インバーター

インバーターとは

インバーター

インバーター (英語: inverter) とは、入力された電流を交流電流へと変換する装置です。

入力する電流には、直流と交流どちらのケースもあります。後者の場合、入力された交流電流は一度直流に変換された後、電圧や周波数が変調した別の交流電流に再び変換されます。

インバーターはその構造を構成する回路の一つであるインバーター回路と区別するために、インバーター装置と呼ばれることもあります。

インバーターの使用用途

インバーターは、モーターを利用した電気製品によく利用されています。なぜなら、インバーターは主にモーターの回転の制御に使われているからです。

インバーターを利用した最も身近な製品はエアコンです。インバーターはコンプレッサ部分に搭載されており、モーターの回転の強弱をコントロールしています。インバーターがなければ、エアコンの温度調節は運転のオン・オフだけで行わなければなりません。

インバーターを用いることによって、運転のオン・オフではなく、運転の強弱によって温度を管理することが可能になります。電源のオン・オフは大量の電力消費を伴うので、インバーターは省電力化に貢献していると言えます。そのため、現在販売されているエアコンにはインバーターが搭載されている場合がほとんどです。

インバーターの原理

インバーターは大きく、コンバーター回路、コンデンサー、インバーター回路の3つによって構成されています。インバーターでは、交流電流を別の電圧や周波数が変調した交流電流に変換するには、入力電流を一度コンバーター回路に通して直流電流に変換します。

この変換は、ダイオードを用いて整流することで達成されます。整流された電流は、コンデンサーに蓄えられ、充電・放電を繰り返すことで更に整形されます。

こうして擬似的な直流電流を作り、続いてインバーター回路に入力します。インバーター回路では、パルス幅変調 (PWM) というパワートランジスタのスイッチングによって、幅の異なるパルス波を発生させています。

これらを合成することによって、擬似的な正弦波を作り出すことが可能です。パルス電圧を生成する場合は電圧型インバータ、パルス電流を生成する場合は電流型インバータと呼びます。生成するパルス幅の組み合わせを制御することで、電圧や周波数を自由に変えられます。

インバーターのその他情報

1. インバーター制御のメリット・デメリット

メリット
インバーターを採用する理由の多くは、省エネ化を目的としています。回転機構を持つ機械にインバーターを搭載すると、モーターの回転数を必要な分に合わせて調整が可能なため、過度に機械を稼働させずに済み、省エネ化に繋がります。

また、エアコンやオイルコンなどの流体の温度調節を行う機械に搭載することで、温度制御の精度が向上する点もメリットの一つです。従来の製品では、電源のON/OFFの切り替えのみで温度を管理していたため、消費電力が多いうえに設定温度との誤差が大きくなってしまう傾向がありました。インバーターはこういった問題を解消する装置として、非常に有効なものだったといえます。

デメリット
デメリットとしては、費用が高額になってしまう点や、インバーター内のコンデンサは消耗品のため、定期的に交換が必要になる点などが挙げられます。使用を検討する際は、デメリットもよく考慮したうえで、総合的に判断することが重要となります。

2. インバーターが壊れる原因

インバーターを長年使用していると、過電流トリップや過電圧トリップが起こりやすくなります。このような場合に考えられるのは、インバーターに内蔵されているコンデンサの「寿命」です。

インバーター内のコンデンサの多くは「電解コンデンサ」が使用されています。電解コンデンサは周囲の温度の影響を受けやすく、温度が10℃上昇すると、寿命は1/2になるとも言われています。

そのため、夏の暑い時期に連続稼働しているエアコンなどは電解コンデンサの消耗が急速に進み、最終的に故障してしまうケースが多いです。過電流・過電圧トリップの他にも、モーターの回転時に振動が出ていたり、異常な振動音がしたりする場合には、早期のインバーター交換が推奨されます。さらに劣化が進むと、電解コンデンサが膨らんできたり、液漏れが起きたりするケースもあります。

参考文献
https://www.fujielectric.co.jp/products/column/inverter/inverter_02.htm
http://energychord.com/children/energy/pe/inv/contents/inv_fund.html
https://www.takagishokai.co.jp/product-search/2016/06/02/57

メディアコンバータ

メディアコンバータとは

メディアコンバータ

メディアコンバータ(Media Converter) とは、電気信号によって情報を伝送するメタルケーブルと、光を媒体として情報を伝送する光ファイバーを接続するための装置です。

メディアコンバータは異なる媒体による信号を相互に変換するための装置を指しますが、ここでいう媒体とは電気信号と光信号に限定しています。即ち、メディアコンバータは、電気信号を光信号に、光信号を電気信号に変換する装置であり、光メディアコンバータもしくはMCとも呼ばれます。

メディアコンバータの使用用途

メディアコンバータは、電気信号によって情報を伝送するメタルケーブルと、光を媒体として情報を伝送する光ファイバーを接続する際に使用されています。電気的な信号を伝送するメタルケーブルは、伝送距離が伸びると、信号が減衰するとともに電磁ノイズの影響を受けやすくなります。そのため、伝送可能な距離は100m程度に制限されてしまいます。

一方、光ファイバーによる光信号の伝送では、電磁ノイズの影響を受けることが無い上に信号の減衰も少ないため、長距離の伝送に最適です。しかし、電圧の変化を信号として伝えるメタルケーブルと、光の点滅を信号として伝える光ファイバーとでは信号の媒体が異なるため、両者を接続するには信号を相互に変換する必要があります。

そこでメディアコンバータを介在させ、2つの信号を相互に変換することで、それぞれのケーブルの長所を生かしたネットワーク回線を構築します。

メディアコンバータの原理

一般的に、一対のメディアコンバータはメタルケーブルで構築された2つのネットワークを繋ぐ光ファイバーの両端に設置されます。第1のメディアコンバータは、メタルケーブルの電気信号から光ファイバーの光信号への変換を行います。メディアコンバータに入力された電気信号は、レーザーダイオードなどの発光素子に伝えられ、信号に対応して変調された光信号として光ファイバーケーブルに出力されます。

第2のメディアコンバータでは送られてきた光信号を、受光素子により電圧の変化に変換して、元の電気信号に復元します。この仕組みにより、2つのネットワーク間に光ファイバーを介在させて、長距離でも確実な信号伝送が可能です。

また、メディアコンバータにはパケット信号の処理方法により次の2つのタイプに分類できます。

1. リピータータイプ

電気信号側の通信速度と光信号側の通信速度が等しいことが特徴です。通信速度が同じ場合、変換は遅延することなく実行われます。つまり、メディアコンバータは電気信号であるパケットを受信すると、その内容に関わらず直ちに光信号に変換して出力します。

信号の遅延時間がなく、伝送スピードが重要で信号の遅れが許容されない用途に向く仕組みです。また、どのようなパケットであってもそのまま通過するため、通信プロトコルに関わらず使用することが可能です。仮にエラーパケットが存在しても、それを破棄することはありません。機器トラブルに関する情報をモニター機器で把握して対応策に活用する場合に有効です。

2. ブリッジタイプ

ブリッジタイプでは、送信側から送られてくるパケット信号を送信側のメディアコンバータが一旦バッファ回路に受信します。その上で光信号に変換し、受信側のメディアコンバータへ送信するものです。

そのため、電気信号と光信号の通信速度が異なる場合でも対応可能で、スイッチタイプとも呼ばれます。また、何らかの理由で接続機器間の通信速度が変更されても、支障なく通信を続けられる点が特徴です。

リピータータイプと比較すると、バッフ回路を介するため伝送遅延が大きくなり、特に伝送するパケット長が大きいほど遅延が顕著になります。一方、ブリッジタイプであればバッファ回路に信号を受信した時点でエラーパケットを判定し、除去することも可能です。

メディアコンバータのその他情報

1. 一芯 / 二芯 光ファイバケーブルへの対応

光ファイバーの通信では一般的に二芯タイプを採用します。これは、送信側と受信側で各々専用の光ファイバーコアを使う通信方法で、通常2つのコアを一組にしたケーブルを用いて接続します。光が常に一定方向に向かうため、メディアコンバータの構造はシンプルです。

これに対して1つの光ファイバーコアで双方向に光を通す、即ち双方向通信となる、一芯タイプもあります。多数の光ファイバーを通す必要がある場合など、スペース的な制約がある環境に設置される際に使用するケースが多いです。一芯での双方向通信では、対向するメディアコンバータ同士で波長が異なる光源を使うため、受光素子も相手側の波長に感度を有するものでなければなりません。

つまり、一芯タイプのメディアコンバータでは、互いに異なる送信波長の光源を備え、受光部は相手側の送信波長に合わせた受光素子を備えたものを組み合わせて使う必要があります。

参考文献
http://www.sopto.com.cn/sp_news/show-427.html
https://www.allied-telesis.co.jp/products/list/convert/know.html

耐電圧試験器

耐電圧試験器とは

耐電圧試験器 (英: withstanding voltage tester) とは、電気製品やそれを構成する部品に電圧を印加した際に、十分に絶縁されているかを確認する試験に使用する装置です。

絶縁耐力がなく、高電圧を印可した際に絶縁破壊を起こすと、利用者が感電したり、利用者に障害を与えたり、火災が発生したりすることがあります。この様な事態を回避するために、国内では電気用品安全法にて守らなければならない耐圧が機器によって規定されています。

絶縁性能を評価するための装置として絶縁抵抗計がありますが、耐電圧試験器では、実際に絶縁破壊に至るほどの高い電圧を印加する点が差異です。また、絶縁抵抗計は絶縁能力を定量的に評価するのに対し、耐電圧試験器は、絶縁破壊の有無を定性的に評価します。耐圧試験器や絶縁耐力試験器とも呼ばれます。

耐電圧試験器の使用用途

耐電圧試験器は、絶縁破壊が起こらないかどうかを確認するために使われます。耐電圧試験器を用いた耐圧試験は、日本だけでなく世界中の安全規格に含まれています。

絶縁抵抗計を用いた絶縁性能試験、さらに保護導通試験とあわせて、電気製品の製造者は最終工程においてこれらの試験を行い、感電・漏電の危険がないかどうかを確認することが義務付けられています。

耐電圧試験器の原理

耐電圧試験器による関連試験項目は4種類あります。

1. AC/DC耐電圧試験

規定の高電圧を規定時間だけ被試験物に印加する試験です。高電圧の印加によって、わずかな電流の漏れも検出可能です。耐電圧試験は、様々な電気製品の安全と品質の確認のため、全数実施が義務付けられています。

耐電圧試験器は被測定物に対し、通常の使用でかかる電圧の10~20倍といった非常に高い電圧を印加し、絶縁破壊による急激な電流の増加が起こるかどうかを試験します。

2. 絶縁抵抗試験

1,000Vまでの直流電圧を被試験物体に印加して、直流の電気抵抗を測定する試験です。絶縁抵抗試験は、製造過程に関わらず、保守点検等により現地での試験が行われます。

3. 保護導通試験

被試験物のグラウンドポストと製品のシャーシとの間に大電流を流し、確実に接地されていることを試験します。

4. 漏洩電流試験

人間が感電したことを想定した試験です。人間のかわりに人体のインピーダンスに相当した回路を接続し、回路に発生した電圧から計算して漏洩電流を求めます。

耐電圧試験器のその他情報

1. 耐電圧試験器の点検

耐電圧試験器を使用する前には、始業点検が必要です。また、試験中は高電圧が発生するため、点検を怠ると試験者が負傷する恐れがあります。

具体的な点検方法は説明書を参照しますが、一般的に記述されているのは、「試験器が大地と接地されていること」「試験器の外観に割れ、ひびなどの損傷がないか?」「測定リード線および被覆にひび割れなどの損傷がないか?」などです。

さらに、定期的に耐電圧試験器の校正を行う必要があります。校正とは、その測定機器が正しく測定できているかどうかを点検し、耐電圧試験器が正常に機能していることを確認します。

購入後から一度も校正をしていない場合、耐電圧試験器の校正は自分で行うことも可能ですが、高電圧が流れることもあるため、十分な知識および技術を持った人が行わなければなりません。耐電圧試験器の校正は、半年~数年に1度、専門メーカーに行ってもらうのが一般的です。

2. 耐電圧試験器のレンタル

耐電圧試験器はレンタルで使用することも可能です。ただし機器選定を行う際は、「印可電圧はいくら必要か?」「直流と交流のどちらで試験を行うのか?」という点は、最低限検討しておく必要があります。

レンタル可能な耐電圧試験器は機能として様々なタイプがあります。電圧計および電流計をデジタル表示できるタイプであれば、測定値の読み間違いが生じるリスクの低減が可能です。

また、絶縁抵抗試験も可能なモデルもあるため、絶縁抵抗試験を行うのであれば1台で完結します。必要のない高機能モデルをレンタルしてしまうと無駄な費用がかかってしまうため、実際の使用用途とよく照らし合わせて選択することが大切です。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=35
https://www.kikusui.co.jp/knowledgeplaza/?d=safetytest
https://www.measuring.jp/kei/kei05

絶縁抵抗計

絶縁抵抗計とは

絶縁抵抗計

絶縁抵抗計とは、絶縁状態を診断するための装置です。系統の電圧に合わせてDC1,000V程度の高電圧を印可できる絶縁抵抗計も販売されています。

電気を使う機器にとって、機器が絶縁されていることは大変重要です。絶縁状態が悪化すると、漏電火災や感電事故の発生原因となります。上記事故を未然に防ぐため、定期的に絶縁抵抗計で絶縁性能を評価する必要があります。

絶縁抵抗計の使用用途

絶縁抵抗計は絶縁能力を数値化するために使われます。一般家庭で見ることはまずありません。

生産現場では、電気製品の出荷工場における最終試験などに使用されます。また、電気設備の保守担当者は、多くの場合保守用の測定器として所持しています。

抵抗値の測定には電圧の印加を行いますが、系統電圧に応じて印加電圧が異なります。例えば、電話回線の絶縁測定は25~50Vの電圧を印加する絶縁抵抗計が用いられ、家電製品にはDC125Vが使用されます。高圧配電線路や発電所などではDC1,000Vの印可電圧が使用されます。

絶縁抵抗計の原理

絶縁抵抗計は、配線端子、スイッチ、直流電源電流計、電流保護素子などで構成されます。

配線端子は、アース端子とライン端子と呼ばれる2つの端子が使用されます。アース端子は接地し、ライン端子は測定部分に接続して測定します。

スイッチを押すことで、直流電源で作られた直流電圧を印加します。大地へ流れる微少電流を漏れ電流と呼びますが、電流計で電圧印加時の漏れ電流を測定して絶縁抵抗を求めています。

高圧電圧を印加するため、回路に過電流が流れないように電流保護素子でインピーダンスを高めます。電流保護素子によって、絶縁抵抗計の内部インピーダンスは非常に高く設計されています。

絶縁抵抗値は、高いほど絶縁性能が高いことを示しています。絶縁破壊が起こると、絶縁抵抗値は極端に低くなります。

絶縁抵抗計のその他情報

1. 絶縁抵抗計を使用する目的

絶縁抵抗計は、工場や家庭などに施工されている電路や電気部品などの絶縁状態を測定するための機器です。

絶縁不良の原因は、電路の施工不良、充電部と非充電部の絶縁不良、経年劣化、内部配線の劣化、使用部品のショートによる破損、筐体の破損などが考えられます。これらをそのまま放置しておけば、漏電火災や感電死傷事故へとつながり、大変危険です。

こういったトラブルを防ぐため、「漏電ブレーカーが落ちる」「操作中に感電した」という現象が現れたら、すぐに電源系統を遮断し、絶縁抵抗測定を行います。

2. 測定方法

絶縁抵抗計の測定方法は、以下の手順で実施します。

  1. 絶縁抵抗計のアース端子を接地された金属箇所(可能であれば接地極と接続された端子)に接続する。
  2. 系統電圧に合わせて、つまみで印可電圧を選択する。
  3. ライン端子を、アース端子とは別の接地された箇所へ押し当て、測定ボタンを押す。
  4. 0.00MΩ表示となる事を確認する。(ゼロチェック)
  5. 測定ボタンから手を離し、ライン端子を測定箇所へ押し付ける。
  6. 測定ボタンを押し、絶縁抵抗を確認する。

電路長が長いと電荷が溜まるまで時間がかかるため、絶縁抵抗表示が安定しないことがあります。その場合は、表示が安定するまで電圧を印可し続けます。

また、DC1,000Vなどの高電圧を印可した際は、残留電荷が多く溜まります。電路を素手で触ると感電する危険性があるため、放電処置を確実に実施する必要があります。

電気設備技術基準では、電圧系統区分における絶縁抵抗値が定められています。測定結果を判断する基準とします。

  • 対地電圧150V以下→絶縁抵抗値0.1MΩ以上
  • 対地電圧150V以上300V以下→絶縁抵抗値0.2MΩ以上
  • 対地電圧300V以上の低圧電路→絶縁抵抗値0.4MΩ以上

実際に絶縁不良が発生した場合、電路や電気機器をうまく切り分けて測定することが劣化箇所の早期発見に繋がります。絶縁不良箇所の早期発見は、電気設備保全担当者の腕の見せ所と言えるでしょう。

参考文献
https://www.kew-ltd.co.jp/support/knowledge/technical/insulation
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=43 

LiDARセンサー

LiDARセンサーとは

LiDARセンサー

LiDARセンサーとは、レーザー光を照射し反射光や散乱光を検出することで、対象物までの距離や形状を測定する装置の総称です。

LiDARセンサーのうちのLiDARは「Light Detection and Ranging」の頭文字から名づけられた名称で、「ライダー」と読みます。特に、光の検出において飛行時間を計測する場合が多く、TOF (Time-of-flight ) センサーとも呼ばれます。

また、高度な計測にはドップラー効果を活用した周波数連続変調方式も用いられ、こちらの名称はFMCW (Frequency Modulated Continuous Wave)方式です。この様に離れた場所から距離などの測定を行う技術をリモートセンシング技術といいます。

LiDARセンサーの使用用途

LiDARセンサーの現在の代表的な使用用途は、自動車の自動運転技術向けや、スマートフォン向けの画像検出技術向け等ですが、もともとは航空機のレーダーや気象観測に長年用いられて来た歴史ある技術です。

最近ではADASと並んで、自動車において障害物や周辺車両の検出など、自動運転技術を実現するための不可欠な要素となっており、小型化や低コスト化など、積極的に開発が進められています。

さらに工場において、画像処理装置と組み合わせてまた、スマートフォンのカメラなどと組み合わせて写真撮影で効果的にピントをぼかすアシストや、VR (仮想現実) ・AR (拡張現実) のための技術として利用されはじめている状況です。また、Apple製のiPhone12ProとiPhone12ProMaxにも採用されたことは、LiDARセンサーの認知度を飛躍的に高める出来事でした。

LiDARセンサーの原理

LiDARセンサーの原理は、光源であるレーザーと受光素子によって構成され、照射したレーザー光を何らかの物理的な手法で受光することで、対象物までの距離を測定することにあります。例えば、現在最も広く用いられているTOF方式では、対象物にレーザー光を照射し反射や散乱によって戻ってくるまでの時間 (飛行時間:time-of-flight,TOF) を測定し、対象物までの距離を割り出します。

レーザー光の照射の仕方として、広視野で照射する方式と特定の方向に照射しそれをスキャンするスキャン方式があります。

1. 広視野で照射する方式

広視野で照射する方式は一般的なカメラと同様に扱えるためTOFカメラとも呼ばれます。TOFカメラは一度の光照射で視野全体の情報を一度に取得可能で、光学系も極めてシンプルなため、装置としては比較的低コストです。

ただし、センサー全体をカバーするようにレーザー光を広げる必要があるため、一画素あたりの光子密度が低下してしまうのが課題で、環境光などの影響を受けやすく、測定距離も短いという短所があります。

2. スキャン方式

一方、スキャン方式はミラーを用いてレーザー光を走査します。一画素ごとに走査を行うポイントスキャン方式と、一列ごとに行うラインスキャン方式があります。前者は高精度ですが、測定時間を要すため、空間解像度が高い必要のない場合には、反対の特徴を有するラインスキャン方式が用いられます。

LiDARセンサーのその他情報

1. TOF方式とFMCW方式の違い

LiDARセンサーの検出方式には、TOF (飛行時間) 方式とFMCW (周波数連続変調) 方式の2つがありますが、大きな違いはその距離の検出方式に用いる物理量の違いです。TOF方式は対象物にパルス照射したレーザー光が反射して戻ってくる時間量を計測して距離計測を実施しますが、FMCW方式においては、周波数を変化させながら連続波を照射した際の、対象物体からの反射波のドップラー効果を利用して測長が可能です。

TOF方式の方が原理的に簡単であり、LiDARセンサーのコスト抑制ができます。ただし、物体に照射したレーザー光が、自分が出したものか、他から出されたものかの識別が困難なため、現在の自動運転技術用の本命技術とはなりにくく、より高度な計測が可能なFMCW方式が有望視されています。

FMCW方式も計測距離を制限するコヒーレンス問題やコスト低減など、自動運転に向けてのクリアすべき課題がありますが、世界の研究機関を中心にこれらの課題をクリアするための、より高度な研究開発が現在活発に行われている状況です。

2. LiDARセンサーのカメラ

LiDARセンサーとカメラは通常別々になっています。しかし、LIDERセンサーとカメラが別々のユニットだと、LiDARセンサーとカメラのデータを合成した際にわずかな視差が発生してしまい、高い精度を出すことができません。そこで、カメラとLiDARセンサーを一つにしてまとめたタイプのセンサーが登場しています。

このタイプのセンサーでは、カメラとLiDARセンサーのデータを組み合わせることで高解像度の3D画像の作成を生成することが可能です。また、視差とひずみ差のない高精度な計測が可能になるので、車載用センサーとしての利用が期待されています。

3. LiDARセンサーの需要予測

昨今、トヨタ株式会社を中心に、自動運転技術の研究開発が盛んになっており、それに伴いLiDARセンサーやレーザー業界も熱気を帯びています。

マーケット調査会社である矢野経済研究所は、2030年までにLiDARセンサーやレーザーのマーケット規模が4,959億円まで増加するという予測をしています。また、別のマーケット調査会社のヨール・デベロップメントでは、LiDARセンサーのマーケット規模は2024年までに60億$まで拡大するという予測を(2019年の調査で)発表しています。

先進国を中心にLiDARセンサーの需要は、今後ますます増加していくものと見られています。

参照元:LiDARセンサーの需要予測

参考文献
Royo et al. Appl. Sci. 2019, 9(19), 4093; https://doi.org/10.3390/app9194093
https://www.kyocera.co.jp/tech/other/lidar.html
https://jidounten-lab.com/y_lidar-toha-matome-eye
https://robotstart.info/2020/06/20/livox-tele-15.html
https://eetimes.jp/ee/articles/2004/13/news028.html
https://wired.jp/2019/07/24/lidar-cheap-make-self-driving-reality/

バッテリーマネージメント

バッテリーマネージメントとは

バッテリーマネージメントとは、電池を安全に使用するために状態を監視するシステムのことです。

電池は誤った使い方をすると、発火や感電、爆発などの大きな事故災害につながるため、バッテリーマネージメントによって、電流量・電圧量・温度・電池残量など各種パラメーターをモニターし、異常がないかを監視しています。

バッテリーマネージメントシステム (英: buttery management system, BMS) 、バッテリーマネージメントユニット (英: battery management unit, BMU) とも呼ばれ、昨今のスマートフォンでの利用や自動車のEV化の流れに伴い着目されている分野です。

バッテリーマネージメントは特に複数の電池を直列に接続した組電池モジュールの管理を行う目的で使用されますが、単一の電池を個別に管理する際はセルマネージメントと呼ばれ、区別されることがあります。

バッテリーマネージメントの使用用途

バッテリーマネージメントの使用用途は、車載用バッテリーの監視用途やスマーフォン内部のリチウムイオンバッテリーの電池監視モジュール向けなどが代表的な事例です。

数ある電池の中でもリチウムイオンバッテリーは、高効率な反面使い方を誤ると重大な事故に繋がる恐れがあります。

バッテリーマネージメントは、特にリチウムイオンバッテリーの安全性を確保し、その性能を最大限に引き出すために使用されます。最近ではスマートフォンのみならず電気自動車の需要も増えてきていることから自動車用のバッテリーを管理する用途に多く使用されています。

バッテリーマネージメントの原理

バッテリーマネージメントの原理は、内蔵する電池保護ICにて電池の特性を随時検出し、異常発生時に回路的に電池を遮断し、電池のセル間のアンバランスの抑制でのバッテリー特性改善や長寿命化に貢献する仕組みを有する点にあります。

電池保護ICは一般に4つの回路ブロックからなり、過充電・過放電・放電過電流・充電過電流などの項目を検出し、問題があれば遮断する機能を有します。

これらの項目の検出と遮断には、主にコンパレータという素子が使われます。各項目に対応した入力値は、まず電圧に変換されそれぞれのコンパレータ内部に設定された基準値と比較されます。そして、結果の大小によって各回路を遮断するかどうかの判断が行われることで電池内の電圧、放電・充電電流が上昇及び低下しすぎないように適切に制御されています。

また、複数の電池の個体差による電圧のばらつきによる実効的な電池容量の減少を回避するために、各電池電圧をモニターして均等化を行うセルバランス機能があり、この場合でもコンパレータを使用することで実現されています。

バッテリーマネージメントのその他情報

1. 電池保護形式の種類

これまでの電池保護ICはあらかじめ設定された基準値に対して、大きい・小さいなどの特性比較に伴う、いわゆるスタンドアローン形式での保護回路動作が主でした。

しかし昨今のリチウムイオン電池は、多セル状態にて様々な電子・産業機器への搭載がなされるようになってきています。アプリケーションの例として、コードレスのロボット掃除機やドローン、電動バイクやアシスト機能搭載自転車、電動パワーツールなどがあります。

このような使用用途では、従来よりもきめ細かい電池保護の制御が求められる背景もあり、スタンドアローン形式ではなく、内蔵したマイコン制御により、多セルの電池状態を管理しながら最適な保護形式をアナログ制御できめ細かく設定動作が可能な電池保護ICが登場しています。

2. EVを見据えたバッテリーマネージメントシステム

近年の自動車のEV化に伴うバッテリーマネージメントはより複雑な制御が求められています。従来の12Vの鉛蓄電池ベースの車内電装システムとは別に車のエンジンに相当する電池には数100V相当のリチウムイオンバッテリーが用いられています。

EVの場合、電池の容量が車の走行距離に、電池の効率化つまり燃費に相当する箇所が電池電圧に直結します。よって各メーカー毎に、電池セルの接続手法には工夫が施されており、そのバッテリーマネージメントシステムにも高度な技術が要求されています。

セル毎に状況が異なるEVの世界では、そのデータの精度や解析手法が自動車の走行距離や高価なバッテリーの寿命に直結するために、(スタートアップ含め)関連するメーカーは、この制御のワイヤレス化やデータ解析への機械学習(AI)の導入含め最先端の技術革新にしのぎをけすっている状況です。

参考文献
https://www.zuken.co.jp/club_Z/zz/tech-column/20190627_r012.html

電子負荷

電子負荷とは

電子負荷とは、被試験装置に接続され、負荷抵抗として機能する装置です。

従来は抵抗器を接続して被試験装置の負荷としていましたが、抵抗値を変更する都度抵抗器を差し替える作業が必要でした。電子負荷のメリットは、負荷の大きさを任意に設定できることです。

外部コントローラを利用すると、高速で負荷の設定を切り替えることも可能です。また、定電流モードとして一定の電流を被試験装置から流す機能や定電圧モードとして被試験装置の出力電圧を一定に維持する機能などがあり、様々な測定や試験に対応できます。

電子負荷の使用用途

電子負荷は、電子回路や電源装置、電池などの性能評価試験及び製品の検査に用いられます。具体的には、以下のような用途があります。

  • 電子回路における負荷のドライブ能力
  • 電源の負荷特性試験
  • 電池の充電/放電試験

また、外部コントローラによる制御が可能なため、負荷条件を目的に合わせて変更すること等、試験の自動化にも対応します。

電子負荷の機能

電子負荷は、バイポーラトランジスタFETなどで構成した増幅器を内蔵していて、そこに引き込む電流 (負荷電流) を制御するものです。特徴的な機能は以下に記します。

1. 電力の消費・変換方式

電力の消費・変換方式は、電子負荷のタイプによって異なります。

熱変換タイプの電子負荷
電子負荷内で消費される電力は、増幅器を構成する半導体素子により熱に変換されています。これは見掛け上抵抗器に電流を流した場合と同じ効果ですが、半導体素子が発熱するため、その放熱機構が必要です。

電力回生タイプの電子負荷
電子負荷内に入力された電力を、インバーターにより交流電流へと変換するものです。変換された電流は配電線網に再び戻されるので、消費電力は小さく、放熱も比較的簡単な構造で済みます。しかし、回生した電力エネルギーを電力系統に戻していることから、系統連係動作が可能な環境に限られます。

2. 電子負荷の動作モード

一般的に電子負荷は以下に示す4つのモードを備えていて、試験の目的により最適なモードを選択します。

定電流 (Constant Current) モード
このモードでは、電子負荷の入力電圧に関係なく、設定した定電流が流れるように動作します。被試験装置の出力電圧が変動した場合でも負荷電流が一定になるように電子負荷が対応しています。

定抵抗 (Constant Resister) モード
このモードでは固定抵抗のように設定された抵抗値を一定に保ちます。電源投入時直後の過渡期を除き、設定した抵抗値を維持することが特徴です。入力電圧に対して負荷電流が直線的に変化するため、電池やバッテリーの容量試験、電子機器の起動テストなどに使用されています。

定電圧 (Constant Voltage) モード
このモードでは被試験装置の出力電圧を一定値に維持します。被試験装置の出力電圧が変動すると、電子負荷は負荷電流を変化させて、出力電圧を一定に保ちます。その結果、負荷電流は変動するものの、被試験装置の出力電圧は一定になります。

燃料電池、バッテリー充電器などのテスト用として使用される場合が多いです。バッテリー充電器のテストでは、複雑なバッテリーの電圧挙動を電子負荷で再現して、試験することもできます。

定電力 (Constant Power) モード
このモードでは、電子負荷は設定された電力を消費するように働きます。まず、被試験装置の電圧を計測し、その電圧と設定された電力値から電流値を算出し、その電流を引き込みます。

電子負荷の選び方

電源装置やバッテリーなどの電力源の開発や生産において、各装置の性能試験を行う際に電子負荷は欠かせません。電子負荷装置を選定するときの注意事項を以下に記します。

1. 電力容量と耐電圧

被試験装置が電源であれば、その最大出力電力までカバーする電力容量を備えていることが原則です。また、耐電圧の規格は実際に印加される可能性のある電圧以上であることも必須条件となります。

2. 電子負荷装置が対応できる最小電圧

電子負荷は一般的に低い電圧領域での使用は困難で、電子負荷が対応できる最小電圧を、最低動作電圧と呼びます。前述の通り、電子負荷はバイポーラトランジスタやFETなどで構成した増幅器に流す電流を制御するものです。従って、その増幅器が動作する電圧を下回る場合は電子負荷が正しく動作しません。

その結果、ある電圧を境にして、それより低い電圧では電流が引き込めなくなります。即ち、電子負荷両端の電圧が最低動作電圧より低いと、動作しなくなります。

3. 周囲の温度や時間

電子負荷には、最大負荷を保証する周囲温度のスペックに注意が必要です。特に、熱変換式電子負荷では、自身の発熱により周囲温度が上昇するため、高温下での使用に制限が生じることを考慮しなければなりません。

また、最大負荷を維持できる時間が制限されている場合もあるため、事前にカタログやスペックシートの記載内容を確認しておく必要があります。

参考文献
https://www.keisoku.co.jp/pw/support/oyakudachi/dc-load/dcl-08/
https://www.toyo.co.jp/material/casestudy/detail/id=30425

デジタルマルチメーター

デジタルマルチメーターとは

デジタルマルチメーター

デジタルマルチメーターは、一般に直流電圧・交流電圧・直流電流・抵抗値など基本的な電気特性を測定する装置です。旧来の電圧計電流計及び抵抗計はメーター指針が測定値を指示するアナログ表示であったのに対し、複数の測定機能を備えかつ3桁から8桁の数値表示であることからデジタルマルチメーターと呼ばれます。また、静電用容量や交流周波数、温度など測定機能を拡張した機種も販売されています。

尚、小型軽量で、工事現場等での使用に適したコンパクトな機種は、デジタルテスターとも言われます。表示桁数は4桁程度、測定精度は直流電圧の場合0.05~0.1%、交流電圧では0.5~1%程度が一般的な性能です。実験室での精密な測定には精度が不十分ですが、屋外へ持ち出す用途では使いやすいものです。そのような使い方を想定して、落下にも耐えるよう頑丈な構造を持った機種も販売されています。

デジタルマルチメーターの使用用途

デジタルマルチメーターは、実験室における測定、工場の生産ラインにおける製品の電気調整、電気設備の工事や保守点検など、様々な場面で利用されています。

受電設備や動力制御盤に組み込まれていることが多いです。このような場合、電流・電圧・抵抗値といった基本的なパラメーターに加え、静電容量・周波数・温度などを測定する機能が組み込まれているものあります。

また、上記のように専門的な用途だけでなく、一般家庭での電子工作などに使える安価なものも販売されています。

デジタルマルチメーターの原理

デジタルマルチメーターの中枢は高精度/高分解能のA/Dコンバータと、そのデジタル出力を基に測定値を算出するプロセッサから構成されます。

1. 直流電圧測定

2つのプローブ間の電圧を増幅(微小電圧の場合)もしくは減衰(高電圧の場合)するアンプやアッテネータを通してダイナミックレンジ内の電圧に変換し、A/Dコンバータの入力電圧とします。A/Dコンバータはその入力電圧に対応するデジタル値を出力し、プロセッサはこのデジタル値とアンプのゲインやアッテネータの減衰率を基にプローブ間の電圧を算出して、表示器に直流電圧値を表示します。

2. 交流電圧測定

整流回路を通して交流電圧を直流電圧に変換してから、A/Dコンバータに入力し、以降直流電圧と同様の処理を経て、表示器に交流電圧値を表示します。

3. 抵抗測定

デジタルマルチメーターに内蔵した定電流電源から2本のプローブを介して、被測定抵抗に一定の電流を流します。この時プローブの両端に現れる直流電圧をA/Dコンバータに入力することで被測定抵抗の両端電圧が測定できます。この電圧値と定電流電源の電流値から、プロセッサが被測定抵抗の抵抗値を算出します。

4. 電流測定

直流電流の測定には、デジタルマルチメーター内の微小抵抗器に流れる被測定電流によって発生する微小抵抗器両端の電圧をA/Dコンバータに入力します。このA/Dコンバータの出力値からプロセッサで電流値を算出し、表示器にその電流値を表示します。交流電流の場合は、微小抵抗器両端の交流電圧を整流回路で直流電圧に変換し、A/Dコンバータに入力します。

5. A/Dコンバータ

デジタルマルチメーターのA/Dコンバータは非常に高精度(高分解能)、例えば7桁の表示には24bit以上、が求められるので、一般に二重積分型が採用されます。その為変換に要する時間は比較的長く、1秒間に数回測定する事が精一杯です。但し表示桁数を減らしてA/Dコンバータの変換時間を短縮することで、測定時間を短縮させることも可能です。

デジタルマルチメーターの使い方

デジタルマルチメーターの使い方は以下の通りです。

1. 電圧・電流測定

デジタルマルチメータでは、Hi端子とLo端子の2つの入力端子間に被測定系を接続します。直流電圧測定の際、Hi端子は高電圧側、Lo端子は定電圧側に接続すると、Lo端子側の電位を基準にHi端子側の電圧を表示します。直流電流測定の際、Hi端子から被測定電流が流れ込みLo端子から流れ出す場合に電流値はプラスと表示され、逆方向の場合はマイナスと表示されます。交流電圧、電流や抵抗の測定では極性を考慮する必要はありません。

2. 測定レンジの設定

最大入力定格以内の電圧、電流であれば、Autoレンジ機能により自動的に最適なレンジに切り替わるので、一般的な使い方では最適なレンジを探す作業は不要ですが、生産ラインでの調整時など測定時間の短縮が求められる場合は、予想される測定値を基に手動でレンジ設定することになります。

3. 被測定回路への影響

デジタルマルチメーターを接続することにより、被測定系に影響を与えて測定値が変動することがあります。例えば、暗い環境下で光センサーの出力電圧を測定する場合など、非常にインピーダンスが高い回路にデジタルマルチメーターを接続すると、その内部インピーダンスが測定系の負荷となり、本来の出力電圧より低い値を示すことがあります。

同様に、インピーダンスが小さい回路の電流を測定する場合は、デジタルマルチメーター内の電圧検出用微小抵抗が、被測定回路に無視できない誤差を発生させることがあります。従って、デジタルマルチメーターが被測定回路に与える影響を考慮した上で、使用の可否を判断して下さい。

4. 低抵抗測定

抵抗の測定において4端子測定が可能なデジタルマルチメーターがあります。特に低抵抗値の計測において、プローブと被測定抵抗器との接触抵抗が誤差の原因となる場合に、4端子測定は極めて有効な手法です。4端子と云われる通り、一対の端子の定電流電源と、一対の端子の電圧計から構成されるもので、被測定抵抗器の両端に定電流電源を接続して定電流を流します。

電圧計は定電流端子の内側、抵抗器側のポイント、にプローブをあてて抵抗器の両端電圧を測定します。この測定電圧と定電流値から抵抗値を算出します。定電流端子の接触抵抗は電圧の測定値に影響しないこと、電圧計のプローブの接触抵抗は電圧計の内部抵抗10MΩに対して無視できるレベルであることから、低抵抗を正確に測定できます。

 参考文献

https://jeea.or.jp/course/contents/12145/

https://www.elprocus.com/multimeter-types-and-applications/

光マルチメータ

光マルチメーターとは

光マルチメーター (英: Optical multimeter) とは、光を利用した測定器です。

さまざまな光の特性を測定するための機能が組み込まれています。光損失テスタ・光ロステスタ・光ロステストセットなどと呼ばれることもあります。

光の強度を測定する光パワーメーター、光ファイバーの信号がどれくらい損失されるかを測定のための、ロステスタ・リターンロステスタの機能を持っていることが理由で呼ばれるようになりました。また、光源としてレーザーを搭載しているものもあり、安定光源としても利用することができます。

光マルチメーターの使用用途

光マルチメータは、電気回路において光を利用した測定器であり、主に電流や電圧を測定するために使用されます。高周波電流や高電圧測定にも適しており、多くの工業分野で広く使用されているだけでなく、高速で信頼度の高い測定ができることから、医療現場などでも使用されています。

1. 電子回路のテスト

光マルチメータを使用することで、回路内部の電圧や電流、抵抗、容量などを測定し、回路の動作状態を確認することができます。また、光マルチメータは、高速な測定が可能なため、高速な回路の動作確認にも適しています。

2. 温度測定

光マルチメータは、表面から放射される赤外線を検出して、温度分布を画像化する熱イメージングや非接触温度測定にも使用されます。例えば、建築物の断熱性能の評価や、電気機器の過熱の検出などです。

測定対象の表面温度によって、赤外線や近赤外線が放射されます。この放射された光を光マルチメータで検出することで、測定対象の温度を非接触で測定可能です。

3. 医療

皮膚や目の病気の診断や治療に利用されます。特に、眼科医が緑内障などの病気の診断や治療に光マルチメータを使用することがあります。

また、近赤外線光を使用して、脳の活動を非侵襲的に画像化する脳の機能イメージングを行う技術も開発されている状況です。これにより、脳神経科学や臨床医学の分野での応用が期待されています。

光マルチメーターの原理

光マルチメータは、電気回路において光を利用した測定器であり、信号と光源の原理は以下の通りです。

1. 信号の原理

光マルチメータのは、光ファイバーを使用して光を送受信します。光ファイバーは非常に細いガラス繊維でできており、送信側で発生させた光が、光ファイバーを介して受信側に送信されます。

受信側の光センサーは光を受け取って、信号に変換しますが、この信号は回路の電気パラメータとして読み取られます。非常に高い精度で測定できることができる他、電気回路において電気ノイズの影響を受けにくく信頼性が高い測定が可能です。

2. 光源の原理

光マルチメータの光源は、主に発光ダイオードまたはレーザーダイオードが使用されます。これらの光源は、低消費電力であり、非常に高い明るさを発することから、光マルチメータに適しています。

送信された光は、測定対象の回路に入射し、回路内部で反射、屈折、散乱などが起こります。これらの光は、再度光ファイバーを介して受信部に戻り、フォトダイオードなどの光センサーによって光信号に変換され、測定値として表示されます。

このように、光ファイバーを使用することによって、非接触で精度の高い測定が可能です。また、光ファイバーは、電気信号よりも信号の遅延が少ないため、高速な測定にも適しています。

光マルチメータの特徴

非接触で測定ができるため、安全性や信頼性が高く、計測対象に損傷を与えることがないという特徴があります。一方で、測定対象の表面温度を測定するため、内部温度や部品の劣化状態などは測定できません。

使用する環境によっては、測定精度に影響を与える可能性があるため、測定前には測定対象や測定条件を正確に把握し、注意深く測定することが重要です。

基板外観検査装置

基板外観検査装置とは基板外観検査装置

基板外観検査装置とは、プリント基板などの基板への実装部品の良否、不具合を調べる装置です。

この装置では、実装部品の位置ずれ・断線・ショート・クラック・部品浮き・はんだ付けなどに問題がないかを調べています。電子基板の検査には正しく動作するかという機能試験の他に、各電子部品が正しい位置に欠陥なく装着されているかを検査する、基板外観検査 (基板検査・実装検査) があります。

電子基板検査はAOI (Automated Optical Inspection) と呼ばれており、基板外観検査によって問題がなければ、実際に設計通りに動作するのかという機能検査です。この機能検査ではファンクションテスタが使用されます。

基板外観検査装置の使用用途

基板外観検査装置は、様々な装置に搭載される基板のチェックに使用されています。基板に実装された部品の位置のずれや断線、部品浮きおよびはんだ付け不良などのチェックを実施し、下記のような欠陥を発見することが可能です。

1. 部品の欠陥

  • 部品未実装
    部品の実装位置が正しくない状態
  • 部品の位置ずれ
    パッドから部品が外れてしまい、間違えた位置に実装されている状態
  • 部品の浮き
    部品片側のみがはんだ付けがされた状態で、他方が立ち上がってしまっている状態

2. はんだの欠陥

  • 断線
    はんだがついていない状態
  • ショート
    はんだの量が多すぎて、隣接したパッドにも付着している状態
  • ボイド
    はんだ付けの際に、気泡によりできる不具合
  • 濡れ不良
    はんだがきれいに付いているが電気的接触が不完全な状態
  • はんだボール
    はんだのボール状の塊ができる状態
  • ブリッジ
    隣接したICピン間にはんだがつながっている状態
  • クラック
    はんだ表面に割れがある状態
  • イモハンダ
    はんだがうまく接合できず、はんだがイモのようにデコボコになっている状態

なお、基板外観検査によって問題がなければ、実際に設計通りに動作するのかという機能検査が行われ、機能検査にはファンクションテスタが使用されます。

このような基板外観検査装置は、電子基板の回路の集積化が進み、小さく集積された基板では人間の目視によるチェックが困難となってきたことから導入が増えています。また、省力化・省人化などによるコストダウンや生産性アップ、人的ミスを減らしての品質価値を高めることもメリットです。

基板外観検査装置の原理

1. 基板外観検査装置の構成

基板外観検査装置においては、人間と同様に外観を見る「目」の機能を果たす装置と、良し悪しを判断する「頭脳」の機能を果たす装置が最低限必要な構成です。これにより、人間の目視によっておこなっていたチェックを代わりに実施します。

したがって、基板外観検査装置は目となるカメラと頭脳となる画像処理ソフトウェアを搭載したコンピューターによって構成されています。

2. 基板外観検査装置の判定方法

基板外観検査装置で最も検出されるはんだ付け不良の判定方法を説明します。基板外観検査装置において、はんだ付けの良し悪しは、基板接着面境界と電子部品接着面との境界を結ぶ直線距離を閾値として、はんだ部分の長さがこれを超えるか否かによって判断されます。

つまり、ソフトウェアの判断は、はんだ部分が閾値以上の長さであれば、はんだが基板と電子部品間を電通可能な状態でつないでいる良であり、閾値未満であれば不良です。部品の形状など、電子基板によって閾値が変わるため、画像処理ソフトウェアにはあらゆる閾値データを入力しておく必要があります。

近年では、複数のカメラを用い三次元撮影する、X線カメラで透過画像を撮影する、レーザーの反射光データを得るなどして、二次元の通常のカメラだけでは検出できない欠陥の検出を可能としています。例えば、三次元撮影をおこなうと、はんだ部分の高さや面積および体積などを計測できるため、はんだ量や大きさおよびフィレット形状などの測定ができます。

このような自動化された光学的手段による基板外観検査は、AOIと呼ばれています。AOIとは「Automated Optical Inspection」の略で、和訳すると自動光学検査です。

基板外観検査装置のその他の情報

人間による基板外観試験の問題点

これまで、基板の外観試験は人間の目視によりおこなわれていました。しかし、人間によるチェックでは、検査員の経験や主観によって合格・不合格の基準が異なる場合がありました。また、検査項目が増えるとそれに伴なって人員も増やす必要があるため人件費の増加にもつながっていました。

さらには、工場でライン生産される電子基板の生産数は膨大で、目視による検査では処理能力に限界があり生産数に追い付きません。このため、生産効率の向上が難しいという課題もあります。そこで、基板外観検査装置を導入して人の力で実施していた検査を自動化し、生産効率の向上とコスト削減を達成しています。

注目の基板外観検査装置

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■新設計GUIの採用
先進的なデザインと見やすさを両立した、新操作画面デザインを採用。GERBER変換、CAM変換(ODB++)、CAD変換(ASCII変換)に対応し、マウンタ部品データからの簡単変換が可能。お客様の活用データから事前の検査データ作成が容易に。

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不良画像を無線LAN経由で、オペレータのモバイル端末に送信し、良否の判定が可能。ラインオペレータが兼務することで、省人化をサポート。

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CAD、CAM、各種マウンターデータ等、あらゆるデータから検査データへのダイレクト変換に対応。ガーバデータからも基板画像を自動生成。DIP基板もスルーホールを自動検出し、検査データの自動作成が可能。

■部品ライブラリ自動マッチング 【AI機能】
カメラで撮像した画像から、AIが部品種を自動的に特定し、最適な部品ライブラリを自動的に適用。検査データ作成の簡易化に貢献。

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参考文献
https://www.keyence.co.jp/