが、ノイズが大きくなってしまいます。

パワーサプライを100%の効率で動作することはできませんので、損失が熱となり発熱します。その発熱量は、一般的には以下の式で求められます。

発熱量(W)=入力電力-出力電力=(出力電力/効率)-出力電力

発熱量が大きくなりすぎると、出力の低下や故障の原因となります。

パワーサプライのその他情報

1. パワーサプライの自作

パワーサプライは構造が単純なため、自作することが可能です。必要な材料は、抵抗、平滑用コンデンサ、ダイオードの4つです。

まず、受電電圧を、抵抗によってドロップさせます。その後、ダイオードを使用して直流へと変化させます。このとき、全波整流したい場合はダイオードが2つ必要です。

最後に、平滑用コンデンサを負荷と並列に接続すれば完成です。抵抗は、変圧器でも代用出来ます。パワーサプライの容量はこれら個々のパーツの容量によって決定されます。複数台負荷を接続する場合はより多くの容量が必要です。

2. 小型パワーサプライ

産業用のパワーサプライは、一般に制御盤内に収納されている場合が多く、盤内に貼り付く程度に小型です。現在はDINレール取り付けが主流と言えます。

一般家庭では、パソコンやスマートフォンの充電用に使用されるACアダプタがパワーサプライです。小型化も進み、手のひらサイズとなっています。音響機器関係では、アンプ用としてパワーサプライが用いられます。こちらも、手のひらサイズで8機器ほどに電源を分配することができます。

3. パワーサプライによるノイズ

音響機器の用語として、パワーサプライは、エフェクタ等へ電源を供給する装置です。エフェクタは音楽にリバーブやローパスフィルタなどのエフェクトを追加する装置です。分類としては、アナログ機器とデジタル機器に分けられます。

パワーサプライ自体は容量以下であれば、1つでいくつのエフェクタへも電源を供給できます。ただし、アナログ系エフェクタとデジタル系エフェクタを同じパワーサプライに接続すると、ノイズが発生します。

原因は、デジタルエフェクタの仕組みにあります。デジタル系エフェクタは電子回路を用いているため、音声信号や電気信号をチョッパ等で変換して方形波を作っています。方形波はアナログ波形に歪みを生じさせるため、音声のノイズとなってしまいます。</br />
ノイズ対策として、アナログ系エフェクタとデジタル系エフェクタのパワーサプライを分けます。電気的に絶縁することで、方形波によるノイズを除外できます。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/22/140/index.html