皿ばね

皿ばねとは

皿ばねとは、名前の通り皿のような形状をしたばねです。

JISでは、「中心に孔の開いた円板を円すい状に加工した、圧縮方向にばね作用をする、底のない皿形のばね」と定義されています。皿ばねは外部からの荷重を受けて変形し、その後に元の形状に戻る特性を持ったばねです。この特性により、機械装置において様々な用途で使用されています。

見た目や形状が似ている要素部品として、「皿ばね座金」がありますが、JISにて明確に区別されているので混同しないように注意が必要です。皿ばねは、JISに規定されるのが遅かったこともあり、製造各社でそれぞれ独自の規格を持っていることも多いです。

皿ばねの使用用途

皿ばねは、少ないスペースで高荷重を受けることができます。回転の有無によらず、軸がある場所で軸方向に力を発生させる用途で使用される場合が多いです。

1. 荷重調整

図1. 荷重調整としての使用例

皿ばねは、荷重が変動する状況で一定の圧力を維持するために使用されます。具体例としては、自動車のクラッチです。クラッチの摩擦力を得るために皿ばねが使われています。

また、油圧ピストンにおいては、負荷が無くなったときにピストン位置を復元するリターンスプリングとしても使用されます。

2. 衝撃吸収

皿ばねは、衝撃や振動を吸収し、機械や構造物を保護するために使用されます。具体例としては、プレス機の防振装置です。板材などをプレスで打ち抜いたときの衝撃を皿ばねのばね性で吸収する目的で使用されています。

3.プリロード (予荷重) の付与

図2. プリロードとしての使用例

皿ばねは、部品間の適切なプリロード (初期の圧力または荷重) 確保するためにも使用されます。具体的には、ヒンジの回転軸部す。

摩擦力により、一定以上の力が加えられるまでは静止するため、ヒンジを任意の位置で保持可能です。また、ベアリングや軸受などに使用することで、軸周りのガタツキを抑えることも可能です。 

皿ばねの原理

皿ばねの原理は、弾性変形に基づいています。皿ばねは中心に穴の開いた平皿のような形です。圧力がかかると円すい状の部分がたわむ原理になっており、そのたわみを復元しようとする力がばね力となります。

一般的なばねとして、らせん状のばね「コイルばね」がありますが、コイルばねは素線がねじられる荷重を受けながら変形します。コイルばねでは、圧縮、引張、ねじりへの用途の設定があります。

一方、皿ばねには多種的な設定はありません。皿状の底部と上部が荷重を受け、皿の高さが低くなる変形をするため、圧縮方向のみ対応します。

皿ばねの主な特徴

1. コンパクトで高い弾性率

皿ばねの大きな特徴は、小さい変形に高いエネルギーを蓄えられる点です。コンパクトな設計が可能です。

2. 荷重とたわみが非線形

皿ばね単品ではコイルバネと異なり、非線形の特徴を持ちます。

3. 組み合わせによる荷重調整

皿ばねを複数使用することが一般的です。これにより、ばね特性を変えることができます。ただし、複数使用する場合、1つ1つの製作誤差がばね特性のずれにつながる場合があり注意が必要です。

皿ばねのその他情報

1. 皿ばねの組合せ

図3. 皿ばねの組合せによる特性

単一の使用で荷重やたわみ量 (変位量) が不足する場合は、複数の皿ばねを重ねて使用することが可能です。円すい形の向きを揃えて重ねることを直列、向きを互い違いに重ねることを並列と呼び、異なるばね特性を得られます。

直列に重ねた場合は、荷重が重ねた皿ばねの枚数に比例してばね荷重が大きくなります。3枚直列に重ねた場合、1枚と同等のたわみ量 (変位量) にすると、その時の荷重は3倍です。

並列に重ねた場合は、たわみ量 (変位量) が重ねた皿ばねの枚数に比例して大きくなります。3枚並列に重ねた場合、1枚と同等の荷重をかけると、その時のたわみ量 (変位量) は1枚と比較すると3倍になります。

皿ばねを重ねて使用する際、板厚や寸法の製作時の誤差が、ばねの特性に大きく影響を与えることがあります。

2. 皿ばねと皿ばね座金との違い

「皿ばね」はJIS 2706で規定され、「皿ばね座金」はJIS 1251で定義されます。JIS B 0103によると、それぞれ以下の通りです。

  • 皿ばね
    中心に孔の開いた円板を円すい状に加工した、圧縮方向にばね作用をする、底のない皿形のばね。
  • 皿ばね座金
    底がない皿状のばね座金。

皿ばねは文字通り、ばねとしての機能が必要です。荷重調整や振動吸収、プリロードなどが使用用途であり、繰り返す動的荷重に使用されます。一方で、皿ばね座金は、ばね作用を利用してねじの緩み止めを狙った座金です。

ボルトを締結した時の軸力に皿ばね座金の弾性エネルギーが対抗することで、安定した締結力を得ることができます。軸力の保持を目的に静的荷重で使用されます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0036.html
http://www.iwata.co.jp/standard/standard01.html
https://www.daido.co.jp/common/pdf/pages/technology/journal/83_1/09_technicaldata.pdf
https://www.jsse-web.jp/kandokoro/kan24.pdf
https://www.tokushuko.or.jp/publication/magazine/pdf/2020/magazine2005.pdf
https://www.tohatsu-springs.com/product/sara.php

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です