過電流継電器

過電流継電器とは

過電流継電器

過電流継電器とは、電力系統に発生した過電流を検知する機械装置です。

電力会社の所有する電力系統等では発電機の容量や送配電線の太さによって許容される送電電流値が決定されます。許容電流値を超過した場合には送電線や発電機がジュール熱を大量に発生し、焼き切れる危険性があります。このような事故を未然に防ぐために過電流継電器で流れる電流が閾値を超えた際に検知可能です。

過電流継電器は制御器具番号では51番であり、電気回路図面等では51と表記されます。

過電流継電器の使用用途

過電流継電器は高圧以上の電力を扱う設備ではほぼ必ず採用されます。過電流継電器を省略した際には系統上流に波及事故を起こす危険があるためです。

電力会社などの送配電事業者は1系統に対して遮断器で区切るたびに過電流継電器を設置しています。需要設備であるビルやショッピングモール、工場等でも高圧受電設備を持つほとんどのケースで過電流継電器を設置します。

低圧受電の設備で過電流継電器の使用は極めて稀で、過電流保護機能付きの配線用遮断器で代用可能です。

過電流継電器の原理

過電流継電器は、計器用変流器を用いて過電流を検出しています。

配電系統の上流では数百A以上の高い電流や高圧の電圧を使用します。この巨大で高圧な電流を直接過電流継電器が受け取る場合には過電流継電器に高い絶縁耐力や許容電流を持たせる必要があり、極めて非経済的です。そこで一般的に電流値検出用計器には計器用変流器でスケールダウンした電流を与えて検知されます。

計器用変流器はCT (英: current transfer) と呼ばれ、電流の変流と絶縁に用いる装置です。高圧配線の周りを導体で周回させ、その導体に線を巻いています。銅線の巻き数を増やすほど電流値を低減可能です。一般的なCTは上流の電流を0〜1Aまたは0〜5Aにスケールダウンさせて過電流継電器が受け取ります。

過電流継電器ではスケールダウンした電流値を受け取り、ある閾値以上となった場合に上位へ信号を発信します。基本的には過電流継電器は高圧または特別高圧用遮断器とセットで利用可能です。ほとんどの場合には過電流を検知した瞬間に遮断器を用いて電力を遮断します。

過電流継電器の構造

1. 静止形

電子回路の制御で遮断し、現在では主流になっています。制御電源が不要なタイプもあり、誘導形に似た特性曲線を持つ静止形もあります。

2. 誘導円板形

移動磁界を作る鉄心と円板に生ずる渦電流の相互作用で動作します。以前は多くの保護継電器が誘導円板形でしたが、現在では静止型に転換が進んでいます。バネと電磁力で円盤が回転するため、バネの経年劣化などの内部の影響だけでなく、傾斜、温度、振動のような外部からの影響を受けて誤差が生じるためです。

誘導円板形は変圧器形やくま取り形に分類されます。

過電流継電器の種類

出力接点の引き外しは3種類に分けられ、電流トリップ方式、電圧トリップ方式、コンデンサトリップ方式です。

1. 電流トリップ方式

電流引き外し方式とも呼ばれ、電流で真空遮断器のトリップコイルを動かして遮断します。回路を構成する機器は過電流継電器と真空遮断器のみであり、小規模の受電設備によく採用されます。

2. 電圧トリップ方式

電圧引き外し方式とも呼ばれ、電圧で真空遮断器のトリップコイルを動かして遮断します。大規模な受電設備には蓄電池が内蔵された直流電源装置を制御電源として設置し、蓄電池の電圧を使うため事故時も動作が安定しています。ただし直流電源装置が必要なため高価です。

3. コンデンサトリップ方式

コンデンサ引き外し方式とも呼ばれ、電圧トリップ方式の一種です。電圧トリップ方式と動作原理は同じで、直流電源装置が設置されていない場合に使用されます。内蔵されたコンデンサによって停電でも動作しますが、容量が少ないため数回しか動作できません。

監視カメラ

監視カメラとは

監視カメラ

監視カメラとは、監視員が常時監視していない場所において、人の代わりに監視をするカメラのことです。

定点カメラの1種であり、ショッピングモールや博物館に使用されています。その場で何が起こったかを知るためのものなので、サンプリングレートをあまり高くしないことが特徴です。場合によっては、情報量を圧縮するために白黒画像で保存してます。

多くの場合、監視カメラでの映像は制御室等で常時確認することができます。

監視カメラの使用用途

監視カメラは、産業に幅広く用いられています。具体的には、ショッピングモールや博物館、ジュエリショップなどの有価商品を扱う店舗で使用されます。近年では、コンビニでも使用されるのが一般的です。

そのほか、常時巡回員がいない変電所や発電所等でも使用されています。大規模なプロセス系の工場では、制御室に監視カメラも設置して機器の動きを監視している場合が多いです。

監視カメラの原理

監視カメラは、主にカメラ部分、伝送配線、記録装置の3部位に分かれています。

1. カメラ部分

カメラ部分は、1900年代中盤には主にフィルムに映写する仕組みが取られていました。レンズで集中させた光を感光フィルムに当てることで、画像として残す仕組みです。

この場合、画像を記録するために大量のフィルムが必要となるので使い勝手が悪く、価値の高い商品の監視用に留まっていました。それに対して、現在は画像を電子データとして保存します。大量のフィルムを必要としないのが大きな特徴です。

2. 伝送配線部分

伝送配線部分は、一般に同軸配線が使用されていました。伝送距離が長い場合などには現在も使用されていますが、近年ではカメラへの電源供給も可能なPoE型のLAN伝送が多くなっています。

制御室での監視や録画が簡単なのが特徴です。ただし、伝送距離が100mまでとなるため、制御室で集中的に監視する用途に用いられます。

3. 記録装置

記録装置は監視カメラ製造各社で製造されてますが、大容量記憶の場合はハードディスクやSSDが使用されます。小容量記憶の場合は、SDカードやUSBフラッシュメモリが一般的です。

監視カメラの選び方

1. 監視範囲と視野角

監視カメラの設置場所や目的に合わせて、必要な監視範囲と視野角を考慮します。広範囲をカバーする必要がある場合は、広角レンズやパノラマカメラが適しています。

一方、特定の領域や対象物を重点的に監視する場合は、ズーム機能や可変焦点レンズがあるカメラを選ぶことが重要です。

2. 解像度

解像度とは、カメラが取得する映像の細かさです。高い解像度は、顔やナンバープレートなどの細かい情報を捉えるのに有効です。

一般的に、720p HD、1080p Full HD、4K Ultra HDなどの解像度が一般的ですが、目的と予算に応じた適切な解像度を選びます。

3. 昼夜対応性

昼夜を問わず監視を行う必要がある場合、昼夜対応性が重要です。カメラが照明条件の変化に柔軟に対応できるかどうかを確認します。赤外線 (IR) カメラや照明補助機能を備えたカメラは、暗所や夜間の監視に適しています。

4. 防犯対策機能

監視カメラには、侵入検知、動体検知、顔認識、警報連動などの防犯対策機能があります。これらの機能により、異常な活動や不審者の検出、特定の人物の識別などが可能となります。使用環境やセキュリティニーズに合わせて、適切な防犯対策機能を備えたカメラを選ぶことが重要です。

5. 信頼性と耐久性

監視カメラは長期間の運用を想定しており、信頼性と耐久性が求められます。防塵・防水性能や耐衝撃性など、適切な防御機能を備えているか確認します。また、メーカーや製品の評判や保証情報を確認することも重要です。

6. 互換性と拡張性

監視カメラを使用するシステムやネットワークとの互換性があるかを確認します。適切なインターフェース (例:Ethernet、PoE) を備え、既存の監視システムに容易に統合できるかどうかが重要です。

また、将来的な拡張性も考慮に入れ、必要な場合に追加のカメラや機能を組み込むことができるかどうかもポイントになります。

管ヒューズ

管ヒューズとは

管ヒューズ

管ヒューズとは、電気機器の安全装置であるヒューズの1種です。

中空の円筒の内部にヒューズエレメントと呼ばれる金属可溶体が通っており、電気機器の破損防止する働きがあります。製品の見た目が管の形状をしているので、管型ヒューズまたは管ヒューズと呼ばれています。

管ヒューズの機能は、経年劣化や漏電等が発生した場合に設計者の想定を超える異常な大電流が流れてしまうと、接続されている電気機器が破損してしまいます。それを防ぐために、管内のヒューズエレメントが発熱し、溶けて回路を遮断することによって、異常電流から電気機器を守る働きがあります。

ヒューズには管ヒューズの他に挿入型ヒューズ、表面実装型ヒューズ、つめ付きヒューズなど形状はさまざまです。いずれも、一度ヒューズエレメントが溶断してしまった場合は、新しいヒューズに交換しなくてはなりません。 

管ヒューズの使用用途

管ヒューズは、ヒューズの中でも古くから存在するタイプのヒューズで、異常電流に対する安全装置として、家電、通信などの民生電気機器・電子回路に使用されています。また、自動車分野では、マイコン制御部品や電気自動車が増えたため、安全装置としてヒューズの需要が高まっています。

現在、自動車用のヒューズとして最も使用されているのは簡単に抜き差しが可能なブレードヒューズですが、管ヒューズもコンプレッサー、DCDCコンプレッサー等の補機回路の保護用として使用されています。

管ヒューズの原理

管ヒューズの原理として、材質や異常電流が流れた場合の動作について詳しく解説します。ヒューズエレメントに使用されている材質は、以下のとおりです。

  • スズ
  • ビスマス
  • カドミウム

溶断する温度特性によって配合を変更することで融点を70〜100℃程度の間にコントロール可能で、ヒューズが対応可能な定格電流の幅を広げています。管ヒューズが使用できる定格電流値は製品によって異なりますが、0.1Aの小電力のものから30A以上の大電流まで幅広く対応しています。

管ヒューズが安全に遮断できる遮断電流も決まっているため、対応可能な電流値を大きく超えてしまった場合は管ヒューズの破損に繋がります。管ヒューズが破損すると、最悪の場合はガラス管のガラスが飛び散ったりしてしまい、怪我や別の回路が異物付着による短絡等の二次被害が発生するため注意が必要です。

異常電流が流れた際の動作として、通常状態ではヒューズエレメント全体が均等に発熱しており電流を遮断することなく回路に伝えています。異常電流が発生した場合は、ヒューズエレメントの中央部分から発熱し、設定された温度特性に従って溶断し回路を遮断します。異常電流が流れてからヒューズエレメントが溶断するまでの間は回路が導通した状態となってしまうため、どの程度の時間でヒューズエレメントが溶断するかも管ヒューズを選定する際に重要なポイントです。

管ヒューズの種類

管ヒューズは、使用用途や材質によって次のように分類されます。

1. 普通溶断型

溶断特性が普通タイプのヒューズです。家電など一般的な民生電気機器に使用されます。

2. 速動溶断型

ヒューズエレメントが迅速に溶断するタイプのヒューズです。エレメントの径が部分的に細いものや、スパイラル状に巻き付けた構造をしています。主に電子回路の半導体保護用に使用されます。

3. タイムラグ溶断型

ヒューズエレメントが溶断するのに時間がかかるタイプのヒューズです。熱容量が大きい金属をエレメントに使い、一時的な過電流では発熱・溶断しにくい性質を持っています。

モーターなど、電源投入時に大電流が流れる製品に使用されます。管ヒューズの材質による種類には、ガラス管ヒューズとセラミック管ヒューズがあります。

4. ガラス管ヒューズ

ガラス管ヒューズは最も一般的な管ヒューズです。管が透明のガラス製で、内部のヒューズエレメントが目視できるため、溶断などの状態が外からわかります。

5. セラミック管ヒューズ

セラミック管ヒューズは、ガラス管よりも遮断容量が高いという特徴があります。ガラス管・セラミック管ともに、溶断する際に発生するアーク放電を抑える消弧剤が管内に封入されたタイプもあります。

管ヒューズの選び方

管ヒューズの目的は、異常電流が流れたときに回路を遮断して機器を保護することですが、通常動作時には溶断することなく電流を通さなくてはなりません。そのため、管ヒューズの定格電流を確認し、通常動作時の定常電流が定格電流よりも低くなるよう、管ヒューズを選定する必要があります。

参考文献
https://www.jeita.or.jp/japanese/exhibit/2014/1117/pdf/fuse.pdf
https://www.kdh.or.jp/safe/document/knowledge/distribution_board04.html
https://fa-ubon.jp/tech/005_200907_vol8_fuse_techno.html
https://www.socfuse.com/wordpress/wp-content/uploads/J_fuse_selection_process_201811.pdf

固定抵抗器

固定抵抗器とは

固定抵抗器

固定抵抗器とは、抵抗値が固定されており、可変できない電気抵抗器のことです。

抵抗器は、電流値をコントロールするための回路素子を指します。仮に回路抵抗が0Ωであれば、回路はショート状態となり、大電流が流れてしまいます。それを防止するために、抵抗器を挟んで適切な電流に制御します。

ちなみに、抵抗器には抵抗値を自由に変えることができる可変抵抗器、抵抗値の調整を行うことができる半固定抵抗器がありますが、これら抵抗値を変化させられる抵抗器に対し、抵抗値が変更できないものが固定抵抗器です。

固定抵抗器の使用用途

固定抵抗器は、あらゆる電子回路に使われる基本的な回路素子で、様々な用途があります。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 電子回路の中で電流の制限
  • 電圧の分圧
  • 電流値の検出
  • デジタル信号の電圧を設定するプルアップ抵抗やプルダウン抵抗
  • コンデンサやオペアンプと組み合わせたアクティブフィルター回路
  • 雷サージなどの突入電流発生時の回路保護

固定抵抗器の原理

抵抗器に電流が通過する際、電子は抵抗体の原子と衝突を繰り返します。衝突するたびに電子の移動速度は低下し、一定時間内に通過する電子の数は減少することになります。単位時間当たりに電子が通過する数が電流値なので、抵抗体との衝突が抵抗の本質と言えます。

また、電子と原子が衝突する際に、電子が持つエネルギーの一部が熱に変換されますが、これがジュール熱です。固定抵抗器を流れる電流、印加電圧、抵抗値の間には、「オームの法則:電圧=電流×抵抗」が成り立ちます。これを基に回路設計時には、印加電圧、電流値から適切な抵抗値の固定抵抗器を選定します。

また、固定抵抗器に電流が流れると、抵抗器の両端には電位差が発生して、電流値×電位差で算出される電力がジュール熱として消費されます。この消費電力が過大だと、抵抗器が焼き切れる恐れがあるため注意が必要です。

固定抵抗器のスペックには、「連続的に消費出来る電力の最大値」である定格電力が規定されています。固定抵抗器では一般的に定格電力の50%以下で使いますが、それを踏まえて部品選定をする必要があります。

固定抵抗器の種類

固定抵抗器は、構造上次の3種類に分類できます。

1. リード付きタイプ

リード付きタイプは固定抵抗器両端の電極にリード線が接続されたもので、リード線をプリント基板の穴に通して半田付けすることを前提としたものです。抵抗体の材質によって、さらに以下の種類に分類できます。

炭素皮膜抵抗器
磁器などの表面に抵抗体として炭素を固着させた抵抗器で、カーボン抵抗器とも呼ばれます。磁器の表面には螺旋状の溝があり、この溝の幅や長さを変えて抵抗値を設定します。

安価であることから、一般的な回路で広く採用されていますが、抵抗値の誤差が大きく、通常品では公称抵抗値に対し5%ほどの精度です。また、ノイズの発生に対しても金属系の抵抗体より劣ります。

金属皮膜抵抗器
磁器の表面に金属の抵抗体を形成した抵抗器で、抵抗体のペーストを焼成した厚膜型と、抵抗体を蒸着させた薄膜型とがあります。抵抗値の誤差が小さいことが特徴で、厚膜型は誤差1%程度、薄膜型は更に高精度で0.05%を謳うものも存在します。

正確な抵抗値が求められる計測機器やオーディオ製品などで採用されています。

酸化金属皮膜抵抗器
磁器の表面に、酸化錫等の酸化金属を抵抗体として形成した抵抗器です。耐熱性に優れ、比較的大きな電力にも対応することが可能なため、主に電源など中電力系の回路に用いられます。

メタルグレーズ皮膜抵抗器
金属、酸化金属、ガラスを混合したものを抵抗体とした抵抗器で、厚膜構造で特性が安定しており、環境変化に対しても強いものです。また、耐蝕性にも優れています。尚、この抵抗体はリード付きタイプだけでなく、チップ抵抗器などでも使用されています。

2. 面実装タイプ

リード線が付属していない面実装タイプは表面実装を前提としたものです。基板の表面に部品を実装するこの方法は基板のスペースを縮小できるため、当初小型化を求める電子機器に積極的に採用されていましたが、今では面実装タイプの部品が主流になっています。

なお、構造面から面実装タイプの抵抗器は、角形チップ抵抗器と円筒形チップ抵抗器の2種類に分類できます。

角形チップ
抵抗器は抵抗体にメタルグレーズを採用したものです。

円筒形チップ
元々はリード付きの抵抗器のリード線を外したものでしたが、現在は抵抗体が炭素皮膜もしくは金属皮膜であるものです。

面実装タイプの抵抗器としては円筒型が先に普及しましたが、はんだ付け工程での使い勝手の良さから、現在は角形チップ抵抗器が多く使われています。

3. 巻き線抵抗器

抵抗体である金属線を螺旋状に巻いたものを巻線抵抗器と言います。均一な金属線を一定の長さで巻く構造ゆえ、抵抗値を高精度に設定できる上、大きな電力容量を持たせることが可能です。また、抵抗体を適切に選択することで、温度変化による抵抗値の変化を抑えられる等の特徴を持ちます。

但し、巻線を巻く構造のため交流電流に対してはコイルのインダクタンス特性を示し、周波数が高いほどインピーダンスが大きく、その結果電流が小さくなるよう作用します。この特性は高周波領域で悪影響を及ぼすため、それを防ぐ無誘導巻きを採用する場合があります。

メタルクラッド抵抗器
MetalをCladした抵抗器を示します。巻線抵抗に金属製の外装を取り付けたものです。大電力回路に使用することを想定しているため、発熱対策として放熱板や放熱フィンが設けられたものもあります。

ホーロー抵抗器
磁器などの芯に抵抗体となる金属線を巻き、それを保護するためにホーロー製の外装を取り付けたものです。熱に強い構造であることから、抵抗器の発熱が避けられない用途で採用されます。

ちなみに、ホーローとは鉄やアルミニウム、ステンレスといった金属材料の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けたものです。

セメント抵抗器
巻線抵抗器を磁器のケースに収め、更にそれをセメントで覆った抵抗器です。酸化被膜抵抗などでも同様の構造を採用することがあります。セメントで強固に保護されていますので、熱や振動に対しても非常に強固です。大電力回路向けに使用されます。

参考文献
https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b1
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/resistors/

殺菌装置

殺菌装置とは

殺菌装置

殺菌装置とは、食品などの対象物について殺菌処理を行うことができる装置です。殺菌装置は紫外線殺菌装置と高温高圧殺菌装置に大別されます。

紫外線を利用して殺菌を行う紫外線殺菌装置は、対象物へのダメージが少ない、耐性菌が生まれないなどの優れた利点を持つ装置です。ただし紫外線が当たった部分の表面しか殺菌できないため、紫外線を遮へいするものが存在すると十分な殺菌効果がありません。

高温高圧殺菌装置は、高温・高圧条件で加熱殺菌を行うことで、殺菌処理にかかる時間を短時間に抑えられる装置です。類似の殺菌装置であるオートクレーブと異なり冷却機能があるため、冷却時間の短縮にも成功しています。 

殺菌装置の使用用途

殺菌装置は、衛生管理や汚染防止などを目的として用いられます。化学品や薬品、精密品など幅広い分野で利用されていますが、とくに有害菌による汚染が許されない食品分野では欠かせない装置です。

食品分野では、缶詰やびん詰などレトルト食品の殺菌が代表的な用途です。缶詰やびん詰など真空状態の食品では、酸素を嫌う「ボツリヌス菌」が増殖しやすくなります。

ボツリヌス菌は食中毒の原因となる毒素を産生する菌として有名ですので、上記食品の製造時には殺菌装置を用いた入念な殺菌が必要です。 

殺菌装置の原理

殺菌装置として主流なのは、高温高圧殺菌装置と紫外線殺菌装置の2つです。

1つ目の高温高圧殺菌装置は、食品に含まれるボツリヌス菌を含む有害菌を殺菌するために用いられます。ボツリヌス菌は耐熱性のある「芽胞」を作って身を守ることで知られており、殺菌には十分な温度・時間の加熱殺菌を行わなければなりません。高温高圧殺菌装置を用いて120度・4分間相当の厳しい条件で殺菌することで、食品の安全性を保つことが可能です。

高圧殺菌装置には蒸気式と熱水式のものがあり、熱水式はさらに熱水貯湯式、熱水スプレー式に分けられます。熱水を噴霧する熱水スプレー式では熱水の噴霧によって殺菌槽が高温高圧の雰囲気になるため、温度ムラの発生を防止できます。

2つ目の紫外線殺菌装置は、紫外線を対象物に照射する殺菌装置です。紫外線を照射すると細菌の細胞膜を破壊することができるため、その結果として細菌が死に至ります。

殺菌装置に用いる紫外線源としては、水銀ランプやオゾンランプが主に利用されます。これらのランプを採用すれば、細胞膜に吸収されやすく殺菌効率の良い波長(UV-C域)の紫外線を照射することが可能です。 

参考文献
https://www.m-n-w.com/from_index_uvkill.htm
https://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/pdf/gijutujoho/gijutujoho423.pdf 

皿ばね

皿ばねとは

皿ばねとは、名前の通り皿のような形状をしたばねです。

JISでは、「中心に孔の開いた円板を円すい状に加工した、圧縮方向にばね作用をする、底のない皿形のばね」と定義されています。皿ばねは外部からの荷重を受けて変形し、その後に元の形状に戻る特性を持ったばねです。この特性により、機械装置において様々な用途で使用されています。

見た目や形状が似ている要素部品として、「皿ばね座金」がありますが、JISにて明確に区別されているので混同しないように注意が必要です。皿ばねは、JISに規定されるのが遅かったこともあり、製造各社でそれぞれ独自の規格を持っていることも多いです。

皿ばねの使用用途

皿ばねは、少ないスペースで高荷重を受けることができます。回転の有無によらず、軸がある場所で軸方向に力を発生させる用途で使用される場合が多いです。

1. 荷重調整

図1. 荷重調整としての使用例

皿ばねは、荷重が変動する状況で一定の圧力を維持するために使用されます。具体例としては、自動車のクラッチです。クラッチの摩擦力を得るために皿ばねが使われています。

また、油圧ピストンにおいては、負荷が無くなったときにピストン位置を復元するリターンスプリングとしても使用されます。

2. 衝撃吸収

皿ばねは、衝撃や振動を吸収し、機械や構造物を保護するために使用されます。具体例としては、プレス機の防振装置です。板材などをプレスで打ち抜いたときの衝撃を皿ばねのばね性で吸収する目的で使用されています。

3.プリロード (予荷重) の付与

図2. プリロードとしての使用例

皿ばねは、部品間の適切なプリロード (初期の圧力または荷重) 確保するためにも使用されます。具体的には、ヒンジの回転軸部す。

摩擦力により、一定以上の力が加えられるまでは静止するため、ヒンジを任意の位置で保持可能です。また、ベアリングや軸受などに使用することで、軸周りのガタツキを抑えることも可能です。 

皿ばねの原理

皿ばねの原理は、弾性変形に基づいています。皿ばねは中心に穴の開いた平皿のような形です。圧力がかかると円すい状の部分がたわむ原理になっており、そのたわみを復元しようとする力がばね力となります。

一般的なばねとして、らせん状のばね「コイルばね」がありますが、コイルばねは素線がねじられる荷重を受けながら変形します。コイルばねでは、圧縮、引張、ねじりへの用途の設定があります。

一方、皿ばねには多種的な設定はありません。皿状の底部と上部が荷重を受け、皿の高さが低くなる変形をするため、圧縮方向のみ対応します。

皿ばねの主な特徴

1. コンパクトで高い弾性率

皿ばねの大きな特徴は、小さい変形に高いエネルギーを蓄えられる点です。コンパクトな設計が可能です。

2. 荷重とたわみが非線形

皿ばね単品ではコイルバネと異なり、非線形の特徴を持ちます。

3. 組み合わせによる荷重調整

皿ばねを複数使用することが一般的です。これにより、ばね特性を変えることができます。ただし、複数使用する場合、1つ1つの製作誤差がばね特性のずれにつながる場合があり注意が必要です。

皿ばねのその他情報

1. 皿ばねの組合せ

図3. 皿ばねの組合せによる特性

単一の使用で荷重やたわみ量 (変位量) が不足する場合は、複数の皿ばねを重ねて使用することが可能です。円すい形の向きを揃えて重ねることを直列、向きを互い違いに重ねることを並列と呼び、異なるばね特性を得られます。

直列に重ねた場合は、荷重が重ねた皿ばねの枚数に比例してばね荷重が大きくなります。3枚直列に重ねた場合、1枚と同等のたわみ量 (変位量) にすると、その時の荷重は3倍です。

並列に重ねた場合は、たわみ量 (変位量) が重ねた皿ばねの枚数に比例して大きくなります。3枚並列に重ねた場合、1枚と同等の荷重をかけると、その時のたわみ量 (変位量) は1枚と比較すると3倍になります。

皿ばねを重ねて使用する際、板厚や寸法の製作時の誤差が、ばねの特性に大きく影響を与えることがあります。

2. 皿ばねと皿ばね座金との違い

「皿ばね」はJIS 2706で規定され、「皿ばね座金」はJIS 1251で定義されます。JIS B 0103によると、それぞれ以下の通りです。

  • 皿ばね
    中心に孔の開いた円板を円すい状に加工した、圧縮方向にばね作用をする、底のない皿形のばね。
  • 皿ばね座金
    底がない皿状のばね座金。

皿ばねは文字通り、ばねとしての機能が必要です。荷重調整や振動吸収、プリロードなどが使用用途であり、繰り返す動的荷重に使用されます。一方で、皿ばね座金は、ばね作用を利用してねじの緩み止めを狙った座金です。

ボルトを締結した時の軸力に皿ばね座金の弾性エネルギーが対抗することで、安定した締結力を得ることができます。軸力の保持を目的に静的荷重で使用されます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0036.html
http://www.iwata.co.jp/standard/standard01.html
https://www.daido.co.jp/common/pdf/pages/technology/journal/83_1/09_technicaldata.pdf
https://www.jsse-web.jp/kandokoro/kan24.pdf
https://www.tokushuko.or.jp/publication/magazine/pdf/2020/magazine2005.pdf
https://www.tohatsu-springs.com/product/sara.php

産業用PC

産業用PCとは

産業用PCは、産業の用途として使用されるPCのことです。ただし、オフィスで使用されるノートPC等を指すことは少なく、工場などの生産現場で使用されるPCを指します。

産業用PCの特徴としては、生産現場に設置することを考慮しているため、堅牢である事や、冗長化がなされていることなどが挙げられます。ただし、市販のPCよりも高価で、納期も長くかかるというデメリットがあります。

オフィス作業に対しては市販PCを使用し、生産現場の管理などには産業用PCを使用するなどして使い分けます。

産業用PCの使用用途

産業用PCは、生産現場の制御から日々の操業データの収集まで、幅広く使用されます。現代ではなくてはならない存在です。

一例としては、分散型制御システムの運転に使用する場合などが挙げられます。プロセス系工場では工場面積が広い場合が多く、全体のプロセスを見渡すことは困難です。そのため、操業の状態をリアルタイムで確認できるシステムが不可欠となりますが、現在は分散型制御システムを使用することが主流となっています。人が触るインターフェイスには産業用PCを使用されることが多くあります。

産業用PCの原理

産業用PCの動作原理は、基本的に市販PCと同じです。電源ユニット、マザーボード、CPU、GPU等からなります。

電源ユニットは、各機器に直流の電源を供給します。マザーボードのような電子部品にも、冷却ファンなどの駆動機械にも給電します。

CPUは、PCの演算を担うユニットです。CPUの性能によって演算速度が変化します。

GPUは、グラフィックに対する画像処理演算を担うユニットです。動画や画像処理の速度や滑らかさはGPUに起因します。

マザーボードは、これらの部品をまとめるユニットで、CPUとの相性で選定される場合が多いです。

また、産業用PCの場合は重要データを保存しているため、ほとんどの場合は無停電電源装置を使用します。無停電電源装置はバッテリーとサイリスタからなる機械装置です。商用電源が停電しても、一定時間AC100Vの電源を供給し続ける役割を担っています。無停電電源装置と産業用PCはシリアルやLANケーブルで接続されており、電源装置でも電源供給が困難な場合には、産業用PCを安全にシャットダウンするようにソフトを組みます。

 

酸化銀電池

酸化銀電池とは

酸化銀電池のイメージ

図1. 酸化銀電池のイメージ

酸化銀電池とは、乾電池の一種で酸化銀亜鉛を電極に用いた電池です。

SR電池、銀電池、銀亜鉛電池とも呼ばれます。単位体積あたりのエネルギー密度が高いため、電気容量がアルカリ電池より大きい傾向があります。小型でも大容量の電池を作れる点を活かして、ボタン電池をはじめとする小型電池・薄型電池に使われることが多いです。

酸化銀電池の使用用途

酸化銀電池は、一般的なボタン電池や乾電池として使用されている電池です。放電のときの作動電圧が最後まで一定であること、単位体積当たりの電気容量が高いことが大きな特徴であり、医療機器や精密機器の電源などに用いられます。具体的には、時計、補聴器、カメラ、電子体温計などです。

わずかな時間のずれも許されないクォーツ時計や電子機器である各種測定機器、電卓や医療機器は、高精度な電圧の制御が求められます。このため、作動電圧の安定性に優れている酸化銀電池が適しており、広く使用されています。

酸化銀電池の原理

酸化銀電池の構造

図2. 酸化銀電池の構造

酸化銀電池は、電極の正極として酸化銀(I)、負極として亜鉛を採用しています。電解液は水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムです。電池内における電極および電解液間での下記の化学反応によって、電気を発生させることが可能です。

  • 正極における反応: Ag2O + H2O + 2e → 2Ag + 2OH
  • 負極における反応: Zn + 2OH → ZnO + H2O + 2e
  • 系全体における反応: Ag2O + Zn → 2Ag + ZnO

負極側では、イオン化傾向の高い亜鉛 (Zn) が水酸化物イオン (OH) と反応することで電子 (e) が放出されます。一方、正極側では酸化銀 (Ag2O) が水 (H2O) と反応し、銀 (Ag) に還元されます。

亜鉛が電解液と反応して水素を発生することを防ぐため、以前は多くの電池で亜鉛の表面を水銀で覆う処理が行われていました。現在では、腐食抑制剤や水素を吸着する物質の使用により、水銀0使用の製品が販売されています。

酸化銀電池の種類

酸化銀電池の積層電池のイメージ (1)

図3. 酸化銀電池の積層電池のイメージ

酸化源電池は、小型のボタン電池の他、複数のセルを一つのパッケージに収めた高電圧の積層電池などの種類が製品化されています。電解液の種類などによって最適な使用電流があり、外形が同じでも使用目的が異なる複数種類の製品が存在するため注意が必要です。

アルカリ水溶液として水酸化カリウム水溶液が使われているタイプはWタイプ、水酸化ナトリウム水溶液を用いたタイプはSWタイプにそれぞれ分類されます。WタイプとSWタイプの電池では、適している用途が異なります。Wタイプは比較的高い負荷がかかるデジタル時計または多機能時計に向いており、SWタイプは低負荷のアナログ時計向きです。 

また、メーカーや製品にもよりますが、環境問題への対策として有害物質である水銀や鉛を含まないように設計されたタイプが現在では主流です。酸化銀電池は比較的液漏れしやすいと言われていますが、製品の中には液もれ防止設計がなされているものもあります。

酸化銀電池のその他情報

1. 酸化銀電池の長所

酸化銀電池は、機械的強度が高い上に自己放電が低く長期保管が可能な電池です。また、放電時の電圧特性に優れ、放電の末期まで電圧降下が極めて少ない特徴があります。

小型電池の製造が容易であるため、製品としても小型のボタン電池や複数のセルを1つのパッケージに収めた高電圧の乾電池などが製品化されています。動作温度が−40から+50度と広いことも特徴です。重量エネルギー密度は、鉛蓄電池の約3〜4倍、アルカリボタン電池の約2倍と高くなっています

2. 酸化銀電池の短所

酸化銀電池は銀を使用しているため、比較的高価であることが短所です。また、充電可能回数が少ない (100回以下) こと、充電時間が長く急速充電が不可能であるという欠点もあります。

参考文献
https://www.maxell.jp/consumer/button-voltage_05.html

止めねじ

止めねじとは止めねじ

止めねじとは、ねじの先端を相手部材に押し付けて固定するねじです。

ねじの頭部分に座はなく、ねじ部だけが見える外観です。一般的な止めねじには六角穴が設けられており、六角レンチやLレンチを使って止めねじを回します。六角穴以外ではすり割り (マイナス溝) のついたタイプもあります。

止めねじの別称は「いもねじ」「ホーローセット」「ホーロー」「セットねじ」「六角穴付き止めねじ」などです。JISでは「六角穴付き止めねじ」としてJIS B 1177に規定されています。

止めねじの使用用途

軸に対してギアやプーリーなどの部品を固定するために使われます。例えばモーターの出力軸へのプーリーの取り付けや駆動軸へのギヤの取り付けなどです。多くの場合には軸と穴のはめ合いはすきまばめ公差を使用しますが、軸と穴の隙間分は止めねじにより片側に押し付けられます。したがって高精度で同軸度が必要な部品同士を止めねじで取り付ける場合には注意が必要です。

止めねじは調整する用途でも用いられます。例えば圧縮コイルばねとの組み合わせで止めねじによりばねを圧縮して力の強弱を調整でき、止めねじを回して部品を押すと部品の位置を微調整できます。

止めねじの特徴

止めねじは取り付けが簡単で、ねじが部品の外に飛び出さず、省スペースかつ経済的です。止めねじの先端形状には種類が複数あり、目的や用途で使い分けられます。

1. くぼみ先

くぼみ先の止めねじは最も多く用いられる一般的な先端形状です。先端がクレーターのような形状にくぼんでおり、相手材を円周部分で押さえて固定します。

プーリーを軸に固定する場合にはねじ先端が軸に食い込んで軸表面を変形させるため、プーリーの軸からの取り外しができません。付け外しを想定する場合には軸の止めねじ固定部の段落しやDカットをして使用します。

2. 平先

平先の止めねじは先端が平らで相手材を傷つけにくく、繰り返し使用可能です。

3. ダブルポイント

ダブルポイントはくぼみ先と同様の形状をしています。くぼみ部分に付いている突起が取り付け軸に確実に食い込むためゆるみ止め機能が強いです。

4. トガリ先

トガリ先の止めねじの先端は90°または120°の円錐形です。相手材にはザグリをするため、深くまでねじ込めて止めねじの位置を決められます。

5. 棒先

棒先の止めねじの先はねじ径よりも細い軸形状で、先端部分は平らです。軸形状部分を使って位置決めや回転止め用途で使用したり、切れている軸の溝の底部分に止めねじを固定する用途で用いられます。

止めねじの種類

止めねじの頭部の形状によって、六角穴付き止めねじ、すりわり付き止めねじ、四角止めねじの3種類に分類されます。

1. 六角穴付き止めねじ

六角穴付き止めねじは最も流通している止めねじです。頭部に六角形の溝があり、六角レンチで回転させます。強い力で締められて深い穴でもねじが回転し、部品の固定用ねじとして幅広く使用可能です。

2. すりわり付き止めねじ

すりわり付き止めねじの頭部には溝が一本あり、マイナスドライバーを用いてねじを回転させます。繊細な回転が可能で、調整用ねじに向いています。ただし強い力で締める場合には不向きです。

3. 四角止めねじ

四角止めねじの頭部は四角形で、メクラプラグのような形状です。通常スパナなどの工具でねじを回転させますが、手でつかんでも回転できます。固定用ねじや調整用ねじとして使われます。

止めねじの選び方

止めねじの材質には、鋼、ステンレス、非鉄金属などが主に用いられ、使用する部品に合わせて選択します。基本的には同種の素材を使いますが、異種の組み合わせでは注意が必要です。

止めねじと部品が異種の素材では腐食が発生する可能性があります。金属と樹脂の組み合わせでは強度の弱い樹脂側が損傷しやすいです。意識的に弱い力でねじを締め、ねじがゆるまないようにゆるみ止め剤を用います。

参考文献
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Services/Tech_data/tech14.html
http://www.alpsseiko.co.jp/data/2%20tomeneji%20no%20shururi%20p4-p9.pdf
https://e-neji.info/%E5%85%AD%E8%A7%92%E7%A9%B4%E4%BB%98%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%AD%E3%81%98%E3%81%A8%E3%81%AF

軸流ファン

軸流ファンとは

軸流ファン

軸流ファンとはファンの種類の一つで、機器の冷却(クーリング)をする機器です。空気の流れは、回転する羽(プロペラ)の前から入り後ろへと出ていきます。回転軸に沿った空気の流れとなるため、軸流ファンと呼ばれます。ファンの種類は各種ありますが、回転軸に沿って空気を流すことが、他のファンとの違いです。

軸流ファンは、AC電源、DC電源どちらの電源タイプもありますが、回転数のコントロールが必要である場合には、DC電源タイプの軸流ファンであればPWM信号にて容易に制御することができます。

軸流ファンの使用用途

機器の冷却目的で軸流ファンは使用されています。具体的には、機器に搭載されているモーターやドライバー回路(基板)、マイコンなどを空冷し、熱による誤動作や破損を防止するために使用します。

コピー機やプリンターなど、主に用紙を扱う機器では、冷却以外の目的で使用されています。束の用紙に風をあてることにより、用紙を1枚ずつ取り出したり、ファンの空気を吸う力を利用して、紙を吸着して搬送したりします。プリント後のインクを乾燥する目的にも使用されます。

また、密閉された空間内で、内部の温度や湿度にむらがでないよう、空気を攪拌する用途や、排気する用途でも軸流ファンは使用されます。

軸流ファンの原理

軸流ファンは、筐体の中央部分に羽根(プロペラ)が配置され、羽を回転させることにより、風を羽の正面から後方へと吐き出します。軸流ファンは、騒音は低く高風量を得られますが、さらに高風量,高静圧,低騒音などの特徴を強化した各種ラインナップも豊富です。

軸流ファンは、2台直列につないだり、並列に並べたりして使用する事ができます。直列に並べて運転する場合は、風量は変わりませんが、静圧を上げることができます。並列に並べて運転する場合は、静圧は変わりませんが、風量を上げることが可能です。

冷却用途に使用する場合、吐き出しで使用するのか吸い込みで使用するかは、機器内の発熱する部品の数や位置で決める必要が有ります。また、空気中のホコリも考慮する必要があります。通常の環境で使用するときは、冷却時に空気中のホコリも循環されますので、特に基板などに直接風を当てていると、時間の経過とともにホコリが基板上にたまります。このような時は、必要に応じてフィルターを設置する検討を行います。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/axialfan_tg_j_3_2.pdf
https://techcompass.sanyodenki.com/jp/training/cooling/fan_basic/008/index.html
https://www.miw.co.jp/column/post-299/